網品質管理閾値算出装置および方法
【課題】パケットのジッタを十分考慮した網品質管理閾値を算出する。
【解決手段】仮定閾値生成部20により、定常単位時間と定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成し、評価正解率算出部21により、仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出し、網品質管理閾値決定部22により、各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定する。
【解決手段】仮定閾値生成部20により、定常単位時間と定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成し、評価正解率算出部21により、仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出し、網品質管理閾値決定部22により、各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質管理技術に関し、特に映像通信サービスを提供するパケット網における品質管理閾値の最適値を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
映像系IPサービスは、近年、IPTVサービスとして世界各国で本格的なサービス提供が始まり、市場が拡大しつつある。一方、パケット網の品質が保証されないため、映像通信サービスを実現するアプリケーションの品質管理技術が注目され、品質測定器市場も拡大しつつある。
このような品質管理技術においては、パケット網の品質に留まらず、ユーザ体感品質(QoE:Quality of Experience)を管理することが重要視されつつある(例えば、非特許文献1など参照)。
【0003】
ユーザ体感品質を管理するため、従来より、網や端末から取得できる様々な指標を利用してユーザ体感品質を推定する技術が検討されている。
この技術のうち、映像通信サービスに対するユーザ体感品質推定技術としては、映像信号を利用するアプローチが提案されている(例えば、特許文献1など参照)。しかし、このようなアプローチでは、網で得られる情報を利用していないため、網で管理すべき指標を特定することができなかった。
一方、パケット転送状況など、網上で取得できる情報を利用するアプローチも提案されている(例えば、特許文献2など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4257333号公報
【特許文献2】特開2007-060475号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ITU-T Recommendation P.10/G.100, "Definition of Quality of Experience(QoE)," Jan., 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、受信端末で再生される映像について一定のユーザ体感品質を得るための網品質管理閾値を算出する際、パケット網に生ずる映像通信用パケットに関する揺らぎ、すなわちジッタによるユーザ体感品質への影響を十分考慮しておらず、実際のユーザ体感品質と一致するような有効な網品質管理閾値を算出できないという問題点があった。
【0007】
例えば、前述した網上で取得できる情報を利用するアプローチでは、主にパケット損失とジッタを利用している。しかし、パケット網でのジッタの影響については、映像通信用パケットが予定より遅れて受信端末に到着するバッファアンダーフロー現象によるユーザ体感品質への影響しか考慮しておらず、パケットが予定時刻より早く受信端末に到着するバッファオーバーラン現象によるユーザ体感品質への影響については考慮されていない。実際には、パケットが早く端末に到着する影響によって映像品質が劣化する端末やアプリケーションも広く利用されている。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、パケットのジッタを十分考慮した網品質管理閾値を算出できる網品質管理閾値算出技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかる網品質管理閾値算出装置は、パケット網を介して送信端末と受信端末との間で行われる映像通信について、当該パケット網でのパケットジッタによる映像品質劣化の有無を判定するための指標として、当該パケット網を通過した当該映像通信用パケットの転送状況を示す計測値に対する網品質管理閾値を算出する網品質管理閾値算出装置であって、パケット網でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で行われた映像通信ごとに、当該パケット網から受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を記憶するパケット情報記憶部と、通信条件ごとに、受信端末で再生した映像の品質評価結果を記憶する品質評価結果記憶部と、条件別パケット情報のうち受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、予め設定されている定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出する定常値算出部とを備えている。
【0010】
これに加え、本発明にかかる網品質管理閾値算出装置は、定常単位時間と定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する仮定閾値生成部と、仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する評価正解率算出部と、各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定する網品質管理閾値決定部とを備えている。
【0011】
この際、定常値算出部で、定常受信パケット数を算出する際、コンテンツが異なる複数の映像通信ごとに、受信端末で定常単位時間当たりに受信するコンテンツ別定常受信パケット数を算出し、これらコンテンツ別定常受信パケット数の平均値を定常受信パケット数として算出するようにしてもよい。
【0012】
また、定常値算出部で、受信端末での1フレーム分のフレーム再生所要時間からなる定常単位時間を用いるようにしてもよい。
【0013】
また、仮定閾値生成部で、定常単位時間に対して検証範囲で指定された複数の整数をそれぞれ個別に乗算することにより、各仮定単位時間を生成するようにしてもよい。
【0014】
さらに、仮定閾値生成部で、各仮定単位時間に対応する仮定許容受信パケット数を算出する際、定常受信パケット数に対して当該仮定単位時間の算出に用いた整数を乗算し、この乗算結果に検証範囲で指定された複数の比率をそれぞれ個別に乗算したものを乗算結果にそれぞれ加算することにより、当該仮定単位時間ごとに複数の仮定単位時間をそれぞれ生成するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明にかかる網品質管理閾値算出方法は、パケット網を介して送信端末と受信端末との間で行われる映像通信について、当該パケット網でのパケットジッタによる映像品質劣化の有無を判定するための指標として、当該パケット網を通過した当該映像通信用パケットの転送状況を示す計測値に対する網品質管理閾値を算出する網品質管理閾値算出装置で用いられる網品質管理閾値算出方法であって、パケット情報記憶部が、パケット網でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で行われた映像通信ごとに、当該パケット網から受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を記憶するパケット情報記憶ステップと、品質評価結果記憶部が、通信条件ごとに、受信端末で再生した映像の品質評価結果を記憶する品質評価結果記憶ステップと、定常値算出部が、条件別パケット情報のうち受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、予め設定されている定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出する定常値算出ステップとを備えている。
【0016】
これに加え、本発明にかかる網品質管理閾値算出方法は、仮定閾値生成部が、定常単位時間と定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する仮定閾値生成ステップと、評価正解率算出部が、仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する評価正解率算出ステップと、網品質管理閾値決定部が、各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定する網品質管理閾値決定ステップとを備えている。
【0017】
この際、定常値算出ステップで、定常受信パケット数を算出する際、コンテンツが異なる複数の映像通信ごとに、受信端末で定常単位時間当たりに受信するコンテンツ別定常受信パケット数を算出し、これらコンテンツ別定常受信パケット数の平均値を定常受信パケット数として算出するようにしてもよい。
【0018】
また、定常値算出ステップで、受信端末での1フレーム分のフレーム再生所要時間からなる定常単位時間を用いるようにしてもよい。
【0019】
また、仮定閾値生成ステップで、定常単位時間に対して検証範囲で指定された複数の整数をそれぞれ個別に乗算することにより、各仮定単位時間を生成するようにしてもよい。
【0020】
さらに、仮定閾値生成ステップで、各仮定単位時間に対応する仮定許容受信パケット数を算出する際、定常受信パケット数に対して当該仮定単位時間の算出に用いた整数を乗算し、この乗算結果に検証範囲で指定された複数の比率をそれぞれ個別に乗算したものを乗算結果にそれぞれ加算することにより、当該仮定単位時間ごとに複数の仮定単位時間をそれぞれ生成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、網品質管理閾値として、単位時間と許容受信パケット数とが用いられるため、実際の映像通信で転送される映像通信用パケットが、許容受信パケット数以内で転送されているか否かを検証することにより、当該映像通信について品質劣化が発生しているか否を判定していることになる。これにより、パケットが予定時刻より早く受信端末3に到着するバッファオーバーラン現象によるユーザ体感品質への影響を考慮した網品質管理閾値を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態にかかる網品質管理閾値装置の構成を示すブロック図である。
【図2】条件別パケット情報の構成例である。
【図3】端末情報の構成例である。
【図4】品質評価結果の構成例である。
【図5】本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での情報取得処理を示すフローチャートである。
【図6】定常値の構成例である。
【図7】本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での網品質管理閾値決定処理を示すフローチャートである。
【図8】仮定閾値の構成例である。
【図9】本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での評価正解率算出処理を示すフローチャートである。
【図10】評価正解率の算出結果例である。
【図11】評価正解率の算出結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[網品質管理閾値算出装置]
まず、図1を参照して、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置について説明する。図1は、本実施の形態にかかる網品質管理閾値装置の構成を示すブロック図である。
【0024】
この網品質管理閾値算出装置10は、全体として、一般的なサーバ装置やワークステーションなどの情報処理通信端末からなり、予め試験的に行った映像通信で得られたパケット情報とそのときの受信端末3での映像品質評価とに基づいて、当該試験に用いたパケット網2に対する網品質管理閾値を算出する機能を有している。
【0025】
映像配信装置1は、全体として、一般的なサーバ装置やワークステーションなどの情報処理通信端末からなり、映像通信における送信端末として動作することにより、映像データをパケットで配信する機能を有している。
受信端末3は、テレビ受像器をデータ通信網に接続して各種通信サービスの利用を可能とするSTB(Set-Top-Box)などの通信端末からなり、インターネットなどからなるパケット網2を介して接続された映像配信装置1と映像通信を行うことによりパケットで映像データを受信し、テレビ受像器などからなる映像表示装置4で再生出力する機能を有している。
【0026】
網品質制御装置5は、入力されたパケットに対して任意のジッタ量を与えて出力する試験装置からなり、パケット網2と受信端末3との間の通信経上に設置されて、パケット網2から受信端末3へ転送される映像通信用パケットに、指定された通信条件に応じたジッタ量を与える機能を有している。
分岐器6は、タップ(Tap)やハブ(Hub)などの通信機器からなり、網品質制御装置5と受信端末3との間の通信経路上に設置されて、パケット網2から受信端末3へ転送される映像通信用パケットをキャプチャする機能を有している。
【0027】
本実施の形態では、網品質管理閾値として、受信端末3での1フレーム分のフレーム再生所要時間である単位時間と、当該単位時間における受信端末3での許容受信パケット数との組を用い、実際の映像通信で転送される映像通信用パケットが、許容受信パケット数以内で転送されているか否かを検証することにより、当該映像通信について品質劣化が発生しているか否を判定する。
これにより、パケットが予定時刻より早く受信端末3に到着するようなバッファオーバーラン現象によるユーザ体感品質への影響を考慮した網品質管理閾値を算出することができる。
【0028】
網品質管理閾値の算出方法としては、パケット網2でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で予め試験的に映像通信を実施し、これら映像送信ごとに、当該パケット網から受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を用意しておくとともに、これら通信条件における受信端末3で再生した映像の品質評価結果を用意しておく。
【0029】
そして、網品質管理閾値算出装置10において、受信端末3での1フレーム分のフレーム再生所要時間である単位時間と、当該単位時間における許容受信パケット数との組からなる網品質管理閾値を複数仮定して、これら仮定網品質管理閾値ごとに、各条件別パケット情報を検証することにより当該通信条件下での映像通信における品質劣化有無を評価し、これら仮定網品質管理閾値のうち各通信条件下での映像通信に関する受信端末3での実際の品質評価結果と最も近い評価が得られる仮定網品質管理閾値を、網品質管理閾値として決定する。
【0030】
[本実施の形態の構成]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、網品質管理閾値算出装置10には、主な機能部として、パケット情報取得部11、パケット情報記憶部12、端末情報取得部13、定常値算出部14、定常値記憶部15、品質評価結果取得部16、品質評価結果記憶部17、仮定閾値生成部20、評価正解率算出部21、網品質管理閾値決定部22、および画面表示部23が設けられている。
【0031】
パケット情報取得部11は、網品質制御装置5で発生させた、ジッタ量が異なる複数の通信条件下で、映像配信装置1と受信端末3との間で試験的に行われる映像通信について、分岐器6でキャプチャされた当該映像通信に関する映像通信用パケットに関する条件別パケット情報を取得する機能と、取得した条件別パケット情報をパケット情報記憶部12へ保存する機能とを有している。
【0032】
図2は、条件別パケット情報の構成例である。この条件別パケット情報には、少なくとも分岐器6を通過してパケット網2から受信端末3へ転送された各映像通信用パケットについて、当該パケットのパケット番号(シーケンス番号)との転送時刻が含まれている。
この際、網品質制御装置5によってジッタ量を変動させて、映像品質が劣化し始めるジッタ量を予め検出しておき、その前後のジッタ量をいくつか選択して、通信条件とすればよい。図2の例では、映像品質が劣化し始めるジッタ量が90msで、その前後の60msから120msまでを1ms刻みで通信条件としている。
【0033】
条件別パケット情報のパケット転送時刻については、計測を開始した最初の映像通信用パケットからの相対的な時刻情報で記述されているが、絶対的な時刻情報であってもよい。
また、このパケット転送時刻については、分岐器6でキャプチャされてパケット情報取得部11で受信した各映像通信用パケットの受信時刻を用いてもよく、分岐器6で計測した各映像通信用パケットの転送時刻をパケット情報取得部11が分岐器6から取得してもよい。
【0034】
条件別パケット情報として用いるパケット転送時刻については、受信端末3におけるパケット受信時刻を用いることにより、最も精度の高い網品質管理閾値を算出することができる。しかし、分岐器6から受信端末3までの通信経路で発生するジッタについては、パケット網2で発生するジッタと比較して無視できる程度であるため、分岐器6を設置する地点については、網品質制御装置5と受信端末3との間の通信経路上であれば、例えばパケット網2と受信端末3のアクセス回線との接続点に網品質制御装置5と隣接して設置しても、算出される網品質管理閾値に対する影響は無視できる程度である。
【0035】
網管理運用時に、網品質管理閾値を用いて、映像通信サービスが提供されているインサービス環境下でパケット網2を管理する場合、前出した試験的な映像通信と同様に分岐器6を設けて、実際の映像通信のパケットからパケット情報を取得する必要がある。したがって、分岐器6については、通信サービス提供者が管理しやすいパケット網2のエッジノードに設けるのが望ましく、条件別パケット情報を計測する際にも同様の位置に設けることにより、試験時と網管理運用時との誤差を抑制できる。
【0036】
また、分岐器6から網品質管理閾値算出装置10までの通信経路で発生するジッタについても同様であり、パケット転送時刻については、分岐器6で計測してもパケット情報取得部11で計測しても算出される網品質管理閾値に対する影響は無視できる程度である。
【0037】
端末情報取得部13は、受信端末3での映像通信に用いる各種端末情報を取得する機能を有している。
図3は、端末情報の構成例である。端末情報取得部13で取得する端末情報としては、図3に示すように、受信端末3で1秒当たりに再生するフレーム数を示す映像フレーム表示レートがある。
この映像フレーム表示レートについては、受信端末3で映像再生時に計測した値を利用してもよく、受信端末3の仕様として設定されている値を利用してもよい。
【0038】
端末情報を取得する方法としては、端末情報取得部13と受信端末3との間でのデータ通信や、端末情報が記録されている記録媒体から、端末情報取得部13が端末情報を取得するようにしてもよく、網品質管理閾値算出装置10に設けられているキーボードでオペレータが操作入力した端末情報を端末情報取得部13が取得してもよい。
【0039】
定常値算出部14は、端末情報取得部13で取得した映像フレーム表示レートから、受信端末3で1フレーム分の映像を再生するのに要するフレーム再生所要時間を定常単位時間として算出する機能と、パケット情報記憶部12に保存されている条件別パケット情報のうち、受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、定常単位時間当たりに受信端末3で受信する定常受信パケット数を算出する機能と、これら定常単位時間と定常受信パケット数とを定常値として定常値記憶部15へ保存する機能とを有している。
【0040】
品質評価結果取得部16は、パケット情報取得部11で取得した条件別パケット情報を得た際の試験的な映像通信について、その通信条件ごとに、受信端末3で再生した映像のユーザ体感品質を示す品質評価結果を取得する機能と、取得した品質評価結果を品質評価結果記憶部17へ保存する機能とを有している。
図4は、品質評価結果の構成例である。品質評価結果については、映像品質の劣化の有無を検知した情報であってもよく、5段階評価等で定量化された情報(例えば、ITU−T勧告P800で規定されているMOS:Mean Opinion Score)であってもよい。
【0041】
仮定閾値生成部20は、定常値記憶部15から読み出した定常単位時間および定常受信パケット数に基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する機能を有している。
【0042】
評価正解率算出部21は、仮定閾値生成部20で生成した仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、パケット情報記憶部12から読み出した各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価する機能と、これら推定評価を品質評価結果記憶部17から読み出した当該通信条件における品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する機能とを有している。
【0043】
この際、評価正解率算出部21は、これら仮定閾値ごとに得られた映像品質の劣化有無を、品質評価結果記憶部17から読み出した当該通信条件での品質評価結果と比較し、両方の評価とも劣化ありまたは劣化なしを示す場合、すなわち両者の評価が一致している場合、当該仮定閾値による推定評価を正解と判定する。また、両方の評価のうち一方が劣化ありで他方が劣化なしを示す場合、すなわち両者の評価が不一致の場合、当該仮定閾値による推定評価を正解と判定する。
この後、評価正解率算出部21は、正解数を条件別パケット情報の数で除算することにより、仮定閾値数ごとの正解率を算出する。
【0044】
網品質管理閾値決定部22は、評価正解率算出部21で得られた仮定閾値数ごとの正解率を比較し、最も正解率の高い仮定閾値数の仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、網品質管理閾値を示す単位時間および許容受信パケット数として決定する機能と、これら単位時間および許容受信パケット数を画面表示部23で画面表示する機能とを有している。
【0045】
網品質管理閾値算出装置10には、通常の情報処理装置に設けられている一般的な構成として、画面表示部23のほか、演算処理部、記憶部、データ通信インターフェース部、データ入所津力インターフェース部、操作入力部などの機能部が設けられており、前述した各機能部がこれらを利用して処理動作を行う。
【0046】
前述した網品質管理閾値算出装置10の各機能部のうち、パケット情報取得部11、端末情報取得部13、定常値算出部14、品質評価結果取得部16、仮定閾値生成部20、評価正解率算出部21、網品質管理閾値決定部22については、演算処理部で実現すればよい。
この演算処理部は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部に予め格納されているプログラムを読み出して実行することにより、各種機能部を実現する。
【0047】
また、網品質管理閾値算出装置10の各機能部のうち、パケット情報記憶部12、定常値記憶部15、品質評価結果記憶部17については、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置で実現すればよい。これら記憶部は、それぞれ別個の記憶装置で実現してもよく、いずれか複数あるいはすべての記憶部を1つの記憶装置で実現してもよい。
【0048】
[本実施の形態の動作]
次に、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置10の動作について説明する。
網品質管理閾値算出装置10における主な処理動作として、情報取得処理、網品質管理閾値決定処理、および評価正解率算出処理がある。
【0049】
[情報取得処理]
まず、図5を参照して、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置10での情報取得処理について説明する。図5は、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での情報取得処理を示すフローチャートである。
【0050】
この情報取得処理は、ジッタ量が異なる複数の通信条件下で、映像配信装置1と受信端末3との間で試験的に映像通信を行う際に実行される。この際、網品質制御装置5によってジッタ量を変動させて、映像品質が劣化し始めるジッタ量を予め検出しておき、その前後のジッタ量をいくつか選択して、通信条件とすればよい。
【0051】
図5の情報取得処理において、網品質管理閾値算出装置10は、まず、パケット情報取得部11により、ジッタ量が異なる複数の通信条件下で、映像配信装置1と受信端末3との間で試験的に行われる映像通信について、分岐器6でキャプチャされた当該映像通信に関する映像通信用パケットに関する条件別パケット情報を取得し、取得した条件別パケット情報をパケット情報記憶部12へ保存する(ステップ100)。
【0052】
次に、網品質管理閾値算出装置10は、品質評価結果取得部16により、パケット情報取得部11で取得した条件別パケット情報を得た際の試験的な映像通信について、その通信条件ごとに、受信端末3で再生した映像の品質評価結果を取得し、取得した品質評価結果を品質評価結果記憶部17へ保存する(ステップ101)。
【0053】
また、網品質管理閾値算出装置10は、端末情報取得部13により、受信端末3での映像通信に用いる各種端末情報を取得する(ステップ102)。
続いて、網品質管理閾値算出装置10は、定常値算出部14により、受信端末3での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常単位時間と定常受信パケット数とを定常値として算出し、定常値記憶部15へ保存する(ステップ103)。
【0054】
この際、定常値算出部14は、端末情報取得部13で取得した映像フレーム表示レートから、受信端末3で1フレーム分の映像を再生するのに要するフレーム再生所要時間を定常単位時間として算出する。また、パケット情報記憶部12に保存されている条件別パケット情報のうち、受信端末3での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、定常単位時間当たりに受信端末3で受信する定常受信パケット数を算出する。
【0055】
図6は、定常値の構成例である。定常値のうち定常単位時間については、端末情報取得部13で取得した映像フレーム表示レートの逆数で算出できる。定常受信パケット数については、定常パケット情報に含まれる各パケットのうち、最初のパケットの転送時刻から定常単位時間長の時間区間を順に設け、これら時間区間ごとに、転送時刻が当該時間区間に含まれるパケットの数を計数し、各時間区間におけるパケット数を平均することにより、定常受信パケット数を算出すればよい。
これにより、網品質管理閾値算出装置10は、一連の情報取得処理を終了する
【0056】
[網品質管理閾値決定処理]
次に、図7を参照して、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置10での網品質管理閾値決定処理について説明する。図7は、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での網品質管理閾値決定処理を示すフローチャートである。
【0057】
図7の網品質管理閾値決定処理において、網品質管理閾値算出装置10は、まず、仮定閾値生成部20により、定常値記憶部15から読み出した定常単位時間および定常受信パケット数に基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する(ステップ110)。
【0058】
図8は、仮定閾値の構成例である。ここでは、仮定単位時間として、その検証範囲を定常単位時間の9倍までとして、定常単位時間×n(nは1〜9の整数)で求められる9種類の値を用いている。また仮定許容受信パケット数については、その検証範囲を定常受信パケット数の80%増しから5%刻みで100%増しまでとし、定常単位時間×(n+x)(xは80%,85%,90%,95%,100%のいずれか)で求められる5種類の値を用いている。これにより、仮定閾値の45(=9×5)通りとなる。
【0059】
次に、網品質管理閾値算出装置10は、評価正解率算出部21により、仮定閾値生成部20で生成した仮定閾値ごとに、後述するステップ112,113を繰り返し実行する仮定閾値ループを開始する(ステップ111)。
この仮定閾値ループにおいて、評価正解率算出部21は、まず、仮定閾値ループの先頭で選択された仮定閾値を仮定閾値生成部20から取得し(ステップ112)、この仮定閾値に基づいて評価正解率を算出するため、後述する評価正解列処理を実行する(ステップ113)。
【0060】
このようにして、仮定閾値生成部20で生成したすべての仮定閾値について、評価正解率算出部21により評価正解率を算出した後、網品質管理閾値算出装置10は、網品質管理閾値決定部22により、これら仮定閾値数の正解率を比較する(ステップ114)。
そして、網品質管理閾値決定部22は、最も正解率の高い仮定閾値数の仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、網品質管理閾値を示す単位時間および許容受信パケット数として決定する(ステップ115)。
【0061】
この後、網品質管理閾値決定部22は、これら単位時間および許容受信パケット数を画面表示部23で画面表示し(ステップ116)、一連の網品質管理閾値決定処理を終了する。
【0062】
[評価正解率算出処理]
次に、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置10での評価正解率算出処理について説明する。図9は、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での評価正解率算出処理を示すフローチャートである。
【0063】
図9の評価正解率算出処理において、網品質管理閾値算出装置10は、まず、評価正解率算出部21により、通信条件ごとに、後述するステップ121〜128を繰り返し実行する通信条件ループを実行する(ステップ120)。
【0064】
この仮定閾値ループにおいて、評価正解率算出部21は、まず、通信条件ループの先頭で選択された通信条件と対応する条件別パケット情報を、パケット情報記憶部12から読み出し(ステップ121)、当該評価正解率算出処理の起動時に選択されている仮想単位時間ごとにパケット数を計数する(ステップ122)。
【0065】
この際、評価正解率算出部21は、当該条件別パケット情報に記述されている先頭パケットから仮想単位時間ごとに順に時間区間を設定し、これら時間区間ごとに当該時間区間内に転送されたパケット数を計数してもよい。また、当該条件別パケット情報に記述されているパケットごとに、当該パケットの転送時間を開始時間として時間区間をそれぞれ設定してもよい。
【0066】
この後、評価正解率算出部21は、これら時間区間のうち、計数したパケットが、当該評価正解率算出処理の起動時に選択されている仮定許容受信パケット数を越える時間区間が存在するか検証する(ステップ123)。
【0067】
検証の結果、仮定許容受信パケット数を越える時間区間が存在する場合(ステップ123:YES)、評価正解率算出部21は、映像品質の劣化ありと推定評価し(ステップ124)、仮定許容受信パケット数を越える時間区間が存在しない場合(ステップ123:NO)、評価正解率算出部21は、映像品質の劣化なしと推定評価する(ステップ125)。
【0068】
このようにして、映像品質の劣化有無を推定した後、評価正解率算出部21は、ループ処理で選択された通信条件と対応する品質評価結果を、品質評価結果記憶部17から読み出し(ステップ126)、この品質評価結果と推定評価結果とを比較する(ステップ127)。
ここで、両方の評価結果がともに劣化ありまたは劣化なしを示しており、両者の評価結果が一致している場合(ステップ127:YES)、評価正解率算出部21は、当該仮定閾値による推定評価が正解であることから、当該評価正解率算出処理の起動時に選択されている仮想閾値に関する推定評価の正解数を1だけ計数する(ステップ128)。
【0069】
一方、両方の評価のうち一方が劣化ありで他方が劣化なしを示しており、両者の評価結果が不一致の場合(ステップ127:NO)、評価正解率算出部21は、当該仮定閾値による推定評価が不正解であることから、正解数は計数しない。
【0070】
このようにして、推定評価の正解/不正解に応じて正解数の計数処理を行った後、評価正解率算出部21は、ステップ120で選択した通信条件に関するループ処理を終了し、ステップ120へ戻って、次の通信条件に関するループ処理へ移行する。
また、すべての通信条件に関するループ処理が終了した場合、評価正解率算出部21は、一連の評価正解率算出処理を終了する。
【0071】
図10は、評価正解率の算出結果例である。図11は、評価正解率の算出結果を示すグラフである。ここでは、仮定単位時間が33msで仮定許容受信パケット率が85%の場合、評価正解率が100%で最も大きい。したがって、この例では、網品質管理閾値として、単位時間=33ms、仮定許容受信パケット数=94個が選択される。
【0072】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、定常値算出部14により、条件別パケット情報のうち受信端末3での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、受信端末での1フレーム分のフレーム再生所要時間である定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出し、仮定閾値生成部20により、定常単位時間と定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成しておく。
【0073】
そして、評価正解率算出部21により、仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出し、網品質管理閾値決定部22により、各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定している。
【0074】
したがって、網品質管理閾値として、単位時間と許容受信パケット数とが用いられるため、実際の映像通信で転送される映像通信用パケットが、許容受信パケット数以内で転送されているか否かを検証することにより、当該映像通信について品質劣化が発生しているか否を判定していることになる。
これにより、パケットが予定時刻より早く受信端末3に到着するようなバッファオーバーラン現象によるユーザ体感品質への影響を考慮した網品質管理閾値を算出することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、定常値算出部14により、コンテンツが異なる複数の映像通信ごとに、受信端末3で定常単位時間当たりに受信するコンテンツ別定常受信パケット数を算出し、これらコンテンツ別定常受信パケット数の平均値を定常受信パケット数として算出してもよく、コンテンツに対する依存性が排除された網品質管理閾値を算出することができる。
【0076】
また、本実施の形態では、定常値算出部14において、受信端末3での1フレーム分のフレーム再生所要時間からなる定常単位時間を用いるようにしたので、各フレームとパケット転送状況を検証する際のパケット区切りとをほぼ同期させることができる。
したがって、評価正解率算出部21において、受信端末3での映像品質評価との同等の条件で、映像品質劣化の有無を推定評価することができ、網品質管理閾値の算出精度を高めることができる。
【0077】
また、本実施の形態では、仮定閾値生成部20により、定常単位時間に対して検証範囲で指定された複数の整数をそれぞれ個別に乗算することにより、各仮定単位時間を生成し、さらには、各仮定単位時間に対応する仮定許容受信パケット数を算出する際、定常受信パケット数に対して当該仮定単位時間の算出に用いた整数を乗算し、この乗算結果に検証範囲で指定された複数の比率をそれぞれ個別に乗算したものを乗算結果にそれぞれ加算することにより、当該仮定単位時間ごとに複数の仮定単位時間をそれぞれ生成するようにしたので、各フレームとパケット転送状況を検証する際のパケット区切りとをほぼ同期させることができる。
したがって、評価正解率算出部21において、受信端末3での映像品質評価との同等の条件で、映像品質劣化の有無を推定評価することができ、網品質管理閾値の算出精度を高めることができる。
【0078】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0079】
また、以上では、定常値算出部14で定常受信パケット数を算出する場合、条件別パケット情報を計測する対象となる映像通信から、定常受信パケット数を算出する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。
【0080】
例えば、コンテンツが異なる複数の映像通信ごとに、受信端末3で定常単位時間当たりに受信するコンテンツ別定常受信パケット数を算出し、これらコンテンツ別定常受信パケット数の平均値を定常受信パケット数として算出してもよく、コンテンツに対する依存性が排除された網品質管理閾値を算出することができる。
【0081】
また、提供サービスによっては、当該サービスポリシに基づいて、平均値に代えて、各コンテンツ別定常受信パケット数のうちの最低値を定常受信パケット数として選択してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…映像配信装置(送信端末)、2…パケット網、3…受信端末、4…映像表示装置、5…網品質制御装置、6…分岐器、10…網品質管理閾値算出装置、11…パケット情報取得部、12…パケット情報記憶部、13…端末情報取得部、14…定常値算出部、15…定常値記憶部、16…品質評価結果取得部、17…品質評価結果記憶部、20…仮定閾値生成部、21…評価正解率算出部、22…網品質管理閾値決定部、23…画面表示部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信品質管理技術に関し、特に映像通信サービスを提供するパケット網における品質管理閾値の最適値を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
映像系IPサービスは、近年、IPTVサービスとして世界各国で本格的なサービス提供が始まり、市場が拡大しつつある。一方、パケット網の品質が保証されないため、映像通信サービスを実現するアプリケーションの品質管理技術が注目され、品質測定器市場も拡大しつつある。
このような品質管理技術においては、パケット網の品質に留まらず、ユーザ体感品質(QoE:Quality of Experience)を管理することが重要視されつつある(例えば、非特許文献1など参照)。
【0003】
ユーザ体感品質を管理するため、従来より、網や端末から取得できる様々な指標を利用してユーザ体感品質を推定する技術が検討されている。
この技術のうち、映像通信サービスに対するユーザ体感品質推定技術としては、映像信号を利用するアプローチが提案されている(例えば、特許文献1など参照)。しかし、このようなアプローチでは、網で得られる情報を利用していないため、網で管理すべき指標を特定することができなかった。
一方、パケット転送状況など、網上で取得できる情報を利用するアプローチも提案されている(例えば、特許文献2など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4257333号公報
【特許文献2】特開2007-060475号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ITU-T Recommendation P.10/G.100, "Definition of Quality of Experience(QoE)," Jan., 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来技術では、受信端末で再生される映像について一定のユーザ体感品質を得るための網品質管理閾値を算出する際、パケット網に生ずる映像通信用パケットに関する揺らぎ、すなわちジッタによるユーザ体感品質への影響を十分考慮しておらず、実際のユーザ体感品質と一致するような有効な網品質管理閾値を算出できないという問題点があった。
【0007】
例えば、前述した網上で取得できる情報を利用するアプローチでは、主にパケット損失とジッタを利用している。しかし、パケット網でのジッタの影響については、映像通信用パケットが予定より遅れて受信端末に到着するバッファアンダーフロー現象によるユーザ体感品質への影響しか考慮しておらず、パケットが予定時刻より早く受信端末に到着するバッファオーバーラン現象によるユーザ体感品質への影響については考慮されていない。実際には、パケットが早く端末に到着する影響によって映像品質が劣化する端末やアプリケーションも広く利用されている。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、パケットのジッタを十分考慮した網品質管理閾値を算出できる網品質管理閾値算出技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかる網品質管理閾値算出装置は、パケット網を介して送信端末と受信端末との間で行われる映像通信について、当該パケット網でのパケットジッタによる映像品質劣化の有無を判定するための指標として、当該パケット網を通過した当該映像通信用パケットの転送状況を示す計測値に対する網品質管理閾値を算出する網品質管理閾値算出装置であって、パケット網でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で行われた映像通信ごとに、当該パケット網から受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を記憶するパケット情報記憶部と、通信条件ごとに、受信端末で再生した映像の品質評価結果を記憶する品質評価結果記憶部と、条件別パケット情報のうち受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、予め設定されている定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出する定常値算出部とを備えている。
【0010】
これに加え、本発明にかかる網品質管理閾値算出装置は、定常単位時間と定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する仮定閾値生成部と、仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する評価正解率算出部と、各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定する網品質管理閾値決定部とを備えている。
【0011】
この際、定常値算出部で、定常受信パケット数を算出する際、コンテンツが異なる複数の映像通信ごとに、受信端末で定常単位時間当たりに受信するコンテンツ別定常受信パケット数を算出し、これらコンテンツ別定常受信パケット数の平均値を定常受信パケット数として算出するようにしてもよい。
【0012】
また、定常値算出部で、受信端末での1フレーム分のフレーム再生所要時間からなる定常単位時間を用いるようにしてもよい。
【0013】
また、仮定閾値生成部で、定常単位時間に対して検証範囲で指定された複数の整数をそれぞれ個別に乗算することにより、各仮定単位時間を生成するようにしてもよい。
【0014】
さらに、仮定閾値生成部で、各仮定単位時間に対応する仮定許容受信パケット数を算出する際、定常受信パケット数に対して当該仮定単位時間の算出に用いた整数を乗算し、この乗算結果に検証範囲で指定された複数の比率をそれぞれ個別に乗算したものを乗算結果にそれぞれ加算することにより、当該仮定単位時間ごとに複数の仮定単位時間をそれぞれ生成するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明にかかる網品質管理閾値算出方法は、パケット網を介して送信端末と受信端末との間で行われる映像通信について、当該パケット網でのパケットジッタによる映像品質劣化の有無を判定するための指標として、当該パケット網を通過した当該映像通信用パケットの転送状況を示す計測値に対する網品質管理閾値を算出する網品質管理閾値算出装置で用いられる網品質管理閾値算出方法であって、パケット情報記憶部が、パケット網でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で行われた映像通信ごとに、当該パケット網から受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を記憶するパケット情報記憶ステップと、品質評価結果記憶部が、通信条件ごとに、受信端末で再生した映像の品質評価結果を記憶する品質評価結果記憶ステップと、定常値算出部が、条件別パケット情報のうち受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、予め設定されている定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出する定常値算出ステップとを備えている。
【0016】
これに加え、本発明にかかる網品質管理閾値算出方法は、仮定閾値生成部が、定常単位時間と定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する仮定閾値生成ステップと、評価正解率算出部が、仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する評価正解率算出ステップと、網品質管理閾値決定部が、各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定する網品質管理閾値決定ステップとを備えている。
【0017】
この際、定常値算出ステップで、定常受信パケット数を算出する際、コンテンツが異なる複数の映像通信ごとに、受信端末で定常単位時間当たりに受信するコンテンツ別定常受信パケット数を算出し、これらコンテンツ別定常受信パケット数の平均値を定常受信パケット数として算出するようにしてもよい。
【0018】
また、定常値算出ステップで、受信端末での1フレーム分のフレーム再生所要時間からなる定常単位時間を用いるようにしてもよい。
【0019】
また、仮定閾値生成ステップで、定常単位時間に対して検証範囲で指定された複数の整数をそれぞれ個別に乗算することにより、各仮定単位時間を生成するようにしてもよい。
【0020】
さらに、仮定閾値生成ステップで、各仮定単位時間に対応する仮定許容受信パケット数を算出する際、定常受信パケット数に対して当該仮定単位時間の算出に用いた整数を乗算し、この乗算結果に検証範囲で指定された複数の比率をそれぞれ個別に乗算したものを乗算結果にそれぞれ加算することにより、当該仮定単位時間ごとに複数の仮定単位時間をそれぞれ生成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、網品質管理閾値として、単位時間と許容受信パケット数とが用いられるため、実際の映像通信で転送される映像通信用パケットが、許容受信パケット数以内で転送されているか否かを検証することにより、当該映像通信について品質劣化が発生しているか否を判定していることになる。これにより、パケットが予定時刻より早く受信端末3に到着するバッファオーバーラン現象によるユーザ体感品質への影響を考慮した網品質管理閾値を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態にかかる網品質管理閾値装置の構成を示すブロック図である。
【図2】条件別パケット情報の構成例である。
【図3】端末情報の構成例である。
【図4】品質評価結果の構成例である。
【図5】本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での情報取得処理を示すフローチャートである。
【図6】定常値の構成例である。
【図7】本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での網品質管理閾値決定処理を示すフローチャートである。
【図8】仮定閾値の構成例である。
【図9】本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での評価正解率算出処理を示すフローチャートである。
【図10】評価正解率の算出結果例である。
【図11】評価正解率の算出結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
[網品質管理閾値算出装置]
まず、図1を参照して、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置について説明する。図1は、本実施の形態にかかる網品質管理閾値装置の構成を示すブロック図である。
【0024】
この網品質管理閾値算出装置10は、全体として、一般的なサーバ装置やワークステーションなどの情報処理通信端末からなり、予め試験的に行った映像通信で得られたパケット情報とそのときの受信端末3での映像品質評価とに基づいて、当該試験に用いたパケット網2に対する網品質管理閾値を算出する機能を有している。
【0025】
映像配信装置1は、全体として、一般的なサーバ装置やワークステーションなどの情報処理通信端末からなり、映像通信における送信端末として動作することにより、映像データをパケットで配信する機能を有している。
受信端末3は、テレビ受像器をデータ通信網に接続して各種通信サービスの利用を可能とするSTB(Set-Top-Box)などの通信端末からなり、インターネットなどからなるパケット網2を介して接続された映像配信装置1と映像通信を行うことによりパケットで映像データを受信し、テレビ受像器などからなる映像表示装置4で再生出力する機能を有している。
【0026】
網品質制御装置5は、入力されたパケットに対して任意のジッタ量を与えて出力する試験装置からなり、パケット網2と受信端末3との間の通信経上に設置されて、パケット網2から受信端末3へ転送される映像通信用パケットに、指定された通信条件に応じたジッタ量を与える機能を有している。
分岐器6は、タップ(Tap)やハブ(Hub)などの通信機器からなり、網品質制御装置5と受信端末3との間の通信経路上に設置されて、パケット網2から受信端末3へ転送される映像通信用パケットをキャプチャする機能を有している。
【0027】
本実施の形態では、網品質管理閾値として、受信端末3での1フレーム分のフレーム再生所要時間である単位時間と、当該単位時間における受信端末3での許容受信パケット数との組を用い、実際の映像通信で転送される映像通信用パケットが、許容受信パケット数以内で転送されているか否かを検証することにより、当該映像通信について品質劣化が発生しているか否を判定する。
これにより、パケットが予定時刻より早く受信端末3に到着するようなバッファオーバーラン現象によるユーザ体感品質への影響を考慮した網品質管理閾値を算出することができる。
【0028】
網品質管理閾値の算出方法としては、パケット網2でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で予め試験的に映像通信を実施し、これら映像送信ごとに、当該パケット網から受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を用意しておくとともに、これら通信条件における受信端末3で再生した映像の品質評価結果を用意しておく。
【0029】
そして、網品質管理閾値算出装置10において、受信端末3での1フレーム分のフレーム再生所要時間である単位時間と、当該単位時間における許容受信パケット数との組からなる網品質管理閾値を複数仮定して、これら仮定網品質管理閾値ごとに、各条件別パケット情報を検証することにより当該通信条件下での映像通信における品質劣化有無を評価し、これら仮定網品質管理閾値のうち各通信条件下での映像通信に関する受信端末3での実際の品質評価結果と最も近い評価が得られる仮定網品質管理閾値を、網品質管理閾値として決定する。
【0030】
[本実施の形態の構成]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、網品質管理閾値算出装置10には、主な機能部として、パケット情報取得部11、パケット情報記憶部12、端末情報取得部13、定常値算出部14、定常値記憶部15、品質評価結果取得部16、品質評価結果記憶部17、仮定閾値生成部20、評価正解率算出部21、網品質管理閾値決定部22、および画面表示部23が設けられている。
【0031】
パケット情報取得部11は、網品質制御装置5で発生させた、ジッタ量が異なる複数の通信条件下で、映像配信装置1と受信端末3との間で試験的に行われる映像通信について、分岐器6でキャプチャされた当該映像通信に関する映像通信用パケットに関する条件別パケット情報を取得する機能と、取得した条件別パケット情報をパケット情報記憶部12へ保存する機能とを有している。
【0032】
図2は、条件別パケット情報の構成例である。この条件別パケット情報には、少なくとも分岐器6を通過してパケット網2から受信端末3へ転送された各映像通信用パケットについて、当該パケットのパケット番号(シーケンス番号)との転送時刻が含まれている。
この際、網品質制御装置5によってジッタ量を変動させて、映像品質が劣化し始めるジッタ量を予め検出しておき、その前後のジッタ量をいくつか選択して、通信条件とすればよい。図2の例では、映像品質が劣化し始めるジッタ量が90msで、その前後の60msから120msまでを1ms刻みで通信条件としている。
【0033】
条件別パケット情報のパケット転送時刻については、計測を開始した最初の映像通信用パケットからの相対的な時刻情報で記述されているが、絶対的な時刻情報であってもよい。
また、このパケット転送時刻については、分岐器6でキャプチャされてパケット情報取得部11で受信した各映像通信用パケットの受信時刻を用いてもよく、分岐器6で計測した各映像通信用パケットの転送時刻をパケット情報取得部11が分岐器6から取得してもよい。
【0034】
条件別パケット情報として用いるパケット転送時刻については、受信端末3におけるパケット受信時刻を用いることにより、最も精度の高い網品質管理閾値を算出することができる。しかし、分岐器6から受信端末3までの通信経路で発生するジッタについては、パケット網2で発生するジッタと比較して無視できる程度であるため、分岐器6を設置する地点については、網品質制御装置5と受信端末3との間の通信経路上であれば、例えばパケット網2と受信端末3のアクセス回線との接続点に網品質制御装置5と隣接して設置しても、算出される網品質管理閾値に対する影響は無視できる程度である。
【0035】
網管理運用時に、網品質管理閾値を用いて、映像通信サービスが提供されているインサービス環境下でパケット網2を管理する場合、前出した試験的な映像通信と同様に分岐器6を設けて、実際の映像通信のパケットからパケット情報を取得する必要がある。したがって、分岐器6については、通信サービス提供者が管理しやすいパケット網2のエッジノードに設けるのが望ましく、条件別パケット情報を計測する際にも同様の位置に設けることにより、試験時と網管理運用時との誤差を抑制できる。
【0036】
また、分岐器6から網品質管理閾値算出装置10までの通信経路で発生するジッタについても同様であり、パケット転送時刻については、分岐器6で計測してもパケット情報取得部11で計測しても算出される網品質管理閾値に対する影響は無視できる程度である。
【0037】
端末情報取得部13は、受信端末3での映像通信に用いる各種端末情報を取得する機能を有している。
図3は、端末情報の構成例である。端末情報取得部13で取得する端末情報としては、図3に示すように、受信端末3で1秒当たりに再生するフレーム数を示す映像フレーム表示レートがある。
この映像フレーム表示レートについては、受信端末3で映像再生時に計測した値を利用してもよく、受信端末3の仕様として設定されている値を利用してもよい。
【0038】
端末情報を取得する方法としては、端末情報取得部13と受信端末3との間でのデータ通信や、端末情報が記録されている記録媒体から、端末情報取得部13が端末情報を取得するようにしてもよく、網品質管理閾値算出装置10に設けられているキーボードでオペレータが操作入力した端末情報を端末情報取得部13が取得してもよい。
【0039】
定常値算出部14は、端末情報取得部13で取得した映像フレーム表示レートから、受信端末3で1フレーム分の映像を再生するのに要するフレーム再生所要時間を定常単位時間として算出する機能と、パケット情報記憶部12に保存されている条件別パケット情報のうち、受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、定常単位時間当たりに受信端末3で受信する定常受信パケット数を算出する機能と、これら定常単位時間と定常受信パケット数とを定常値として定常値記憶部15へ保存する機能とを有している。
【0040】
品質評価結果取得部16は、パケット情報取得部11で取得した条件別パケット情報を得た際の試験的な映像通信について、その通信条件ごとに、受信端末3で再生した映像のユーザ体感品質を示す品質評価結果を取得する機能と、取得した品質評価結果を品質評価結果記憶部17へ保存する機能とを有している。
図4は、品質評価結果の構成例である。品質評価結果については、映像品質の劣化の有無を検知した情報であってもよく、5段階評価等で定量化された情報(例えば、ITU−T勧告P800で規定されているMOS:Mean Opinion Score)であってもよい。
【0041】
仮定閾値生成部20は、定常値記憶部15から読み出した定常単位時間および定常受信パケット数に基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する機能を有している。
【0042】
評価正解率算出部21は、仮定閾値生成部20で生成した仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、パケット情報記憶部12から読み出した各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価する機能と、これら推定評価を品質評価結果記憶部17から読み出した当該通信条件における品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する機能とを有している。
【0043】
この際、評価正解率算出部21は、これら仮定閾値ごとに得られた映像品質の劣化有無を、品質評価結果記憶部17から読み出した当該通信条件での品質評価結果と比較し、両方の評価とも劣化ありまたは劣化なしを示す場合、すなわち両者の評価が一致している場合、当該仮定閾値による推定評価を正解と判定する。また、両方の評価のうち一方が劣化ありで他方が劣化なしを示す場合、すなわち両者の評価が不一致の場合、当該仮定閾値による推定評価を正解と判定する。
この後、評価正解率算出部21は、正解数を条件別パケット情報の数で除算することにより、仮定閾値数ごとの正解率を算出する。
【0044】
網品質管理閾値決定部22は、評価正解率算出部21で得られた仮定閾値数ごとの正解率を比較し、最も正解率の高い仮定閾値数の仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、網品質管理閾値を示す単位時間および許容受信パケット数として決定する機能と、これら単位時間および許容受信パケット数を画面表示部23で画面表示する機能とを有している。
【0045】
網品質管理閾値算出装置10には、通常の情報処理装置に設けられている一般的な構成として、画面表示部23のほか、演算処理部、記憶部、データ通信インターフェース部、データ入所津力インターフェース部、操作入力部などの機能部が設けられており、前述した各機能部がこれらを利用して処理動作を行う。
【0046】
前述した網品質管理閾値算出装置10の各機能部のうち、パケット情報取得部11、端末情報取得部13、定常値算出部14、品質評価結果取得部16、仮定閾値生成部20、評価正解率算出部21、網品質管理閾値決定部22については、演算処理部で実現すればよい。
この演算処理部は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部に予め格納されているプログラムを読み出して実行することにより、各種機能部を実現する。
【0047】
また、網品質管理閾値算出装置10の各機能部のうち、パケット情報記憶部12、定常値記憶部15、品質評価結果記憶部17については、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置で実現すればよい。これら記憶部は、それぞれ別個の記憶装置で実現してもよく、いずれか複数あるいはすべての記憶部を1つの記憶装置で実現してもよい。
【0048】
[本実施の形態の動作]
次に、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置10の動作について説明する。
網品質管理閾値算出装置10における主な処理動作として、情報取得処理、網品質管理閾値決定処理、および評価正解率算出処理がある。
【0049】
[情報取得処理]
まず、図5を参照して、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置10での情報取得処理について説明する。図5は、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での情報取得処理を示すフローチャートである。
【0050】
この情報取得処理は、ジッタ量が異なる複数の通信条件下で、映像配信装置1と受信端末3との間で試験的に映像通信を行う際に実行される。この際、網品質制御装置5によってジッタ量を変動させて、映像品質が劣化し始めるジッタ量を予め検出しておき、その前後のジッタ量をいくつか選択して、通信条件とすればよい。
【0051】
図5の情報取得処理において、網品質管理閾値算出装置10は、まず、パケット情報取得部11により、ジッタ量が異なる複数の通信条件下で、映像配信装置1と受信端末3との間で試験的に行われる映像通信について、分岐器6でキャプチャされた当該映像通信に関する映像通信用パケットに関する条件別パケット情報を取得し、取得した条件別パケット情報をパケット情報記憶部12へ保存する(ステップ100)。
【0052】
次に、網品質管理閾値算出装置10は、品質評価結果取得部16により、パケット情報取得部11で取得した条件別パケット情報を得た際の試験的な映像通信について、その通信条件ごとに、受信端末3で再生した映像の品質評価結果を取得し、取得した品質評価結果を品質評価結果記憶部17へ保存する(ステップ101)。
【0053】
また、網品質管理閾値算出装置10は、端末情報取得部13により、受信端末3での映像通信に用いる各種端末情報を取得する(ステップ102)。
続いて、網品質管理閾値算出装置10は、定常値算出部14により、受信端末3での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常単位時間と定常受信パケット数とを定常値として算出し、定常値記憶部15へ保存する(ステップ103)。
【0054】
この際、定常値算出部14は、端末情報取得部13で取得した映像フレーム表示レートから、受信端末3で1フレーム分の映像を再生するのに要するフレーム再生所要時間を定常単位時間として算出する。また、パケット情報記憶部12に保存されている条件別パケット情報のうち、受信端末3での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、定常単位時間当たりに受信端末3で受信する定常受信パケット数を算出する。
【0055】
図6は、定常値の構成例である。定常値のうち定常単位時間については、端末情報取得部13で取得した映像フレーム表示レートの逆数で算出できる。定常受信パケット数については、定常パケット情報に含まれる各パケットのうち、最初のパケットの転送時刻から定常単位時間長の時間区間を順に設け、これら時間区間ごとに、転送時刻が当該時間区間に含まれるパケットの数を計数し、各時間区間におけるパケット数を平均することにより、定常受信パケット数を算出すればよい。
これにより、網品質管理閾値算出装置10は、一連の情報取得処理を終了する
【0056】
[網品質管理閾値決定処理]
次に、図7を参照して、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置10での網品質管理閾値決定処理について説明する。図7は、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での網品質管理閾値決定処理を示すフローチャートである。
【0057】
図7の網品質管理閾値決定処理において、網品質管理閾値算出装置10は、まず、仮定閾値生成部20により、定常値記憶部15から読み出した定常単位時間および定常受信パケット数に基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する(ステップ110)。
【0058】
図8は、仮定閾値の構成例である。ここでは、仮定単位時間として、その検証範囲を定常単位時間の9倍までとして、定常単位時間×n(nは1〜9の整数)で求められる9種類の値を用いている。また仮定許容受信パケット数については、その検証範囲を定常受信パケット数の80%増しから5%刻みで100%増しまでとし、定常単位時間×(n+x)(xは80%,85%,90%,95%,100%のいずれか)で求められる5種類の値を用いている。これにより、仮定閾値の45(=9×5)通りとなる。
【0059】
次に、網品質管理閾値算出装置10は、評価正解率算出部21により、仮定閾値生成部20で生成した仮定閾値ごとに、後述するステップ112,113を繰り返し実行する仮定閾値ループを開始する(ステップ111)。
この仮定閾値ループにおいて、評価正解率算出部21は、まず、仮定閾値ループの先頭で選択された仮定閾値を仮定閾値生成部20から取得し(ステップ112)、この仮定閾値に基づいて評価正解率を算出するため、後述する評価正解列処理を実行する(ステップ113)。
【0060】
このようにして、仮定閾値生成部20で生成したすべての仮定閾値について、評価正解率算出部21により評価正解率を算出した後、網品質管理閾値算出装置10は、網品質管理閾値決定部22により、これら仮定閾値数の正解率を比較する(ステップ114)。
そして、網品質管理閾値決定部22は、最も正解率の高い仮定閾値数の仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、網品質管理閾値を示す単位時間および許容受信パケット数として決定する(ステップ115)。
【0061】
この後、網品質管理閾値決定部22は、これら単位時間および許容受信パケット数を画面表示部23で画面表示し(ステップ116)、一連の網品質管理閾値決定処理を終了する。
【0062】
[評価正解率算出処理]
次に、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置10での評価正解率算出処理について説明する。図9は、本実施の形態にかかる網品質管理閾値算出装置での評価正解率算出処理を示すフローチャートである。
【0063】
図9の評価正解率算出処理において、網品質管理閾値算出装置10は、まず、評価正解率算出部21により、通信条件ごとに、後述するステップ121〜128を繰り返し実行する通信条件ループを実行する(ステップ120)。
【0064】
この仮定閾値ループにおいて、評価正解率算出部21は、まず、通信条件ループの先頭で選択された通信条件と対応する条件別パケット情報を、パケット情報記憶部12から読み出し(ステップ121)、当該評価正解率算出処理の起動時に選択されている仮想単位時間ごとにパケット数を計数する(ステップ122)。
【0065】
この際、評価正解率算出部21は、当該条件別パケット情報に記述されている先頭パケットから仮想単位時間ごとに順に時間区間を設定し、これら時間区間ごとに当該時間区間内に転送されたパケット数を計数してもよい。また、当該条件別パケット情報に記述されているパケットごとに、当該パケットの転送時間を開始時間として時間区間をそれぞれ設定してもよい。
【0066】
この後、評価正解率算出部21は、これら時間区間のうち、計数したパケットが、当該評価正解率算出処理の起動時に選択されている仮定許容受信パケット数を越える時間区間が存在するか検証する(ステップ123)。
【0067】
検証の結果、仮定許容受信パケット数を越える時間区間が存在する場合(ステップ123:YES)、評価正解率算出部21は、映像品質の劣化ありと推定評価し(ステップ124)、仮定許容受信パケット数を越える時間区間が存在しない場合(ステップ123:NO)、評価正解率算出部21は、映像品質の劣化なしと推定評価する(ステップ125)。
【0068】
このようにして、映像品質の劣化有無を推定した後、評価正解率算出部21は、ループ処理で選択された通信条件と対応する品質評価結果を、品質評価結果記憶部17から読み出し(ステップ126)、この品質評価結果と推定評価結果とを比較する(ステップ127)。
ここで、両方の評価結果がともに劣化ありまたは劣化なしを示しており、両者の評価結果が一致している場合(ステップ127:YES)、評価正解率算出部21は、当該仮定閾値による推定評価が正解であることから、当該評価正解率算出処理の起動時に選択されている仮想閾値に関する推定評価の正解数を1だけ計数する(ステップ128)。
【0069】
一方、両方の評価のうち一方が劣化ありで他方が劣化なしを示しており、両者の評価結果が不一致の場合(ステップ127:NO)、評価正解率算出部21は、当該仮定閾値による推定評価が不正解であることから、正解数は計数しない。
【0070】
このようにして、推定評価の正解/不正解に応じて正解数の計数処理を行った後、評価正解率算出部21は、ステップ120で選択した通信条件に関するループ処理を終了し、ステップ120へ戻って、次の通信条件に関するループ処理へ移行する。
また、すべての通信条件に関するループ処理が終了した場合、評価正解率算出部21は、一連の評価正解率算出処理を終了する。
【0071】
図10は、評価正解率の算出結果例である。図11は、評価正解率の算出結果を示すグラフである。ここでは、仮定単位時間が33msで仮定許容受信パケット率が85%の場合、評価正解率が100%で最も大きい。したがって、この例では、網品質管理閾値として、単位時間=33ms、仮定許容受信パケット数=94個が選択される。
【0072】
[本実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、定常値算出部14により、条件別パケット情報のうち受信端末3での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、受信端末での1フレーム分のフレーム再生所要時間である定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出し、仮定閾値生成部20により、定常単位時間と定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成しておく。
【0073】
そして、評価正解率算出部21により、仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出し、網品質管理閾値決定部22により、各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定している。
【0074】
したがって、網品質管理閾値として、単位時間と許容受信パケット数とが用いられるため、実際の映像通信で転送される映像通信用パケットが、許容受信パケット数以内で転送されているか否かを検証することにより、当該映像通信について品質劣化が発生しているか否を判定していることになる。
これにより、パケットが予定時刻より早く受信端末3に到着するようなバッファオーバーラン現象によるユーザ体感品質への影響を考慮した網品質管理閾値を算出することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、定常値算出部14により、コンテンツが異なる複数の映像通信ごとに、受信端末3で定常単位時間当たりに受信するコンテンツ別定常受信パケット数を算出し、これらコンテンツ別定常受信パケット数の平均値を定常受信パケット数として算出してもよく、コンテンツに対する依存性が排除された網品質管理閾値を算出することができる。
【0076】
また、本実施の形態では、定常値算出部14において、受信端末3での1フレーム分のフレーム再生所要時間からなる定常単位時間を用いるようにしたので、各フレームとパケット転送状況を検証する際のパケット区切りとをほぼ同期させることができる。
したがって、評価正解率算出部21において、受信端末3での映像品質評価との同等の条件で、映像品質劣化の有無を推定評価することができ、網品質管理閾値の算出精度を高めることができる。
【0077】
また、本実施の形態では、仮定閾値生成部20により、定常単位時間に対して検証範囲で指定された複数の整数をそれぞれ個別に乗算することにより、各仮定単位時間を生成し、さらには、各仮定単位時間に対応する仮定許容受信パケット数を算出する際、定常受信パケット数に対して当該仮定単位時間の算出に用いた整数を乗算し、この乗算結果に検証範囲で指定された複数の比率をそれぞれ個別に乗算したものを乗算結果にそれぞれ加算することにより、当該仮定単位時間ごとに複数の仮定単位時間をそれぞれ生成するようにしたので、各フレームとパケット転送状況を検証する際のパケット区切りとをほぼ同期させることができる。
したがって、評価正解率算出部21において、受信端末3での映像品質評価との同等の条件で、映像品質劣化の有無を推定評価することができ、網品質管理閾値の算出精度を高めることができる。
【0078】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0079】
また、以上では、定常値算出部14で定常受信パケット数を算出する場合、条件別パケット情報を計測する対象となる映像通信から、定常受信パケット数を算出する場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。
【0080】
例えば、コンテンツが異なる複数の映像通信ごとに、受信端末3で定常単位時間当たりに受信するコンテンツ別定常受信パケット数を算出し、これらコンテンツ別定常受信パケット数の平均値を定常受信パケット数として算出してもよく、コンテンツに対する依存性が排除された網品質管理閾値を算出することができる。
【0081】
また、提供サービスによっては、当該サービスポリシに基づいて、平均値に代えて、各コンテンツ別定常受信パケット数のうちの最低値を定常受信パケット数として選択してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…映像配信装置(送信端末)、2…パケット網、3…受信端末、4…映像表示装置、5…網品質制御装置、6…分岐器、10…網品質管理閾値算出装置、11…パケット情報取得部、12…パケット情報記憶部、13…端末情報取得部、14…定常値算出部、15…定常値記憶部、16…品質評価結果取得部、17…品質評価結果記憶部、20…仮定閾値生成部、21…評価正解率算出部、22…網品質管理閾値決定部、23…画面表示部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケット網を介して送信端末と受信端末との間で行われる映像通信について、当該パケット網でのパケットジッタによる映像品質劣化の有無を判定するための指標として、当該パケット網を通過した当該映像通信用パケットの転送状況を示す計測値に対する網品質管理閾値を算出する網品質管理閾値算出装置であって、
前記パケット網でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で行われた前記映像通信ごとに、当該パケット網から前記受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を記憶するパケット情報記憶部と、
前記通信条件ごとに、前記受信端末で再生した映像の品質評価結果を記憶する品質評価結果記憶部と、
前記条件別パケット情報のうち前記受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、予め設定されている定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出する定常値算出部と、
前記定常単位時間と前記定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する仮定閾値生成部と、
前記仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、前記各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における前記品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する評価正解率算出部と、
前記各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定する網品質管理閾値決定部と
を備えることを特徴とする網品質管理閾値算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の網品質管理閾値算出装置において、
定常値算出部は、前記定常受信パケット数を算出する際、コンテンツが異なる複数の映像通信ごとに、前記受信端末で前記定常単位時間当たりに受信するコンテンツ別定常受信パケット数を算出し、これらコンテンツ別定常受信パケット数の平均値を前記定常受信パケット数として算出することを特徴とする網品質管理閾値算出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の網品質管理閾値算出装置において、
前記定常値算出部は、前記受信端末での1フレーム分のフレーム再生所要時間からなる前記定常単位時間を用いることを特徴とする網品質管理閾値算出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の網品質管理閾値算出装置において、
前記仮定閾値生成部は、前記定常単位時間に対して前記検証範囲で指定された複数の整数をそれぞれ個別に乗算することにより、前記各仮定単位時間を生成することを特徴とする網品質管理閾値算出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の網品質管理閾値算出装置において、
前記仮定閾値生成部は、前記各仮定単位時間に対応する前記仮定許容受信パケット数を算出する際、前記定常受信パケット数に対して当該仮定単位時間の算出に用いた前記整数を乗算し、この乗算結果に前記検証範囲で指定された複数の比率をそれぞれ個別に乗算したものを前記乗算結果にそれぞれ加算することにより、当該仮定単位時間ごとに複数の前記仮定単位時間をそれぞれ生成することを特徴とする網品質管理閾値算出装置。
【請求項6】
パケット網を介して送信端末と受信端末との間で行われる映像通信について、当該パケット網でのパケットジッタによる映像品質劣化の有無を判定するための指標として、当該パケット網を通過した当該映像通信用パケットの転送状況を示す計測値に対する網品質管理閾値を算出する網品質管理閾値算出装置で用いられる網品質管理閾値算出方法であって、
パケット情報記憶部が、前記パケット網でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で行われた前記映像通信ごとに、当該パケット網から前記受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を記憶するパケット情報記憶ステップと、
品質評価結果記憶部が、前記通信条件ごとに、前記受信端末で再生した映像の品質評価結果を記憶する品質評価結果記憶ステップと、
定常値算出部が、前記条件別パケット情報のうち前記受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、予め設定されている定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出する定常値算出ステップと、
仮定閾値生成部が、前記定常単位時間と前記定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する仮定閾値生成ステップと、
評価正解率算出部が、前記仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、前記各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における前記品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する評価正解率算出ステップと、
網品質管理閾値決定部が、前記各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定する網品質管理閾値決定ステップと
を備えることを特徴とする網品質管理閾値算出方法。
【請求項7】
請求項6に記載の網品質管理閾値算出方法において、
定常値算出ステップは、前記定常受信パケット数を算出する際、コンテンツが異なる複数の映像通信ごとに、前記受信端末で前記定常単位時間当たりに受信するコンテンツ別定常受信パケット数を算出し、これらコンテンツ別定常受信パケット数の平均値を前記定常受信パケット数として算出することを特徴とする網品質管理閾値算出方法。
【請求項8】
請求項6に記載の網品質管理閾値算出方法において、
前記定常値算出ステップは、前記受信端末での1フレーム分のフレーム再生所要時間からなる前記定常単位時間を用いることを特徴とする網品質管理閾値算出方法。
【請求項9】
請求項6に記載の網品質管理閾値算出方法において、
前記仮定閾値生成ステップは、前記定常単位時間に対して前記検証範囲で指定された複数の整数をそれぞれ個別に乗算することにより、前記各仮定単位時間を生成することを特徴とする網品質管理閾値算出方法。
【請求項10】
請求項9に記載の網品質管理閾値算出方法において、
前記仮定閾値生成ステップは、前記各仮定単位時間に対応する前記仮定許容受信パケット数を算出する際、前記定常受信パケット数に対して当該仮定単位時間の算出に用いた前記整数を乗算し、この乗算結果に前記検証範囲で指定された複数の比率をそれぞれ個別に乗算したものを前記乗算結果にそれぞれ加算することにより、当該仮定単位時間ごとに複数の前記仮定単位時間をそれぞれ生成することを特徴とする網品質管理閾値算出方法。
【請求項1】
パケット網を介して送信端末と受信端末との間で行われる映像通信について、当該パケット網でのパケットジッタによる映像品質劣化の有無を判定するための指標として、当該パケット網を通過した当該映像通信用パケットの転送状況を示す計測値に対する網品質管理閾値を算出する網品質管理閾値算出装置であって、
前記パケット網でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で行われた前記映像通信ごとに、当該パケット網から前記受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を記憶するパケット情報記憶部と、
前記通信条件ごとに、前記受信端末で再生した映像の品質評価結果を記憶する品質評価結果記憶部と、
前記条件別パケット情報のうち前記受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、予め設定されている定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出する定常値算出部と、
前記定常単位時間と前記定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する仮定閾値生成部と、
前記仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、前記各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における前記品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する評価正解率算出部と、
前記各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定する網品質管理閾値決定部と
を備えることを特徴とする網品質管理閾値算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の網品質管理閾値算出装置において、
定常値算出部は、前記定常受信パケット数を算出する際、コンテンツが異なる複数の映像通信ごとに、前記受信端末で前記定常単位時間当たりに受信するコンテンツ別定常受信パケット数を算出し、これらコンテンツ別定常受信パケット数の平均値を前記定常受信パケット数として算出することを特徴とする網品質管理閾値算出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の網品質管理閾値算出装置において、
前記定常値算出部は、前記受信端末での1フレーム分のフレーム再生所要時間からなる前記定常単位時間を用いることを特徴とする網品質管理閾値算出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の網品質管理閾値算出装置において、
前記仮定閾値生成部は、前記定常単位時間に対して前記検証範囲で指定された複数の整数をそれぞれ個別に乗算することにより、前記各仮定単位時間を生成することを特徴とする網品質管理閾値算出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の網品質管理閾値算出装置において、
前記仮定閾値生成部は、前記各仮定単位時間に対応する前記仮定許容受信パケット数を算出する際、前記定常受信パケット数に対して当該仮定単位時間の算出に用いた前記整数を乗算し、この乗算結果に前記検証範囲で指定された複数の比率をそれぞれ個別に乗算したものを前記乗算結果にそれぞれ加算することにより、当該仮定単位時間ごとに複数の前記仮定単位時間をそれぞれ生成することを特徴とする網品質管理閾値算出装置。
【請求項6】
パケット網を介して送信端末と受信端末との間で行われる映像通信について、当該パケット網でのパケットジッタによる映像品質劣化の有無を判定するための指標として、当該パケット網を通過した当該映像通信用パケットの転送状況を示す計測値に対する網品質管理閾値を算出する網品質管理閾値算出装置で用いられる網品質管理閾値算出方法であって、
パケット情報記憶部が、前記パケット網でのジッタ量が異なる複数の通信条件の下で行われた前記映像通信ごとに、当該パケット網から前記受信端末へ転送した各映像通信用パケットについて計測したパケット転送時刻を示す条件別パケット情報を記憶するパケット情報記憶ステップと、
品質評価結果記憶部が、前記通信条件ごとに、前記受信端末で再生した映像の品質評価結果を記憶する品質評価結果記憶ステップと、
定常値算出部が、前記条件別パケット情報のうち前記受信端末での映像品質が劣化していない定常映像通信時における定常パケット情報に基づいて、予め設定されている定常単位時間当たりに受信する定常受信パケット数を算出する定常値算出ステップと、
仮定閾値生成部が、前記定常単位時間と前記定常受信パケット数とに基づいて、予め定めた検証範囲内から仮定単位時間と仮定許容受信パケット数との組を仮定閾値として複数生成する仮定閾値生成ステップと、
評価正解率算出部が、前記仮定閾値ごとに、当該仮定単位時間および仮定許容受信パケット数に基づいて、前記各条件別パケット情報に含まれるパケット転送状況を検証することにより、当該通信条件下での映像品質劣化の有無を推定評価し、当該推定評価を当該通信条件における前記品質評価結果と比較することにより、当該仮定閾値に関する評価正解率を算出する評価正解率算出ステップと、
網品質管理閾値決定部が、前記各仮定閾値の評価正解率のうち、最も正解率の高い仮定閾値に関する仮定単位時間と仮定許容受信パケット数を、当該網に関する網品質管理閾値として決定する網品質管理閾値決定ステップと
を備えることを特徴とする網品質管理閾値算出方法。
【請求項7】
請求項6に記載の網品質管理閾値算出方法において、
定常値算出ステップは、前記定常受信パケット数を算出する際、コンテンツが異なる複数の映像通信ごとに、前記受信端末で前記定常単位時間当たりに受信するコンテンツ別定常受信パケット数を算出し、これらコンテンツ別定常受信パケット数の平均値を前記定常受信パケット数として算出することを特徴とする網品質管理閾値算出方法。
【請求項8】
請求項6に記載の網品質管理閾値算出方法において、
前記定常値算出ステップは、前記受信端末での1フレーム分のフレーム再生所要時間からなる前記定常単位時間を用いることを特徴とする網品質管理閾値算出方法。
【請求項9】
請求項6に記載の網品質管理閾値算出方法において、
前記仮定閾値生成ステップは、前記定常単位時間に対して前記検証範囲で指定された複数の整数をそれぞれ個別に乗算することにより、前記各仮定単位時間を生成することを特徴とする網品質管理閾値算出方法。
【請求項10】
請求項9に記載の網品質管理閾値算出方法において、
前記仮定閾値生成ステップは、前記各仮定単位時間に対応する前記仮定許容受信パケット数を算出する際、前記定常受信パケット数に対して当該仮定単位時間の算出に用いた前記整数を乗算し、この乗算結果に前記検証範囲で指定された複数の比率をそれぞれ個別に乗算したものを前記乗算結果にそれぞれ加算することにより、当該仮定単位時間ごとに複数の前記仮定単位時間をそれぞれ生成することを特徴とする網品質管理閾値算出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−10236(P2011−10236A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154220(P2009−154220)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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