説明

綿棒用の軸、綿棒、袋入り綿棒および綿棒の製造方法

【課題】折損してしまっても、折損部が分離することがない綿棒用の軸、綿棒、袋入り綿棒および綿棒の製造を提供すること。
【解決手段】軸10の先端に繊維質の素材で形成された膨らみ部20を有する綿棒1に用いられる軸10であって、軸10のほぼ全長に伸びる糸14と、糸14を内包する紙製の棒12とを備える綿棒用の軸10。軸10と、綿棒用の軸10の先端に形成された、繊維質の素材の膨らみ部20とを備える綿棒1。綿棒1と、綿棒1を封入する紙袋とを備える袋入り綿棒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として医療用に用いられる綿棒の軸、綿棒、袋入り綿棒および綿棒の製造方法に関し、特に、軸が折損しても分離することのない綿棒用の軸、および該軸を有する綿棒、袋入り綿棒および綿棒の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医療用検査技術の向上に伴い、インフルエンザなどの検査も容易に行えるようになってきた。インフルエンザの検査では、被験者の鼻腔奥深くに綿棒を挿入し、検体を綿棒に付着させて採取し、検査に供している。従来、医療用の綿棒は、金属製の軸の先端に、使用の都度、綿球を取り付けていたが、衛生面、医療現場での省力化などの観点より、使い捨ての綿棒が普及している。使い捨ての綿棒としては、廃棄しやすいことなどの要求から、紙を撚って、澱粉などの高分子物質で固めて剛性を高めた紙製軸を有する綿棒を、EOG(エチレン・オキサイド・ガス)で滅菌処理して用いるのが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
EOGでの滅菌処理では、軸を乾燥させることになるので、保管場所の状況等により軸が過度に乾燥している場合に、何らかの原因で曲げられると、澱粉などの高分子物質で固めた紙製綿棒では、軸が折損してしまう危険がある。検体を採取するために綿棒を鼻腔に挿入中に、綿棒の軸が折損してしまうと、綿棒の先端部分が鼻腔内に残ってしまい、その折損部が例えば気道に移動してしまうなど、大きな問題を誘起する危険性がある。そこで、本発明は、折損してしまっても、折損部が分離することがない綿棒用の軸、綿棒、袋入り綿棒および綿棒の製造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る綿棒用の軸は、例えば図1に示すように、軸10の先端に繊維質の素材で形成された膨らみ部20を有する綿棒1に用いられる軸10であって;軸10のほぼ全長に伸びる糸14と;糸14を内包する紙製の棒12とを備える。
【0005】
このように構成すると、綿棒の軸が折損してしまっても、糸でつながれているので、折損部が分離することがない。
【0006】
また、請求項2に記載の発明に係る綿棒用の軸は、請求項1に記載の綿棒用の軸10において、紙製の棒12が、紙とは別の高分子物質を含む。
【0007】
このように構成すると、紙とは別の高分子物質により、紙が硬化され、剛性が高くなり、使いやすくなる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明に係る綿棒用の軸は、請求項1または請求項2に記載の綿棒用の軸10において、糸14が、天然繊維、半合成繊維および合成繊維のうち、少なくとも一つの素材を含んでいる。
【0009】
このように構成すると、糸が柔軟性を保ち、軸が折損しても、糸が切断されてしまうことがない。また、糸と紙製の棒とが、摩擦により結合されるので、軸の折損後に、糸が紙製の棒から抜けてしまうことがない。
【0010】
前記の目的を達成するため、請求項4に記載の発明に係る綿棒は、例えば図1に示すように、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の綿棒用の軸10と;綿棒用の軸10の先端に形成された、繊維質の素材の膨らみ部20とを備える。
【0011】
このように構成すると、綿棒の軸が折損してしまっても、糸でつながれているので、折損部が分離することがない綿棒となる。
【0012】
前記の目的を達成するため、請求項5に記載の発明に係る袋入り綿棒は、例えば図2に示すように、請求項4に記載の綿棒1と;綿棒1を封入する袋30とを備える。
【0013】
このように構成すると、綿棒が袋に封入されるので、衛生的で、かつ、乾燥しにくく軸が折損しにくい綿棒であって、さらに、綿棒の軸が折損してしまっても、糸でつながれているので、折損部が分離することがない、袋入り綿棒となる。
【0014】
さらに、請求項6に記載の発明に係る綿棒の製造方法は、例えば図3に示すように、細長く形成した紙52と、該細長く形成した紙52の長手方向に重ねた糸54とを用い、糸54が重ねられた紙52を、短手方向に曲げて、高分子物質を含む水溶液Sをかけながら棒状に成形し、形成した軸10の先端に繊維質の素材56で膨らみ部20を形成する工程(St1〜6)と;膨らみ部20が形成された軸10を滅菌する工程(St7)とを備える。
【0015】
このように構成すると、細長く形成した紙の長手方向に糸を重ねて、短手方向に曲げて棒状に成形し、軸を形成するので、糸が中に内包された軸となり、軸が折損してしまっても、糸でつながれているので、折損部が分離することがない綿棒の製造方法となる。また、高分子物質を含む水溶液をかけながら棒状に成形し、軸を形成するので、剛性の高い軸を有する綿棒の製造方法となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の綿棒用の軸は、軸の先端に繊維質の素材で形成された膨らみ部を有する綿棒に用いられる軸であって、軸のほぼ全長に伸びる糸と、糸を内包する紙製の棒とを備え、軸が折損してしまっても、糸でつながれているので、折損部が分離することがない。また、本発明の綿棒は、該軸と繊維質の素材の膨らみ部とを備え、綿棒の軸が折損してしまっても、糸でつながれているので、折損部が分離することがない綿棒となり、安全性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一または相当する構造には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0018】
図1に、本発明の実施の形態である、綿棒1の断面図を示す。綿棒1は、紙製の棒12と、紙製の棒12に内包された糸14とで形成される軸10と、軸10の一端に繊維質の素材で形成された膨らみ部20とを備えている。膨らみ部20は、軸10の両端に形成されてもよい。
【0019】
膨らみ部20は、例えばレーヨンなどの繊維質で形成され、綿球とも呼ばれるものである。綿棒1をインフルエンザの検査に用いるときなどは、膨らみ部20を鼻腔奥深くに挿入し、膨らみ部20に検体を付着させて、採取し、検査に供する。そのため、検体が付着し易いように、繊維質で形成されている。検体を採取するため、また、人体内に挿入するために、衛生的でなければならず、後述するように、滅菌処理されている。
【0020】
軸10は、人体内に挿入させるため、膨らみ部20を保持する。軸10は、紙製の棒12と棒12に内包された糸14とを備えている。棒12は、細長い紙を例えば撚ることにより棒状に形成されており、典型的には高分子物質としての澱粉で固められ、撚りが戻ることがない。棒12は、紙を撚って、澱粉で固められることにより、膨らみ部20を所望の位置に導くために要求される、容易に変形しない剛性を有している。また、紙で形成されているので、軸10が、すなわち棒12が折損したときにも、折損面が鋭利にならず、人体を傷付けることがない。棒12を固めるのに用いられるのは、澱粉には限られず、ゼラチンなどの天然高分子物質、あるいは、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの合成高分子化合物を含む高分子物質が用いられる。特に、棒12も人体内に挿入されるので、人体に毒性のない高分子物質が用いられ、また、検査等に影響を与えない高分子物質が用いられる。また、棒12を高分子物質で固めることにより、棒12の、すなわち軸10の表面が滑らかになり、人体にとってより安全性が高くなる。高分子物質を天然高分子物質とすれば、環境に優しく、廃棄し易い。なお、棒12の素材としての紙は、洋紙でも、和紙でもよく、加工紙でも、合成紙でもよく、他の紙でもよい。
【0021】
棒12には、糸14が内包されている。糸14は、例えば、絹糸、綿糸などセルロースを有する天然繊維であってもよいし、アセテート、トリアセテートなどの半合成繊維であってもよいし、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、レーヨンなどの合成繊維であってもよく、これらを複合した繊維であってもよい。天然繊維、例えば木綿であれば、環境に優しく、廃棄し易い。糸14は、好ましくは棒12との摩擦係数が大きく、棒12と摩擦により固着されると、棒12と糸14とを固着させるための手段が不要になるので好ましい。または、棒12を固めるのために用いる、前述の澱粉などの高分子物質により、糸14が棒12に接着されてもよい。あるいは、糸14と棒12とを接着するための接着剤を使用してもよいが、接着剤も人体にとって無毒であり、かつ、検査等に影響を与えないものであることが好ましい。あるいは、糸14に、棒12から抜けてしまうことを防止するために、例えば結び目などの抜け防止手段を設けてもよい。
【0022】
糸14は、棒12のほぼ全長に伸びている。ここで、「軸のほぼ全長に伸びている」とは、糸14が棒12の全長に渡されていてもよいし、棒12の端部近くには渡されていなくともよい。人体内に挿入される膨らみ部20側においては、先端近傍まで糸14が渡されるのが好ましいが、例えば膨らみ部20が形成されている部分には糸14が渡されていなくてもよく、あるいは、さらに短くてもよい。一方、膨らみ部20とは反対側においては、さらに糸14が渡される範囲が短くてもよい。例えば端から1/2の範囲に糸14が渡されていなくてもよい。すなわち、棒12の折損し易い部分、あるいは、体内に挿入される範囲の棒12に、最低限、糸14が渡されていればよい。このような糸14の渡し方も「軸ほぼ全長に伸びている」の範囲内とする。棒12に糸14が渡されていることにより、棒12が折損しても、糸14によりつながれているので、折損部が分離し、体内に残ってしまうことがない。なお、折損部とは、折損した箇所より先端(膨らみ部20)側の通常小さな部分を指し、残りの部分を本体部と呼ぶことにする。ただし、糸14が渡される長さを長くしたほうが、糸14と棒12との付着力が大きくなり、糸14が棒12から抜け出てしまうことが防止されるので、好ましい。
【0023】
糸14は、1本の糸が棒12内でほぼ全長に渡されるのが好ましいが、例えば2本の糸14が重なりをもってほぼ全長に渡されていてもよい。この場合にも、糸14が棒12に付着しているので、棒12が折損しても、折損部が分離することはない。2本ではなく、さらに多数の糸14が重なりをもって略全長に渡されてもよい。このように複数の糸14により糸14が軸10のほぼ全長にわたされていても、「軸のほぼ全長に伸びる糸」とする。なお、ここでは、棒12を形成する紙に含まれている繊維については、糸14と区別する。すなわち、紙の繊維では、紙を固める澱粉などの高分子物質により棒12と一緒に硬化してしまい、棒12が折損してしまうときに、一緒に切断されてしまうため、本発明の効果が得られないからである。糸14は、棒12に内包されても、柔軟性を有する糸である。糸14というとき、必ずしも撚った糸でなくてもよく、紙製の棒12より柔軟性があり、紙製の棒12が折れても切断されないものであればよい。例えば、細いテープ状のものであってもよい。
【0024】
糸14は、棒12に内包されている。図1では、棒12のほぼ中心を貫通しているが、糸14は必ずしも棒12の中心に配置されていなくてもよい。糸14が長い範囲において、棒12の外側に露出すると、その部分がたわんで作業(例えば、鼻腔への挿入)の障害になることもあり、あるいは、棒12との付着力が弱くなることもあり、好ましくはないが、部分的に外側に露出しても問題はない。すなわち、棒12が折損したときに、折損部が分離しないように糸14が折損部と本体部とに付着するだけ棒12の中に埋められていればよい。多少、糸14が棒12の外側に露出している場合にも、棒12は「糸14を内包する」ものとする。
【0025】
綿棒1は、人体内に挿入され、あるいは、検査の用に供されるため、通常、滅菌の上、使用される。滅菌は、たとえば、EOG雰囲気中で滅菌する。滅菌により、棒12の水分濃度が低下し、例えば、綿棒1の製造時で20%程度であった水分量が、滅菌後は8%程度まで低下する。水分濃度が低下すると、棒12の柔軟性が低下し、折損しやすくなる。
【0026】
図2に示すように、滅菌した後、綿棒1は袋30に封入される。図2は、袋入り綿棒2を半透視で示す全体図であり、袋30に封入された綿棒1を破線で示している。滅菌した綿棒1が汚染されることを防ぐために、袋30はセロハン、パラフィン紙などの紙、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの合成フィルム等の防菌性(ここでは、菌を通過させないことをいう。)を有する素材で形成するのがよい。袋を紙などの可燃物で形成すると、廃棄が容易となり好ましい。また、紙などの破り易い素材で形成すると、綿棒1を取り出しやすくなり、好適である。なお、図2に示すように、綿棒1の膨らみ部20と反対側の袋の側部に切り込み32を形成すると、破り易くなる。膨らみ部20と反対側で袋30を破ることにより、膨らみ部20に手を触れることなく綿棒1を取り出すことができ、手の雑菌が付着することがなく、衛生的であり、かつ、検査に用いる際にも好適である。
【0027】
防菌性を有する素材で形成された袋30に綿棒1を封入することにより、滅菌した後に綿棒1が汚染されない。さらに、綿棒1が、防菌性を有する素材で形成された袋30に封入されることにより、一般的に袋30は水蒸気を透過しないか、透過しにくいので、保管中の棒12の乾燥を防ぐことができる。
【0028】
続いて、図3に示す製造工程図を参照して、適宜、図1および図2を参照して、綿棒1および袋入り綿棒2の製造方法について説明する。先ず、棒12の素材となる1枚の紙50から、裁断して、細長い紙52を形成する(St1)。細長い紙52の長手方向に糸54を重ねる(St2)。糸54は、まっすぐに伸ばした状態とするのが好ましいが、たるんでいてもよい。また、糸54は、細長い紙52の長手方向の長さと同じか僅かに長くすることが好ましいが、長手方向の長さよりも短くてもよい。長手方向の長さより短いときには、長手方向の中央に糸54を配置してもよいし、片側に寄せて配置してもよい。ただし、細長い紙52の膨らみ部20を形成する側の端部から糸54が配置されていない長さは短くするほうが好ましく、例えば糸54が配置されていない長さは、膨らみ部20が形成される部分を越えて長くはしない。
【0029】
糸54が重ねられた細長い紙52を、短手方向に丸め(St3)、軸10を形成する(St4)。その際、細長い紙52で糸54を先ず包むように、糸54を中に細長い紙52を短手方向に丸めるようにする。すると、細長い紙54はさらに細くなり、丸め易くなる。丸めるのは、糸54を含んだ細長い紙54の上下を平板(不図示)で挟み、上下の平板を短手方向に相対的に移動させる。移動は、一方向でも、細かな往復動を繰り返してもよい。
【0030】
細長い紙54を丸めるのは、澱粉などの高分子物質を含む水溶液Sを細長い紙54にかけながら行う。なお、水溶液Sとして食用でん粉水溶液を用いるのが、人体にとって安全であり、かつ、入手が容易で安価であるので、好ましい。水溶液Sをかけることで、細長い紙54が柔らかくなり、丸め易くなる。また、水溶液S中に含まれる高分子物質が、接着剤として作用し、丸められた細長い紙54がほぐれるのを防止すると共に、丸められた棒12の剛性を高める。また、糸54と細長い紙52とを接着し、綿棒1として使用されるときに糸14が棒12から抜けてしまうことを防止する。また、丸められた棒12の表面、すなわち軸10の表面を滑らかにし、使い心地のよい綿棒1とすることができる。さらに、水溶液Sをかけられることにより、棒12の水分量が多くなり、後述する滅菌処理によって乾燥されても、ある程度の水分量が残存し、柔軟性のある棒12となる。
【0031】
続いて、軸10の先端を、レーヨンなどの繊維質のシート56に重ねる(St5)。繊維質のシート56は、丸めて膨らみ部20を形成する程度になるよう、予め小片に切り分けておく。そして、繊維質のシート56を軸10の周りに丸めて、膨らみ部20を形成する(St6)。膨らみ部20が形成されることにより、綿棒1が完成する。なお、棒12を形成した後、膨らみ部20を形成するまでに、乾熱機(不図示)により棒12を加熱乾燥してもよい。加熱乾燥することにより、棒12の剛性が高まり、膨らみ部20を形成しやすくなる。ただし、棒12を加熱乾燥することにより、棒12と繊維質のシート56との接着力が弱まるので、棒12と繊維質のシート56とは糊付けすることが好ましい。
【0032】
綿棒1は、滅菌槽58に運び込まれる。多数の綿棒1を収容した滅菌層58内は、脱気され、その後にEOGが充満される。綿棒1を、30〜40℃のEOGの中に3〜4時間程度置いておくことにより、滅菌する(St7)。その後、EOGをゆっくりと抜き、例えば、滅菌工程で4日程度を要する。滅菌処理の済んだ綿棒1は、その周囲をクリーンな環境に保ちつつ、たとえばセロハンシート60上に載置され、上から、別のセロハンシート61がかぶせられる(St9)。綿棒1を囲むように、2枚のセロハンシート60、61の周囲を接着することにより、綿棒1を封入した袋入り綿棒2が製造される(St10)。綿棒1は、袋30に封入されることにより、外気に置かれても、汚染されることがなく、袋入り綿棒2として出荷される。
【0033】
なお、棒12の水分量は、例えば、電気電動度水分測定器による測定で、棒12が丸められ棒として完成した時点で20%、乾熱機で加熱乾燥して後に8%、滅菌後に7〜8%である。保管状態によっては、さらに水分が減少し、棒12が柔軟性を失い折損し易くなることもある。しかし、本発明の棒12では、折損しても折損部が分離することがなく、安全性が高められる。
【0034】
次に、図4の綿棒軸製造機の模式的斜視図を参照して、棒12の製造方法についてさらに詳しく説明する。綿棒軸製造機100は、ロール状の紙70から、綿棒用の軸79を製造する装置である。図4中、左上から右下方向に紙70が送られながら、加工され、最終的に軸79となる。綿棒軸製造器100は、ベース80の上に、ロール状の紙70を載置し、引き出した紙を切断する裁断機82、裁断機82で切断された細長い紙72に糸74を重ねる糸供給部(不図示)、細長い紙72の端部を丸めるローラ84、丸められた紙を圧縮し固める圧縮部88、89および長い軸78を所定の長さに揃える軸カッター90とを備える。また、ベース80には、傾斜し、端部が丸められた細長い紙72を転がして丸める、ローリング部86が形成されている。また、ローリング部86を転がる細長い紙72に、高分子物質を含む水溶液としての食用でん粉水溶液Sをかけるノズル92が備えられている。
【0035】
ロール状の紙70は、ロール状の軸周りに回転自在に保持され、紙の端部が引き出されている。引き出された紙は、例えばローラ(不図示)などによりベース80上を送られ、裁断機82に導かれ、裁断機82により送り方向に細く裁断され、細長い紙72となる。なお、ロール状の紙70ではなく、平紙を順次供給し、裁断機82で細く裁断し、細長い紙72としてもよい。細長い紙72は、ローリング部86に送られ、そこで、糸供給部(不図示)により長手方向、すなわち、ロール状の紙70の幅方向に糸74が重ねられる。糸74は、細長い紙72の送り方向先端付近で重ねられるのが、後述するように、好ましい。糸74が重ねられた細長い紙72に、ノズル92から食用でん粉水溶液Sがかけられる。食用でん粉水溶液Sがかけられることにより、細長い紙は、柔軟になり、糸74は細長い紙72に付着する。
【0036】
糸74が重ねられた細長い紙72の送り方向先端付近が、短手方向にローラ84により丸められる。先端付近が丸められた細長い紙72は、傾斜したローリング部86を、食用でん粉水溶液Sをかけられながら、下方向に転がる。細長い紙72は、転がることにより丸められ、ゆるく丸められた1本の棒76になる。このときに、最初に丸められた先端部付近が中心になるように丸められるので、糸74を先端部付近に重ねておくと、糸74は棒76の中心付近に位置することになる。
【0037】
ゆるく丸められた棒76は、圧縮部88、89へ送られる。圧縮部88、89は、ベース80の一部である平板88と、平板88に平行な面を持ち、平行な面は、棒76が送られる方向、すなわち、棒76を転がす方向に往復動するブロック89とを有する。平板88とブロック89の平行な面とは、丸められた棒76の直径より狭く、ほぼ完成品としての軸79の径と一致する間隔だけ隔てられている。棒76は、平行な面に挟まれ、こすり合わされる。こすり合わされるときに、余分な食用でん粉水溶液Sは排斥され、また、水分も絞られ、紙72が密に詰まって固まった棒78となる。棒78は、固く締まることにより、所定の剛性を有するようになる。棒78は、軸カッター90により、所定の長さに切断され、綿棒用の軸79となる。図4では、1本の棒78が3本の軸79に切断されているように示されているが、切断される数は3本に限られず、2本でも4本でも5本以上でもよいし、また、軸カッター90を備えずに、棒78を切断しないまま軸79としてもよい。綿棒用の軸79は、前述したように、綿球が形成され、その他滅菌処理等を受けた後、綿棒製品として出荷される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態である綿棒の断面図である。
【図2】袋入り綿棒を半透視で示す全体図である。
【図3】綿棒および袋入り綿棒の製造工程図である。
【図4】綿棒軸製造機の模式的斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 綿棒
2 袋入り綿棒
10、79 軸
12 棒
14、54、74 糸
20 膨らみ部
30 袋
50 棒の素材の紙
52、72 細長い紙(細長く形成された紙)
56 繊維質のシート(繊維質の素材)
58 滅菌槽
60、61 セロハンシート
70 ロール状の紙
76 緩く丸められた棒
78 紙が密に詰まって固まった棒
80 ベース
82 裁断機
84 ローラ
86 ローリング部
88 平板
89 ブロック
90 軸カッター
92 ノズル
100 綿棒軸製造機
S 食用でん粉水溶液(高分子物質を含む水溶液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸の先端に繊維質の素材で形成された膨らみ部を有する綿棒に用いられる軸であって;
前記軸のほぼ全長に伸びる糸と;
前記糸を内包する紙製の棒とを備える;
綿棒用の軸。
【請求項2】
前記紙製の棒が、紙とは別の高分子物質を含む;
請求項1に記載の綿棒用の軸。
【請求項3】
前記糸が、天然繊維、半合成繊維および合成繊維のうち、少なくとも一つの素材を含む;
請求項1または請求項2に記載の綿棒用の軸。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の綿棒用の軸と;
前記綿棒用の軸の先端に形成された、繊維質の素材の膨らみ部とを備える;
綿棒。
【請求項5】
請求項4に記載の綿棒と;
前記綿棒を封入する袋とを備える;
袋入り綿棒。
【請求項6】
細長く形成した紙と、該細長く形成した紙の長手方向に重ねた糸とを用い、
該糸が重ねられた紙を、短手方向に曲げて、高分子物質を含む水溶液をかけながら棒状に成形し、形成した軸の先端に繊維質の素材で膨らみ部を形成する工程と;
前記膨らみ部が形成された軸を滅菌する工程とを備える;
綿棒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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