緊張材の緊張力解放装置及び緊張力解放方法
【課題】緊張材に導入された緊張力を簡易な装置で容易に解放する。
【解決手段】緊張材である鋼より線6がコンクリートの部材外に配置された部分で、対峙して配置された2個の鋼ブロック21,31の貫通孔と定着治具のリング状部材26,36とに鋼より線6を挿通しておく。この鋼より線は緊張力が導入され、その両端は橋桁に定着されている。鋼より線の緊張力を解放する前にリング状部材と鋼より線との間に楔27,37を挿入する。その後、2個の鋼ブロックを連結するPC鋼棒40にPC鋼棒用のセンターホールジャッキ50で緊張力を導入し、鋼ブロック間の緊張材の緊張力を解放する。そして、鋼ブロック間で鋼より線を切断する。切断後、PC鋼棒に螺合された定着ナット41aを緩めるように回転するとともに、センターホールジャッキをゆっくり減圧し、分断された緊張材の緊張力を解放する。
【解決手段】緊張材である鋼より線6がコンクリートの部材外に配置された部分で、対峙して配置された2個の鋼ブロック21,31の貫通孔と定着治具のリング状部材26,36とに鋼より線6を挿通しておく。この鋼より線は緊張力が導入され、その両端は橋桁に定着されている。鋼より線の緊張力を解放する前にリング状部材と鋼より線との間に楔27,37を挿入する。その後、2個の鋼ブロックを連結するPC鋼棒40にPC鋼棒用のセンターホールジャッキ50で緊張力を導入し、鋼ブロック間の緊張材の緊張力を解放する。そして、鋼ブロック間で鋼より線を切断する。切断後、PC鋼棒に螺合された定着ナット41aを緩めるように回転するとともに、センターホールジャッキをゆっくり減圧し、分断された緊張材の緊張力を解放する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊張力が導入された状態の緊張材から緊張力を解放する緊張力解放装置及び緊張力解放方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレストレストコンクリート構造物は、コンクリート部材内又はコンクリート部材に沿って緊張材を配置する。そして、この緊張材に緊張力を導入し、端部をコンクリート部材に定着することによってコンクリートにプレストレスを導入している。このような緊張材には、コンクリート構造物の構築中に緊張力を導入し、構造物の完成時には緊張力を解放するものがある。例えば、ラーメン構造のプレストレストコンクリート橋(以下「PC橋」という)を橋脚の上部から両側へ施工ブロックごとに順次張り出しながら構築する張り出し架設工法では、橋脚付近における橋桁の上部に仮設ケーブルとして完成時に緊張力を解放する緊張材が配置されることがある。つまり、ラーメン橋では完成時における構造系と架設時における構造系とが相違することから、橋脚付近の橋桁に作用する曲げモーメントが完成時と架設時とで大きく異なり、完成時に過剰なプレストレスを解放することが行われる。また、プレストレストコンクリートの橋桁を押し出し工法で架設するときにも、橋桁を支持する位置が押し出し工程の進行にともなって変動するため、緊張力を解放する仮設ケーブルが用いられることが多い。
【0003】
このように緊張材に緊張力が導入されて一旦構造部材に定着された後、緊張力を解放する方法としては、次のようなものが知られている。
図12に示す方法は、橋桁101を構築するときに、緊張材102が定着された位置の後方部分つまり緊張材端部の緊張用ジャッキ103が装着される部分に切り欠き104を設けておく。そして、緊張力を解放するときには、この切り欠き内で緊張用ジャッキ103を緊張材に装着し、緊張材102を牽引して定着具の負荷を解放する。この状態で定着具の楔の除去を行い又はナットを緩めて緊張材102の緊張力を解放する。
図13に示す方法は、床版上に緊張材を定着するための定着突起部111を形成しておき、緊張材112をこの定着突起部111で定着する。橋桁の完成後には、この定着突起部に緊張用ジャッキ113を装着し、同様に緊張力を解放する。緊張力の解放後は、コンクリートの定着突起部をはつり取る。
【0004】
また、特許文献1に記載の方法は、上床版内で橋軸方向に配置された緊張材の端部をコンクリート部材外つまり上床版の上方に引き出して配置する。そして、該緊張材と反対側に伸長するように配置された他の緊張材の端部も同様にコンクリート部材外に引き出しておき、これらの緊張材の端部を一つの一体型の定着具に定着する。つまり、一体型の定着具に、反対方向に伸長された二つの緊張材の反力を負荷して互いに相殺させる。これにより2本の緊張材は一体型の定着具を介して連結された状態となって双方の緊張材に緊張力が導入される。緊張力を解放するときには上床版上で一体型の定着具に緊張用ジャッキを装着し、緊張材を牽引することにより定着具の負荷を解放する。これにより、緊張材の緊張力を解放することができる。
【0005】
一方、緊張材は上述のようにコンクリート部材にプレストレスを挿入する場合の他に、構造部材間に張架されて、その緊張力によって構造物を支持するために用いられることがある。例えば、橋桁等から斜め方向に吊り支持する場合の斜吊り材、吊り橋の主ケーブルから桁を吊り支持する吊り材、及び下路式アーチ橋の桁をアーチリブから吊り支持する吊り材等がある。これらの緊張材は、経年劣化の補修や補強のために交換を要することがあり、これらの緊張材の撤去にあたって緊張力を解放する必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−68332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような緊張材の緊張力を解放するのに、次のような課題がある。
図12に示す方法では、緊張用ジャッキを緊張材に装着するために大きな切り欠きを形成する必要があり、橋桁の断面がこの部分で縮小されることになる。このため、この部分の耐力が低下するという問題がある。また、鉄筋やPC鋼材を密に配置した橋桁を構築する場合は、鉄筋や緊張材と干渉して緊張用ジャッキを配設するスペースを確保することが困難となる。
図13に示すように、上床版上に定着突起部を形成する場合は、定着突起部の構築や撤去が必要となり、施工工程が増加する。そして、これにともなうコストが増大するという問題が生じる。
【0008】
また、特許文献1に記載されている技術では、緊張力を解放するために上床版の上側に引き出された緊張材に装着できるジャッキを用いる必要がある。緊張材として複数の鋼より線を束ねたものを用いる場合等には、大きな緊張力を導入することができる大型の緊張用ジャッキが用いられる。このような大型の緊張用ジャッキを、緊張力を解放するときにも準備する必要があり、作業の効率が悪くなっている。
【0009】
一方、構造部材を吊り支持する緊張材では、予め緊張力を解放することが想定されていない場合が多い。このような条件で、構造物を安全な状態に維持しながら構造部材を吊り支持している緊張材の緊張力を解放し、緊張材を取りはずすことが要求される。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、緊張材に導入された緊張力を簡易な装置で容易に解放できる緊張力解放装置及び緊張力解放方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 緊張力が導入された状態で両端が構造部材に定着され、一部又は全部が構造部材外に張架された緊張材の緊張力を解放する装置であって、 緊張力が導入された前記緊張材に取り付けられ、該緊張材の軸線方向に間隔をおいて互いに対峙するように配置される2つの中間定着ブロックと、 前記中間定着ブロックの双方を、互いに接近する方向へ移動するのを拘束するように前記緊張材に対して固定する固定手段と、 対峙する前記中間定着ブロックを互いに連結する連結手段と、を有し、 前記連結手段は、2つの前記中間定着ブロックを互いに接近させる方向に力を作用させ、2つの前記中間定着ブロック間で前記緊張材の緊張力が解放又は低減された状態で前記中間定着ブロックの相互間の間隔を保持することができるとともに、2つの前記中間定着ブロック間で緊張材が切断された後は、2つの中間定着ブロックが互いに離れる方向に移動するのを許容するものであることを特徴とする緊張材の緊張力解放装置を提供する。
【0012】
この緊張力解放装置では、連結手段によって2つの中間定着ブロックを互いに接近させる方向に力を作用させると、2つの中間定着ブロック間の緊張材の緊張力が連結手段に負荷されて、緊張材の中間定着ブロック間の緊張力が解放又は低減される。そして、この緊張力が解放又は低減されることにより、2つの中間定着ブロック間で緊張材を切断することができる。その後、2つの中間定着ブロックを互いに離れる方向に移動させることにより、緊張材の緊張力が解放される。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の緊張材の緊張力解放装置において、 前記緊張材は、複数の鋼線又は鋼より線を束ねたものであり、 前記中間定着ブロックには、前記鋼線又は鋼より線のそれぞれが挿通される貫通孔が別個に設けられ、 前記鋼線又は鋼より線は、緊張力が導入される前に、前記貫通孔に挿通されるものとする。
【0014】
この緊張力解放装置では、中間定着ブロックに、緊張材である鋼線又は鋼より線を確実に固定することが可能となる。また、個々の鋼線又は鋼より線を小さな部材で固定することができ、作業の効率が良好となる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の緊張材の緊張力解放装置において、 前記固定手段は、前記緊張材が挿通されたリング状部材と、該リング状部材と前記緊張材との間に押し入れられる楔とを含むものとする。
【0016】
この緊張力解放装置では、緊張力がすでに導入された鋼線又は鋼より線を簡単な構造で確実かつ効率よく中間定着ブロックに固定することができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の緊張材の緊張力解放装置において、 前記連結手段は、前記中間定着ブロックのそれぞれに設けられた連結用孔に挿通される鋼棒と、該鋼棒のねじ切り部に螺合されたナットとを含み、 前記鋼棒は、前記緊張材の周囲に複数本が配置されるものとする。
【0018】
この装置では、緊張材の周囲に配置された複数の鋼棒にジャッキを装着して緊張することにより安定した状態で2つの中間定着ブロックに、互いに接近する方向の力を付与することができる。また、緊張材の緊張力は複数の鋼棒に分担して負荷され、小さなジャッキを用いて緊張材の緊張力を中間定着ブロック間で解放又は低減することができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の緊張材の緊張力解放装置において、 前記固定手段は、複数の部材が前記緊張材を囲むように配置され、一体となるように連結された楔受け部材と、該楔受け部材と前記緊張材との間に押し入れられる楔とを含むものであり、 前記中間定着ブロックは、すでに緊張力が導入されている前記緊張材の軸線回りに装着して、前記固定手段に当接されるものとする。
【0020】
この装置では、緊張材にすでに緊張力が導入されている場合においても、その後に中間定着ブロックを緊張材に対して固定し、2つの中間定着ブロック間の緊張力を解放してこの部分における緊張材を切断、及び緊張材全体の緊張力の解放を行うことができる。
【0021】
請求項6に係る発明は、 緊張力が導入された状態で両端が構造部材に定着され、一部又は全部が構造部材外に張架された緊張材の緊張力を解放する方法であって、 2つの前記中間定着ブロックを、前記緊張材の軸線方向に間隔をおいて互いに対峙させて配置する工程と、 前記緊張材に緊張力が導入された後に、前記中間定着ブロックの双方を、互いに接近する方向へ移動するのを拘束するように前記緊張材に対して固定する工程と、 対峙する前記中間定着ブロックを互いに連結し、これらの中間定着ブロックを互いに接近させる方向に力を作用させて2つの前記中間定着ブロック間で前記緊張材の緊張力が解放又は低減された状態とし、この状態で前記中間定着ブロックの相互間の間隔を保持する工程と、 2つの前記中間定着ブロック間で緊張材を切断する工程と、 2つの中間定着ブロックを互いに連結した状態で、互いに離れる方向に移動させる工程と、を含むことを特徴とする緊張材の緊張力解放方法を提供する。
【0022】
この緊張材の緊張力解放方法では、緊張力が導入された緊張材の2つの中間定着ブロック間で緊張力を解放又は低減し、この部分で緊張材を切断することができる。また、緊張材の切断後は、切断された緊張材が固定された2つの中間定着ブロックを、互いに離れる方向に移動させて、2本に分割された緊張材のそれぞれの緊張力を解放することができる。
このように、簡易な方法で緊張材の緊張力を解放することができ、作業工程を簡略化できるとともにコストの削減が可能となる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の緊張材の緊張力解放方法において、 前記中間定着ブロックを前記緊張材に対して固定する工程は、2つの中間定着ブロック間にあらかじめ装着されている2つのリング状部材を、前記中間定着ブロックの互いに対向する面に当接し、それぞれのリング状部材と前記緊張材との間に、前記中間定着ブロックとの当接部と反対側から楔を押し入れるものとする。
【0024】
この緊張力解放方法では、楔によってリング状部材が緊張材に固定され、中間定着ブロックはリング状部材に突き当てられて緊張材に対して固定される。したがって、緊張力が導入された緊張材に簡単な構造で確実に2つの中間定着ブロックに堅固に定着することができる。
【0025】
請求項8に係る発明は、請求項6に記載の緊張材の緊張力解放方法において、 前記中間定着ブロックを固定する工程は、複数に分割された楔受け部材の分割部分を、既に緊張力が導入されている緊張材の周囲を囲むように配置し、これらを一体に連結した後に、前記緊張材と前記楔受け部材との間に楔を押し込んで楔受け部材を前記緊張材に固定し、前記中間定着ブロックを前記楔受け部材に係止するものとする。
【0026】
この緊張力解放方法では、緊張力を解放することが予定されていなかった緊張材に対し、楔受け部材が固定される。したがって、緊張材を簡単な構造で確実に2つの中間定着ブロックに堅固に定着することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の緊張材の緊張力解放装置及び緊張力解放方法では、緊張材に導入された緊張力を簡易な装置で容易に解放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】片持ち架設中のプレストレストコンクリート橋、及びこの橋の架設時に用いられ、後に本発明の一実施形態である緊張力解放装置を用いて緊張力の解放が行われる緊張材を示す概略側面図である。
【図2】図1に示す緊張材に装着された緊張力解放装置を示す概略正面図及び概略側面図である。
【図3】図2に示す緊張力解放装置の緊張材を中間定着ブロックに定着させる定着治具を示す概略断面図である。
【図4】図1に示すPC橋に配置された緊張材を緊張材解放装置に案内するガイド部材を示す概略斜視図である。
【図5】図2に示す緊張力解放装置を用いて緊張材の緊張力を解放する工程を示す図である。
【図6】図2に示す緊張力解放装置を用いて緊張材の緊張力を解放する工程を示す図である。
【図7】図2に示す緊張力解放装置を用いて緊張材の緊張力を解放する工程を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態である緊張力解放装置を用いて吊り材の緊張力を解放することができる下路式アーチ橋の概略側面図である
【図9】図8に示す下路式アーチ橋の吊り材の緊張力を解放することができる緊張力解放装置の概略正面図である。
【図10】図9に示す緊張力解放装置で用いられる中間定着ブロックの概略平面図及び概略正面図である。
【図11】図9に示す緊張力解放装置で用いられる楔受け部材の概略平面図及びA−A矢視図である。
【図12】従来の緊張材の緊張力解放方法を示す概略側面図である。
【図13】従来の緊張材の緊張力解放方法を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、片持ち架設中のプレストレストコンクリート橋(PC橋)、及びこの橋の架設時に用いられ、後に本発明の一実施形態である緊張力解放装置を用いて緊張力の解放が行われる緊張材を示す概略側面図である。
このPC橋は、コンクリートからなる橋桁1を、橋脚2の上部から所定長の施工ブロック3毎に両側方へバランスをとりながら順次に張り出すように形成される。そして、この橋桁1は、他の橋脚上から対向するように張り出された橋桁(図示しない)と連結され、ラーメン構造となるものである。そして、張り出し施工中の橋桁1に作用する曲げモーメントに対応するために緊張材5が配置され、この緊張材5を緊張して橋桁のコンクリートに定着される。これにより、コンクリートにプレストレスが導入されて過大な引張応力がコンクリートに生じるのを抑えるものとなっている。
【0030】
このようなラーメン構造の橋桁1を張り出し架設すると、両側から張り出された橋桁1を支間中央部で連結する直前に、橋脚2上で大きな負の曲げモーメントが作用する。これに対し、支間中央部が連結された後の構造系では、支間中央部で正の曲げモーメントに抵抗することができ、橋脚2上の負の曲げモーメントを低減することができる。したがって、上記PC橋では、張り出し架設中に橋桁1の上縁付近に配置された緊張材5の一部について、支間中央部が連結された後に、緊張力の解放を行うものとなっている。
【0031】
本実施の形態で緊張力が解放される上記緊張材5には、外径が15.2mmの鋼より線6を6本束ねたものが用いられている。この緊張材5は、橋脚2の上部から両側方に張り出し施工された橋桁の上部7に埋め込まれた筒状のシース内に挿通される。そして、橋脚2の上部付近では上方へ曲げ上げられて橋桁の上面より上方のコンクリート部材外に引き出され、上面に沿って配置されている。この緊張材5の両端部は施工ブロック3dの端部で緊張力が導入され、定着具8を用いて施工部ブロック3dのコンクリートに定着されている。
【0032】
上記緊張材5に緊張力が導入され、その両端が施工ブロック3dの端部付近でそれぞれ定着具8を用いて定着された後は、さらに次の施工ブロック3eがこの施工ブロック3dの先端に接続されて順次に張り出し施工される。
なお、上記定着具8と対向して配置される施工ブロック3eには、定着具8と対向する切り欠き4が設けられる。この切り欠き4は、緊張材5の緊張力が解除されたときに、定着具8による緊張材の把持を解放するために設けられたものであり、例えば緊張材を楔で定着するものでは、楔を除去して緊張材の定着を解放することができる程度の大きさとなっている。したがって、この切り欠き4は、緊張用のジャッキ等を装着するための切り欠きよりも小さなものでよい。
【0033】
このようにして、施工ブロックが順次形成され、片持ち状となった橋桁1の先端部が反対側から張り出してきた橋桁と連結され、一連の橋桁となった後に上記緊張材5の緊張力が本発明の一実施形態である緊張力解放装置20を用いて解放される。
【0034】
上記緊張力解放装置20は、橋脚付近の緊張材がコンクリート部材外に配置された部分に設けられ、図2に示すように、中間定着ブロックである第1の鋼ブロック21及び第2の鋼ブロック31と、これら2つの鋼ブロック間に配置されて、これらの鋼ブロックを互いに近接する方向へ移動するのを拘束する固定手段としての定着治具25,35と、上記鋼ブロックを連結するPC鋼棒40とこのPC鋼棒40を鋼ブロック21,31に係止させる定着ナット41とからなる連結手段と、で主要部が構成されている
なお、図2(b)において、緊張材5である鋼より線6は、便宜上一部を省略して示している。
【0035】
上記第1の鋼ブロック21及び第2の鋼ブロック31は、鋼から形成された厚板状の部材であって、これらは同じ形状及び同じ寸法の部材となっている。これらの鋼ブロック21,31の板状面の中央部には6本の鋼より線6をそれぞれ別個に挿通する6つの貫通孔23,33が独立して形成されている。そして、緊張力が導入される前の鋼より線6が上記貫通孔23,33に挿通され、2つの鋼ブロック21,31が間隔を置いて対峙するように配置されるものである。また、上記貫通孔23,33の周囲には、上記PC鋼棒40を挿通する3つの連結用孔24,34が形成されており、鋼ブロック21、31に挿通された6本の鋼より線6を囲むように、3本のPC鋼棒40を配置することができるようになっている。
この鋼ブロック21,31の外周縁の形状は正三角形の頂角部分を丸く削り落とした形状となっており、上記連結用孔24,34は丸くなった突状部分に設けられている。
【0036】
上記定着治具25,35は、図3に示すように、鋼からなるリング状部材26,36と、このリング状部材26,36と鋼より線6との間に押し入れられる楔27,37と、で構成されている。架設中の橋桁に沿って緊張材6が張架されるときには、リング状部材26,36のみが前もって鋼より線6に挿通されて、第1の鋼ブロック21と第2の鋼ブロック31との間で、それぞれの鋼ブロックの内側面近傍に配置されている。
上記楔27,37は、4分割されており、これらを周方向に配列するとともに、それぞれの間に隙間をあけてリング状部材26,36と鋼より線6との間に挿入できるようになっている。そして、2つの鋼ブロック21,31がリング状部材とともに互いの間隔を狭めるように移動すると、リング状部材26,36と緊張材6との間に押し入れられて、リング状部材を緊張材5に固定する。これにより、2つの鋼ブロック21,31はリング状部材に突き当てられて緊張材に対する位置が固定され、2つの鋼ブロック21,31の互いに接近する方向への移動を拘束するようになっている。
なお、楔は4分割されたものに限定する必要はなく、複数に分割されて互いに間隙を設けてリング状部材と鋼より線の間に挿入できる形状のものであればよい。また、定着治具は他の公知の治具を採用することもできる。
【0037】
上記PC鋼棒40は、全長にわたってネジが切られている全ねじ鋼棒を使用することができる。そして、緊張材5の緊張力を解放するときに、第1の鋼ブロック21と第2の鋼ブロック31とを連結するようにそれぞれの鋼ブロック21,31の連結用孔24,34に挿通されるものである。
上記定着ナット41は、互いに対向する第1の鋼ブロック21と第2の鋼ブロック31との外側でPC鋼棒40をそれぞれの鋼ブロック21,31に係合するようにPC鋼棒40に螺合される。
なお、PC鋼棒40は全ねじ鋼棒に限定されるものではなく、少なくとも定着ナット41が螺合される部分にねじが設けられていればよい。
【0038】
上床版7に埋設されている上記緊張材5が、橋脚上付近で橋桁のコンクリート内から上方へ引き出される部分には、第1のケーブル導出口7a及び第2のケーブル導出口7bが設けられており、これらのケーブル導出口から緊張材5が曲げ上げられて橋桁の上側に配置される。そして、これらのケーブル導出口7a,7bから鋼より線6が引き出された部分には、図4に示すガイド部材9がそれぞれ備えられ、ケーブル導出口7a,7bから橋桁の上方に曲げ上げられた各鋼より線6を橋桁上に配置された鋼ブロック21,31の貫通孔23,33に導くようになっている。
【0039】
また、緊張材が上記ケーブル導出口7a,7bから引き出される前のコンクリート内に配置される部分では、上方へ曲げ上げられた緊張材5に緊張力が導入されたときに、シース内の上面に上方へ押し上げる力が作用する。このため、コンクリート内に埋設された緊張材5から作用する上方への力に抵抗する補強筋を、鋼より線が配置されるシースの周囲に配置することが望ましい。
【0040】
次に、このような緊張力解放装置20を用いて緊張材の緊張力を解放する方法について説明する。
図5から図7は、緊張材の緊張力を解放する工程を示す概略側面図である。
なお、これらの図についても、便宜上6本の鋼より線のうち中段の2本の鋼より線の表示を省略している。
上記緊張力解放装置20の鋼ブロック21,31及びリング状部材26,36は、図5(a)に示すように、緊張材である鋼より線6が配置されるときに橋桁1上に配置し、鋼ブロック21,31の貫通孔23,33及びリング状部材26,36内に鋼より線6を挿通しておく。そして、鋼より線6に緊張力が導入され、橋桁1にプレストレスが導入される。
【0041】
橋桁1の構築が進行して緊張材5の緊張力を解放するときには、図5(b)に示すように、PC鋼棒40を2つの鋼ブロック21,31に形成された連結用孔24,34にそれぞれ挿通し、対峙する2つの鋼ブロック21,31の外側でPC鋼棒40が連結用孔24,34から抜け出さないように定着ナット41を螺合する。また、リング状部材26,36と鋼より線6との間には楔27,37を挿入する。
なお、本実施の形態では、鋼ブロック21,31の連結用孔に挿通したPC鋼棒40の両端に定着ナット41を螺合しているが、PC鋼棒の一方の端部には拡径された頭部を一体に形成し、この頭部を一方の鋼ブロックに係止してもよい。
【0042】
このように緊張力解放装置20が装着されると、図6(a)に示すように、PC鋼棒40の一端にPC鋼棒用のセンターホールジャッキ50をPC鋼棒のそれぞれについて装着し、PC鋼棒40に緊張力を導入する。これにより、第2の鋼ブロック31がセンターホールジャッキ50の反力を負担し、2つの鋼ブロックに21,31には図6(a)中に示す矢印A,Bの方向に力が作用する。そして、2つの鋼ブロック21,31は、リング状部材26,36とともに互いに接近する方向に移動し、リング状部材26,36と鋼より線6の間に楔27,37が強く押し入れられる。これにより、リング状部材26,36は鋼より線6に強固に固定され、2つの鋼ブロック21,31も鋼より線に対して移動するのが拘束される。
【0043】
さらに、PC鋼棒40に緊張力が導入されると、2つの鋼ブロック21,31を互いに接近させる方向の力によってこれらの鋼ブロック21,31間における鋼より線6の緊張力が低減される。つまり、鋼より線6に導入されていた緊張力はPC鋼棒40に負担され、PC鋼棒40の緊張力に置き換えられる。これにより、緊張力解放装置20の両側で鋼より線6に導入されている緊張力は鋼ブロック21,31を介してPC鋼棒40に伝達され、2つの鋼ブロック間で鋼より線6の緊張力は低減又は解放された状態となる。
【0044】
このように鋼ブロック21,31間の鋼より線6の緊張力が解放されると、図6(b)に示すように、鋼ブロック間で鋼より線6を切断することができる。つまり鋼より線6を切断しても、緊張力が急激に他の部材に負荷される衝撃が生じない。そして、切断された鋼より線6は、それぞれ鋼ブロック21,31と橋桁のコンクリートとに両端が定着された状態となる。
【0045】
次に、PC鋼棒の緊張側に螺合された定着ナットを緩めるように回転させるとともに、PC鋼棒用のセンターホールジャッキ50をゆっくり減圧する。これにより、図7に示すように、2個の鋼ブロック21,31は互いに離れる方向に移動し、2本に分割された鋼より線6のそれぞれの緊張力が徐々に解放される。そして、緊張力が解放されると橋桁1のコンクリートに緊張材5である鋼より線を定着していた定着具8を切り欠き4内で取り外し、緊張材を除去することが可能となる。
【0046】
このように、本実施の形態では、複数の鋼より線6を束ねた緊張材5の緊張力を、大型の緊張用ジャッキを使用することなく、PC鋼棒用のセンターホールジャッキ50により解放することが可能となる。これにより、作業効率が向上し、作業日程の短縮およびコストの低減が可能となる。
また、緊張材5を再度緊張する場合は、センターホールジャッキ50を用いてPC鋼棒40を緊張することにより、2つの鋼ブロック21,31間で分断された緊張材のそれぞれに再び緊張力を導入することができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、緊張材として6本の鋼より線を束ねたものを用いたが、鋼線を束ねたものを使用することもできるし、束ねる鋼より線又は鋼線の数や径が異なる場合も、鋼ブロック、リング状部材、楔の形状寸法を適宜に設計することにより対応することができる。
また、鋼ブロックの材料、形状、鋼ブロックに形成された貫通孔及び連結用孔の配置等も適宜に変更可能である。
【0048】
一方、上記実施の形態では、上記中間定着ブロックを緊張材に固定するために、楔を装着するための部材としてリング状部材を用い、緊張材に固定されたリング状部材に中間定着ブロックを突き当てているが、中間定着ブロックに設けられた貫通孔を内径が変化するものとしておき、楔を中間定着ブロックに形成された貫通孔の内周面と緊張材との間に押し入れるものであっても良い。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態である緊張力解放装置を用いることができる橋梁を示す概略側面図である。
この橋梁は、コンクリートからなる下路式のアーチ橋であり、アーチリブ61と桁62とが両端部で一体に接合されている。そして、桁62はアーチリブ61から吊り材63によって吊り支持されている。上記吊り材63には鋼棒が用いられており、経年劣化に対する補修又は補強のために吊り材63を交換する必要が生じ、吊り材63に導入されている緊張力を一旦解放して吊り材63の交換が行われる。この吊り材63の緊張力を解放するために本発明の一実施形態である緊張力解放装置を用いることができ、その構成は次のようになっている。
【0050】
この緊張力解放装置70は、図9に示すように、両端がアーチリブ61及び桁62にそれぞれ定着された緊張材である吊り材63の中間部分に装着される2つの中間定着ブロック71,81と、2つの中間定着ブロック71,81の固定手段として機能する楔72,82および楔受け部材73,83と、2つの中間定着ブロック71,81を互いに連結する連結鋼棒74と、連結鋼棒を中間定着ブロックに係止するナット75とで主要部が構成されている。
【0051】
上記中間定着ブロック71,81は鋼からなるものであり、図10に示すように、吊り材63と直角に支持される厚板71a,81a(例えば厚さが50mm)にU字状の切り欠き71b,81bを設け、この切り欠き内に吊り材63を嵌め入れるようになっている。そして、U字状の切り欠き内に挿入される小ブロック71c,81cが取り付けられた接続プレート71d,81dを、上記厚板の切り欠きが設けられた縁辺に沿ってボルト71e,81eで接合し、吊り材がU字状の切り欠き内で位置が規制されるものとなっている。また、上記U字状の切り欠き71b,81bの両側部には、上記厚板の厚さ方向に連結用孔71f,81fが設けられており、この連結用孔に連結鋼棒74を挿通し、連結鋼棒74に螺合されたナット75を厚板71a,81aに係止するものとなっている。
上記厚板71a,81aは、U字状の切り欠きを設けることによって断面の欠損が生じており、断面が狭窄された位置の両側に渡って厚板を補強する補強リブ71g,81gが設けられている。
【0052】
楔受け部材73,83は、2つの中間定着ブロック71,81のそれぞれに対して設けられ、2つの中間定着ブロックの互いに対向する側の面と当接するように吊り材63に装着されるものである。これらの楔受け部材73,83は、1対の厚板部材73a,83aを接合して形成されており、それぞれの厚板部材に設けられたボルト孔73b,83bにボルト73c,83cを挿通し、これらのボルトを締め付けて1対の厚板部材73a,83aを一体にするものである。これらの厚板部材には、互いに対向する位置に凹部73d,83dが設けられ、接合されたときに吊り材63が挿通される貫通孔73e,83eを形成するものとなっている。形成された貫通孔73e,83eは中間定着ブロックと接触する側から反対側に掛けて内径が拡大するものとなっており、この貫通孔73e,83eに後述する楔72,82が押し入れられる。
【0053】
上記楔72,82は2つに分割されており、装着された楔受け部材73,83と吊り材63との間に押し入れることができるものとなっている。この楔72,82の吊り材63と接触する内面には、吊り材63の周方向に連続する小さな凸部が多数設けられており、吊り材63に対して滑り難くなっている。この楔72,82は、楔受け材73,83に対して中間定着ブロック71,81と接触する面の反対側すなわち貫通孔73e,82eの内径が拡大された側から押し入れることができる。そして、中間定着ブロック71,81と楔受け部材73,83とが他方の中間定着ブロックに接近する方向に移動しようとすると楔72,82が楔受け材73,83と吊り材63との間に強く押し入れられる。これにより、楔受け部材73,83は吊り材63に固着され、中間定着ブロック71,81が互いに接近する方向に移動するのを拘束するようになっている。
【0054】
上記連結鋼棒74は、一対の上記中間定着ブロック71,81に形成された連結用孔71f,81fに挿通され、2つの中間定着ブロック71,81の対向面と反対側の面に当接するようにナット75が螺合される。そして、これらの連結鋼棒74はセンターホールジャッキ76によって緊張力を導入することができるものである。連結鋼棒74は、緊張力の導入によって2つの中間定着ブロック71,81に互いに接近する方向の力を作用させるとともに、ナット75を締め付けて緊張力が導入された状態を維持することができるものとなっている。
【0055】
このような緊張力解放装置70では、緊張力が作用している吊り材63に対して中間定着ブロック71,81と楔受け部材73,83を装着し、連結鋼棒74で2つの中間定着ブロックを連結して、これらの中間定着ブロック71,81に互いに接近する方向の力を付与することができる。これにより吊り材63の緊張力は、2つの中間定着ブロック間で解放され、この部分で吊り材63を切断しても構造部材に大きな衝撃力が作用することはない。吊り材63が切断された後は、連結鋼棒74に螺合されたナットを緩めながらセンターホールジャッキ76の牽引力を解除してゆくことにより、吊り材63の緊張力が全長にわたって解放される。緊張力が解放された吊り材は撤去して新たな緊張材の装着及び緊張力の導入によって、吊り材63を交換することができる。
【0056】
なお、図8に示すようにアーチリブ61から桁62を吊り支持している吊り材63の緊張力を解放するにあたっては、吊り材63に平行して仮支持緊張材を配置するか、又は桁を地盤状から支持する仮支柱(図示しない)を設けて桁62を支持するのがよい。また、仮支持緊張材に緊張力を導入するか仮柱上で桁62をジャッキアップすることによって吊り材63の緊張力を低減しておくのが望ましい。これにより、2つの中間定着ブロック71,81の装着後、連結鋼棒74を緊張したときに吊り材63に過大な緊張力が作用するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0057】
1:橋桁、 2:橋脚、 3:施工ブロック、 4:施工ブロックの切り欠き、 5:緊張材、 6:鋼より線、 7:橋桁のコンクリート内から緊張材が上方へ引き出される部分、 8:定着具、 9:ガイド部材、
20:緊張力解放装置、 21:第1の鋼ブロック、 23:第1の鋼ブロックの貫通孔、 24:第1の鋼ブロックの連結用孔、 25:第1の鋼ブロック側の定着治具、 26:第1の鋼ブロック側の定着治具のリング状部材、 27:第1の鋼ブロック側の定着治具の楔、
31:第2の鋼ブロック、 33:第2の鋼ブロックの貫通孔、 34:第2の鋼ブロックの連結用孔、 35:第2の鋼ブロック側の定着治具、 36:第2の鋼ブロック側の定着治具のリング状部材、 37:第2の鋼ブロック側の定着治具の楔、
40:PC鋼棒、 41:定着ナット、
50:PC鋼棒用のセンターホールジャッキ
61:アーチリブ、 62:桁、 63:吊り材、
70:緊張力解放装置、 71,81:中間定着ブロック、 71a,81a:厚板、71b,81b:U字状の切り欠き、 71c,81c:小ブロック、 71d,81d:接続プレート、 71e,81e:ボルト、 71f,81f:連結用孔、 71g,81g:補強リブ、
72,82:楔、
73,83:楔受け部材、 73a,83a:厚板部材、 73b,83b:ボルト孔、 73c,83c:ボルト、 73d,83d:凹部、 73e,83e:貫通孔、 74:連結鋼棒、 75:ナット、 76:センターホールジャッキ
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊張力が導入された状態の緊張材から緊張力を解放する緊張力解放装置及び緊張力解放方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレストレストコンクリート構造物は、コンクリート部材内又はコンクリート部材に沿って緊張材を配置する。そして、この緊張材に緊張力を導入し、端部をコンクリート部材に定着することによってコンクリートにプレストレスを導入している。このような緊張材には、コンクリート構造物の構築中に緊張力を導入し、構造物の完成時には緊張力を解放するものがある。例えば、ラーメン構造のプレストレストコンクリート橋(以下「PC橋」という)を橋脚の上部から両側へ施工ブロックごとに順次張り出しながら構築する張り出し架設工法では、橋脚付近における橋桁の上部に仮設ケーブルとして完成時に緊張力を解放する緊張材が配置されることがある。つまり、ラーメン橋では完成時における構造系と架設時における構造系とが相違することから、橋脚付近の橋桁に作用する曲げモーメントが完成時と架設時とで大きく異なり、完成時に過剰なプレストレスを解放することが行われる。また、プレストレストコンクリートの橋桁を押し出し工法で架設するときにも、橋桁を支持する位置が押し出し工程の進行にともなって変動するため、緊張力を解放する仮設ケーブルが用いられることが多い。
【0003】
このように緊張材に緊張力が導入されて一旦構造部材に定着された後、緊張力を解放する方法としては、次のようなものが知られている。
図12に示す方法は、橋桁101を構築するときに、緊張材102が定着された位置の後方部分つまり緊張材端部の緊張用ジャッキ103が装着される部分に切り欠き104を設けておく。そして、緊張力を解放するときには、この切り欠き内で緊張用ジャッキ103を緊張材に装着し、緊張材102を牽引して定着具の負荷を解放する。この状態で定着具の楔の除去を行い又はナットを緩めて緊張材102の緊張力を解放する。
図13に示す方法は、床版上に緊張材を定着するための定着突起部111を形成しておき、緊張材112をこの定着突起部111で定着する。橋桁の完成後には、この定着突起部に緊張用ジャッキ113を装着し、同様に緊張力を解放する。緊張力の解放後は、コンクリートの定着突起部をはつり取る。
【0004】
また、特許文献1に記載の方法は、上床版内で橋軸方向に配置された緊張材の端部をコンクリート部材外つまり上床版の上方に引き出して配置する。そして、該緊張材と反対側に伸長するように配置された他の緊張材の端部も同様にコンクリート部材外に引き出しておき、これらの緊張材の端部を一つの一体型の定着具に定着する。つまり、一体型の定着具に、反対方向に伸長された二つの緊張材の反力を負荷して互いに相殺させる。これにより2本の緊張材は一体型の定着具を介して連結された状態となって双方の緊張材に緊張力が導入される。緊張力を解放するときには上床版上で一体型の定着具に緊張用ジャッキを装着し、緊張材を牽引することにより定着具の負荷を解放する。これにより、緊張材の緊張力を解放することができる。
【0005】
一方、緊張材は上述のようにコンクリート部材にプレストレスを挿入する場合の他に、構造部材間に張架されて、その緊張力によって構造物を支持するために用いられることがある。例えば、橋桁等から斜め方向に吊り支持する場合の斜吊り材、吊り橋の主ケーブルから桁を吊り支持する吊り材、及び下路式アーチ橋の桁をアーチリブから吊り支持する吊り材等がある。これらの緊張材は、経年劣化の補修や補強のために交換を要することがあり、これらの緊張材の撤去にあたって緊張力を解放する必要が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−68332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような緊張材の緊張力を解放するのに、次のような課題がある。
図12に示す方法では、緊張用ジャッキを緊張材に装着するために大きな切り欠きを形成する必要があり、橋桁の断面がこの部分で縮小されることになる。このため、この部分の耐力が低下するという問題がある。また、鉄筋やPC鋼材を密に配置した橋桁を構築する場合は、鉄筋や緊張材と干渉して緊張用ジャッキを配設するスペースを確保することが困難となる。
図13に示すように、上床版上に定着突起部を形成する場合は、定着突起部の構築や撤去が必要となり、施工工程が増加する。そして、これにともなうコストが増大するという問題が生じる。
【0008】
また、特許文献1に記載されている技術では、緊張力を解放するために上床版の上側に引き出された緊張材に装着できるジャッキを用いる必要がある。緊張材として複数の鋼より線を束ねたものを用いる場合等には、大きな緊張力を導入することができる大型の緊張用ジャッキが用いられる。このような大型の緊張用ジャッキを、緊張力を解放するときにも準備する必要があり、作業の効率が悪くなっている。
【0009】
一方、構造部材を吊り支持する緊張材では、予め緊張力を解放することが想定されていない場合が多い。このような条件で、構造物を安全な状態に維持しながら構造部材を吊り支持している緊張材の緊張力を解放し、緊張材を取りはずすことが要求される。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、緊張材に導入された緊張力を簡易な装置で容易に解放できる緊張力解放装置及び緊張力解放方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 緊張力が導入された状態で両端が構造部材に定着され、一部又は全部が構造部材外に張架された緊張材の緊張力を解放する装置であって、 緊張力が導入された前記緊張材に取り付けられ、該緊張材の軸線方向に間隔をおいて互いに対峙するように配置される2つの中間定着ブロックと、 前記中間定着ブロックの双方を、互いに接近する方向へ移動するのを拘束するように前記緊張材に対して固定する固定手段と、 対峙する前記中間定着ブロックを互いに連結する連結手段と、を有し、 前記連結手段は、2つの前記中間定着ブロックを互いに接近させる方向に力を作用させ、2つの前記中間定着ブロック間で前記緊張材の緊張力が解放又は低減された状態で前記中間定着ブロックの相互間の間隔を保持することができるとともに、2つの前記中間定着ブロック間で緊張材が切断された後は、2つの中間定着ブロックが互いに離れる方向に移動するのを許容するものであることを特徴とする緊張材の緊張力解放装置を提供する。
【0012】
この緊張力解放装置では、連結手段によって2つの中間定着ブロックを互いに接近させる方向に力を作用させると、2つの中間定着ブロック間の緊張材の緊張力が連結手段に負荷されて、緊張材の中間定着ブロック間の緊張力が解放又は低減される。そして、この緊張力が解放又は低減されることにより、2つの中間定着ブロック間で緊張材を切断することができる。その後、2つの中間定着ブロックを互いに離れる方向に移動させることにより、緊張材の緊張力が解放される。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の緊張材の緊張力解放装置において、 前記緊張材は、複数の鋼線又は鋼より線を束ねたものであり、 前記中間定着ブロックには、前記鋼線又は鋼より線のそれぞれが挿通される貫通孔が別個に設けられ、 前記鋼線又は鋼より線は、緊張力が導入される前に、前記貫通孔に挿通されるものとする。
【0014】
この緊張力解放装置では、中間定着ブロックに、緊張材である鋼線又は鋼より線を確実に固定することが可能となる。また、個々の鋼線又は鋼より線を小さな部材で固定することができ、作業の効率が良好となる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の緊張材の緊張力解放装置において、 前記固定手段は、前記緊張材が挿通されたリング状部材と、該リング状部材と前記緊張材との間に押し入れられる楔とを含むものとする。
【0016】
この緊張力解放装置では、緊張力がすでに導入された鋼線又は鋼より線を簡単な構造で確実かつ効率よく中間定着ブロックに固定することができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載の緊張材の緊張力解放装置において、 前記連結手段は、前記中間定着ブロックのそれぞれに設けられた連結用孔に挿通される鋼棒と、該鋼棒のねじ切り部に螺合されたナットとを含み、 前記鋼棒は、前記緊張材の周囲に複数本が配置されるものとする。
【0018】
この装置では、緊張材の周囲に配置された複数の鋼棒にジャッキを装着して緊張することにより安定した状態で2つの中間定着ブロックに、互いに接近する方向の力を付与することができる。また、緊張材の緊張力は複数の鋼棒に分担して負荷され、小さなジャッキを用いて緊張材の緊張力を中間定着ブロック間で解放又は低減することができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の緊張材の緊張力解放装置において、 前記固定手段は、複数の部材が前記緊張材を囲むように配置され、一体となるように連結された楔受け部材と、該楔受け部材と前記緊張材との間に押し入れられる楔とを含むものであり、 前記中間定着ブロックは、すでに緊張力が導入されている前記緊張材の軸線回りに装着して、前記固定手段に当接されるものとする。
【0020】
この装置では、緊張材にすでに緊張力が導入されている場合においても、その後に中間定着ブロックを緊張材に対して固定し、2つの中間定着ブロック間の緊張力を解放してこの部分における緊張材を切断、及び緊張材全体の緊張力の解放を行うことができる。
【0021】
請求項6に係る発明は、 緊張力が導入された状態で両端が構造部材に定着され、一部又は全部が構造部材外に張架された緊張材の緊張力を解放する方法であって、 2つの前記中間定着ブロックを、前記緊張材の軸線方向に間隔をおいて互いに対峙させて配置する工程と、 前記緊張材に緊張力が導入された後に、前記中間定着ブロックの双方を、互いに接近する方向へ移動するのを拘束するように前記緊張材に対して固定する工程と、 対峙する前記中間定着ブロックを互いに連結し、これらの中間定着ブロックを互いに接近させる方向に力を作用させて2つの前記中間定着ブロック間で前記緊張材の緊張力が解放又は低減された状態とし、この状態で前記中間定着ブロックの相互間の間隔を保持する工程と、 2つの前記中間定着ブロック間で緊張材を切断する工程と、 2つの中間定着ブロックを互いに連結した状態で、互いに離れる方向に移動させる工程と、を含むことを特徴とする緊張材の緊張力解放方法を提供する。
【0022】
この緊張材の緊張力解放方法では、緊張力が導入された緊張材の2つの中間定着ブロック間で緊張力を解放又は低減し、この部分で緊張材を切断することができる。また、緊張材の切断後は、切断された緊張材が固定された2つの中間定着ブロックを、互いに離れる方向に移動させて、2本に分割された緊張材のそれぞれの緊張力を解放することができる。
このように、簡易な方法で緊張材の緊張力を解放することができ、作業工程を簡略化できるとともにコストの削減が可能となる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の緊張材の緊張力解放方法において、 前記中間定着ブロックを前記緊張材に対して固定する工程は、2つの中間定着ブロック間にあらかじめ装着されている2つのリング状部材を、前記中間定着ブロックの互いに対向する面に当接し、それぞれのリング状部材と前記緊張材との間に、前記中間定着ブロックとの当接部と反対側から楔を押し入れるものとする。
【0024】
この緊張力解放方法では、楔によってリング状部材が緊張材に固定され、中間定着ブロックはリング状部材に突き当てられて緊張材に対して固定される。したがって、緊張力が導入された緊張材に簡単な構造で確実に2つの中間定着ブロックに堅固に定着することができる。
【0025】
請求項8に係る発明は、請求項6に記載の緊張材の緊張力解放方法において、 前記中間定着ブロックを固定する工程は、複数に分割された楔受け部材の分割部分を、既に緊張力が導入されている緊張材の周囲を囲むように配置し、これらを一体に連結した後に、前記緊張材と前記楔受け部材との間に楔を押し込んで楔受け部材を前記緊張材に固定し、前記中間定着ブロックを前記楔受け部材に係止するものとする。
【0026】
この緊張力解放方法では、緊張力を解放することが予定されていなかった緊張材に対し、楔受け部材が固定される。したがって、緊張材を簡単な構造で確実に2つの中間定着ブロックに堅固に定着することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の緊張材の緊張力解放装置及び緊張力解放方法では、緊張材に導入された緊張力を簡易な装置で容易に解放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】片持ち架設中のプレストレストコンクリート橋、及びこの橋の架設時に用いられ、後に本発明の一実施形態である緊張力解放装置を用いて緊張力の解放が行われる緊張材を示す概略側面図である。
【図2】図1に示す緊張材に装着された緊張力解放装置を示す概略正面図及び概略側面図である。
【図3】図2に示す緊張力解放装置の緊張材を中間定着ブロックに定着させる定着治具を示す概略断面図である。
【図4】図1に示すPC橋に配置された緊張材を緊張材解放装置に案内するガイド部材を示す概略斜視図である。
【図5】図2に示す緊張力解放装置を用いて緊張材の緊張力を解放する工程を示す図である。
【図6】図2に示す緊張力解放装置を用いて緊張材の緊張力を解放する工程を示す図である。
【図7】図2に示す緊張力解放装置を用いて緊張材の緊張力を解放する工程を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態である緊張力解放装置を用いて吊り材の緊張力を解放することができる下路式アーチ橋の概略側面図である
【図9】図8に示す下路式アーチ橋の吊り材の緊張力を解放することができる緊張力解放装置の概略正面図である。
【図10】図9に示す緊張力解放装置で用いられる中間定着ブロックの概略平面図及び概略正面図である。
【図11】図9に示す緊張力解放装置で用いられる楔受け部材の概略平面図及びA−A矢視図である。
【図12】従来の緊張材の緊張力解放方法を示す概略側面図である。
【図13】従来の緊張材の緊張力解放方法を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、片持ち架設中のプレストレストコンクリート橋(PC橋)、及びこの橋の架設時に用いられ、後に本発明の一実施形態である緊張力解放装置を用いて緊張力の解放が行われる緊張材を示す概略側面図である。
このPC橋は、コンクリートからなる橋桁1を、橋脚2の上部から所定長の施工ブロック3毎に両側方へバランスをとりながら順次に張り出すように形成される。そして、この橋桁1は、他の橋脚上から対向するように張り出された橋桁(図示しない)と連結され、ラーメン構造となるものである。そして、張り出し施工中の橋桁1に作用する曲げモーメントに対応するために緊張材5が配置され、この緊張材5を緊張して橋桁のコンクリートに定着される。これにより、コンクリートにプレストレスが導入されて過大な引張応力がコンクリートに生じるのを抑えるものとなっている。
【0030】
このようなラーメン構造の橋桁1を張り出し架設すると、両側から張り出された橋桁1を支間中央部で連結する直前に、橋脚2上で大きな負の曲げモーメントが作用する。これに対し、支間中央部が連結された後の構造系では、支間中央部で正の曲げモーメントに抵抗することができ、橋脚2上の負の曲げモーメントを低減することができる。したがって、上記PC橋では、張り出し架設中に橋桁1の上縁付近に配置された緊張材5の一部について、支間中央部が連結された後に、緊張力の解放を行うものとなっている。
【0031】
本実施の形態で緊張力が解放される上記緊張材5には、外径が15.2mmの鋼より線6を6本束ねたものが用いられている。この緊張材5は、橋脚2の上部から両側方に張り出し施工された橋桁の上部7に埋め込まれた筒状のシース内に挿通される。そして、橋脚2の上部付近では上方へ曲げ上げられて橋桁の上面より上方のコンクリート部材外に引き出され、上面に沿って配置されている。この緊張材5の両端部は施工ブロック3dの端部で緊張力が導入され、定着具8を用いて施工部ブロック3dのコンクリートに定着されている。
【0032】
上記緊張材5に緊張力が導入され、その両端が施工ブロック3dの端部付近でそれぞれ定着具8を用いて定着された後は、さらに次の施工ブロック3eがこの施工ブロック3dの先端に接続されて順次に張り出し施工される。
なお、上記定着具8と対向して配置される施工ブロック3eには、定着具8と対向する切り欠き4が設けられる。この切り欠き4は、緊張材5の緊張力が解除されたときに、定着具8による緊張材の把持を解放するために設けられたものであり、例えば緊張材を楔で定着するものでは、楔を除去して緊張材の定着を解放することができる程度の大きさとなっている。したがって、この切り欠き4は、緊張用のジャッキ等を装着するための切り欠きよりも小さなものでよい。
【0033】
このようにして、施工ブロックが順次形成され、片持ち状となった橋桁1の先端部が反対側から張り出してきた橋桁と連結され、一連の橋桁となった後に上記緊張材5の緊張力が本発明の一実施形態である緊張力解放装置20を用いて解放される。
【0034】
上記緊張力解放装置20は、橋脚付近の緊張材がコンクリート部材外に配置された部分に設けられ、図2に示すように、中間定着ブロックである第1の鋼ブロック21及び第2の鋼ブロック31と、これら2つの鋼ブロック間に配置されて、これらの鋼ブロックを互いに近接する方向へ移動するのを拘束する固定手段としての定着治具25,35と、上記鋼ブロックを連結するPC鋼棒40とこのPC鋼棒40を鋼ブロック21,31に係止させる定着ナット41とからなる連結手段と、で主要部が構成されている
なお、図2(b)において、緊張材5である鋼より線6は、便宜上一部を省略して示している。
【0035】
上記第1の鋼ブロック21及び第2の鋼ブロック31は、鋼から形成された厚板状の部材であって、これらは同じ形状及び同じ寸法の部材となっている。これらの鋼ブロック21,31の板状面の中央部には6本の鋼より線6をそれぞれ別個に挿通する6つの貫通孔23,33が独立して形成されている。そして、緊張力が導入される前の鋼より線6が上記貫通孔23,33に挿通され、2つの鋼ブロック21,31が間隔を置いて対峙するように配置されるものである。また、上記貫通孔23,33の周囲には、上記PC鋼棒40を挿通する3つの連結用孔24,34が形成されており、鋼ブロック21、31に挿通された6本の鋼より線6を囲むように、3本のPC鋼棒40を配置することができるようになっている。
この鋼ブロック21,31の外周縁の形状は正三角形の頂角部分を丸く削り落とした形状となっており、上記連結用孔24,34は丸くなった突状部分に設けられている。
【0036】
上記定着治具25,35は、図3に示すように、鋼からなるリング状部材26,36と、このリング状部材26,36と鋼より線6との間に押し入れられる楔27,37と、で構成されている。架設中の橋桁に沿って緊張材6が張架されるときには、リング状部材26,36のみが前もって鋼より線6に挿通されて、第1の鋼ブロック21と第2の鋼ブロック31との間で、それぞれの鋼ブロックの内側面近傍に配置されている。
上記楔27,37は、4分割されており、これらを周方向に配列するとともに、それぞれの間に隙間をあけてリング状部材26,36と鋼より線6との間に挿入できるようになっている。そして、2つの鋼ブロック21,31がリング状部材とともに互いの間隔を狭めるように移動すると、リング状部材26,36と緊張材6との間に押し入れられて、リング状部材を緊張材5に固定する。これにより、2つの鋼ブロック21,31はリング状部材に突き当てられて緊張材に対する位置が固定され、2つの鋼ブロック21,31の互いに接近する方向への移動を拘束するようになっている。
なお、楔は4分割されたものに限定する必要はなく、複数に分割されて互いに間隙を設けてリング状部材と鋼より線の間に挿入できる形状のものであればよい。また、定着治具は他の公知の治具を採用することもできる。
【0037】
上記PC鋼棒40は、全長にわたってネジが切られている全ねじ鋼棒を使用することができる。そして、緊張材5の緊張力を解放するときに、第1の鋼ブロック21と第2の鋼ブロック31とを連結するようにそれぞれの鋼ブロック21,31の連結用孔24,34に挿通されるものである。
上記定着ナット41は、互いに対向する第1の鋼ブロック21と第2の鋼ブロック31との外側でPC鋼棒40をそれぞれの鋼ブロック21,31に係合するようにPC鋼棒40に螺合される。
なお、PC鋼棒40は全ねじ鋼棒に限定されるものではなく、少なくとも定着ナット41が螺合される部分にねじが設けられていればよい。
【0038】
上床版7に埋設されている上記緊張材5が、橋脚上付近で橋桁のコンクリート内から上方へ引き出される部分には、第1のケーブル導出口7a及び第2のケーブル導出口7bが設けられており、これらのケーブル導出口から緊張材5が曲げ上げられて橋桁の上側に配置される。そして、これらのケーブル導出口7a,7bから鋼より線6が引き出された部分には、図4に示すガイド部材9がそれぞれ備えられ、ケーブル導出口7a,7bから橋桁の上方に曲げ上げられた各鋼より線6を橋桁上に配置された鋼ブロック21,31の貫通孔23,33に導くようになっている。
【0039】
また、緊張材が上記ケーブル導出口7a,7bから引き出される前のコンクリート内に配置される部分では、上方へ曲げ上げられた緊張材5に緊張力が導入されたときに、シース内の上面に上方へ押し上げる力が作用する。このため、コンクリート内に埋設された緊張材5から作用する上方への力に抵抗する補強筋を、鋼より線が配置されるシースの周囲に配置することが望ましい。
【0040】
次に、このような緊張力解放装置20を用いて緊張材の緊張力を解放する方法について説明する。
図5から図7は、緊張材の緊張力を解放する工程を示す概略側面図である。
なお、これらの図についても、便宜上6本の鋼より線のうち中段の2本の鋼より線の表示を省略している。
上記緊張力解放装置20の鋼ブロック21,31及びリング状部材26,36は、図5(a)に示すように、緊張材である鋼より線6が配置されるときに橋桁1上に配置し、鋼ブロック21,31の貫通孔23,33及びリング状部材26,36内に鋼より線6を挿通しておく。そして、鋼より線6に緊張力が導入され、橋桁1にプレストレスが導入される。
【0041】
橋桁1の構築が進行して緊張材5の緊張力を解放するときには、図5(b)に示すように、PC鋼棒40を2つの鋼ブロック21,31に形成された連結用孔24,34にそれぞれ挿通し、対峙する2つの鋼ブロック21,31の外側でPC鋼棒40が連結用孔24,34から抜け出さないように定着ナット41を螺合する。また、リング状部材26,36と鋼より線6との間には楔27,37を挿入する。
なお、本実施の形態では、鋼ブロック21,31の連結用孔に挿通したPC鋼棒40の両端に定着ナット41を螺合しているが、PC鋼棒の一方の端部には拡径された頭部を一体に形成し、この頭部を一方の鋼ブロックに係止してもよい。
【0042】
このように緊張力解放装置20が装着されると、図6(a)に示すように、PC鋼棒40の一端にPC鋼棒用のセンターホールジャッキ50をPC鋼棒のそれぞれについて装着し、PC鋼棒40に緊張力を導入する。これにより、第2の鋼ブロック31がセンターホールジャッキ50の反力を負担し、2つの鋼ブロックに21,31には図6(a)中に示す矢印A,Bの方向に力が作用する。そして、2つの鋼ブロック21,31は、リング状部材26,36とともに互いに接近する方向に移動し、リング状部材26,36と鋼より線6の間に楔27,37が強く押し入れられる。これにより、リング状部材26,36は鋼より線6に強固に固定され、2つの鋼ブロック21,31も鋼より線に対して移動するのが拘束される。
【0043】
さらに、PC鋼棒40に緊張力が導入されると、2つの鋼ブロック21,31を互いに接近させる方向の力によってこれらの鋼ブロック21,31間における鋼より線6の緊張力が低減される。つまり、鋼より線6に導入されていた緊張力はPC鋼棒40に負担され、PC鋼棒40の緊張力に置き換えられる。これにより、緊張力解放装置20の両側で鋼より線6に導入されている緊張力は鋼ブロック21,31を介してPC鋼棒40に伝達され、2つの鋼ブロック間で鋼より線6の緊張力は低減又は解放された状態となる。
【0044】
このように鋼ブロック21,31間の鋼より線6の緊張力が解放されると、図6(b)に示すように、鋼ブロック間で鋼より線6を切断することができる。つまり鋼より線6を切断しても、緊張力が急激に他の部材に負荷される衝撃が生じない。そして、切断された鋼より線6は、それぞれ鋼ブロック21,31と橋桁のコンクリートとに両端が定着された状態となる。
【0045】
次に、PC鋼棒の緊張側に螺合された定着ナットを緩めるように回転させるとともに、PC鋼棒用のセンターホールジャッキ50をゆっくり減圧する。これにより、図7に示すように、2個の鋼ブロック21,31は互いに離れる方向に移動し、2本に分割された鋼より線6のそれぞれの緊張力が徐々に解放される。そして、緊張力が解放されると橋桁1のコンクリートに緊張材5である鋼より線を定着していた定着具8を切り欠き4内で取り外し、緊張材を除去することが可能となる。
【0046】
このように、本実施の形態では、複数の鋼より線6を束ねた緊張材5の緊張力を、大型の緊張用ジャッキを使用することなく、PC鋼棒用のセンターホールジャッキ50により解放することが可能となる。これにより、作業効率が向上し、作業日程の短縮およびコストの低減が可能となる。
また、緊張材5を再度緊張する場合は、センターホールジャッキ50を用いてPC鋼棒40を緊張することにより、2つの鋼ブロック21,31間で分断された緊張材のそれぞれに再び緊張力を導入することができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、緊張材として6本の鋼より線を束ねたものを用いたが、鋼線を束ねたものを使用することもできるし、束ねる鋼より線又は鋼線の数や径が異なる場合も、鋼ブロック、リング状部材、楔の形状寸法を適宜に設計することにより対応することができる。
また、鋼ブロックの材料、形状、鋼ブロックに形成された貫通孔及び連結用孔の配置等も適宜に変更可能である。
【0048】
一方、上記実施の形態では、上記中間定着ブロックを緊張材に固定するために、楔を装着するための部材としてリング状部材を用い、緊張材に固定されたリング状部材に中間定着ブロックを突き当てているが、中間定着ブロックに設けられた貫通孔を内径が変化するものとしておき、楔を中間定着ブロックに形成された貫通孔の内周面と緊張材との間に押し入れるものであっても良い。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態である緊張力解放装置を用いることができる橋梁を示す概略側面図である。
この橋梁は、コンクリートからなる下路式のアーチ橋であり、アーチリブ61と桁62とが両端部で一体に接合されている。そして、桁62はアーチリブ61から吊り材63によって吊り支持されている。上記吊り材63には鋼棒が用いられており、経年劣化に対する補修又は補強のために吊り材63を交換する必要が生じ、吊り材63に導入されている緊張力を一旦解放して吊り材63の交換が行われる。この吊り材63の緊張力を解放するために本発明の一実施形態である緊張力解放装置を用いることができ、その構成は次のようになっている。
【0050】
この緊張力解放装置70は、図9に示すように、両端がアーチリブ61及び桁62にそれぞれ定着された緊張材である吊り材63の中間部分に装着される2つの中間定着ブロック71,81と、2つの中間定着ブロック71,81の固定手段として機能する楔72,82および楔受け部材73,83と、2つの中間定着ブロック71,81を互いに連結する連結鋼棒74と、連結鋼棒を中間定着ブロックに係止するナット75とで主要部が構成されている。
【0051】
上記中間定着ブロック71,81は鋼からなるものであり、図10に示すように、吊り材63と直角に支持される厚板71a,81a(例えば厚さが50mm)にU字状の切り欠き71b,81bを設け、この切り欠き内に吊り材63を嵌め入れるようになっている。そして、U字状の切り欠き内に挿入される小ブロック71c,81cが取り付けられた接続プレート71d,81dを、上記厚板の切り欠きが設けられた縁辺に沿ってボルト71e,81eで接合し、吊り材がU字状の切り欠き内で位置が規制されるものとなっている。また、上記U字状の切り欠き71b,81bの両側部には、上記厚板の厚さ方向に連結用孔71f,81fが設けられており、この連結用孔に連結鋼棒74を挿通し、連結鋼棒74に螺合されたナット75を厚板71a,81aに係止するものとなっている。
上記厚板71a,81aは、U字状の切り欠きを設けることによって断面の欠損が生じており、断面が狭窄された位置の両側に渡って厚板を補強する補強リブ71g,81gが設けられている。
【0052】
楔受け部材73,83は、2つの中間定着ブロック71,81のそれぞれに対して設けられ、2つの中間定着ブロックの互いに対向する側の面と当接するように吊り材63に装着されるものである。これらの楔受け部材73,83は、1対の厚板部材73a,83aを接合して形成されており、それぞれの厚板部材に設けられたボルト孔73b,83bにボルト73c,83cを挿通し、これらのボルトを締め付けて1対の厚板部材73a,83aを一体にするものである。これらの厚板部材には、互いに対向する位置に凹部73d,83dが設けられ、接合されたときに吊り材63が挿通される貫通孔73e,83eを形成するものとなっている。形成された貫通孔73e,83eは中間定着ブロックと接触する側から反対側に掛けて内径が拡大するものとなっており、この貫通孔73e,83eに後述する楔72,82が押し入れられる。
【0053】
上記楔72,82は2つに分割されており、装着された楔受け部材73,83と吊り材63との間に押し入れることができるものとなっている。この楔72,82の吊り材63と接触する内面には、吊り材63の周方向に連続する小さな凸部が多数設けられており、吊り材63に対して滑り難くなっている。この楔72,82は、楔受け材73,83に対して中間定着ブロック71,81と接触する面の反対側すなわち貫通孔73e,82eの内径が拡大された側から押し入れることができる。そして、中間定着ブロック71,81と楔受け部材73,83とが他方の中間定着ブロックに接近する方向に移動しようとすると楔72,82が楔受け材73,83と吊り材63との間に強く押し入れられる。これにより、楔受け部材73,83は吊り材63に固着され、中間定着ブロック71,81が互いに接近する方向に移動するのを拘束するようになっている。
【0054】
上記連結鋼棒74は、一対の上記中間定着ブロック71,81に形成された連結用孔71f,81fに挿通され、2つの中間定着ブロック71,81の対向面と反対側の面に当接するようにナット75が螺合される。そして、これらの連結鋼棒74はセンターホールジャッキ76によって緊張力を導入することができるものである。連結鋼棒74は、緊張力の導入によって2つの中間定着ブロック71,81に互いに接近する方向の力を作用させるとともに、ナット75を締め付けて緊張力が導入された状態を維持することができるものとなっている。
【0055】
このような緊張力解放装置70では、緊張力が作用している吊り材63に対して中間定着ブロック71,81と楔受け部材73,83を装着し、連結鋼棒74で2つの中間定着ブロックを連結して、これらの中間定着ブロック71,81に互いに接近する方向の力を付与することができる。これにより吊り材63の緊張力は、2つの中間定着ブロック間で解放され、この部分で吊り材63を切断しても構造部材に大きな衝撃力が作用することはない。吊り材63が切断された後は、連結鋼棒74に螺合されたナットを緩めながらセンターホールジャッキ76の牽引力を解除してゆくことにより、吊り材63の緊張力が全長にわたって解放される。緊張力が解放された吊り材は撤去して新たな緊張材の装着及び緊張力の導入によって、吊り材63を交換することができる。
【0056】
なお、図8に示すようにアーチリブ61から桁62を吊り支持している吊り材63の緊張力を解放するにあたっては、吊り材63に平行して仮支持緊張材を配置するか、又は桁を地盤状から支持する仮支柱(図示しない)を設けて桁62を支持するのがよい。また、仮支持緊張材に緊張力を導入するか仮柱上で桁62をジャッキアップすることによって吊り材63の緊張力を低減しておくのが望ましい。これにより、2つの中間定着ブロック71,81の装着後、連結鋼棒74を緊張したときに吊り材63に過大な緊張力が作用するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0057】
1:橋桁、 2:橋脚、 3:施工ブロック、 4:施工ブロックの切り欠き、 5:緊張材、 6:鋼より線、 7:橋桁のコンクリート内から緊張材が上方へ引き出される部分、 8:定着具、 9:ガイド部材、
20:緊張力解放装置、 21:第1の鋼ブロック、 23:第1の鋼ブロックの貫通孔、 24:第1の鋼ブロックの連結用孔、 25:第1の鋼ブロック側の定着治具、 26:第1の鋼ブロック側の定着治具のリング状部材、 27:第1の鋼ブロック側の定着治具の楔、
31:第2の鋼ブロック、 33:第2の鋼ブロックの貫通孔、 34:第2の鋼ブロックの連結用孔、 35:第2の鋼ブロック側の定着治具、 36:第2の鋼ブロック側の定着治具のリング状部材、 37:第2の鋼ブロック側の定着治具の楔、
40:PC鋼棒、 41:定着ナット、
50:PC鋼棒用のセンターホールジャッキ
61:アーチリブ、 62:桁、 63:吊り材、
70:緊張力解放装置、 71,81:中間定着ブロック、 71a,81a:厚板、71b,81b:U字状の切り欠き、 71c,81c:小ブロック、 71d,81d:接続プレート、 71e,81e:ボルト、 71f,81f:連結用孔、 71g,81g:補強リブ、
72,82:楔、
73,83:楔受け部材、 73a,83a:厚板部材、 73b,83b:ボルト孔、 73c,83c:ボルト、 73d,83d:凹部、 73e,83e:貫通孔、 74:連結鋼棒、 75:ナット、 76:センターホールジャッキ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊張力が導入された状態で両端が構造部材に定着され、一部又は全部が構造部材外に張架された緊張材の緊張力を解放する装置であって、
緊張力が導入された前記緊張材に取り付けられ、該緊張材の軸線方向に間隔をおいて互いに対峙するように配置される2つの中間定着ブロックと、
前記中間定着ブロックの双方を、互いに接近する方向へ移動するのを拘束するように前記緊張材に対して固定する固定手段と、
対峙する前記中間定着ブロックを互いに連結する連結手段と、を有し、
前記連結手段は、2つの前記中間定着ブロックを互いに接近させる方向に力を作用させ、2つの前記中間定着ブロック間で前記緊張材の緊張力が解放又は低減された状態で前記中間定着ブロックの相互間の間隔を保持することができるとともに、2つの前記中間定着ブロック間で緊張材が切断された後は、2つの中間定着ブロックが互いに離れる方向に移動するのを許容するものであることを特徴とする緊張材の緊張力解放装置。
【請求項2】
前記緊張材は、複数の鋼線又は鋼より線を束ねたものであり、
前記中間定着ブロックには、前記鋼線又は鋼より線のそれぞれが挿通される貫通孔が別個に設けられ、
前記鋼線又は鋼より線は、緊張力が導入される前に、前記貫通孔に挿通されるものであることを特徴とする請求項1に記載の緊張材の緊張力解放装置。
【請求項3】
前記固定手段は、前記緊張材が挿通されたリング状部材と、該リング状部材と前記緊張材との間に押し入れられる楔とを含むものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の緊張材の緊張力解放装置。
【請求項4】
前記連結手段は、前記中間定着ブロックのそれぞれに設けられた連結用孔に挿通される鋼棒と、該鋼棒のねじ切り部に螺合されたナットとを含み、
前記鋼棒は、前記緊張材の周囲に複数本が配置されるものであることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の緊張材の緊張力解放装置。
【請求項5】
前記固定手段は、複数の部材が前記緊張材を囲むように配置され、一体となるように連結された楔受け部材と、該楔受け部材と前記緊張材との間に押し入れられる楔とを含むものであり、
前記中間定着ブロックは、すでに緊張力が導入されている前記緊張材の軸線回りに装着して、前記固定手段に当接されるものであることを特徴とする請求項1に記載の緊張材の緊張力解放装置。
【請求項6】
緊張力が導入された状態で両端が構造部材に定着され、一部又は全部が構造部材外に張架された緊張材の緊張力を解放する方法であって、
2つの前記中間定着ブロックを、前記緊張材の軸線方向に間隔をおいて互いに対峙させて配置する工程と、
前記緊張材に緊張力が導入された後に、前記中間定着ブロックの双方を、互いに接近する方向へ移動するのを拘束するように前記緊張材に対して固定する工程と、
対峙する前記中間定着ブロックを互いに連結し、これらの中間定着ブロックを互いに接近させる方向に力を作用させて2つの前記中間定着ブロック間で前記緊張材の緊張力が解放又は低減された状態とし、この状態で前記中間定着ブロックの相互間の間隔を保持する工程と、
2つの前記中間定着ブロック間で緊張材を切断する工程と、
2つの中間定着ブロックを互いに連結した状態で、互いに離れる方向に移動させる工程と、を含むことを特徴とする緊張材の緊張力解放方法。
【請求項7】
前記中間定着ブロックを前記緊張材に対して固定する工程は、2つの中間定着ブロック間にあらかじめ装着されている2つのリング状部材を、前記中間定着ブロックの互いに対向する面に当接し、それぞれのリング状部材と前記緊張材との間に、前記中間定着ブロックとの当接部と反対側から楔を押し入れるものであることを特徴とする請求項6に記載の緊張材の緊張力解放方法。
【請求項8】
前記中間定着ブロックを固定する工程は、複数に分割された楔受け部材の分割部分を、既に緊張力が導入されている緊張材の周囲を囲むように配置し、これらを一体に連結した後に、前記緊張材と前記楔受け部材との間に楔を押し込んで楔受け部材を前記緊張材に固定し、前記中間定着ブロックを前記楔受け部材に係止するものであることを特徴とする請求項6に記載の緊張材の緊張力解放方法。
【請求項1】
緊張力が導入された状態で両端が構造部材に定着され、一部又は全部が構造部材外に張架された緊張材の緊張力を解放する装置であって、
緊張力が導入された前記緊張材に取り付けられ、該緊張材の軸線方向に間隔をおいて互いに対峙するように配置される2つの中間定着ブロックと、
前記中間定着ブロックの双方を、互いに接近する方向へ移動するのを拘束するように前記緊張材に対して固定する固定手段と、
対峙する前記中間定着ブロックを互いに連結する連結手段と、を有し、
前記連結手段は、2つの前記中間定着ブロックを互いに接近させる方向に力を作用させ、2つの前記中間定着ブロック間で前記緊張材の緊張力が解放又は低減された状態で前記中間定着ブロックの相互間の間隔を保持することができるとともに、2つの前記中間定着ブロック間で緊張材が切断された後は、2つの中間定着ブロックが互いに離れる方向に移動するのを許容するものであることを特徴とする緊張材の緊張力解放装置。
【請求項2】
前記緊張材は、複数の鋼線又は鋼より線を束ねたものであり、
前記中間定着ブロックには、前記鋼線又は鋼より線のそれぞれが挿通される貫通孔が別個に設けられ、
前記鋼線又は鋼より線は、緊張力が導入される前に、前記貫通孔に挿通されるものであることを特徴とする請求項1に記載の緊張材の緊張力解放装置。
【請求項3】
前記固定手段は、前記緊張材が挿通されたリング状部材と、該リング状部材と前記緊張材との間に押し入れられる楔とを含むものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の緊張材の緊張力解放装置。
【請求項4】
前記連結手段は、前記中間定着ブロックのそれぞれに設けられた連結用孔に挿通される鋼棒と、該鋼棒のねじ切り部に螺合されたナットとを含み、
前記鋼棒は、前記緊張材の周囲に複数本が配置されるものであることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の緊張材の緊張力解放装置。
【請求項5】
前記固定手段は、複数の部材が前記緊張材を囲むように配置され、一体となるように連結された楔受け部材と、該楔受け部材と前記緊張材との間に押し入れられる楔とを含むものであり、
前記中間定着ブロックは、すでに緊張力が導入されている前記緊張材の軸線回りに装着して、前記固定手段に当接されるものであることを特徴とする請求項1に記載の緊張材の緊張力解放装置。
【請求項6】
緊張力が導入された状態で両端が構造部材に定着され、一部又は全部が構造部材外に張架された緊張材の緊張力を解放する方法であって、
2つの前記中間定着ブロックを、前記緊張材の軸線方向に間隔をおいて互いに対峙させて配置する工程と、
前記緊張材に緊張力が導入された後に、前記中間定着ブロックの双方を、互いに接近する方向へ移動するのを拘束するように前記緊張材に対して固定する工程と、
対峙する前記中間定着ブロックを互いに連結し、これらの中間定着ブロックを互いに接近させる方向に力を作用させて2つの前記中間定着ブロック間で前記緊張材の緊張力が解放又は低減された状態とし、この状態で前記中間定着ブロックの相互間の間隔を保持する工程と、
2つの前記中間定着ブロック間で緊張材を切断する工程と、
2つの中間定着ブロックを互いに連結した状態で、互いに離れる方向に移動させる工程と、を含むことを特徴とする緊張材の緊張力解放方法。
【請求項7】
前記中間定着ブロックを前記緊張材に対して固定する工程は、2つの中間定着ブロック間にあらかじめ装着されている2つのリング状部材を、前記中間定着ブロックの互いに対向する面に当接し、それぞれのリング状部材と前記緊張材との間に、前記中間定着ブロックとの当接部と反対側から楔を押し入れるものであることを特徴とする請求項6に記載の緊張材の緊張力解放方法。
【請求項8】
前記中間定着ブロックを固定する工程は、複数に分割された楔受け部材の分割部分を、既に緊張力が導入されている緊張材の周囲を囲むように配置し、これらを一体に連結した後に、前記緊張材と前記楔受け部材との間に楔を押し込んで楔受け部材を前記緊張材に固定し、前記中間定着ブロックを前記楔受け部材に係止するものであることを特徴とする請求項6に記載の緊張材の緊張力解放方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−190616(P2011−190616A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57776(P2010−57776)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【出願人】(302061613)住友電工スチールワイヤー株式会社 (163)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【出願人】(302061613)住友電工スチールワイヤー株式会社 (163)
【Fターム(参考)】
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