説明

緊急警報放送システム

【課題】 PONシステムを利用し、特定の地域又は建物を指定して緊急警報放送を送信する。
【解決手段】
各加入者宅には緊急放送端末30−1〜30−nを設置し、センター局10には、各緊急放送端末との通信用の光送信装置16及び緊急放送情報管理サーバ18を設置する。各加入者宅のWDM光カップラ26−1〜26−n及びセンター局10のWDM光カップラ14により、OLT12とONU28−1〜28−nとの間の通信と、光送信装置16から各緊急放送端末30−1〜30−nへの緊急警報放送とを波長で分離し、光ファイバ20,光カップラ22及び光ファイバ24−1〜24−nからなる光伝送路を両者で共用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PON(Optical passive Network)システムを使用して、特定の地域又は建物向けに緊急警報を放送するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
緊急警報放送システムとしては、ラジオ放送、テレビ放送又は地域無線を使用する無線方式が知られている。また、ケーブルテレビで緊急警報を放送する技術が、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2002−77847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、テレビ放送波又はラジオ放送波による緊急警報放送では、特別な受信機が必要となる。また、CATVによる緊急警報放送は、そのCATVに加入しているユーザしか使用できない。
【0004】
今後は、光通信・放送技術の発展により、光ファイバを用いたパッシブオプティカルネットワーク(PON)方式が主流になると考えられている。さらに、今後は、テレビ放送も光ファイバ経由で視聴するようになる。
【0005】
そうすると、テレビ受信用アンテナもCATVも使用しない家庭が増加すると考えられ、PONシステムに緊急警報方法を載せる手段が必要となる。
【0006】
また、無線方式では、特定の地域又は特定の建物だけへの情報配信は困難である。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決する緊急警報放送システムを提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る緊急警報放送システムは、センター局のOLTと、各加入者宅のONUと、センター局のOLTと各加入者宅のONUとを光学的に接続し、各加入者で共用される光伝送路とを具備し、当該光伝送路上を第1の波長の下り信号光及び第2の波長の上り信号光が伝搬する光伝送システムを利用する。各加入者宅には、自己を宛先とする緊急警報放送を受信する緊急放送端末と、当該光伝送路からの第3の波長の緊急警報放送信号光を当該緊急放送端末に供給し、当該光伝送路からの下り信号光を当該ONUに供給し、当該ONUからの上り信号光を当該光伝送路に供給する第1のWDM光カップラを設置する。そして、当該センター局には、当該各加入者宅の当該緊急放送端末の所在地を記憶する緊急放送情報管理サーバであって、当該緊急放送端末の内で、特定の地域又は建物に属する緊急放送端末を宛先として指定する緊急警報放送信号を出力する緊急放送情報管理サーバと、当該緊急放送情報管理サーバからの当該緊急警報放送信号を緊急警報放送信号光に変換する光送信装置と、当該光伝送路からの当該上り信号光を当該OLTに供給し、当該光送信装置の緊急警報放送信号光を当該光伝送路に供給し、当該OLTから出力される当該下り信号光を当該光伝送路に供給する第2のWDM光カップラを設置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、PONシステムの特定の加入者に既存の通信を邪魔すること無しに、緊急警報を送信できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示す。本実施例では、PON(Optical passive Network)システムの各加入者宅に緊急放送端末30−1〜30−nを配置すると共に、センター局には、緊急放送端末30−1〜30−nを管理し、緊急放送すべき情報を保持する緊急放送情報管理サーバ18を設け、PONシステムの光伝送路上では、緊急警報放送をPONシステムの信号伝送とは異なる波長で各加入者に伝送する。これにより、PONシステムの信号伝送と緊急警報放送とを、互いに隔離した状態で運用可能にした。
【0012】
図1の構成と動作を具体的に説明する。センター局10には、PONシステムのセンター側の光終端装置であるOLT(Optical Line Terminal)12に加えて、WDM光カップラ14,緊急放送用光送信装置16及び緊急放送情報管理サーバ18が設置される。
【0013】
緊急放送情報管理サーバ18は、各緊急放送端末30−1〜30−nの設置位置を示す情報、即ち、各加入者の住所地を示す情報を保持している。外部ネットワークから地域又は建物を指定された緊急警報情報を受信すると、サーバ18は、指定された地域又は建物を宛先として指定した緊急警報情報信号を生成し、緊急放送用光送信装置16に印加する。緊急警報情報信号に付加される宛先は、各加入者宅に設置される緊急放送端末を特定するアドレス又は識別情報(ID)である。緊急放送用光送信装置16は、サーバ18からの緊急警報情報信号を波長λ3の光信号に変換してWDM光カップラ14に印加する。
【0014】
WDM光カップラ14は、PONシステムの本来のデータ通信の上り信号光及び下り信号光に関して、OLT12から出力される波長λ1の下り信号光を光ファイバ20に出力し、光ファイバ20からの波長λ2の上り信号光をOLT12に供給する。WDM光カップラ14はまた、緊急放送用光送信装置16から出力される波長λ3の緊急放送情報の信号光を光ファイバ20に供給する。波長λ1,λ2及びλ3は互いに異なる。
【0015】
WDM光カップラ14は、OLT12からの下り信号光と、緊急放送用光送信装置16からの制御信号光を波長軸上で多重して、光ファイバ20に出力する。
【0016】
光ファイバ20は光カップラ22に接続する。光カップラ22は、1:nの光スプリッタであり、波長に依存せずに、光ファイバ20からの入力光をn分割し、各分割光を光ファイバ24−1〜24−nに出力する。光カップラ22はまた、波長に依存せずに、光ファイバ24−1〜24−nからの光を、光ファイバ20に出力する。従って、光カップラ22は、光ファイバ20からの下り信号光及び緊急警報放送の信号光を光ファイバ24−1〜24−nのそれぞれに供給する。
【0017】
各光ファイバ24−1〜24−nの他端は、波長λ1,λ2によるデータ通信と波長λ3による放送とを分離するWDM光カップラ26−1〜26−nに接続する。WDM光カップラ26−1〜26−nは、光ファイバ24−1〜24−nからの波長λ1の下り信号光をユーザ側の光終端装置であるONU(Optical network Unit)28−1〜28−nに供給し、光ファイバ24−1〜24−nからの波長λ3の緊急警報放送の信号光を緊急放送端末30−1〜30−nに供給する。
【0018】
緊急放送端末30−1〜30−nは、WDM光カップラ26−1〜26−nからの緊急警報放送の信号光が自己宛てか否かを確認し、自己宛であれば、緊急警報情報を取り込み、音声で及び/又は画面上に出力する。各緊急放送端末30−1〜30−nは常時、このような緊急警報放送信号光の受信を待機している。緊急放送端末30−1〜30−nは、また、通常時には、緊急警報放送の信号光が入力の有無を監視し、緊急警報放送の信号光が入力すると、宛先と緊急警報放送の内容を読み取る装置部分と、緊急警報放送の内容を表示する装置部分を順次、起動するようにしてもよい。
【0019】
ONU28−1〜28−nは、WDM光カップラ26−1〜26−nからの下り信号光を受光して電気信号に変換し、端末32−1〜32−nに供給する。これにより、各端末32−1〜32−nは、OLT12の上流に位置するネットワークからの信号を受信できる。勿論、ONU28−1〜28−nは、下り信号光から、自己宛ての信号と配下のユーザ装置宛ての信号のみを取り込む。
【0020】
ONU28−1〜28−nはまた、端末32−1〜32−nからの上り信号を光信号、即ち、波長λ2の上り信号光に変換して、WDM光カップラ26−1〜26−nに供給する。WDM光カップラ26−1〜26−nは、ONU28−1〜28−nからの波長λ2の上り信号光を光ファイバ24−1〜24−nに出力する。
【0021】
WDM光カップラ26−1〜26−nは、ONU28−1〜28−nからの上り信号光を光ファイバ24−1〜24−nに出力する。各加入者の上り信号光は、光ファイバ24−1〜24−n、光カップラ22及び光ファイバ20を伝送して、WDM光カップラ14に入射する。勿論、各ONU28−1〜28−nは、光ファイバ20、光カップラ22及び光ファイバ24−1〜24−nからなる光伝送路上で互いに衝突しないように、異なるタイミングで上り信号光を出力する。
【0022】
WDM光カップラ14は、光ファイバ20からの波長λ2の上り信号光をOLT12に供給する。OLT12は、WDM光カップラ14からの上り信号光を受光し、上り信号を上位のネットワークに出力する。勿論、上り信号がOLT12に宛てたものである場合、OLT12は、上り信号の内容に応じて動作する。
【0023】
特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例の概略構成ブロック図である。
【符号の説明】
【0025】
10:センター局
12:OLT
14:WDM光カップラ
16:緊急放送用光送信装置
18:緊急放送情報管理サーバ
20:光ファイバ
22:光カップラ
24−1〜24−n:光ファイバ
26−1〜26−n:WDM光カップラ
28−1〜28−n:ONU
30−1〜30−n:緊急放送端末
32−1〜32−n:端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センター局のOLT(12)と、各加入者宅のONU(28−1〜28−n)と、センター局のOLT(12)と各加入者宅のONU(28−1〜28−n)とを光学的に接続し、各加入者で共用される光伝送路(20,22,24−1〜24−n)とを具備し、当該光伝送路上を第1の波長の下り信号光及び第2の波長の上り信号光が伝搬する光伝送システムにおいて、
各加入者宅には、自己を宛先とする緊急警報放送を受信する緊急放送端末(30−1〜30−n)と、当該光伝送路からの第3の波長の緊急警報放送信号光を当該緊急放送端末に供給し、当該光伝送路からの下り信号光を当該ONUに供給し、当該ONUからの上り信号光を当該光伝送路に供給する第1のWDM光カップラ(26−1〜26−n)を設置し、
当該センター局には、当該各加入者宅の当該緊急放送端末(30−1〜30−n)の所在地を記憶する緊急放送情報管理サーバ(18)であって、当該緊急放送端末の内で、特定の地域又は建物に属する緊急放送端末を宛先として指定する緊急警報放送信号を出力する緊急放送情報管理サーバ(18)と、当該緊急放送情報管理サーバ(18)からの当該緊急警報放送信号を緊急警報放送信号光に変換する光送信装置(16)と、当該光伝送路からの当該上り信号光を当該OLT(12)に供給し、当該光送信装置(16)の緊急警報放送信号光を当該光伝送路に供給し、当該OLT(12)から出力される当該下り信号光を当該光伝送路に供給する第2のWDM光カップラ(14)を設置した
ことを特徴とする緊急警報放送システム。
【請求項2】
当該緊急放送端末(30−1〜30−n)が、外部制御により強制的に待機状態から起動状態に移行することを特徴とする請求項1に記載の緊急警報放送システム。

【図1】
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