説明

緊急通報システム及び緊急通報端末

【課題】車両事故の減少を実現する緊急通報システム及び緊急通報端末を提供する。
【解決手段】少なくとも1以上の緊急通報端末と、運転指令センタ装置と、を備える緊急通報システムであって、前記緊急通報端末は、前記運転指令センタ装置と交信する交信手段と、車両停止通知を前記運転指令センタ装置に送信する通知手段と、を備え、前記運転指令センタ装置は、前記緊急通報端末と交信する交信手段と、前記車両停止通知を受信した場合は、車両に停止指令通知を行う指令手段と、を備えることを特徴とする緊急通報システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急通報システム及び緊急通報端末に関し、特に車両事故の減少を実現する緊急通報システム及び緊急通報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両への非常停止警報システムに関する発明としては、駅・ホームに設置された非常停止ボタンを押すことにより、ホーム舎屋に取り付けられたベルを大きく鳴動させる報知や非常灯を点滅させる報知により、電車の運転士/車掌に緊急事態発生を知らせ、その運転士/車掌の手動制御により電車を停止させていた。また、現在、多くの踏み切りにて事故防止用にセンサーが導入され、車などのある程度大きな物体が一定時間踏切内に留まるなどの異常事態に対応した踏切設置センサーによる異常検知システムも知られている。
【0003】
上記のようなベルの鳴動等では報知可能範囲が狭く、運転停止の作業が遅れ、特にホームからの転落事故等の緊急事態の回避が間に合わない場合もあった。そこで、ホームに非常停止スイッチを押すことにより、誘導無線装置を利用して一定の距離内を走行している車両に無線通知/自動停止制御を行うシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、事故発生後の対応を迅速かつ正確に行うため、車両から視認できる画像情報を捉えるカメラを車両に設置し、事故後、事故発生直前から直後までの画像データを事故処理実施機関に送信するシステムが提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−081091号公報
【特許文献2】特開2004−314784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような技術には、以下の問題点がある。センサーにより異常検知するシステムでは、車などの大きな物体に反応するため、ホームから人が転落した場合や、人が線路内に立ち入って少々動き回るような状況下では反応条件非合致によりセンサーが作動せず重大な死亡事故発生につながっているという問題がある。また、車両に直接停止制御を行う停止スイッチ等は、その場に居合わせる人によって適切に使用されていない状況もある。
【0006】
線路への人の立ち入りや、ホームからの転落等、一早く異状事態を発見するのは線路の近くを歩いている通行人や、近くの店で買い物をしている主婦、近くの交番職員だったということもある。踏切事故の対策として、警備員を多く配置するという「人による監視」がベストソリューションとして採用されている。ただし、常に異常事態発生に備えて各踏切に警備員を配置するのは人件費等のコストからも適切ではない。そこで、既に存在する資源を大幅に変更することなく、事故発生数軽減を実現することが望まれる。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、より迅速に異常事態を通知し、車両事故の減少を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の緊急通報システムは、少なくとも1以上の緊急通報端末と、運転指令センタ装置と、を備える緊急通報システムであって、前記緊急通報端末は、前記運転指令センタ装置と交信する交信手段と、車両停止通知を前記運転指令センタ装置に送信する通知手段と、を備え、前記運転指令センタ装置は、前記緊急通報端末と交信する交信手段と、前記車両停止通知を受信した場合は、車両に停止指令通知を行う指令手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る第1の緊急通報端末は、第1のボタンと、第2のボタンと、運転指令センタ装置と交信する交信手段と、車両停止通知を前記運転指令センタ装置に送信する通知手段と、を備え、前記第1のボタンが押下された場合は、前記交信手段により前記運転指令センタ装置と交信を行ない、前記第2のボタンが押下された場合は、前記通知手段により車両停止通知を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より迅速に異常事態を通知し、車両事故の減少を実現することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る緊急通報端末1の概略図である。緊急通報端末1は、2種のボタン、すなわち白ボタンA(符号2a)と赤ボタンB(符号2b)を備える。また、運転指令センタのオペレータと通信する際に利用できるインタフォン画面3、スピーカ(図示せず)、マイク4を備える。
【0013】
緊急通報端末1の白ボタンBを押下することにより運転指令センタのオペレータと交信が可能になる。この際、緊急停止命令信号は発されない。すなわち、白ボタンは主に「異状な状況を感じ取ったが、列車停止を命令するには至らない状況、しかし、リスクを孕んでいると思われる状況」で使用されることが想定される。
【0014】
緊急通報端末1の赤ボタンAは、無条件に列車を停止させたいときに使用する。赤ボタン押下により、緊急通報端末1は緊急停止命令信号を運転指令センタ装置6に送信する。運転指令センタ装置3は、受信した信号が緊急停止命令信号の場合は、緊急停止命令信号を送信した緊急通報端末1付近の踏切を通過する列車に停止指令信号を送り、停止させることが可能となる。
【0015】
緊急通報端末1は、図2に示すように、踏切付近の指定された店舗、交番に設置される。緊急通報端末1は広帯域ネットワーク網5を介して、運転指令センタに備えられているコンピュータ(運転指令センタ装置6)に通報する。
【0016】
ここで上記「指定された店舗、交番」とは行政より指定された踏切脇の交番や、付近に店舗を構える飲食店などである。踏切事故の多くの第1発見者や目撃証言は買い物客であったり、踏切脇店舗の店員であったりすることが多いためである。これにより踏切にて異常の事態を目撃した者が、即座に運転指令センタに列車の緊急停止信号を発することができる。
【0017】
運転指令センタ装置6は、緊急通報端末1と通信する際に利用できるインタフォン画面、スピーカ、マイクを有する(図示せず)。
【0018】
次に、本実施形態の動作処理について説明する。
【0019】
「踏み切り付近の指定された店舗、交番」に勤める人間が線路内にて「異状な状況を感じ取ったが、列車停止を命令するには至らない状況、しかし、リスクを孕んでいると思われる状況」を感じ取った際(酔っ払いが線路脇を千鳥足でふらついている、不審者が踏切の周囲をふらついている等)に、緊急通報端末1の白ボタンAを押下する。
【0020】
緊急通報端末1は、白ボタンAが押下された場合は、運転指令センタ装置と交信し、通報者は、画面3やマイク4を介して運転指令センタ側のオペレータと交信し、状況確認のやり取りができる。オペレータは状況を判断して、必要に応じ、踏切を通過する車両に対して徐行予告やその他注意喚起の通知を行うことが出来る。具体的には、運転指令センタ装置6は緊急通知を車両に送信する。
【0021】
次に、「踏み切り付近の指定された店舗、交番」に勤める人間が線路内にて「明らかに非常事態」を感じ取った際(自殺志願者と思われる人が警報機の鳴り始めた踏切内線路上で横たわっている等)に、緊急通報端末1の赤ボタンBを押下する。
【0022】
緊急通報端末1は、赤ボタンBが押下された場合は、緊急停止命令信号を即座に運用指令センタ装置に送信する。運転指令センタ装置6は、緊急停止命令信号を送信した緊急通報端末1付近の踏切を通過する車両に、列車停止指令を通知する。また、赤ボタンBが押下された際も、画面付インタフォン等でのオペレータとの状況確認のやり取りは可能である。
【0023】
上記実施形態により、列車事故の第一発見者になる確率の高い場所(例えば、踏み切り付近の店舗、交番)に緊急通報端末1を設置するため、細かな異常事態をも通知することができ、列車事故の減少を実現することができる。
【0024】
なお、上記動作処理を、CPUが実行するためのプログラムは本発明によるプログラムを構成する。このプログラムを記録する記録媒体としては、半導体記憶部や光学的及び/又は磁気的な記憶部等を用いることができる。このようなプログラム及び記録媒体を、前述した各実施形態とは異なる構成のシステム等で用い、そこのCPUで上記プログラムを実行させることにより、本発明と実質的に同じ効果を得ることができる。
【0025】
以上、本発明を好適な実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る緊急通報端末1の概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る緊急通報システムの全体概略図である。
【符号の説明】
【0027】
1 緊急通報端末
2a 白ボタンA
2b 赤ボタンB
3 インタフォン画面
4 マイク
5 ネットワーク
6 運転指令センタ装置
7 信号受信部
8 停止指令部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1以上の緊急通報端末と、運転指令センタ装置と、を備える緊急通報システムであって、
前記緊急通報端末は、
前記運転指令センタ装置と交信する交信手段と、
車両停止通知を前記運転指令センタ装置に送信する通知手段と、を備え、
前記運転指令センタ装置は、
前記緊急通報端末と交信する交信手段と、
前記車両停止通知を受信した場合は、車両に停止指令通知を行う指令手段と、を備えることを特徴とする緊急通報システム。
【請求項2】
前記緊急通報端末は、第1のボタンと第2のボタンとを備え、
前記第1のボタンが押下された場合は、前記交信手段により前記運転指令センタ装置と交信を行ない、
前記第2のボタンが押下された場合は、前記通知手段により車両停止通知を行うことを特徴とする請求項1記載の緊急通報システム。
【請求項3】
前記交信手段は、緊急通報端末が備えるインタフォン画面、マイク、スピーカを用いて行うことを特徴とする請求項1又は2記載の緊急通報システム。
【請求項4】
前記緊急通報端末は、所望の場所に通行人等が操作可能なように配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の緊急通報システム。
【請求項5】
前記所望の場所は、ホームの他、踏切近くの交番、店舗等であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の緊急通報システム。
【請求項6】
第1のボタンと、
第2のボタンと、
運転指令センタ装置と交信する交信手段と、
車両停止通知を前記運転指令センタ装置に送信する通知手段と、を備え、
前記第1のボタンが押下された場合は、前記交信手段により前記運転指令センタ装置と交信を行ない、
前記第2のボタンが押下された場合は、前記通知手段により車両停止通知を行うことを特徴とする緊急通報端末。

【図1】
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【図2】
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