説明

緊急避難用防煙具

【課題】使用のための煩雑な手順を省略し、その確実な使用を促進することで安全な避難を可能とする、構造が単純で製造コストも安くコンパクトな緊急避難用防煙具を提供する。
【解決手段】火災発生時に頭から被ることで煙の吸い込みを防止するための防煙袋(12)および該防煙袋を取り出し自在に収納する収納ケース(14)からなる緊急避難用防煙具(10)であって、前記防煙袋にはツマミ(16)が設けられ、また前記収納ケースには収納した防煙袋を取り出すための取出口(18)が形成されており、前記防煙袋は、前記取出口から前記ツマミを露出させた状態で収納ケースに収納され、火災発生時には前記ツマミを摘んで引っ張ることで防煙袋は広げられた状態で収納ケースから取り出される。ここで前記防煙袋には、これを立体的に押し広げるための柔軟性および復元性に富んだ芯材(24)がその表面に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災発生時に頭から被ることで煙を吸い込むことなく避難するための緊急避難用防煙具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住居用マンション、雑居ビル、ホテル、ショッピングセンターなどの建物では施設の高層化が進んでいる。このような施設で一端火災が発生すると、下層階から上層階へ流れて避難経路等に立ち込めた煙が避難の障害となり、甚大な被害をもたらすことがあった。また映画館、劇場、地下街のレストランやティーラウンジのように人が多数集まる場所などでは立ち込めた煙によるパニックによって円滑な避難が妨げられ、大きな被害が発生する虞もある。
ここで火災による被害は、炎によるものよりも、火災によって発生した煙や有毒ガスを吸い込むことによる呼吸困難や失神に起因するものが圧倒的に多いといった事実がある。
【0003】
従来から避難時には、1〜3分程度の間煙を吸い込むことなく移動することができれば、その生存率は飛躍的に上昇するといわれている。そのためこれまでも例えば特許文献1のように、避難時に頭部に被ることで煙を吸い込むことなく避難するための袋体である「防煙用フード」などの避難用の防煙袋も発案されている。
【特許文献1】特開平10−33700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述したような避難用の防煙袋の使用に際しては、1)折り畳まれた状態で収納袋に入れられた袋体を取り出し、2)折り畳まれた袋体を広げ、3)袋体の開口部を探し、4)袋体の開口部を両手で広げた後に上下に振ることで袋体の中に空気を入れて充分に膨らませ、5)これを頭から被り、6)首の部分で袋体の開口端を絞る、以上の動作が必要となるが、火災発生の緊急時には避難者(使用者)は気が動転していることが多く、上記の全ての動作を滞りなく行うことは実際上極めて困難であるのが実情であった。
【0005】
このように従来の避難用の防煙袋ではその使用に煩雑な動作を伴うため、その使用が正しい手順で行われないと、防煙袋の使用が不可能になったり、避難中に袋内の酸素が足りなくなる虞があり、不適切な使用は人命に関わるといった問題があった。また、暗所などでは防煙袋を直ちに探し出して手に取ることが困難なことも予想される。またこのような防煙袋は収納時にはコンパクトに収納できるものであることが必要となる。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、使用のための煩雑な手順を省略し、その確実な使用を促進することで安全な避難を可能とする、構造が単純で製造コストも安くコンパクトな緊急避難用防煙具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するため本発明は、火災発生時に頭から被ることで煙の吸い込みを防止するための防煙袋(12)および該防煙袋を取り出し自在に収納する収納ケース(14)からなる緊急避難用防煙具(10)であって、前記防煙袋にはツマミ(16)が設けられ、また前記収納ケースには収納した防煙袋を取り出すための取出口(18)が形成されており、前記防煙袋は、前記取出口から前記ツマミを露出させた状態で収納ケースに収納され、火災発生時には前記ツマミを摘んで引っ張ることで防煙袋は広げられた状態で収納ケースから取り出される、ことを特徴とする緊急避難用防煙具を提供する。
【0008】
ここで、前記ツマミ(16)は、防煙袋(12)を頭から被った際に頭頂部側に位置することとなる閉口端(12a)に設けられることが好ましい。
【0009】
また、前記防煙袋(12)には、これを立体的に押し広げるための柔軟性および復元性に富んだ芯材(24)がその表面に設けられていることが好ましい。より具体的には、前記芯材(24)は開口端(12b)の縁又はその近傍に設けられた環状枠であるか、防煙袋(12)の閉口端(12a)中央において交差する十字枠等の放射状枠であるものとする。
【0010】
また、前記防煙袋(12)には、開口端(12b)側を巾着状に絞るための帯状体(26)が設けられていることも好ましい。
【0011】
さらに、前記防煙袋(12)の開口端(12b)には、避難者の肩を覆うためのフード(28)が設けられていることも好ましい。
【0012】
なお、前記収納ケース(14)の一面にはこれを椅子の座部の裏面等の構造物に取り付けるための着脱自在テープ又は両面テープ(32)が接着されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の緊急避難用防煙具では、防煙袋にツマミを設け、ツマミが外部に露出するように収納ケースにコンパクトに収納するため、避難時にはこのツマミを摘んで収納ケースから防煙袋を引き出すと、直ちに防煙袋が引き伸ばされた状態で取り出される。そのため、後はこれに空気を取り入れるだけで直ちにこれを被り避難することができる。すなわち本発明の緊急避難用防煙具では、ツマミを摘んで引き出すだけで収納ケースから防煙袋を取り出すことができるため上記1)〜6)の動作のうち、比較的時間を要する1)および2)の動作を省略させ、防煙袋の迅速・確実な使用を促進することができる。
【0014】
ここで防煙袋に、これを立体的に押し広げるための柔軟性および復元性に富んだ芯材を、例えば防煙袋の開口端又はその近傍に環状枠として設けたり、ツマミ近傍において交差するような十字枠又は多骨枠として設けることで、防煙袋は収納ケースから引き出されると同時にこの芯材の付勢力によって立体的に押し広げられることとなる。これにより上記3)の動作も省略することができ、避難者はさらに迅速かつ円滑に防煙袋を装着して避難することができる。
【0015】
また防煙袋にその開口端を巾着状に絞るための帯状体を設けてやれば、避難者は頭から装着した防煙袋の開口端を確実に絞り、防煙袋内に取り入れた空気が外部に漏れ出ることや、外気(煙)が防煙袋内に侵入することを効果的に防止してやることができる。なお防煙袋の開口端を絞っていても両手が自由となるため、避難時にドアの開閉などの動作を滞りなく行うことができるようになる。
【0016】
さらに防煙袋の開口端に避難者の肩を覆うためのフードを設けてやれば、避難時などにも肩等の部分を保護してやることができる。
【0017】
なお収納ケースの一面に着脱自在テープや両面テープを接着しておいてやれば、座席の座部の裏面等の構造物への緊急避難用防煙具の取り付けを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の緊急避難用防煙具は、火災発生時に頭から被ることで煙を吸い込むことなく避難するための道具であり、特に、火災が発生した緊急時において避難者の気が動転している中でも、その装着を簡便化することで迅速かつ確実な使用を促し安全な避難を可能とするものである。本発明の緊急避難用防煙具は防煙袋と、防煙袋を取り出し自在に収納する収納ケースとから構成されている。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は本実施例の緊急避難用防煙具を構成する防煙袋を広げた状態を示した斜視図である。
この防煙袋12は柔軟性に富んだ不燃性(難燃性)で熱による変形を起こしにくい透明な樹脂からなり、一端を開口(開口端12b)し、他端を閉口(閉口端12a)する袋本体13および袋本体の閉口端12aの中心に突起するように設けられたツマミ16とから構成されている。
【0020】
袋本体13は一端を蓋をするごとく閉口する筒形状袋、図に表したようなマチが形成されて閉口する袋、マチがなく単に二つ折りのごとく接着されて閉口する袋など種々のものを採用することができる。袋本体13の大きさは、これを頭から被り首の部分で開口端12bを絞った際に、袋本体13の中に一定量の空気を保持できる大きさとなっている。具体的にはこの防煙袋12は直径が40cm程度(肩幅程度)、長さが50cm程度で、これを頭から被った状態で避難者が2〜3分程度呼吸することができる量の空気を蓄えることができる大きさとなっている。
【0021】
ツマミ16は硬質樹脂材により製作された外径が3cm程度のリング形状をしたリング部17と、リング部を支える板状の台座部19とからなり、リング部17と台座部19とは一体成型されている。またリング部17には人の指を容易に入れられる程度の大きさの穴が形成されている。なおツマミ16は、台座部19で袋本体13の閉口端12aを挟み込むことで袋本体に取り付けられている。
【0022】
図2は本実施例の緊急避難用防煙具を構成する収納ケース14を分解した状態を示した斜視図である。
この収納ケース14は硬質で不燃性(難燃性)で熱による変形を起こしにくい樹脂材料により製作された縦×横×高さが10cm×10cm×3cm程度の略直方体形状をしている。収納ケース14は、本体をなす基部14aとこの基部14aの上面に被さる蓋部14bとからなる。基部14aおよび蓋部14bとはほぼ同一形状の枡型をしており、両者を組み合わせることで内部空間を有する略直方体形状の収納ケース14が形成される。ここで基部14aと蓋部14bとはその一辺を蝶番または薄肉の樹脂材料により接合されており、両者はこれを支点としてワニ口状に開閉可能となっている。なお両者を樹脂材料により接合する場合には、基部14aと蓋部14bとを一体成型してやることが好ましい。さらにこの基部14aおよび蓋部14bの接合辺と対向する辺(開口辺)の中間位置には、上述した防煙袋12のツマミ16のリング部17を露出するための切り欠き18aが形成されている。この切り欠き18aはワニ口状に組み付けられる基部14aおよび蓋部14bの開口部の中心位置にそれぞれ形成したされており、基部14aおよび蓋部14bとを組み合わせることで縦×横が2cm×3cm程度の大きさの取出口18をなすこととなる。また基部14aと蓋部14bとは開口辺に設けたフック21を用いて嵌合することができるようになっており、すなわち基部14aおよび蓋部14bは組み合わせることで収納ケース14を形成することとなる。
なお基部14aの底面には、収納ケース14を椅子の座部の裏などの構造物に取り付けるための両面テープ32(破線)が接着されている。
【0023】
図3の側面断面図で示したように、開口端12b側から蛇腹状に折り畳まれた状態で(または防煙袋12は開口端12b側から巻き取られた状態で)、かつ、収納ケース14の取出口18からツマミ16のリング部17が露出するようにして基部14aと蓋部14bとの間に配置され、その後、基部および蓋部を開口辺のフック21を用いて嵌合することで収納ケース内の内部空間に収容され、すなわち収納ケース14内に収められる。
【0024】
以上に説明した本実施例の緊急避難用防煙具10は次のようにして使用される。
例えばオフィスや映画館などでは、緊急避難用防煙具10を座席の座部の裏面(構造物)にこの緊急避難用防煙具10のツマミ16が座部の前側を向くようにして両面テープ32で接着して常備しておく。火災が発生した場合に、緊急避難用防煙具10を使用して避難しようとする者(避難者)は、まず着席した状態で股の間から座面裏側に手を伸ばし、防煙袋12のツマミ16に指を掛けてこれを手前側に引き抜くようにする。この動作により収納ケース14内に収められた防煙袋12は、収納ケース14の取出口18から引き出される。なお防煙袋12は開口端12b側から蛇腹状等に折り畳まれて(または巻き取られて)収納されていたため、引き出された防煙袋12は既に引き伸ばされた状態となっている。そして避難者は防煙袋12の開口端12bを摘み1,2回上下に振ることで防煙袋の中に空気を入れる。その状態で防煙袋12を頭部から被り、首の部分において防煙袋の開口端12bを両手又は片手で絞り防煙袋の中の空気が漏れないようにすると同時に煙が防煙袋12の中に侵入してこないようにして避難を行う。このとき防煙袋12はほぼいっぱいに膨らんだ状態であることが好ましい。
【0025】
本実施例の緊急避難用防煙具10によれば、座席の座部の裏面など非常に手近な場所にコンパクトな緊急避難用防煙具を常備することで暗所などでもこれを容易に見つけることができ、またツマミ16を引っ張るといった簡易な動作によって防煙袋12を直ちに収納ケース14から取り出すことができる。さらに取り出すと同時に防煙袋12が引き伸ばされた状態となっているため煩雑な動作を伴うことなく迅速かつ適切な防煙袋12の装着が促進される。これにより防煙袋12を利用した迅速な避難が可能となる。
【実施例2】
【0026】
図4は本実施例の緊急避難用防煙具を構成する防煙袋を広げた状態を示した斜視図である。なお実施例1と同様の構成については同様の符号を付すことで重複した説明を省略する。
【0027】
この防煙袋12は柔軟性に富んだ不燃性(難燃性)で熱による変形を起こしにくい透明樹脂からなる一端を開口(開口端12b)し、他端を閉口(閉口端12a)する袋本体13および袋本体の閉口端の中心に突起するように設けられたツマミ16とから構成されている。
袋本体13には実施例1とほぼ同様のものが用いられるが、袋本体の表面には、これを立体的に押し広げるための柔軟性および復元性に富んだ芯材24が設けられている。なおこの芯材24は外力が加わっていない時にはその復元性により袋本体13を立体的に押し広げるが、使用者(避難者)が軽く握ることによって容易に変形する程度の柔軟性をもっている。芯材24は合成樹脂の線材又は針金などであり、図4(a)に表したように袋本体13の開口端12bの縁に環状枠のように取り付けられ、あるいは図4(b)に表したようにツマミ部分(後述)において交差する十字枠等の放射状枠のように取り付けられている。なお図面は省略するが環状枠および放射状枠の両方を袋本体13に取り付けてやることも可能である。
【0028】
図5に拡大して示すようにツマミ16は硬質樹脂材により製作された外径が3cm程度のリング形状をしたリング部17と、頂部にリング部が取り付けられたくさび形状をした軽量な台座部19とからなり、リング部17と台座部19とは一体成型されている。
リング部17には人の指を容易に入れられる程度の大きさの穴が形成されており、台座部19の両斜辺(くさび型のテーパー面)には後述する収納ケース14の係合小突起25が係合することとなる凹溝23が表裏面に形成されている。なおツマミ16は、2分割した台座部19を袋本体13(破線)の閉口端12aを挟止した状態で嵌合して組み合わせることで、袋本体に取り付けられる。
【0029】
図6は本実施例の緊急避難用防煙具10を構成する収納ケース14を分解した状態を示した斜視図であり、図7は防煙袋12を収納した状態の収納ケース14を示したX−X断面図である。
この収納ケース14は実施例1の収納ケースとほぼ同様の形状を有しているが、取出口18を形成する基部14aおよび蓋部14bの切り欠き18a部分には、上述したツマミ16の台座部19の凹溝23と係合する係合小突起25がそれぞれ形成されている。基部14aおよび蓋部14bはそれぞれの係合小突起25を、台座部19の凹溝23に係合することで組み合わされ、すなわち基部14aおよび蓋部14bは、ツマミ16の台座部19を介することで組み合わされて収納ケース14を形成する。なお係合小突起25と凹溝23との係合は、ツマミ16を収納ケース14から遠ざける方向(引き抜く方向)に引くことで容易に解除されるようになっている。
さらに基部14aの底面には収納ケース14を椅子の座部の裏布などの構造物に取り付けるための着脱自在テープ32(いわゆるマジックテープ(登録商標))が接着されている。
【0030】
防煙袋12は芯材24を折り曲げないように開口端12b側から蛇腹状に折り畳まれた状態で(または巻き取られた状態で)、かつ、収納ケース14の取出口18から防煙袋12のツマミ16(リング部17および台座部19の頂部)が露出するようにして基部14aと蓋部14bとの間に配置され、その後、基部14aおよび蓋部14bの係合小突起25を台座部19の凹溝23に係合させることで嵌着させた基部と蓋部との間の内部空間に収容され、すなわち収納ケース14内に収められる。
【0031】
以上に説明した本発明の緊急避難用防煙具10の使用方法は上述した実施例1の緊急避難用防煙具10の使用方法と同様であるが、取り出しの様子を示した図8に表したように、椅子(破線)の座部の裏面に取り付けられた緊急避難用防煙具を使用して避難しようとする者(避難者)がツマミ16に指を掛けてこれを手前側に引き抜くと、係合小突起25と凹溝23との係合が解除されて収納ケース14がワニ口状に開き、防煙袋12が収納ケース14から取り出される。収納ケース14から取出されると同時に防煙袋12は、芯材24の復元力によって立体的に押し広げられることとなる。
【0032】
本実施例の緊急避難用防煙具10によれば、ツマミ16を引き抜くといった簡易な動作によって防煙袋12を直ちに収納ケース14から取り出すことができ、さらに取り出すと同時に防煙袋12が立体的に押し広がるため、煩雑な動作を伴うことなく迅速かつ適切に防煙袋を装着することができる。これにより防煙袋12を利用した迅速な避難が可能となる。
【0033】
なお本実施例ではツマミ16を引き抜くと収納ケース14が開く構造としたが、これは芯材24が取り付けられた防煙袋12の取り出しを容易化するためのもので、芯材を傷めないようであれば収納ケースを実施例1と同様に防煙袋を取出口18から引き出して取り出す構造とすることも勿論可能である。
【実施例3】
【0034】
本実施例の緊急避難用防煙具の収納ケースは実施例2のものと同様のものであるためその説明および図面は省略し、以下には防煙袋に関する説明を図面に基づいて行う。
【0035】
図9に示したように芯材24が設けられた防煙袋の基本構成は、実施例2の図4(a)に示したものと同様であるが、防煙袋12の開口端12b側に防煙袋を巾着状に絞るための紐状体26が付加され、また、開口端に避難者(使用者)の肩を覆うためのフード28が付加されている。
【0036】
紐状体26は柔軟な紐であり、防煙袋12の開口端12b側に環状の内部通路を形成するように防煙袋を折り返すとともにその一部を接着することで形成した筒状通路27中に通されている。また、頭から防煙袋12を被った際には、のど仏の前側となる位置で筒状通路27からでた紐状体26の一部が多少垂れ下がるようになっている。
使用者(避難者)は防煙袋12を被った後に、垂れ下がった部分の紐状体26を引っ張って防煙袋の開口端12b側を絞ることで、防煙袋内に空気を保持した状態で首に止着することができる。なお開口端12b側を絞ることで引き出された紐状体26は、筒状通路27内面との摩擦抵抗によりある程度の力を加えなければ筒状通路内に引き戻されることはない。
【0037】
フード28は、防煙袋12を被った際に背面側となる開口端12bの部分から扇型に広がって40cm程度垂れ下がる不燃布であり、着用した際に胸元部分にスリットがくるようになっている。このフード28は上記の紐状体26により防煙袋12の開口端12b側を絞った際に、避難者(使用者)の肩や腕を覆うこととなる。すなわち避難者は腕を折り畳んで胸の前で組むことで、肩および腕をフード28内に収めることができる。
【0038】
本実施例の緊急避難用防煙具10では実施例1や実施例2の効果に加えて紐状体26により防煙袋12の開口端12bを絞れるようにすることで、避難者は両手が空いた状態での避難が可能となるため、避難袋を装着していることが例えばドアの開け閉めなどの動作を阻害することを回避することができる。またフード28を防煙袋12に設けることで、避難時に例えば火の粉などがかかり火傷する虞が比較的高い肩や腕を保護してやることができる。
【0039】
以上に説明したように本発明の緊急避難用防煙具によれば、使用のための煩雑な手順を省略し、その確実な使用を促進することで安全な避難を可能とすることができる。またこの緊急避難用防煙具は、構造が単純であるため製造コストが安く、低廉に提供することができる。
【0040】
なお本発明の緊急避難用防煙具を構成する防煙袋および収納ケースの形状や構造等は、上述した実施例に記載したものに限られず発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1の緊急避難用防煙具を構成する防煙袋を広げた状態を示した斜視図である。
【図2】実施例1の緊急避難用防煙具を構成する収納ケースを分解した状態を示した斜視図である。
【図3】実施例1の緊急避難用防煙具の縦断面図である。
【図4】実施例2の緊急避難用防煙具を構成する防煙袋を広げた状態を示した斜視図である。
【図5】実施例2の防煙袋のツマミを拡大して示した斜視図である。
【図6】実施例2の緊急避難用防煙具を構成する収納ケースを分解した状態を示した斜視図である。
【図7】実施例2の緊急避難用防煙具のX−X断面図である。
【図8】緊急避難用防煙具を取り出す様子を表した概念図である。
【図9】実施例3のの緊急避難用防煙具を構成する防煙袋を広げた状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
10 緊急避難用防煙具
12 防煙袋
12a 閉口端
12b 開口端
13 袋本体
14 収納ケース
14a 基部
14b 蓋部
16 ツマミ
17 リング部
18 取出口
18a 切り欠き
19 台座部
21 フック
23 凹溝
24 芯材
25 係合小突起
26 紐状体
27 筒状通路
28 フード
32 着脱自在テープ,両面テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災発生時に頭から被ることで煙の吸い込みを防止するための防煙袋(12)および該防煙袋を取り出し自在に収納する収納ケース(14)からなる緊急避難用防煙具(10)であって、
前記防煙袋にはツマミ(16)が設けられ、また前記収納ケースには収納した防煙袋を取り出すための取出口(18)が形成されており、
前記防煙袋は、前記取出口から前記ツマミを露出させた状態で収納ケースに収納され、火災発生時には前記ツマミを摘んで引っ張ることで防煙袋は広げられた状態で収納ケースから取り出される、ことを特徴とする緊急避難用防煙具。
【請求項2】
前記ツマミ(16)は、防煙袋(12)を頭から被った際に頭頂部側に位置することとなる閉口端(12a)に設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の緊急避難用防煙具。
【請求項3】
前記防煙袋(12)には、これを立体的に押し広げるための柔軟性および復元性に富んだ芯材(24)がその表面に設けられている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の緊急避難用防煙具。
【請求項4】
前記芯材(24)は開口端(12b)の縁又はその近傍に設けられた環状枠である、ことを特徴とする請求項3に記載の緊急避難用防煙具。
【請求項5】
前記芯材(24)は防煙袋(12)の閉口端(12a)中央において交差する十字枠等の放射状枠である、ことを特徴とする請求項3に記載の緊急避難用防煙具。
【請求項6】
前記防煙袋(12)には、開口端(12b)側を巾着状に絞るための帯状体(26)が設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の緊急避難用防煙具。
【請求項7】
前記防煙袋(12)の開口端(12b)には、避難者の肩を覆うためのフード(28)が設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の緊急避難用防煙具。
【請求項8】
前記収納ケース(14)の一面にはこれを椅子の座部の裏面等の構造物に取り付けるための着脱自在テープ又は両面テープ(32)が接着されている、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の緊急避難用防煙具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−167989(P2008−167989A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4766(P2007−4766)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(502101401)
【出願人】(502101423)
【出願人】(507013268)
【Fターム(参考)】