説明

緊急離脱用管継手

【課題】過大な引き離し力がかかったときに連結が解除され、かつ、再度の連結ができないようにした緊急離脱用管継手。
【解決手段】雄型部材14を雌型部材12内に施錠する施錠部材16を有する。施錠部材16は、バネ部材18によって雌型部材12の後方に付勢されており、雄型部材14を雌型部材12から前方に引き離す過大な力が加わると、バネ部材18に抗して前方へ変位し、雄型部材14の施錠を解除する。施錠部材16の内側には施錠子係止部材20が設けられており、雄型部材14が雌型部材12から引き出されるときに施錠部材16に対して相対的に前方へ動き、施錠部材16の施錠子16−1を雌型部材12の施錠子解放凹部12−2と当該施錠子係止部材20の係止凹部20−4との間に挟着し、当該施錠子係止部材20及び施錠子16−1が後方へ変位できないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合連結した使用状態にある雌型部材及び雄型部材に対して、それらを引き離す方向に一定以上の引っ張り荷重が作用した際に、それらの引き離し可能とした緊急離脱用管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の管継手は、雄型部材と雌型部材が連結されると施錠部材が働き、雄型及び雌型部材の連結が外れないようになっている。このため、このような通常の管継手では、管継手に接続されているパイプに何らかの原因により過大な引っ張り力がかかった場合、そのパイプ等が破損し、とくに高圧流体などを通しているときには、思わぬ事故を引き起こす虞がある。そこで、このような事故を防止するため、引き離し方向に一定以上の引っ張り力が加わった際に、雌型部材と雄型部材が分離して、パイプ等が破損するのを防止する緊急離脱用管継手が開発されている。
【0003】
このような緊急離脱用管継手としては、連結時に相互に後退して流体通路を開き分離時に相互に前進して流体通路を閉じる弁部材(バルブ)を共に内蔵した雌型部材と雄型部材とを備え、雌型部材に設けた施錠子(ロックボール)と雄型部材に設けた施錠子嵌合凹部(ロック溝)との係合・離脱により雌型部材と雄型部材との施錠連結及び開錠分離を可能とし、連結状態にある前記雌型部材と雄型部材に引き離し方向で所定以上の過大な引っ張り荷重がかかったときに、雌型部材と雄型部材が相対的に後退し、それに伴い、雌型部材と雄型部材に内蔵する弁部材が相互に前進して雌型部材の流体通路と雄型部材の流体通路をそれぞれ閉鎖するとともに、前記施錠子が施錠子嵌合凹部から離脱して雌型部材と雄型部材が分離するようになされ、また、分離した雌型部材と雄型部材は、再連結が可能な構成となっている緊急離脱用管継手が知られている。
【0004】
しかし、この緊急離脱用管継手では、雌型部材と雄型部材に内蔵する弁部材が雌型部材と雄型部材の流体通路を閉鎖した後で、雄型部材及び雌型部材が分離する前の状態では、雌型部材の弁部材と雄型部材の弁部材との間に流体が存在するため、この流体の圧力が高圧である場合には、その圧力により雄型部材及び雌型部材の一方が他方から勢いよく飛び出し、飛び出した部材が損傷したり、それら雄型部材や雌型部材の流体通路に装着されていたシールリングが外れたりするといった虞がある。また、分離した雌型部材と雄型部材の再連結が可能な構造とされているので、仮に、それらの部材に損傷などが生じている場合でも、これに気付かず雌型部材と雄型部材を連結してしまう虞がある。
【0005】
本願出願人は、このような点を解消するための緊急離脱用管継手を出願し特許を得ている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3871622号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、この特許文献に開示された緊急離脱用管継手を改良し、構造をより簡易とし、組立を容易にすることが可能な緊急離脱用管継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、
前端開口から後端開口まで延びる通路を有する筒状の雌型部材であって、該雌型部材の内周面に施錠子解放凹部を有する雌型部材と、
外側周面及び内側周面を有する筒状の施錠部材であって、該雌型部材の内周面に沿って、該雌型部材の前後方向で摺動可能とされており、前記外側周面から前記内側周面に半径方向に貫通する施錠子収納孔と、該施錠子収納孔内に収納された施錠子と、を有し、該施錠子が前記雌型部材の内周面によって半径方向内側に押圧されて当該施錠部材の内側周面から部分的に突出する施錠位置から、該施錠位置より前方で前記施錠子が前記施錠子解放凹部に半径方向で整合して該施錠子解放凹部に受け入れ可能とされた解錠位置に変位可能とされた施錠部材と、
前記雌型部材と前記施錠部材との間に設けられ、該施錠部材を後方に付勢して当該施錠部材を前記施錠位置とするバネ部材と、
前記施錠部材の内側周面に沿って該施錠部材に対して相対的に摺動可能で、前記施錠子が前記施錠子収納孔から半径方向内側に部分的に突出するのを許容する後方位置から、該後方位置よりも前記施錠部材に対して相対的に前方とされ、前記施錠部材が前記解錠位置とされたときに、前記施錠子の半径方向内側にあり、該施錠子が前記施錠子解放凹部から半径方向内側に抜け出るのを阻止する前方位置に変位可能とされた施錠子係止部材と、
前記雌型部材の前記前端開口から受け入れられて該雌型部材に連結された雄型部材であって、該雄型部材が前記雌型部材に連結された状態においては、前記施錠部材が前記バネ部材の付勢力により前記施錠位置にあり、前記施錠子係止部材が当該雄型部材によって前記後方位置とされ、これにより前記雌型部材の内周面によって半径方向内側に押圧されて当該施錠部材の内側周面から半径方向内側に部分的に突出する施錠子と嵌合して該雄型部材が前記施錠部材に対して相対的に前記前方へ変位するのを阻止するための施錠子嵌合凹部を有する雄型部材と、
を有し、
前記バネ部材の前記付勢力は、前記雄型部材に前記雌型部材から前方に引き抜く所定以上の力が加わると、前記施錠子嵌合凹部に受け入れられている前記施錠子を介して、前記施錠部材が前記雄型部材とともに前方に動かされ、前記施錠位置から前記解錠位置に変位されるのを許容し、それにより前記雄型部材の前記施錠子嵌合凹部が前記施錠子から外れて前記雌型部材から引き離されるようにする大きさとされ、
前記施錠子係止部材は、前記雄型部材が前記雌型部材から引き離された状態においては、前記前方位置とされ、前記施錠部材の内側周面より半径方向内側に突出する施錠子を受け止める係止凹部を有し、前記雄型部材が前記前端開口から前記雌型部材内に再度挿入されてきた該雄型部材により前記施錠子係止部材が後方に押圧されるときに、該係止凹部が前記施錠子を前記施錠子解放凹部との間で挟着して該施錠子係止部材及び施錠部材が後方へ変位するのを阻止し、当該雄型部材が前記雌型部材内に再結合されるのを防止するようにされていることを特徴とする、緊急離脱用管継手を提供する。
【0009】
すなわち、この緊急離脱用管継手では、いったん外れた雄型部材を雌型部材に再結合しようとした場合に、施錠子を施錠子係止部材の係止凹部と雌型部材の施錠子解放凹部で挟着し、それにより、施錠部材及び施錠子係止部材の後方への動きを阻止して雄型部材の再結合を阻止するものである。
【0010】
具体的には、
前記施錠子が球体状とされ、
前記係止凹部を画定している前記施錠子係止部材の面は、前記雄型部材が前記前端開口から前記雌型部材内に再度挿入されてきた該雄型部材により前記施錠子係止部材が後方に押圧されるときに、前記施錠子に係合して後方且つ半径方向外側への押圧力をかける第1部位を有し、
前記施錠子解放凹部を画定している前記雌型部材の面は、前記第1部位によって後方且つ半径方向外側に押圧される施錠子と係合して、反作用として、該施錠子を前方且つ半径方向内側への押圧力をかける第2部位を有し、
前記第1及び第2部位は、それらが前記施錠部材にかける前記押圧力の合力が、半径方向内向きとなる位置関係とされており、それにより、前記施錠子を前記施錠子解放凹部と前記係止凹部との間で挟着し、前記施錠部材及び前記施錠子係止部材が後方へ変位するのを阻止して、当該雄型部材が前記雌型部材内に再結合されるのを防止するようにすることができる。
【0011】
要するに、上記2つの部位は、球状とされた施錠子に対して作用及び反作用の力を加え、それらの力が当該施錠子を半径方向外側に変位しないようにして、該施錠子をこれら施錠子解放凹部及び係止凹部間で挟着し、それにより当該施錠子係止部材及び施錠部材が後方に変位するのを阻止する。
【0012】
この緊急離脱用管継手においては、
前記施錠部材は施錠子収納孔よりも後方に延びた後方延長部と、その後端から半径方向外側に突出したバネ係止部とを有し、
前記雌型部材の前記内周面が、前記施錠部材の前記外周面が摺動するようになされ且つ前記施錠子解放凹部が形成された小径部と、該小径部よりも内径が大きく、当該雌型部材における該小径部の後方位置とされた大径部と、該大径部と小径部との間の段差部とを有し、
前記バネ部材は、前記段差部と前記バネ係止部との間で、前記施錠部材の周りに設定されたコイルバネとされるようにすることができる。
【0013】
より具体的には、
前記施錠子係止部材が外側面と内側面とを有する筒状の部材とされ、前記外側面から内側面に半径方向で貫通する連行用孔を有し、該連行用孔内に、半径方向で変位可能とされた球状の連行用係合子を有し、
前記雄型部材が、前記雌型部材と連結された状態において、前記連行用係合子が前記施錠部材の内側周面と係合して前記施錠子係止部材の内側面から半径方向内側に部分的に突出する部分と係合される連行用係合子嵌合凹部を有し、
前記雄型部材が前記雌型部材から前方に引き出されるときに、該連行用溝に係合している連行用係合子によって前記施錠子係止部材が前記雄型部材と共に前方へ動き、前記後方位置から前記前方位置に変位するようになされており、
前記施錠部材の前記内側周面は、前記施錠子係止部材の前記外側面が前記雌型部材の施錠子解放凹部と半径方向で整合する位置となった時点で、前記連行用係合子と半径方向で整合する連行用係合子受入凹部を有し、該連行用係合子受入凹部が前記雄型部材の前記連行用溝から半径方向外側に押し出される連行用係合子を受け入れて、該雄型部材が前記施錠子係止部材を該雌型部材内に残して、該雌型部材から前方へ抜け出るようにすることができる。
【0014】
以下、本発明に係る緊急離脱用管継手の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る緊急離脱用管継手の実施の形態の一例を示しており、雌型部材と雄型部材との連結状態を示す縦断側面図。
【図2】雄型部材が雌型部材から引き離される途中で、施錠子が雄型部材に設けた施錠子溝から離脱した状態を示す縦断側面図。
【図3】雄型部材が雌型部材から引き離される途中で、施錠子係止部材が施錠子解放凹部の半径方向内側に達した状態を示す縦断面図。
【図4】引き離された後の雌型部材と雄型部材の縦断側面図。
【図5】図4における施錠子及び連行用係合子並びにその周りの状態を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る緊急離脱用管継手10は、図示のように、雌型部材12、雄型部材14及びこれら部材を分離可能に連結するための手段を構成する球状の施錠子16−1を備える施錠部材16、バネ部材(コイルバネ)18及び施錠子係止部材20を、その主要部材として有するものであり、図1に示すように雌型部材12及び雄型部材14を連結した状態に工場生産され、使用される。この使用状態においては、雌型部材12をその前後方向で貫通する通路12−1と雄型部材14をその前後方向で貫通している通路14−1は連通されている。この使用状態にあるときに、雄型部材14を雌型部材12から引き離す方向での所定以上の過大な力が加わると、施錠子16−1によって雄型部材14に連結されていた施錠部材16がコイルバネ18を圧縮しながら雌型部材12の前方に変位し、施錠子16−1が雌型部材12の内周面に形成されている環状の施錠子解放凹部12−2に受け入れられる位置になると、雄型部材14は該施錠子16−1を施錠子解放凹部12−2に押し込むようにして該施錠子から解放され、当該雌型部材12の前方に引き出される。以下、この緊急離脱用管継手10の構成を詳細に説明する。
【0017】
雌型部材12は、全体としては前端開口12−3から後端開口12−4まで延びる通路12−1を有する筒状の部材であり、図示の例では、円筒状の雌型本体12Aと、該雌型本体12Aの前端側にネジ結合され、コイルバネ18を雌型本体12Aの内部に保持する円筒状の前部部材12Bと、雌型本体12Aの後端側にネジ結合され、雌型部材12の前後方向に延びる通路12−1を開閉するための弁手段25(図4)を支持する円筒状の後部部材12Cとを有している。前部部材12Bは、前後方向に延びる内周面12−5を有し、雌型本体12Aは前部部材12Bの内周面12−5よりも大径の内周面12−6を有し、両内周面12−5、12−6の間に段差部12−7が形成されている。これら内周面12−5,12−6及び段差部12−7は当該雌型部材12の内周面を構成しており、前記施錠子解放凹部12−2は前部部材12Bの内周面に設けられている。
【0018】
施錠部材16は、外側周面16−2及び内側周面16−3を有する筒状の部材であって、雌型部材12の内周面12−5に沿って、雌型部材12の前後方向で摺動可能とされており、外側周面16−2から内側周面16−3に半径方向に貫通する施錠子収納孔16−4を有している。該施錠子収納孔16−4内には上述の施錠子16−1が半径方向で変位可能に収納されている。施錠子収納孔16−4は、半径方向内向きにテーパが付けられており、施錠子16−1が該施錠子収納孔16−4から半径方向内側に抜け出ないようにされている。施錠部材16は、施錠子16−1が雌型部材12の内周面12−5によって半径方向内側に押圧されて施錠部材16の内側周面16−3から部分的に突出して、雄型部材14の外表面14−2に環状に形成されている施錠子嵌合凹部14−3に嵌合する施錠位置(図1)から、該施錠位置より前方で施錠子16−1が施錠子解放凹部12−2に半径方向で整合して該施錠子解放凹部12−2に受け入れ可能とされた解錠位置(図3、図4)に変位可能とされている。施錠部材16は施錠子収納孔16−4よりも後方に延びた後方延長部16−5と、その後端から半径方向外側に突出したバネ係止部16−6とを有し、コイルバネ18を該バネ係止部16−6と雌型部材12の段差部12−7との間で、当該施錠部材16の周囲に配置するようにしており、該コイルバネ18が施錠部材16を後方の施錠位置(図1)に付勢するようにしている。
【0019】
コイルバネ18の付勢力は、雄型部材14に雌型部材12から前方に引き抜く過大な力が加わると、施錠子嵌合凹部14−3に受け入れられている前記施錠子16−1を介して、施錠部材16が前記施錠位置(図1)から前記解錠位置(図4)に変位されるのを許容し、それにより施錠子16−1が雄型部材14の施錠子嵌合凹部14−3から外れて雌型部材12の施錠子解放凹部12−2に部分的に受け入れられるのを許容し、それにより、雄型部材14が雌型部材12から引き離されるようにする大きさとされている。
【0020】
施錠子係止部材20は、本実施形態においては図4に明瞭に示される弁手段25の弁部材25−1と一体として形成されている。施錠子係止部材20について述べる前に、弁手段25を説明すれば以下の通りである。すなわち、弁手段25は、雌型部材12の後部部材12Cに一体的に形成されて前後方向に延びる筒状弁座部材25−2と、該筒状弁座部材25−2の外周面25−3上に摺動可能に設けられた筒状の弁部材25−1とを有する。筒状弁座部材25−2は、雌型部材12の後端開口12−4から前方に延びて前記雌型部材12の通路12−1の一部を構成し、前端で閉じられている通路25−4と、該通路25−4の前端近くで、該弁座部材25−2の内周面25−5から外周面25−3に斜めに貫通する弁孔25−6とを有している。弁部材25−1は、雌型部材12内に挿入される雄型部材14によって係合され当該雌型部材12の後方に押し込まれて上記弁孔25−6を解放する開放位置(図1)とされており、雄型部材14が雌型部材12から引き離されたときに、該弁部材25−1と雌型部材12の後部部材12Cとの間に設定された圧縮コイルバネ27によって、該弁孔25−6を閉止する閉止位置(図4)に変位するようにされている。弁部材25−1は上述のように筒状の部材であり、その内周面には前後方向で間隔をあけた一対のシールリング25−7が設けられており、図4に示す閉止位置にあるときに、これらシールリング25−7が弁孔25−6の前後において、弁座部材25−2の外周面25−3と密封係合して弁孔25−6を確実に密封するようにしている。
【0021】
弁部材25−1と一体に形成されている施錠子係止部材20は、雄型部材14が所定以上の過大な引っ張り力により雌型部材12から前方に変位されて施錠子16−1が雄型部材14から外れて雌型部材12の施錠子解放凹部12−2内に受け入れられたときに(図3、図4)、該雄型部材14と共に前方に動いて、該施錠子解放凹部12−2の半径方向内側の位置となり、施錠子16−1が図1に示す元の半径方向内側の位置に戻るのを阻止するためのものである。具体的には、該施錠子係止部材20は、外側面20−1と内側面20−2とを有する筒状の部材とされ、外側面20−1から内側面20−2に半径方向で貫通する連行用孔20−3を有し、該連行用孔20−3内に、半径方向で変位可能とされた球状の連行用係合子32を有している。この連行用係合子32は、図1に示す当該緊急離脱用管継手10の通常の使用状態においては、雄型部材14の外表面14−2に形成されている連行用係合子嵌合凹部14−4に嵌合されており、雄型部材14が上述のように所定以上の過大な引っ張り力により雌型部材12の前方に引っ張られるときに、施錠子係止部材20を該雄型部材14とともに連行する。これは、雄型部材14が雌型部材12から急激に引き出されたときに、圧縮コイルバネ27の前方への付勢力だけでは、施錠子係止部材20が雄型部材14の動きから取り残され、雄型部材14が雌型部材12から引き出された後に、施錠子解放凹部12−2へ押し込まれた施錠子16−1が再び元の半径方向内側位置に戻る虞があるので、これを防止するために施錠子係止部材20を雄型部材14に連行させるものである。
【0022】
雄型部材14は、全体として前端開口14−5(図4)から後端開口14−6に延びる通路14−1を有する筒状の部材で、図示の実施形態においては、筒状の雄型本体14−7と、該雄型本体14−7にネジ結合された筒状の後部部材14−8と、雄型本体14−7内で通路14−1に沿って前後方向に変位可能とされた弁部材15と、該弁部材15を通路14−1の前端において雄型本体14−7に形成された弁座14−9に押圧する圧縮コイルバネ17とを有しており、上記施錠子嵌合凹部14−3及び連行用係合子嵌合凹部14−4は雄型本体14−7の外周面に形成されている。弁部材15は、円盤状の前端部15−1及び該前端部15−1の後側周縁から後方に筒状に延びる前端部15−1よりも大径とされたガイド部15−2を有し、また、前端部15−1の後側面から該前端部15−1を斜めに貫通して、ガイド部15−2よりも小径とされた前端部15−1の外周面15−3に開口する弁孔15−4を有する。
【0023】
図1に示す緊急離脱用管継手10の通常の使用状態においては、コイルバネ18の付勢力により施錠位置にある施錠部材16の施錠子16−1が、雄型部材14の施錠子嵌合凹部14−3に嵌合され、該雄型部材14を雌型部材12内に施錠連結している。このとき、施錠子係止部材20はこの雄型部材14によって係合されて後方位置(図1)とされ、施錠子16−1が施錠子嵌合凹部14−3に嵌合するのを許容している。また、雌型部材12の弁部材25−1及び雄型部材14の弁部材15が、それぞれ、雄型部材14の前端部14−10及び雌型部材12の筒状弁座部材25−2の前端部25−8によって後方に押し込まれ、雌型部材12の通路12−1と雄型部材14の通路14−1とを連通している。
【0024】
この通常の使用状態にあるときに、雄型部材14を雌型部材12から引き離す所定以上の過大な力が加わると、雄型部材14は施錠子16−1を介して施錠部材16を、コイルバネ18に抗して当該雌型部材12の前方に変位させる。このとき連行係合子32を介して施錠子係止部材20をも雌型部材12の前方に変位させる。施錠部材16の施錠子収納孔16−4が雌型部材12の施錠子解放凹部12−2に半径方向で整合する位置になると、施錠子16−1は雄型部材14の施錠子嵌合凹部14−3から半径方向から施錠子解放凹部12−2内に半径方向外側に変位され、施錠子16−1による雄型部材14の施錠部材16に対する係合が外れて、該雄型部材14が雌型部材12の前方に引き離される。
【0025】
このような状態になるときには、前述のように、施錠子係止部材20が施錠子解放凹部12−2の半径方向内側に来て、施錠子16−1が半径方向内側に変位して元の位置に戻るのを阻止する。施錠部材16の内側周面16−3は、施錠子係止部材20の外側面20−1が雌型部材12の施錠子解放凹部12−2と半径方向で整合する位置となった時点で、連行用係合子32と半径方向で整合する連行用係合子受入凹部16−7を有し、該連行用係合子受入凹部16−7が雄型部材14の連行用係合子嵌合凹部14−4から半径方向外側に押し出される連行用係合子32を受け入れて、雄型部材14が施錠子係止部材20を雌型部材12内に残して、雌型部材12から前方へ抜け出るようにする。
【0026】
施錠子係止部材20は、この元の位置に戻ろうとする施錠子16−1を受け止める係止凹部20−4を有する。雄型部材14が雌型部材12の前端開口12−3から雌型部材12内に再度挿入されてきたときは、施錠子係止部材20は、図5に矢印F1で示すように、雄型部材14によって後方に押圧され、それに伴い係止凹部20−4を画定している施錠子係止部材20の面の第1の部位、図示の例では、係止凹部20−4の開口縁の前方部分20−5が施錠子16−1を押圧し、施錠子16−1に後方且つ半径方向外側への押圧力F2をかける。このとき、施錠子解放凹部12−2を画定している雌型部材12の面の第2の部位、図示の例では、施錠子解放凹部12−2の後方傾斜面12−8における上記押圧力F2の作用線が通る位置12Dよりも僅かに半径方向外側前方の部位12−9が施錠子16−1と係合して施錠子16−1に反力F3をかけるようになっている。従って、これら施錠子16−1にかかる力F2、F3の合力は、施錠子16−1に対する半径方向内向き成分を持つ力F4となり、施錠子16−1を施錠子係止部材20の係止凹部20−4に押し付けて該施錠子16−1を固定する状態となる。このため、施錠子16−1は、当該施錠子係止部材20が後方に変位するのを阻止して、雄型部材14が雌型部材12内に挿入されるのを阻止し、雌型部材12と再結合されるのを防止するようにされている。
【0027】
以上、本発明に係る緊急離脱用管継手の一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、施錠子係止部材20は、弁部材25−1とは別体とすることができる。この場合、施錠子係止部材20を前方に付勢する圧縮コイルバネ27と同等の圧縮コイルバネを設けることになる。また、上述の説明では、雄型部材14に過大な引っ張り力がかかり雌型部材12から引き出されるものとして説明したが、当然にその逆の場合も成り立つ。また、係止凹部20−4は、前記雄型部材が前記雌型部材から引き離された状態において、施錠部材16の内側周面16−3より半径方向内側に突出する施錠子16−1を受け止めるために施錠子係止部材20の外側面20−1に設けられた凹んだ部分であり、図示の実施形態に示したような溝状のものである必要は無く、雌型部材12内に再度挿入されてきたときに、前述のように、施錠子16−1に後方且つ半径方向外側への押圧力F2をかける開口縁の前方部分20−5だけのある段状のものとすることができる。
【符号の説明】
【0028】
緊急離脱用管継手10;雌型部材12;通路12−1;施錠子解放凹部12−2;前端開口12−3;後端開口12−4;内周面12−5;内周面12−6;段差部12−7;後方傾斜面12−8;雌型本体12A;前部部材12B;後部部材12C;雄型部材14;通路14−1;外表面14−2;施錠子嵌合凹部14−3;連行用係合子嵌合凹部14−4;前端開口14−5;後端開口14−6;雄型本体14−7;後部部材14−8;弁座14−9;前端部14−10;弁部材15;前端部15−1;ガイド部15−2;外周面15−3;弁孔15−4;施錠部材16;施錠子16−1;外側周面16−2;内側周面16−3;施錠子収納孔16−4;後方延長部16−5;バネ係止部16−6;連行用係合子受入凹部16−7;圧縮コイルバネ17;バネ部材(コイルバネ)18;施錠子係止部材20;外側面20−1;内側面20−2;連行用孔20−3;係止凹部20−4;開口縁の前方部分20−5;弁手段25;弁部材25−1;筒状弁座部材25−2;外周面25−3;通路25−4;内周面25−5;弁孔25−6;シールリング25−7;圧縮コイルバネ27;連行用係合子32

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端開口から後端開口まで延びる通路を有する筒状の雌型部材であって、該雌型部材の内周面に施錠子解放凹部を有する雌型部材と、
外側周面及び内側周面を有する筒状の施錠部材であって、該雌型部材の内周面に沿って、該雌型部材の前後方向で摺動可能とされており、前記外側周面から前記内側周面に半径方向に貫通する施錠子収納孔と、該施錠子収納孔内に収納された施錠子と、を有し、該施錠子が前記雌型部材の内周面によって半径方向内側に押圧されて当該施錠部材の内側周面から部分的に突出する施錠位置から、該施錠位置より前方で前記施錠子が前記施錠子解放凹部に半径方向で整合して該施錠子解放凹部に受け入れ可能とされた解錠位置に変位可能とされた施錠部材と、
前記雌型部材と前記施錠部材との間に設けられ、該施錠部材を後方に付勢して当該施錠部材を前記施錠位置とするバネ部材と、
前記施錠部材の内側周面に沿って該施錠部材に対して相対的に摺動可能で、前記施錠子が前記施錠子収納孔から半径方向内側に部分的に突出するのを許容する後方位置から、該後方位置よりも前記施錠部材に対して相対的に前方とされ、前記施錠部材が前記解錠位置とされたときに、前記施錠子の半径方向内側にあり、該施錠子が前記施錠子解放凹部から半径方向内側に抜け出るのを阻止する前方位置に変位可能とされた施錠子係止部材と、
前記雌型部材の前記前端開口から受け入れられて該雌型部材に連結された雄型部材であって、該雄型部材が前記雌型部材に連結された状態においては、前記施錠部材が前記バネ部材の付勢力により前記施錠位置にあり、前記施錠子係止部材が当該雄型部材によって前記後方位置とされ、これにより前記雌型部材の内周面によって半径方向内側に押圧されて当該施錠部材の内側周面から半径方向内側に部分的に突出する施錠子と嵌合して該雄型部材が前記施錠部材に対して相対的に前記前方へ変位するのを阻止するための施錠子嵌合凹部を有する雄型部材と、
を有し、
前記バネ部材の前記付勢力は、前記雄型部材に前記雌型部材から前方に引き抜く所定以上の力が加わると、前記施錠子嵌合凹部に受け入れられている前記施錠子を介して、前記施錠部材が前記雄型部材とともに前方に動かされ、前記施錠位置から前記解錠位置に変位されるのを許容し、それにより前記雄型部材の前記施錠子嵌合凹部が前記施錠子から外れて前記雌型部材から引き離されるようにする大きさとされ、
前記施錠子係止部材は、前記雄型部材が前記雌型部材から引き離された状態においては、前記前方位置とされ、前記施錠部材の内側周面より半径方向内側に突出する施錠子を受け止める係止凹部を有し、前記雄型部材が前記前端開口から前記雌型部材内に再度挿入されてきた該雄型部材により前記施錠子係止部材が後方に押圧されるときに、該係止凹部が前記施錠子を前記施錠子解放凹部との間で挟着して該施錠子係止部材及び施錠部材が後方へ変位するのを阻止し、当該雄型部材が前記雌型部材内に再結合されるのを防止するようにされていることを特徴とする、緊急離脱用管継手。
【請求項2】
前記施錠子が球体状とされ、
前記係止凹部を画定している前記施錠子係止部材の面は、前記雄型部材が前記前端開口から前記雌型部材内に再度挿入されてきた該雄型部材により前記施錠子係止部材が後方に押圧されるときに、前記施錠子に係合して後方且つ半径方向外側への押圧力をかける第1部位を有し、
前記施錠子解放凹部を画定している前記雌型部材の面は、前記第1部位によって後方且つ半径方向外側に押圧される施錠子と係合して、反作用として、該施錠子を前方且つ半径方向内側への押圧力をかける第2部位を有し、
前記第1及び第2部位は、それらが前記施錠部材にかける前記押圧力の合力が、半径方向内向きとなる位置関係とされており、それにより、前記施錠子を前記施錠子解放凹部と前記係止凹部との間で挟着し、前記施錠部材及び前記施錠子係止部材が後方へ変位するのを阻止して、当該雄型部材が前記雌型部材内に再結合されるのを防止するようにされていることを特徴とする、請求項1に記載の緊急離脱用管継手。
【請求項3】
前記施錠部材は施錠子収納孔よりも後方に延びた後方延長部と、その後端から半径方向外側に突出したバネ係止部とを有し、
前記雌型部材の前記内周面が、前記施錠部材の前記外周面が摺動するようになされ且つ前記施錠子解放凹部が形成された小径部と、該小径部よりも内径が大きく、当該雌型部材における該小径部の後方位置とされた大径部と、該大径部と小径部との間の段差部とを有し、
前記バネ部材は、前記段差部と前記バネ係止部との間で、前記施錠部材の周りに設定されたコイルバネとされている、請求項1又は2に記載の緊急離脱用管継手。
【請求項4】
前記施錠子係止部材が外側面と内側面とを有する筒状の部材とされ、前記外側面から内側面に半径方向で貫通する連行用孔を有し、該連行用孔内に、半径方向で変位可能とされた球状の連行用係合子を有し、
前記雄型部材が、前記雌型部材と連結された状態において、前記連行用係合子が前記施錠部材の内側周面と係合して前記施錠子係止部材の内側面から半径方向内側に部分的に突出する部分と係合される連行用係合子嵌合凹部を有し、
前記雄型部材が前記雌型部材から前方に引き出されるときに、該連行用係合子嵌合凹部に係合している連行用係合子によって前記施錠子係止部材が前記雄型部材と共に前方へ動き、前記後方位置から前記前方位置に変位するようになされており、
前記施錠部材の前記内側周面は、前記施錠子係止部材の前記外側面が前記雌型部材の施錠子解放凹部と半径方向で整合する位置となった時点で、前記連行用係合子と半径方向で整合する連行用係合子受入凹部を有し、該連行用係合子受入凹部が前記雄型部材の前記連行用係合子嵌合凹部から半径方向外側に押し出される連行用係合子を受け入れて、該雄型部材が前記施錠子係止部材を該雌型部材内に残して、該雌型部材から前方へ抜け出るようにした請求項3に記載の緊急離脱用管継手。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104541(P2013−104541A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251042(P2011−251042)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000227386)日東工器株式会社 (158)
【Fターム(参考)】