説明

緑化吸音材及び緑化吸音構造

【課題】 騒音発生源(車両、路面等)からの騒音等を低減するとともに、緑化されて美観性が高く、施工性が良好である緑化吸音材及び緑化吸音構造を提供する。
【解決手段】 本発明の緑化吸音材1は、路面に埋設または敷設される吸音基盤材であり、前記吸音基盤材は容器2の内部にシート状保水材4、多孔性排水材5、および立体網状体6と土壌7を充填した植生基盤層を有し、土壌7の上面には植物8が植生されて植物生育層を形成しており、植物8の上面は熱可塑性樹脂を含むフィラメント9が規則的または不規則に形成される網状体層を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路または鉄道などの路面において、車両の走行時等に発生する騒音を吸収し、同時に埋設または敷設されて路面の緑化を可能とする緑化吸音材、および緑化吸音構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車や鉄道などの交通機関により様々な環境問題が発生しており、騒音が社会問題にもなっている。その騒音対策として、例えば、高速道路などは車両の騒音を住宅街などに漏洩させないように防音壁などが設置されている。しかし、通常の防音壁は騒音の外部漏洩は可能であっても、見た目が非常に無機質であり、それらを解消するために見た目が優しくなるように、緑化した防音壁等の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許第2908691号公報(特許文献1)では、防音壁に緑化のための土壌を配し、防音効果を保持したまま、緑化を満足することの出来る緑化防音壁が提案されている。また、特開2001−314122号公報(特許文献2)では、少なくとも一つの側面に緑化処理を施し、上面付近に植裁用土を配置した、ガード柵としての機能を果たす防音効果を有する六面体植生ユニットが提案されている。さらに、特許第3054749号公報(特許文献3)では、路肩等に一定間隔を隔てて立設した支柱間に、籠を横架しつつ、籠内に緑化基材を充填しながら積み上げた防音壁が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2908691号公報
【特許文献2】特開2001−314122号公報
【特許文献3】特許第3054749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記防音壁等には、以下の問題があった。特許文献1に記載の緑化防音壁では、防音壁の上方、下方、中間などに植生のための土壌を配しているため、全面に緑化が施されておらず、また、防音効果をもつ基材上に緑化が施されているため、壁の反対側には騒音などが抜けにくいが、騒音発生源側に音を反射するため、結果として余計に発生源側の騒音がひどくなる傾向にある。特許文献2に記載の植生ユニット、および特許文献3に記載の防音壁では、それぞれ壁面に金網を通して植物が植生されているが、雨,風等の天候や、植物の自重等により崩落しやすいだけでなく、植物が生育して都度手入れが必要となるなどの問題があった。
【0006】
本発明は、かかる課題を鑑みてなされたものであり、騒音発生源である路面、車両等からの騒音を低減するとともに、緑化されて美観性が高く、施工性が良好である緑化吸音材及び緑化吸音構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の緑化吸音材は、路面に埋設または敷設される吸音基盤材であり、前記吸音基盤材の上面には、植物が植生されており、前記植物の上面は、熱可塑性樹脂を含むフィラメントが規則的または不規則に形成される網状体層を形成していることを特徴する。
【0008】
本発明の緑化吸音構造は、熱可塑性樹脂を含むフィラメントが規則的または不規則に形成される網状体層が植生された植物を被覆した吸音基盤材を、路面に埋設または敷設してなることを特徴する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の緑化吸音材は、道路の路肩、中央分離帯、グリーンベルト地帯等、鉄道の線路脇、線路内枕木間、駅プラットフォーム等の路面に埋設または敷設することにより、車両等の走行時に発生する車両や路面等の騒音を吸収するため、車両内部および外部に対する騒音被害を低減することができる。また、緑化吸音材を埋設した路面は緑化されているため、美観性が高く、植物の持つ炭酸ガス同化作用により、二酸化炭素低減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の緑化吸音材の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の緑化吸音材は、路面に埋設または敷設される。路面に埋設または敷設することにより、従来の防音壁ではなしえなかった、騒音発生源からの垂直方向への吸音、および騒音の反射共鳴の抑制による騒音の低減することができる。
【0012】
本発明は、吸音基盤材の上面に植物が植生されている(以下、「植物生育層」ともいう)。植物生育層は、路面から少なくとも一部が露出している構造を採り、植物自体の持つ音の吸収力および植物生育層の多孔性により、路面上を走行する車両および路面から発生する騒音を適度に吸音することができる。
【0013】
前記植物生育層の上面は、熱可塑性樹脂を含むフィラメントが規則的または不規則に形成される網状体層を形成している。網状体層は、網状体層自体の多孔性により周囲の騒音を吸音して低減することができる。また、網状体層は、構成するフィラメントが長期間にわたり変性しない樹脂を用いると、植物生育層内の植物が過度に生育することを抑制する、すなわち防草効果を有する。さらにまた、網状体層は、植物を人が踏みつけて傷つけたり、動物やゴミ等から保護する効果も有している。
【0014】
前記フィラメントは、熱可塑性樹脂を含む。フィラメントが金属であると、風雨にさらされたときに、さびなどが発生するおそれがある。また、金属は熱可塑性樹脂と比較すると比重が大きいため、緑化吸音材全体の質量が増え、施工性に劣ることがある。
【0015】
前記フィラメントに用いられる熱可塑性樹脂は、熱可塑性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはその共重合体等のポリオレフィンが好適に使用される。また、価格などの優位性からポリエステルなども使用できる。その他にも、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ乳酸,ポリブチレンサクシネートなど脂肪族ポリエステル樹脂等の生分解性樹脂などを使用してもよい。なかでも、風雨に対して耐久性を有し、長時間使用しても過度に劣化や変性することがない熱可塑性樹脂を用いると、植物生育層の上面を被覆することにより、植生された植物が過度に生長することを抑制する働きがあり、好ましい。
【0016】
前記フィラメントは、上記熱可塑性樹脂を単独か、2種類以上混合するか、または2種類以上の樹脂を芯鞘型、並列型、分割型、海島型等の形状に複合して用いることができる。
【0017】
前記フィラメントに占める熱可塑性樹脂の含有率は、50質量%以上であると、所定の機能が発揮できるので好ましい。より好ましい含有率は、70質量%以上であり、さらにより好ましくは90質量%以上である。フィラメントには、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の材料を添加してもよい。例えば、フィラメントは、難燃性や耐候性を有しているとより好ましい。難燃剤や防炎剤等を含有することにより、車両などが緑化吸音材付近の事故等で火災が発生したときに、火災による被害を軽減することができる。また、耐候剤を含有することにより、主として屋外に埋設されたときに、光などに対する劣化を抑制することができる。また、顔料等の着色剤を添加してフィラメントを着色することも好ましい。着色させる色は特に制限されず、所望の色彩に着色することができる。例えば、植物に近い色彩の緑色系統の色、枯れた植物や土、土砂に近い色彩の褐色系統の色、砂利や線路状に敷設するバラストに近い灰色や黒色系統の色などに着色させることが可能である。この中でも、景観の緑化、埋設する地盤の緑化を目的とする場合は、植物と同化する緑色系統の色が好ましい。他に添加することができるものとしては、例えば、安定剤、各種小動物の忌避剤等を添加することができる。
【0018】
前記フィラメントは、その繊維直径が0.01〜2mmであることが好ましい。より好ましい繊維直径は、0.05〜1.5mmである。フィラメントの繊維直径が0.01mm未満であると、繊維強力が低くなるので、植物の生長、または人や動物に踏みつけられたときにフィラメントが破壊される場合がある。繊維直径が2mmを超えると、美観を損なうことがある。
【0019】
前記網状体層の目付は、5〜2000g/m2であることが好ましい。より好ましい目付は10〜1000g/m2であり、さらにより好ましくは100〜500g/m2である。網状体層の目付が5g/m2未満であると、フィラメント間の空隙が大きくなり、植物が生長した際にフィラメント間の空隙から無制限に伸び、防草効果を損なうことがある。また、吸音効果もなくなる傾向にある。また、目付が2000g/m2を超えると、フィラメント間の空隙が小さくなりすぎるので、日光や水分が植物に到達しにくく、植物の生長を阻害して枯れてしまう場合がある。また、音が植物生育層まで達しなくなり、吸音効果が低下することがある。
【0020】
前記網状体層の厚みは、植物の頂点または頂面から網状体の頂点または頂面までの距離を定規またはノギスにより測定して得られる数値であり、0.01〜25mmであることが好ましい。より好ましくは、0.05〜5mmである。網状体層の厚みが0.01mm未満であると、網状体層の強力が低下してもろくなることがある。網状体層の厚みが25mmを超えると、植物生育層に日光や水分が植物に到達しにくく、植物の生長を阻害して枯れてしまう場合があるか、植物が目に見えにくくなるので美観上も低下する。特に、後述する植物生育層に直接溶融したフィラメントを垂下させてランダムループ状のフィラメントを集積させて網状体層を形成する場合、網状体層の厚みは0.05〜6mmであることが好ましく、2〜5mmであることがより好ましい。
【0021】
前記網状体層は、熱可塑性樹脂を含むフィラメントが規則的または不規則に形成されている。フィラメントが規則的に形成された形態は、例えば、網状に織成、編成、または成型された熱可塑性のネットが挙げられる。上記ネットは、より強固な防草効果が期待できる。
【0022】
前記網状体層におけるフィラメントが不規則に形成された形態は、例えば、ランダムループ状のフィラメントを集積した網状体が挙げられる。このような網状体は、平面状または立体状のいずれにも容易に加工することができ、好ましい。特に、植物生育層に直接溶融したフィラメントを垂下させてランダムループ状のフィラメントを集積させると、網状体層は植物生育層の植物の凹凸に沿って被覆するので、植物が固定されて管理が容易となるとともに、防草効果も高くなる。さらに、網状体層が植物の凹凸に沿って網状体層自体も凹凸が形成されるので、車両等が通過するときの風圧に対してもばたついたりすることがなく、耐久性が高い。
【0023】
前記植物生育層の上面に直接集積されたランダムループ状フィラメントからなる網状体は、以下の方法で製造することができる。まず、熱可塑性樹脂をその融点より30℃以上高い温度にて溶融し、押出機によって押し出す。その際、網状体に所定の機能を付与するために、前述した添加剤等を直接または添加剤等を混合したマスターバッチを適宜添加してよい。押出機より吐出される樹脂は、ノズルを通過して、フィラメントの形状となって紡出される。使用するノズルは、例えば、オリフィス径0.1〜3mm、オリフィスピッチ0.5〜20mmのものであってよい。次に、ノズルから吐出されたフィラメントは、走行する搬送体に載置された、植物が植生された吸音基盤材の上に垂下して集積される。このとき、溶融または軟化状態にあるフィラメントは、2以上のフィラメントの交差点の少なくとも一部において熱接着しながら、植物が植生された植物生育層の凹凸に沿って被覆するように固化して網状体層を形成する。網状体層の目付、厚みは、ノズルの数、樹脂の吐出量、搬送体の速度等により調整することができる。
【0024】
本発明に用いられる植物は、特に限定されないが、生長しにくく、上方向にむかって伸びにくく、自然の水分でも枯れない植物を用いることが、管理上好ましい。また、吸音効果を上げるためには、植物の葉の形状は、複雑であり、植物の葉や茎による空隙を多く持つものが好ましい。具体的には、セダム種、メキシコマンネン草、竜のひげ、ヘデラ等が好ましい。
【0025】
本発明の緑化吸音材の基材となる吸音基盤材は、植物生育層及び網状体層を配置できるものであれば特に限定はされない。例えば、植物生育層の下面には、植物育成用の土壌を充填することが好ましい。前記土壌は、質量の軽い方が好ましい。土壌の質量が軽くなると、吸音緑化材そのものの質量が軽くなるため、埋設または敷設するときの施工が容易となる。好適な土壌としては、例えば軽量土が挙げられる。その他、鹿沼土等の軽石、パーライトなどもよく、また吸音性や軽量性など、本発明の緑化吸音材が奏する効果を損なわない範囲内であれば、一般的な植生材に使用される土壌、例えば赤玉土、桐生砂や富士砂といった砂、腐葉土やピートモス、各種堆肥、バーミキュライト、砂利を含む土壌としてもよい。
【0026】
前記土壌は、上述した土壌成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲内において、ポリアクリル酸ナトリウムなどの高分子吸水ポリマー(Super Absorbent polymer いわゆるSAP)を含んでいることが好ましい。土壌にあらかじめ高分子吸水ポリマーを含んでいると、土壌自体の水分保持力が高くなり、降雨時に水分が土壌中に保持され、散水等の作業が低減できるからである。高分子吸水ポリマーとしては、市販されているもので土壌中に均一に混合できるものであれば特に制限されず、例えば、住友精化より入手可能なアクアキープ(登録商標)、日本触媒より入手可能なアクアリック(登録商標)、アクアホープ(登録商標)等がある。土壌に対する高分子吸水ポリマーの添加量は、保水性能が向上し、吸音性能が低下しない範囲であれば特に制限されないが、土壌に対して0.1〜40質量%添加することが好ましい。
【0027】
また、前記土壌には、熱可塑性樹脂を含むフィラメントが不規則に形成される立体網状体を配置させた植生基盤層を有することが好ましい。植生基盤層を配することにより、立体網状体に植物の根が絡みつき、立体網状体のもつ空隙と根の持つ空隙からなる複雑な形の空間が形成されるので、音や振動を吸収する効果があると推定される。また、植物の根に空気を供給することができるため、根腐れが起きにくい。このような立体網状体は、例えば、ノズルから吐出された溶融フィラメントを所定の凹凸パターンを有する搬送体上に垂下して集積することにより得ることができる。
【0028】
前記立体網状体のフィラメントは、0.5〜5mmの直径であることが好ましい。立体網状体のフィラメントの直径が0.5mm未満であると、フィラメント自体のコシがなくなり、立体網状体の空隙を維持することが難しくなることがある。また、フィラメントの直径が5mmを超えると、土壌が入る空間が少なくなるからである。
【0029】
前記立体網状体を構成するフィラメントは、前述した網状体層のフィラメントと同様の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0030】
前記立体網状体の厚みは、5〜50mmであることが好ましい。より好ましい厚みは、10〜25mmである。立体網状体の厚みが5mm未満であると、空隙を保持することが難しくなることがあり、厚みが50mmを超えると、緑化吸音材そのものの高さが大きくなりすぎるからである。
【0031】
本発明の緑化吸音材は、網状体層および植物生育層を有する吸音基盤材の形態であれば、このような構成となるように現場で直接施工してもよいが、枠体に植物が植生された緑化吸音ユニットであることが好ましい。このようなユニットであると、路面に埋設するときに、路面の騒音特性に合わせて予め緑化吸音材を作製することができ、また現場での施工もしやすい。
【0032】
前記ユニットに用いられる枠体としては、持ち運びできる程度に強力を有するものであれば特に限定されず、不織布、織編物、ネット等の有孔シート、フィルム等の無孔シート体、有孔または無孔の成型体などが挙げられる。中でも施工性と植物の生長を考慮すると、少なくとも1つの排水部が設けられた容器(有孔成型体)であることが好ましい。このような容器に吸音基盤材を収納することにより、埋設するときの作業が容易になる。
【0033】
前記容器は、プラスチック、鉄板、ステンレス、ゴムなどで形成するとよい。なかでもプラスチックは、総質量が軽減されるため、好ましい。容器のサイズは、持ち運びができる程度であれば特に限定されないが、例えば、縦10〜250cm、横10〜250cm、高さ3〜50cmであることが好ましい。特に、容器の高さは、埋設する場合、5〜20cmであることが好ましい。
【0034】
容器に設けられた排水部は、容器自体に孔を形成してもよいし、排水管を容器につけてもよい。容器の軽量化の観点から、孔が形成することが好ましい。孔の形状は、円、楕円、四角等の多角形などいずれの形状であってもかまわない。また、メッシュ状であってもよい。孔の大きさ、面積、数は、雨水等を十分に排水できるように調整するとよい。また、孔の位置は、少なくとも容器の底面に配することがより好ましく、容器の側面にも孔が配されているとよい。
【0035】
前記吸音基盤材は、前記植生基盤層と前記枠体の間に保水材を有していることが好ましい。このように保水材を配置することにより、植物に長期間水分を与えなくとも保水材から水分の供給ができ、植物の生長を維持することができる。また、環境の調湿、調温の機能を有することができる。
【0036】
前記保水材の形態は、特に限定されず、シート状、粒状、ブロック状などが挙げられるが、シート状であることが取扱いしやすく、好ましい。シート状保水材としては、不織布、織編物、フィルムなどがあるが、価格及び性能の観点から不織布が好ましい。例えば、不織布で形成する場合、不織布の素材はレーヨン、コットンなど水分を保水しやすい素材であれば特に限定されないが、ポリアクリル酸系樹脂を用いた繊維を含む不織布がより好ましい。このようなシート状保水材として入手可能なものは、例えば東洋紡績(株)製「Qマット」等が挙げられる。
【0037】
前記保水材は、植生基盤層の下面に配置することが好ましい。さらに、容器側面にも配置することがより好ましい。保水材と枠体の周辺に配置することにより、植物に補水する点はもとより、枠体(容器)全体の保水量が上がり、乾燥時に大気への水分放出が可能となり、調湿、調温が可能となる。さらに、シート状保水材であれば、シートの持つ吸音作用より、さらなる吸音効果が期待できる。シート状保水材と枠体との接合方法は、特に限定されず、ユニットを形成する場合は、そのままでも十分固定することができ、例えば、熱溶着、接着剤による接着等を行ってもよい。また、網状体層と、枠体および/またはシート状保水材との接合方法は、例えば、熱溶着、接着剤による接着、植物生育層上に垂下される網状体層を構成するフィラメントによる接着等が挙げられる。
【0038】
前記吸音基盤材は、前記植生基盤層と枠体の間に多孔性排水層を有していることが好ましい。また、多孔性排水層の上面および/または下面に保水材を配置することが好ましい。このような構成を採ることにより、枠体内の排水性がよくなり、植物の根腐れを抑制することができる。
【0039】
本発明の緑化吸音構造は、例えば、道路の路肩、中央分離帯、グリーンベルト地帯等、鉄道の線路脇、線路内枕木間、駅プラットフォーム等の路面に、前述のとおり得られる緑化吸音材を埋設または敷設して得ることができる。緑化吸音材を埋設する場合、路面に所定の大きさとなるように掘削した後、本発明の緑化吸音材の構造になるように、順次材料を設置して現場施工する方法、前述した緑化吸音ユニットを単独または連続して設置し埋める方法等が挙げられる。緑化吸音材を敷設する場合、前述した緑化吸音ユニットを単独または連続して設置する方法が挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を、実施例により、さらに詳しく説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。まず、本発明で実施した性能評価の試験方法を説明する。
【0041】
[騒音吸音性試験]
リオン株式会社製普通騒音計を設定フラット、高速、レンジ100dBとする。次に、道路(アスファルト舗装)脇から30cm離れたところを、高さ10cmの場所に地面に向かって(すなわち下側)にマイクロホンを向けて、10分間計測し、そのときの最高騒音値をブランクとした。その際、10tトラック1台、普通乗用車1台は必ずはいるようにした。次に、埋設する場合は、その地面を掘削して、緑化吸音材を埋設した。敷設する場合は、路面に緑化吸音材を置いた。そして、マイクロホンと緑化吸音材の間隔は10cmとなるように調整した。すなわち緑化吸音材の高さが10cmの場合マイクロホンの高さは20cmとなる。そしてブランクと同条件で騒音を測定した。
【0042】
[実施例1]
容器の側面に0.5mm×1.6mmのスリット孔が縦方向側面に66個、横方向側面に30個形成された、内寸が縦21cm、横13cm、高さ11cmのプラスチック製容器(天馬興産(株)製ケースワークインSS)の内部に、シート状保水材として東洋紡績製保温養生マット「Qマット」を底面、側面に敷き詰め、壁面までシートの耳が露出するように設置した。次に、シート状保水材を敷いた底面の上に土壌の補強材として、ダイワボウプログレス製立体網状体「タングレット」(登録商標)P−25−1000(繊維直径1.1mm、目付1010g/m2、厚み28mm)を設置した。次に、前記立体網状体内部に鹿沼興産製軽量土パーライトを充填し、さらに、前記パーライトを内部に充填された立体網状体の上にパーライトを厚さが3cmとなるように敷き詰めて植生基盤層を作製した。パーライトの上にユリ科の竜のひげ:Ophiopogon japonicus Ker-Gawler(高さ4cm)全面に植生して植物生育層を形成した。次いで、竜のひげの上面からポリプロピレン樹脂(MFR20)60質量%と軟質ポリプロピレン樹脂(MFR20)39質量%、カーボンブラックPPマスターバッチ1質量%とを混合したものを用意し、この混合樹脂を、紡糸温度260℃、オリフィス径1.0mm、オリフィスルピッチ5mmで複数のオリフィスが一列に並んだノズルから溶融した樹脂を押し出し、直径1.0mmの太さのフィラメントを、移動速度4.5m/分で進行している搬送体上に、前記容器を載置し、植物(竜のひげ)上面に直接紡糸して網状体層を形成し、本発明の緑化吸音材を得た。その際、壁面にあるシート状吸水材の耳部とフィラメントが熱接着するように樹脂を垂下させた。このようにして得られたときの植生上部にある熱可塑性樹脂によるフィラメントは、繊維直径1.1mmであり、目付は300g/m2であり、見掛け厚みは25mmであった。網状体層は、植物生育層の凹凸に沿って被覆されて形成していた。実施例1の緑化吸音材を路面脇に埋設して騒音吸音性試験をしたところ、75dB(ブランク)から70dBと、車両通過時に発生する騒音を5dB下げることができた。また、植物の上面への生長を抑制しながら枯らすことなく生育させることができた。
【0043】
[実施例2]
シート状保水材を敷いた底面の上に、軽量土パーライトを50cm充填し、パーライトの上に植生した竜のひげ(高さ10cm)上面に、ダイワボウプログレス(株)製防草マット(UP−25)を敷設した以外は、実施例1と同様の方法で、本発明の緑化吸音材を得た。なお、UP−25は、立体網状体(繊維直径1.1mm、目付1100g/m2、厚み29mm)の上にポリエステル製フィラメントからなるネット(繊維直径0.16mm、目付170g/m2、厚み0.35mm)を貼り合わせた網状体である。実施例2の緑化吸音材を路面脇に埋設して騒音吸音性試験をしたところ、75dB(ブランク)から72dBと、車両通過時に発生する騒音を3dB下げることができた。また、植物の上面への生長を抑制しながら枯らすことなく生育させることができた。
【0044】
[実施例3]
実施例1の容器の内部に、実施例1と同じシート状保水材を底面、側面に敷き詰め、壁面にマットの耳が露出するように設置した。次に、シート状保水材を敷いた底面の上に、多孔性排水材としてダイワボウプログレス製立体網状体「タングレット」P−25−1000(繊維直径1.1mm、目付1010g/m2、厚み28mm)を設置した。その多孔性排水材の上面に前記シート状保水材を敷設し、さらにその上面に土壌の補強材として、ダイワボウプログレス製立体網状体「タングレット」P−25−1000(繊維直径1.1mm、目付1010g/m2、厚み28mm)を設置した。次に、前記立体網状体内部に鹿沼興産製軽量土パーライトを充填し、さらに、前記パーライトを内部に充填された立体網状体の上にパーライトを厚さが2cmとなるように敷き詰めて植生基盤層を作製した。パーライトの上に竜のひげを実施例1と同じ方法で植生して植物生育層を形成した。次いで、竜のひげの上面からポリプロピレン樹脂(MFR20)60質量%と軟質ポリプロピレン樹脂(MFR20)39質量%、カーボンブラックPPマスターバッチ1質量%とを混合したものを用意し、この混合樹脂を、紡糸温度260℃、オリフィス径1.0mm、オリフィスルピッチ5mmで複数のオリフィスが一列に並んだノズルから溶融した樹脂を押し出し、直径1.0mmの太さのフィラメントを、移動速度4.5m/分で進行している搬送体上に、前記容器を載置し、植物(竜のひげ)上面に直接紡糸して網状体層を形成し、本発明の緑化吸音材を得た。その際、壁面にあるシート状吸水材の耳部とフィラメントが熱接着するように樹脂を垂下させた。
【0045】
図4にその概略図を示す。スリット状の排水部3を多数有する容器2の内部を覆うようにシート状保水材4を底面および側面に配した。底面のシート状保水材4の上面に、多孔性排水材5を設置し、さらにその上面にシート状保水材4を設置した。そのシート状保水材4の上面に立体網状体6を設置し、その上から土壌7を充填した。その土壌7に植物8を植生した。その植物8の上面にフィラメント9が不規則に集積した網状体が形成されて緑化吸音材(緑化吸音ユニット)1となる。
【0046】
このようにして得られたときの植生上部にある熱可塑性樹脂によるフィラメントは、繊維直径1.1mmであり、目付は300g/m2であり、見掛け厚みは25mmであった。網状体層は、植物生育層を被覆して形成していた。実施例3の緑化吸音材を路面脇に敷設して騒音吸音性試験をしたところ、80dB(ブランク)から76dBと、車両通過時に発生する騒音を4dB下げることができた。また、排水性も良好であり、植物の上面への生長を抑制しながら枯らすことなく生育させることができた。
【0047】
[実施例4]
容器の高さを5cmとし、実施例1と同じシート状保水材を側面に敷き、壁面にマットの耳が露出するように設置し、多孔状排水材として実施例3の立体網状体(P−25−500)を用い、土壌を容器の40mmの高さまで充填して、竜のひげを植生した以外は実施例3と同様の方法で、本発明の緑化吸音材を得た。その際、壁面にあるシート状吸水材の耳部とフィラメントが熱接着するように樹脂を垂下させた。このようにして得られたときの植生上部にある熱可塑性樹脂によるフィラメントは、繊維直径1.1mmであり、目付は300g/m2であり、見掛け厚みは25mmであった。網状体層は、植物生育層の凹凸に沿って被覆されて形成していた。実施例4の緑化吸音材を路面脇に敷設して騒音吸音性試験をしたところ、80dB(ブランク)から75dBと、車両通過時に発生する騒音を5dB下げることができた。また、排水性も良好であり、植物の上面への生長を抑制しながら枯らすことなく生育させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の緑化吸音材および緑化吸音構造は、例えば、道路の路肩、中央分離帯、グリーンベルト地帯等、鉄道の線路脇、線路内枕木間、駅プラットフォーム等の車両および路面等から発生する騒音を吸音する用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 緑化吸音材(緑化吸音ユニット)
2 容器
3 排水部
4 シート状保水材
5 多孔性排水材
6 立体網状体
7 土壌
8 植物
9 フィラメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に埋設または敷設される吸音基盤材であり、
前記吸音基盤材の上面には、植物が植生されており、
前記植物の上面は、熱可塑性樹脂を含むフィラメントが規則的または不規則に形成される網状体層を形成している緑化吸音材。
【請求項2】
前記フィラメントは、繊維直径が0.01〜2mmであり、前記網状体層の目付が5〜2000g/m2である、請求項1に記載の緑化吸音材。
【請求項3】
前記網状体層は、植物が植生された植物生育層の凹凸に沿って被覆している、請求項1または2に記載の緑化吸音材。
【請求項4】
前記吸音基盤材は、熱可塑性樹脂を含むフィラメントが不規則に形成される立体網状体を含む植物育成用の土壌を充填した植生基盤層を有している、請求項1〜3のいずれかに記載の緑化吸音材。
【請求項5】
前記吸音基盤材は、枠体内に植生基盤層を有した緑化吸音ユニットである、請求項4に記載の緑化吸音材。
【請求項6】
前記吸音基盤材は、前記植生基盤層と枠体の間に保水材を有している、請求項5に記載の緑化吸音材。
【請求項7】
前記吸音基盤材は、前記植生基盤層と枠体の間に多孔性排水層を有している、請求項5または6に記載の緑化吸音材。
【請求項8】
熱可塑性樹脂を含むフィラメントが規則的または不規則に形成される網状体層が植生された植物を被覆した吸音基盤材を、路面に埋設または敷設してなる緑化吸音構造。

【図1】
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【公開番号】特開2011−214327(P2011−214327A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84141(P2010−84141)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002923)ダイワボウホールディングス株式会社 (173)
【出願人】(306024090)ダイワボウプログレス株式会社 (14)
【出願人】(300049578)ダイワボウポリテック株式会社 (120)
【Fターム(参考)】