緑化部材、緑化パネル、および緑化壁の製造方法
【課題】保水性が高く、外面形状設計、デザインの自由度が高い緑化部材、緑化パネル、および緑化壁の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】緑化部材20は、苔植物配偶体200aが配置される括着層200と、括着層200の裏側に配置され、異形断面繊維を含有する不織布製であって、括着層200に水分を供給する保水層201と、を備える。保水層201は、異形断面繊維を含有している。異形断面繊維は、真円断面繊維と比較して、比表面積が大きいため、保水性が高い。
【解決手段】緑化部材20は、苔植物配偶体200aが配置される括着層200と、括着層200の裏側に配置され、異形断面繊維を含有する不織布製であって、括着層200に水分を供給する保水層201と、を備える。保水層201は、異形断面繊維を含有している。異形断面繊維は、真円断面繊維と比較して、比表面積が大きいため、保水性が高い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば塀や建物の外壁などに用いられる緑化部材、緑化パネル、および緑化壁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素削減や夏場のヒートアイランド現象緩和のため、塀や建物の外壁などを、苔が植設された緑化パネルで覆う方法が開発されている(特許文献1、2参照)。建物の屋上など、水平面に緑化パネルを用いる場合、降雨による水が緑化パネルから流出しにくい。このため、苔の生長に充分な水分を確保することができる。
【0003】
しかしながら、例えば塀や建物の側壁などの立壁に、緑化パネルを用いる場合、降雨による水は、重力により立壁を伝って流れ落ちやすい。このため、苔の生長に充分な水分を、緑化パネルに確保することが困難である。
【0004】
そこで、特許文献3には、断面鋸刃状の外面を有する緑化パネルが開示されている。特許文献3に記載の緑化パネルは、上向きの傾斜面を備えている。このため、降雨の際、水が流れ落ちにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−57132号公報
【特許文献2】特開2004−275039号公報
【特許文献3】特開2004−49064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載の緑化パネルの場合、外面の断面形状が鋸刃状であるため、意匠部の体積が大きくなる。また、外面に不可避的に鋸刃形状が発現するため、外面形状設計、デザインの自由度が低くなる。
【0007】
本発明の緑化部材、緑化パネル、および緑化壁の製造方法は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、保水性が高く、外面形状設計、デザインの自由度が高い緑化部材、緑化パネル、および緑化壁の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明の緑化部材は、苔植物配偶体が配置される括着層と、該括着層の裏側に配置され、異形断面繊維を含有する不織布製であって、該括着層に水分を供給する保水層と、を備えることを特徴とする。ここで、異形断面繊維とは、軸直断面形状が真円形以外の繊維をいう。
【0009】
本発明の緑化部材は、不織布製の保水層を備えている。保水層は、異形断面繊維を含有している。異形断面繊維は、真円断面繊維と比較して、単位質量あたりの比表面積が高くなる。そして、微細形状であるがゆえに細かい水滴を維持しやすい特徴がある。これは、植物の茎や葉にみられる産毛状の構造と類似している。このため、保水性が高い。したがって、立壁に用いるのに特に好適である(勿論、水平壁にも用いることができる。)。また、本発明の緑化部材は、外面の断面形状に因らず、高い保水性を確保することができる。したがって、外面形状設計、デザインの自由度が高い。
【0010】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記異形断面繊維は、断面Y字状のY型断面繊維、および熱により分割する熱分割繊維のうち、少なくとも一方である構成とする方がよい。本構成によると、高い保水性を、簡単に確保することができる。
【0011】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記括着層の表側に配置され、前記苔植物配偶体の仮根が該括着層に根付くのを促進する保護層を備える構成とする方がよい。本構成によると、保護層が苔植物配偶体を覆っている。このため、緑化部材の製造過程において、外部から苔植物配偶体が損傷を被るのを抑制することができる。また、風や重力などにより、苔植物配偶体が括着層から脱落するのを、抑制することができる。
【0012】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記保護層は、水溶性である構成とする方がよい。本構成によると、保護層が降雨などにより溶解しやすい。このため、苔植物配偶体の仮根が括着層に根付いた後は、簡単に保護層を撤去することができる。
【0013】
(5)好ましくは、上記(3)の構成において、前記保護層は、多孔質状を呈し非水溶性である構成とする方がよい。ここで、「多孔質状」には、織布状、不織布状、編物状、スポンジ状、網状が含まれる。本構成によると、苔植物配偶体または苔が、保護層に絡みつきながら生長することができる。このため、苔植物配偶体または苔が緑化部材から脱落するのを抑制することができる。
【0014】
(6)好ましくは、上記(3)の構成において、前記保護層は、多孔質状を呈する非水溶性部分と、水溶性部分と、を有する構成とする方がよい。本構成によると、水溶性部分が降雨などにより溶解しやすい。このため、苔植物配偶体の仮根が括着層に根付いた後は、簡単に水溶性部分を撤去することができる。並びに、非水溶性部分に苔植物配偶体または苔が絡みつきながら生長することができる。
【0015】
(7)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記括着層の表側から人工芝が植設される構成とする方がよい。本構成によると、苔植物配偶体の生長が遅い場合や苔植物配偶体が枯れた場合など、苔植物配偶体の発色が悪い場合であっても、人工芝により緑化部材の美観を確保することができる。また、人為的ないたずら、風、踏圧などから、苔植物配偶体を保護することができる。
【0016】
(8)好ましくは、上記(1)ないし(7)のいずれかの構成において、表面に保水用の溝部を備える構成とする方がよい。本構成によると、溝部を設けることにより、水の流れを遮断することができる。このため、保水層の持っている水の吸上げ能力により、緑化部材全体の保水性のばらつきを抑制することが可能になり、保水性が高くなる。
【0017】
(9)好ましくは、上記(1)ないし(8)のいずれかの構成において、前記保水層の裏側に配置され、該保水層から前記水分が逃げるのを抑制する遮断層を備える構成とする方がよい。本構成によると、保水層の裏側から水分が逃げにくくなる。このため、さらに保水性が高くなる。
【0018】
また、本構成の緑化部材が緑化パネルに組み込まれ、当該緑化パネルと壁本体とが一体化された後においては、緑化部材から壁本体への水の浸入を抑制することができる。このため、壁本体の耐久性が高められる。
【0019】
(10)好ましくは、上記(9)の構成において、前記保水層と前記遮断層との間に配置される不織布製の断熱層を備え、該遮断層は、該断熱層の裏面に熱融着される構成とする方がよい。本構成によると、遮断層を断熱層に熱融着する際の熱から、保水層と苔植物配偶体とを保護することができる。
【0020】
(10−1)好ましくは、上記(10)の構成において、前記断熱層は、前記保水層の保水能力を補う保水能力を有している構成とする方がよい。苔植物配偶体の生長に必要な水分は、保水層が確保している。しかしながら、保水層は苔植物配偶体に近接している。このため、保水層の保水能力を過度に高くすると、水分過剰になり、苔植物配偶体が病気等になるおそれがある。
【0021】
この点、本構成によると、断熱層が保水能力を有している。このため、保水層だけで苔植物配偶体の生長に必要な水分を確保する場合と比較して、保水量を増やすことができる。したがって、例えば、降雨の少ない場所であっても、苔植物配偶体が仮死状態(休眠状態)にならずに生長しやすい。
【0022】
また、断熱層は、保水層と比較して、苔植物配偶体から離間している。このため、苔植物配偶体が断熱層に到達しにくい。したがって、断熱層の水分に苔植物配偶体が浸りにくい。よって、苔植物配偶体が病気等になりにくい。一方、保水層の水分が不足する場合には、断熱層の水分が保水層に移動する。このため、保水層の水分を補充することができる。このように、本構成の断熱層は、保水層のバックアップ機能を有している。
【0023】
(11)また、上記課題を解決するため、本発明の緑化パネルは、上記(9)または(10)の緑化部材と、該緑化部材の裏側に配置される基材と、該緑化部材と該基材との間に配置され、該基材に対して該緑化部材を脱着可能に保持する粘着層と、を備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の緑化パネルの緑化部材は、不織布製の保水層を備えている。保水層は、異形断面繊維を含有している。異形断面繊維は、真円断面繊維と比較して、比表面積が大きく、保水性が高い。このため、保水性が高い。また、本発明の緑化パネルは、外面の断面形状に因らず、高い保水性を確保することができる。したがって、外面形状設計、デザインの自由度が高い。
【0025】
本発明の緑化パネルによると、粘着層を介して、基材に緑化部材が取り付けられている。このため、例えば苔植物配偶体が病気等により枯れるような問題などがある場合には、簡単に緑化部材を交換することができる。したがって、本発明の緑化パネルはメンテナンス性に優れている。
【0026】
(12)また、上記課題を解決するため、本発明の緑化壁の製造方法は、上記(11)の緑化パネルと、壁本体と、を備える緑化壁の製造方法であって、前記基材の裏面が型面の一部となるように、前記緑化パネルを組み込んだ型枠を組み立てる型枠組立工程と、該型枠に流動性を有する壁材を注入し、該壁材を硬化させることにより、前記壁本体の成形と、該基材と該壁本体との接合と、を並行して行う成形工程と、該型枠を分解することにより、該緑化パネルと該壁本体とが一体化した前記緑化壁を得る型枠分解工程と、を有することを特徴とする。
【0027】
本発明の緑化壁の製造方法は、型枠組立工程と成形工程と型枠分解工程とを有する。型枠組立工程においては、緑化パネルを組み込んで、型枠を組み立てる。この際、基材の裏面を型面(成形面)の一部にする。成形工程においては、型枠に壁材を注入し、壁材を硬化させる。この際、基材の裏面が壁本体に接合される。並びに、壁本体が成形される。型枠分解工程においては、型枠が撤去される。このようにして、緑化パネルと壁本体とが一体化された、緑化壁が完成する。
【0028】
本発明の緑化壁の製造方法によると、壁本体に対する緑化パネルの取付と、壁本体の成形と、を並行して行うことができる。このため、壁本体に対して、後付けで緑化パネルを取り付ける場合と比較して、取付場所(例えば高所など)の自由度が高くなる。また、取付コストを削減することができる。また、壁材と保水層との間には、遮断層が介在している。このため、基材を介して、壁材の内容物が保水層に進入するのを、抑制することができる。
【0029】
(12−1)好ましくは、上記(12)の構成において、前記基材はセメント、またはケイ酸カルシウム製である構成とする方がよい。基材は多孔性である。このため、成形工程において、壁材が基材によく浸透する。したがって、壁本体と基材との接合性が高くなる。
【0030】
(12−2)好ましくは、上記(12)の構成において、前記基材は、樹脂発泡体、繊維強化樹脂、ガラス発泡体等から選ばれる材料製である構成とする方がよい。基材は、軽量である方が好ましい。また、基材は、高強度である方が好ましい。基材を樹脂発泡体製、ガラス発泡体製にすると、基材を軽量化することができる。また、基材を繊維強化樹脂製にすると、基材を軽量化、高強度化することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、保水性が高く、外面形状設計、デザインの自由度が高い緑化部材、緑化パネル、および緑化壁の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第一実施形態の緑化壁の斜視図である。
【図2】同緑化壁の部分斜視図である。
【図3】同緑化壁の分解部分斜視図である。
【図4】図2のIV−IV方向断面図である。
【図5】図4の枠V内の拡大図である。
【図6】表側積層工程の第一段階の模式図である。
【図7】同工程の第二段階の模式図である。
【図8】同工程の第三段階の模式図である。
【図9】同工程の第四段階の模式図である。
【図10】裏側積層工程の模式図である。
【図11】表裏層合体工程の模式図である。
【図12】緑化部材接着工程の模式図である。
【図13】本実施形態の緑化壁の製造方法に用いられる型枠の斜視図である。
【図14】同型枠の左方から見た部分断面図である。
【図15】第二実施形態の緑化壁の左方から見た断面図である。
【図16】図15の円XVI内の拡大図である。
【図17】図15の円XVII内の拡大図である。
【図18】実施例1の保水層について行った保水実験の結果を示すグラフである。
【図19】実施例2の緑化部材について行った保水実験の結果を示すグラフである。
【図20】実施例3の緑化部材について行った保水実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の緑化部材、緑化パネル、および緑化部材の製造方法の実施の形態について説明する。
【0034】
<第一実施形態>
[緑化壁の構成]
まず、本実施形態の緑化壁の構成について説明する。図1に、本実施形態の緑化壁の斜視図を示す。図2に、同緑化壁の部分斜視図を示す。図3に、同緑化壁の分解部分斜視図を示す。図4に、図2のIV−IV方向断面図を示す。なお、図2〜図4に示すのは、緑化壁1のうち、一枚の緑化パネル2に対応する部分である。
【0035】
図1〜図4に示すように、緑化壁1は、パネル連結体9と、壁本体7と、軸足50と、セパレーター51と、レジコン(登録商標、岡部株式会社製)52と、クリップ53と、袋ナット54と、を備えている。
【0036】
(壁本体7、軸足50、セパレーター51、レジコン52、クリップ53、袋ナット54)
壁本体7は、コンクリート製であって、ブロック状を呈している。軸足50、セパレーター51、レジコン52、クリップ53、袋ナット54のセットは、所定間隔ごとに、壁本体7に配置されている。
【0037】
セパレーター51は、鋼製であって丸棒状を呈している。セパレーター51は、前後方向に延在している。セパレーター51は、壁本体7に埋設されている。セパレーター51の前後方向(軸方向)両端には、ねじ部が配置されている。
【0038】
レジコン52は、樹脂製であって、短軸円柱状を呈している。レジコン52の前後方向両面には、凹部が形成されている。凹部の内周面には、ねじ部が配置されている。レジコン52のねじ部とセパレーター51のねじ部とが螺合することにより、レジコン52は、セパレーター51の前後方向両端に固定されている。レジコン52は、壁本体7の前後面から表出している。後方のレジコン52の後方の凹部は、充填材やキャップにより封止されている。
【0039】
軸足50は、後述する緑化パネル2を貫通して、前方のレジコン52の前方の凹部に、固定されている。クリップ53は、鋼製であって、軸足50に環装されている。クリップ53は、袋ナット54と、後述する金網23と、の間に介装されている。
【0040】
(パネル連結体9)
パネル連結体9は、長方形板状を呈している。パネル連結体9は、合計15枚(5行(上下)×3列(左右))の緑化パネル2が繋ぎ合わされて形成されている。緑化パネル2は、緑化部材20と、基材21と、粘着層22と、金網23と、を備えている。基材21は、セメント製であって長方形板状を呈している。基材21は壁本体7の前面(表面)に積層されている。
【0041】
図5に、図4の枠V内の拡大図を示す。図5に示すように、緑化部材20は、括着層200と、保水層201と、保護層202と、多数の人工芝203と、遮断層205と、断熱層206と、を備えている。
【0042】
括着層200は、スパンボンド式不織布である。苔の生長初期において、括着層200には、苔植物配偶体200aが配置されている。図3に示すように、括着層200に根付くことにより、苔植物配偶体200aは生長し、緑化部材20の前面を被覆していく。
【0043】
図5に戻って、保護層202は、ポリビニルアルコール(PVA)製である。保護層202は、括着層200の前面に積層されている。保護層202は、水溶性を有している。このため、降雨などにより、保護層202は経時的に溶解し、最終的には消滅し、苔植物配偶体200aの生長を妨げない。
【0044】
多数の人工芝203は、所定のパターンで保護層202の前面に植設されている。人工芝203の根本は、保護層202、括着層200、保水層201を貫通し、後述する断熱層206にまで到達している。
【0045】
保水層201は、異形断面繊維を含有する不織布製である。保水層201は、括着層200の後面(裏面)に積層されている。保水層201は、苔植物配偶体200aの生長に必要な水分を保有している。
【0046】
断熱層206は、不織布製であって、保水層201の後面に積層されている。断熱層206は、後述する遮断層205を断熱層206に積層する際の熱から、保水層201や括着層200(つまり苔植物配偶体200a)を保護している。また、断熱層206は、保水層201の保水能力をバックアップしている。
【0047】
遮断層205は、ポリエチレン(PE)製である。遮断層205は、断熱層206の後面に積層されている。遮断層205は、基材21や壁本体7のアルカリ成分が、断熱層206に漏れるのを抑制している。並びに、遮断層205は、保水層201の水分が、基材21や壁本体7に漏れるのを抑制している。
【0048】
粘着層22は、両面テープである。粘着層22は、遮断層205の後面と、基材21の前面と、の間に介装されている。粘着層22により、緑化部材20は、基材21に脱着可能に貼り付けられている。
【0049】
金網23は、保護層202の前面を覆っている。図3に示すように、金網23は、クリップ53により、保護層202の前面に押しつけられている。
【0050】
[緑化パネルの製造方法]
次に、緑化パネル2の製造方法について説明する。緑化パネル2の製造方法は、緑化部材製造工程と、緑化部材接着工程と、を有している。
【0051】
(緑化部材製造工程)
緑化部材製造工程は、表側積層工程と、裏側積層工程と、表裏層合体工程と、を有している。図6に、表側積層工程の第一段階の模式図を示す。図7に、同工程の第二段階の模式図を示す。図8に、同工程の第三段階の模式図を示す。図9に、同工程の第四段階の模式図を示す。図10に、裏側積層工程の模式図を示す。図11に、表裏層合体工程の模式図を示す。
【0052】
まず、表側積層工程について説明する。図6に示すように、本工程の第一段階においては、ニードルパンチ法により、括着層200と保水層201とを結合させる。具体的には、まず、括着層200と保水層201とを積層させる。次いで、針90を突き刺して、各層の繊維同士を交絡させる。このようにして、括着層200と保水層201とを結合させる。図7に示すように、本工程の第二段階においては、括着層200に多数の苔植物配偶体200aを播く。図8に示すように、本工程の第三段階においては、まず、多数の苔植物配偶体200aを保護層202で覆う。次いで、ニードルパンチ法により、保護層202と、括着層200と保水層201との結合体と、を結合させる。図9に示すように、本工程の第四段階においては、タフティング法により、人工芝203を、所定のパターンで、保護層202の上から植設する。このようにして、人工芝203、保護層202、苔植物配偶体200a、括着層200、保水層201からなる表側積層体が作製される。
【0053】
次に、裏側積層工程について説明する。図10に示すように、本工程においては、ラミネート法により、断熱層206の裏面に、遮断層205を形成する。すなわち、溶融状態の遮断層205により、断熱層206の裏面をコーティングする。このようにして、断熱層206、遮断層205からなる裏側積層体が作製される。
【0054】
次に、表裏層合体工程について説明する。図11に示すように、本工程においては、表側積層体(人工芝203、保護層202、苔植物配偶体200a、括着層200、保水層201)と裏側積層体(断熱層206、遮断層205)とを、ケミカルボンド法により合体させる。このようにして、緑化部材20を作製する。
【0055】
(緑化部材接着工程)
図12に、緑化部材接着工程の模式図を示す。図12に示すように、本工程においては、遮断層205の裏面に、粘着層22を配置する。そして、基材21の表面に、粘着層22つまり緑化部材20を接着する。このようにして、緑化パネル2を作製する。なお、金網23は、後述する緑化壁の製造方法において、取り付けられる。
【0056】
[緑化壁の製造方法]
次に、緑化壁1の製造方法について説明する。緑化壁1の製造方法は、型枠組立工程と、成形工程と、型枠分解工程と、を有している。図13に、緑化壁の製造方法に用いられる型枠の斜視図を示す。図14に、同型枠の左方から見た部分断面図を示す。
【0057】
(型枠の構成)
図13、図14に示すように、型枠8は、型材80と、パイプ81、82と、座金83と、フォームタイ84と、連結板85と、ナット87と、パネル連結体9と、軸足50と、セパレーター51と、レジコン52と、を備えている。型材80は、ベニヤ板製であって、長方形状を呈している。型材80の前面には、離型剤が塗られている。パネル連結体9は、長方形板状を呈している。パネル連結体9の隣り合う緑化パネル2同士は、鋼製の連結板85により、連結されている。パネル連結体9と型材80とは、前後方向に所定間隔だけ離間して、立設されている。
【0058】
以下に示す各部材の配置は、パネル連結体9側(前側)と型材80側(後側)とで、前後対称である。ここでは、パネル連結体9側の各部材についてのみ説明する。
【0059】
複数のパイプ81、82は、全体として格子状に配置されている。複数のパイプ81、82は、パネル連結体9を前方から補強している。パイプ81は、鋼製であって上下方向に延在している。12本のパイプ81は、パネル連結体9の前面に配置されている。パイプ82は、鋼製であって左右方向に延在している。16本のパイプ82は、パイプ81の前方に配置されている。
【0060】
フォームタイ84、軸足50、セパレーター51、レジコン52、座金83、ナット87のセットは、所定間隔ごとに、型枠8に配置されている。セパレーター51は、パネル連結体9と型材80との間に配置されている。レジコン52は、セパレーター51の前後方向両端に固定されている。軸足50は、鋼製であって丸棒状を呈している。軸足50は、前後方向に延在している。軸足50の後端は、レジコン52に固定されている。軸足50の前端は、緑化パネル2を貫通している。座金83は、鋼製であって後方に開口するC字板状を呈している。座金83は、2本のパイプ82を前方から保持している。フォームタイ84は、鋼製であって、前後方向に延在している。フォームタイ84は、緑化パネル2の前面に配置されている。フォームタイ84の後面には凹部840が形成されている。フォームタイ84の前部には軸部841が形成されている。凹部840および軸部841には、各々、ねじ部が配置されている。凹部840には、軸足50の前端が固定されている。軸部841は、2本のパイプ82の間を貫通して、座金83の前方に突出している。ナット87は、軸部841の突出端(前端)に固定されている。
【0061】
(型枠組立工程)
型枠組立工程においては、まず、パネル連結体9と型材80とを前後方向に対向して配置する。次に、フォームタイ84、軸足50、セパレーター51、レジコン52、座金83、ナット87を用いて、パネル連結体9の前側に、12本のパイプ81と16本のパイプ82とを組み付ける。並びに、型材80の後側に、12本のパイプ81と16本のパイプ82とを組み付ける。このようにして、型枠8を組み立てる。
【0062】
(成形工程)
成形工程においては、型枠8の内部に、コンクリートの原料、つまり壁材70を流し込む。すなわち、各緑化パネル2の基材21の後面と、型材80の前面と、の間に壁材70を流し込む。ここで、基材21はセメント製であり、多孔性である。このため、壁材70は、基材21の内部にまで、よく浸透する。壁材70が硬化することにより、壁本体7(図1参照)が形成される。並びに、壁本体7と、各緑化パネル2の基材21と、が強固に結合する。
【0063】
(型枠分解工程)
型枠分解工程においては、まず、ナット87を軸部841から取り外すことにより、座金83をフォームタイ84から取り外す。続いて、パネル連結体9の前側および型材80の後側から、パイプ81、パイプ82を撤去する。それから、フォームタイ84を軸足50から取り外す。その後、後側の軸足50から型材80を取り外す。また、後側のレジコン52から後側の軸足50を取り外す。最後に、図2〜図4に示すように、残しておいた前側の軸足50にクリップ53および袋ナット54を取り付けることにより、金網23を緑化部材20の前面に装着する。このようにして、緑化壁1を作製する。
【0064】
[作用効果]
次に、本実施形態の緑化部材20、緑化パネル2、および緑化壁1の製造方法の作用効果について説明する。本実施形態の緑化部材20は、不織布製の保水層201を備えている。保水層201は、異形断面繊維を含有している。異形断面繊維は、真円断面繊維と比較して、比表面積が大きい。このため、保水性が高い。したがって、地面に対して略垂直に配置される立壁に用いるのに好適である。また、本実施形態の緑化部材20は、外面の断面形状に因らず、高い保水性を確保することができる。したがって、外面形状設計、デザインの自由度が高い。
【0065】
また、本実施形態の緑化部材20の保護層202は、水溶性を有している。このため、降雨などにより、保護層202は経時的に溶解し、最終的には消滅する。また、保護層202の溶出液は、中性である。このため、苔植物配偶体200aの生長を阻害するおそれがない。
【0066】
また、本実施形態の緑化部材20は、多数の人工芝203を備えている。このため、苔植物配偶体200aの生長が遅い場合や苔植物配偶体200aが枯れた場合など、苔植物配偶体200aの発色が悪い場合であっても、多数の人工芝203により緑化部材20の美観を確保することができる。また、人為的ないたずら、風、踏圧などから、苔植物配偶体200aを保護することができる。また、人工芝203の大きさ、配置パターン、配置密度などを調整することにより、苔植物配偶体200aに対する日光の照射量を調整することができる。
【0067】
また、本実施形態の緑化部材20の括着層200は、保水層201よりも目の細かい不織布製である。このため、苔植物配偶体200aが括着層200から脱落しにくい。
【0068】
また、本実施形態の緑化部材20の括着層200は、スパンボンド法により作製されている。このため、保水層201と比較して硬めであり、形状保持性が高い。したがって、図8に示すように、括着層200に人工芝203植設用の針が進入しても、括着層200がよれにくい。また、括着層200にしわが入りにくい。また、緑化部材20が吸水した場合であっても、乾燥時の形状を保持しやすい。
【0069】
また、本実施形態の緑化部材20は、遮断層205を備えている。このため、図5に矢印Y1で示すように、保水層201の水分が、基材21に逃げるのを抑制することができる。並びに、図5に矢印Y2で示すように、基材21や壁本体7のアルカリ成分が、断熱層206に浸透するのを抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態の緑化部材20は、断熱層206を備えている。このため、溶融状態の遮断層205を断熱層206にラミネーションする際の熱から、保水層201を保護することができる。
【0071】
また、断熱層206は、断熱能力のみならず、保水能力を有している。苔植物配偶体200aの生長に必要な水分は、主に、保水層201が確保している。しかしながら、保水層201は苔植物配偶体200aに近接している。このため、保水層201の保水能力を過度に高くすると、水分過剰になり、苔植物配偶体200aが病気等になるおそれがある。
【0072】
この点、本実施形態の緑化部材20によると、断熱層206が保水能力を有している。このため、保水層201だけで苔植物配偶体200aの生長に必要な水分を確保する場合と比較して、保水量を増やすことができる。したがって、例えば、降雨の少ない場所であっても、苔植物配偶体200aが仮死状態(休眠状態)にならずに生長しやすい。
【0073】
また、断熱層206は、保水層201と比較して、苔植物配偶体200aから離間している。このため、苔植物配偶体200aの仮根が断熱層206に到達しにくい。したがって、断熱層206の水分に苔植物配偶体200aが浸りにくい。よって、苔植物配偶体200aが病気等になりにくい。一方、保水層201の水分が不足する場合には、断熱層206の水分が保水層201に移動する。このため、保水層201の水分を補充することができる。このように、断熱層206は、保水層201のバックアップ機能を有している。
【0074】
また、本実施形態の緑化パネル2の粘着層22は、遮断層205に貼り付けられている。このため、粘着層22を不織布製の保水層201や断熱層206に貼り付ける場合と比較して、粘着層22が剥離しにくい。
【0075】
また、本実施形態の緑化パネル2によると、粘着層22を介して、基材21に緑化部材20が取り付けられている。このため、例えば緑化部材20の苔植物配偶体200aが枯れてしまった場合や緑化部材20が破損した場合などは、簡単に緑化部材20を交換することができる。したがって、本実施形態の緑化パネル2はメンテナンス性に優れている。
【0076】
また、本実施形態の緑化パネル2によると、単一の壁本体7に対して、15枚の緑化部材20が配置されている。このため、所望の緑化部材20だけを交換することで、緑化壁1全体の美観を保つことができる。この点においても、本実施形態の緑化パネル2はメンテナンス性に優れている。
【0077】
また、本実施形態の緑化壁1の製造方法によると、成形工程において、壁本体7に対する緑化パネル2の取付と、壁本体7の成形と、を並行して行うことができる。このため、既設の壁本体7に対して、後付けで緑化パネル2を取り付ける場合と比較して、取付場所(例えば高所など)の自由度が高くなる。
【0078】
また、既設の壁本体7に対して、後付けで緑化パネル2を取り付ける場合、壁本体7の施工時と緑化パネル2の施工時とで、少なくとも二回足場を組む必要がある。これに対して、本実施形態の緑化壁1の製造方法によると、足場を組む回数が一回で済む。このため、取付コストを削減することができる。また、壁材70と断熱層206との間には、遮断層205が介在している。このため、壁材70が断熱層206に浸透するのを抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態の緑化壁1の製造方法によると、壁本体7がコンクリート製である。また、基材21がセメント製である。すなわち、基材21は多孔性である。このため、成形工程において、壁材70が基材21によく浸透する。したがって、壁本体7と基材21との接合性が高くなる。
【0080】
また、本実施形態の緑化壁1の製造方法によると、成形工程において、パネル連結体9、型材80がパイプ81、82により補強されている。このため、壁材70の注入圧により、パネル連結体9、型材80が変形しにくい。
【0081】
また、本実施形態の緑化壁1の製造方法によると、型枠分解工程において、使用済みのレジコン52を利用して、金網23が取り付けられる。すなわち、本来、パネル連結体9と型材80との間のスペースを確保するために用いられるレジコン52を、金網23取付用として再利用することができる。このため、別途、金網23取付用の部品を配置する場合と比較して、部品点数が少なくなる。また、図4に示す後方のレジコン52のように、凹部を充填材で封止する必要がない。
【0082】
また、本実施形態の緑化壁1の製造方法によると、型材80の前面に離型剤が塗布されている一方、基材21の後面に離型剤が塗布されていない。つまり、選択的に離型剤が塗布されている。このため、型枠分解工程において、型材80が壁本体7から離れやすい。一方、基材21と壁本体7とは強固に接合される。
【0083】
<第二実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、緑化部材20の表面に、溝部が配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図15に、本実施形態の緑化壁の左方から見た断面図を示す。なお、図4と対応する部位については同じ符号で示す。図16に、図15の円XVI内の拡大図を示す。
【0084】
図15、図16に示すように、保護層202、および括着層200には、溝部204が配置されている。溝部204は、左右方向に延在している。溝部204は、上下方向に所定間隔ずつ離間して、合計5本配置されている。溝部204の断面形状は、正方形状を呈している。溝部204は、ウェルダー加工により形成される。
【0085】
図17に示すように、壁本体7の後面には、凹部71が形成されている。凹部71の底面からは、セパレーター51の後端が突出している。凹部71は、緑化壁1を製造する際の、Pコン89の配置跡である。なお、Pコン89の軸部890は、図14における後側のフォームタイ84に固定されている。
【0086】
本実施形態の緑化部材20、緑化パネル2、および緑化壁1の製造方法は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の緑化部材、緑化パネル、および緑化壁の製造方法と、同様の作用効果を有する。また、本実施形態の緑化部材20によると、降雨時などに、緑化部材20を伝って流れ落ちる水の流れを遮断することができる。このため、保水層201の持っている水の吸上げ能力により、緑化部材20全体の保水性のばらつきを抑制することが可能になり、さらに保水性が高くなる。また、本実施形態の緑化部材20によると、ウェルダー加工により、所望の形状の溝部204を、簡単に形成することができる。また、本実施形態の緑化壁1のように、壁本体7の後面に凹部71が形成されていてもよい。すなわち、後方のレジコン52(図4参照)が配置されていなくてもよい。
【0087】
<その他>
以上、本発明の緑化部材、緑化パネル、および緑化壁の製造方法の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0088】
上記実施形態においては、緑化パネル2に金網23を配置したが、金網23を配置しなくてもよい。また、金網23の材質は特に限定しない。金属製、樹脂製としてもよい。また、金網23の網目の大きさも特に限定しない。図3に示すように、クリップ53により緑化部材20の前面に固定できればよい。また、網目から人工芝203や苔植物配偶体200aが突出可能であればよい。
【0089】
また、不織布製の括着層200、保水層201、断熱層206のフリースの形成方法は特に限定しない。カーディング方式やエアレイド方式などの乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法などを用いることができる。
【0090】
また、緑化部材製造工程の不織布接合工程(図6参照)における、括着層200、保水層201、断熱層206の接合方法は特に限定しない。ニードルパンチ法の他、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、スパンレース法、ステッチボンド法、スチームジェット法などを用いることができる。
【0091】
また、緑化壁1に配置する緑化パネル2の枚数、形状、大きさは特に限定しない。また、緑化壁1、緑化パネル2、緑化部材20を上向きに配置してもよい。例えば、緑化壁1、緑化パネル2、緑化部材20を、屋上緑化などに用いてもよい。また、単一の壁本体7に対する緑化パネル2の配置数は特に限定しない。
【0092】
また、括着層200に配置する苔植物配偶体200aの種類は特に限定しない。例えば、スナゴケ、ハイゴケ、スギゴケ、ミズゴケなどの蘚類、ゼニゴケ、ツボミゴケなどの苔類、ニワツノゴケなどのツノゴケ類に属する苔植物配偶体200aを用いることができる。
【0093】
また、苔植物配偶体200aの種類に応じて、人工芝203の大きさ、配置パターン、配置密度などを調整してもよい。また、苔植物配偶体200aの種類に応じて、保水層201の異形断面繊維の含有量を調整してもよい。また、苔植物配偶体200aの種類に応じて、各層の層厚を調整してもよい。
【0094】
また、保水層201の異形断面繊維の種類は特に限定しない。好ましくは、比表面積が大きい方がよい。また、繊維太さは細い方がよい。これらの観点から、Y型断面繊維、熱分割繊維などの特殊繊維などが好適である。
【0095】
また、括着層200、断熱層206を構成する繊維の種類は特に限定しない。例えば、汎用ポリエステル繊維やリサイクルPET繊維などが好適である。また、繊維の太さ、長さ、目付量も特に限定しない。また、括着層200は、粘着性不織布であってもよい。こうすると、括着層200に苔植物配偶体200aがくっつきやすい。
【0096】
また、保護層202の材質は特に限定しない。苔植物配偶体200aの種類に応じて、保護層202の材質を変更すればよい。また、保護層202は、ポリビニルアルコール、生分解性ポリエステル、デンプンなどの水溶性成分、およびポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの非水溶性成分のうち、少なくとも一方を有していればよい。
【0097】
保護層202が水溶性成分を有する場合、当該水溶性成分の溶解時期を、材質、面密度などにより調整することができる。例えば、緑化部材20の使用開始早期において水溶性成分が溶解するように溶解時期を調整すれば、緑化部材20の製造過程や搬送過程における、苔植物配偶体200aの脱落を抑制することができる。また、緑化部材20の製造過程や搬送過程において、苔植物配偶体200aが外部から損傷を被るのを抑制することができる。
【0098】
また、苔植物配偶体200aの仮根が括着層200に根付く時期に応じて水溶性成分が溶解するように溶解時期を調整すれば、苔植物配偶体200aの仮根の根付きを促進することができる。並びに、苔植物配偶体200aの仮根が括着層200に根付いた後に、簡単に保護層202を撤去することができる。
【0099】
また、保護層202が非水溶性成分を有する場合は、苔植物配偶体200aの仮根が括着層200に根付いた後においても、当該非水溶性部分は残留する。このため、非水溶性部分に苔植物配偶体200aの仮根が絡みつくことにより、苔植物配偶体200aや苔が緑化部材20から脱落するのを抑制することができる。
【0100】
また、遮断層205の材質は特に限定しない。水分やアルカリ成分に対するバリア性が高い方が好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが好適である。また、接着剤により遮断層205を配置する場合は、ラミネート法のように保水層201に熱が加わらないため、遮断層205を保水層201に接着してもよい。こうすると、断熱層206が不要になる。
【0101】
また、基材21の材質は特に限定しない。壁本体7との一体化が不要な場合は、アルカリ成分など、苔植物配偶体200aに悪影響を与えない材質の方が好ましい。例えば、ベニヤ板、発泡ポリエチレン板、窯業板(粘土板など)などが好適である。
【0102】
また、粘着層22の材質は特に限定しない。遮断層205の裏面および基材21の表面のうち、少なくとも一方に接着剤を塗布することにより、粘着層22を形成してもよい。
【0103】
また、第二実施形態における溝部204の配置数は特に限定しない。配置数が多いほど保水性が高くなる。また、溝部204の延在方向は特に限定しない。水平方向に近いほど保水性が高くなる。また、溝部204の深さ(図16における溝部204の前後方向長さ)、溝幅(図16における溝部204の上下方向長さ)は特に限定しない。また、溝部204の断面形状は特に限定しない。長方形状、C字状、U字状、V字状などとしてもよい。
【0104】
また、人工芝203の材質は特に限定しない。人工芝203の表面に親水処理を施してもよい。こうすると、人工芝203の濡れ性が向上し、保水率が向上する。このため、苔植物配偶体200aや苔の生長を促進することができる。親水処理の方法は特に限定しない。例えば、親水性コーティング剤をスプレーコーティング法、ディップ法、ロールコーティング法等で塗布し、乾燥させるなどの処理方法を用いることができる。
【0105】
また、緑化部材20、緑化パネル2を搬送する際、緑化部材20の前面をダンボール製などの保護部材により覆ってもよい。こうすると、搬送時の振動や、隣接する搬送物との干渉などから、緑化部材20の前面を保護することができる。
【0106】
また、図13に示すパイプ81、82の代わりに、板材を配置してもよい。この場合であっても、成形工程における壁材70の注入圧から、パネル連結体9、型材80を補強することができる。
【0107】
また、レジコン52の代わりに、金属メッキした長ナットやステンレス製の長ナットなど、セパレーター51と装着可能で、かつ軸足50が脱着可能な連結具を用いてもよい。また、軸方向両面に、内周面にねじ部が形成された凹部を有する連結具を用いることができる。また、少なくとも軸方向両端付近の内周面にねじ部が形成された貫通孔を有する連結具を用いることができる。
【0108】
図4に示すように、連結具は、壁本体7に埋設され、金網23の固定に使用される。このため、連結具は、セパレーター51や軸足50の脱着、回転により、友回り(セパレーター51や軸足50と一緒に連結具が回転する)しない形状でなくてはならない。また、連結具は、長期間、コンクリート製の壁本体7に埋設される。このため、連結具は、錆などが発生しにくい、腐食し難い材質であることが望ましい。
【実施例1】
【0109】
以下、保水層201単体について行った保水実験について説明する。
【0110】
[サンプル]
まず、実験に用いたサンプルについて説明する。表1に、サンプルの配合表を示す。
【表1】
【0111】
実施例1−1には、太さ4.4dt(デシテックス)のY型断面繊維が、保水層201全体の質量を100質量%として、20質量%含まれている。実施例1−2には、太さ2.2dtの熱分割繊維が20質量%含まれている。比較例1−1は、各々太さの異なる汎用ポリエステル繊維からなる。比較例1−2には、各々太さの異なる難燃繊維が含まれている。
【0112】
任意のサンプルの繊維構成指標とは、当該サンプルに含まれている繊維の太さと、繊維の含有量とをかけた数値の総和である。例えば、実施例1−1の場合、山一社製のリサイクル繊維の太さ14dtと当該繊維の含有量25質量%とをかけた数値と、東レ社製の汎用ポリエステル繊維の太さ6.6dtと当該繊維の含有量35質量%とをかけた数値と、ユニチカ社製のバインダーの太さ4.4dtと当該繊維の含有量20質量%とをかけた数値と、高安社製のY型断面繊維の太さ4.4dtと当該繊維の含有量20質量%とをかけた数値と、の総和である。
【0113】
[実験方法]
実験は、以下の方法により行った。まず、サンプルを5分間水没させて吸水させる。次に、吸水済みのサンプルを垂直状態で吊す。1分間後、サンプルを水平状態にして、質量を測定する。この質量を、経過時間0時間の質量とする。それから、再びサンプルを垂直状態で吊す。そして、所定のサンプリング時間ごとにサンプルを水平状態にして、質量を測定する。測定質量をM1、サンプルの乾燥質量M0として、保水率は次式から算出される。
保水率(%)=((M1−M0)/M0)×100
【0114】
[実験結果]
実験結果を、表2、図18に示す。なお、保水率は平均値である。
【表2】
【0115】
表2、図18から、実施例の方が比較例よりも、各サンプリング時間ごとの保水率が高いことが判った。また、実施例1−1と実施例1−2とを比較すると、熱分割繊維を含有する実施例1−2の方が、Y型断面繊維を含有する実施例1−1よりも、各サンプリング時間ごとの保水率が高いことが判った。
【0116】
また、繊維構成指標757(表1)の実施例1−1の24時間経過後の保水率は、145%である。繊維構成指標713(表1)の実施例1−2の24時間経過後の保水率は、250%である。繊維構成指標1168(表1)の比較例1−1の24時間経過後の保水率は、24%である。繊維構成指標1903(表1)の比較例1−2の24時間経過後の保水率は、4%である。このことから、繊維構成指標が小さい方が、保水率が高いことが判った。
【0117】
なお、24時間経過後の保水率は、100%以上200%以下である方がよい。その理由は、保水率が100%未満の場合、苔植物配偶体や苔の生長が阻害されやすくなるからである。また、保水率が200%超過の場合、根腐れがおこりやすくなるからである。
【実施例2】
【0118】
以下、緑化部材20について行った保水実験について、図5を援用しながら説明する。
【0119】
[サンプル]
まず、実験に用いたサンプルについて説明する。表3に、サンプルの配合表を示す。
【表3】
【0120】
サンプルの寸法は、縦600mm×横600mmである。図5に示すように、実施例2−1は、括着層200と、保水層201と、保護層202と、多数の人工芝203と、遮断層205と、断熱層206と、を備えている。括着層200には、苔植物配偶体200aが配置されている。
【0121】
表3に示すように、実施例2−1の保水層201には、太さ2.2dtの熱分割繊維が、保水層201全体の質量を100質量%として、20質量%含まれている。同様に、断熱層206には、太さ2.2dtの熱分割繊維が、断熱層206全体の質量を100質量%として、20質量%含まれている。遮断層205は、PE製である。
【0122】
比較例2−1は、括着層200と、保水層201と、多数の人工芝203と、を備えている。括着層200には、苔植物配偶体200aが配置されている。比較例2−1の保水層は、各々太さの異なる汎用ポリエステル繊維からなる。
【0123】
[実験方法]
実験方法は、保水層201単体について行った保水実験(実施例1)と同様である。このため、説明を割愛する。
【0124】
[実験結果]
実験結果を、表4、図19に示す。
【表4】
【0125】
表4、図19から、実施例の方が比較例よりも、各サンプリング時間ごとの保水率が高いことが判った。なお、72時間経過後の保水率は、50%以上である方がよい。その理由は、保水率が50%未満の場合、苔植物配偶体や苔の生長が阻害されやすくなるからである。
【実施例3】
【0126】
以下、溝部204を有する緑化部材20について行った保水実験について、図15、図16を援用しながら説明する。
【0127】
[サンプル]
まず、実験に用いたサンプルについて説明する。表5に、各サンプルの溝部の寸法、およびウェルダー加工時の成形性を示す。
【表5】
【0128】
実施例3−1は、実施例2−1と同じサンプルである。すなわち、実施例3−1には、溝部204が配置されていない。実施例3−2〜3−5は、実施例3−1に対して、ウェルダー加工により溝部204が形成されたサンプルである。実施例3−2〜3−5における、溝部204の成形性は良好であった。隣り合う溝部204同士の間隔は、10cmである。
【0129】
[実験方法]
実験方法は、保水層201単体について行った保水実験(実施例1)と同様である。このため、説明を割愛する。
【0130】
[実験結果]
実験結果を、表6、図20に示す。
【表6】
【0131】
表6、図20から、実施例3−2、3−4、3−5の方が実施例3−1よりも、実験開始当初(0時間時)の保水率が高いことが判った。また、実施例3−2、3−4、3−5の方が実施例3−1よりも、72時間経過後の保水率が高いことが判った。また、実施例3−4、3−5の方が実施例3−1よりも、各サンプリング時間ごとの保水率が高いことが判った。なお、72時間経過後の保水率は、80%以上である方がよい。その理由は、保水率が80%未満の場合、苔植物配偶体や苔の生長が阻害されやすくなるからである。
【0132】
また、隣り合う溝部204同士の間隔は、5cm以上20cm以下である方がよい。その理由は、5cm未満の場合、保水性が過剰に高くなり根腐れがおこりやすくなるからである。また、20cm超過の場合、溝部204配置による充分な保水性向上効果が得られにくいからである。
【符号の説明】
【0133】
1:緑化壁、2:緑化パネル、7:壁本体、8:型枠、9:パネル連結体。
20:緑化部材、21:基材、22:粘着層、23:金網、50:軸足、51:セパレーター、52:レジコン、53:クリップ、70:壁材、80:型材、81:パイプ、82:パイプ、83:座金、84:フォームタイ、85:連結板、89:Pコン、90:針。
200:括着層、200a:苔植物配偶体、201:保水層、202:保護層、203:人工芝、204:溝部、205:遮断層、206:断熱層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば塀や建物の外壁などに用いられる緑化部材、緑化パネル、および緑化壁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素削減や夏場のヒートアイランド現象緩和のため、塀や建物の外壁などを、苔が植設された緑化パネルで覆う方法が開発されている(特許文献1、2参照)。建物の屋上など、水平面に緑化パネルを用いる場合、降雨による水が緑化パネルから流出しにくい。このため、苔の生長に充分な水分を確保することができる。
【0003】
しかしながら、例えば塀や建物の側壁などの立壁に、緑化パネルを用いる場合、降雨による水は、重力により立壁を伝って流れ落ちやすい。このため、苔の生長に充分な水分を、緑化パネルに確保することが困難である。
【0004】
そこで、特許文献3には、断面鋸刃状の外面を有する緑化パネルが開示されている。特許文献3に記載の緑化パネルは、上向きの傾斜面を備えている。このため、降雨の際、水が流れ落ちにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−57132号公報
【特許文献2】特開2004−275039号公報
【特許文献3】特開2004−49064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載の緑化パネルの場合、外面の断面形状が鋸刃状であるため、意匠部の体積が大きくなる。また、外面に不可避的に鋸刃形状が発現するため、外面形状設計、デザインの自由度が低くなる。
【0007】
本発明の緑化部材、緑化パネル、および緑化壁の製造方法は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、保水性が高く、外面形状設計、デザインの自由度が高い緑化部材、緑化パネル、および緑化壁の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明の緑化部材は、苔植物配偶体が配置される括着層と、該括着層の裏側に配置され、異形断面繊維を含有する不織布製であって、該括着層に水分を供給する保水層と、を備えることを特徴とする。ここで、異形断面繊維とは、軸直断面形状が真円形以外の繊維をいう。
【0009】
本発明の緑化部材は、不織布製の保水層を備えている。保水層は、異形断面繊維を含有している。異形断面繊維は、真円断面繊維と比較して、単位質量あたりの比表面積が高くなる。そして、微細形状であるがゆえに細かい水滴を維持しやすい特徴がある。これは、植物の茎や葉にみられる産毛状の構造と類似している。このため、保水性が高い。したがって、立壁に用いるのに特に好適である(勿論、水平壁にも用いることができる。)。また、本発明の緑化部材は、外面の断面形状に因らず、高い保水性を確保することができる。したがって、外面形状設計、デザインの自由度が高い。
【0010】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記異形断面繊維は、断面Y字状のY型断面繊維、および熱により分割する熱分割繊維のうち、少なくとも一方である構成とする方がよい。本構成によると、高い保水性を、簡単に確保することができる。
【0011】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記括着層の表側に配置され、前記苔植物配偶体の仮根が該括着層に根付くのを促進する保護層を備える構成とする方がよい。本構成によると、保護層が苔植物配偶体を覆っている。このため、緑化部材の製造過程において、外部から苔植物配偶体が損傷を被るのを抑制することができる。また、風や重力などにより、苔植物配偶体が括着層から脱落するのを、抑制することができる。
【0012】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記保護層は、水溶性である構成とする方がよい。本構成によると、保護層が降雨などにより溶解しやすい。このため、苔植物配偶体の仮根が括着層に根付いた後は、簡単に保護層を撤去することができる。
【0013】
(5)好ましくは、上記(3)の構成において、前記保護層は、多孔質状を呈し非水溶性である構成とする方がよい。ここで、「多孔質状」には、織布状、不織布状、編物状、スポンジ状、網状が含まれる。本構成によると、苔植物配偶体または苔が、保護層に絡みつきながら生長することができる。このため、苔植物配偶体または苔が緑化部材から脱落するのを抑制することができる。
【0014】
(6)好ましくは、上記(3)の構成において、前記保護層は、多孔質状を呈する非水溶性部分と、水溶性部分と、を有する構成とする方がよい。本構成によると、水溶性部分が降雨などにより溶解しやすい。このため、苔植物配偶体の仮根が括着層に根付いた後は、簡単に水溶性部分を撤去することができる。並びに、非水溶性部分に苔植物配偶体または苔が絡みつきながら生長することができる。
【0015】
(7)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記括着層の表側から人工芝が植設される構成とする方がよい。本構成によると、苔植物配偶体の生長が遅い場合や苔植物配偶体が枯れた場合など、苔植物配偶体の発色が悪い場合であっても、人工芝により緑化部材の美観を確保することができる。また、人為的ないたずら、風、踏圧などから、苔植物配偶体を保護することができる。
【0016】
(8)好ましくは、上記(1)ないし(7)のいずれかの構成において、表面に保水用の溝部を備える構成とする方がよい。本構成によると、溝部を設けることにより、水の流れを遮断することができる。このため、保水層の持っている水の吸上げ能力により、緑化部材全体の保水性のばらつきを抑制することが可能になり、保水性が高くなる。
【0017】
(9)好ましくは、上記(1)ないし(8)のいずれかの構成において、前記保水層の裏側に配置され、該保水層から前記水分が逃げるのを抑制する遮断層を備える構成とする方がよい。本構成によると、保水層の裏側から水分が逃げにくくなる。このため、さらに保水性が高くなる。
【0018】
また、本構成の緑化部材が緑化パネルに組み込まれ、当該緑化パネルと壁本体とが一体化された後においては、緑化部材から壁本体への水の浸入を抑制することができる。このため、壁本体の耐久性が高められる。
【0019】
(10)好ましくは、上記(9)の構成において、前記保水層と前記遮断層との間に配置される不織布製の断熱層を備え、該遮断層は、該断熱層の裏面に熱融着される構成とする方がよい。本構成によると、遮断層を断熱層に熱融着する際の熱から、保水層と苔植物配偶体とを保護することができる。
【0020】
(10−1)好ましくは、上記(10)の構成において、前記断熱層は、前記保水層の保水能力を補う保水能力を有している構成とする方がよい。苔植物配偶体の生長に必要な水分は、保水層が確保している。しかしながら、保水層は苔植物配偶体に近接している。このため、保水層の保水能力を過度に高くすると、水分過剰になり、苔植物配偶体が病気等になるおそれがある。
【0021】
この点、本構成によると、断熱層が保水能力を有している。このため、保水層だけで苔植物配偶体の生長に必要な水分を確保する場合と比較して、保水量を増やすことができる。したがって、例えば、降雨の少ない場所であっても、苔植物配偶体が仮死状態(休眠状態)にならずに生長しやすい。
【0022】
また、断熱層は、保水層と比較して、苔植物配偶体から離間している。このため、苔植物配偶体が断熱層に到達しにくい。したがって、断熱層の水分に苔植物配偶体が浸りにくい。よって、苔植物配偶体が病気等になりにくい。一方、保水層の水分が不足する場合には、断熱層の水分が保水層に移動する。このため、保水層の水分を補充することができる。このように、本構成の断熱層は、保水層のバックアップ機能を有している。
【0023】
(11)また、上記課題を解決するため、本発明の緑化パネルは、上記(9)または(10)の緑化部材と、該緑化部材の裏側に配置される基材と、該緑化部材と該基材との間に配置され、該基材に対して該緑化部材を脱着可能に保持する粘着層と、を備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の緑化パネルの緑化部材は、不織布製の保水層を備えている。保水層は、異形断面繊維を含有している。異形断面繊維は、真円断面繊維と比較して、比表面積が大きく、保水性が高い。このため、保水性が高い。また、本発明の緑化パネルは、外面の断面形状に因らず、高い保水性を確保することができる。したがって、外面形状設計、デザインの自由度が高い。
【0025】
本発明の緑化パネルによると、粘着層を介して、基材に緑化部材が取り付けられている。このため、例えば苔植物配偶体が病気等により枯れるような問題などがある場合には、簡単に緑化部材を交換することができる。したがって、本発明の緑化パネルはメンテナンス性に優れている。
【0026】
(12)また、上記課題を解決するため、本発明の緑化壁の製造方法は、上記(11)の緑化パネルと、壁本体と、を備える緑化壁の製造方法であって、前記基材の裏面が型面の一部となるように、前記緑化パネルを組み込んだ型枠を組み立てる型枠組立工程と、該型枠に流動性を有する壁材を注入し、該壁材を硬化させることにより、前記壁本体の成形と、該基材と該壁本体との接合と、を並行して行う成形工程と、該型枠を分解することにより、該緑化パネルと該壁本体とが一体化した前記緑化壁を得る型枠分解工程と、を有することを特徴とする。
【0027】
本発明の緑化壁の製造方法は、型枠組立工程と成形工程と型枠分解工程とを有する。型枠組立工程においては、緑化パネルを組み込んで、型枠を組み立てる。この際、基材の裏面を型面(成形面)の一部にする。成形工程においては、型枠に壁材を注入し、壁材を硬化させる。この際、基材の裏面が壁本体に接合される。並びに、壁本体が成形される。型枠分解工程においては、型枠が撤去される。このようにして、緑化パネルと壁本体とが一体化された、緑化壁が完成する。
【0028】
本発明の緑化壁の製造方法によると、壁本体に対する緑化パネルの取付と、壁本体の成形と、を並行して行うことができる。このため、壁本体に対して、後付けで緑化パネルを取り付ける場合と比較して、取付場所(例えば高所など)の自由度が高くなる。また、取付コストを削減することができる。また、壁材と保水層との間には、遮断層が介在している。このため、基材を介して、壁材の内容物が保水層に進入するのを、抑制することができる。
【0029】
(12−1)好ましくは、上記(12)の構成において、前記基材はセメント、またはケイ酸カルシウム製である構成とする方がよい。基材は多孔性である。このため、成形工程において、壁材が基材によく浸透する。したがって、壁本体と基材との接合性が高くなる。
【0030】
(12−2)好ましくは、上記(12)の構成において、前記基材は、樹脂発泡体、繊維強化樹脂、ガラス発泡体等から選ばれる材料製である構成とする方がよい。基材は、軽量である方が好ましい。また、基材は、高強度である方が好ましい。基材を樹脂発泡体製、ガラス発泡体製にすると、基材を軽量化することができる。また、基材を繊維強化樹脂製にすると、基材を軽量化、高強度化することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、保水性が高く、外面形状設計、デザインの自由度が高い緑化部材、緑化パネル、および緑化壁の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第一実施形態の緑化壁の斜視図である。
【図2】同緑化壁の部分斜視図である。
【図3】同緑化壁の分解部分斜視図である。
【図4】図2のIV−IV方向断面図である。
【図5】図4の枠V内の拡大図である。
【図6】表側積層工程の第一段階の模式図である。
【図7】同工程の第二段階の模式図である。
【図8】同工程の第三段階の模式図である。
【図9】同工程の第四段階の模式図である。
【図10】裏側積層工程の模式図である。
【図11】表裏層合体工程の模式図である。
【図12】緑化部材接着工程の模式図である。
【図13】本実施形態の緑化壁の製造方法に用いられる型枠の斜視図である。
【図14】同型枠の左方から見た部分断面図である。
【図15】第二実施形態の緑化壁の左方から見た断面図である。
【図16】図15の円XVI内の拡大図である。
【図17】図15の円XVII内の拡大図である。
【図18】実施例1の保水層について行った保水実験の結果を示すグラフである。
【図19】実施例2の緑化部材について行った保水実験の結果を示すグラフである。
【図20】実施例3の緑化部材について行った保水実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の緑化部材、緑化パネル、および緑化部材の製造方法の実施の形態について説明する。
【0034】
<第一実施形態>
[緑化壁の構成]
まず、本実施形態の緑化壁の構成について説明する。図1に、本実施形態の緑化壁の斜視図を示す。図2に、同緑化壁の部分斜視図を示す。図3に、同緑化壁の分解部分斜視図を示す。図4に、図2のIV−IV方向断面図を示す。なお、図2〜図4に示すのは、緑化壁1のうち、一枚の緑化パネル2に対応する部分である。
【0035】
図1〜図4に示すように、緑化壁1は、パネル連結体9と、壁本体7と、軸足50と、セパレーター51と、レジコン(登録商標、岡部株式会社製)52と、クリップ53と、袋ナット54と、を備えている。
【0036】
(壁本体7、軸足50、セパレーター51、レジコン52、クリップ53、袋ナット54)
壁本体7は、コンクリート製であって、ブロック状を呈している。軸足50、セパレーター51、レジコン52、クリップ53、袋ナット54のセットは、所定間隔ごとに、壁本体7に配置されている。
【0037】
セパレーター51は、鋼製であって丸棒状を呈している。セパレーター51は、前後方向に延在している。セパレーター51は、壁本体7に埋設されている。セパレーター51の前後方向(軸方向)両端には、ねじ部が配置されている。
【0038】
レジコン52は、樹脂製であって、短軸円柱状を呈している。レジコン52の前後方向両面には、凹部が形成されている。凹部の内周面には、ねじ部が配置されている。レジコン52のねじ部とセパレーター51のねじ部とが螺合することにより、レジコン52は、セパレーター51の前後方向両端に固定されている。レジコン52は、壁本体7の前後面から表出している。後方のレジコン52の後方の凹部は、充填材やキャップにより封止されている。
【0039】
軸足50は、後述する緑化パネル2を貫通して、前方のレジコン52の前方の凹部に、固定されている。クリップ53は、鋼製であって、軸足50に環装されている。クリップ53は、袋ナット54と、後述する金網23と、の間に介装されている。
【0040】
(パネル連結体9)
パネル連結体9は、長方形板状を呈している。パネル連結体9は、合計15枚(5行(上下)×3列(左右))の緑化パネル2が繋ぎ合わされて形成されている。緑化パネル2は、緑化部材20と、基材21と、粘着層22と、金網23と、を備えている。基材21は、セメント製であって長方形板状を呈している。基材21は壁本体7の前面(表面)に積層されている。
【0041】
図5に、図4の枠V内の拡大図を示す。図5に示すように、緑化部材20は、括着層200と、保水層201と、保護層202と、多数の人工芝203と、遮断層205と、断熱層206と、を備えている。
【0042】
括着層200は、スパンボンド式不織布である。苔の生長初期において、括着層200には、苔植物配偶体200aが配置されている。図3に示すように、括着層200に根付くことにより、苔植物配偶体200aは生長し、緑化部材20の前面を被覆していく。
【0043】
図5に戻って、保護層202は、ポリビニルアルコール(PVA)製である。保護層202は、括着層200の前面に積層されている。保護層202は、水溶性を有している。このため、降雨などにより、保護層202は経時的に溶解し、最終的には消滅し、苔植物配偶体200aの生長を妨げない。
【0044】
多数の人工芝203は、所定のパターンで保護層202の前面に植設されている。人工芝203の根本は、保護層202、括着層200、保水層201を貫通し、後述する断熱層206にまで到達している。
【0045】
保水層201は、異形断面繊維を含有する不織布製である。保水層201は、括着層200の後面(裏面)に積層されている。保水層201は、苔植物配偶体200aの生長に必要な水分を保有している。
【0046】
断熱層206は、不織布製であって、保水層201の後面に積層されている。断熱層206は、後述する遮断層205を断熱層206に積層する際の熱から、保水層201や括着層200(つまり苔植物配偶体200a)を保護している。また、断熱層206は、保水層201の保水能力をバックアップしている。
【0047】
遮断層205は、ポリエチレン(PE)製である。遮断層205は、断熱層206の後面に積層されている。遮断層205は、基材21や壁本体7のアルカリ成分が、断熱層206に漏れるのを抑制している。並びに、遮断層205は、保水層201の水分が、基材21や壁本体7に漏れるのを抑制している。
【0048】
粘着層22は、両面テープである。粘着層22は、遮断層205の後面と、基材21の前面と、の間に介装されている。粘着層22により、緑化部材20は、基材21に脱着可能に貼り付けられている。
【0049】
金網23は、保護層202の前面を覆っている。図3に示すように、金網23は、クリップ53により、保護層202の前面に押しつけられている。
【0050】
[緑化パネルの製造方法]
次に、緑化パネル2の製造方法について説明する。緑化パネル2の製造方法は、緑化部材製造工程と、緑化部材接着工程と、を有している。
【0051】
(緑化部材製造工程)
緑化部材製造工程は、表側積層工程と、裏側積層工程と、表裏層合体工程と、を有している。図6に、表側積層工程の第一段階の模式図を示す。図7に、同工程の第二段階の模式図を示す。図8に、同工程の第三段階の模式図を示す。図9に、同工程の第四段階の模式図を示す。図10に、裏側積層工程の模式図を示す。図11に、表裏層合体工程の模式図を示す。
【0052】
まず、表側積層工程について説明する。図6に示すように、本工程の第一段階においては、ニードルパンチ法により、括着層200と保水層201とを結合させる。具体的には、まず、括着層200と保水層201とを積層させる。次いで、針90を突き刺して、各層の繊維同士を交絡させる。このようにして、括着層200と保水層201とを結合させる。図7に示すように、本工程の第二段階においては、括着層200に多数の苔植物配偶体200aを播く。図8に示すように、本工程の第三段階においては、まず、多数の苔植物配偶体200aを保護層202で覆う。次いで、ニードルパンチ法により、保護層202と、括着層200と保水層201との結合体と、を結合させる。図9に示すように、本工程の第四段階においては、タフティング法により、人工芝203を、所定のパターンで、保護層202の上から植設する。このようにして、人工芝203、保護層202、苔植物配偶体200a、括着層200、保水層201からなる表側積層体が作製される。
【0053】
次に、裏側積層工程について説明する。図10に示すように、本工程においては、ラミネート法により、断熱層206の裏面に、遮断層205を形成する。すなわち、溶融状態の遮断層205により、断熱層206の裏面をコーティングする。このようにして、断熱層206、遮断層205からなる裏側積層体が作製される。
【0054】
次に、表裏層合体工程について説明する。図11に示すように、本工程においては、表側積層体(人工芝203、保護層202、苔植物配偶体200a、括着層200、保水層201)と裏側積層体(断熱層206、遮断層205)とを、ケミカルボンド法により合体させる。このようにして、緑化部材20を作製する。
【0055】
(緑化部材接着工程)
図12に、緑化部材接着工程の模式図を示す。図12に示すように、本工程においては、遮断層205の裏面に、粘着層22を配置する。そして、基材21の表面に、粘着層22つまり緑化部材20を接着する。このようにして、緑化パネル2を作製する。なお、金網23は、後述する緑化壁の製造方法において、取り付けられる。
【0056】
[緑化壁の製造方法]
次に、緑化壁1の製造方法について説明する。緑化壁1の製造方法は、型枠組立工程と、成形工程と、型枠分解工程と、を有している。図13に、緑化壁の製造方法に用いられる型枠の斜視図を示す。図14に、同型枠の左方から見た部分断面図を示す。
【0057】
(型枠の構成)
図13、図14に示すように、型枠8は、型材80と、パイプ81、82と、座金83と、フォームタイ84と、連結板85と、ナット87と、パネル連結体9と、軸足50と、セパレーター51と、レジコン52と、を備えている。型材80は、ベニヤ板製であって、長方形状を呈している。型材80の前面には、離型剤が塗られている。パネル連結体9は、長方形板状を呈している。パネル連結体9の隣り合う緑化パネル2同士は、鋼製の連結板85により、連結されている。パネル連結体9と型材80とは、前後方向に所定間隔だけ離間して、立設されている。
【0058】
以下に示す各部材の配置は、パネル連結体9側(前側)と型材80側(後側)とで、前後対称である。ここでは、パネル連結体9側の各部材についてのみ説明する。
【0059】
複数のパイプ81、82は、全体として格子状に配置されている。複数のパイプ81、82は、パネル連結体9を前方から補強している。パイプ81は、鋼製であって上下方向に延在している。12本のパイプ81は、パネル連結体9の前面に配置されている。パイプ82は、鋼製であって左右方向に延在している。16本のパイプ82は、パイプ81の前方に配置されている。
【0060】
フォームタイ84、軸足50、セパレーター51、レジコン52、座金83、ナット87のセットは、所定間隔ごとに、型枠8に配置されている。セパレーター51は、パネル連結体9と型材80との間に配置されている。レジコン52は、セパレーター51の前後方向両端に固定されている。軸足50は、鋼製であって丸棒状を呈している。軸足50は、前後方向に延在している。軸足50の後端は、レジコン52に固定されている。軸足50の前端は、緑化パネル2を貫通している。座金83は、鋼製であって後方に開口するC字板状を呈している。座金83は、2本のパイプ82を前方から保持している。フォームタイ84は、鋼製であって、前後方向に延在している。フォームタイ84は、緑化パネル2の前面に配置されている。フォームタイ84の後面には凹部840が形成されている。フォームタイ84の前部には軸部841が形成されている。凹部840および軸部841には、各々、ねじ部が配置されている。凹部840には、軸足50の前端が固定されている。軸部841は、2本のパイプ82の間を貫通して、座金83の前方に突出している。ナット87は、軸部841の突出端(前端)に固定されている。
【0061】
(型枠組立工程)
型枠組立工程においては、まず、パネル連結体9と型材80とを前後方向に対向して配置する。次に、フォームタイ84、軸足50、セパレーター51、レジコン52、座金83、ナット87を用いて、パネル連結体9の前側に、12本のパイプ81と16本のパイプ82とを組み付ける。並びに、型材80の後側に、12本のパイプ81と16本のパイプ82とを組み付ける。このようにして、型枠8を組み立てる。
【0062】
(成形工程)
成形工程においては、型枠8の内部に、コンクリートの原料、つまり壁材70を流し込む。すなわち、各緑化パネル2の基材21の後面と、型材80の前面と、の間に壁材70を流し込む。ここで、基材21はセメント製であり、多孔性である。このため、壁材70は、基材21の内部にまで、よく浸透する。壁材70が硬化することにより、壁本体7(図1参照)が形成される。並びに、壁本体7と、各緑化パネル2の基材21と、が強固に結合する。
【0063】
(型枠分解工程)
型枠分解工程においては、まず、ナット87を軸部841から取り外すことにより、座金83をフォームタイ84から取り外す。続いて、パネル連結体9の前側および型材80の後側から、パイプ81、パイプ82を撤去する。それから、フォームタイ84を軸足50から取り外す。その後、後側の軸足50から型材80を取り外す。また、後側のレジコン52から後側の軸足50を取り外す。最後に、図2〜図4に示すように、残しておいた前側の軸足50にクリップ53および袋ナット54を取り付けることにより、金網23を緑化部材20の前面に装着する。このようにして、緑化壁1を作製する。
【0064】
[作用効果]
次に、本実施形態の緑化部材20、緑化パネル2、および緑化壁1の製造方法の作用効果について説明する。本実施形態の緑化部材20は、不織布製の保水層201を備えている。保水層201は、異形断面繊維を含有している。異形断面繊維は、真円断面繊維と比較して、比表面積が大きい。このため、保水性が高い。したがって、地面に対して略垂直に配置される立壁に用いるのに好適である。また、本実施形態の緑化部材20は、外面の断面形状に因らず、高い保水性を確保することができる。したがって、外面形状設計、デザインの自由度が高い。
【0065】
また、本実施形態の緑化部材20の保護層202は、水溶性を有している。このため、降雨などにより、保護層202は経時的に溶解し、最終的には消滅する。また、保護層202の溶出液は、中性である。このため、苔植物配偶体200aの生長を阻害するおそれがない。
【0066】
また、本実施形態の緑化部材20は、多数の人工芝203を備えている。このため、苔植物配偶体200aの生長が遅い場合や苔植物配偶体200aが枯れた場合など、苔植物配偶体200aの発色が悪い場合であっても、多数の人工芝203により緑化部材20の美観を確保することができる。また、人為的ないたずら、風、踏圧などから、苔植物配偶体200aを保護することができる。また、人工芝203の大きさ、配置パターン、配置密度などを調整することにより、苔植物配偶体200aに対する日光の照射量を調整することができる。
【0067】
また、本実施形態の緑化部材20の括着層200は、保水層201よりも目の細かい不織布製である。このため、苔植物配偶体200aが括着層200から脱落しにくい。
【0068】
また、本実施形態の緑化部材20の括着層200は、スパンボンド法により作製されている。このため、保水層201と比較して硬めであり、形状保持性が高い。したがって、図8に示すように、括着層200に人工芝203植設用の針が進入しても、括着層200がよれにくい。また、括着層200にしわが入りにくい。また、緑化部材20が吸水した場合であっても、乾燥時の形状を保持しやすい。
【0069】
また、本実施形態の緑化部材20は、遮断層205を備えている。このため、図5に矢印Y1で示すように、保水層201の水分が、基材21に逃げるのを抑制することができる。並びに、図5に矢印Y2で示すように、基材21や壁本体7のアルカリ成分が、断熱層206に浸透するのを抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態の緑化部材20は、断熱層206を備えている。このため、溶融状態の遮断層205を断熱層206にラミネーションする際の熱から、保水層201を保護することができる。
【0071】
また、断熱層206は、断熱能力のみならず、保水能力を有している。苔植物配偶体200aの生長に必要な水分は、主に、保水層201が確保している。しかしながら、保水層201は苔植物配偶体200aに近接している。このため、保水層201の保水能力を過度に高くすると、水分過剰になり、苔植物配偶体200aが病気等になるおそれがある。
【0072】
この点、本実施形態の緑化部材20によると、断熱層206が保水能力を有している。このため、保水層201だけで苔植物配偶体200aの生長に必要な水分を確保する場合と比較して、保水量を増やすことができる。したがって、例えば、降雨の少ない場所であっても、苔植物配偶体200aが仮死状態(休眠状態)にならずに生長しやすい。
【0073】
また、断熱層206は、保水層201と比較して、苔植物配偶体200aから離間している。このため、苔植物配偶体200aの仮根が断熱層206に到達しにくい。したがって、断熱層206の水分に苔植物配偶体200aが浸りにくい。よって、苔植物配偶体200aが病気等になりにくい。一方、保水層201の水分が不足する場合には、断熱層206の水分が保水層201に移動する。このため、保水層201の水分を補充することができる。このように、断熱層206は、保水層201のバックアップ機能を有している。
【0074】
また、本実施形態の緑化パネル2の粘着層22は、遮断層205に貼り付けられている。このため、粘着層22を不織布製の保水層201や断熱層206に貼り付ける場合と比較して、粘着層22が剥離しにくい。
【0075】
また、本実施形態の緑化パネル2によると、粘着層22を介して、基材21に緑化部材20が取り付けられている。このため、例えば緑化部材20の苔植物配偶体200aが枯れてしまった場合や緑化部材20が破損した場合などは、簡単に緑化部材20を交換することができる。したがって、本実施形態の緑化パネル2はメンテナンス性に優れている。
【0076】
また、本実施形態の緑化パネル2によると、単一の壁本体7に対して、15枚の緑化部材20が配置されている。このため、所望の緑化部材20だけを交換することで、緑化壁1全体の美観を保つことができる。この点においても、本実施形態の緑化パネル2はメンテナンス性に優れている。
【0077】
また、本実施形態の緑化壁1の製造方法によると、成形工程において、壁本体7に対する緑化パネル2の取付と、壁本体7の成形と、を並行して行うことができる。このため、既設の壁本体7に対して、後付けで緑化パネル2を取り付ける場合と比較して、取付場所(例えば高所など)の自由度が高くなる。
【0078】
また、既設の壁本体7に対して、後付けで緑化パネル2を取り付ける場合、壁本体7の施工時と緑化パネル2の施工時とで、少なくとも二回足場を組む必要がある。これに対して、本実施形態の緑化壁1の製造方法によると、足場を組む回数が一回で済む。このため、取付コストを削減することができる。また、壁材70と断熱層206との間には、遮断層205が介在している。このため、壁材70が断熱層206に浸透するのを抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態の緑化壁1の製造方法によると、壁本体7がコンクリート製である。また、基材21がセメント製である。すなわち、基材21は多孔性である。このため、成形工程において、壁材70が基材21によく浸透する。したがって、壁本体7と基材21との接合性が高くなる。
【0080】
また、本実施形態の緑化壁1の製造方法によると、成形工程において、パネル連結体9、型材80がパイプ81、82により補強されている。このため、壁材70の注入圧により、パネル連結体9、型材80が変形しにくい。
【0081】
また、本実施形態の緑化壁1の製造方法によると、型枠分解工程において、使用済みのレジコン52を利用して、金網23が取り付けられる。すなわち、本来、パネル連結体9と型材80との間のスペースを確保するために用いられるレジコン52を、金網23取付用として再利用することができる。このため、別途、金網23取付用の部品を配置する場合と比較して、部品点数が少なくなる。また、図4に示す後方のレジコン52のように、凹部を充填材で封止する必要がない。
【0082】
また、本実施形態の緑化壁1の製造方法によると、型材80の前面に離型剤が塗布されている一方、基材21の後面に離型剤が塗布されていない。つまり、選択的に離型剤が塗布されている。このため、型枠分解工程において、型材80が壁本体7から離れやすい。一方、基材21と壁本体7とは強固に接合される。
【0083】
<第二実施形態>
本実施形態と第一実施形態との相違点は、緑化部材20の表面に、溝部が配置されている点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。図15に、本実施形態の緑化壁の左方から見た断面図を示す。なお、図4と対応する部位については同じ符号で示す。図16に、図15の円XVI内の拡大図を示す。
【0084】
図15、図16に示すように、保護層202、および括着層200には、溝部204が配置されている。溝部204は、左右方向に延在している。溝部204は、上下方向に所定間隔ずつ離間して、合計5本配置されている。溝部204の断面形状は、正方形状を呈している。溝部204は、ウェルダー加工により形成される。
【0085】
図17に示すように、壁本体7の後面には、凹部71が形成されている。凹部71の底面からは、セパレーター51の後端が突出している。凹部71は、緑化壁1を製造する際の、Pコン89の配置跡である。なお、Pコン89の軸部890は、図14における後側のフォームタイ84に固定されている。
【0086】
本実施形態の緑化部材20、緑化パネル2、および緑化壁1の製造方法は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の緑化部材、緑化パネル、および緑化壁の製造方法と、同様の作用効果を有する。また、本実施形態の緑化部材20によると、降雨時などに、緑化部材20を伝って流れ落ちる水の流れを遮断することができる。このため、保水層201の持っている水の吸上げ能力により、緑化部材20全体の保水性のばらつきを抑制することが可能になり、さらに保水性が高くなる。また、本実施形態の緑化部材20によると、ウェルダー加工により、所望の形状の溝部204を、簡単に形成することができる。また、本実施形態の緑化壁1のように、壁本体7の後面に凹部71が形成されていてもよい。すなわち、後方のレジコン52(図4参照)が配置されていなくてもよい。
【0087】
<その他>
以上、本発明の緑化部材、緑化パネル、および緑化壁の製造方法の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0088】
上記実施形態においては、緑化パネル2に金網23を配置したが、金網23を配置しなくてもよい。また、金網23の材質は特に限定しない。金属製、樹脂製としてもよい。また、金網23の網目の大きさも特に限定しない。図3に示すように、クリップ53により緑化部材20の前面に固定できればよい。また、網目から人工芝203や苔植物配偶体200aが突出可能であればよい。
【0089】
また、不織布製の括着層200、保水層201、断熱層206のフリースの形成方法は特に限定しない。カーディング方式やエアレイド方式などの乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法などを用いることができる。
【0090】
また、緑化部材製造工程の不織布接合工程(図6参照)における、括着層200、保水層201、断熱層206の接合方法は特に限定しない。ニードルパンチ法の他、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、スパンレース法、ステッチボンド法、スチームジェット法などを用いることができる。
【0091】
また、緑化壁1に配置する緑化パネル2の枚数、形状、大きさは特に限定しない。また、緑化壁1、緑化パネル2、緑化部材20を上向きに配置してもよい。例えば、緑化壁1、緑化パネル2、緑化部材20を、屋上緑化などに用いてもよい。また、単一の壁本体7に対する緑化パネル2の配置数は特に限定しない。
【0092】
また、括着層200に配置する苔植物配偶体200aの種類は特に限定しない。例えば、スナゴケ、ハイゴケ、スギゴケ、ミズゴケなどの蘚類、ゼニゴケ、ツボミゴケなどの苔類、ニワツノゴケなどのツノゴケ類に属する苔植物配偶体200aを用いることができる。
【0093】
また、苔植物配偶体200aの種類に応じて、人工芝203の大きさ、配置パターン、配置密度などを調整してもよい。また、苔植物配偶体200aの種類に応じて、保水層201の異形断面繊維の含有量を調整してもよい。また、苔植物配偶体200aの種類に応じて、各層の層厚を調整してもよい。
【0094】
また、保水層201の異形断面繊維の種類は特に限定しない。好ましくは、比表面積が大きい方がよい。また、繊維太さは細い方がよい。これらの観点から、Y型断面繊維、熱分割繊維などの特殊繊維などが好適である。
【0095】
また、括着層200、断熱層206を構成する繊維の種類は特に限定しない。例えば、汎用ポリエステル繊維やリサイクルPET繊維などが好適である。また、繊維の太さ、長さ、目付量も特に限定しない。また、括着層200は、粘着性不織布であってもよい。こうすると、括着層200に苔植物配偶体200aがくっつきやすい。
【0096】
また、保護層202の材質は特に限定しない。苔植物配偶体200aの種類に応じて、保護層202の材質を変更すればよい。また、保護層202は、ポリビニルアルコール、生分解性ポリエステル、デンプンなどの水溶性成分、およびポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの非水溶性成分のうち、少なくとも一方を有していればよい。
【0097】
保護層202が水溶性成分を有する場合、当該水溶性成分の溶解時期を、材質、面密度などにより調整することができる。例えば、緑化部材20の使用開始早期において水溶性成分が溶解するように溶解時期を調整すれば、緑化部材20の製造過程や搬送過程における、苔植物配偶体200aの脱落を抑制することができる。また、緑化部材20の製造過程や搬送過程において、苔植物配偶体200aが外部から損傷を被るのを抑制することができる。
【0098】
また、苔植物配偶体200aの仮根が括着層200に根付く時期に応じて水溶性成分が溶解するように溶解時期を調整すれば、苔植物配偶体200aの仮根の根付きを促進することができる。並びに、苔植物配偶体200aの仮根が括着層200に根付いた後に、簡単に保護層202を撤去することができる。
【0099】
また、保護層202が非水溶性成分を有する場合は、苔植物配偶体200aの仮根が括着層200に根付いた後においても、当該非水溶性部分は残留する。このため、非水溶性部分に苔植物配偶体200aの仮根が絡みつくことにより、苔植物配偶体200aや苔が緑化部材20から脱落するのを抑制することができる。
【0100】
また、遮断層205の材質は特に限定しない。水分やアルカリ成分に対するバリア性が高い方が好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが好適である。また、接着剤により遮断層205を配置する場合は、ラミネート法のように保水層201に熱が加わらないため、遮断層205を保水層201に接着してもよい。こうすると、断熱層206が不要になる。
【0101】
また、基材21の材質は特に限定しない。壁本体7との一体化が不要な場合は、アルカリ成分など、苔植物配偶体200aに悪影響を与えない材質の方が好ましい。例えば、ベニヤ板、発泡ポリエチレン板、窯業板(粘土板など)などが好適である。
【0102】
また、粘着層22の材質は特に限定しない。遮断層205の裏面および基材21の表面のうち、少なくとも一方に接着剤を塗布することにより、粘着層22を形成してもよい。
【0103】
また、第二実施形態における溝部204の配置数は特に限定しない。配置数が多いほど保水性が高くなる。また、溝部204の延在方向は特に限定しない。水平方向に近いほど保水性が高くなる。また、溝部204の深さ(図16における溝部204の前後方向長さ)、溝幅(図16における溝部204の上下方向長さ)は特に限定しない。また、溝部204の断面形状は特に限定しない。長方形状、C字状、U字状、V字状などとしてもよい。
【0104】
また、人工芝203の材質は特に限定しない。人工芝203の表面に親水処理を施してもよい。こうすると、人工芝203の濡れ性が向上し、保水率が向上する。このため、苔植物配偶体200aや苔の生長を促進することができる。親水処理の方法は特に限定しない。例えば、親水性コーティング剤をスプレーコーティング法、ディップ法、ロールコーティング法等で塗布し、乾燥させるなどの処理方法を用いることができる。
【0105】
また、緑化部材20、緑化パネル2を搬送する際、緑化部材20の前面をダンボール製などの保護部材により覆ってもよい。こうすると、搬送時の振動や、隣接する搬送物との干渉などから、緑化部材20の前面を保護することができる。
【0106】
また、図13に示すパイプ81、82の代わりに、板材を配置してもよい。この場合であっても、成形工程における壁材70の注入圧から、パネル連結体9、型材80を補強することができる。
【0107】
また、レジコン52の代わりに、金属メッキした長ナットやステンレス製の長ナットなど、セパレーター51と装着可能で、かつ軸足50が脱着可能な連結具を用いてもよい。また、軸方向両面に、内周面にねじ部が形成された凹部を有する連結具を用いることができる。また、少なくとも軸方向両端付近の内周面にねじ部が形成された貫通孔を有する連結具を用いることができる。
【0108】
図4に示すように、連結具は、壁本体7に埋設され、金網23の固定に使用される。このため、連結具は、セパレーター51や軸足50の脱着、回転により、友回り(セパレーター51や軸足50と一緒に連結具が回転する)しない形状でなくてはならない。また、連結具は、長期間、コンクリート製の壁本体7に埋設される。このため、連結具は、錆などが発生しにくい、腐食し難い材質であることが望ましい。
【実施例1】
【0109】
以下、保水層201単体について行った保水実験について説明する。
【0110】
[サンプル]
まず、実験に用いたサンプルについて説明する。表1に、サンプルの配合表を示す。
【表1】
【0111】
実施例1−1には、太さ4.4dt(デシテックス)のY型断面繊維が、保水層201全体の質量を100質量%として、20質量%含まれている。実施例1−2には、太さ2.2dtの熱分割繊維が20質量%含まれている。比較例1−1は、各々太さの異なる汎用ポリエステル繊維からなる。比較例1−2には、各々太さの異なる難燃繊維が含まれている。
【0112】
任意のサンプルの繊維構成指標とは、当該サンプルに含まれている繊維の太さと、繊維の含有量とをかけた数値の総和である。例えば、実施例1−1の場合、山一社製のリサイクル繊維の太さ14dtと当該繊維の含有量25質量%とをかけた数値と、東レ社製の汎用ポリエステル繊維の太さ6.6dtと当該繊維の含有量35質量%とをかけた数値と、ユニチカ社製のバインダーの太さ4.4dtと当該繊維の含有量20質量%とをかけた数値と、高安社製のY型断面繊維の太さ4.4dtと当該繊維の含有量20質量%とをかけた数値と、の総和である。
【0113】
[実験方法]
実験は、以下の方法により行った。まず、サンプルを5分間水没させて吸水させる。次に、吸水済みのサンプルを垂直状態で吊す。1分間後、サンプルを水平状態にして、質量を測定する。この質量を、経過時間0時間の質量とする。それから、再びサンプルを垂直状態で吊す。そして、所定のサンプリング時間ごとにサンプルを水平状態にして、質量を測定する。測定質量をM1、サンプルの乾燥質量M0として、保水率は次式から算出される。
保水率(%)=((M1−M0)/M0)×100
【0114】
[実験結果]
実験結果を、表2、図18に示す。なお、保水率は平均値である。
【表2】
【0115】
表2、図18から、実施例の方が比較例よりも、各サンプリング時間ごとの保水率が高いことが判った。また、実施例1−1と実施例1−2とを比較すると、熱分割繊維を含有する実施例1−2の方が、Y型断面繊維を含有する実施例1−1よりも、各サンプリング時間ごとの保水率が高いことが判った。
【0116】
また、繊維構成指標757(表1)の実施例1−1の24時間経過後の保水率は、145%である。繊維構成指標713(表1)の実施例1−2の24時間経過後の保水率は、250%である。繊維構成指標1168(表1)の比較例1−1の24時間経過後の保水率は、24%である。繊維構成指標1903(表1)の比較例1−2の24時間経過後の保水率は、4%である。このことから、繊維構成指標が小さい方が、保水率が高いことが判った。
【0117】
なお、24時間経過後の保水率は、100%以上200%以下である方がよい。その理由は、保水率が100%未満の場合、苔植物配偶体や苔の生長が阻害されやすくなるからである。また、保水率が200%超過の場合、根腐れがおこりやすくなるからである。
【実施例2】
【0118】
以下、緑化部材20について行った保水実験について、図5を援用しながら説明する。
【0119】
[サンプル]
まず、実験に用いたサンプルについて説明する。表3に、サンプルの配合表を示す。
【表3】
【0120】
サンプルの寸法は、縦600mm×横600mmである。図5に示すように、実施例2−1は、括着層200と、保水層201と、保護層202と、多数の人工芝203と、遮断層205と、断熱層206と、を備えている。括着層200には、苔植物配偶体200aが配置されている。
【0121】
表3に示すように、実施例2−1の保水層201には、太さ2.2dtの熱分割繊維が、保水層201全体の質量を100質量%として、20質量%含まれている。同様に、断熱層206には、太さ2.2dtの熱分割繊維が、断熱層206全体の質量を100質量%として、20質量%含まれている。遮断層205は、PE製である。
【0122】
比較例2−1は、括着層200と、保水層201と、多数の人工芝203と、を備えている。括着層200には、苔植物配偶体200aが配置されている。比較例2−1の保水層は、各々太さの異なる汎用ポリエステル繊維からなる。
【0123】
[実験方法]
実験方法は、保水層201単体について行った保水実験(実施例1)と同様である。このため、説明を割愛する。
【0124】
[実験結果]
実験結果を、表4、図19に示す。
【表4】
【0125】
表4、図19から、実施例の方が比較例よりも、各サンプリング時間ごとの保水率が高いことが判った。なお、72時間経過後の保水率は、50%以上である方がよい。その理由は、保水率が50%未満の場合、苔植物配偶体や苔の生長が阻害されやすくなるからである。
【実施例3】
【0126】
以下、溝部204を有する緑化部材20について行った保水実験について、図15、図16を援用しながら説明する。
【0127】
[サンプル]
まず、実験に用いたサンプルについて説明する。表5に、各サンプルの溝部の寸法、およびウェルダー加工時の成形性を示す。
【表5】
【0128】
実施例3−1は、実施例2−1と同じサンプルである。すなわち、実施例3−1には、溝部204が配置されていない。実施例3−2〜3−5は、実施例3−1に対して、ウェルダー加工により溝部204が形成されたサンプルである。実施例3−2〜3−5における、溝部204の成形性は良好であった。隣り合う溝部204同士の間隔は、10cmである。
【0129】
[実験方法]
実験方法は、保水層201単体について行った保水実験(実施例1)と同様である。このため、説明を割愛する。
【0130】
[実験結果]
実験結果を、表6、図20に示す。
【表6】
【0131】
表6、図20から、実施例3−2、3−4、3−5の方が実施例3−1よりも、実験開始当初(0時間時)の保水率が高いことが判った。また、実施例3−2、3−4、3−5の方が実施例3−1よりも、72時間経過後の保水率が高いことが判った。また、実施例3−4、3−5の方が実施例3−1よりも、各サンプリング時間ごとの保水率が高いことが判った。なお、72時間経過後の保水率は、80%以上である方がよい。その理由は、保水率が80%未満の場合、苔植物配偶体や苔の生長が阻害されやすくなるからである。
【0132】
また、隣り合う溝部204同士の間隔は、5cm以上20cm以下である方がよい。その理由は、5cm未満の場合、保水性が過剰に高くなり根腐れがおこりやすくなるからである。また、20cm超過の場合、溝部204配置による充分な保水性向上効果が得られにくいからである。
【符号の説明】
【0133】
1:緑化壁、2:緑化パネル、7:壁本体、8:型枠、9:パネル連結体。
20:緑化部材、21:基材、22:粘着層、23:金網、50:軸足、51:セパレーター、52:レジコン、53:クリップ、70:壁材、80:型材、81:パイプ、82:パイプ、83:座金、84:フォームタイ、85:連結板、89:Pコン、90:針。
200:括着層、200a:苔植物配偶体、201:保水層、202:保護層、203:人工芝、204:溝部、205:遮断層、206:断熱層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苔植物配偶体が配置される括着層と、
該括着層の裏側に配置され、異形断面繊維を含有する不織布製であって、該括着層に水分を供給する保水層と、
を備える緑化部材。
【請求項2】
前記異形断面繊維は、断面Y字状のY型断面繊維、および熱により分割する熱分割繊維のうち、少なくとも一方である請求項1に記載の緑化部材。
【請求項3】
前記括着層の表側に配置され、前記苔植物配偶体の仮根が該括着層に根付くのを促進する保護層を備える請求項1または請求項2に記載の緑化部材。
【請求項4】
前記保護層は、水溶性である請求項3に記載の緑化部材。
【請求項5】
前記保護層は、多孔質状を呈し非水溶性である請求項3に記載の緑化部材。
【請求項6】
前記保護層は、多孔質状を呈する非水溶性部分と、水溶性部分と、を有する請求項3に記載の緑化部材。
【請求項7】
前記括着層の表側から人工芝が植設される請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の緑化部材。
【請求項8】
表面に保水用の溝部を備える請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の緑化部材。
【請求項9】
前記保水層の裏側に配置され、該保水層から前記水分が逃げるのを抑制する遮断層を備える請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の緑化部材。
【請求項10】
前記保水層と前記遮断層との間に配置される不織布製の断熱層を備え、
該遮断層は、該断熱層の裏面に熱融着される請求項9に記載の緑化部材。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の緑化部材と、
該緑化部材の裏側に配置される基材と、
該緑化部材と該基材との間に配置され、該基材に対して該緑化部材を脱着可能に保持する粘着層と、
を備える緑化パネル。
【請求項12】
請求項11に記載の緑化パネルと、壁本体と、を備える緑化壁の製造方法であって、
前記基材の裏面が型面の一部となるように、前記緑化パネルを組み込んだ型枠を組み立てる型枠組立工程と、
該型枠に流動性を有する壁材を注入し、該壁材を硬化させることにより、前記壁本体の成形と、該基材と該壁本体との接合と、を並行して行う成形工程と、
該型枠を分解することにより、該緑化パネルと該壁本体とが一体化した前記緑化壁を得る型枠分解工程と、
を有する緑化壁の製造方法。
【請求項1】
苔植物配偶体が配置される括着層と、
該括着層の裏側に配置され、異形断面繊維を含有する不織布製であって、該括着層に水分を供給する保水層と、
を備える緑化部材。
【請求項2】
前記異形断面繊維は、断面Y字状のY型断面繊維、および熱により分割する熱分割繊維のうち、少なくとも一方である請求項1に記載の緑化部材。
【請求項3】
前記括着層の表側に配置され、前記苔植物配偶体の仮根が該括着層に根付くのを促進する保護層を備える請求項1または請求項2に記載の緑化部材。
【請求項4】
前記保護層は、水溶性である請求項3に記載の緑化部材。
【請求項5】
前記保護層は、多孔質状を呈し非水溶性である請求項3に記載の緑化部材。
【請求項6】
前記保護層は、多孔質状を呈する非水溶性部分と、水溶性部分と、を有する請求項3に記載の緑化部材。
【請求項7】
前記括着層の表側から人工芝が植設される請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の緑化部材。
【請求項8】
表面に保水用の溝部を備える請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の緑化部材。
【請求項9】
前記保水層の裏側に配置され、該保水層から前記水分が逃げるのを抑制する遮断層を備える請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の緑化部材。
【請求項10】
前記保水層と前記遮断層との間に配置される不織布製の断熱層を備え、
該遮断層は、該断熱層の裏面に熱融着される請求項9に記載の緑化部材。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の緑化部材と、
該緑化部材の裏側に配置される基材と、
該緑化部材と該基材との間に配置され、該基材に対して該緑化部材を脱着可能に保持する粘着層と、
を備える緑化パネル。
【請求項12】
請求項11に記載の緑化パネルと、壁本体と、を備える緑化壁の製造方法であって、
前記基材の裏面が型面の一部となるように、前記緑化パネルを組み込んだ型枠を組み立てる型枠組立工程と、
該型枠に流動性を有する壁材を注入し、該壁材を硬化させることにより、前記壁本体の成形と、該基材と該壁本体との接合と、を並行して行う成形工程と、
該型枠を分解することにより、該緑化パネルと該壁本体とが一体化した前記緑化壁を得る型枠分解工程と、
を有する緑化壁の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−223994(P2011−223994A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71586(P2011−71586)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フォームタイ
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(504241297)株式会社ビュープランニング (8)
【出願人】(398055761)丸中ゴム工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フォームタイ
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(504241297)株式会社ビュープランニング (8)
【出願人】(398055761)丸中ゴム工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]