説明

緑葉搾汁粉末の製造方法

【課題】 本発明は緑葉搾汁液を噴霧乾燥するにあたり、噴霧乾燥供給液温度を−5度C〜13度Cで供給し、緑葉搾汁液に含まれる低沸点成分の損失を少なくし、緑色の損失の少ない緑葉搾汁粉末を得ることである。
【解決手段】 緑葉搾汁液を噴霧乾燥するにあたり、噴霧乾燥工程へ供給される搾汁液の噴霧乾燥供給液温度を−5度C〜13度Cで噴霧乾燥する方法により、緑葉搾汁液に含まれる低沸点成分の損失を少なくし、緑色の損失の少ない緑葉搾汁粉末を得ることに成功した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大麦若葉、ケール、桑、クマザサ等の緑葉から得られる緑葉搾汁液を、品質の劣化あるいは成分の損失がほとんどなく、乾燥あるいは濃縮、乾燥して緑葉搾汁粉末の乾燥品を得ることができる緑葉搾汁粉末の製造方法の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、緑葉から得られる緑葉搾汁液の乾燥手段として噴霧乾燥方法が採用されている例があるが、これらの噴霧乾燥方法として一般的には、噴霧乾燥工程へ供給される搾汁液の噴霧乾燥供給液温度は20度Cから95度C程度で供給されており、搾汁液が加熱の影響を受けることにより揮発性物質の損失が多く、また加熱による色の変性もあり、緑葉搾汁液の噴霧乾燥方法としては不適な面があり更なる改善が求められるものである。
【0003】
従来、緑葉搾汁液の濃縮方法としては、減圧濃縮法が用いられているが、加熱により揮発性物質の損失が多く、また加熱による色の変性もあり、緑葉搾汁液の濃縮方法としては不適である。
【0004】
従来開示されている噴霧乾燥方法として、特開平9−285256号(特許文献1)に茶葉類の低温噴霧乾燥方が記載されているが、噴霧乾燥供給温度には言及していない。
【0005】
従来開示されている限外ろ過方法として、特開昭56−29954号(特許文献2)、特開平5−236877号(特許文献3)に茶エキス類の濃縮方法が記載されている。
【0006】
特開2006−166776(特許文献4)には、緑葉搾汁液の造粒方法について記載されているが、供給液温度には言及していない。
【0007】
【特許文献1】特開平9−285256号公報
【特許文献2】特開昭56−29954号公報
【特許文献3】特開平5−236877号公報
【特許文献4】特開2006−166776号公報
【特許文献5】特開平7−241176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は緑葉搾汁液を噴霧乾燥するにあたり、噴霧乾燥工程へ供給される搾汁液の噴霧乾燥供給液温度を−5度C〜13度Cで供給し、緑葉搾汁液に含まれる低沸点成分の損失を少なくし、緑色の損失の少ない緑葉搾汁粉末を得ることを特徴とするものである。
【0009】
前述の通り、従来は緑葉搾汁液を噴霧乾燥するにあたり、噴霧乾燥工程へ供給される搾汁液の噴霧乾燥供給液温度は一般的に20度Cから95度C程度で供給されており、搾汁液が加熱の影響を受けることにより、色の変性誘発や緑葉搾汁粉末の機能性成分を損なう恐れがあり、ここに解決しようとする課題を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、緑葉搾汁液を噴霧乾燥するにあたり、噴霧乾燥工程へ供給される搾汁液の噴霧乾燥供給液温度を−5度C〜13度Cで噴霧乾燥する方法により、緑葉搾汁液に含まれる低沸点成分の損失を少なくし、緑色の損失の少ない緑葉搾汁粉末を得ることに成功した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、緑葉搾汁の持つ有効な低沸点物質、豊富な栄養成分及び緑色を損なうことなく、良好な緑葉搾汁粉末を消費者に供給出来る。
【0012】
また、消費者が緑葉搾汁粉末を水に懸濁させて飲料として飲む場合に、喉越しに優れた飲料とすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で使用する緑葉搾汁粉末の原料となる植物の1例として、大麦若葉、小麦若葉、ケール、桑葉、明日葉、モロヘイヤ、緑茶などが挙げられる。
【0014】
緑葉搾汁の調整方法を説明する。
先ず、緑葉に付着した泥や異物を落とすために洗浄し、直ちに90度C〜98度Cの熱水に2分30秒浸漬する。次ぎにこれを直ちに0度C〜10度Cの水に3分間浸漬して冷却する。冷却した緑葉を租粉砕した後、直ちに搾汁し、急速冷凍にて搾汁液を13度C以下に冷却し、噴霧乾燥供給液とする。直ちに噴霧乾燥出来ないときは搾汁液を冷凍し、保存する。噴霧乾燥時には13度C以下にて解凍し、噴霧乾燥供給液とする。
【0015】
搾汁液を濃縮してもよい。この場合濃縮は減圧加熱濃縮ではなく、限外濾過を使用する。
【0016】
減圧加熱濃縮方法で濃縮を行なうと、低沸点物質の損失が大きく、有効成分が失なわれる。限外濾過された濃縮液は13度C以下に直ちに冷却され、噴霧乾燥供給液とされる。
【0017】
また、直ちに噴霧乾燥出来ないときは、この濃縮液は直ちに凍結され、噴霧乾燥時に13度C以下にて解凍され、噴霧乾燥供給液となる。
【0018】
噴霧乾燥は入口温度が120度C〜160度C、出口温度60度C〜95度Cの条件で噴霧乾燥させることが可能である。
【実施例1】
【0019】
以下、第一の実施例について詳細に説明する。
大麦若葉100kgを水で洗浄し、95度Cの熱水500L中に2分30秒浸漬し、ブランチングを行なう。熱水から引き揚げた大麦若葉は1000Lの5度Cの冷水に移し、3分間冷却する。冷却後直ちに裁断し、搾汁機にて搾汁を行ない固形分4.9%の大麦若葉搾汁液110kgを得た。直ちに冷凍庫に移し、一晩冷凍させる。
【0020】
DE3のデキストリン(パインデックス#100)10.78kgを60度Cに加熱した温水に溶解し、30度Cまで冷却する。このデキストリン溶液に一晩冷凍させた大麦若葉搾汁液を投入し、液温10度Cのデキストリン大麦若葉溶液を得る。
【0021】
こうして得た液温10度Cのデキストリン大麦若葉溶液を入口温度150度C、出口温度85度Cで噴霧乾燥し14.9kgの大麦若葉搾汁粉末(大麦若葉搾汁粉末1とする)を得た。
【0022】
比較例1
実施例1と同様にして得られたデキストリン大麦若葉溶液を50度Cに加温し、噴霧乾燥供給液とし、入口温度150度C、出口温度85度Cの条件で噴霧乾燥し、大麦若葉搾汁粉末(大麦若葉搾汁粉末2)14.3kgを得た。
【実施例2】
【0023】
次に第二の実施例について説明する。実施例1と同様にして得られた固形分3.2%の大麦若葉搾汁液5kgを日東電工(株)製CF30−F2−ST膜を使用して操作圧力0.1MPa 温度12度Cの条件で限外濾過し、固形分15%の濃縮液32.4kgを得た。この液を直ちに冷凍庫に移し、一晩冷凍させる。
【0024】
DE3のデキストリン(パインデックス#100)9.72kgを60度Cに加熱した温水に溶解し、30度Cまで冷却する。このデキストリン溶液に一晩冷凍させた大麦若葉搾汁液を投入し、液温10度Cのデキストリン大麦若葉溶液を得る。
【0025】
こうして得た液温10度Cのデキストリン大麦若葉溶液を入口温度150度C、出口温度85度Cで噴霧乾燥し14.1kgの大麦若葉搾汁粉末(大麦若葉搾汁粉末3とする)を得た。
【0026】
比較例2
実施例2と同様にして得られたデキストリ大麦若葉溶液の液温を50度Cまで加熱し、入口温度150度C、出口温度85度Cで噴霧乾燥し14.12kgの大麦若葉搾汁粉末(大麦若葉搾汁粉末4)を得た。
【0027】
パネラー10人に、前述の実施例と比較例の青臭みについて、大麦若葉搾汁粉末の2%水溶液を作成し官能検査を実施した。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
この表から明らかなように実施例1,3と比較して比較例2,4,は青臭みに関してはパネラーの評価が低いことがわかり、実施例1,3から作られた大麦若葉搾汁粉末は、青臭みのある大麦若葉搾汁粉末であることが分かる。
【0030】
パネラー10人に、前述の実施例1,3と市販されている大麦若葉粉末の喉ごしについて、それぞれ2%水溶液を作成し官能検査を実施した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
この表から明らかなように実施例1,3と比較して市販大麦若葉粉末は喉ごしに関してはパネラーの評価が低いことがわかり、実施例1,3から作られた大麦若葉搾汁粉末は、喉ごしの良い大麦若葉搾汁粉末であることが分かる。
【0033】
大麦若葉搾汁粉末1、2、3、4について緑色の残存度合いを検査した結果を表3に示す。
大麦若葉搾汁粉末1,2,3,4それぞれを、色差計で測定した結果を表2に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
大麦若葉搾汁粉末1、3の方が大麦若葉搾汁粉末2、4よりも緑色の強い粉末であることが分る。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は広く食品の原料としても利用でき、また健康食品用原料として産業上広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑葉類搾汁を噴霧乾燥するにあたり、搾汁液を13度C以下に冷却し、噴霧乾燥工程へ供給される搾汁液の噴霧乾燥供給液温度を−5度C〜13度Cで供給し、緑葉搾汁粉末の乾燥品を得ることを特徴とする緑葉搾汁粉末の製造方法。
【請求項2】
緑葉類搾汁を噴霧乾燥するにあたり、搾汁液を凍結し、この凍結搾汁液を13度C以下で解凍し、噴霧乾燥工程へ供給される搾汁液の噴霧乾燥供給液温度を−5度C〜13度Cで供給し、緑葉搾汁粉末の乾燥品を得ることを特徴とする緑葉搾汁粉末の製造方法。
【請求項3】
緑葉類搾汁を限外濾過で濃縮し、濃縮液を13度C以下に冷却し、噴霧乾燥工程へ供給される搾汁液の噴霧乾燥供給液温度を−5度C〜13度Cで供給し、緑葉搾汁粉末の乾燥品を得ることを特徴とする緑葉搾汁粉末の製造方法。
【請求項4】
緑葉類搾汁を限外濾過で濃縮し、この濃縮搾汁液を凍結し、さらにこの濃縮搾汁液を13度C以下で解凍し、噴霧乾燥工程へ供給される搾汁液の噴霧乾燥供給液温度を−5度C〜13度Cで供給し、緑葉搾汁粉末の乾燥品を得ることを特徴とする緑葉搾汁粉末の製造方法。