説明

線材のめっき装置、めっき方法及びめっき線材

【課題】めっき層を有する線材のめっき厚の均一性を向上させて、高い品質を得ることができる方法を提供する。
【解決手段】めっき装置1は、平角銅線Cwの表面にめっき層を形成する装置である。めっき装置1は、平角銅線Cwの表面に加熱溶融状態のはんだを付着させるはんだ付着装置2と、はんだ付着装置2により平角銅線Cwに付着したはんだを冷却する冷却装置5とを備えている。平角銅線Cwの表面に付着させたはんだを冷却装置5により冷却して早く固化させることができるので、はんだが垂れるようになるのを抑制して、めっき厚の均一性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば導線等の線材にめっき層を形成する線材のめっき装置及びめっき方法と、めっき層が形成されためっき線材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、太陽電池を構成する複数のセル同士を接続する際に、線材としての銅線の表面をはんだでめっきしためっき銅線が用いられている。このめっき銅線を製造する装置としては、例えば、特許文献1に開示されているように、加熱して溶融状態となったはんだを貯留する貯留槽と、貯留槽の液面近傍に設置されるダイスと、貯留槽の内部に配設されて水平軸周りに回転するターンロールとを備えたものが知られている。この装置でめっき銅線を製造する場合には、貯留槽外から送給された銅線を貯留槽内のターンロールに掛け、このターンロールにより銅線の送出方向を鉛直方向上向きに変換した後、銅線をダイスのダイス口を通して貯留槽から引き出すようにする。
【特許文献1】特開平5−39555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1のように銅線を貯留槽内に一旦沈めて引き上げるようにした場合、銅線に付着したはんだは貯留槽から出てもしばらくの間は固化せずに銅線と共に上がっていき、しかも、その銅線表面のはんだは均一に固化するものでもないため、銅線を引き上げる途中に、銅線表面に付着しているはんだが部分的に垂れることがある。この垂れたはんだが固化すると、図4に示すように、めっき銅線の表面に凸部Buが形成されることになり、めっき銅線のめっき厚の均一性が悪化し、ひいては、めっき銅線の品質が著しく低下してしまう。
【0004】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、めっき層を有する線材のめっき厚の均一性を向上させて、高い品質を得ることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1の発明では、線材の表面にめっき層を形成する線材のめっき装置において、線材の表面に加熱溶融状態のめっき材料を付着させるめっき材料付着装置と、上記めっき材料付着装置により線材に付着しためっき材料を冷却する冷却装置とを備えている構成とした。
【0006】
この構成によれば、めっき材料付着装置により線材の表面に溶融状態のめっき材料を付着させた後に、そのめっき材料を冷却装置により冷却することが可能になる。この冷却により、線材に付着しためっき材料を早く固化させることが可能になる。
【0007】
第2の発明では、第1の発明において、冷却装置は、めっき材料が付着した線材が通過する冷却室と、該冷却室内にめっき材料の溶融温度以下の冷却気体を送る送気部とを備えている構成とした。
【0008】
この構成によれば、めっき材料が付着した線材が冷却室を通過する間に、冷却室内に送られた冷却気体によりめっき材料が冷却される。冷却室内に冷却気体を送ることで、冷却室内の温度を常にめっき材料の溶融温度以下とすることが可能になる。
【0009】
第3の発明では、第2の発明において、溶融状態のめっき材料が貯留されるめっき材料貯留槽を備え、冷却装置の冷却室は、上記めっき材料貯留槽の液面よりも上方に配置され、冷却気体を上方へ逃がす排気口を有している構成とした。
【0010】
この構成によれば、めっき材料貯留槽から引き上げられた線材は、そのまま、冷却室を通過しながら冷却される。このとき冷却室に送られた冷却気体は、冷却室の排気口から上方へ逃げるので、冷却気体がめっき材料貯留槽に貯留されているめっき材料に触れにくくなる。
【0011】
第4の発明では、第2または第3の発明において、送気部には、冷却気体の吐出口が冷却室に臨むように設けられ、上記冷却室には、上記吐出口と線材との間に、冷却気体の流れが線材に衝突するのを阻止する阻止部材が設けられている構成とした。
【0012】
この構成によれば、冷却気体が送気部の吐出口から冷却室に送られ、このときの冷却気体の流れが、阻止部材によって線材に衝突しなくなるので、線材に付着しためっき材料が固化する前に、冷却気体によって線材の表面から流されるようになるのを抑制することが可能になる。
【0013】
第5の発明では、第2乃至第4のいずれか1つの発明において、送気部は、圧縮空気から冷風と温風とを生成し、生成された冷風を冷却室に送るように構成されている構成とした。
【0014】
この構成によれば、安価で安全な圧縮空気を用いてめっき材料を冷却することが可能になる。
【0015】
第6の発明では、線材の表面にめっき層を形成する線材のめっき方法において、線材の表面に加熱溶融状態のめっき材料を付着させた後、該めっき材料を、冷却装置により冷却する構成とした。
【0016】
この構成によれば、線材の表面に加熱溶融状態のめっき材料を付着させた後に、そのめっき材料を冷却装置により冷却することが可能になる。この冷却により、線材に付着しためっき材料を早く固化させることが可能になる。
【0017】
第7の発明では、第6の発明に記載されためっき方法を用いて製造されるめっき線材とした。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、線材の表面に付着させためっき材料を冷却装置により冷却して早く固化させることができるので、めっき材料が垂れるようになるのを抑制して、めっき厚の均一性を向上させることができ、よって、めっき線材の品質を高めることができる。
【0019】
第2の発明によれば、めっき材料が付着した線材が通過する冷却室内に、送気部により冷却気体を送るようにしたので、冷却室内の温度を常にめっき材料の溶融温度以下とすることができる。これにより、めっき材料を効果的に冷却してより一層早く固化させることができ、めっき厚の均一性をより一層向上させることができる。
【0020】
第3の発明によれば、冷却装置の冷却室をめっき材料貯留槽の液面よりも上方に配置し、冷却室内の冷却気体を上方へ逃がすようにしたので、めっき材料貯留槽の液面近傍のめっき材料の温度低下を抑制できる。
【0021】
第4の発明によれば、冷却室の吐出口と線材との間に、冷却気体の流れが線材に衝突するのを阻止する阻止部材を設けたので、固化する前のめっき材料が冷却気体の流れによって流れてしまうのを抑制できる。これにより、冷却気体を用いて効果的に冷却を行いながら、めっき厚の均一性の悪化を回避できる。
【0022】
第5の発明によれば、圧縮空気から生成した冷風を冷却室に送るようにしたので、安価で、かつ、安全にめっき材料を冷却することができ、よって、めっき線材の低コスト化を図ることができる。
【0023】
第6の発明によれば、線材の表面に加熱溶融状態のめっき材料を付着させた後、そのめっき材料を冷却装置により冷却して早く固化させることができるので、第1の発明と同様にめっき線材の品質を高めることができる。
【0024】
第7の発明によれば、品質の高いめっき線材とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る線材のめっき装置1を示すものである。めっき装置1は、長方形断面を有する平角銅線Cw(線材)に、はんだによるめっき層Laを形成するためのものであり、平角銅線Cwの表面に加熱溶融状態のめっき材料としてのはんだを付着させるはんだ付着装置2(めっき材料付着装置)と、はんだ付着装置2により平角銅線Cwの表面に付着したはんだを冷却する冷却装置5とから構成されている。このめっき装置1を用いてめっき層Laを形成する材料としては、例えば、タフピッチ銅や、無酸素銅が挙げられるが、これらに限られるものではなく、各種材料からなる線材にめっき層Laを形成することが可能である。また、平角銅線Cwの断面寸法は、例えば、2.0mm×0.2mm程度であるが、これに限られるものではない。めっき層Laが形成された平角銅線Cwは、例えば、太陽電池に用いられるシリコンセル同士を繋ぐ集電用配線材Plとして使用される。
【0027】
はんだ付着装置2は、はんだ貯留槽3(めっき材料貯留槽)と、平角銅線供給装置4と、ダイス6とから構成されている。めっき装置1は、平角銅線Cwを平角銅線供給装置4にて送り、はんだ貯留槽3に貯留されているはんだを平角銅線Cwに付着させた後、そのはんだを冷却装置5により冷却して固化させるように構成されている。
【0028】
はんだ貯留槽3は、溶融温度以上に加熱されたはんだ(Sn−Pb合金)が貯留されるようになっている。はんだ貯留槽3には、はんだを上記温度に加熱する加熱装置(図示せず)が設けられている。上記はんだは、Sn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだを用いてもよい。
【0029】
平角銅線供給装置4は、線材供給スタンド41と、第1ローラ42と、第2ローラ43と、第3ローラ44と、巻き取り装置45とから構成されている。
【0030】
線材供給スタンド41には、水平軸周りに回転するローラ41aが設けられており、このローラ41aには、めっき層Laを形成する前の平角銅線Cwが巻き付けられている。
【0031】
第1ローラ42は、線材供給スタンド41の上方に位置し、水平軸周りに回転するように図示しない支持台に支持されている。
【0032】
第2ローラ43は、はんだ貯留槽3内においてはんだの液面Suよりも下に設けられており、水平軸周りに回転するようにはんだ貯留槽3に支持されている。この第2ローラ43及び上記第1ローラ42には、めっき層Laを形成する前の平角銅線Cwが巻き掛けられるようになっている。第2ローラ43と第1ローラ42とにより、ローラ41aから送られてくる平角銅線Cwの送り方向がはんだ貯留槽3内へ向けて斜め下方に設定されるようになっている。
【0033】
第3ローラ44は、第2ローラ43の直上方に位置し、水平軸周りに回転するように図示しない支持台に支持されている。この第3ローラ44にも平角銅線Cwが巻き掛けられるようになっている。第3ローラ44と第2ローラ43とにより、第2ローラ43を経た平角銅線Cwの送り方向が鉛直上向きに変換されるようになっている。第3ローラ44の位置は、平角銅線Cwの表面に付着したはんだが、第3ローラ44に到達する前に完全に固化するように、はんだ貯留槽3の液面Suから上方へ十分に離れた位置とされている。
【0034】
巻き取り装置45は、めっき層Laが形成された平角銅線Cw、すなわち集電用配線材Plを巻き取る装置である。巻き取り装置45は、水平軸周りに回転するように支持された巻き取りローラ45aと、巻き取りローラ45aを駆動する駆動装置45bとを有している。駆動装置45bは、巻き取りローラ45aの回転速度を変更することができるようになっており、巻き取りローラ45aの回転速度を変更することで、平角銅線Cwの送り速度を任意に変更することが可能となっている。尚、平角銅線供給装置4には、平角銅線Cwをはんだ貯留槽3のはんだ内に通過させる前に予熱する予熱装置が備えられていてもよい。
【0035】
ダイス6は、はんだ貯留槽3の液面Suに浮き、液面Su上を動くことができるフローティングダイスである。ダイス6には、中央部分にはんだが付着した平角銅線Cwを通過させるダイス穴61が上下方向に貫通するように形成されている。はんだが付着した平角銅線Cwがダイス穴61を通過することによって、平角銅線Cwに付着した余分なはんだが取り除かれるようになっている。
【0036】
はんだ貯留槽3には、液面Su付近において、ダイス6を支持するダイス支持部材32が組み付けられている。ダイス支持部材32は、ダイス6を上下両側から支持するように形成された凹状部材である。このダイス支持部材32により、ダイス6の上下方向の変位が規制されるようになっている。
【0037】
図2に示すように、はんだ貯留槽3には、フレーム31が設けられている。冷却装置5は、ブラケット51を介して、フレーム31に取り付けられている。この冷却装置5は、内部に冷却室52fを有する第1筒部材52と、ボルテックスクーラー54(送気部)と、窒素ボックス55とを備えている。
【0038】
第1筒部材52は、鉛直方向に延びるように配置されてUボルト51aによりブラケット51に取り付けられている。第1筒部材52の鉛直方向の長さは、例えば、600mm程度であるが、これに限られるものではない。図3に示すように、第1筒部材52の下端には、略水平に延びるベースプレート52aが固定されている。このベースプレート52aには、第1筒部材52の中心軸上に、第1筒部材52の内径よりも小さい径の線材通路穴52bが形成されている。この線材通路穴52bは、冷却室52fに連通している。またベースプレート52aには、後述するボルテックスクーラー54を固定するための固定用穴52cが形成されている。
【0039】
図2に示すように、ベースプレート52aには、窒素ボックス55が位置決め部材52gにより設置されている。この窒素ボックス55は、ベースプレート52aの線材通路穴52bの下方に位置しており、略直方体形状で、下方に開口している。窒素ボックス55の下端は、はんだ貯留槽3内の液面Suよりも下側に位置するようになっている。窒素ボックス55の上壁には、第1筒部材52の中心軸上に、上記ベースプレート52aの線材通路穴52bに連通する貫通穴55a(図1にのみ記載)が形成されている。また、窒素ボックス55の側壁には、窒素ボンベ(図示せず)から窒素が供給される窒素供給管55cが設けられており、この窒素供給管55cの内部には、供給孔55bが形成されている。窒素ボックス55内に窒素ガスを充満させることにより、窒素ボックス55内におけるはんだの液面Suに酸化被膜が形成されにくくなる。これにより、平角銅線Cwの表面に酸化被膜が付着するのを防ぐことが可能になる。
【0040】
一方、第1筒部材52の周壁において、ブラケット51と反対側には、接続孔52dが形成されている。第1筒部材52の接続孔52d周縁には、ボルテックスクーラー54が接続される筒状の接続部材52hが接続孔52dに連通するように取り付けられている。この接続部材52hは、中心軸が第1筒部材52の中心軸に対し直交する方向に延びている。ボルテックスクーラー54は、詳細は後述するが冷却気体としての冷風を生成し、接続部材52hを介して第1筒部材52の冷却室52fへ送るように構成されている。
【0041】
第1筒部材52の上端には、ボルテックスクーラー54から、第1筒部材52の冷却室52fに送られた冷風を排気する排気口52eが形成されている。
【0042】
図3に示すように、第1筒部材52の内部には、第2筒部材53(阻止部材)が配設されている。第2筒部材53は、第1筒部材52と中心軸を一致させるように配置されている。第2筒部材53の下端が、ベースプレート52aの線材通路穴52bの周縁に固定されている。この第2筒部材53の鉛直方向の長さは、第1筒部材52の3分の1程度であり、例えば、200mm程度であるが、これに限られるものではない。第2筒部材53の外径は、第1筒部材52の内径よりも小さく設定され、第1筒部材52と第2筒部材53との間には所定の隙が形成されている。また、第2筒部材53の内径は、ベースプレート52aの線材通路穴52bの径と同じとなっている。接続部材52hの第1筒部材52への取り付け位置は、第2筒部材53の鉛直方向中央部分となっている。そして、第1筒部材52の接続孔52dは、第2筒部材53の周壁に対向している。
【0043】
ボルテックスクーラー54は、吐出管部54aと、ボルテックスクーラー分離部54bと、温風排出管部54cと、導入管部54eと、圧力計54fとから構成されている。このボルテックスクーラー54は、ベースプレート52aの固定用穴52cにボルト(図示せず)を挿通させ、ボルテックスクーラー54の螺子孔(図示せず)にボルトを螺合させることにより、ベースプレート52aに固定される。
【0044】
導入管部54eには、圧縮空気の供給配管(図示せず)が接続されている。導入管部54eからボルテックスクーラー54内へ導入される圧縮空気は、圧力計54fを通過し、ボルテックスクーラー分離部54bの内部を通過するようになっている。このボルテックスクーラー分離部54bは、圧縮空気を供給すると冷風と温風とを生成するように構成された周知のものであるため、内部構造の説明は省略する。ボルテックスクーラー分離部54bで生成された温風は、温風排出管部54cから外部に排出され、同時に生成された冷風は、吐出管部54aを通過し、接続部材52hを介して第1筒部材52の冷却室52fに送られるようになっている。このとき、図2に示すように、吐出管部54aの先端には冷風を吐出する吐出口54dが形成されており、吐出口54dが冷却室52fに臨むこととなる。尚、冷風の温度ははんだの溶融温度以下になっている。また、第1筒部材52と第2筒部材53との間に形成されている隙は、ボルテックスクーラー54から送られた冷風が、冷却室52fへとスムーズに流れ込むように、その大きさが設定されている。
【0045】
次に、上記のように構成されためっき装置1を用いて平角銅線Cwの表面にめっき層Laを形成するめっき方法について説明する。図1に示すように、まず、巻き取り装置45の駆動装置45bを作動させ、巻き取りローラ45aを回転させる。巻き取りローラ45aの回転により、線材供給スタンド41のローラ41aに巻かれている平角銅線Cwが第1ローラ42に向かって送り出される。
【0046】
第1ローラ42に達した平角銅線Cwの送り方向は、第1ローラ42と第2ローラ43とにより、はんだ貯留槽3内へ向かう方向となり、こうして送られた平角銅線Cwは、やがてはんだ貯留槽3内のはんだに入っていく。
【0047】
第2ローラ43を経た平角銅線Cwは、その送り方向が鉛直上向きとなる。はんだ貯留槽3の液面Suには、ダイス6が浮いており、第2ローラ43を経た平角銅線Cwは、ダイス6に形成されたダイス穴61を通過することで、平角銅線Cwの表面に付着した余分なはんだを除去することができる。
【0048】
ダイス6を通過した平角銅線Cwは、窒素ボックス55を通過する。窒素ボックス55内には、供給孔55bから窒素が送り込まれている。これによってはんだ貯留槽3内の液面Suに酸化被膜が発生しないようにしているので、集電用配線材Plのめっき層Laに酸化被膜が混在するようになるのを防ぐことができる。
【0049】
その後、はんだが付着した平角銅線Cwは、ベースプレート52aの線材通路穴52bを通過して、第1筒部材52の冷却室52fを鉛直上向きに通過していく。このときボルテックスクーラー54から吐出管部54aを介して冷却室52fに冷風が送られている。これにより、冷却室52f内の温度がはんだの溶融温度以下となっているので、はんだが付着した平角銅線Cwが冷却室52fを通過する際に、はんだが早く、かつ、均一に固化する。これにより、平角銅線Cwに付着したはんだが垂れるようになるのが抑制される。
【0050】
また、吐出口54dから吹き出される冷風は、第2筒部材53の壁面に当たるので、冷風が、平角銅線Cwに直接的に衝突しないようになる。これにより、平角銅線Cwの表面に付着しているはんだが吹き飛ばされて流れるようになるのを回避することができる。吐出管部54aを介して冷却室52fに送り込まれた冷風は、主に、第1筒部材52の上端にある排気口52eから排気される。
【0051】
冷却装置5を通過した平角銅線Cwの表面にははんだによるめっき層Laが形成され、集電用配線材Plとなる。この集電用配線材Plが第3ローラ44を経た後、巻き取りローラ45aに巻き取られる。このとき、図5に示す本発明の製法で作られた集電用配線材Plの外観は、図4に示す従来製法によるものと比較すると明らかなように、めっき層Laの表面に凸部Buが形成されておらず、めっき厚の均一性が良好である。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、平角銅線Cwの表面に付着させたはんだを冷却装置5により冷却して早く固化させることができるので、はんだが垂れるようになるのを抑制して、めっき厚の均一性を向上させることができ、よって、めっき層Laが形成された集電用配線材Plの品質を高めることができる。
【0053】
また、はんだが付着した平角銅線Cwが通過する冷却室52f内に、ボルテックスクーラー54により冷風を送るようにしたので、冷却室52f内の温度を常にはんだの溶融温度以下とすることができる。これにより、はんだを効果的に冷却して、より一層早く固化させることができ、めっき厚の均一性をより一層向上させることができる。
【0054】
また、冷却装置5の冷却室52fをはんだ貯留槽3の液面Suよりも上方に配置し、冷却室52f内の冷風を上方へ逃がすようにしたので、はんだ貯留槽3に貯留されているはんだが冷風により冷却されてしまうのを抑制でき、液面Su近傍のはんだが冷風により固化しないようにすることができる。
【0055】
また、冷却室52fの吐出口54dと平角銅線Cwとの間に、冷風の流れが平角銅線Cwに衝突するのを阻止する第2筒部材53を設けたので、固化する前のはんだが冷風の流れによって流れてしまうのを抑制でき、冷風を用いて効果的に冷却を行いながら、めっき厚の均一性の悪化を回避できる。
【0056】
また、圧縮空気から生成した冷風を冷却室52fに送るようにしたので、安価で、かつ、安全に平角銅線Cwを冷却することができ、よって、めっき層Laが形成された集電用配線材Plの低コスト化を図ることができる。
【0057】
また、めっき装置1を用いれば、めっき厚の均一性が良く、品質の高いめっき処理が施された集電用配線材Plを作ることができる。
【0058】
尚、本発明の実施形態では、線材に平角銅線Cwを用いているが、断面形状が円形状の導線を用いてもよい。また、線材の材質は銅以外でもよい。
【0059】
また、本発明に係る装置及び方法は、各種めっき材料を加熱溶融状態にして各種線材に付着させ、めっき層Laを形成する場合全般に用いることができるものである。
【0060】
また、冷却気体は空気以外であってもよく、例えば、窒素等の酸化を防止することができる気体が好ましい。
【0061】
また、ダイス6はフローティングダイスでなくてもよく、例えば、ダイス支持部材32に固定されていてもよい。
【0062】
また、冷却装置5は、第1筒部材52を伝熱管とし、この第1筒部材52に冷媒を流すことで、冷却室52f内を冷却するようなものであってもよい。
【0063】
また、平角銅線供給装置4は、線材供給スタンド41から巻き取り装置45までの間に3つのローラ(第1ローラ42、第2ローラ43、第3ローラ44)を有し、この3つのローラにより、平角銅線Cw及び集電用配線材Plの送り方向を変更しているが、ローラの数は3つに限定されるものではない。さらに、上記のローラは、表面抵抗が少なく、回転しない固定棒であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明に係るめっき装置及びめっき方法は、例えば、太陽電池を構成する複数のシリコンセル同士を接続する集電用配線材を作る装置及び方法として適しており、また、本発明に係るめっき装置及びめっき方法にて作られるめっき線材は、例えば、太陽電池に用いられる集電用配線材として適している。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施形態に係るめっき装置の概略図である。
【図2】実施形態に係る冷却装置の正面図である。
【図3】実施形態に係る第1筒部材及び第2筒部材の断面図である。
【図4】従来製法により作られた集電用配線材の断面図である。
【図5】実施形態に係るめっき装置で作られた集電用配線材の断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 めっき装置
2 はんだ付着装置(めっき材料付着装置)
3 はんだ貯留槽(めっき材料貯留槽)
4 平角銅線供給装置
5 冷却装置
52 第1筒部材
52f 冷却室
52e 排気口
53 第2筒部材(阻止部材)
54 ボルテックスクーラー(送気部)
54d 吐出口
6 ダイス
Pl 集電用配線材
Cw 平角銅線(線材)
La めっき層
Bu 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材の表面にめっき層を形成する線材のめっき装置において、
線材の表面に加熱溶融状態のめっき材料を付着させるめっき材料付着装置と、
上記めっき材料付着装置により線材に付着しためっき材料を冷却する冷却装置とを備えていることを特徴とする線材のめっき装置。
【請求項2】
請求項1に記載の線材のめっき装置において、
冷却装置は、めっき材料が付着した線材が通過する冷却室と、該冷却室内にめっき材料の溶融温度以下の冷却気体を送る送気部とを備えていることを特徴とする線材のめっき装置。
【請求項3】
請求項2に記載の線材のめっき装置において、
溶融状態のめっき材料が貯留されるめっき材料貯留槽を備え、
冷却装置の冷却室は、上記めっき材料貯留槽の液面よりも上方に配置され、冷却気体を上方へ逃がす排気口を有していることを特徴とする線材のめっき装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の線材のめっき装置において、
送気部には、冷却気体の吐出口が冷却室に臨むように設けられ、
上記冷却室には、上記吐出口と線材との間に、冷却気体の流れが線材に衝突するのを阻止する阻止部材が設けられていることを特徴とする線材のめっき装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1つに記載の線材のめっき装置において、
送気部は、圧縮空気から冷風と温風とを生成し、生成された冷風を冷却室に送るように構成されていることを特徴とする線材のめっき装置。
【請求項6】
線材の表面にめっき層を形成する線材のめっき方法において、
線材の表面に加熱溶融状態のめっき材料を付着させた後、該めっき材料を、冷却装置により冷却することを特徴とする線材のめっき方法。
【請求項7】
請求項6に記載の線材のめっき方法を用いて製造されたことを特徴とするめっき線材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−95750(P2010−95750A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266694(P2008−266694)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】