説明

線材の表面処理装置

【課題】高速な表面処理を行う場合であっても、大型化することなく、十分な処理時間を確保することができる、経済的な表面処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の表面処理装置は、処理槽5の両側に配置され、線材2の許容曲率半径以上の半径を有し、かつ、軸方向に1列以上の案内軌道30a〜36a、30b〜36bを外周面に備え、導電性の回転体と、該回転体の中心で軸方向に伸長する導電性の給電軸と、前記回転体を該給電軸に対してこの給電軸と共に回転可能に支持する樹脂製の支持体と、前記回転体と前記給電軸とを電気的に接続する手段と、前記回転体を回転させる駆動機構とを備える、第1および第2の回転給電装置と、該第1および第2の回転給電装置のそれぞれと前記処理槽との間に配置され、相互に軸方向および高さ方向に位置がずれている2個以上のプーリが、1列以上配されている第1および第2のライン変更プーリ装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気めっき装置など、線材に給電しつつ、該線材を連続して搬送して、その表面処理を行う、線材の表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
線材製品の製造において、雰囲気ガス、めっき液、洗浄液などの流体を収容した処理手段に線材を連続して通し、該線材に給電しつつ、その表面に種々の処理を施すことが広く行われている。これらの表面処理を行う装置においては、高速な処理を行う場合であっても、処理装置を大型化することなく、十分な処理時間を確保することが求められている。
【0003】
特許文献1には、金属線材の連続処理装置、具体的には、鋼線材への電気めっき処理装置が記載されている。この装置では、複数の連続するめっき槽を備える線材連続処理部と、該線材連続処理部の各めっき槽の入口側にそれぞれ1個ずつ給電ローラを設けて、連続的な線材の表面処理を可能にしている。この連続処理装置では、それ以前のめっき槽間に複数のローラが設置されていた構成との比較では、めっき槽間のローラ数が減らされているものの、複数のめっき槽が直列に設置されていることから、装置の小型化を図るには限界がある。
【0004】
特許文献2には、線材に半田、ニッケル、亜鉛などを電気めっきする装置が記載されている。この装置では、第1のターンプーリを用いて線材のパスライン(走行経路)を、めっき槽上を空走するようにUターンさせて、第1のターンプーリに対して軸方向にわずかにずれている第2ターンプーリに送り、次に、第2のターンプーリによって線材のパスラインを再度Uターンさせて、同一のめっき槽を潜通走行させて、第2のターンプーリに対して軸方向にわずかにずれている第3のターンプーリに送ることにより、金属線材に連続的に電気めっきを施している。しかしながら、この装置では、被めっき線材をUターンさせる際に、前記被めっき線材はめっき槽内を潜通走行しないことから、Uターン回数の増加に伴って処理時間が増加するため、処理の高速化に限界がある。また、1つのめっき槽に線材は2回のみ潜通走行するにすぎず、所定量のめっきを施すためには、複数のめっき槽を直列に配置する必要がある点で、特許文献1と同様の問題もある。
【0005】
特許文献3には、線材に電気めっきおよび焼鈍を連続して行う装置が記載されている。この装置では洗浄槽やめっき槽内に2つのローラを設置し、複数回にわたって線材をこれらのローラに巻きつけることで処理槽の大型化を回避し、かつ、複数の処理槽を設けることなく、これらの処理を行っている。しかしながら、この装置では、洗浄槽やめっき槽の中でローラの上下に引き回された線材を処理することになるため、線材処理に影響を及ぼさない程度の許容曲率半径を有するローラを完全に処理槽内に埋没させる必要がある。このため、これらの処理槽の小型化には限界がある。また、特許文献3では、ローラの具体的な構造は開示されていないが、単にローラに複数回ワイヤを巻き回した場合、線材のパスラインが安定せずに、相互に接触する危険性もある。
【0006】
特許文献4には、めっき槽外の両側に、それぞれ複数のプーリを備える2つのローラを対向して配置し、このローラ間に線材を複数回巻回しする装置が記載されている。しかしながら、この装置では、上下の経路で線材の表面処理を行うためには、それぞれの経路に別々の処理槽を設置する必要があり、小型化には限界がある。
【0007】
特許文献4に開示の構成において、単一の処理槽を用いることも考えられるが、この場合、処理槽の高さ方向の寸法はプーリの大きさに対応したものになるため、線材の許容曲率半径が大きくなるに伴いプーリの寸法も大きくなって、多量の処理液が必要とされるので、コストが上昇してしまう。また、処理槽には線材が通過するためのスリットを設ける必要があるが、この装置では、線材のピッチをずらすために、上下どちらかの線材が処理槽に斜めに進入するため、スリット幅が大きくなり、処理液の流出量が増加する。このため、処理液の循環用のポンプが大型化するという問題がある。
【0008】
また、電気めっき装置などの表面処理装置では、処理対象の線材に対して給電する必要がある。このため、めっき槽などの処理槽の前後に、給電ローラを配して、線材に給電を行っている。特許文献1に記載の装置では、処理槽間のガイドローラに給電ローラの機能を担わせている。特許文献2〜4に記載の装置におけるリターンプーリもしくはローラに、給電ローラの機能を担わせることも考えられるが、こうしたリターンプーリなどは線材処理に影響を及ぼさない程度の許容曲率半径を有する必要がある。したがって、特許文献4に記載があるように、これらのプーリ自体に給電機能を持たせると、該プーリを金属などの導電性材料で構成することに伴い、プーリの重量や慣性が増加して、線材の品質に問題が生じるとの理由から、通常は、リターンプーリなどとは別に設けた給電ローラによって線材に給電を行っている。
【0009】
特許文献2および4のように、線材の経路を水平として、処理槽にこの線材を複数回往復させる構造の場合、特許文献1の給電ローラのように単一のローラを配置するだけでは不十分であり、給電ローラの両側にガイドローラなどを配置して、この給電ローラに抱き角度を付与する必要がある。したがって、これら従来の装置では、上記の問題のほか、これら3つのローラの存在により、装置の小型化を十分に図ることができないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−158075号公報
【特許文献2】特開昭63−266091号公報
【特許文献3】特開昭59−129788号公報
【特許文献4】特開2000−54191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、電気めっき装置など、線材に給電しつつ、該線材を連続して搬送して、その表面処理を行う、線材の表面処理装置において、高速な表面処理を行う場合であっても、大型化することなく、十分な処理時間を確保することができる、経済的な表面処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、線材に給電しつつ、該線材を処理槽に通じさせてその表面を処理するための表面処理装置に関する。特に、本発明の表面処理装置は、前記処理槽の両側に配置される第1および第2の回転給電装置と、第1および第2のライン変更プーリ装置とを備える。
【0013】
前記第1および第2の回転給電装置はそれぞれ、前記線材の許容曲率半径以上の半径を有し、かつ、軸方向に少なくとも1列の案内軌道を外周面に備え、導電性材料からなる回転体と、該回転体の中心において軸方向に伸長する導電性材料からなる給電軸と、前記回転体を該給電軸に対してこの給電軸と共に回転可能に支持する支持体と、前記回転体と前記給電軸とを電気的に接続する手段とを備える。なお、これらの回転給電装置の少なくとも一方に、前記回転体を回転させる駆動機構を備えることが好ましい。
【0014】
また、前記第1および第2のライン変更プーリ装置は、前記第1および第2の回転給電装置のそれぞれと前記処理槽との間に配置され、相互に軸方向および高さ方向に位置がずれている2個以上のプーリが、最初のプーリに接してから最後のプーリに接するまでの前記線材の経路を仮想円弧とした場合の半径が、前記線材の許容曲率半径以上となるように、順次備えているプーリ列がそれぞれ1列以上配されている。
【0015】
このような構成を有する表面処理装置では、前記第1および第2のライン変更プーリ装置が、前記線材の前記処理槽を通ずるパスラインを順次変更し、かつ、前記第1および第2の回転給電装置が、前記線材に給電し、かつ、該線材をUターンさせることにより、前記線材が前記処理槽を複数のパスラインで通ずることを可能としている。
【0016】
より具体的には、線材は、前記第1の回転給電装置の前記案内軌道のうちの第1列の案内軌道を介して、最初のパスラインで前記処理槽を通じ、前記第1のライン変更装置の前記プーリ列のうちの第1列および前記第2の回転給電装置の前記案内軌道のうちの第1列の案内軌道を介して、Uターンして、次のパスラインで処理槽を通じ、その後、前記第2のライン変更プーリ装置の前記プーリ列のうちの第1列および前記第1の回転給電装置の第2列の案内軌道を介して、Uターンして、さらに次のパスラインで処理槽を通じて、順次パスラインを移動するようになっている。
【0017】
また、前記第1および第2の回転駆動装置を構成する各部材は、具体的には、以下のような構成を採りうる。すなわち、前記支持体として樹脂材料からなる一対の円盤を用い、前記回転体として、該一対の円盤の内側で、これらの円盤の外周部に固定された円筒形の連結軸を用いることができる。この場合、前記少なくとも1列の案内軌道のそれぞれが、該連結軸の外周面に固定された少なくとも1列の導電性材料からなる円輪部材のそれぞれの外周面に形成された案内溝により形成されていることが好ましい。
【0018】
あるいは、前記支持体として、樹脂材料からなる少なくとも1列のプーリを用い、前記回転体として、該少なくとも1列のプーリのそれぞれの外周面に固定された導電性材料からなる円輪部材を用いることができる。この構造では、前記少なくとも1列の案内軌道のそれぞれが、該円輪部材のそれぞれの外周面に形成された案内溝により形成される。
【0019】
ただし、本発明では、前記第1および第2の回転給電装置は、駆動機構により駆動されることから、前記支持体として金属、その他の導電性材料も用いることは可能であり、たとえば、金属製の円盤の外周部に案内溝を設けて、該支持体と前記回転体とこれらを電気的に接続する手段が一体的に形成されているプーリ装置も用いることができる。
【0020】
なお、前記第1および第2のライン変更プーリ装置の各プーリ列の高さを、前記回転体の半径以下とすることが好ましい。
【0021】
また、前記最初のパスラインに線材を、該最初のパスラインと同じ高さで巻き出すための巻き出しローラと、該巻き出しローラから巻き出された前記線材が、前記第1の回転給電装置の前記案内軌道のうちの第1列の案内軌道を通過する際に、該線材を該第1列の案内軌道に押圧する手段をさらに備えることもできる。
【0022】
さらに、前記第2のライン変更プーリ装置のプーリ列のうちの最終列および前記第1の回転給電装置の前記案内軌道のうち最終列の案内軌道を介してUターンして、最終のパスラインで処理槽を通じた線材を巻き取るための、巻き取りローラをさらに備えることもできる。
【0023】
本発明は、線材に給電しつつ、該線材を処理槽に通じさせてその表面を処理する表面処理装置に広く適用できる。なお、本発明の適用にあたっては、前記処理槽内に、少なくとも前記線材を通じさせる複数のスリットが形成されている壁を有し、処理液をオーバーフローさせるように構成されている処理治具が設けられている必要がある。また、前記線材を表面処理するために、該処理液に給電できるように構成されている電極板が備えられている必要がある。これらの構成を備えていれば十分であり、任意の表面処理を行うための処理槽に本発明を適用することは可能であるが、さらに、本発明が適用される表面処理装置では、該処理治具に接続され、該処理液を供給する噴き上げ配管と、前記処理槽に接続され、オーバーフローした前記処理液を返送する戻り配管と、前記噴き上げ配管と前記戻り配管に接続され、該処理液を循環させるポンプとをさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、線材の処理を高速化するために装置を大型化することなく、かつ、線材の許容曲率半径に左右されることない、経済的で小型かつ軽量な表面処理装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の表面処理装置の一実施形態の構成を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】回転給電装置の一実施形態の構成(a)および別実施態様の構成(b)を示す一部破断概略図である。
【図3】第1のライン変更プーリ装置(a)および第2のライン変更プーリ装置(b)の一実施形態の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら詳細に説明する。特に、本発明を電気めっき装置に適用した場合を中心に説明するが、本発明は電気めっき装置に限定されることはなく、また、以下の詳細な説明は、本発明の範囲を画定するものではない。
【0027】
本発明の線材の表面処理装置は、線材(2)を処理槽(5)に通じさせてその表面を処理するためのものである。本発明は、処理槽を用いた表面処理工程に広く適用できる。そのような、表面処理工程としては、雰囲気ガスを用いた表面処理、洗浄液を用いた表面洗浄処理、めっき液を用いためっき処理などがある。また、洗浄およびめっきのように連続的な工程のそれぞれに適用することも可能である。
【0028】
なお、以下の説明では、線材(2)として線径0.23mm〜1.00mmであって、許容曲率半径が220mmである銅製のワイヤの表面に電気めっきにより貴金属(銀、パラジウムなど)を被覆させる工程を例として、各構成部材の形状および大きさなどに言及するが、これらの形状および大きさは、本発明の適用される用途や線材の種類などに応じて、適宜変更可能である。
【0029】
図1に示すとおり、本発明の表面処理装置は、処理槽(5)の両側に、給電機能を付与した第1および第2の給電ローラ装置(3a、3b)と第1および第2のライン変更プーリ装置(4、4′)とを備える。この給電ローラ装置が、本発明の回転給電装置に該当する。
【0030】
[回転給電装置の第1態様]
このうち、処理槽(5)の両側に配置される第1および第2の給電ローラ装置(3a、3b)のそれぞれには、線材(2)の許容曲率半径以上の半径を有する案内軌道がそれぞれ軸方向に1列以上配されている。図示の例では、第1の給電ローラ装置(3a)には、7列の案内軌道(30a〜36a)が配され、第2の給電ローラ装置(3b)にも、7列の案内軌道(30b〜36b)が配されている。図示の例では、それぞれの案内軌道(30a〜36a、30b〜36b)の半径は225mm(直径450mm)であり、線材(2)の許容曲率半径である220mmより大きくなっている。
【0031】
図2を用いて、第1の給電ローラ装置(3a)の構造についてさら詳述する。なお、第2の給電ローラ装置(3b)も同様の構造となっている。
【0032】
図2(a)に示す、第1の給電ローラ装置は、ハウジング(23)などの支持部材に回転可能に固定される。このため、導電性材料、たとえば、銅、鉄などの金属材料からなる給電軸(21)の両端部が、一対の軸受(19)により、ハウジング(23)に回転可能に固定される。この給電軸(21)は、絶縁性材料からなる軸ホルダ(22)により、その両端部において周囲と絶縁され、また、前記軸受(19)は、絶縁性材料からなる軸受ホルダ(20)により、周囲と絶縁されている。これらの軸ホルダ(22)と軸受ホルダ(20)は別体でも、一体的に形成されたものでもよい。これらの部材は、給電軸(21)を隙間嵌めにより内嵌して、回転しないようにハウジングに対して固定されている。
【0033】
これらの軸ホルダ(22)の軸方向内側で、給電軸(21)の軸方向2箇所位置において、絶縁性材料からなる円盤状の固定治具(18)が締まり嵌めで外嵌固定されており、これらの固定治具(18)の軸方向内側において、樹脂などの絶縁性材料からなる2枚の円盤(16)が、給電軸(21)に締まり嵌めで外嵌固定されると共に、固定治具(18)に対して軸方向に支持固定される。これらの部材は、給電軸(21)と共に使用時に回転する。なお、この円盤(16)が回転体を支持する支持体に該当する。
【0034】
これらの円盤(16)の外周部に、前記回転体である、導電性材料からなる円筒形の連結軸(17)が固定されている。図示の例では、連結軸(17)の軸方向両端部を、円盤(16)の外周部に形成した凹溝に締まり嵌めにより内嵌固定しているが、接着、その他の適切な固定手段も採りうる。したがって、円盤(16)には、給電軸(21)の回転によっても、連結軸(17)が軸方向もしくは径方向に運転に支障が生ずる程度の変位を抑止できる剛性が要求される。また、連結軸(17)については、全体が円筒形であれば、軽量化のために、周方向の少なくとも一部に軸方向に伸長する通孔、軸方向の少なくとも一部に周方向に間欠的に存在する通孔を設けた構造、外周面全体に多数の小孔を設けた構造などを採用できる。
【0035】
図示の例では、この連結軸(17)の外周面に、7列の案内軌道(30a〜36a)として、7つの導電性材料からなる円輪部材が等間隔で固定されている。これらの案内軌道(30a〜36a)のピッチは80mmとしている。この円輪部材の外周面には、U字状の案内溝が形成されており、この案内溝が線材(2)の軌道となる。なお、この案内軌道(30a〜36a)としては、連結軸(17)の外周面にU字溝を設けるなどの手段により、直接形成した案内溝も用いることができる。
【0036】
この案内溝の深さは、脱線を防止し、線材(2)との接触を確実にする観点から、線材(2)の線径などに応じて任意に設定することが可能であるが、線径0.23〜1.00mmの銅製ワイヤをめっき処理する場合には、5〜10mm程度とすることが好ましい。
【0037】
図示の例では、給電軸(21)の外径は20mm、長さ600mmである。軸受(20)間の距離は、550mmである。円盤(16)の半径は230mm、厚さ10mmである。さらに、連結軸(17)の外径220mm、厚さ10mm、長さ490mmである。そして、前記案内軌道(30a〜36a)が形成される円輪部材の幅は10mm、高さは10mmである。
【0038】
前記給電軸(21)と前記連結軸(17)は、電線もしくは金属などの導電性材料で作製されたブスバーなどの手段(図示せず)によって電気的に接続される。これにより、給電軸(21)から、前記電気的接続手段、連結軸(17)、さらには、案内軌道(30a〜36a)を備える円輪部材を介して、この給電ローラ装置(3a)は給電ローラとして機能する案内軌道(30a〜36a)を回転させて、線材(2)を送り出しながら、線材(2)に給電することを可能としている。
【0039】
このため、前記給電軸(21)は、軸受(19)により、その両端を支持されると共に、その一端を、絶縁性のカップリング(14)を介して、駆動機構である駆動用モータ(12a)の回転軸と連結されており、これにより、駆動用モータ(12a)とは絶縁を維持しながら、駆動力を付与されることが可能となっている。一方、前記給電軸(21)の他端には、ロータリコネクタ(15)が取り付けられており、該給電軸(21)が回転している状態で、該給電軸(21)への給電を可能としている。
【0040】
本発明の給電ローラ装置(3a、3b)を構成する部材に用いられる、絶縁性材料および導電性材料は任意に選択することができるが、重量および慣性の増加を抑制する観点から、絶縁性材料としては、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニール(PVC)などの樹脂材料を用いることができ、導電性材料としては、銅、鉄などの一般的な金属材料を用いることができる。
【0041】
本発明に係る給電ローラ装置(3a)は、上述のように金属材料の使用が部分的で済み、その大部分を軽量な絶縁性の樹脂材料などで構成することができる。このような構成をとることによって、重量および慣性の増加を抑えることができるため、回転体である連結軸(17)を安定して回転させることができ、これらの回転体上の案内軌道に接触する線材(2)の損傷を防止することができる。また、前記回転体と前記駆動用モータ(12a)は同期して回転することが可能となるため、前記線材(2)と案内軌道(30a〜36a)が擦れることがなく、製品品質の低下も防止することもできる。
【0042】
さらに、本願発明に係る前記給電軸(21)は、前記カップリング(14)と前記固定治具(18)を取り外し、軸ホルダ(22)よりロータリコネクタ(15)側から引き抜くことができる。また、これにより、円盤(16)、連結軸(17)、案内軌道(30a〜36a)を構成する円輪部材を一体として、取り外せる構造となっている。このような構造とすることで、メンテナンス作業も大掛かりとならず、回転給電装置の一部が損傷した場合でも、前述の作業を行った上で連結軸(17)を取り外して、損傷した部材のみを交換するだけで済むので、保守および管理費用も抑えることができる。
【0043】
[回転給電装置の第2態様]
なお、この回転体として、図2(b)に示すように、前記円盤(16)の内側に、前記支持体として、等間隔(80mmピッチ)で給電軸(21)に配置され、樹脂などの絶縁性材料からなる少なくとも1列、図示の例では7列のプーリ(24)を用い、前記回転体である、導電性材料からなる円輪部材をそれぞれのプーリ(24)の外周面に設けている。この円輪部材のそれぞれの外周面に形成された案内溝が、案内軌道(30a〜36a)を形成する。
【0044】
これらの案内軌道(30a〜36a)を構成する円輪部材間を軸方向に伸長し、金属などの導電性材料からなる連結部材(25)により、複数のプーリ(24)の外周部を支持しつつ、円輪部材相互間を電気的に接続する。各プーリ(24)の半径は230mm、厚さ10mmである。また、連結部材(25)として、たとえば、外径側の曲率半径が220mm、円弧長さ(幅)70mm、厚さ10mm、長さ490mmの円弧状断面を有する板状部材を用いることができる。板状部材同士の間隔および板状部材の枚数は、プーリ(24)およびこの板状部材の剛性などに基づいて1枚以上から任意に選択される。
【0045】
このように軸方向に7列に配されたプーリ(24)は、給電軸(21)に締まり嵌めで外嵌固定され、かつ、両側の2つのプーリ(24)が、前記円盤(16)に支持固定され、該円盤(16)の両側が前記固定治具(18)を介して、給電軸(21)の軸方向に支持される。
【0046】
前記給電軸(21)と前記連結部材(25)は、第1態様と同様に、電線もしくは金属などの導電性材料で作製されたブスバーなどの手段(図示せず)によって電気的に接続される。その他の採用および効果は、プーリ(24)が用いられ、連結軸(17)の代替に連結部材(25)が用いられていることを除き、第1態様と同様である。
【0047】
[ライン変更プーリ装置]
次に、図1および図3を参照しながら、ライン変更プーリ装置(4、4’)について詳述する。
【0048】
第1および第2の給電ローラ装置(3a、3b)のそれぞれと処理槽(5)との間に配置される、図3(b)に示す第1のライン変更プーリ装置(4′)と、図3(a)に示す第2のライン変更プーリ装置(4)には、2個以上のプーリからなるプーリ列(41〜46、41′〜46′)がそれぞれ1列以上、図示の例では6列ずつ備わっている。
【0049】
図1および図3から理解されるように、各ライン変更プーリ装置(4、4′)の各プーリ列(41〜46、41′〜46′)には、相互に軸方向および高さ方向に位置がずれている2個以上のプーリ、図示の例では5つずつのプーリ(たとえば、41a〜41e、41′a〜41′e)が順次配されている。
【0050】
プーリの数は任意であり、装置構成に応じて、経路全体の仮想曲率半径が、線材(2)の許容曲率半径以上となる限り、適宜所望の個数によって構成することができる。なお、第1および第2のライン変更プーリ装置(4、4′)は、それぞれのプーリ列(41〜46、41′〜46′)が対称的に配置される。
【0051】
図示の例では、各プーリ列(41〜46、41′〜46′)の各プーリの半径は32mmであり、これ自体は線材(2)の許容曲率半径である220mmより小さい。なお、各プーリの厚さは、10mmである。
【0052】
ただし、最初のプーリ(たとえば、41′a、41a)に接してから最後のプーリ(41′e、41e)に接するまでの線材(2)の経路を仮想円弧とした場合の半径が、線材(2)の許容曲率半径以上となるようになっている。図示の例では、上記仮想円弧の半径は225mmとなっている。
【0053】
このように構成することで、図1に示すとおり、第1および第2のライン変更プーリ装置(4′、4)の各プーリ列の高さは、第1および第2の給電ローラ装置(3a、3b)の各案内軌道(30a〜36a、30b〜36b)の半径(すなわち、線材の許容曲率半径)の長さ以下とすることができる。図示の例では、たとえば、最後のプーリ(41′e〜46′e、41e〜46e)の高さを基準とすると、5番目(41′d〜46′d、41d〜46d)から1番目(41′a〜46′a、41a〜46a)のプーリの高さはそれぞれ、44mm、77mm、97mm、105mmとなっている。このようにライン変更プーリ装置を構成することで、線材(2)が接するプーリを小型化、軽量化することができるため、プーリの慣性を低減し、線材に負荷される張力を結果として低減することが可能である。
【0054】
なお、それぞれのプーリは、それぞれの高さごとに共通する回転軸に軸受を介して、それぞれの高さごとに共通する支持軸に回転可能に支持固定されている。これにより、線材(2)の摩擦によってトルクがかかった際に、各プーリ(41′〜46′e、41a〜46e)は、従動して回転するようになっている。また、各プーリ列(41′〜46′、41〜46)は、それぞれ同一ピッチで支持されている。図示の例では、80mmごとであり、これは給電ローラ装置(3a、3b)における案内軌道(30a〜36a、30b〜36b)の配列ピッチと同じである。
【0055】
また、各列におけるプーリの配置は、軸方向に相互にずれるようになっている。図示の例では、8mmずつ相互にずれるようになっている。このようにして、各プーリは、線材(2)を次のパスラインへ順次複数回にわたって案内すること、および、次の給電ローラ装置(3a、3b)の案内軌道(31a〜36a、30b〜36b)へ複数回に分けてスムーズに線材(2)を案内することという2つの目的が達成される。なお、上記のずらし量は、等間隔であることが好ましいが、必要に応じて、各ずらし量を変化させることも可能である。
【0056】
なお、各プーリには、脱線を防止する観点から、線材(2)と接触する面に、案内軌道(30a〜36a、30b〜36b)と同様の案内溝(凹部)が設けてあることが好ましい。この案内溝の深さは、同様に、線径0.23〜1.00mmの銅製ワイヤをめっき処理する場合には、5〜10mm程度とすることが好ましい。
【0057】
[表面処理装置の構成]
これらの給電ローラ装置(3a、3b)およびライン変更プーリ装置(4、4′)は、最初のパスラインで、第1の給電ローラ装置(3a)の第1列の案内軌道(30a)を介して、処理槽(5)を通じた線材が、第1のライン変更プーリ装置(4′)の第1列のプーリ列(41′)、第2の給電ローラ装置(3b)の第1列の案内軌道(30b)を介して、Uターンして、次のパスラインで処理槽(5)を通じ、その後、第2のライン変更プーリ装置(4)の第1列のプーリ列(41)、第1の給電ローラ装置(3a)の第2列の案内軌道(31a)を介して、Uターンして、さらに次のパスラインで処理槽を通じるように構成されている。
【0058】
このようにして、処理槽(5)を通ずる線材(2)のパスラインを、処理槽(5)の幅方向もしくは各装置の回転軸の軸方向に所定間隔をおいて複数形成することができる。
【0059】
図示の例では、処理槽(5)の両側で、給電ローラ装置(3a、3b)およびライン変更プーリ装置(4、4′)を介して、最初のパスラインを含めて、パスラインが40mm間隔で合計13本形成されることになる。すなわち、両側の各装置は、相手方側に対して40mmずつ位置が軸方向にずれているほか、基本的には対称的な構成配置となっている。
【0060】
なお、パスラインの本数は、処理槽(5)の長さや表面処理の用途や線材の表面に被覆される被覆材料の量に基づいて、任意に決定される。よって、本発明の各装置においては、公知の手段により、それぞれの列数を任意に設定できたり、各ローラないしはプーリの間隔を任意に設定できたりするように構成することもできる。
【0061】
また、最初のパスラインについては、上流側から同じ高さで経路が形成されている場合、第1の給電ローラ装置(3a)の第1列の案内軌道(30a)とは、ほぼ点接触となるため、ニップローラ(13)をこの第1列の案内軌道(30a)の頂部に設置するか、または、図示はしないが、近似的に許容曲率半径以上となる範囲で抱き角を設けるためのガイドプーリを設置して、線材(2)を第1列の案内軌道(30a)に押圧することが好ましい。
【0062】
本発明の表面処理装置は、複数ある工程のうち、中間の処理工程において用いる場合には、最初のパスラインを、必要に応じて、案内プーリや、ライン変更プーリ装置(4、4′)に類似するが、高さのみ変更し、ラインは変更しないプーリ列を備える装置に基づいて、その高さを調整した上で、第1の給電ローラ装置(30a)に導けばよい。また、最後のパスラインは、第2のライン変更プーリ装置(4)の最終列(46)および第1の給電ローラ装置(3a)の最終列のローラ(36a)を介して、送り返されて処理槽(5)を通じたのち、次の工程に送り出すようにすればよい。
【0063】
ただし、本発明を、巻き出された線材に対する最初の処理工程に適用する場合、または、処理後の線材が最終的な製品となる最後の処理工程に適用する場合、あるいは、図1に示すように、巻き出しと巻き取りの両方が行われる単独の処理工程に適用する場合、それぞれ、最初のパスラインの前方および最終のパスラインの後方に、それぞれ巻き出しローラ(1)と、巻き取りローラ(7)を配置すればよい。
【0064】
前記巻き出しローラ(1)および巻き取りローラ(7)の半径は任意に選択することができるが、給電ローラ(3a、3b)と同じ半径とし、かつ、図1に示す通り巻き出しローラ(1)、第1および第2の給電ローラ(3a、3b)、巻き取りローラ(7)の中心軸を同一平面上に配置することが好ましい。このような配置では、線材(2)に作用する張力、抵抗などを低減しつつ、装置の小型化を図ることができるので、線材の表面処理の高速化に有利であるだけでなく、損傷などによる製品品質の低下を防止することができる。
【0065】
[処理槽]
本発明の表面処理装置において、処理槽(5)の構成については任意であり、線材(2)に施す表面処理に応じて、適宜最良の構成を採用することができる。たとえば、洗浄、めっき、ウェットエッチング、潤滑剤などの塗布処理においては、図1(b)に示すように、処理槽(5)の底面に処理治具(6)を設けることが好ましい。処理治具(6)は、たとえば、処理槽の底面を矩形状に区切る側壁から構成される。該側壁には、少なくとも線材(2)を通じさせる複数のスリット(図示せず)がパスラインに応じて形成されている。ただし、該スリットからは、処理液の漏出は制限され、処理液は側壁上をオーバーフローするように構成される。図示の例では、処理槽(5)の大きさは、長さ1350mm×幅800mm×高さ220mmであり、処理治具(6)の大きさは長さ1050mm×幅560mm×高さ150mmである。これから理解されるように、本発明において処理治具(6)は非常にコンパクトな構成とすることができる。
【0066】
なお、前記スリットの幅は、線材(2)の線径に3〜5mmを加えた程度することが好ましい。スリットの幅が3mmより小さいと、線材(2)のめっき層の表面が損傷する可能性があり、5mmより大きいと、処理液の流出量が多くなり、大型のポンプが必要となる場合がある。
【0067】
処理治具(6)には、底面側において、噴き上げ配管(10)と接続していて、噴き上げ配管(10)を介して、底面側より洗浄液やエッチング液などの薬液が供給されるようになっている。また、これらの薬液は処理治具(6)の側壁を越えてオーバーフローするようになっており、処理治具(6)からオーバーフローした薬液は、処理槽(5)の底面であって、処理治具(6)の外側に接続された戻り配管(11)を通じて、受槽(8)に返送および貯留され、ポンプ(9)によって再び噴き上げ配管(10)を通り、処理治具(6)に供給されるようになっている。このような構成により、薬液の循環使用が可能となる。
【0068】
以上のような本発明の表面処理装置の構成により、巻き出しローラ(1)によって巻き出された線材(2)は、給電ローラ装置(3a)の案内軌道(30a)を通って給電されつつ、最初のパスラインに入り、処理槽(5)に設置された処理治具(6)内を通過して、所定時間の処理が施される。処理槽(5)を出た後、そのパスライン上に最初のプーリ(41′a)が設置されている第1のライン変更プーリ装置(4′)の第1列のプーリ列(41′)を通過して、順次軸方向位置を変更しながら、最後のプーリ(41′a)から第2の給電ローラ装置(3b)の第1列の案内軌道(30b)の下側に導かれ、この案内軌道(30b)に沿って折り返され、折り返された線材(2)は2番目のパスラインに入り、再度処理槽(5)内へと導かれる。本発明では、線材(2)をUターンにより折り返す構成の表面処理装置において、ガイドローラを伴う給電ローラを別途に設けることなく、線材(2)をUターンさせるガイドローラに給電機能を併せ持たせることにより、特に、装置の長手方向の寸法をコンパクトにすることが可能となる。
【0069】
なお、線材(2)は給電ローラ装置(3a、3b)の案内軌道(30a〜36a、30b〜36b)によって給電されることとなるが、このような給電は第1および第2の給電ローラ装置(3a、3b)の一方で行ってもよいし、両方で行ってもよい。また、線材(2)への給電を行う必要がない場合には、第1および第2の給電ローラ装置(3a、3b)の両方の給電機能を停止することも可能である。
【0070】
また、第1および第2の給電ローラ装置(3a、3b)は、駆動用モータ(12a、12b)により駆動されるが、必要に応じて、一方の給電ローラ装置を駆動させずに、線材の移動に応じて、従動させるようにしてもよい。さらには、本発明では、給電ローラ装置(3a、3b)自体の軽量化が図られているので、上流および下流に、巻き出しローラ(1)および巻き取りローラ(7)や、その他の線材を移動させうる装置に、駆動機構が取り付けられており、線材や処理の種類に応じて、これらの給電ローラ装置(3a、3b)を駆動させる必要がない場合には、これらを駆動用モータ(12a、12b)から分離したり、あらかじめ給電のみが可能な従動プーリからなる給電ローラ装置として構成したりすることも可能である。
【0071】
本発明では、給電ローラ装置(3a、3b)の各ローラの上側頂点を、処理槽(5)のパスラインと一致させることで、パスライン高さへの案内を目的とした別のライン変更プーリ装置が不要となる。なお、パスライン高さと給電ローラ(3a、3b)の各ローラの上側頂点が異なる場合でも、他のガイドローラや、ライン変更プーリ装置(4、4′)と同様の構成からなる、処理槽(5)のパスライン高さまで導くためのライン変更プーリ装置などを別に設けることで、対応することも可能である。
【0072】
折り返された線材(2)が、処理槽(5)へと導入され、処理治具(6)にて所定時間の処理が施された後、同パスライン上に最初のプーリ(41e)が設置されたライン変更プーリ装置(4)の第1列のプーリ列(41)へと導入される。上述の通り、ライン変更プーリ装置(4)の第1列以降の各列の配置構成は、ライン変更プーリ装置(4′)と対称ではあるが、同様の構成となっている。ライン変更プーリ装置(4)により、線材(2)は、3番目のパスラインに入り、第1の給電ローラ装置(3a)の第2列の給電ローラ(31a)の下側に導かれ、給電ローラ(31a)によって折り返され、折り返された線材(2)は3番目のパスラインに入り、再度処理槽(5)内へと導かれる。
【0073】
このようにして、所定回数、折り返しを繰り返し、必要な時間だけ処理された線材(2)は、第2のライン変更プーリ装置(4)および第1の給電ローラ装置(3a)を介して、最終のパスラインに入って、処理槽(5)に導かれ、処理された後、巻き取りローラ(7)によって巻き取られる。
【0074】
上記の構成により処理槽(5)の幅方向が許す限り、線材(2)を折り返して表面処理を施すことができるため、装置の全長を延長することなく、所定の処理時間の確保が可能となる。
【0075】
また、折り返しを行う給電ローラ装置(3a、3b)は処理液の外にあるため、線材(2)の仕掛けが容易となる。さらに、近似的に許容曲率半径以上となるよう配置されたライン変更プーリ装置(4、4′)によって、線材(2)の許容曲率半径に左右されることなく、パスラインの変更が可能であり、かつ、すべてのパスラインが処理治具(6)に平行に進入するように構成できる。このため、線材(2)が通過するために設けるスリットを小さくすることも可能であり、該スリットからの液漏れも少ないので、ポンプを小型化することもできる。
【0076】
処理治具(6)内の処理液は受槽(8)に溜められており、ポンプ(9)によって噴き上げ配管(10)を通して圧送される。処理治具(6)よりオーバーフローした処理液は処理槽(5)に設置された戻り配管(11)によって受槽(8)へと戻される。これにより、必要な液量は線材(2)を浸す程度で十分であり、従来技術のようにローラを処理液内に設けた場合と異なり、処理液の量が線材の許容曲率半径に左右されることがないため、処理槽(5)の小型化も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
このように、本発明により、線材の表面処理についての高速化を実現しつつ、線材の表面処理装置をコンパクトに構成することができ、電気めっきをはじめとする、線材の表面処理の分野において幅広く適用することが可能であることから、本発明は、その処理のさらなる効率化、低コスト化に大きく寄与するものと考えられる。
【符号の説明】
【0078】
1 巻き出しローラ
2 線材
3a、3b 給電ローラ装置
4、4’ ライン変更プーリ装置
5 処理槽
6 処理治具
7 巻き取りローラ
8 受槽
9 ポンプ
10 噴き上げ配管
11 戻り配管
12a、12b 駆動用モータ
13 ニップローラ
14 カップリング
15 ロータリコネクタ
16 円盤
17 連結軸
18 固定治具
19 軸受
20 軸受ホルダ
21 給電軸
22 軸ホルダ
23 ハウジング
24 プーリ
25 連結部材
30a〜36a 案内軌道
30b〜36b 案内軌道
41a〜46e、41’a〜46’e ライン変更プーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材に給電しつつ、該線材を処理槽に通じさせてその表面を処理するための表面処理装置であって、
該処理槽の両側に配置され、それぞれが、前記線材の許容曲率半径以上の半径を有し、かつ、軸方向に少なくとも1列の案内軌道を外周面に備え、導電性材料からなる回転体と、該回転体の中心において軸方向に伸長する導電性材料からなる給電軸と、前記回転体を該給電軸に対してこの給電軸と共に回転可能に支持する支持体と、前記回転体と前記給電軸とを電気的に接続する手段とを備える、第1および第2の回転給電装置と、
該第1および第2の回転給電装置のそれぞれと前記処理槽との間に配置され、相互に軸方向および高さ方向に位置がずれている2個以上のプーリが、最初のプーリに接してから最後のプーリに接するまでの前記線材の経路を仮想円弧とした場合の半径が、前記線材の許容曲率半径以上となるように、順次備えているプーリ列がそれぞれ1列以上配されている第1および第2のライン変更プーリ装置とを備え、
前記第1および第2のライン変更プーリ装置が、前記線材の前記処理槽を通ずるパスラインを順次変更し、かつ、前記第1および第2の回転給電装置が、前記線材に給電し、かつ、該線材をUターンさせることにより、前記線材が前記処理槽を複数のパスラインで通ずることを可能としている、
線材の表面処理装置。
【請求項2】
前記第1および第2の回転給電装置の少なくとも一方が、前記回転体を回転させる駆動機構をさらに備える、請求項1に記載の線材の表面処理装置。
【請求項3】
前記支持体が樹脂材料からなる一対の円盤からなり、前記回転体が、該一対の円盤の内側で、これらの円盤の外周部に固定された円筒形の連結軸からなる、請求項1に記載の線材の表面処理装置。
【請求項4】
前記少なくとも1列の案内軌道のそれぞれが、該連結軸の外周面に固定された少なくとも1列の導電性材料からなる円輪部材のそれぞれの外周面に形成された案内溝により形成される、請求項2に記載の線材の表面処理装置。
【請求項5】
前記支持体が樹脂材料からなる少なくとも1列のプーリからなり、前記回転体が、該少なくとも1列のプーリのそれぞれの外周面に固定された、導電性材料からなる円輪部材からなり、前記少なくとも1列の案内軌道のそれぞれが、該円輪部材のそれぞれの外周面に形成された案内溝により形成される、請求項1に記載の線材の表面処理装置。
【請求項6】
前記第1および第2のライン変更プーリ装置の各プーリ列の高さが、前記回転体の半径以下である、請求項1に記載の線材の表面処理装置。
【請求項7】
前記最初のパスラインに線材を、該最初のパスラインと同じ高さで巻き出すための巻き出しローラと、該巻き出しローラから巻き出された前記線材が、前記第1の回転給電装置の前記案内軌道のうちの第1列の案内軌道を通過する際に、該線材を該第1列の案内軌道に押圧する手段をさらに備える、請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項8】
前記最初のパスラインで処理槽に通じた線材が、前記第1のライン変更装置の前記プーリ列のうちの第1列および前記第2の回転給電装置の前記案内軌道のうちの第1列の案内軌道を介して、Uターンして、次のパスラインで処理槽を通じ、その後、前記第2のライン変更プーリ装置の前記プーリ列のうちの第1列および前記第1の回転給電装置の第2列の案内軌道を介して、Uターンして、さらに次のパスラインで処理槽を通じ、同様にして、その後も、順次パスラインを移動する構成において、前記第2のライン変更プーリ装置のプーリ列のうちの最終列および前記第1の回転給電装置の前記案内軌道のうち最終列の案内軌道を介してUターンして、最終のパスラインで処理槽を通じた線材を巻き取るための、巻き取りローラをさらに備える、請求項1に記載の線材の表面処理装置。
【請求項9】
前記処理槽内に設けられ、少なくとも前記線材を通じさせる複数のスリットが形成されている壁を有し、処理液をオーバーフローさせるように構成されている処理治具と、該処理液に給電できるように構成されている電極板と、該処理治具に接続され、該処理液を供給する噴き上げ配管と、前記処理槽に接続され、オーバーフローした前記処理液を返送する戻り配管と、前記噴き上げ配管と前記戻り配管に接続され、該処理液を循環させるポンプとをさらに備える、請求項1に記載の線材の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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