線材圧延設備の線材搬送コンベヤおよびその線材搬送コンベヤにおける線材切断方法
【課題】従って、本発明の目的は、フルコイル生産設備からハーフ線材コイル、1/3線材コイル、任意の量の線材コイルも生産することができ、しかも線材コイルの生産性に優れた線材圧延設備の線材搬送コンベヤを提供することである。
【解決手段】線材圧延設備の線材搬送コンベヤ1を、圧延線材Wの搬送方向と直交する方向に段差が形成されるように配置された上流側コンベヤ2および下流側コンベヤ5と、前記段差を埋めるように配設され、圧延線材Wの搬送方向に往復移動可能な可動コンベヤ3と、可動コンベヤ3の下流側端部に設けられ、圧延線材Wを切断する線材切断装置4と、可動コンベヤ3に設けられ、線材切断装置4による圧延線材Wの切断時に可動コンベヤ3上の圧延線材Wを可動コンベヤ3に対して停止させると共に、可動コンベヤ3の下流側コンベヤ5方向への移動を制御する台車駆動装置32から構成する。
【解決手段】線材圧延設備の線材搬送コンベヤ1を、圧延線材Wの搬送方向と直交する方向に段差が形成されるように配置された上流側コンベヤ2および下流側コンベヤ5と、前記段差を埋めるように配設され、圧延線材Wの搬送方向に往復移動可能な可動コンベヤ3と、可動コンベヤ3の下流側端部に設けられ、圧延線材Wを切断する線材切断装置4と、可動コンベヤ3に設けられ、線材切断装置4による圧延線材Wの切断時に可動コンベヤ3上の圧延線材Wを可動コンベヤ3に対して停止させると共に、可動コンベヤ3の下流側コンベヤ5方向への移動を制御する台車駆動装置32から構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材巻取り機により螺旋状に形成された圧延線材を線材集束装置まで搬送する線材圧延設備の線材搬送コンベヤおよびその線材搬送コンベヤにおける線材切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
線材圧延設備は、例えば鋼片を直径5.5から22mm程度の寸法の線材に圧延し、圧延された圧延線材をレイングリールにより螺旋状に形成し、ループコンベヤで搬送しながら冷却する。このループコンベヤの出口には線材集束装置が設けられており、先端部と後端部とが先端クロップ、後端クロップとして切断された後に前記線材集束装置によりコイル状に束ねられて、線材コイルとして次工程に送られるようになっている。ところで、通常、2トンの線材コイルを製造している工場が、1トンの線材コイルが欲しいというユーザの要望に応えるためには、下記のような方法を採らなければならない。
(1)1トンの線材コイルを圧延し得る鋼片を用いる。
(2)圧延の途中でクロップシャーにより2分割する。
(3)線材コイルとした後に2分割する。
【0003】
1トンの線材コイルを圧延し得る鋼片を用いる場合には、加熱炉の点で対応できない場合があり、また、たとえ対応できたとしても生産能力が低下し、コスト的に不利になる。
また、圧延の途中でクロップシャーによって2分割する場合には、先行材と後行材の圧延速度を変える制御が必要であり、圧延途中の大断面時の切断であるため分割精度が悪くなり、線材コイルの重量がばらつくという問題が生じる。さらに、線材コイルに形成した後に2分割する場合には、圧延線材の中間部を探す必要があり、効率が悪いという問題が生じる。そのため、このような問題を解決し得るようにした圧延線材の切断に係る技術が提案されている。線材圧延設備における線材切断に係る技術としては、例えば後述する構成になるものが公知である。以下、典型的な線材圧延設備の圧延線材の切断に係る従来技術の概要を説明する。
【0004】
先ず、従来例1に係るコイル集束装置による切断制御方法を、その概念図の図11を参照しながら説明する。即ち、フルコイル生産設備でハーフコイルを切換え生産するには、コイル成形の適宜時点でアイリス58に閉の指令が出されるが、その指令が出される前に、第1のコンベヤ53のフィードチェーン52を数秒ストップさせる。その結果、テーブルローラ51から運ばれてくる、螺旋状に展開された線材54はフィードチェーン52上に貯えられる。そのとき、テーブルローラ51とフィードチェーン52との間には段差があるので、重合によってある程度の線材量が貯えられる。その結果、集束タブ55内の垂れ下がる線材54bは、確実に1本のみとなるので、かかる状態(第1のコンベヤ53が停止した1秒後)でアイリス58を閉にすれば、確実にコイルの仕分けを行うことができる、次いで、第1のコンベヤ53を起動する前に下段の定心用心棒57を下降させた後に、線材54をかき取りタブシャーにより挟み切りを行う。この場合、フルコイル生産設備からハーフコイルを生産する際の制御方法を説明しているが、1/3コイルや、任意の量のコイルの生産にも適用することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
従来例2に係るものは、コイル成形場所で、切断端を曲げたり歪ませたりすることなく圧延材をトリミング、切断あるいはトリミングおよび切断する装置である。以下、この従来例1に係る装置を、その垂直断面説明図の図12を参照しながら説明する。コイル形成装置81は、収集用心金83の上方にこれと同心に配置された円筒状再形成室82を備えている。この再形成室82の上端部は、順次中心がずれた状態で重なり合った製品リングを運ぶ移動コンベヤの送出端に近接して配置されている。心金83は再形成室82の底部端の下方に配置されている。また、複数の分離フィンガー84が再形成室82の周囲に取付けられていて、これらの分離フィンガーは再形成室内のリングの落下通路内に出入り自在となっている。分離フィンガー84が作動位置に進められたとき、これらの分離フィンガーは再形成室を通って落下する線材リングの落下を阻止し、心金83の周囲に既に堆積したリング85を再形成室内に垂直に落下し続けるリング86から分離する。
【0006】
複数本のレバーは、それぞれ再形成室82の外側に位置する軸の回りに回転自在に枢着されている。各レバーにはそれぞれ鎌形の捕捉腕88が連結されている。各捕捉腕の鎌形凹部の基部には切断刃89が取付けられている。レバーとその捕捉腕88は、通常の非作動時には、再形成室82内のコイル落下通路の外側に位置する。レバーは、リンクにより回動自在に相互に連結されており、ピストンシリンダーによって作動するようになっている。固定切断刃は、再形成室82の底部端に、リングの落下通路のまわりに同一円周上に、互いに離隔して取付けられている。これらの固定切断刃は、切断刃89とそれが取付けられている作業腕のそれぞれに1つの固定切断刃が対応し、それぞれ各切断刃89と相補作動するように配置されている。
【0007】
心金83の周囲に所定量の線材リングが堆積すると、レバーの後退により再形成室から引っ込められていた分離フィンガー84が作動位置に突出される。以降は、リングは一時的に分離フィンガー84上に堆積する。これらのリングのうち第1番目のリングは、下方の心金83の周囲に堆積したリングの最後のリングと1本の線材によりつながっている。
この線材の連結部は、ピストンシリンダーを作動させて、レバーを作動位置に移動させることによって切断される。この移動の間に、捕捉腕88は、再形成室82の底部端のわずかに下方の、分離用フィンガー84からは十分下方の平面を、リングの落下通路を横切って掃行する。捕捉腕88の配置、形状および大きさは、捕捉腕のうちのどれか一つが線材連結部を捕捉し、それを再形成室82により規定されるリングの落下通路の周縁部に引き寄せるべく設定されている。線材連結部は引き寄せられつつあるとき捕捉腕88の切断刃89に当接するために、この切断刃89と固定切断刃とによって線材連結部が切断される(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
従来例3に係るものは、熱間圧延された線材からコイル形成機によって形成され、連続する一連の巻線の形で巻線搬送装置上に置かれ、この置かれた一連の巻線を分離するための方法と装置である。より詳しくは、終端巻線と始端巻線は一連の巻線から隔離され、センサとコンピュータを介して制御される分離装置に供給される。終端巻線と始端巻線を一連の巻線から隔離して分離装置に供給するのは、分離を所定の領域に制限することと、分離装置の移動通路と分離時間を短縮することであり、そのために、連続する一連の巻線の終端巻線と始端巻線は、切断装置(この切断装置は巻線を分離する分離装置の一部を形成している)によって分離される。連続する一連の巻線の終端巻線と始端巻線は2箇所で中央巻線から分離され、分離された試験片は捕集装置に供給される。前記切断装置は中央巻線を保持することによって終端巻線と始端巻線を分離し、これら巻線を、巻線搬送装置上に定置され、屑搬送装置に降ろすエゼクタに送るように構成されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平2−112824号公報
【特許文献2】特公昭58−5134号公報
【特許文献3】特表平8−506274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来例1に係るコイル集束装置における切断制御方法は、第1のコンベヤ53を起動する1秒後前に下段の定心用心棒57を下降させた後、線材54をかき取りタブシャーにより挟み切ることにより、フルコイル生産設備からハーフコイル、1/3コイル等を生産することができる。但し、極端に短い先後端のクロップの切断や、クロップの取出しは困難である。この従来例1は、コイルを仕分けするためのアイリスは複数本の鎌形のコイル保持腕を備えており、これらコイル保持腕の作動構成が複雑であるのに加えて、このアイリスの直下に設けられる複数の位置決め腕からなるタブシャーの作動構成も複雑である。つまり、線材コイルの切断に必要な機構が複雑にならざるを得ず、設備自体が高価にならざるを得ないという経済上の問題がある。加えて、切断部がとがり、切断後に引っ掛かり易く、後面設備でのトラブルが多い。また、作業者の安全性等にも問題がある。
【0010】
上記従来例2に係るコイル集束装置は、切断端を曲げたり歪ませたりすることなく圧延線材をトリミング、切断あるいはトリミングおよび切断する装置である。ところで、この従来例2に係るコイル集束装置の構成は上記従来例1に係る装置の構成と類似であるから、制御の仕方によっては、ハーフ線材コイル、1/3線材コイル、任意の量の線材コイルも生産することができると考えられる。しかしながら、従来例2に係るコイル集束装置の場合は、再形成室を通って落下する線材リングの落下を阻止する分離フィンガーが必要であるのに加えて、切断刃を保持する作業腕の構成、作動構成が複雑であるから、従来例1の場合と同様の問題がある。
【0011】
上記従来例3に係る巻線を分離するための方法および装置は、搬送中の巻線を切断するものであり、巻線の搬送を、コンピュータを介してその速度と抵抗に依存して追跡し、切断時に巻線の搬送速度を可変にすることが示唆されている。つまり、巻線の切断時に巻線の搬送速度を低速にするため、搬送速度低下に伴う生産性の低下を回避することができないという問題がある。
【0012】
従って、本発明の目的は、フルコイル生産設備からハーフ線材コイル、1/3線材コイル、任意の量の線材コイルも生産することができ、しかも線材コイルの生産性に優れた線材圧延設備の線材搬送コンベヤおよびその線材搬送コンベヤにおける線材切断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、従って上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤが採用した手段は、線材巻取り機により螺旋状に成形された圧延線材を線材集束装置まで搬送する線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおいて、前記圧延線材の搬送方向と直交する方向に段差が形成されるように配置された上流側コンベヤおよび下流側コンベヤと、これら上流側コンベヤと下流側コンベヤとの間に形成された段差を埋めるように配設され、圧延線材の搬送方向と平行な方向に往復移動可能な可動コンベヤと、この可動コンベヤの下流側端部に設けられ、圧延線材を切断する線材切断装置と、可動コンベヤに設けられ、線材切断装置による圧延線材の切断時に可動コンベヤ上の圧延線材をこの可動コンベヤに対して停止させるように、この可動コンベヤの下流側方向への移動を制御する駆動装置とを備えてなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項2に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤが採用した手段は、請求項1に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおいて、前記駆動装置は、可動コンベヤを上流側コンベヤ寄りの待機位置と、下流側コンベヤ寄りの圧延線材切断完了位置との間の切断領域を往復移動可能に制御する機能を備えてなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項3に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤが採用した手段は、請求項2に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおいて、前記上流側コンベヤ、下流側コンベヤおよび可動コンベヤは、それぞれ圧延線材を搬送する搬送ローラを備えてなり、前記駆動装置は、可動コンベヤが待機位置に待機しているときには可動コンベヤを停止させると共に、搬送ローラによる圧延線材の搬送速度を上流側コンベヤおよび下流側コンベヤの搬送速度と同期させる一方、可動コンベヤを待機位置から圧延線材切断完了位置に移動させながら可動コンベヤの搬送ローラの停止状態を維持することにより、線材切断装置による圧延線材の切断を実行可能とするように制御する機能を備えてなることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項4に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤが採用した手段は、請求項2に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおいて、前記駆動装置は、圧延線材の切断終了後に前記可動コンベヤを待機位置に戻すときに、この可動コンベヤの搬送ローラによる搬送速度を上流側コンベヤおよび下流側コンベヤの搬送ローラによる搬送速度と見かけ上同じになるように制御する機能を備えてなることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項5に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤが採用した手段は、請求項2乃至4のうちの何れか一つの項に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおいて、前記可動コンベヤを圧延線材切断完了位置に移動させるときの移動速度が、圧延線材の搬送速度よりも低速に制御されるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項6に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤが採用した手段は、請求項2乃至5のうちの何れか一つの項に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおいて、圧延線材の切断終了後に、前記下流側コンベヤの搬送速度が、前記上流側コンベヤの圧延線材の搬送速度よりも高速に制御されるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項7に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法が採用した手段は、線材巻取り機により螺旋状に成形された圧延線材の搬送方向と直交する方向に段差が形成されるように配置された上流側コンベヤおよび下流側コンベヤと、これら上流側コンベヤと下流側コンベヤとの間に形成された段差を埋めるように配設され、圧延線材の搬送方向と平行な方向に往復移動可能な可動コンベヤと、この可動コンベヤの下流側端部に設けられ、圧延線材を切断する線材切断装置とを備えてなり、圧延線材を線材集束装置まで搬送する線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法であって、前記上流側コンベヤ側の待機位置で可動コンベヤにより上流側コンベヤから圧延線材を受取って下流側コンベヤの方向に搬送し、圧延線材の切断部位を含む線分の一部が下流側コンベア側に落下すると、可動コンベヤの下流側コンベヤ方向への移動開始に合わせて、可動コンベヤ上の圧延線材の搬送速度が上流側コンベヤおよび下流側コンベヤによる圧延線材の搬送速度と略同速度になるように制御しながら、可動コンベヤが圧延線材切断完了位置に到達するまでの間に、線材搬送コンベヤに隣接して設けられた捕捉部材により受け止めた切断部位を含む線分を線材切断装置により切断することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項8に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法が採用した手段は、請求項7に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法において、前記可動コンベヤ上の圧延線材を可動コンベヤに対して停止させると共に、可動コンベヤが圧延線材切断完了位置に到達するまでの間に、捕捉部材により受け止めた切断部位を含む線分を線材切断装置により切断することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1乃至6に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤおよび本発明の請求項7または8に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法によれば、可動コンベヤ上において、この可動コンベヤに対して停止している圧延線材を、可動コンベヤに設けられた線材切断装置で切断することができるため、圧延線材の切断作業能率が優れている。そして、圧延線材の搬送を停止することなく、先端クロップ、後端クロップの切断、中間部における切断を行うことができ、圧延線材の線材集束装置への取込速度を一定に保持することができるため、コイルの変形を防止することができる。また、上記のとおり、可動コンベヤに対して停止している圧延線材を切断するため、切断部の断面がほぼ平坦となり、後工程において引っ掛かりの問題が生じるようなことがない。
【0022】
本発明の請求項4に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤでは、圧延線材の切断終了後に前記可動コンベヤを待機位置に戻すときに、この可動コンベヤの搬送ローラによる搬送速度を上流側コンベヤおよび下流側コンベヤの搬送ローラによる搬送速度と見かけ上同じになるように制御される。従って、可動コンベヤが上流側コンベヤの方向に移動していても、上流側コンベヤや下流側コンベヤと同じ搬送速度で圧延線材を下流側コンベヤの方向に搬送することができ、搬送速度が低下することがないから、線材コイルの生産性が低下するようなことがない。
【0023】
本発明の請求項5に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤによれば、可動コンベヤを圧延線材切断完了位置に移動させるときの可動コンベヤの移動速度が、圧延線材の搬送速度よりも低速になるように制御される。従って、可動コンベヤのシフトストロークを短くすることができるから、線材搬送コンベヤのコンパクト化、コスト低減に寄与することができる。
【0024】
本発明の請求項6に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤでは、圧延線材の切断終了後に、下流側コンベヤの搬送速度が上流側コンベヤの搬送速度よりも高速に制御される。従って、下流側コンベヤ上において、分割された圧延線材間隔が開き、後工程における線材コイルの集積に支障が生じるようなことがなく、また圧延線材の先端側のクロップや後端側のクロップの処理を容易に行うことができる。さらに、圧延線材を中間で切断する場合、先端クロップが線材集束装置の集積タブ(クロップ入れ)に入った時点における上流側分割材の停止タイミングが取り易くなるため、集積タブでの分離が安定するといった効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の線材切断方法を実施する実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤを、添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの平面図、図2は図1をA方向から見た模式的側面図、図3は本発明の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの線材切断装置の構成説明図、図4は図3のB矢視図、図5は圧延線材の切断位置説明図、図6乃至図10は本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの作動説明図である。
【0026】
本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの構成を、図1乃至図5を参照しながら説明する。図に示す符号1は線材搬送コンベヤで、この線材搬送コンベヤ1は、図示しない線材巻取り機(レイングリール)により螺旋状に成形された圧延線材Wを図示しない線材集束装置までループ状で搬送するものである。この線材搬送コンベヤ1は、前記線材巻取り機から供給され、螺旋状に成形された圧延線材Wを搬送する複数の搬送ローラ2aを備えた上流側コンベヤ2と、この上流側コンベヤ2から受取った圧延線材Wを中継搬送する複数の搬送ローラ3aを備え、かつ圧延線材Wを切断する線材切断装置4を備えた可動コンベヤ3と、この可動コンベヤ3から受取った圧延線材Wを線材集束装置まで搬送する複数の搬送ローラ5aを備えた下流側コンベヤ5とから構成されている。
【0027】
前記下流側コンベヤ5は、前記上流側コンベヤ2の先端の前方、つまり圧延線材Wの搬送方向に所定の間隔を隔て、かつ圧延線材Wの搬送方向と直交する方向に段差が形成されるように設けられている。この段差は、図2に示すように、上流側コンベヤ2と、この上流側コンベヤ2の下流側に位置する下流側コンベヤ5との間に形成されている。そして、これら上流側コンベヤ2と下流側コンベヤ5との間に上面が上流側コンベヤ2より下位に位置し、かつ下面が下流側コンベヤ5より上位に位置する可動コンベヤ3が配設されている。
【0028】
前記可動コンベヤ3は、走行台車31を備えている。この走行台車31の上部側に前記複数の搬送ローラ3aが設けられ、下部側に、作業床Lに敷設されてなるレール6の転動面を転動する一対の自由回転する前輪3bと、前記レール6の転動面を転動し、図示しないコントローラからの制御指令信号によって回転方向および回転速度が自在に制御される電動モータからなる台車駆動装置(駆動装置)32により駆動される一対の後輪3cとが設けられている。
【0029】
即ち、この可動コンベヤ3は、台車駆動装置32で一対の後輪3cが駆動されることにより、上流側コンベヤ2側の待機位置6aから下流側コンベヤ5側の圧延線材切断完了位置6bとの間で速度変更自在に往復移動されるように(図中、左右方向にシフト可能なように)構成されている。また、可動コンベヤ3の複数の搬送ローラ3aは、走行台車31の台車駆動装置32の反対側、つまり圧延線材Wの搬送方向側に向って見たときに走行台車31の左側に設けられた電動モータからなるローラ駆動装置33によって速度変更自在に回転されるように構成されている。なお、本実施の形態においては、走行台車31の移動させる台車駆動装置32として電動モータを用いたが、これに限らず、例えば油圧モータや油圧シリンダを用いることができるから、電動モータに限定されるものではない。
【0030】
前記上流側コンベヤ2、可動コンベヤ3、および下流側コンベヤ5の作動は、下記のように制御される。
(1)可動コンベヤ3が待機位置6aにあって停止しているときには、上流側コンベヤ2の搬送ローラ2a、下流側コンベヤ5の搬送ローラ5aと同回転速度で回転される。
(2)可動コンベヤ3の複数の搬送ローラ3aは、この可動コンベヤ3が待機位置6a側から圧延線材切断完了位置6b側に移動(シフト)しているときは、移動速度(シフト速度)に応じて次第に回転速度が減速され、上流側コンベヤ2による圧延線材Wの搬送速度と略同速度(以下、同速度と記載がある場合には、実質的に同速度であることを包含している。)になるように制御される。圧延線材Wの切断部位を含む線分が切断されると、圧延線材Wの先行材と後行材との間の間隔を開けるために、下流側コンベヤ5の搬送速度が増速される。
(3)圧延線材Wの切断終了後に、圧延線材Wの搬送基側への逆走行により圧延線材切断完了位置6b側から待機位置6a側に戻るときには、圧延線材Wの搬送速度が見かけ上、上流側コンベヤ2と下流側コンベヤ5とによる圧延線材Wの搬送速度と同搬送速度になるように、可動コンベヤ3の複数の搬送ローラ3aの回転速度が増速される。
【0031】
換言すれば、この可動コンベヤ3の前進中、後進中、あるいは停止中の如何にかかわらず、通常は、この可動コンベヤ3上の圧延線材Wは、上流側コンベヤ2と下流側コンベヤ5とによる圧延線材Wの搬送速度と同速度で下流側コンベヤ5の方向に搬送されるように構成されている。
【0032】
前記走行台車31の下流側コンベヤ5側の先端部には,コンベヤの中心方向に突出するフック作動シリンダ4aを有する線材切断装置4が設けられている。前記フック作動シリンダ4aは、圧延線材の捕捉部材である後述するフック部4bを作動させるものである。
なお、フック作動シリンダ4aは、可動コンベヤ3に隣接すると共に、切断位置近傍に切断装置4と個別に設けられていてもよい。前記線材切断装置4は、図3,4に示すように、前記フック作動シリンダ4aの伸縮ロッドの先端に、可動コンベヤ3から下流側コンベア側に落下する圧延線材Wの切断部位を含む線分の一部を引っ掛けて引寄せるフック部4bが設けられている。そして、前記フック作動シリンダ4aの外側面側に、前記フック部4bにより引き寄せられた圧延線材Wの切断部位を含む線分を切断する油圧式カッタ4cが設けられている。油圧式カッタ4cは、フック作動シリンダ4aの外側面側に固着される刃保持部材4dと、この刃保持部材4dの先端側に設けられた固定刃4eと、この固定刃4eの刃に対峙する位置に設けられ、刃作動シリンダ4gにより固定刃4eに対して接近、離反する可動刃4fとから構成されている。以上の説明から良く理解されるように、本発明の形態に係る線材切断装置4の構成は上記従来例1,または2に係るコイル集束装置の線材コイルの切断に必要な機構よりも遥に簡単である。
【0033】
前記線材切断装置4のフック部4bと油圧式カッタ4cは、前記可動コンベヤ3の先端部に配設された、線材検知センサである図示しない光電管からの線材検知信号によって作動されるように構成されている。より詳しくは、予めフック作動シリンダ4aの伸縮ロッドは縮小しており、フック部4bは可動コンベヤ3から下流側コンベヤ5への圧延線材Wの落下に支障のない位置に退避している。そして、圧延線材Wの切断位置が近づいたことが検出され、可動コンベヤ3から下流側コンベヤ5に落下する圧延線材Wの線分の一部が検知されると、その検知信号が線材切断装置4に発信される。すると、フック作動シリンダ4aの伸縮ロッドが伸長作動され、落下する圧延線材Wの切断部位を含む線分の一部がフック部4bに引っ掛けられる。なお、圧延線材Wの切断位置は、圧延線材Wの先端からの長さ分が移動する時間、あるいは圧延線材Wの搬送距離で検出することも可能である。
【0034】
圧延線材Wの切断部位を含む線分の一部がフック部4bに引っ掛けられると同時に、引っ掛けられた圧延線材Wの切断部位を含む線分の一部がフック作動シリンダ4aの伸縮ロッドの縮小によって、油圧式カッタ4cの固定刃4eと可動刃4fの間に引寄せられる。
そして、刃作動シリンダ4gの作動によって圧延線材Wの切断部位を含む線分が固定刃4eと可動刃4fとによって切断されると、フック作動シリンダ4aの伸縮ロッドが縮小して、フック部材4bが可動コンベヤ3から下流側コンベヤ5への圧延線材Wの落下に支障のない位置に退避するように構成されている。
【0035】
次いで、可動コンベヤ3が圧延線材切断完了位置6bに到達すると同時に、可動コンベヤ3の待機位置6a側への移動が開始されるように構成されている。圧延線材Wの切断部位を含む線分の切断位置は、図5において楕円で囲んで示すように、斜めに傾斜した圧延線材Wの切断部位を含む線分の長手方向のほぼ中間位置である。なお、本実施の形態においては、油圧式カッタを用いたが、このような油圧式カッタに限らず、例えば、電動式カッタを用いることもできるから、油圧式カッタに限定されるものではない。
【0036】
また、前記下流側コンベヤ5の下流側に、圧延線材Wの先端部、後端部を切断した先端クロップや、後端クロップを処理するクロップ処理装置(図示省略)が設けられている。
このクロップ処理装置は、アーム回動装置と、このアーム回動装置で水平方向に回動されて、圧延線材Wの先端クロップおよび後端クロップを下流側コンベヤ5の1側に押して、この下流側コンベヤ5の1側に設けられたクロップ入れ(図示省略)に入れるクロップ除去アームを備えてなる構成になっている。
【0037】
以下、上記構成になる線材搬送コンベヤ1の作用態様を、図6乃至10を参照しながら説明する。先ず、図6において、可動コンベヤ3は待機位置6aに位置しており、図示しない線材巻取り機(レイングリール)によって螺旋状に成形された圧延線材Wが上流側コンベヤ2により搬送速度V1で搬送されている。このとき、可動コンベヤ3の搬送ローラ3a,下流側コンベヤ5の搬送ローラ5aは、圧延線材Wを搬送速度V1で搬送し得るように回転駆動されている。
【0038】
図7において、可動コンベヤ3は待機位置6aに位置しており、上流側コンベヤ2により搬送速度V1で搬送されている圧延線材が可動コンベヤ3に至り、この可動コンベヤ3により搬送速度V1で搬送されと共に、この可動コンベヤ3により搬送速度V1で搬送されている圧延線材が下流側コンベヤ5に至り、この下流側コンベヤ5により搬送速度V1で搬送されている。可動コンベヤ3から圧延線材W(リング状)の切断部位を含む線分の一部が下流側コンベヤ側に落下し、そして圧延線材Wの落下ピッチが長くなったタイミングを見計らってフック作動シリンダ4aの伸縮ロッドの伸長作動によりフック部4bを伸長させて、フック部4bに圧延線材Wを載せて引込む。
【0039】
図8において、台車駆動装置32の駆動により、可動コンベヤ3の下流側コンベヤ5方向への移動が開始される。可動コンベヤ3の移動開始と同時にローラ駆動装置33による搬送ローラ3aの回転速度が可動コンベヤ3の下流側コンベヤ5方向への移動速度の加速に応じて減速され、可動コンベヤ3上の圧延線材Wの搬送速度が上流側コンベヤ2、下流側コンベヤ5による圧延線材Wの搬送速度と同速度になるように制御される。そして、可動コンベヤ3が圧延線材切断完了位置6bに到達するまでの間に、フック部4bで引込まれた圧延線材Wが線材切断装置4の油圧式カッタ4cの固定刃4eと可動刃4fで切断される。圧延線材Wの切断が完了すると、フック部材4bが可動コンベヤ3から下流側コンベヤ5への圧延線材Wの落下に支障のない位置に退避すると共に、可動コンベヤ3は圧延線材切断完了位置6bに到達するまで、圧延線材切断完了位置6bに向って移動される。
【0040】
ところで、実際には圧延線材Wの落下ピッチが速く、フック部4bを伸長させる速度とタイミングとを調整する必要があるため、具体的には、下記(1)、(2)項に記載の方法により圧延線材Wが引込まれる。
(1)圧延線材Wの切断位置が可動コンベヤ3の直前に来たら可動コンベヤ3の移動を開始し、可動コンベヤ3の移動速度を加速することにより、圧延線材Wの落下ピッチを長くする。そして、圧延線材Wの落下ピッチが長くなったタイミングを見計らって、この間にフック部4bを伸長させ、圧延線材Wを引っ掛けて引込む。
(2)可動コンベヤ3の移動中にフック部4bを伸長させ、その後に僅かに可動コンベヤ3の搬送ローラ3aを駆動して、この搬送ローラ3aの駆動により圧延線材Wを移動させて、圧延線材Wの1リング分のみを落下させてから引込む。
【0041】
なお、圧延線材Wを切断するためのフック部4bによる圧延線材Wの引込方法について上記の2方法を例示したが、圧延線材Wの落下ピッチとフック部4bの伸長のタイミングを考慮した方法としては、これら2方法に限定されるものではない。また、可動コンベヤ3の圧延線材切断完了位置6bの方向への移動速度を、圧延線材の搬送速度V1より低速になるように制御するのが好ましい。これにより、可動コンベヤ3のシフトストロークを短くすることができるから、線材搬送コンベヤ1のコンパクト化、コスト低減に寄与することができる。
【0042】
例えば、可動コンベヤ3の移動距離は、圧延線材の搬送速度と切断処理所要時間とによって決定される。いま、圧延線材Wの搬送速度が1m/sであり、そして切断処理所要時間が10sであるとすると、可動コンベヤ3の移動距離は10mである。従って、可動コンベヤ3の移動距離を短くするためには、可動コンベヤ3の移動速度を圧延線材Wの搬送速度よりも低速に設定すればよい。この時、下流側コンベヤ5も同様に搬送速度を低速に設定する。すると、可動コンベヤ3上の圧延線材Wの密度が高くなるが、この可動コンベヤ3停止時の搬送ローラ3aによる回転速度を、この可動コンベヤ3の移動速度と同等にし、下流側コンベヤ5の搬送速度を上流側コンベヤ2の搬送速度と同等にすれば、圧延線材Wが下流側コンベヤ5に乗り移ったときに、上流側コンベヤ2上における密度と同密度になるため、何の支障もない。
【0043】
図9において、可動コンベヤ3が圧延線材切断完了位置6bに到達すると、台車駆動装置32の駆動停止によって可動コンベヤ3が停止される(可動コンベヤ3の移動速度が0となる。)。そして、この可動コンベヤ3の停止と同時に下流側コンベヤ5の圧延線材Wの搬送速度がΔVだけ増速(V1+ΔV)される一方、ローラ駆動装置33により搬送ローラ3aが圧延線材Wを下流側コンベヤ5の方向に搬送速度V1で搬送するべく正回転される(ローラ周速は、圧延線材Wの絶対速度(搬送速度)に等しい。)。下流側コンベヤ5の圧延線材Wの搬送速度の増速(V1+ΔV)により、圧延線材Wの切断前後の先行材と後行材との間隔が広がるため、下流側コンベヤ5上での先端クロップ、後端クロップの処理作業が容易になるという効果が得られる。また、圧延線材Wの中間を切断する場合、先行材が線材集束装置の集積タブに入った時点での上流側分割材の停止タイミングが取り易くなるという効果も得られる。
【0044】
圧延線材切断完了位置6bでの圧延線材Wの切断終了後に可動コンベヤ3が待機位置6aへ復帰する工程を示す図10において、可動コンベヤ3の上流側コンベヤ2側の待機位置6aの方向への復帰(移動)が移動速度V2で開始される。この可動コンベヤ3の待機位置6aの方向への移動速度の加速に応じて、搬送ローラ3aの回転速度が増速され、この増速により搬送速度V3(V3>V2)の速度で下流側コンベヤ5の方向に圧延線材Wが搬送され、移動中を通じて可動コンベヤ3上の圧延線材Wの下流側コンベヤ5方向への搬送速度(V3−V2)が上流側コンベヤ2および下流側コンベヤ5による圧延線材Wの搬送速度V1と同速度になるように制御される。そして、可動コンベヤ3が待機位置6aに戻ると停止され、搬送ローラ3aの回転速度が上流側コンベヤ2による圧延線材Wの搬送速度V1と同速度になるように制御されると共に、下流側コンベヤ5の圧延線材Wの搬送速度が可動コンベヤ3および上流側コンベヤ5と同様の搬送速度V1になるように制御される。これにより、圧延線材Wの切断部位を含む線分の1切断工程が終了する。前記可動コンベヤ3の移動速度およびこの可動コンベヤ3の搬送ローラ3aのローラ周速を制御することにより、圧延線材Wの搬送速度を上流側コンベヤ2および下流側コンベヤ5上での圧延線材Wの搬送速度と同速度にすることができる。
即ち、
(1)可動コンベヤ3前進(図9の左側へのシフト)時における、圧延線材Wの搬送速度を全てのコンベヤ上で同じ搬送速度V1とするために、可動コンベヤ3の搬送ローラ3aのローラ周速を可動コンベヤ3の下流側への移動(前進)速度に対応する速度分だけ減じたローラ周速とすることによって、圧延線材Wの搬送速度がV1となるように制御するものである。
一方
(2)可動コンベヤ3後進(図10の右側へのシフト)時における、圧延線材Wの搬送速度を全てのコンベヤ上で同じ搬送速度V1とするために、可動コンベヤ3の搬送ローラ3aのローラ周速を可動コンベヤ3の上流側への移動(後進)速度V2に対応する速度分だけ増加したローラ周速とすることによって、圧延線材Wの搬送速度がV1となるように制御するものである。(図10では、搬送速度V1=V3−V2の関係を満足するように、移動速度V2、可動コンベヤ3上の圧延線材Wの搬送速度(ローラ周速)V3が調整される。)。
【0045】
本発明の実施の形態に係る線材搬送コンベヤ1によれば、上記のとおり、可動コンベヤ3上において、この可動コンベヤ3に対して停止している圧延線材Wを、可動コンベヤ3に設けられた線材切断装置4で切断することができるため、圧延線材Wの切断作業能率が優れている。そして、搬送を停止することなく、圧延線材Wの先端クロップ、後端クロップの切断、圧延線材Wの中間部における切断を行うことができ、圧延線材Wの線材集束装置の集束タブへの取込速度を略一定に保持することができるため、コイルの変形を防止することができる。また、上記のとおり、可動コンベヤ3に対して停止している圧延線材Wを切断するため、切断部の断面がほぼ平坦となり、後工程において引っ掛かりの問題が生じるようなことがない。
【0046】
また、本発明の実施の形態に係る線材搬送コンベヤ1では、圧延線材Wの切断が完了した後、前記可動コンベヤ3を待機位置6aに戻すときに、この可動コンベヤ3の複数の搬送ローラ3aによる搬送速度を上流側コンベヤ2の複数の搬送ローラ2a、および下流側コンベヤ5の複数の搬送ローラ5aによる搬送速度と見かけ上同速度になるように制御される。従って、可動コンベヤ3が上流側コンベヤ3の方向に移動している最中であっても、上流側コンベヤ2や下流側コンベヤ5と同じ搬送速度で圧延線材Wを下流側コンベヤ5の方向に搬送することができ、圧延線材Wの搬送速度が低下するようなことがないから、線材コイルの生産性が低下するようなことがない。
【0047】
ところで、以上では、本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤ1が、何れも搬送ローラを備えた上流側コンベヤ2、可動コンベヤ3、および下流側コンベヤ5によって構成されている場合を例として説明した。しかしながら、搬送ローラを備えたコンベヤからなる構成に限らず、例えば、上流側コンベヤ、可動コンベヤ、および下流側コンベヤが何れもチェーンコンベヤであったとしても、搬送ローラを備えたコンベヤと同等の効果を得ることができる。従って、上記実施の形態に係る構成の線材搬送コンベヤ1に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内における設計変更等は自由自在である。
【0048】
また、以上では、本発明の実施の形態に係る線材搬送コンベヤ1によりハーフサイズの線材コイルを製造する場合を例として説明した。しかしながら、特にハーフサイズの線材コイルの製造に限ることなく、例えば、1/3サイズの線材コイル、任意のサイズの線材コイルを製造することも可能である。従って、ハーフサイズの線材コイルを製造に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係り、線材圧延設備の線材搬送コンベヤの平面図である。
【図2】図1をA方向から見た模式的側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係り、線材圧延設備の線材搬送コンベヤ線材搬送コンベヤの線材切断装置の構成説明図である。
【図4】図3のB矢視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係り、圧延線材の切断位置説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの作動説明図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの作動説明図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの作動説明図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの作動説明図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの作動説明図である。
【図11】従来例1に係るコイル集束装置による切断制御方法を示す概念図である。
【図12】従来例2に係り、コイル成形場所で、切断端を曲げたり歪ませたりすることなく圧延材をトリミング、切断あるいはトリミングおよび切断する装置の垂直断面説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1…線材搬送コンベヤ
2…上流側コンベヤ,2a…搬送ローラ
3…可動コンベヤ,31…走行台車,32…台車駆動装置(電動モータ),33…ローラ駆動装置,3a…搬送ローラ,3b…前輪,3c…後輪
4…線材切断装置,4a…フック作動シリンダ,4b…フック部,4c…油圧式カッタ,4d…刃保持部材,4e…固定刃,4f…可動刃,4g…刃作動シリンダ
5…下流側コンベヤ,5a…搬送ローラ
6…レール,6a…待機位置,6b…圧延線材切断完了位置
L…作業床
W…圧延線材
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材巻取り機により螺旋状に形成された圧延線材を線材集束装置まで搬送する線材圧延設備の線材搬送コンベヤおよびその線材搬送コンベヤにおける線材切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
線材圧延設備は、例えば鋼片を直径5.5から22mm程度の寸法の線材に圧延し、圧延された圧延線材をレイングリールにより螺旋状に形成し、ループコンベヤで搬送しながら冷却する。このループコンベヤの出口には線材集束装置が設けられており、先端部と後端部とが先端クロップ、後端クロップとして切断された後に前記線材集束装置によりコイル状に束ねられて、線材コイルとして次工程に送られるようになっている。ところで、通常、2トンの線材コイルを製造している工場が、1トンの線材コイルが欲しいというユーザの要望に応えるためには、下記のような方法を採らなければならない。
(1)1トンの線材コイルを圧延し得る鋼片を用いる。
(2)圧延の途中でクロップシャーにより2分割する。
(3)線材コイルとした後に2分割する。
【0003】
1トンの線材コイルを圧延し得る鋼片を用いる場合には、加熱炉の点で対応できない場合があり、また、たとえ対応できたとしても生産能力が低下し、コスト的に不利になる。
また、圧延の途中でクロップシャーによって2分割する場合には、先行材と後行材の圧延速度を変える制御が必要であり、圧延途中の大断面時の切断であるため分割精度が悪くなり、線材コイルの重量がばらつくという問題が生じる。さらに、線材コイルに形成した後に2分割する場合には、圧延線材の中間部を探す必要があり、効率が悪いという問題が生じる。そのため、このような問題を解決し得るようにした圧延線材の切断に係る技術が提案されている。線材圧延設備における線材切断に係る技術としては、例えば後述する構成になるものが公知である。以下、典型的な線材圧延設備の圧延線材の切断に係る従来技術の概要を説明する。
【0004】
先ず、従来例1に係るコイル集束装置による切断制御方法を、その概念図の図11を参照しながら説明する。即ち、フルコイル生産設備でハーフコイルを切換え生産するには、コイル成形の適宜時点でアイリス58に閉の指令が出されるが、その指令が出される前に、第1のコンベヤ53のフィードチェーン52を数秒ストップさせる。その結果、テーブルローラ51から運ばれてくる、螺旋状に展開された線材54はフィードチェーン52上に貯えられる。そのとき、テーブルローラ51とフィードチェーン52との間には段差があるので、重合によってある程度の線材量が貯えられる。その結果、集束タブ55内の垂れ下がる線材54bは、確実に1本のみとなるので、かかる状態(第1のコンベヤ53が停止した1秒後)でアイリス58を閉にすれば、確実にコイルの仕分けを行うことができる、次いで、第1のコンベヤ53を起動する前に下段の定心用心棒57を下降させた後に、線材54をかき取りタブシャーにより挟み切りを行う。この場合、フルコイル生産設備からハーフコイルを生産する際の制御方法を説明しているが、1/3コイルや、任意の量のコイルの生産にも適用することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
従来例2に係るものは、コイル成形場所で、切断端を曲げたり歪ませたりすることなく圧延材をトリミング、切断あるいはトリミングおよび切断する装置である。以下、この従来例1に係る装置を、その垂直断面説明図の図12を参照しながら説明する。コイル形成装置81は、収集用心金83の上方にこれと同心に配置された円筒状再形成室82を備えている。この再形成室82の上端部は、順次中心がずれた状態で重なり合った製品リングを運ぶ移動コンベヤの送出端に近接して配置されている。心金83は再形成室82の底部端の下方に配置されている。また、複数の分離フィンガー84が再形成室82の周囲に取付けられていて、これらの分離フィンガーは再形成室内のリングの落下通路内に出入り自在となっている。分離フィンガー84が作動位置に進められたとき、これらの分離フィンガーは再形成室を通って落下する線材リングの落下を阻止し、心金83の周囲に既に堆積したリング85を再形成室内に垂直に落下し続けるリング86から分離する。
【0006】
複数本のレバーは、それぞれ再形成室82の外側に位置する軸の回りに回転自在に枢着されている。各レバーにはそれぞれ鎌形の捕捉腕88が連結されている。各捕捉腕の鎌形凹部の基部には切断刃89が取付けられている。レバーとその捕捉腕88は、通常の非作動時には、再形成室82内のコイル落下通路の外側に位置する。レバーは、リンクにより回動自在に相互に連結されており、ピストンシリンダーによって作動するようになっている。固定切断刃は、再形成室82の底部端に、リングの落下通路のまわりに同一円周上に、互いに離隔して取付けられている。これらの固定切断刃は、切断刃89とそれが取付けられている作業腕のそれぞれに1つの固定切断刃が対応し、それぞれ各切断刃89と相補作動するように配置されている。
【0007】
心金83の周囲に所定量の線材リングが堆積すると、レバーの後退により再形成室から引っ込められていた分離フィンガー84が作動位置に突出される。以降は、リングは一時的に分離フィンガー84上に堆積する。これらのリングのうち第1番目のリングは、下方の心金83の周囲に堆積したリングの最後のリングと1本の線材によりつながっている。
この線材の連結部は、ピストンシリンダーを作動させて、レバーを作動位置に移動させることによって切断される。この移動の間に、捕捉腕88は、再形成室82の底部端のわずかに下方の、分離用フィンガー84からは十分下方の平面を、リングの落下通路を横切って掃行する。捕捉腕88の配置、形状および大きさは、捕捉腕のうちのどれか一つが線材連結部を捕捉し、それを再形成室82により規定されるリングの落下通路の周縁部に引き寄せるべく設定されている。線材連結部は引き寄せられつつあるとき捕捉腕88の切断刃89に当接するために、この切断刃89と固定切断刃とによって線材連結部が切断される(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
従来例3に係るものは、熱間圧延された線材からコイル形成機によって形成され、連続する一連の巻線の形で巻線搬送装置上に置かれ、この置かれた一連の巻線を分離するための方法と装置である。より詳しくは、終端巻線と始端巻線は一連の巻線から隔離され、センサとコンピュータを介して制御される分離装置に供給される。終端巻線と始端巻線を一連の巻線から隔離して分離装置に供給するのは、分離を所定の領域に制限することと、分離装置の移動通路と分離時間を短縮することであり、そのために、連続する一連の巻線の終端巻線と始端巻線は、切断装置(この切断装置は巻線を分離する分離装置の一部を形成している)によって分離される。連続する一連の巻線の終端巻線と始端巻線は2箇所で中央巻線から分離され、分離された試験片は捕集装置に供給される。前記切断装置は中央巻線を保持することによって終端巻線と始端巻線を分離し、これら巻線を、巻線搬送装置上に定置され、屑搬送装置に降ろすエゼクタに送るように構成されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平2−112824号公報
【特許文献2】特公昭58−5134号公報
【特許文献3】特表平8−506274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来例1に係るコイル集束装置における切断制御方法は、第1のコンベヤ53を起動する1秒後前に下段の定心用心棒57を下降させた後、線材54をかき取りタブシャーにより挟み切ることにより、フルコイル生産設備からハーフコイル、1/3コイル等を生産することができる。但し、極端に短い先後端のクロップの切断や、クロップの取出しは困難である。この従来例1は、コイルを仕分けするためのアイリスは複数本の鎌形のコイル保持腕を備えており、これらコイル保持腕の作動構成が複雑であるのに加えて、このアイリスの直下に設けられる複数の位置決め腕からなるタブシャーの作動構成も複雑である。つまり、線材コイルの切断に必要な機構が複雑にならざるを得ず、設備自体が高価にならざるを得ないという経済上の問題がある。加えて、切断部がとがり、切断後に引っ掛かり易く、後面設備でのトラブルが多い。また、作業者の安全性等にも問題がある。
【0010】
上記従来例2に係るコイル集束装置は、切断端を曲げたり歪ませたりすることなく圧延線材をトリミング、切断あるいはトリミングおよび切断する装置である。ところで、この従来例2に係るコイル集束装置の構成は上記従来例1に係る装置の構成と類似であるから、制御の仕方によっては、ハーフ線材コイル、1/3線材コイル、任意の量の線材コイルも生産することができると考えられる。しかしながら、従来例2に係るコイル集束装置の場合は、再形成室を通って落下する線材リングの落下を阻止する分離フィンガーが必要であるのに加えて、切断刃を保持する作業腕の構成、作動構成が複雑であるから、従来例1の場合と同様の問題がある。
【0011】
上記従来例3に係る巻線を分離するための方法および装置は、搬送中の巻線を切断するものであり、巻線の搬送を、コンピュータを介してその速度と抵抗に依存して追跡し、切断時に巻線の搬送速度を可変にすることが示唆されている。つまり、巻線の切断時に巻線の搬送速度を低速にするため、搬送速度低下に伴う生産性の低下を回避することができないという問題がある。
【0012】
従って、本発明の目的は、フルコイル生産設備からハーフ線材コイル、1/3線材コイル、任意の量の線材コイルも生産することができ、しかも線材コイルの生産性に優れた線材圧延設備の線材搬送コンベヤおよびその線材搬送コンベヤにおける線材切断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、従って上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤが採用した手段は、線材巻取り機により螺旋状に成形された圧延線材を線材集束装置まで搬送する線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおいて、前記圧延線材の搬送方向と直交する方向に段差が形成されるように配置された上流側コンベヤおよび下流側コンベヤと、これら上流側コンベヤと下流側コンベヤとの間に形成された段差を埋めるように配設され、圧延線材の搬送方向と平行な方向に往復移動可能な可動コンベヤと、この可動コンベヤの下流側端部に設けられ、圧延線材を切断する線材切断装置と、可動コンベヤに設けられ、線材切断装置による圧延線材の切断時に可動コンベヤ上の圧延線材をこの可動コンベヤに対して停止させるように、この可動コンベヤの下流側方向への移動を制御する駆動装置とを備えてなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項2に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤが採用した手段は、請求項1に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおいて、前記駆動装置は、可動コンベヤを上流側コンベヤ寄りの待機位置と、下流側コンベヤ寄りの圧延線材切断完了位置との間の切断領域を往復移動可能に制御する機能を備えてなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項3に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤが採用した手段は、請求項2に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおいて、前記上流側コンベヤ、下流側コンベヤおよび可動コンベヤは、それぞれ圧延線材を搬送する搬送ローラを備えてなり、前記駆動装置は、可動コンベヤが待機位置に待機しているときには可動コンベヤを停止させると共に、搬送ローラによる圧延線材の搬送速度を上流側コンベヤおよび下流側コンベヤの搬送速度と同期させる一方、可動コンベヤを待機位置から圧延線材切断完了位置に移動させながら可動コンベヤの搬送ローラの停止状態を維持することにより、線材切断装置による圧延線材の切断を実行可能とするように制御する機能を備えてなることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項4に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤが採用した手段は、請求項2に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおいて、前記駆動装置は、圧延線材の切断終了後に前記可動コンベヤを待機位置に戻すときに、この可動コンベヤの搬送ローラによる搬送速度を上流側コンベヤおよび下流側コンベヤの搬送ローラによる搬送速度と見かけ上同じになるように制御する機能を備えてなることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項5に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤが採用した手段は、請求項2乃至4のうちの何れか一つの項に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおいて、前記可動コンベヤを圧延線材切断完了位置に移動させるときの移動速度が、圧延線材の搬送速度よりも低速に制御されるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項6に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤが採用した手段は、請求項2乃至5のうちの何れか一つの項に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおいて、圧延線材の切断終了後に、前記下流側コンベヤの搬送速度が、前記上流側コンベヤの圧延線材の搬送速度よりも高速に制御されるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項7に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法が採用した手段は、線材巻取り機により螺旋状に成形された圧延線材の搬送方向と直交する方向に段差が形成されるように配置された上流側コンベヤおよび下流側コンベヤと、これら上流側コンベヤと下流側コンベヤとの間に形成された段差を埋めるように配設され、圧延線材の搬送方向と平行な方向に往復移動可能な可動コンベヤと、この可動コンベヤの下流側端部に設けられ、圧延線材を切断する線材切断装置とを備えてなり、圧延線材を線材集束装置まで搬送する線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法であって、前記上流側コンベヤ側の待機位置で可動コンベヤにより上流側コンベヤから圧延線材を受取って下流側コンベヤの方向に搬送し、圧延線材の切断部位を含む線分の一部が下流側コンベア側に落下すると、可動コンベヤの下流側コンベヤ方向への移動開始に合わせて、可動コンベヤ上の圧延線材の搬送速度が上流側コンベヤおよび下流側コンベヤによる圧延線材の搬送速度と略同速度になるように制御しながら、可動コンベヤが圧延線材切断完了位置に到達するまでの間に、線材搬送コンベヤに隣接して設けられた捕捉部材により受け止めた切断部位を含む線分を線材切断装置により切断することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項8に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法が採用した手段は、請求項7に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法において、前記可動コンベヤ上の圧延線材を可動コンベヤに対して停止させると共に、可動コンベヤが圧延線材切断完了位置に到達するまでの間に、捕捉部材により受け止めた切断部位を含む線分を線材切断装置により切断することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1乃至6に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤおよび本発明の請求項7または8に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法によれば、可動コンベヤ上において、この可動コンベヤに対して停止している圧延線材を、可動コンベヤに設けられた線材切断装置で切断することができるため、圧延線材の切断作業能率が優れている。そして、圧延線材の搬送を停止することなく、先端クロップ、後端クロップの切断、中間部における切断を行うことができ、圧延線材の線材集束装置への取込速度を一定に保持することができるため、コイルの変形を防止することができる。また、上記のとおり、可動コンベヤに対して停止している圧延線材を切断するため、切断部の断面がほぼ平坦となり、後工程において引っ掛かりの問題が生じるようなことがない。
【0022】
本発明の請求項4に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤでは、圧延線材の切断終了後に前記可動コンベヤを待機位置に戻すときに、この可動コンベヤの搬送ローラによる搬送速度を上流側コンベヤおよび下流側コンベヤの搬送ローラによる搬送速度と見かけ上同じになるように制御される。従って、可動コンベヤが上流側コンベヤの方向に移動していても、上流側コンベヤや下流側コンベヤと同じ搬送速度で圧延線材を下流側コンベヤの方向に搬送することができ、搬送速度が低下することがないから、線材コイルの生産性が低下するようなことがない。
【0023】
本発明の請求項5に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤによれば、可動コンベヤを圧延線材切断完了位置に移動させるときの可動コンベヤの移動速度が、圧延線材の搬送速度よりも低速になるように制御される。従って、可動コンベヤのシフトストロークを短くすることができるから、線材搬送コンベヤのコンパクト化、コスト低減に寄与することができる。
【0024】
本発明の請求項6に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤでは、圧延線材の切断終了後に、下流側コンベヤの搬送速度が上流側コンベヤの搬送速度よりも高速に制御される。従って、下流側コンベヤ上において、分割された圧延線材間隔が開き、後工程における線材コイルの集積に支障が生じるようなことがなく、また圧延線材の先端側のクロップや後端側のクロップの処理を容易に行うことができる。さらに、圧延線材を中間で切断する場合、先端クロップが線材集束装置の集積タブ(クロップ入れ)に入った時点における上流側分割材の停止タイミングが取り易くなるため、集積タブでの分離が安定するといった効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の線材切断方法を実施する実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤを、添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの平面図、図2は図1をA方向から見た模式的側面図、図3は本発明の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの線材切断装置の構成説明図、図4は図3のB矢視図、図5は圧延線材の切断位置説明図、図6乃至図10は本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの作動説明図である。
【0026】
本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの構成を、図1乃至図5を参照しながら説明する。図に示す符号1は線材搬送コンベヤで、この線材搬送コンベヤ1は、図示しない線材巻取り機(レイングリール)により螺旋状に成形された圧延線材Wを図示しない線材集束装置までループ状で搬送するものである。この線材搬送コンベヤ1は、前記線材巻取り機から供給され、螺旋状に成形された圧延線材Wを搬送する複数の搬送ローラ2aを備えた上流側コンベヤ2と、この上流側コンベヤ2から受取った圧延線材Wを中継搬送する複数の搬送ローラ3aを備え、かつ圧延線材Wを切断する線材切断装置4を備えた可動コンベヤ3と、この可動コンベヤ3から受取った圧延線材Wを線材集束装置まで搬送する複数の搬送ローラ5aを備えた下流側コンベヤ5とから構成されている。
【0027】
前記下流側コンベヤ5は、前記上流側コンベヤ2の先端の前方、つまり圧延線材Wの搬送方向に所定の間隔を隔て、かつ圧延線材Wの搬送方向と直交する方向に段差が形成されるように設けられている。この段差は、図2に示すように、上流側コンベヤ2と、この上流側コンベヤ2の下流側に位置する下流側コンベヤ5との間に形成されている。そして、これら上流側コンベヤ2と下流側コンベヤ5との間に上面が上流側コンベヤ2より下位に位置し、かつ下面が下流側コンベヤ5より上位に位置する可動コンベヤ3が配設されている。
【0028】
前記可動コンベヤ3は、走行台車31を備えている。この走行台車31の上部側に前記複数の搬送ローラ3aが設けられ、下部側に、作業床Lに敷設されてなるレール6の転動面を転動する一対の自由回転する前輪3bと、前記レール6の転動面を転動し、図示しないコントローラからの制御指令信号によって回転方向および回転速度が自在に制御される電動モータからなる台車駆動装置(駆動装置)32により駆動される一対の後輪3cとが設けられている。
【0029】
即ち、この可動コンベヤ3は、台車駆動装置32で一対の後輪3cが駆動されることにより、上流側コンベヤ2側の待機位置6aから下流側コンベヤ5側の圧延線材切断完了位置6bとの間で速度変更自在に往復移動されるように(図中、左右方向にシフト可能なように)構成されている。また、可動コンベヤ3の複数の搬送ローラ3aは、走行台車31の台車駆動装置32の反対側、つまり圧延線材Wの搬送方向側に向って見たときに走行台車31の左側に設けられた電動モータからなるローラ駆動装置33によって速度変更自在に回転されるように構成されている。なお、本実施の形態においては、走行台車31の移動させる台車駆動装置32として電動モータを用いたが、これに限らず、例えば油圧モータや油圧シリンダを用いることができるから、電動モータに限定されるものではない。
【0030】
前記上流側コンベヤ2、可動コンベヤ3、および下流側コンベヤ5の作動は、下記のように制御される。
(1)可動コンベヤ3が待機位置6aにあって停止しているときには、上流側コンベヤ2の搬送ローラ2a、下流側コンベヤ5の搬送ローラ5aと同回転速度で回転される。
(2)可動コンベヤ3の複数の搬送ローラ3aは、この可動コンベヤ3が待機位置6a側から圧延線材切断完了位置6b側に移動(シフト)しているときは、移動速度(シフト速度)に応じて次第に回転速度が減速され、上流側コンベヤ2による圧延線材Wの搬送速度と略同速度(以下、同速度と記載がある場合には、実質的に同速度であることを包含している。)になるように制御される。圧延線材Wの切断部位を含む線分が切断されると、圧延線材Wの先行材と後行材との間の間隔を開けるために、下流側コンベヤ5の搬送速度が増速される。
(3)圧延線材Wの切断終了後に、圧延線材Wの搬送基側への逆走行により圧延線材切断完了位置6b側から待機位置6a側に戻るときには、圧延線材Wの搬送速度が見かけ上、上流側コンベヤ2と下流側コンベヤ5とによる圧延線材Wの搬送速度と同搬送速度になるように、可動コンベヤ3の複数の搬送ローラ3aの回転速度が増速される。
【0031】
換言すれば、この可動コンベヤ3の前進中、後進中、あるいは停止中の如何にかかわらず、通常は、この可動コンベヤ3上の圧延線材Wは、上流側コンベヤ2と下流側コンベヤ5とによる圧延線材Wの搬送速度と同速度で下流側コンベヤ5の方向に搬送されるように構成されている。
【0032】
前記走行台車31の下流側コンベヤ5側の先端部には,コンベヤの中心方向に突出するフック作動シリンダ4aを有する線材切断装置4が設けられている。前記フック作動シリンダ4aは、圧延線材の捕捉部材である後述するフック部4bを作動させるものである。
なお、フック作動シリンダ4aは、可動コンベヤ3に隣接すると共に、切断位置近傍に切断装置4と個別に設けられていてもよい。前記線材切断装置4は、図3,4に示すように、前記フック作動シリンダ4aの伸縮ロッドの先端に、可動コンベヤ3から下流側コンベア側に落下する圧延線材Wの切断部位を含む線分の一部を引っ掛けて引寄せるフック部4bが設けられている。そして、前記フック作動シリンダ4aの外側面側に、前記フック部4bにより引き寄せられた圧延線材Wの切断部位を含む線分を切断する油圧式カッタ4cが設けられている。油圧式カッタ4cは、フック作動シリンダ4aの外側面側に固着される刃保持部材4dと、この刃保持部材4dの先端側に設けられた固定刃4eと、この固定刃4eの刃に対峙する位置に設けられ、刃作動シリンダ4gにより固定刃4eに対して接近、離反する可動刃4fとから構成されている。以上の説明から良く理解されるように、本発明の形態に係る線材切断装置4の構成は上記従来例1,または2に係るコイル集束装置の線材コイルの切断に必要な機構よりも遥に簡単である。
【0033】
前記線材切断装置4のフック部4bと油圧式カッタ4cは、前記可動コンベヤ3の先端部に配設された、線材検知センサである図示しない光電管からの線材検知信号によって作動されるように構成されている。より詳しくは、予めフック作動シリンダ4aの伸縮ロッドは縮小しており、フック部4bは可動コンベヤ3から下流側コンベヤ5への圧延線材Wの落下に支障のない位置に退避している。そして、圧延線材Wの切断位置が近づいたことが検出され、可動コンベヤ3から下流側コンベヤ5に落下する圧延線材Wの線分の一部が検知されると、その検知信号が線材切断装置4に発信される。すると、フック作動シリンダ4aの伸縮ロッドが伸長作動され、落下する圧延線材Wの切断部位を含む線分の一部がフック部4bに引っ掛けられる。なお、圧延線材Wの切断位置は、圧延線材Wの先端からの長さ分が移動する時間、あるいは圧延線材Wの搬送距離で検出することも可能である。
【0034】
圧延線材Wの切断部位を含む線分の一部がフック部4bに引っ掛けられると同時に、引っ掛けられた圧延線材Wの切断部位を含む線分の一部がフック作動シリンダ4aの伸縮ロッドの縮小によって、油圧式カッタ4cの固定刃4eと可動刃4fの間に引寄せられる。
そして、刃作動シリンダ4gの作動によって圧延線材Wの切断部位を含む線分が固定刃4eと可動刃4fとによって切断されると、フック作動シリンダ4aの伸縮ロッドが縮小して、フック部材4bが可動コンベヤ3から下流側コンベヤ5への圧延線材Wの落下に支障のない位置に退避するように構成されている。
【0035】
次いで、可動コンベヤ3が圧延線材切断完了位置6bに到達すると同時に、可動コンベヤ3の待機位置6a側への移動が開始されるように構成されている。圧延線材Wの切断部位を含む線分の切断位置は、図5において楕円で囲んで示すように、斜めに傾斜した圧延線材Wの切断部位を含む線分の長手方向のほぼ中間位置である。なお、本実施の形態においては、油圧式カッタを用いたが、このような油圧式カッタに限らず、例えば、電動式カッタを用いることもできるから、油圧式カッタに限定されるものではない。
【0036】
また、前記下流側コンベヤ5の下流側に、圧延線材Wの先端部、後端部を切断した先端クロップや、後端クロップを処理するクロップ処理装置(図示省略)が設けられている。
このクロップ処理装置は、アーム回動装置と、このアーム回動装置で水平方向に回動されて、圧延線材Wの先端クロップおよび後端クロップを下流側コンベヤ5の1側に押して、この下流側コンベヤ5の1側に設けられたクロップ入れ(図示省略)に入れるクロップ除去アームを備えてなる構成になっている。
【0037】
以下、上記構成になる線材搬送コンベヤ1の作用態様を、図6乃至10を参照しながら説明する。先ず、図6において、可動コンベヤ3は待機位置6aに位置しており、図示しない線材巻取り機(レイングリール)によって螺旋状に成形された圧延線材Wが上流側コンベヤ2により搬送速度V1で搬送されている。このとき、可動コンベヤ3の搬送ローラ3a,下流側コンベヤ5の搬送ローラ5aは、圧延線材Wを搬送速度V1で搬送し得るように回転駆動されている。
【0038】
図7において、可動コンベヤ3は待機位置6aに位置しており、上流側コンベヤ2により搬送速度V1で搬送されている圧延線材が可動コンベヤ3に至り、この可動コンベヤ3により搬送速度V1で搬送されと共に、この可動コンベヤ3により搬送速度V1で搬送されている圧延線材が下流側コンベヤ5に至り、この下流側コンベヤ5により搬送速度V1で搬送されている。可動コンベヤ3から圧延線材W(リング状)の切断部位を含む線分の一部が下流側コンベヤ側に落下し、そして圧延線材Wの落下ピッチが長くなったタイミングを見計らってフック作動シリンダ4aの伸縮ロッドの伸長作動によりフック部4bを伸長させて、フック部4bに圧延線材Wを載せて引込む。
【0039】
図8において、台車駆動装置32の駆動により、可動コンベヤ3の下流側コンベヤ5方向への移動が開始される。可動コンベヤ3の移動開始と同時にローラ駆動装置33による搬送ローラ3aの回転速度が可動コンベヤ3の下流側コンベヤ5方向への移動速度の加速に応じて減速され、可動コンベヤ3上の圧延線材Wの搬送速度が上流側コンベヤ2、下流側コンベヤ5による圧延線材Wの搬送速度と同速度になるように制御される。そして、可動コンベヤ3が圧延線材切断完了位置6bに到達するまでの間に、フック部4bで引込まれた圧延線材Wが線材切断装置4の油圧式カッタ4cの固定刃4eと可動刃4fで切断される。圧延線材Wの切断が完了すると、フック部材4bが可動コンベヤ3から下流側コンベヤ5への圧延線材Wの落下に支障のない位置に退避すると共に、可動コンベヤ3は圧延線材切断完了位置6bに到達するまで、圧延線材切断完了位置6bに向って移動される。
【0040】
ところで、実際には圧延線材Wの落下ピッチが速く、フック部4bを伸長させる速度とタイミングとを調整する必要があるため、具体的には、下記(1)、(2)項に記載の方法により圧延線材Wが引込まれる。
(1)圧延線材Wの切断位置が可動コンベヤ3の直前に来たら可動コンベヤ3の移動を開始し、可動コンベヤ3の移動速度を加速することにより、圧延線材Wの落下ピッチを長くする。そして、圧延線材Wの落下ピッチが長くなったタイミングを見計らって、この間にフック部4bを伸長させ、圧延線材Wを引っ掛けて引込む。
(2)可動コンベヤ3の移動中にフック部4bを伸長させ、その後に僅かに可動コンベヤ3の搬送ローラ3aを駆動して、この搬送ローラ3aの駆動により圧延線材Wを移動させて、圧延線材Wの1リング分のみを落下させてから引込む。
【0041】
なお、圧延線材Wを切断するためのフック部4bによる圧延線材Wの引込方法について上記の2方法を例示したが、圧延線材Wの落下ピッチとフック部4bの伸長のタイミングを考慮した方法としては、これら2方法に限定されるものではない。また、可動コンベヤ3の圧延線材切断完了位置6bの方向への移動速度を、圧延線材の搬送速度V1より低速になるように制御するのが好ましい。これにより、可動コンベヤ3のシフトストロークを短くすることができるから、線材搬送コンベヤ1のコンパクト化、コスト低減に寄与することができる。
【0042】
例えば、可動コンベヤ3の移動距離は、圧延線材の搬送速度と切断処理所要時間とによって決定される。いま、圧延線材Wの搬送速度が1m/sであり、そして切断処理所要時間が10sであるとすると、可動コンベヤ3の移動距離は10mである。従って、可動コンベヤ3の移動距離を短くするためには、可動コンベヤ3の移動速度を圧延線材Wの搬送速度よりも低速に設定すればよい。この時、下流側コンベヤ5も同様に搬送速度を低速に設定する。すると、可動コンベヤ3上の圧延線材Wの密度が高くなるが、この可動コンベヤ3停止時の搬送ローラ3aによる回転速度を、この可動コンベヤ3の移動速度と同等にし、下流側コンベヤ5の搬送速度を上流側コンベヤ2の搬送速度と同等にすれば、圧延線材Wが下流側コンベヤ5に乗り移ったときに、上流側コンベヤ2上における密度と同密度になるため、何の支障もない。
【0043】
図9において、可動コンベヤ3が圧延線材切断完了位置6bに到達すると、台車駆動装置32の駆動停止によって可動コンベヤ3が停止される(可動コンベヤ3の移動速度が0となる。)。そして、この可動コンベヤ3の停止と同時に下流側コンベヤ5の圧延線材Wの搬送速度がΔVだけ増速(V1+ΔV)される一方、ローラ駆動装置33により搬送ローラ3aが圧延線材Wを下流側コンベヤ5の方向に搬送速度V1で搬送するべく正回転される(ローラ周速は、圧延線材Wの絶対速度(搬送速度)に等しい。)。下流側コンベヤ5の圧延線材Wの搬送速度の増速(V1+ΔV)により、圧延線材Wの切断前後の先行材と後行材との間隔が広がるため、下流側コンベヤ5上での先端クロップ、後端クロップの処理作業が容易になるという効果が得られる。また、圧延線材Wの中間を切断する場合、先行材が線材集束装置の集積タブに入った時点での上流側分割材の停止タイミングが取り易くなるという効果も得られる。
【0044】
圧延線材切断完了位置6bでの圧延線材Wの切断終了後に可動コンベヤ3が待機位置6aへ復帰する工程を示す図10において、可動コンベヤ3の上流側コンベヤ2側の待機位置6aの方向への復帰(移動)が移動速度V2で開始される。この可動コンベヤ3の待機位置6aの方向への移動速度の加速に応じて、搬送ローラ3aの回転速度が増速され、この増速により搬送速度V3(V3>V2)の速度で下流側コンベヤ5の方向に圧延線材Wが搬送され、移動中を通じて可動コンベヤ3上の圧延線材Wの下流側コンベヤ5方向への搬送速度(V3−V2)が上流側コンベヤ2および下流側コンベヤ5による圧延線材Wの搬送速度V1と同速度になるように制御される。そして、可動コンベヤ3が待機位置6aに戻ると停止され、搬送ローラ3aの回転速度が上流側コンベヤ2による圧延線材Wの搬送速度V1と同速度になるように制御されると共に、下流側コンベヤ5の圧延線材Wの搬送速度が可動コンベヤ3および上流側コンベヤ5と同様の搬送速度V1になるように制御される。これにより、圧延線材Wの切断部位を含む線分の1切断工程が終了する。前記可動コンベヤ3の移動速度およびこの可動コンベヤ3の搬送ローラ3aのローラ周速を制御することにより、圧延線材Wの搬送速度を上流側コンベヤ2および下流側コンベヤ5上での圧延線材Wの搬送速度と同速度にすることができる。
即ち、
(1)可動コンベヤ3前進(図9の左側へのシフト)時における、圧延線材Wの搬送速度を全てのコンベヤ上で同じ搬送速度V1とするために、可動コンベヤ3の搬送ローラ3aのローラ周速を可動コンベヤ3の下流側への移動(前進)速度に対応する速度分だけ減じたローラ周速とすることによって、圧延線材Wの搬送速度がV1となるように制御するものである。
一方
(2)可動コンベヤ3後進(図10の右側へのシフト)時における、圧延線材Wの搬送速度を全てのコンベヤ上で同じ搬送速度V1とするために、可動コンベヤ3の搬送ローラ3aのローラ周速を可動コンベヤ3の上流側への移動(後進)速度V2に対応する速度分だけ増加したローラ周速とすることによって、圧延線材Wの搬送速度がV1となるように制御するものである。(図10では、搬送速度V1=V3−V2の関係を満足するように、移動速度V2、可動コンベヤ3上の圧延線材Wの搬送速度(ローラ周速)V3が調整される。)。
【0045】
本発明の実施の形態に係る線材搬送コンベヤ1によれば、上記のとおり、可動コンベヤ3上において、この可動コンベヤ3に対して停止している圧延線材Wを、可動コンベヤ3に設けられた線材切断装置4で切断することができるため、圧延線材Wの切断作業能率が優れている。そして、搬送を停止することなく、圧延線材Wの先端クロップ、後端クロップの切断、圧延線材Wの中間部における切断を行うことができ、圧延線材Wの線材集束装置の集束タブへの取込速度を略一定に保持することができるため、コイルの変形を防止することができる。また、上記のとおり、可動コンベヤ3に対して停止している圧延線材Wを切断するため、切断部の断面がほぼ平坦となり、後工程において引っ掛かりの問題が生じるようなことがない。
【0046】
また、本発明の実施の形態に係る線材搬送コンベヤ1では、圧延線材Wの切断が完了した後、前記可動コンベヤ3を待機位置6aに戻すときに、この可動コンベヤ3の複数の搬送ローラ3aによる搬送速度を上流側コンベヤ2の複数の搬送ローラ2a、および下流側コンベヤ5の複数の搬送ローラ5aによる搬送速度と見かけ上同速度になるように制御される。従って、可動コンベヤ3が上流側コンベヤ3の方向に移動している最中であっても、上流側コンベヤ2や下流側コンベヤ5と同じ搬送速度で圧延線材Wを下流側コンベヤ5の方向に搬送することができ、圧延線材Wの搬送速度が低下するようなことがないから、線材コイルの生産性が低下するようなことがない。
【0047】
ところで、以上では、本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤ1が、何れも搬送ローラを備えた上流側コンベヤ2、可動コンベヤ3、および下流側コンベヤ5によって構成されている場合を例として説明した。しかしながら、搬送ローラを備えたコンベヤからなる構成に限らず、例えば、上流側コンベヤ、可動コンベヤ、および下流側コンベヤが何れもチェーンコンベヤであったとしても、搬送ローラを備えたコンベヤと同等の効果を得ることができる。従って、上記実施の形態に係る構成の線材搬送コンベヤ1に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内における設計変更等は自由自在である。
【0048】
また、以上では、本発明の実施の形態に係る線材搬送コンベヤ1によりハーフサイズの線材コイルを製造する場合を例として説明した。しかしながら、特にハーフサイズの線材コイルの製造に限ることなく、例えば、1/3サイズの線材コイル、任意のサイズの線材コイルを製造することも可能である。従って、ハーフサイズの線材コイルを製造に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係り、線材圧延設備の線材搬送コンベヤの平面図である。
【図2】図1をA方向から見た模式的側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係り、線材圧延設備の線材搬送コンベヤ線材搬送コンベヤの線材切断装置の構成説明図である。
【図4】図3のB矢視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係り、圧延線材の切断位置説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの作動説明図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの作動説明図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの作動説明図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの作動説明図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る線材圧延設備の線材搬送コンベヤの作動説明図である。
【図11】従来例1に係るコイル集束装置による切断制御方法を示す概念図である。
【図12】従来例2に係り、コイル成形場所で、切断端を曲げたり歪ませたりすることなく圧延材をトリミング、切断あるいはトリミングおよび切断する装置の垂直断面説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1…線材搬送コンベヤ
2…上流側コンベヤ,2a…搬送ローラ
3…可動コンベヤ,31…走行台車,32…台車駆動装置(電動モータ),33…ローラ駆動装置,3a…搬送ローラ,3b…前輪,3c…後輪
4…線材切断装置,4a…フック作動シリンダ,4b…フック部,4c…油圧式カッタ,4d…刃保持部材,4e…固定刃,4f…可動刃,4g…刃作動シリンダ
5…下流側コンベヤ,5a…搬送ローラ
6…レール,6a…待機位置,6b…圧延線材切断完了位置
L…作業床
W…圧延線材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材巻取り機により螺旋状に成形された圧延線材を線材集束装置まで搬送する線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおいて、前記圧延線材の搬送方向と直交する方向に段差が形成されるように配置された上流側コンベヤおよび下流側コンベヤと、これら上流側コンベヤと下流側コンベヤとの間に形成された段差を埋めるように配設され、圧延線材の搬送方向と平行な方向に往復移動可能な可動コンベヤと、この可動コンベヤの下流側端部に設けられ、圧延線材を切断する線材切断装置と、可動コンベヤに設けられ、線材切断装置による圧延線材の切断時に可動コンベヤ上の圧延線材をこの可動コンベヤに対して停止させるように、この可動コンベヤの下流側方向への移動を制御する駆動装置とを備えてなることを特徴とする線材圧延設備の線材搬送コンベヤ。
【請求項2】
前記駆動装置は、可動コンベヤを上流側コンベヤ寄りの待機位置と、下流側コンベヤ寄りの圧延線材切断完了位置との間の切断領域を往復移動可能に制御する機能を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤ。
【請求項3】
前記上流側コンベヤ、下流側コンベヤおよび可動コンベヤは、それぞれ圧延線材を搬送する搬送ローラを備えてなり、前記駆動装置は、可動コンベヤが待機位置に待機しているときには可動コンベヤを停止させると共に、搬送ローラによる圧延線材の搬送速度を上流側コンベヤおよび下流側コンベヤの搬送速度と同期させる一方、可動コンベヤを待機位置から圧延線材切断完了位置に移動させながら可動コンベヤの搬送ローラの停止状態を維持することにより、線材切断装置による圧延線材の切断を実行可能とするように制御する機能を備えてなることを特徴とする請求項2に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤ。
【請求項4】
前記駆動装置は、圧延線材の切断終了後に前記可動コンベヤを待機位置に戻すときに、この可動コンベヤの搬送ローラによる搬送速度を上流側コンベヤおよび下流側コンベヤの搬送ローラによる搬送速度と見かけ上同じになるように制御する機能を備えてなることを特徴とする請求項2に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤ。
【請求項5】
前記可動コンベヤを圧延線材切断完了位置に移動させるときの移動速度が、圧延線材の搬送速度よりも低速に制御されるように構成されてなることを特徴とする請求項2乃至4のうちの何れか一つの項に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤ。
【請求項6】
圧延線材の切断終了後に、前記下流側コンベヤの搬送速度が、前記上流側コンベヤの圧延線材の搬送速度よりも高速に制御されるように構成されてなることを特徴とする請求項2乃至5のうちの何れか一つの項に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤ。
【請求項7】
線材巻取り機により螺旋状に成形された圧延線材の搬送方向と直交する方向に段差が形成されるように配置された上流側コンベヤおよび下流側コンベヤと、これら上流側コンベヤと下流側コンベヤとの間に形成された段差を埋めるように配設され、圧延線材の搬送方向と平行な方向に往復移動可能な可動コンベヤと、この可動コンベヤの下流側端部に設けられ、圧延線材を切断する線材切断装置とを備えてなり、圧延線材を線材集束装置まで搬送する線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法であって、前記上流側コンベヤ側の待機位置で可動コンベヤにより上流側コンベヤから圧延線材を受取って下流側コンベヤの方向に搬送し、圧延線材の切断部位を含む線分の一部が下流側コンベア側に落下すると、可動コンベヤの下流側コンベヤ方向への移動開始に合わせて、可動コンベヤ上の圧延線材の搬送速度が上流側コンベヤおよび下流側コンベヤによる圧延線材の搬送速度と略同速度になるように制御しながら、可動コンベヤが圧延線材切断完了位置に到達するまでの間に、線材搬送コンベヤに隣接して設けられた捕捉部材により受け止めた切断部位を含む線分を線材切断装置により切断することを特徴とする線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法。
【請求項8】
前記可動コンベヤ上の圧延線材を可動コンベヤに対して停止させると共に、可動コンベヤが圧延線材切断完了位置に到達するまでの間に、捕捉部材により受け止めた切断部位を含む線分を線材切断装置により切断することを特徴とする請求項7に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法。
【請求項1】
線材巻取り機により螺旋状に成形された圧延線材を線材集束装置まで搬送する線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおいて、前記圧延線材の搬送方向と直交する方向に段差が形成されるように配置された上流側コンベヤおよび下流側コンベヤと、これら上流側コンベヤと下流側コンベヤとの間に形成された段差を埋めるように配設され、圧延線材の搬送方向と平行な方向に往復移動可能な可動コンベヤと、この可動コンベヤの下流側端部に設けられ、圧延線材を切断する線材切断装置と、可動コンベヤに設けられ、線材切断装置による圧延線材の切断時に可動コンベヤ上の圧延線材をこの可動コンベヤに対して停止させるように、この可動コンベヤの下流側方向への移動を制御する駆動装置とを備えてなることを特徴とする線材圧延設備の線材搬送コンベヤ。
【請求項2】
前記駆動装置は、可動コンベヤを上流側コンベヤ寄りの待機位置と、下流側コンベヤ寄りの圧延線材切断完了位置との間の切断領域を往復移動可能に制御する機能を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤ。
【請求項3】
前記上流側コンベヤ、下流側コンベヤおよび可動コンベヤは、それぞれ圧延線材を搬送する搬送ローラを備えてなり、前記駆動装置は、可動コンベヤが待機位置に待機しているときには可動コンベヤを停止させると共に、搬送ローラによる圧延線材の搬送速度を上流側コンベヤおよび下流側コンベヤの搬送速度と同期させる一方、可動コンベヤを待機位置から圧延線材切断完了位置に移動させながら可動コンベヤの搬送ローラの停止状態を維持することにより、線材切断装置による圧延線材の切断を実行可能とするように制御する機能を備えてなることを特徴とする請求項2に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤ。
【請求項4】
前記駆動装置は、圧延線材の切断終了後に前記可動コンベヤを待機位置に戻すときに、この可動コンベヤの搬送ローラによる搬送速度を上流側コンベヤおよび下流側コンベヤの搬送ローラによる搬送速度と見かけ上同じになるように制御する機能を備えてなることを特徴とする請求項2に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤ。
【請求項5】
前記可動コンベヤを圧延線材切断完了位置に移動させるときの移動速度が、圧延線材の搬送速度よりも低速に制御されるように構成されてなることを特徴とする請求項2乃至4のうちの何れか一つの項に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤ。
【請求項6】
圧延線材の切断終了後に、前記下流側コンベヤの搬送速度が、前記上流側コンベヤの圧延線材の搬送速度よりも高速に制御されるように構成されてなることを特徴とする請求項2乃至5のうちの何れか一つの項に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤ。
【請求項7】
線材巻取り機により螺旋状に成形された圧延線材の搬送方向と直交する方向に段差が形成されるように配置された上流側コンベヤおよび下流側コンベヤと、これら上流側コンベヤと下流側コンベヤとの間に形成された段差を埋めるように配設され、圧延線材の搬送方向と平行な方向に往復移動可能な可動コンベヤと、この可動コンベヤの下流側端部に設けられ、圧延線材を切断する線材切断装置とを備えてなり、圧延線材を線材集束装置まで搬送する線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法であって、前記上流側コンベヤ側の待機位置で可動コンベヤにより上流側コンベヤから圧延線材を受取って下流側コンベヤの方向に搬送し、圧延線材の切断部位を含む線分の一部が下流側コンベア側に落下すると、可動コンベヤの下流側コンベヤ方向への移動開始に合わせて、可動コンベヤ上の圧延線材の搬送速度が上流側コンベヤおよび下流側コンベヤによる圧延線材の搬送速度と略同速度になるように制御しながら、可動コンベヤが圧延線材切断完了位置に到達するまでの間に、線材搬送コンベヤに隣接して設けられた捕捉部材により受け止めた切断部位を含む線分を線材切断装置により切断することを特徴とする線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法。
【請求項8】
前記可動コンベヤ上の圧延線材を可動コンベヤに対して停止させると共に、可動コンベヤが圧延線材切断完了位置に到達するまでの間に、捕捉部材により受け止めた切断部位を含む線分を線材切断装置により切断することを特徴とする請求項7に記載の線材圧延設備の線材搬送コンベヤにおける線材切断方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−152354(P2007−152354A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346459(P2005−346459)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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