説明

線材張力調整装置

【課題】 線材引き出し速度の急激な加減速があっても、線材に作用する張力を安定させることができる線材張力調整装置を提供する。
【解決手段】 線材が巻掛けられる送り出し用プーリ21と、この送り出し用プーリ21を回転駆動して上流側にある線材を下流側へ送り出すサーボモータ22と、送り出し用プーリ21よりも下流側に配設され、下流側から引っ張られて引き出される線材の張力を検出する張力検出部50と、送り出し用プーリ21よりも下流側に配設され、下流側から引っ張られて引き出される線材の移動速度を検出する速度検出部40とを備える。そして、速度検出部40で検出された線材の移動速度に基づきサーボモータ22の回転速度を制御するとともに、張力検出部50で検出された線材の張力に基づきサーボモータ22の回転速度を補正することにより、送り出し用プーリ21から送り出された線材の張力を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、電動モータの鉄心に銅線を巻き付ける巻線機や、金属製の線材を巻き取る巻取り装置等に好適な線材張力調整装置に関し、詳しくは巻線機や巻取り装置等によってボビンから引っ張り出される線材の張力を調整するための線材張力調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の線材張力調整装置としては、例えば、特許文献1及び2に開示されたものがある。
特許文献1のワイヤー供給装置は、ボビンと巻線機との間に、ワイヤの張力を検出する張力検出手段を備えており、ワイヤの張力が所定の値を超えたとき、ボビンの回転速度を上げてワイヤに作用する張力を低減させる制御構造となっている。
【0003】
一方、特許文献2の張力制御装置は、ワイヤの搬送経路上に、繰り出し側の第1のプーリと、巻き取り側の第2のプーリとを備え、各プーリにはそれぞれ第1、第2のエンコーダが取り付けられており、これらのエンコーダによって各プーリの回転速度がそれぞれ測定される。そして、各プーリの回転速度差からワイヤの伸び(張力)を計算し、この伸びが一定となるように第1のプーリに取り付けてある電動サーボモータを制御する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−70039号公報
【特許文献2】特開2001−328766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、電動機を製造する巻線装置においては、近年、特に省エネ化や高効率化の観点から線材の巻線速度の高速化が求められている。このような高速運転を実現するために、線材張力調整装置には、線材の引き出し速度が低速から高速または高速から低速へと急激に加減速しても、線材に作用する張力を安定させることが求められている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置では、張力検出手段によって線材の張力を検出して、この張力の変化に基づいて、上流側にあるボビンの回転速度、すなわち線材の送り出し速度を制御しているため、線材の引き出し速度が急激に変化したとき、例えば、急激に加速したときは、きわめて短時間のうちに線材に過大な張力が作用することになる。したがって、この張力の変化をフィードバックしてボビンの回転速度を制御しようとしても、ボビンの回転速度が調整される前に、線材が過大な張力によって破断してしまうおそれがあった。つまり、特許文献1の制御構造では、線材引き出し速度の急激な加減速に追従できないという問題があった。
【0007】
また、特許文献2の装置では、繰り出し側と巻き取り側の各プーリの速度差からその間にあるワイヤ(線材)の伸びを求め、その伸びに基づいて、繰り出し側のプーリを回転させるサーボモータを制御する構成であったが、やはりワイヤの引き出し速度が急激に変化したとき、例えば、急激に加速したときは、きわめて短時間のうちにワイヤに過大な張力が作用して大きく伸びてしまうことになる。したがって、このワイヤの伸びをフィードバックして繰り出し側のサーボモータを制御しようとしても、サーボモータが制御される前に、ワイヤが過大に伸びて破断してしまうおそれがあった。つまり、特許文献2の制御構造でも、線材引き出し速度の急激な加減速に追従できないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、線材引き出し速度の急激な加減速があっても、線材に作用する張力を安定させることができる線材張力調整装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、下流側へ引き出される線材の張力を制御するための線材張力調整装置であって、
線材が巻掛けられる送り出し用プーリと、この送り出し用プーリを回転駆動して上流側にある線材を下流側へ送り出すサーボモータと、
送り出し用プーリよりも上流側で線材に対し制動力を付与する線材制動手段と、
送り出し用プーリよりも下流側に配設され、下流側から引っ張られて引き出される線材の張力を検出する張力検出手段と、
送り出し用プーリよりも下流側に配設され、下流側から引っ張られて引き出される線材の移動速度を検出する速度検出手段と、
速度検出手段により検出された線材の移動速度に基づきサーボモータの回転速度を制御するとともに、張力検出手段により検出された線材の張力に基づきサーボモータの回転速度を補正することにより、送り出し用プーリから送り出された線材の張力を調整する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
上記構成の本発明によれば、下流側から引っ張られて引き出される線材の移動速度を速度検出手段により検出し、当該検出した移動速度に基づきサーボモータの回転速度を制御することで、線材の引き出し速度が急激に変化してもその変化に線材の送り出し速度を追従させることができるので、速度差に起因して線材の張力が大きく変動するおそれはない。
しかし、速度検出手段により検出された線材の移動速度に基づきサーボモータの回転速度を制御しただけでは、線材にどれほどの張力が作用しているか不明なため、当該線材に作用する張力の安定化を図ることはできない。
そこで、本発明は、張力検出手段により線材の張力を検出し、その検出された線材の張力に基づきサーボモータの回転速度を補正することで、送り出し用プーリから送り出された線材に作用する張力の安定化を実現している。
【0011】
具体的には、制御手段は、速度検出手段により検出された線材の移動速度に基づき、送り出し用プーリから送り出される線材を当該移動速度と同じ速度で送り出すための速度制御信号を生成し、当該速度制御信号によりサーボモータの回転速度を制御するとともに、あらかじめ設定した線材の張力に関する目標張力値と張力検出手段により検出された線材の張力との差に基づき、その差が零となるようにサーボモータの回転速度を補正する構成とすることが好ましい。
【0012】
また、速度検出手段は、送り出し用プーリと同一の直径をした速度検出用プーリと、この速度検出用プーリの回転速度を検出するエンコーダとを含み、速度検出用プーリに線材を巻掛け、当該線材の移動に伴い速度検出用プーリが回転する構成とすることができる。
【0013】
このように構成すれば、エンコーダで検出した速度検出用プーリの回転速度に、送り出し用プーリの回転速度を合わせるだけで、線材の送り出し速度(すなわち、送り出し用プーリの周速度)を、線材の引き出し速度(すなわち、速度検出用プーリの周速度)に一致させることができ、制御の容易化を図ることが可能となる。
【0014】
本発明は、更に、送り出し用プーリよりも下流側に線材弛緩吸収手段を配設してもよい。
線材弛緩吸収手段は、揺動自在なアームと、このアームに固定され送り出し用プーリから送り出された線材が巻掛けられる弛緩吸収用プーリと、アームを所定のトルクで線材を引っ張る方向に回動付勢する弛緩吸収用サーボモータと、弛緩吸収用プーリに巻掛けられた線材の張力によって弛緩吸収用サーボモータのトルクに抗して揺動するアームを所定位置で停止させるストッパとを含み、
弛緩吸収用サーボモータは、弛緩吸収用プーリに巻掛けられた線材の張力が制御手段に設定された目標張力値よりも小さいとき、当該線材の張力に抗してアームをストッパから離間する方向へ揺動させるようにトルク制御される構成とする。
【0015】
このような構成の線材弛緩吸収手段を設けることで、弛緩吸収用サーボモータのトルクによって線材の張力を高精度に調整しつつ、当該線材の弛みをなくし、線材の円滑な移動を保障することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上、本発明によれば、線材引き出し速度の急激な加減速があっても、線材に作用する張力を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る線材張力調整装置を概略的に示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る線材張力調整装置の制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る線材張力調整装置を概略的に示す構成図である。
本実施形態の線材張力調整装置1は、例えば、巻線機2に引き出される銅線等の線材Wに対して、その張力を安定化させる機能を備えており、線材Wの供給源となるボビン3と巻線機2との間に設けられている。線材Wは、ボビン3から引き出され、線材張力調整装置1によって張力が調整されながら、巻線機2へと引き出されていく。
【0019】
線材張力調整装置1は、図1に示すように、線材制動部10(線材制動手段)、線材送り出し部20、線材弛緩吸収部30(線材弛緩吸収手段)、速度検出部40(速度検出手段)、張力検出部50(張力検出手段)の各構成部を備えるとともに、図2に示す構成の制御系をもって自動制御されている。
ボビン3から引っ張り出された線材Wは、これら線材制動部10、線材送り出し部20、線材弛緩吸収部30、速度検出部40、乃至張力検出部50を順次経由して、巻線機2へ引き出されている。
【0020】
線材制動部10は、線材送り出し部20の上流側(線材Wが引き出されてくる側)に配設され、線材Wを一対の挟持盤11、12によって挟み込み、ボビン3から引き出されてくる線材Wに摩擦抵抗を付与する。線材制動部10で線材Wに摩擦抵抗を付与することで、後述する送り出し用プーリ21に巻掛けられた線材Wのすべりを防止し、送り出し用プーリ21の回転に伴い線材Wが適切に下流側へ送り出される状況が整えられる。
【0021】
挟持盤11、12の挟持面は、ゴム材や樹脂材など線材Wよりも軟質の材料によって構成することで、線材Wを損傷させない配慮がなされている。一方の挟持盤(固定側挟持盤)11は固定されており、他方の挟持盤(可動側挟持盤)12は固定側挟持盤11に対して接離する方向へ移動自在となっている。そして、可動側挟持盤12は、電磁石などのアクチュエータ13によって駆動され、その駆動力をもって線材Wに対する摩擦抵抗を任意に調整できる構成となっている。
【0022】
なお、線材Wの移動経路において、線材制動部10の上流側には、線材ガイド14とゴミ取りフィルタ15が設けてある。線材ガイド14はボビン3から引き出されてきた線材Wを線材制動部10へ案内する部材であり、ゴミ取りフィルタ15はボビン3から引き出されてきた線材Wに付着しているゴミを除去するための部材である。
【0023】
線材送り出し部20は、送り出し用プーリ21と、同プーリ21を回転駆動するサーボモータ22とを含む構成となっている。送り出し用プーリ21には、ボビン3から引き出され、線材制動部10を経由して移動してきた線材Wが巻掛けられている。線材Wは、送り出し用プーリ21の回転に伴い下流側へ送り出される。このときの線材送り出し速度(線材移動速度)は、送り出し用プーリ21の回転速度に比例している。
【0024】
線材弛緩吸収部30は、線材送り出し部20から送り出され、巻線機2へ引き出されていく線材Wを一定の張力をもって常時引っ張ることで緩みを防止する機能を有している。線材弛緩吸収部30は、揺動自在なアーム31と、このアーム31の先端部に固定された弛緩吸収用プーリ32と、アーム31を所定のトルクで回動付勢して線材Wを引っ張る弛緩吸収用サーボモータ33と、アーム31の揺動範囲を規制するストッパ34とを含んでいる。
【0025】
弛緩吸収用プーリ32には、送り出し用プーリ21から送り出された線材Wが巻掛けられる。アーム31は、弛緩吸収用サーボモータ33から伝えられるトルクをもって線材Wを引っ張り、これにより線材Wの弛みを無くしている。ストッパ34は、巻線機からの引っ張り力によって弛緩吸収用サーボモータ33のトルクに抗して揺動するアーム31を、所定位置で停止させる。
【0026】
このような構成の線材弛緩吸収部30は、弛緩吸収用サーボモータ33のトルクによって線材Wの張力を高精度に調整しつつ、当該線材Wの弛みをなくし、線材Wの円滑な移動を保障する。
【0027】
速度検出部40は、速度検出用プーリ41と、この速度検出用プーリ41の回転速度を検出するエンコーダ42とを含んでいる。線材Wは、線材弛緩吸収部30の下流側で速度検出用プーリ41に巻掛けられている。速度検出用プーリ41は、線材Wの移動に伴い回転し、その回転速度をエンコーダ42で検出する構成となっている。
ここで、本実施形態では、速度検出用プーリ41を、送り出し用プーリ21と同一の直径に形成してある。これによって、エンコーダ42で検出した速度検出用プーリ41の回転速度に、送り出し用プーリ21の回転速度を合わせるだけで、線材Wの送り出し速度(すなわち、送り出し用プーリ21の周速度)を、線材Wの引き出し速度(すなわち、速度検出用プーリ41の周速度)に一致させることができ、後述する制御の容易化を図ることが可能となる。
【0028】
張力検出部50は、線材Wが巻掛けられる張力検出用プーリ51と、線材Wの張力によって張力検出用プーリ51に作用する荷重Aを検出するロードセル52とを含んでいる。張力検出用プーリ51は、線材Wの移動経路における巻線機2と速度検出用プーリ41の中間部に設けてあり、線材Wの上流側および下流側に作用する張力の合力が荷重Aとして張力検出用プーリ51に作用する。ロードセル52は、この荷重Aの値を検出して線材の張力に換算し、張力検出信号(電気信号)に変換して出力する。
【0029】
図2は、本実施形態に係る線材張力調整装置の制御系を示すブロック図である。
次に、図2を参照して線材張力調整装置の制御系について詳細に説明する。本実施形態の線材張力調整装置は、制御部60を備えている。制御部60は、サーボモータ回転司令部61、目標張力設定部62、増幅部63、張力誤差信号増幅部64、サーボモータドライバ65、弛緩吸収制御部66、弛緩吸収用サーボモータドライバ67、アクチュエータ制御部68の各構成部を含んでいる。
【0030】
サーボモータ回転指令部61は、エンコーダ42に接続されており、エンコーダ42から出力されてくる速度検出用プーリ41の回転速度信号を入力し、同信号に基づいて回転速度制御信号を生成して出力する。このサーボモータ回転指令部61から出力される回転速度制御信号は、送り出し用プーリ21から送り出される線材Wの送り出し速度を、速度検出用プーリ41から巻線機2に向かって引っ張られていく線材の移動速度に一致させるための信号である。
既述したように、本実施形態では、速度検出用プーリ41を送り出し用プーリ21と同一の直径に形成してあるので、エンコーダ42で検出した速度検出用プーリ41の回転速度に、送り出し用プーリ21の回転速度を合わせるだけで、送り出し用プーリ21から送り出される線材Wの送り出し速度を、速度検出用プーリ41から巻線機2に向かって引っ張られていく線材の移動速度に一致させることができ、回転速度制御信号を生成するための演算が容易である。
【0031】
目標張力設定部62には、本実施形態に係る線材張力調整装置1で線材Wに付与すべき張力の値(目標張力値)が、入力パネルやキーボード等の入力機器を介してあらかじめ入力されている。線材Wを送り出すサーボモータ22は速度制御されており、このサーボモータ22の回転速度を制御することで、線材Wに所望の張力を付与することが可能となる。目標張力設定部62からは、あらかじめ設定された目標張力値を示す目標張力指示信号(電気信号)が出力される。
【0032】
増幅部63は、張力検出部50(図1参照)に設けたロードセル52から出力された張力検出信号を増幅して出力する。制御部60は、この増幅した張力検出信号を目標張力設定部62から出力された目標張力検出信号と比較して、その差を求める。
張力誤差信号増幅部64は、目標張力検出信号に対する張力検出信号の差分を増幅し、張力誤差信号を出力する。この張力誤差信号は、目標張力設定部62にあらかじめ設定された目標張力値に対し、実際に線材Wに作用する張力の値がどれだけ離れているかを示している。
【0033】
制御部60は、サーボモータ回転指令部61から出力された回転速度制御信号に、張力誤差信号増幅部64から出力された張力誤差信号を重ね合わせて、サーボモータドライバ65に出力する。サーボモータドライバ65は、回転速度制御信号に基づいてサーボモータ22の回転速度を制御するとともに、入力した張力誤差信号が零になるようにサーボモータ22の回転速度を補正する。ここで、張力誤差信号が零になるということは、ロードセル42で検出される線材Wの張力が、目標張力設定部62に設定された目標張力値と一致することを意味する。
【0034】
このように、巻線機2によって引っ張られる線材Wの移動速度を速度検出部4のエンコーダ42で検出し、当該移動速度に基づき生成した回転速度制御信号によって線材送り出し部20のサーボモータ22を速度制御することで、線材の移動速度が急激に変化しても、適切に線材送り出し部20における線材Wの送り出し速度を追従させることができる。さらに、巻線機2によって引っ張られる線材Wの張力を速度検出部40のロードセル52で検出し、当該検出した張力の値が、あらかじめ設定してある目標張力値と同じになるようにサーボモータ22の回転速度を補正することで、線材送り出し部21から送り出された線材Wに作用する張力の安定化を実現することができる。
【0035】
また、図2に示すように、目標張力設定部62で生成された目標張力指示信号は、弛緩吸収制御部66と、アクチュエータ制御部68にも出力されている。
弛緩吸収制御部66は、入力した目標張力指示信号に基づきトルク制御信号を生成して、弛緩吸収用サーボモータドライバ67に出力する。ここで生成されるトルク制御信号は、弛緩吸収用プーリ32(図1参照)に巻掛けられた線材Wの張力が、目標張力設定部62に設定されている目標張力値よりも小さいとき、当該線材Wの張力に抗して図1に示したアーム31をストッパ34から離間する方向へ揺動させるように、弛緩吸収用サーボモータ33をトルク制御するための信号である。このトルク制御信号に基づき、弛緩吸収用サーボモータドライバ67は弛緩吸収用サーボモータ33をトルク制御する。
このようにして、弛緩吸収用サーボモータ33のトルクをもって線材Wの張力を高精度に調整しつつ、当該線材Wの弛みをなくし、線材Wの円滑な移動を保障することができる。
【0036】
アクチュエータ制御部68は、入力した目標張力指示信号に基づきアクチュエータの制御信号を生成して、線材制動部10(図1参照)のアクチュエータ13を制御する。これにより、目標張力設定部62に設定されている目標張力値に対応して、アクチュエータ13が図1に示す可動側挟持盤12を駆動し、各挟持盤11、12が線材Wを所望の摩擦抵抗をもって挟持する。その結果、送り出し用プーリ21に巻掛けられた線材Wのすべりを防止し、送り出し用プーリ21の回転に伴い線材Wが適切に下流側へ送り出される状況が整えられる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明に係る線材張力調整装置の適用対象としては、巻線機に限定されず、線材の巻取り装置など、線材を引っ張り出して送り込む動作を有する各種装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
W:線材、
1:線材張力調整装置、2:巻線機、3:ボビン、
10:線材制動部、11:挟持盤(固定側挟持盤)、12:挟持盤(可動側挟持盤)、13:アクチュエータ、14:線材ガイド、15:ゴミ取りフィルタ、
20:線材送り出し部、21:送り出し用プーリ、22:サーボモータ、
30:線材弛緩吸収部、31:アーム、32:弛緩吸収用プーリ、33:弛緩吸収用サーボモータ、34:ストッパ、
40:速度検出部、41:速度検出用プーリ、42:エンコーダ、
50:張力検出部、51:張力検出用プーリ、52:ロードセル、
60:制御部、61:サーボモータ回転司令部、62:目標張力設定部、63:増幅部、64:張力誤差信号増幅部、65:サーボモータドライバ、66:弛緩吸収制御部、67:弛緩吸収用サーボモータドライバ、68:アクチュエータ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下流側へ引き出される線材の張力を制御するための線材張力調整装置であって、
線材が巻掛けられる送り出し用プーリと、この送り出し用プーリを回転駆動して上流側にある線材を下流側へ送り出すサーボモータと、
前記送り出し用プーリよりも上流側で線材に対し制動力を付与する線材制動手段と、
前記送り出し用プーリよりも下流側に配設され、下流側から引っ張られて引き出される線材の張力を検出する張力検出手段と、
前記送り出し用プーリよりも下流側に配設され、前記下流側から引っ張られて引き出される線材の移動速度を検出する速度検出手段とを備え、
更に、前記速度検出手段により検出された線材の移動速度に基づき前記サーボモータの回転速度を制御するとともに、前記張力検出手段により検出された線材の張力に基づき前記サーボモータの回転速度を補正することにより、前記送り出し用プーリから送り出された線材の張力を調整する制御手段を備えたことを特徴とする線材張力調整装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記速度検出手段により検出された線材の移動速度に基づき、前記送り出し用プーリから送り出される線材を当該移動速度と同じ速度で送り出すための速度制御信号を生成し、当該速度制御信号により前記サーボモータの回転速度を制御するとともに、あらかじめ設定した線材の張力に関する目標張力値と前記張力検出手段により検出された線材の張力との差に基づき、その差が零となるように前記サーボモータの回転速度を補正する構成であることを特徴とする請求項1の線材張力調整装置。
【請求項3】
前記速度検出手段は、前記送り出し用プーリと同一の直径をした速度検出用プーリと、この速度検出用プーリの回転速度を検出するエンコーダとを含み、前記速度検出用プーリに線材を巻掛け、当該線材の移動に伴い前記速度検出用プーリが回転する構成としてあることを特徴とする請求項1又は2の線材張力調整装置。
【請求項4】
更に、前記送り出し用プーリよりも下流側に線材弛緩吸収手段が配設されており、
前記線材弛緩吸収手段は、揺動自在なアームと、このアームに固定され前記送り出し用プーリから送り出された線材が巻掛けられる弛緩吸収用プーリと、前記アームを所定のトルクで線材を引っ張る方向に回動付勢する弛緩吸収用サーボモータと、前記弛緩吸収用プーリに巻掛けられた線材の張力によって前記弛緩吸収用サーボモータのトルクに抗して揺動する前記アームを所定位置で停止させるストッパとを含み、
前記弛緩吸収用サーボモータは、前記弛緩吸収用プーリに巻掛けられた線材の張力が前記制御手段に設定された目標張力値よりも小さいとき、当該線材の張力に抗して前記アームを前記ストッパから離間する方向へ揺動させるようにトルク制御されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の線材張力調整装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−189082(P2010−189082A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32774(P2009−32774)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000145736)株式会社小田原エンジニアリング (9)
【Fターム(参考)】