説明

線条体もつれ検出装置

【課題】コイルから線条体をたぐり出して伸線機に向かって移動させる工程時に、線条体が繰出しより飛び出したもつれや線条体に繰出しで絞られてもつれが発生した場合、これらのもつれの発生を検出可能なもつれ検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置の主要部としてのスナ−ルスタンド2を線条体の進行方向に傾倒可能に支持した基礎部3と基礎部3に上方向に移動可能に案内支持され上端側に線条体の通過開孔5を形成した可動部6とで形成し、スナ−ルスタンド2の傾きを第1センサ7で、可動部6の上方向移動を第2センサ8とで検出する構成により、上記2種のもつれの検出を可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル受け装置と伸線機との間に配設される線条体のもつれを検出する線条体のもつれ検出装置に関し、具体的にはコイル受け装置に支持された線条体コイルから伸線機に向かって引き出された線条体にもつれが発生したとき、それを検出して信号を発信するようにした線条体のもつれ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、線条体の伸線装置は、図3の概略図に示すような構成となっている。
すなわち、図3において、符号11は線条体(ワイヤ)20をコイル状に捲いたコイル12の受け装置を、符号13は伸線機をそれぞれ示しており、コイルの受け装置11および伸線機13は床面10上にアンカーボルト等によって固定されており、コイル受け装置11と伸線機13との間に、もつれ検出装置の主体部としてのスナ−ルスタンド14が配設されている。
【0003】
スナ−ルスタンド14は、図2に示すように、上端側に線条体20の通過開孔15を有し、基部側を床面10に固着された機枠16に軸17で線条体20の進行方向に対して平行方向に傾倒可能に支持されている。機枠16にはスナ−ルスタンド14が一定量傾いたことを検出するための第1センサ18が取り付けられている。
【0004】
コイル受け装置11は、図1に示すように、床面10上に固着された基部21と、基部21の右端部に垂直状に固設されたコイル固定部22と、コイル固定部22に水平状に突設されたコイル受け(兼ワイヤガイド)23と、基部側をコイル受け23に揺動可能(上下動可能)に取り付けられたフリッパ−24と、その下方に突設されたフリッパ−受け25とで構成されている。
【0005】
使用時、コイル12をコイル受け装置11に保持させ、伸線機13の伸線釜26の回転(回転駆動源は図示しないモータ)により、コイル12から線条体20をたぐり出して伸線機13に向かって移動させる。そうすると、線条体20はコイル状に捲かれた状態を次第にほどかされながらコイル12からコイル受け(兼ワイヤガイド)23に案内されてたぐり出され、スナ−ルスタンド14に形成されている線条体20の通過開孔15を通過して伸線機13に至る。
【0006】
なお、コイル受け装置11から線条体12を1コイルずつスムーズに繰り出すために、コイル受け23の繰り出し側先端は、伸線機13の第1ダイス27の設置位置よりも高くなるように設定されている。また、スナールスタンド14の通過開孔15の中心高さと伸線機13の第1ダイスの高さはだいたい同じになるように設定される。
【0007】
線条体20がコイル12からたぐり出されて伸線機13に至るまでの間に、コイル状に捲回されていた線条体20のほどかれ具合が順調である場合は、スナ−ルスタンド14に形成されている線条体20の通過開孔15をスムーズに通過する。
【0008】
しかし、上述の工程において線条体20が順調にほどかれない場合、つまりもつれが残っているような場合には、線条体20の通過開孔15の通過時、線条体20のもつれた箇所が通過開孔15に引っかかり、スナ−ルスタンド14を線条体20の進行方向に傾ける事態が発生する。スナ−ルスタンド14が所定角度以上傾くと、センサ18がこれを検知し、センサ18により伸線装置の運転を停止させる信号が発信し、この信号により伸線装置は運転を自動停止する。この作動により、もつれ発生時における線条体20の断線を防止できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の従来の線条体のもつれ検出装置では、線条体がコイルからたぐり出されて伸線機に至るまでの間に、線条体が繰出しよりもつれて飛び出した場合は100%検出できるが、線条体がコイル受け上でもつれて絞られた場合は、上記の従来のもつれ検出装置のような、スナ−ルスタンドが線条体の進行方向に対して倒れる構成だけでは十分な検出ができない、という課題がある。
本発明は、従来の線条体のもつれ検出装置におけるこのような課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、もつれ検出部の主体部としてのスナ−ルスタンドを、線条体の進行方向に対して傾倒可能な構成として上述の従来のものと同様のもつれ検出効果を確保しながら、さらにスナ−ルスタンドの線条体の通過開孔部を上方向へも移動可能な構成にして、線条体が繰出しで絞られた際にはスナ−ルスタンドの線条体の通過開孔部が上方向に変移する構成とすることにより、線条体が繰出しで絞られたケ−スをも検出できるようにした線条体のもつれ検出装置を提供しようとするものである。
【0011】
具体的には、本発明は、コイル受け装置と伸線機との間に配設される線条体もつれ検出装置であって、同検出装置が、上記線条体の進行方向に傾倒可能に支持された基礎部と、同基礎部に上方向に移動可能に案内支持され上端側に上記線条体の通過開孔が形成された可動部とで構成されたスナ−ルスタンドと、同スナ−ルスタンドの傾きを検出する第1センサと、上記可動部を正常位置に保持・復元する手段と、同可動部の上方向移動を検出する第2センサとで構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、上記の線条体もつれ検出装置において、上記基礎部が中空状の筒体で形成され、上記可動部が上記基礎部の中空部に滑動自在に案内支持されることを特徴とする。
【0013】
さらに、上記の線条体もつれ検出装置において、上記可動部を正常位置に保持・復元する手段が、コイルバネなどの弾性体または油圧式もしくは空気式のシリンダ装置で構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の線条体もつれ検出装置では、検出装置の主要部を形成するスナ−ルスタンドを基礎部と、同基礎部に上方向に移動可能に案内支持され上端側に上記線条体の通過開孔が形成された可動部とで構成し、上記基礎部を基台あるいは床面上に上記線条体の進行方向に傾倒可能に支持される構成としたので、線条体がコイルから引き出されて伸線機に至るまでの間に、線条体が繰出しからもつれて飛び出した場合には、スナ−ルスタンド支柱が線条体に引っ張られて線条体の進行方向に平行方向に傾倒する。そしてこの傾きを第1センサが検出する構成であるので、このもつれを完全に検出することができる。
【0015】
さらに、スナ−ルスタンドの一部を形成する可動部が上方向へも移動可能な構成としたので、線条体がコイル受け上でもつれて絞られた際には、可動部が上方向に変位する。この変位を第2センサが検出する構成であるので、線条体が繰出しで絞られたケ−スをも検出することができる。
【0016】
このようにして、本発明の線条体のもつれ検出装置によれば、線条体がコイルからたぐり出されて伸線機に至るまでの間に発生する、線条体が繰出しよりもつれて飛び出したケ−スや線条体が繰出しでもつれて絞られるようなケ−スをも、スナ−ルスタンドが傾倒したり、あるいはその一部が上方向に変位したりする。そしてこの傾倒あるいは変位を第1および第2のセンサで検出することができる構成であるから、この第1および第2のセンサの検出信号により伸線装置の運転を自動停止させるようにすることにより、伸線装置における線条体の繰り出しでのトラブル(線条体のもつれ)による断線を回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図に示す実施形態により具体的に説明する。
図1は本発明の一実施形態の係る線条体もつれ検出装置の一部断面側面図である。
【0018】
この実施形態に係る線条体もつれ検出装置も、図3に示す線条体の伸線装置におけるコイル受け装置11と伸線機13との間に配設されるもので、図1において、符号1は伸線装置の床10上に固定された機枠を示しており、この機枠1にスナ−ルスタンド2の基礎部3が線条体20(図3参照)の進行方向と平行方向に、軸4により傾倒可能に支持されている。
【0019】
この基礎部3は正方形断面の中空筒体からなり、その中空部分に、上端側に線条体20の通過開孔5が形成された正方形断面の柱状の可動部6が上方向(稼動部6が伸びる方向)に滑動可能に案内支持されて、線条体もつれ検出装置の主要部としてのスナ−ルスタンド2が形成されている。基礎部3を中空体で形成し可動部6を基礎部3の中空部に滑動自在に案内支持される柱体で形成することにより、可動部6の垂直方向への確実な滑動を確保しながら、スナ−ルスタンド2の構造の簡素化、低コスト化が可能となる。符号7は機枠1に設けられているスナ−ルスタンド2の傾き具合を検出する第1センサを示す。
【0020】
機枠1に、可動部6の上方向(伸びる方向)移動を検出する第2センサ8が設けられており、さらに、可動部6をニュ−トラル位置(正常位置)に保持・復元するために、機枠1と可動部6との間にコイルバネ9が介設されていて、可動部6、すなわち線条体20の通過開孔5の上下位置をニュ−トラル位置(正常位置)に保持し、あるいはニュ−トラル位置(正常位置)に復元できるようになっている。
上記可動部を正常位置に保持・復元する手段としては、コイルバネ9などの弾性体がコスト面で好ましいが、この外、油圧式もしくは空気式のシリンダ装置であっても同様の効果を得ることができる。
【0021】
次にこの装置の作動を説明する。
コイル12を受け装置11(図3参照、以下同様)に保持させ、この状態のもとで、伸線機13の伸線釜26の回転(回転駆動原は図示しないモータ)により、コイル12から線条体20をたぐり出して伸線機13に向かって移動させる。そうすると、線条体20はコイル状に捲かれた状態を次第にほどかれながらコイル12からコイル受け(兼ワイヤガイド)23に案内されて繰出されて、スナ−ルスタンド2(図1)に形成されている線条体20の通過開孔5を通過して伸線機13に至る。
【0022】
線条体20がコイル12からたぐり出されて伸線機13に至るまでの間に、コイル状に捲回されていた線条体20のほどかれ具合が順調である場合は、スナ−ルスタンド2に形成されている通過開孔5を通過する時、線条体20はほぼ直線状となっている。したがって、このようなケ−スでは、線条体20は通過開孔5をスム−ズに通過することができ、スナ−ルスタンド2が傾くことはない。
【0023】
しかし、線条体20が順調にほどかれない場合、つまり「もつれ」(コイルとコイルが絡まった状態)が残っているような場合には、線条体20が通過開孔5を通過する時、線条体20のもつれた箇所が通過開孔5に引っかかり、スナ−ルスタンド2を線条体20の進行方向と平行方向に傾倒する事態が発生する。スナ−ルスタンド2が所定角度以上傾くと、第1センサ7がこれを検知し、第1センサ7により伸線装置の運転を停止させる信号が発信し、この信号により伸線装置は運転を自動停止する。この作動により、線条体が繰出しより飛び出したもつれの発生時における線条体20の断線を防止できる。
【0024】
また、同様の工程時に、線条体が繰出しで絞られてもつれが発生した時は、線条体20が通過開孔5を通過する時、線条体20のこのもつれにより、スナ−ルスタンド2の通過開孔5、つまりスナ−ルスタンド2の可動体6は床面に対し上方向(スナールスタンドを持ち上げる方向)に変位するという事態が発生する。可動体6が上方向に所定長さ以上変位すると、第2センサ8がこれを検知し、第2センサ8により伸線装置の運転を停止させる信号が発信し、この信号により伸線装置は運転を自動停止する。この作動により、線条体が繰出しで絞られるようなもつれの発生時における線条体20の断線を防止できる。
【0025】
上述の通り、この実施形態の線条体もつれ検出装置によれば、コイル12から線条体20をたぐり出して伸線機13に向かって移動させる工程時に、線条体が繰出しより飛び出したもつれや線条体に繰出しで絞られてもつれが発生した場合、これらのもつれの発生を第1センサ7、あるいは第2センサ8が検出して伸線装置を自動停止することができるので、繰出しトラブルに起因する断線を回避でき、これにより稼働率の向上が可能となる。第1センサ7、あるいは第2センサ8としては、近接スイッチやリミットスイッチなどの接触式あるいは非接触式を問わず使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態の係る線条体もつれ検出装置の一部断面側面図である。
【図2】従来の線条体もつれ検出装置の一部断面側面図である。
【図3】一般的な線条体の伸線装置の概略図である。
【符号の説明】
【0027】
1:機枠
2:スナ−ルスタンド
3:基礎部
4:軸
5:(線条体20の)通過開孔
6:可動部
7:第1センサ
8:第2センサ
9:コイルバネ
10:床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル受け装置と伸線機との間に配設される線条体もつれ検出装置であって、
同検出装置が、上記線条体の進行方向に傾倒可能に支持された基礎部と、同基礎部に上方向に移動可能に案内支持され上端側に上記線条体の通過開孔が形成された可動部とで構成されたスナ−ルスタンドと、
上記可動部を正常位置に保持・復元する手段と、
同スナ−ルスタンドの傾きを検出する第1センサと、
同可動部の上方向移動を検出する第2センサと
が設けられていることを特徴とする線条体もつれ検出装置。
【請求項2】
上記スナ−ルスタンドの上記基礎部が中空状の筒体で形成され、上記可動部が上記基礎部の中空部に滑動自在に案内支持されることを特徴とする請求項1に記載の線条体もつれ検出装置。
【請求項3】
上記可動部を正常位置に保持・復元する手段が、コイルバネなどの弾性体または油圧式もしくは空気式のシリンダ装置で構成されることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の線条体もつれ検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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