説明

線条体ガイド装置及び線条体のガイド方法

【課題】 本発明は、液槽中を走行するケーブルなどの線条体を案内する線条体ガイド装置を提供するものである。
【解決手段】 かゝる本発明は、液槽中を走行する線条体Lを案内するガイド装置であって、2本の棒状ガイド体210、210をX状に交差させて組み付ける一方、両棒状ガイド210、210体の移動機構240を液槽100外に設置すると共に、両棒状ガイド体210、210の回転機構部212、212を少なくとも液槽100中の液体外に位置させ、両棒状ガイド体210、210の回転コロ部211、211からなる液槽100中の交差谷部200で線条体Lを支持する線条体ガイド装置200にあり、これにより、走行する線条体Lの走行位置の調整が極めて簡単に行える。また、2本の棒状ガイド体210、210の回転機構部212、212が液外に位置させるため、部品の腐食やごみの付着による回転不良などの問題が根本的に解消される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液槽中を走行するケーブルなどの線条体を案内する線条体ガイド装置及び線条体のガイド方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばケーブル製造では、ケーブルを冷却するため、水槽などの液槽中に通して走行させることがある。このとき、ケーブルを所定の位置に保持することが必要となる。
このため、従来にあっては、例えば図4に示すようなガイド装置が提案されている。この場合、水槽10中に、走行するケーブルLを保持するためガイド機構20として、それぞれ一対の上下支持用ガイド体21、21と左右(水平方向)支持用ガイド体22、22を設けてある。また、水槽などの液中ではないが、図5に示すようなガイド装置などが提案されている(特許文献1)。この場合のガイド機構30は、4個のガイドローラ31・・・をX状に組み付けてある。
【特許文献1】実開平06−073820号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、図4のガイド機構20では、支持用ガイド体21、21、22、22が回転自在のコロからなり、その回転部には通常金属製のベアリングを用いているが、支持用ガイド体全体を水槽中に浸漬する方法であるため、ベアリングの腐食、水中のごみなどの付着により回転不良が起こり易いという問題があった。回転不良が起こると、コロ表面と走行するケーブルとの間に摩擦が起こり、擦れ傷などの損傷が発生する。勿論、損傷の発生があると、製造ラインの停止などの問題や、ケーブル破棄などの問題を生じる。
【0004】
また、支持用ガイド体21、21、22、22が上下用と左右用の2組みからなる場合、ケーブルの走行位置を制御するにおいて、それぞれの4本のガイド体21、21、22、22を制御する必要があり、結構面倒であった。特にケーブルの走行中における制御は極めて難しかった。
【0005】
一方、図5のガイド機構30の場合、昇降用ハンドル32の操作により、ケーブルの走行位置の制御は容易に行えるものの、構造が複雑で装置自体が高価となること、勿論これを水液中などで使用する場合には、上記図4のガイド機構20と同様の問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その特徴とする点は、走行するケーブルなどの線条体を案内する場合において、2本の棒状ガイド体をX状に交差させて組み付け、これにより得られる、両棒状ガイド体の回転コロ部からなる交差谷部で線条体を支持する一方、両棒状ガイド体の移動機構を設けた線条体ガイド装置、及びこれを用いた線条体のガイド方法を提供することによって、上記従来の問題点を解消するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明は、液槽中を走行する線条体を案内するガイド装置であって、2本の棒状ガイド体をX状に交差させて組み付ける一方、前記両棒状ガイド体の移動機構を前記液槽外に設置すると共に、前記両棒状ガイド体の回転機構部を少なくとも前記液槽中の液体外に位置させ、前記両棒状ガイド体の回転コロ部からなる液槽中の交差谷部で前記線条体を支持することを特徴とする線条体ガイド装置にある。

【0008】
請求項2記載の本発明は、前記移動機構が、昇降機構、水平移動機構又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項1記載の線条体ガイド装置にある。

【0009】
請求項3記載の本発明は、前記昇降機構が、前記液槽外に設置された回転ネジシャフトとこれに噛み合う昇降部材からなり、当該昇降部材が前記両棒状ガイド体の回転機構部側に連設され、前記回転ネジシャフトの回転により、棒状ガイド体が昇降することを特徴とする請求項2記載の線条体ガイド装置にある。

【0010】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1記載の線条体ガイド装置を用い、前記両棒状ガイド体の移動機構の少なくとも一方を移動させることにより、前記両棒状ガイド体の回転コロ部からなる交差谷部を上下や左右方向に変動させて、前記線条体の走行位置の調整をすることを特徴とする線条体のガイド方法にある。

【0011】
請求項5記載の本発明は、前記請求項2記載の線条体ガイド装置を用い、前記両棒状ガイド体の移動機構である昇降機構の少なくとも一方を昇降させることにより、前記両棒状ガイド体の回転コロ部からなる交差谷部を上下や左右方向に変動させて、前記線条体の走行位置の調整を行うことを特徴とする線条体のガイド方法にある。

【0012】
請求項6記載の本発明は、走行する線条体を案内するガイド装置であって、2本の棒状ガイド体をX状に交差させて組み付ける一方、前記両棒状ガイド体の移動機構を設けると共に、前記両棒状ガイド体の回転コロ部からなる交差谷部で前記線条体を支持することを特徴とする線条体ガイド装置にある。

【0013】
請求項7記載の本発明は、前記請求項6記載の線条体ガイド装置を用い、前記両棒状ガイド体の移動機構の少なくとも一方を移動させることにより、前記両棒状ガイド体の回転コロ部からなる交差谷部を上下や左右方向に変動させて、前記線条体の走行位置の調整を行うことを特徴とする線条体のガイド方法にある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の線条体ガイド装置及び線条体のガイド方法によると、走行する線条体の支持、及び走行位置の調整を、X状に交差させて組み付けられた2本の棒状ガイド体の移動〔上下や左右(水平)方向への移動〕により、極めて簡単に行うことができる。また、これは線条体の走行中であっても容易に対応することができる。
さらに、2本の棒状ガイド体を、液槽などに液中に浸漬させる場合でも、少なくともその回転機構部を液外に位置させるため、従来の金属製のベアリング部品などの腐食やごみの付着による回転不良などの問題を根本的に解消することができる。結果として、製品不良の大幅な低減が可能となり、また、装置本体の長寿命化を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明に係る線条体ガイド装置の一例を示し、図2はこの装置における線条体の支持状態の概略を示したものである。図中、100は冷却水などの液体が充填された液槽、200は液槽100自体又はその周辺に設置されて、液中を走行するケーブルなどの線条体Lを案内する線条体ガイド装置である。

【0016】
この線条体ガイド装置200は、2本の棒状ガイド体210、210をX状に交差させて組み付けてなる。各棒状ガイド体210は、適宜長さを有して線条体Lと当接して回転する回転コロ部211と、この回転コロ部211を回転可能に支持する回転機構部212とからなる。回転コロ部211の少なくとも外装側は、耐蝕性の高い樹脂製部品などで形成してある。回転機構部212は、一般的な回転手段として、金属製のベアリング部品などを用い、これを他の金属製附属品などにより組み付けてある。このため、回転コロ部211にあっては、防水などの手段を施せば別であるが、通常液中に浸漬すると、腐食したり、液の侵入と共に液中のごみなどが混入して、機構部品に付着することになる。

【0017】
上記2本の棒状ガイド体210は、少なくとも上端側の回転機構部212を除く、回転コロ部211を液槽100中に浸漬させて、その交差谷部230で線条体Lを支持してある。また、各棒状ガイド体210の回転機構部212から延びる支持軸212aは、液槽100外の左右に適宜離間して設置された昇降機構(移動機構)240側に取り付けある。具体的には、昇降機構240の昇降部材(ナット部材など)241に取り付けてある。この昇降部材241は、昇降機構240側の回転ネジシャフト242に嵌め込んである。従って、回転ネジシャフト242の一端(頂部)に設けた回転ノブ242aを、正逆方向に回転させれば、簡単にそれぞれの対応する、棒状ガイド体210を、自在に昇降(上下)させることができる。なお、回転ネジシャフト242は、フレーム部材などの適当な支持部243により立設されてなる。

【0018】
この構成から、先ず、2本の棒状ガイド体210の回転コロ部211は、少なくとも回転機構部212を除いて、液槽100中に浸漬させてあるため、従来のように、回転機構部212に内蔵された金属製のベアリング部品などが腐食したり、また、この部分に液中のごみなどが混入、付着することがない。つまり、腐食やごみの付着による回転不良の原因は、根本的に解消される。勿論、これにより、ケーブル製造ラインの停止、不良ケーブルの取り換えなどが大幅に低減できる。装置の長寿命化を図ることもできる。結果として、ケーブル製造コストの低減が得られる。

【0019】
次に、走行する線条体Lの走行位置(上下、左右の位置)の調整であるが、それぞれの対応する、昇降機構240の回転ノブ242aを、正逆方向に回転させることで、簡単に調整することができる。例えば、両方の回転ノブ242aを、同方向に同量だけ回転させれば、線条体Lを同位置で上下に変動させることができる。両方の回転ノブ242aの回転方向や回転量を異にすれば(適宜違えれば)、その差によって、線条体Lの走行位置を左右(水平方向)にも適宜移動(変動)させることができる。これらの操作は、単に極めて簡単であるため、線条体Lの走行中にあっても、何ら支障なく行うことができる。特にケーブル製造では、ケーブルを走行させてから、走行位置を微調整(位置合わせ)することが多いため、これにより、大きな効果が期待できる。

【0020】
2本の棒状ガイド体210、210による交差谷部230の交差角は、走行する線条体Lの太さに合わせて、最も良好な回転状態が得られるようにしてある。また、好ましくは、線条体Lの太さに対応して、適宜交差角を調整できるように、例えば回転機構部212の支持軸212aと昇降部材241との取り付け部分に、支持軸212aの取り付け角度が調整できる角度調整機構を設けることもできる。

【0021】
なお、上記昇降機構240は、移動機構であれば、特に限定されない。従って、上記昇降部材241と回転ネジシャフト242との組み合わせのみならず、例えば、後述の図3に示すように、これらの両者が単なる相互にスライドする両部材(一方に固定手段を付設)からなるもの、或いは電磁式のスライド機構、ピストンロッドの進退する油圧シリンダなどで置き換えることも可能である。

【0022】
図3は本発明に係る線条体ガイド装置の他の例を示したものである。
この場合も、基本的には、上記図1の場合と同様であるが、2本の棒状ガイド体210、210の移動機構として、水平移動機構250を採用したものである。具体的には、ベースのレール部材251に対してスライダ252を組み付けてなり、このスライダ252には、固定ノブ253を付設すると共に、回転機構部212から延びる支持軸212aが取り付けてある。従って、スライダ252を、左右方向に移動させることで、簡単に調整することができる。例えば、両方のスライダ252を、手動で同方向に同量だけ移動させれば、線条体Lを同位置で上下に変動させることができる。両方のスライダ252の移動方向や移動量を異にすれば(適宜違えれば)、その差によって、線条体Lの走行位置を左右(水平方向)にも適宜移動(変動)させることができる。これらの操作は、単に極めて簡単であるため、線条体Lの走行中にあっても、何ら支障なく行うことができる。特にケーブル製造では、ケーブルを走行させてから、走行位置を微調整(位置合わせ)することが多いため、これにより、大きな効果が期待できる。

【0023】
なお、上記1のものと同様、2本の棒状ガイド体210、210による交差谷部230の交差角は、走行する線条体Lの太さに合わせて、最も良好な回転状態が得られるようにしてある。また、好ましくは、線条体Lの太さに対応して、適宜交差角を調整できるように、例えば回転機構部212の支持軸212aとスライダ252との取り付け部分に、支持軸212aの取り付け角度が調整できる角度調整機構を設けることもできる。
また、上記水平移動機構250は、移動機構であれば、特に限定されない。従って、上記レール部材251とスライダ252との組み合わせのみならず、上記図1の昇降部材241と回転ネジシャフト242からなるもの、或いは電磁式のスライド機構、ピストンロッドの進退する油圧シリンダなどで置き換えることも可能である。さらには、この水平移動機構250と上記昇降機構240を組み合わせた構造とすることも可能である。

【0024】
また、上記線条体ガイド装置200を用いれば、上記の説明から明らかなように、棒状ガイド体210、210の移動機構240、250の操作により、両棒状ガイド体210、210の交差谷部230を上下や左右方向に変動させて、線条体Lの走行位置の調整を行う線条体のガイド方法が得られる。

【0025】
なお、上記の説明では、好ましくは例として、線条体Lが液槽100などの液中を走行する場合であったが、本発明は、これに限定されるものではない。工場内(空気中)での使用も勿論可能である。また、線条体Lはケーブルに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る線条体ガイド装置の一例を示した概略説明図である。
【図2】図1の装置における線条体の支持状態を示した概略斜視図である。
【図3】本発明に係る線条体ガイド装置の他の例を示した概略説明図である。
【図4】従来の線条体ガイド装置を示した概略斜視図である。
【図5】従来の線条体ガイド装置の一部を示した概略説明図である。
【符号の説明】
【0027】
200・・・線条体ガイド装置、210・・・棒状ガイド体、211・・・回転コロ部、212・・・回転機構部、212a・・・支持軸、240・・・昇降機構(移動機構)、241・・・昇降部材、242・・・回転ネジシャフト、250・・・水平移動機構(移動機構)、251・・・レール部材、252・・・スライダ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液槽中を走行する線条体を案内する線条体ガイド装置であって、2本の棒状ガイド体をX状に交差させて組み付ける一方、前記両棒状ガイド体の移動機構を前記液槽外に設置すると共に、前記両棒状ガイド体の回転機構部を少なくとも前記液槽中の液体外に位置させ、前記両棒状ガイド体の回転コロ部からなる液槽中の交差谷部で前記線条体を支持することを特徴とする線条体ガイド装置。
【請求項2】
前記移動機構が、昇降機構、水平移動機構又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項1記載の線条体ガイド装置。
【請求項3】
前記昇降機構が、前記液槽外に設置された回転ネジシャフトとこれに噛み合う昇降部材からなり、当該昇降部材が前記両棒状ガイド体の回転機構部側に連設され、前記回転ネジシャフトの回転により、前記棒状ガイド体が昇降することを特徴とする請求項2記載の線条体ガイド装置。
【請求項4】
前記請求項1記載の線条体ガイド装置を用い、前記両棒状ガイド体の移動機構の少なくとも一方を移動させることにより、前記両棒状ガイド体の回転コロ部からなる交差谷部を上下や左右方向に変動させて、前記線条体の走行位置の調整をすることを特徴とする線条体のガイド方法。
【請求項5】
前記請求項2記載の線条体ガイド装置を用い、前記両棒状ガイド体の移動機構である昇降機構の少なくとも一方を昇降させることにより、前記両棒状ガイド体の回転コロ部からなる交差谷部を上下や左右方向に変動させて、前記線条体の走行位置の調整を行うことを特徴とする線条体のガイド方法。
【請求項6】
走行する線条体を案内するガイド装置であって、2本の棒状ガイド体をX状に交差させて組み付ける一方、前記両棒状ガイド体の移動機構を設けると共に、前記両棒状ガイド体の回転コロ部からなる交差谷部で前記線条体を支持することを特徴とする線条体ガイド装置。
【請求項7】
前記請求項6記載の線条体ガイド装置を用い、前記両棒状ガイド体の移動機構の少なくとも一方を移動させることにより、前記両棒状ガイド体の回転コロ部からなる交差谷部を上下や左右方向に変動させて、前記線条体の走行位置の調整を行うことを特徴とする線条体のガイド方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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