説明

線条体繰出し装置

【課題】クッション部と張力付与部の構成の一部の共用化を図り、小型化された線条体繰出し装置を提供する。
【解決手段】線条体4を繰出すサプライ部1と、線条体4の張力変動を緩和するクッション部2と、線条体4に所定の張力を与えて出線する張力付与部3を備える。前記のクッション部は、スライドホイル軸21に回転可能に設けられたスライドホイル20と、付勢手段23により付勢してスライドホイル軸21を上下方向にスライド可能に支持するスライド手段を備える。前記の張力付与部は、ブレーキホイル軸31に固定されたブレーキホイル30と、該ブレーキホイルとの間で線条体4が掛け渡されフリーホイル軸36に回転可能に設けられたフリーホイル35とを備える。そして、前記のスライドホイル20とフリーホイル35は、互いのホイル平面が向き合うように並列に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線・ケーブル等の製造ラインにおいて、リールに巻回されている線条体を所定の張力で繰出す線条体繰出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電線・ケーブル等の製造ラインで、素材となる線条体に所定の張力を付与して繰出すために、一般にブレーキホイルと複数のフリーホイルとの間に線条体を掛け渡し、ブレーキホイルを制動することで線条体の張力を付与している(例えば、特許文献1参照)。また、線条体の繰出し装置では、リールに巻回されている線条体を繰出すサプライ部と、上記の線条体に張力を付与する張力付与部との間に、クッション部を設けることにより、サプライ部からの急な線条体の繰出し速度変動や張力変動を吸収・緩和することが行われている。なお、線条体の繰出し速度変動や張力変動の要因としては、起動時や停止時の他に、完全整列巻きでない場合の巻付け径のバラツキや下層への落ち込み、食い込み等がある。
【0003】
図5〜図8は、上述した従来の線条体繰出し装置の一例を説明する図である。図5に示すように、線条体4は、リール12に巻回された状態でサプライ部1から繰出され、クッション部2のガイドホイルユニット6とスライドホイルユニット5を経て、張力付与部3のブレーキホイルユニット7とフリーホイルユニット8により所定の張力が付与されて、次工程に送出される。
【0004】
サプライ部1は、図6に示すように、リール軸11に線条体4が巻回されているリール12が固定され、リール軸11は、ベアリング等の軸受14により支持フレーム15に回転可能に支持されている。また、リール軸11には、リール12の回転を制動するリールブレーキ13が接続され、クッション部2との間の線条体4に張力が与えられる。この張力は、線条体4が弛まず、線条体の品質(伸び、変形等)に影響が出ず、且つリール12に巻かれた線条体同士の食い込みや絡み等が発生せず、スムーズな繰出しができる程度の張力である。
【0005】
クッション部2は、図7(A)に示すように、スライドホイル軸21にベアリング等の軸受22により回転可能に設けられたスライドホイル20と、スライドホイル軸21をスプリング等の付勢手段23で付勢して、スライドホイル軸21を上下方向のS方向に移動可能とするスライド軸24とスライド部材25からなるスライド手段と、を有するスライドホイルユニット5を備える。このスライドホイルユニット5は、上方への線条体張力と下方への自重・付勢力がバランスするようにして、リールから引き出された線条体4の速度変動及び張力変動を吸収・緩和させている。また、必要に応じて、サプライ部1からの線条体4をスライドホイル20に案内するガイドホイルユニット6が設けられている。
【0006】
ガイドホイルユニット6は、例えば、リールから繰出された線条体4が入線され、スライドホイル20に案内するガイドホイル26aと、スライドホイル20からの線条体4をブレーキホイル側に出線するガイドホイル26bの2つのガイドホイルで形成される。2つのガイドホイル26a,26bは、支持フレーム29に支持固定されたガイドホイル軸27に、ベアリング等の軸受28を用いて回転可能に支持される。なお、1つのスライドホイル20と2つのガイドホイル26a,26bに線条体4をスムーズに掛け渡すために、図7(A)のd−d矢視による図7(B)に示すように、スライドホイルユニット5側のスライドホイル軸21を、ガイドホイルユニット6のガイドホイル軸27に対して、多少傾斜させている。
【0007】
張力付与部3は、特許文献1にも開示されているような構成で、例えば、図8(A)に示すように、駆動側のブレーキホイルユニット7とその従動側としてのフリーホイルユニット8からなる。ブレーキホイルユニット7は、円柱状のブレーキホイル30に線条体4を複数ターン巻付ける構成で、ブレーキホイル軸31が接続され、ベアリング等の軸受33により支持フレーム34に回転可能に支持され、ブレーキ32により回転抵抗を与えることで、線条体4に張力が付与される。この張力は、次工程における製造条件によって決まるが、通常、サプライ部1で付与される張力を上回る値となることから、本ユニットが必要とされる。
【0008】
フリーホイルユニット8は、フリーホイル軸36にベアリング等の軸受37を用いて複数個のフリーホイル35を回転可能に設けてなり、フリーホイル軸36は支持フレーム38に支持固定される。なお、ブレーキホイル30とフリーホイル35間で、線条体4をスムーズに掛け渡すために、図8(A)のe−e矢視による図8(B)に示すように、フリーホイルユニット8のフリーホイル軸36をブレーキホイルユニット7のブレーキホイル軸31に対して、多少傾斜させている。
【特許文献1】特開平3−246824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
線条体の繰出し装置は、サプライ部1、クッション部2、張力付与部3のそれぞれの機能が異なることから、それぞれ独立した装置として構成され、線条体4の走行方向に沿った直列状態で配置される。これらの装置に使用される各ホイルの外径は、線条体4に与える曲げが製品の品質に影響を与える。例えば、製品が鉄線である場合は、曲げによる塑性変形が問題とされ、通信用の銅撚り線である場合は、撚り形状のくずれ、通信用光ケーブルである場合は、配列乱れや伝送特性の悪化が問題とされる。
【0010】
線条体の製品種別によって各ホイルの外径は異なるが、例えば、電線の場合では、使用されるホイルの外径は、線条体外径の20〜40倍とされる。この結果、サプライ部1、クッション部2、張力付与部3の3つの装置が走行方向に沿った直列状態で配置されていると、設備が大型化し、製造コストを増加させる要因ともなっている。
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、クッション部と張力付与部の構成の一部の共用化を図り、小型化された線条体繰出し装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による線条体繰出し装置は、リールに巻回されている線条体を繰出すサプライ部と、該サプライ部から入線された線条体の張力変動を緩和するクッション部と、該クッション部から入線された線条体に所定の張力を与えて出線する張力付与部を備える線条体繰出し装置である。前記のクッション部は、スライドホイル軸に回転可能に設けられたスライドホイルと、付勢手段により付勢してスライドホイル軸を上下方向にスライド可能に支持するスライド手段を備える。前記の張力付与部は、ブレーキホイル軸に固定されたブレーキホイルと、該ブレーキホイルとの間で線条体が掛け渡されフリーホイル軸に回転可能に設けられたフリーホイルとを備える。そして、前記のスライドホイルとフリーホイルは、互いのホイル平面が向き合うように並列に配置される。
【0012】
また、本発明による線条体繰出し装置は、サプライ部から繰出された線条体をスライドホイルに案内するためのガイドホイルを、ブレーキホイルのブレーキホイル軸に回転可能に設けることができる。なお、スライドホイル軸は中空の円筒形状で形成され、スライドホイルをベアリングにより回転可能に支持させ、フリーホイル軸をスライドホイル軸の中空部を貫通して配置することができる。この場合、スライド手段は、フリーホイル軸を挟むように配された少なくとも2本のスライド軸と、該スライド軸にスライドして筒状のスライドホイル軸を上下方向に移動させる上下の2組のスライド部材とを備えた構成とされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クッション部の構成の一部を張力付与部に組み込むことができ、またクッション部のスライドホイルと張力付与部のフリーホイルのホイル平面が、互いに向き合うように並列に配置することができる。この結果、従来のクッション部と張力付与微を直列状態で配置する構成と比べて、設備の小型化を容易に実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態の概略を説明する図である。なお、図の説明に、従来技術である図5〜図8に示した線条体繰出し装置の説明に用いたのと同等の機能を有する構成部には同じ符号を用い、本発明における特徴部分を明確にする。
【0015】
図1(A)は、図5に対応する概略図で、線条体4が巻回されたサプライ部1と、本発明によるクッション部2と張力付与部3からなる構成を備えている。サプライ部1は、図6で説明したのと同様なものが用いられ、図1では省略しているが、リール12のリール軸には回転抵抗を付与するリールブレーキが接続され、クッション部との間の線条体4にある程度の張力が与えられる。この場合の張力は、線条体4が弛まず、線条体の品質(伸び、変形等)に影響が出ず、且つリール12に巻かれた線条体同士の食い込みや絡み等が発生せず、スムーズな繰出しができる程度の張力である。
【0016】
図1(B)は、図1(A)のf−f矢視によるクッション部2と張力付与部3の概略を説明する図である。クッション部2は、図7で説明したのと同等な機能を備えたスライドホイルユニット5aとガイドホイルユニット6aを備えている。スライドホイルユニット5aは、スライドホイル軸21にベアリング等の軸受22により回転可能に設けられたスライドホイル20と、スライドホイル軸21をスプリング等の付勢手段23で付勢し、スライドホイル軸21を軸と直交する上下方向のS方向にスライド可能とするスライド軸24とスライド部材25を備えている。
【0017】
上述したスライドホイルユニット5aは、付勢手段23により上方への線条体張力と下方への自重・付勢力がバランスするようにされ、リール12から引き出された線条体4の速度変動及び張力変動を吸収・緩和させている。なお、付勢手段23として、スプリングのようなバネ部材を用いる代わりに、圧縮エア等を用いた衝撃を和らげる弾性装置を用いることもできる。
【0018】
サプライ部1からの線条体4は、スライドホイル20に直接案内するようにしてもよいが、図7で説明したように、ガイドホイルユニットのガイドホイルを介して案内させることができる。この場合、本発明においては、ガイドホイルユニット6aのガイドホイルは、例えば、リールから繰出された線条体4を入線しスライドホイル20に案内するガイドホイル26aの1つだけを用い、図7の説明した出線側のガイドホイル26bを省略することができる。そして、ガイドホイル26aは、張力付与装置のブレーキホイル30のブレーキホイル軸31上に、ベアリング等の軸受28を用いて回転可能に設けられる。すなわち、図7におけるクッション部2のガイドホイルユニットを、ブレーキホイルユニット7のブレーキホイル用のブレーキホイル軸31を兼用して、一体的に組み込んだ形態とすることができる。
【0019】
張力付与部3のブレーキホイルユニット7は、図8で説明したのと同様な円柱状のブレーキホイル30に、線条体4を複数ターン巻付ける構成とすることができる。ブレーキホイル30は、ブレーキホイル軸31に固定されてベアリング等の軸受33により支持フレーム34に回転可能に支持され、ブレーキ32により回転抵抗が与えられて、線条体4に所定の張力が付与される。この張力は、次工程における製造条件によって決まるが、サプライ部1で付与される張力を上回る値となるように制御される。本発明では、ブレーキホイル30と支持フレーム34との間に、上述したようにガイドホイル26aを配して、サプライ部1からの入線をスライドホイル20に案内することができる。
【0020】
フリーホイルユニット8は、図8で説明したのと同様に、フリーホイル軸36にベアリング等の軸受37により複数個のフリーホイル35を回転可能に設け、フリーホイル軸36は支持フレーム38に固定する構成とされる。ただ、本発明では、このフリーホイル35のフリーホイル軸36の軸心と、スライドホイル20のスライドホイル軸21の軸心が互いに一致または近接するように配置する。なお、フリーホイル軸36は支持フレーム38に固定されて移動しないが、スライドホイル軸21は付勢手段23とスライド部材25により上下方向に移動可能であり、定常時に両方の軸の軸心がほぼ一致するように配置されているのが好ましい。
【0021】
上記のように、クッション部のスライドホイル20のスライドホイル軸21と、張力付与部のフリーホイル35のフリーホイル軸36との軸心がほぼ一致するようにすることで、クッション部のスライドホイル20と張力付与部のフリーホイル35とは、そのホイル平面が互いに向き合うように並列状態で配置することができる。この結果、図5〜図8で説明した、直列状態の配置で線条体を繰出す場合に比べて、装置の設置スペースを大幅に削減することが可能となる。
【0022】
上述した構成の線条体繰出し装置は、サプライ部1から繰出された線条体4は、弛みのない程度の張力が付与され、ガイドホイルユニット6aのガイドホイル26aに入線される。次いで、クッション部のスライドホイルユニット5aのスライドホイル20に掛け渡され、線条体4の速度変動及び張力変動が吸収・緩和される。スライドホイル20から出た線条体4は、張力付与装置のブレーキホイルユニット7のブレーキホイル30に直接掛け渡される。この後、線条体4は、駆動側のブレーキホイル30と従動側のフリーホイルユニット8の複数のフリーホイル35により、所定の張力に調整されて次工程に出線される。
【0023】
図2〜3は、他の実施形態を説明する図である。図2は、図1(B)に対応する図、図3はスライドホイルユニットの部分拡大図である。図の説明には、図1で説明した構成部と同等の構成部には同じ符号を付して説明を簡略にし、その他の構成部には符号に「 ’」付して説明する。
【0024】
この実施形態は、張力付与部にクッション部を完全に組み込んだ形態といえる。クッション部のスライドホイルユニット5aは、円筒状のスライドホイル軸21’上にベアリング等の軸受22’を用いて回転可能に設けられたスライドホイル20’と、スプリング等の付勢手段23で付勢し、スライドホイル軸21’を上下方向にスライド可能とするスライド軸24とスライド部材25’を有するスライド手段を備えている。
スライドホイルユニット5aは、付勢手段23により上方への線条体張力と下方への自重・付勢力がバランスするようにされ、リールから引き出された線条体4の速度変動及び張力変動を吸収・緩和させている。
【0025】
サプライ部1からの線条体4は、スライドホイル20’に直接案内するようにしてもよいが、図1(B)の実施形態と同様に、ガイドホイルユニット6aのガイドホイル26aを介して案内させることができる。そして、ガイドホイル26aは、張力付与装置のブレーキホイル30のブレーキホイル軸31に、ベアリング等の軸受28を用いて回転可能に設け、ブレーキホイルユニット7に一体的に組み込んだ形態とすることができる。
【0026】
張力付与部3のブレーキホイルユニット7は、図1(A)で説明したのと同様な円柱状のブレーキホイル30に線条体4を複数ターン巻付ける構成とすることができる。ブレーキホイル30は、支持フレーム34との間に、上記したようにガイドホイル26aを配して、ブレーキホイル軸31に固定してベアリング等の軸受33により支持フレーム34に回転可能に支持され、ブレーキ32により回転抵抗が与えられて、線条体4に所定の張力が付与される。
【0027】
張力付与部3のフリーホイルユニット8は、図1(B)で説明したのと同様に、フリーホイル軸36にベアリング等の軸受37を用いて複数個のフリーホイル35を回転可能に設け、フリーホイル軸36は支持フレーム38’に支持固定する構成とされる。ただ、この実施形態では、このフリーホイル35のフリーホイル軸36は、スライドホイル20の円筒状のスライドホイル軸21’の中空部を貫通する同軸配置とされ、図の右側に配置した支持フレーム38’で支持することができる。
【0028】
スライドホイル20’の円筒状のスライドホイル軸21’とフリーホイル35のフリーホイル軸36の軸心が互いに一致または近接するように配置し、スライドホイル20とフリーホイル35とは、そのホイル平面が互いに向き合うように並列状態で配置することでは、図1(B)の実施形態と同じである。しかし、図1(B)の形態では、フリーホイル35のフリーホイル軸36を固定する支持フレーム38が図の左側に位置するのに対し、図2の実施形態では、スライドホイルユニット5aのスライド手段等の支持部と同じ側に配置することができる。この結果、線条体4の線掛け(ホイルに線条体を通す作業)時に、一方の側から線条体を、輪を描くようにしてホイルに通すことが可能となり、その作業性を向上させることができる。
【0029】
スライドホイルユニット5aの構成について、図3の部分拡大図で詳述すると、スライドホイル20’は、円筒状のスライドホイル軸21’に軸受22’を用いて回転可能に支持される。スライドホイル軸21’は、短尺の円筒形状で形成され、一方の端部にスライド部材25’が取り付けられる。このスライド部材25’は、例えば、円筒状のスライドホイル軸21’の軸心の両側の上下位置に、少なくとも2組(合計で4個)が取り付けられる。なお、上下2つのスライド部材25’を一体にして長いスライド部材とすることもできるが、重量が増加し可動負荷が大きくなる。
【0030】
スライドホイル軸21’の中空部には、その軸心を通るようにフリーホイルユニットのフリーホイル軸36が配され、このフリーホイル軸36の両側に、スライド部材25’を移動可能に支持するスライド軸24が配される。この実施形態では、例えば、スライドホイル軸21’は、スライドホイル20’に加わる張力と付勢手段23による付勢力のバランスで、定常時は軸心がフリーホイルユニット8のフリーホイル軸36の軸心にほぼ一致するように設定されているとする。この場合、スライドホイル20’に加わる張力が変動すると、この張力の変動を緩和するために、スライドホイルユニット5aはS方向に上下移動するが、その移動範囲は、フリーホイル軸36とスライドホイル軸21’間の間隙L1とL2の範囲内に制限される。
【0031】
図4は、その他の実施形態を説明する図である。なお、図の説明には、図1で説明した構成部の説明に用いたのと同じ符号を付して説明を簡略にする。図4(A)は、図1(A)に対応する概略図で、線条体4が巻回されたサプライ部1と、クッション部2と張力付与部3からなる同様な構成を備えている。ただ、本実施形態では、以下に説明するように、図1の実施形態に対して、張力付与装置のブレーキホイルユニットとフリーホイルユニットの位置関係を逆にした例である。しかし、サプライ部1から繰出される線条体4は、クッション部との間である程度の張力が与えられて入線され、張力付与部でこれと異なる張力が付与されて次工程に出線される構成としては同じである。
【0032】
本実施形態では、サプライ部1から繰出された線条体4は、ガイドホイルユニットを介することなく、スライドホイルユニット5aに直接入線され、次いでブレーキホイルユニット7に直接出線される。スライドホイルユニット5a自体は、図1(B)で説明したのと同様に構成することができ、スライドホイル軸21にベアリング等の軸受22により回転可能に設けられたスライドホイル20を有する。また、スライドホイル軸21をスプリング等の付勢手段23で付勢し、スライドホイル軸21を上下方向のS方向にスライド可能とするスライド軸24とスライド部材25を備えている。そして、付勢手段23により上方への線条体張力と下方への自重・付勢力がバランスするようにされ、リール12から引き出された線条体4の速度変動及び張力変動を吸収・緩和させる。
【0033】
張力付与部の駆動側のブレーキホイルユニット7は、図1(B)ようにガイドホイルユニット6aを有しない図8で説明したのと同様な構成のものを用いることができる。ブレーキホイル30は、ブレーキホイル軸31に固定してベアリング等の軸受33により支持フレーム34に回転可能に支持され、ブレーキ32により回転抵抗が与えられて、スライドホイルユニット5aから直接入線された線条体4に所定の張力が付与される。
【0034】
張力付与部の従動側のフリーホイルユニット8は、図1(B)で説明したのと同様に、フリーホイル軸36にベアリング等の軸受37により複数個のフリーホイル35を回転可能に設け、フリーホイル軸36は支持フレーム38に支持固定する構成とされる。そして、図1(B)の例と同様に、フリーホイル35のフリーホイル軸36の軸心と、スライドホイル20のスライドホイル軸21の軸心が互いに一致または近接するように配置し、クッション部のスライドホイル20と張力付与部のフリーホイル35とは、そのホイル平面が互いに向き合うように並列状態で配置する。
【0035】
上述した構成の線条体繰出し装置は、サプライ部1から繰出された線条体4は、弛みのない程度の張力が付与され、スライドホイルユニット5aのスライドホイル20に直接入線され、線条体4の速度変動及び張力変動が吸収・緩和される。次いで、スライドホイル20から出た線条体4は、張力付与装置のブレーキホイルユニット7のブレーキホイル30に直接掛け渡される。次いで、線条体4は、ブレーキホイル30とフリーホイルユニット8の複数のフリーホイル35により所定の張力に調整されて、フリーホイルユニット8から次工程に出線される。
【0036】
上記の図4の実施形態によれば、フリーホイルユニットの省略を容易とし、設備の小型化をさらに推進することができる。また、図4のスライドホイルユニット5aとフリーホイルユニと8の組み付けを、図2〜図3で説明した構成で置きかえても同様な効果を奏することができる。
なお、本発明の説明で、張力検出手段についての説明は省略したが、特許文献1に開示の張力検出やその他周知の張力検出手段を用いて、所定の張力が得られるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による線条体繰出し装置の実施形態の概略を説明する図である。
【図2】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図3】図2のクッション部の詳細を説明する図である。
【図4】本発明のその他の実施形態を説明する図である。
【図5】従来技術の線条体繰出し装置の概略を説明する図である。
【図6】従来技術のサプライ部を説明する図である。
【図7】従来技術のクッション部を説明する図である。
【図8】従来技術の張力付与部を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
1…サプライ部、2…クッション部、3…張力付与部、4…線条体、5,5a…スライドホイルユニット、6,6a…ガイドホイルユニット、7…ブレーキホイルユニット、8…フリーホイルユニット、11…リール軸、12…リール、13…リールブレーキ、14…軸受、15…支持フレーム、20、20’…スライドホイル、21、21’…スライドホイル軸、22、22’…軸受、23…付勢手段、24…スライド軸、25、25’…スライド部材、26a,26b…ガイドホイル、27…ガイドホイル軸、28…軸受、29…支持フレーム、30…ブレーキホイル、31…ブレーキホイル軸、32…ブレーキ、33…軸受、34…支持フレーム、35…フリーホイル、36…フリーホイル軸、37…軸受、38、38’…支持フレーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールに巻回されている線条体を繰出すサプライ部と、該サプライ部から入線された線条体の張力変動を緩和するクッション部と、該クッション部から入線された線条体に所定の張力を与えて出線する張力付与部とを有する線条体繰出し装置であって、
前記クッション部は、スライドホイル軸に回転可能に設けられたスライドホイルと、付勢手段により付勢して前記スライドホイル軸を上下方向にスライド可能に支持するスライド手段とを備え、
前記張力付与部は、ブレーキホイル軸に固定されたブレーキホイルと、該ブレーキホイルとの間で前記線条体が掛け渡されフリーホイル軸に回転可能に設けられたフリーホイルとを備え、
前記スライドホイルと前記フリーホイルは、互いのホイル平面が向き合うように並列に配置されていることを特徴とする線条体繰出し装置。
【請求項2】
前記サプライ部から繰出された線条体を前記スライドホイルに案内するためのガイドホイルが、前記ブレーキホイルのブレーキホイル軸に回転可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の線条体繰出し装置。
【請求項3】
前記スライドホイル軸は中空の円筒形状に形成され、前記フリーホイル軸が前記スライドホイル軸の中空部を貫通していることを特徴とする請求項1または2に記載の線条体繰出し装置。
【請求項4】
前記スライドホイルは、円筒形状の前記スライドホイル軸にベアリングを介して回転可能に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の線条体繰出し装置。
【請求項5】
前記スライド手段は、前記フリーホイル軸を挟むように配された少なくとも2本のスライド軸と、該スライド軸にスライドして筒状の前記スライドホイル軸を上下方向に移動させる上下の2組のスライド部材と、を備えていることを特徴とする請求項3または4に記載の線条体繰出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−46257(P2009−46257A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214277(P2007−214277)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】