説明

線欠陥検出方法及び線欠陥検出装置

【課題】 TFTアレイ基板の欠陥検出において、ゲート方向の線欠陥でも明確に検出することができる線欠陥検出方法及び線欠陥検出装置を提供する。
【解決手段】 電子ビームをTFTアレイ基板上に照射して、表面電位の走査画像を形成し、前記走査画像からTFTアレイの線欠陥を検出する線欠陥検出方法であって、TFTアレイ基板に電子ビームを照射することにより得られるTFTアレイ基板の表面電位の走査画像を形成する工程と、前記走査画像からTFTアレイが接続された一方向の各画素の画素値を積算する投影処理工程と、前記投影処理されたデータについて、差分処理を行いデータを取得する差分処理工程と、前記差分処理されたデータについて、第1の閾値を設定し、前記第1の閾値を超えた部分の特性値を算出する特性算出工程と、前記特性値について、第2の閾値を設定し、前記第2の閾値に基づいて線欠陥を検出する線欠陥検出工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどに使われるTFT(Thin film transistor)アレイ基板の欠陥状況を検出する検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶基板や有機EL基板等のTFTアレイが形成された半導体基板の製造過程では、製造過程中にTFTアレイ検査工程を含み、このTFTアレイ検査工程において、TFTアレイの欠陥検査が行われている。TFTアレイ基板は、例えば、走査線として機能する複数本のゲート線が平行に配設されるとともに、信号線として機能する複数本のソース線がゲート線に直交して配設され、この両線が交差する部分の近傍にTFTが配設され、このTFTに画素電極(ピクセル)が接続される。
【0003】
TFTアレイ検査装置としては、電子線方式や光学方式が知られており、電子線や光をTFTアレイ基板に照射することにより得られるTFTアレイ基板の電位状態を測定し、TFTアレイ基板の異常電位のピクセルを検出することによってTFTアレイの欠陥を検出する。
【0004】
例えば、特許文献1には、TFTアレイ基板の各画素を駆動して得られる二次元の測定データについて、x方向及び/またはy方向の各ラインの測定データの積算値または平均強度を求めて同方向の累積プロファイルデータを作成し、作成した累積プロファイルデータから各ラインのしきい値を求め、各ラインの累積プロファイルデータと、この閾値を比較することで、TFTアレイ基板のx方向及び/またはy方向のラインについてライン単位で画素欠陥を検出するTFTアレイ検査方法が開示されている。図5は、該特許文献に示された検査方法を用いて、欠陥検出を行った結果を示したものである。TFTアレイ基板のソース方向においては、液晶に信号電圧がかかるため、点欠陥、線欠陥のいずれにおいてもその欠陥強度が強く、感度の低い信号を用いて測定されたデータであっても欠陥を検出しやすい。このため、単に測定データの積算値または平均値を求めて閾値と比較するだけで、その欠陥がどのような欠陥であるかを容易に判定することができる。たとえば、累積プロファイルデータの値が低ければ点欠陥、高ければ線欠陥、更に大幅に高ければ複数の線欠陥であると判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005―208245号公報(平成17年8月4日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献に示された方法で実際にTFTアレイ基板のゲート方向の欠陥を検出する場合、ゲート方向の線欠陥を検出するために感度の高い信号を用いて測定を行うと、点欠陥の強度が大きく出てしまったり、信号の影響により発生したノイズも検出されてしまい、単純に積算値あるいは平均強度を求めて、閾値と比較するという方法では、それが点欠陥か、線欠陥か、あるいはその他のノイズであるかを明確に区別することができない。このような理由により、これまではゲート方向の線欠陥を検出する有効な方法は実用化されていなかった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、TFTアレイ基板の欠陥検出において、ゲート方向の線欠陥でも明確に検出することができる線欠陥検出方法及び線欠陥検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る線欠陥検出方法は、電子ビームをTFTアレイ基板上に照射して、表面電位の走査画像を形成し、前記走査画像からTFTアレイの線欠陥を検出する線欠陥検出方法であって、TFTアレイ基板に電子ビームを照射することにより得られるTFTアレイ基板の表面電位の走査画像を形成する工程と、前記走査画像からTFTアレイが接続された一方向の各画素の画素値を積算する投影処理工程と、前記投影処理されたデータについて、差分処理を行いデータを取得する差分処理工程と、前記差分処理されたデータについて、第1の閾値を設定し、前記第1の閾値を超えた部分の特性値を算出する特性算出工程と、前記特性値について、第2の閾値を設定し、前記第2の閾値に基づき線欠陥を検出する線欠陥検出工程を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る線欠陥検出方法は、前記特性算出工程は、前記第1の閾値を越えた部分の和を算出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る線欠陥検出方法は、前記特性算出工程は、前記第1の閾値を越えた部分の全半値幅を算出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る線欠陥検出方法は、前記線欠陥検出方法は、前記TFTアレイ基板のゲート方向の線欠陥を検出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る線欠陥検出方法は、ゲートまたはソースに応じて、前記第1の閾値及び/または第2の閾値を異ならせることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る線欠陥検出装置は、電子ビームをTFTアレイ基板上に照射して、表面電位の走査画像を形成し、前記走査画像からTFTアレイの線欠陥を検出する線欠陥検出装置であって、TFTアレイ基板に電子ビームを照射することにより得られるTFTアレイ基板の表面電位の走査画像を形成する画像形成部と、前記走査画像からTFTアレイが接続された一方向の各画素の画素値を積算する投影処理部と、前記投影処理されたデータについて、差分処理を行いデータを取得する差分処理部と、前記差分処理されたデータについて、第1の閾値を設定し、前記第1の閾値を超えた部分の特性値を算出する特性算出部と、前記特性値について、第2の閾値を設定し、前記第2の閾値に基づき線欠陥を検出する検出部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、TFTアレイ基板の欠陥検出において、ゲート方向の線欠陥でもノイズ等の影響を受けることなく、明確に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の線欠陥検出処理のフローチャートである。
【図2】走査画像の形成からパターン処理を説明する図である。
【図3】線欠陥を検出する処理を説明する図である。
【図4】本発明の欠陥検出装置の一構成図である。
【図5】従来の欠陥検出方法を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しながら以下に説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
<実施形態1>
図1は、実施形態1の線欠陥検出の処理の流れを示したフローチャートである。なお、図中のSは、フローチャートにおける各ステップを表す。
【0017】
まず、TFTアレイに検査信号を印加し、この検査信号で得られるTFTアレイの表面電位分布を検出することで走査画像を取得する。本実施形態では、ゲート方向の線欠陥を検出するために感度の高い検査信号を用いる。TFTアレイ基板に検査信号を印加するとTFTアレイにはこの印加した検査信号に基づいて二次元的パターンの表面電位分布が形成される。このTFTアレイに電子ビームを照射し(ステップS101)、二次電子を検出する(ステップS102)。次に、検出された二次電子により得られるデータに基づいて走査画像を形成する(ステップS103)。
【0018】
図2は、走査画像の形成からパターン処理までの一連の処理結果を示している。図2(a)は、上記の処理により得られた走査画像である。ゲート方向における線欠陥を検出するための信号を用いているので、ここでは、この走査画像を線欠陥強調パターンと呼ぶ。線欠陥強調パターンにおいては、線欠陥201は薄く、また、点欠陥202もしくはその他のノイズは線欠陥より濃く現れる。これは、線欠陥の場合はショートである場合が多く、完全に断線しているわけではないためである。また、線欠陥201は帯状に、また点欠陥202もしくはその他のノイズは、点状に現れる。これは、点欠陥202は単独で発生することが多いことに対し、線欠陥201は複数本まとまって発生することが多いためである。また、ゲート方向の両側にTFTが配置されたマルチドメインの構成である場合は、点欠陥は半絵素で発生するのに対し、線欠陥では1絵素で発生するためである。
【0019】
次に、線欠陥強調パターンに対して投影処理を行う(ステップS104)。具体的には、走査画像に対して、垂直にスキャンを行い、各投影ラインの平均強度を求める。図2(b)は、投影処理を行った投影波形である。次に、上記投影波形に対して差分処理を行う(ステップS105)。一般的には、隣接する絵素の平均値等と比較するが、本発明の場合は、線欠陥のように複数の絵素にまたがる場合があるので、複数絵素離れた絵素との比較を行い、差分が所定の数値よりも大きくなる領域を対象物として抽出する。図2(c)は、差分処理を用いて波形の抜き出しを行ったものである。
【0020】
ここで、差分処理を行った波形において、線欠陥201に対応する部分Xと、点欠陥202、もしくはその他のノイズに対応する部分Yを比較すると、それぞれのピークはほぼ同じである。これは、線欠陥201の欠陥強度は弱いが、対応する部分Xの画素数は多い(幅が広い)のに対し、点欠陥202、もしくはその他のノイズの欠陥強度は強いが、対応する部分Yの画素数は少ない(幅が狭い)ことに起因しており、線欠陥強調パターンにおいては、点欠陥202、もしくはその他のノイズが大量に発生し、欠陥強度の弱い線欠陥201の画素数の積算値と欠陥強度の強い点欠陥201もしくはその他のノイズの画素数の積算値のピークが同じ、あるいは場合によっては、線欠陥201以外の部分でもピークが高く出てしまうことがあるためである。このため、閾値を仮に第0の閾値として図2(c)に設定しても、第0の閾値を超えるか否かによって、線欠陥201を検出することは困難である。
【0021】
図3は、差分処理したデータに基づき、線欠陥201を検出する処理を示したものである。まず、差分処理後の波形に対し第1の閾値を設定する(ステップS106)。第1の閾値は、差分処理後の波形のピークよりも必ず小さくなるように設定する。図3(a)は、第1の閾値を設定した状態を示している。具体的な閾値は、過去の欠陥検査データに基づき、設定すればよい。次に、差分処理後の波形に対し、第1の閾値を越えた部分301、302、303の和をそれぞれ算出する(ステップS107)。図3(b)は、ステップS107の算出結果をグラフ化したものである。次にこの算出結果のグラフに対し、第2の閾値を設定する(ステップS108)。第2の閾値は、その欠陥が、線欠陥であるか、それ以外かを区別する閾値であり、過去の欠陥検査データに基づき、適宜設定すればよい。図3(c)は第2の閾値を設定した状態を示している。この閾値と比較して、欠陥が線欠陥か否かを判定する(ステップS109)。図3(c)によれば、第2の閾値を超えたもの302が線欠陥(ステップS110)、第2の閾値以下のもの301、303が点欠陥もしくはノイズと判定される(ステップS111)。
<実施形態2>
次に、実施形態2について説明する。上記と同様にしてソース方向の線欠陥検出を行った。ソース方向の場合は、上述したように欠陥強度が強いため、TFTアレイ基板2に通常の検査信号を印加する点が実施形態2とは異なる。この検査信号で得られるTFTアレイの表面電位分布を検出することで走査画像を取得し、得られた走査画像に対して、投影処理、差分処理を行い、欠陥検出の波形を得る。
【0022】
ここで、上記波形に対し第1の閾値を設定し、第1の閾値を越えた部分についてそれぞれの和を算出する。次にこの算出結果に対して第2の閾値を設定し、第2の閾値を超えたものを線欠陥と判定する。それぞれの具体的な閾値は、過去の欠陥検査データに基づき、設定すればよい。ソース方向、ゲート方向においては、欠陥強度や欠陥波形が異なるため、それぞれに適した閾値を設定することでソース方向、ゲート方向の線欠陥を適切に検出することが可能となる。
【0023】
図4は、本発明の線欠陥検出装置1の一構成例を説明するための図である。線欠陥検出装置1は、検査対象であるTFTアレイ基板2に検査信号を印加する検査信号形成部3、TFTアレイ基板に電子ビームを照射する照射装置4、TFT基板の二次電子を検出する二次電子検出部5と、走査画像を形成する画像形成部6と、走査画像から画素値を積算する投影処理部7と、投影処理されたデータについて、差分処理を行う差分処理部8と、差分処理されたデータについて特性を算出する特性算出部9と、線欠陥を検出する検出部10とを備える。
【0024】
TFT基板2は、アレイ状に配置されたピクセル電極と、TFT基板の駆動回路と、電源ラインを含む配線とを備えるTFT基板である。検査信号形成部3は、欠陥検査項目に応じた所定パターンの検査信号を印加する。照射装置4は、例えば荷電粒子ビームとして電子線を用いる場合には、TFT基板2上に電子線を照射する電子線源を配置する。二次電子検出部5は、照射された電子線によってTFT基板2から放出される二次電子を検出する。画像形成部6は、検出された二次電子の電位状態に基づき走査画像を形成する。投影処理部7は、走査画像からTFTアレイが接続された一方向の各画素の画素値を積算する。差分処理部8は、投影処理されたデータについて投影波形の背景画像をあらかじめ基準画像とし、現在の波形画像との間で画素ごとの引き算を行い、その差分が所定の数値よりも大きくなる領域を対象物として抽出する。特性算出部9は、差分処理されたデータについて、第1の閾値を設定し、前記第1の閾値を超えた部分の特性を算出する。検出部10は、算出された特性データについて第2の閾値を設定し、前記第2の閾値に基づいて線欠陥を検出する。
【0025】
なお、本実施の形態では、差分処理後の波形に対し、第1の閾値を越えた部分の和を算出したが、第1の閾値を越えた部分の特性を決定する方法はこれに限らず、例えば、第1の閾値を越えた部分の山形の面積、あるいは全半値幅を算出する方法などを用いても構わない。
【0026】
以上説明したように、本発明の線欠陥抽出方法を用いることで、TFTアレイ基板の線欠陥の抽出を正確かつ容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る線欠陥検出方法及び線欠陥検出装置は、例えばTFTアレイ基板の欠陥検査に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 線欠陥検出装置
2 TFTアレイ基板
3 検査信号形成部
4 照射装置
5 二次電子検出部
6 画像形成部
7 投影処理部
8 差分処理部
9 特性算出部
10 検出部
201 線欠陥
202 点欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームをTFTアレイ基板上に照射して、表面電位の走査画像を形成し、前記走査画像からTFTアレイの線欠陥を検出する線欠陥検出方法であって、
TFTアレイ基板に電子ビームを照射することにより得られるTFTアレイ基板の表面電位の走査画像を形成する工程と、
前記走査画像からTFTアレイが接続された一方向の各画素の画素値を積算する投影処理工程と、
前記投影処理されたデータについて、差分処理を行いデータを取得する差分処理工程と、
前記差分処理されたデータについて、第1の閾値を設定し、前記第1の閾値を超えた部分の特性値を算出する特性算出工程と、
前記特性値について、第2の閾値を設定し、前記第2の閾値に基づき線欠陥を検出する線欠陥検出工程を含むことを特徴とする線欠陥検出方法。
【請求項2】
前記特性算出工程は、前記第1の閾値を越えた部分の和を算出することを特徴とする請求項1記載の線欠陥検出方法。
【請求項3】
前記特性算出工程は、前記第1の閾値を越えた部分の全半値幅を算出することを特徴とする請求項1記載の線欠陥検出方法。
【請求項4】
前記線欠陥検出方法は、前記TFTアレイ基板のゲート方向の線欠陥を検出することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の線欠陥検出方法。
【請求項5】
前記線欠陥検出方法は、ゲートまたはソースに応じて、前記第1の閾値及び/または第2の閾値を異ならせることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の線欠陥検出方法。
【請求項6】
電子ビームをTFTアレイ基板上に照射して、表面電位の走査画像を形成し、前記走査画像からTFTアレイの線欠陥を検出する線欠陥検出装置であって、
TFTアレイ基板に電子ビームを照射することにより得られるTFTアレイ基板の表面電位の走査画像を形成する画像形成部と、
前記走査画像からTFTアレイが接続された一方向の各画素の画素値を積算する投影処理部と、
前記投影処理されたデータについて、差分処理を行いデータを取得する差分処理部と、
前記差分処理されたデータについて、第1の閾値を設定し、前記第1の閾値を超えた部分の特性値を算出する特性算出部と、
前記特性値について、第2の閾値を設定し、前記第2の閾値に基づき線欠陥を検出する検出部を備えることを特徴とする線欠陥検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−173034(P2012−173034A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33030(P2011−33030)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【特許番号】特許第5015334号(P5015334)
【特許公報発行日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】