説明

線熱源

【課題】カーボンナノチューブを利用したエネルギー転換効率の高い線熱源を提供する。
【解決手段】線熱源は、線状の支持体202と、前記線状の支持体202に設置された加熱素子204と、前記加熱素子204と電気的に接続された二つの電極206と、を含み、前記二つの電極206の少なくとも一つの電極206が、複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ構造体であり、前記加熱素子204は、同じ方向に沿って配列され、端と端が分子間力で接続されている複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線熱源に関し、特にカーボンナノチューブを利用した線熱源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱源は、人々の生活及び科学の研究などの分野において重要な役割を果たす。例えば、電気加熱器、電気ストーブ及び赤外線治療器などに応用される。
【0003】
図1は、従来技術における線熱源10を示す。該線熱源10は、円柱状の支持体102と、加熱素子104と、保護層106と、二つの電極110と、二つの固定素子108とを含む。前記加熱素子104は、前記支持体102の表面に設置される。前記保護層106は、前記加熱素子104の表面に設置される。前記二つの電極110は、それぞれ、前記支持体102の両端に設置され、前記加熱素子104に電気的に接続される。前記二つの固定素子108は、それぞれ、前記二つの電極110及び前記加熱素子104を前記支持体102の両端に固定する。前記加熱素子104は、炭素繊維紙であり、該炭素繊維紙は、紙の基材及び該紙の基材に乱雑に分布されたアスファルト基の炭素繊維を含む。前記紙の基材は、セルロース繊維及び樹脂などの混合物である。前記炭素繊維紙は、前記支持体102に巻き付き、又は前記支持体102を被覆する。前記二つの電極110によって前記加熱素子104に電流を流す場合、熱が該加熱素子から放出される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、炭素繊維紙が厚く、一般的には、数十マイクロメートルであるので、前記線熱源10は、極めて小型の構造を製造しにくく、極めて小型の加熱対象を加熱することに応用できないという欠点がある。前記炭素繊維紙が紙の基材を含むので、該炭素繊維紙の密度及び重量が大きく、前記線熱源の応用することに不便であるという欠点がある。前記炭素繊維紙におけるアスファルト基の炭素繊維が乱雑に分布されるので、該炭素繊維紙は、強度が悪く、強靭性が良くなく、折れやすくなり、応用される範囲が制限されるという欠点がある。前記炭素繊維紙は、電気エネルギーを熱エネルギーに転換する効率が低く、エネルギーが浪費されるという欠点がある。
【0006】
従って、本発明は、線熱源及び該線熱源の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の線熱源は、線状の支持体と、前記線状の支持体に設置された加熱素子と、前記加熱素子と電気的に接続された二つの電極と、を含み、前記二つの電極の少なくとも一つの電極が、複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ構造体であり、前記加熱素子は、同じ方向に沿って配列され、端と端が分子間力で接続されている複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルムである。
【0008】
前記加熱素子におけるカーボンナノチューブが、前記二つの電極の一つの電極から他の電極に向かう方向に配列される。
【発明の効果】
【0009】
従来の線熱源と比べると、本発明の線熱源において、前記二つの電極の少なくとも一つの電極がカーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブを含む。該カーボンナノチューブが優れた導電性を有するので、該電極の抵抗が小さくなる。従って、前記電極を利用した線熱源は、電気エネルギーを熱エネルギーに転換する効率が高くなる。前記カーボンナノチューブの密度が小さいので、前記電極を利用した線熱源は、重量が小さくなり、便利に応用されることができる。前記加熱素子がカーボンナノチューブフィルムを含み、該カーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブを含む。従って、該加熱素子は、均一的に熱を放出することができ、電気エネルギーを熱エネルギーに転換する効率が高く、前記カーボンナノチューブ構造体の単位面積の熱容量は、2×10−4J/cm・K以下である。従って、前記線熱源は、昇温速度が速く、熱応答速度が速く、熱交換速度が速い。前記電極おけるカーボンナノチューブは、優れた力学性能、優れた靭性及び優れた機械強度を有するので、該電極は、優れた力学性能、優れた靭性と機械強度を有し、使用寿命が長くなる。更に、前記電極を利用して、柔軟性の線熱源を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来技術に係る線熱源の構造を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る線熱源の構造を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係る線熱源の図2に示すIII−III線に沿って切断した断面図である。
【図4】本発明の実施例に係る線熱源の図3に示すIV−IV線に沿って切断した断面図である。
【図5】本発明の実施例に係る線熱源における、端と端が接続されたカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図6】カーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図7】本発明の実施例に係る線熱源における、カーボンナノチューブが、長さが基本的に同じで、平行に配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図8】本発明の実施例に係る線熱源における、カーボンナノチューブが等方的に配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図9】本発明の実施例に係る線熱源における、カーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図10】本発明の実施例に係る線熱源における、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの写真である。
【図11】本発明の実施例に係る線熱源における、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図12】ろ過された綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体の写真である。
【図13】異なる仕事率で、それぞれ異なる測量器具を利用して、本実施例1におけるカーボンナノチューブ構造体の表面温度を測量したグラフである。
【図14】本発明の実施例に係る線熱源における、非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造を示す図である。
【図15】本発明の実施例に係る線熱源における、ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造を示す図である。
【図16】本発明の実施例に係る非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図17】本発明の実施例に係るねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図18】本発明の実施例2に係る線熱源の構造を示す図である。
【図19】本発明の実施例3に係る線熱源の構造を示す図である。
【図20】本発明の実施例4に係る線熱源の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0012】
(実施例1)
図2〜図4を参照すると、本発明の実施例1は、線熱源20を提供する。該線熱源20は、線状の支持体202と、反射層210と、加熱素子204と、保護層208と、二つの電極206とを含む。
【0013】
前記反射層210は、前記線状の支持体202の表面に設置される。前記加熱素子204は、前記反射層210の表面に設置される。前記二つの電極206は、間隔を置いて設置され、それぞれ、前記加熱素子204に電気的に接続される。前記保護層208は、前記加熱素子204の表面に設置される。前記線熱源20は、長さ及び直径が制限されず、該直径が1.0ミリメートル〜1.5センチメートルであることが好ましい。本実施例において、前記線熱源20は、直径が1.1ミリメートル〜1.1センチメートルである。
【0014】
前記線状の支持体202は、前記加熱素子204を支持することに用いられる。該線状の支持体202の材料は、例えば、セラミックス、ガラス、樹脂、石英などの硬性材料であってもよく、プラスチック及び柔らかい繊維などの柔らかい材料であってもよい。前記線状の支持体202が柔らかい材料を利用する場合、前記線熱源20は、任意の形状に湾曲することができる。前記線状の支持体202は、長さ及び直径が制限されず、実際の応用に応じて選択することができる。本実施例において、前記線状の支持体202は、セラミックスの円柱体であり、その直径が0.5ミリメートル〜1センチメートルである。
【0015】
前記反射層210は、前記加熱素子204から放出した熱を反射し、該熱を外界の空間に放出させ、加熱効率を高めることに用いられる。該反射層210の材料は、例えば、金属酸化物、金属塩及びセラミックスなどの絶縁材料である。本実施例において、前記反射層210は、酸化アルミニウム膜であり、その厚さが100マイクロメートル〜0.5ミリメートルである。前記反射層210は、物理気相堆積法又は化学気相堆積法などの方法で製造することができる。本実施例において、スパッタリングの方法で前記線状の支持体202の表面に酸化アルミニウムを堆積し、前記反射層210を形成する。勿論、前記反射層210を設置せず、即ち、前記加熱素子204を前記線状の支持体202の表面に直接設置することもできる。
【0016】
前記加熱素子204は、カーボンナノチューブ構造体を含む。該カーボンナノチューブ構造体は、自立構造である。自立構造とは、支持体を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立的に利用するというものである。前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブを含み、該複数のカーボンナノチューブが分子間力で接続され、均一に分布される。前記カーボンナノチューブ構造体に、前記複数のカーボンナノチューブが配向し又は配向せずに配置されている。前記複数のカーボンナノチューブの配列方式により、前記カーボンナノチューブ構造体は非配向型のカーボンナノチューブ構造体及び配向型のカーボンナノチューブ構造体の二種に分類される。本実施例における非配向型のカーボンナノチューブ構造体では、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。配向型のカーボンナノチューブ構造体では、前記複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列している。又は、配向型のカーボンナノチューブ構造体において、配向型のカーボンナノチューブ構造体が二つ以上の領域に分割される場合、各々の領域における複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。この場合、異なる領域におけるカーボンナノチューブの配列方向は異なる。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5ナノメートル〜50ナノメートルに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1ナノメートル〜50ナノメートルに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5ナノメートル〜50ナノメートルに設定される。
【0017】
前記カーボンナノチューブ構造体は、長さ、幅及び厚さが制限されず、実際の応用により製造することができる。本発明のカーボンナノチューブ構造体は、長さが1センチメートル〜10センチメートルであり、幅が1センチメートル〜10センチメートルであり、厚さが0.5ナノメートル〜2.0ミリメートルであり、0.01マイクロメートル〜1.0ミリメートルであることが好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体の熱応答速度は、該カーボンナノチューブ構造体の厚さと関係がある。前記カーボンナノチューブ構造体は、同じ表面積を有する場合、その厚さが厚ければ、熱応答速度が遅くなり、その厚さが薄ければ、熱応答速度が速くなる。前記カーボンナノチューブ構造体の純度が高く、該カーボンナノチューブ構造体は大きな比表面積(例えば、100m/g以上)を有する。該カーボンナノチューブ構造体の単位面積当たりの熱容量は、0(0は含まず)〜2×10−4J/cm・Kであるが、好ましくは、0(0は含まず)〜1.7×10−6J/cm・Kである。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さが1.0マイクロメートル〜1.0ミリメートルである場合、該カーボンナノチューブ構造体が1秒以下の時間で最高温度に達することができるので、前記線熱源20は、加熱対象を速やかに加熱することができる。
【0018】
(一)前記カーボンナノチューブ構造体は、図5に示す、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム143aを含む。前記カーボンナノチューブフィルム143aは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)から引き出して得られたものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されている。即ち、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で長さ方向端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。図6を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、長さが基本的に同じで、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さが同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aの強靭性及び機械強度を高めることができる。前記カーボンナノチューブフィルム143aの厚さが10マイクロメートル以下である場合、該カーボンナノチューブフィルム143aの透光率が96%以上程度に達するため、透明熱源に用いられることも可能である。一枚の前記カーボンナノチューブフィルム143aの単位面積当たりの熱容量は、1.7×10−6J/cm・K以下である。
【0019】
前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルム143aを含むことができる。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145は、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145が0°以上の角度で交差する場合、前記カーボンナノチューブ構造体に複数の微孔が形成される。又は、前記複数のカーボンナノチューブフィルム143aは、隙間なく並列されることもできる。
【0020】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は次のステップを含む。
【0021】
第一ステップでは、カーボンナノチューブアレイを提供する。該カーボンナノチューブアレイは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)であり、該超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、該基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施例において、4インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、前記基材の表面に、均一的に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、前記触媒層が形成された基材を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1)を成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイの高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、基材に垂直に生長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、部分的にカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。生長の条件を制御することによって、前記カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。
【0022】
本実施例において、前記カーボンを含むガスとしては、例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0023】
本実施例により提供されたカーボンナノチューブアレイは、前記の製造方法により製造されることに制限されず、アーク放電法またはレーザー蒸発法で製造してもよい。
【0024】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす。まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。例えば、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブ束からなる連続のカーボンナノチューブフィルムを形成する。
【0025】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブ束が端と端で接合され、連続のカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0026】
(二)前記カーボンナノチューブ構造体は、図7に示す、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。単一の前記カーボンナノチューブフィルムは、ほぼ同じ長さを有する複数のカーボンナノチューブを含む。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、前記複数のカーボンナノチューブは、同じ方向に沿って、均一に並列されている。単一の前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、10ナノメートル〜100マイクロメートルである。前記複数のカーボンナノチューブは、それぞれ前記複数のカーボンナノチューブフィルムの表面に平行に配列され、相互に平行に配列されている。隣接する前記カーボンナノチューブは所定の距離で分離して設置される。前記距離は0マイクロメートル〜5マイクロメートルである。前記距離が0マイクロメートルである場合、隣接する前記カーボンナノチューブは分子間力で接続されている。前記カーボンナノチューブフィルムにおける各々の前記カーボンナノチューブの長さは、前記カーボンナノチューブフィルムの長さと基本的に同じである。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、1センチメートル以上であり、1センチメートル〜30センチメートルであることが好ましい。さらに、各々の前記カーボンナノチューブには結節がない。本実施形態において、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは10マイクロメートルである。単一の前記カーボンナノチューブ145の長さは10センチメートルである。
【0027】
(三)前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。前記カーボンナノチューブフィルムは、図8又は図9に示される。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用することにより、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、前記押し器具の形状及び前記カーボンナノチューブアレイを押す方向により決められている。
【0028】
図8を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向せずに配置される。該カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されている複数のカーボンナノチューブを含む。隣接するカーボンナノチューブが分子間力で相互に引き合い、接続する。該カーボンナノチューブ構造体が平面等方性を有する。該カーボンナノチューブフィルムは、平面を有する押し器具を利用して、カーボンナノチューブアレイが成長された基板に垂直な方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを押すことにより形成される。
【0029】
図9を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列される。該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、基本的に同じ方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、前記異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0030】
前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜の程度は、前記カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブと該カーボンナノチューブフィルムの表面とは、角度αを成し、該角度αは0°以上15°以下である。好ましくは、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行する。前記圧力が大きくなるほど、前記傾斜の程度が大きくなる。前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、前記カーボンナノチューブアレイの高さ及び該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。即ち、前記カーボンナノチューブアレイの高さが大きくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が小さくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが大きくなる。これとは逆に、カーボンナノチューブアレイの高さが小さくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が大きくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが小さくなる。
【0031】
(四)前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。図10及び図11を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、相互に絡み合い、等方的に配列されている。前記カーボンナノチューブ構造体においては、前記複数のカーボンナノチューブが均一に分布されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されている。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であり、200マイクロメートル〜900マイクロメートルであると好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態である。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接続して、相互に絡み合って、カーボンナノチューブネット状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、多くの微小な穴が形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径が10マイクロメートル以下になる。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ構造体は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。用途に応じて、前記カーボンナノチューブ構造体の長さ及び幅を調整することができる。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さは、1.0マイクロメートル〜1.0ミリメートルであり、100マイクロメートルであることが好ましい。
【0032】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、下記のステップを含む。
【0033】
第一ステップでは、カーボンナノチューブの原料を提供する。
【0034】
ナイフのような工具で前記カーボンナノチューブを前記基材から剥離し、カーボンナノチューブの原料が形成される。前記カーボンナノチューブは、ある程度互いに絡み合っている。前記カーボンナノチューブの原料においては、該カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であり、200マイクロメートル〜900マイクロメートルであることが好ましい。
【0035】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブの原料を溶剤に浸漬し、該カーボンナノチューブの原料を処理して、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を形成する。
【0036】
前記カーボンナノチューブ原料を前記溶剤に浸漬した後、超音波式分散、又は高強度攪拌又は振動などの方法により、前記カーボンナノチューブを綿毛構造に形成させる。前記溶剤は水または揮発性有機溶剤である。超音波式分散方法により、カーボンナノチューブを含む溶剤に対して10〜30分間処理する。カーボンナノチューブは大きな比表面積を有し、カーボンナノチューブの間に大きな分子間力が生じるので、前記カーボンナノチューブはそれぞれもつれて、綿毛構造に形成されている。
【0037】
第三ステップでは、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶液をろ過して、最終的な綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を取り出す。
【0038】
まず、濾紙が置かれたファネルを提供する。前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を濾紙が置かれたファネルにつぎ、しばらく放置して、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が分離される。図12を参照すると、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが互いに絡み合って、不規則的な綿毛構造となる。
【0039】
分離された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を容器に置き、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を所定の形状に展開し、展開された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に所定の圧力を加え、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に残留した溶剤を焙り、或いは、該溶剤が自然に蒸発すると、図10と図11に示す綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0040】
前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が展開される面積によって、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度を制御できる。即ち、一定の体積を有する前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体は、展開される面積が大きくなるほど、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度が小さくなる。
【0041】
また、微多孔膜とエアーポンプファネル(Air−pumping Funnel)を利用して綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。具体的には、微多孔膜とエアーポンプファネルを提供し、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を、前記微多孔膜を通して前記エアーポンプファネルにつぎ、該エアーポンプファネルに抽気し、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。前記微多孔膜は、平滑な表面を有する。該微多孔膜において、単一の微小孔の直径は、0.22マイクロメートルにされている。前記微多孔膜は平滑な表面を有するので、前記カーボンナノチューブフィルムは容易に前記微多孔膜から剥落することができる。さらに、前記エアーポンプを利用することにより、前記綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムに空気圧をかけるので、均一な綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムを形成させることができる。
【0042】
前記カーボンナノチューブ構造体が、一枚の前記カーボンナノチューブフィルムだけを含む場合、該カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの両端は、それぞれ、前記第一電極及び前記第二電極に電気的に接続される。前記カーボンナノチューブ構造体が、少なくとも二枚の積層された複数のカーボンナノチューブフィルムを含む場合、隣接するカーボンナノチューブフィルム間におけるカーボンナノチューブ同士の成す角度αは、0°〜90°である。少なくとも一枚の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの両端は、それぞれ、前記第一電極及び前記第二電極に電気的に接続される。
【0043】
(五)前記カーボンナノチューブ構造体は、一つのカーボンナノチューブフィルムのセグメントを含む。前記カーボンナノチューブフィルムのセグメントにおける全てのカーボンナノチューブは、相互に平行し、所定の方向に沿って並列されている。前記カーボンナノチューブフィルムのセグメントにおいて、少なくとも一本のカーボンナノチューブの長さは、前記カーボンナノチューブフィルムのセグメントの全長と同じである。従って、前記カーボンナノチューブフィルムのセグメントの一つの寸法は、前記カーボンナノチューブの長さによって制限されている。前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルムのセグメントを含むことができる。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムのセグメントは、分子間力で結合されている。前記カーボンナノチューブフィルムのセグメントの厚さは、0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。
【0044】
前記二つの電極206は、導電材料からなり、前記加熱素子204の同一表面、又はそれぞれ記加熱素子204の対向する両表面に設置される。前記二つの電極206の形状は制限されない。前記二つの電極206は、極めて小型の線熱源に応用される時には、導電フィルムであり、該導電フィルムの厚さが0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。該導電フィルムの材料は、金属、合金、酸化インジウムスズ(ITO)フィルム、酸化アンチモンスズ(ATO)、銀ペースト、導電重合体又はカーボンナノチューブ構造体などである。前記金属は、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、チタン、ネオジム、パラジウム又はセシウムなどである。前記合金は、前記金属の合金である。前記カーボンナノチューブ構造体は、上述の図5、図7、図8、図9又は図11の示す少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムである。前記二つの電極206の少なくとも一つの電極206は、前記カーボンナノチューブ構造体であってもよい。該カーボンナノチューブ構造体は、図5及び図7の示す少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムであることが好ましい。
【0045】
前記二つの電極206が前記カーボンナノチューブ構造体である場合、該カーボンナノチューブ構造体が接着性を有するので、前記二つの電極206は、直接前記反射層210の表面を被覆し、又は直接前記反射層210の表面に巻き付けられることができる。或いは、前記二つの電極206を、導電接着剤で前記反射層210の表面に接着させてもよい。該二つの電極206を前記加熱素子204に電気的に接続させると同時に、該加熱素子204の表面によく固定させる。本実施例において、前記二つの電極206は、積層された複数の図5に示すようなカーボンナノチューブフィルム143aであり、隣接するカーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブが0°の角度を成す。即ち、隣接するカーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、配列される。前記二つの電極206は、銀ペーストにより前記反射層210の表面に接着される。
【0046】
本実施例において、前記加熱素子204は、積層された百枚の図5に示すカーボンナノチューブフィルム143aを含む。隣接するカーボンナノチューブフィルム143aは分子間力で緊密に接続される。図6を参照すると、各々のカーボンナノチューブフィルム143aは、端と端で接続され、同じ方向に沿って配列されたカーボンナノチューブ145を含む。前記加熱素子204において、隣接するカーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145の配列された方向が垂直する。一部のカーボンナノチューブは、前記第一電極12から前記第二電極14に向かう方向に配列される。前記加熱素子204は、面積が9平方センチメートルであり、長さが3センチメートルであり、幅が3センチメートルであり、厚さが50マイクロメートルである。前記加熱素子204は、前記反射層210及び前記二つの電極206を被覆し、該二つの電極206に電気的に接続される。
【0047】
前記保護層208の材料は、例えば、プラスチック、ゴム及び樹脂などの絶縁材料である。前記保護層208の厚さが制限されず、実際の応用に応じて選択することができる。前記保護層208は、前記加熱素子204の表面を被覆し、前記線熱源20を絶縁状態で使用させ、ほこりが前記加熱素子204に付着することを防止できる。勿論、前記保護層208を設置しなくてもよい。本実施例において、前記保護層208は、材料がゴムであり、その厚さが0.5ミリメートル〜2ミリメートルであり、前記加熱素子204を保護することに用いられる。
【0048】
前記線熱源20の二つの電極206を電源(図示せず)に電気的に接続させ、前記二つの電極206により前記加熱素子204に電圧を印加する場合、該線熱源20における加熱素子204のカーボンナノチューブ構造体は、所定の波長を有する電磁波を放出することができる。加熱対象が、前記線熱源20に直接接触し、又は、前記線熱源20と所定の距離を置いて設置されてもよい。前記カーボンナノチューブ構造体から放出された電磁波が、前記加熱対象を加熱する。前記加熱素子204の寸法及び該加熱素子204に印加された電圧を制御することにより、前記加熱素子204から放出される熱を制御することができる。前記電圧が一定である場合、前記加熱素子204の厚さを変化させることにより、前記加熱素子204から放出された電磁波の波長を調整することができる。即ち、前記加熱素子204が厚くなるほど、前記加熱素子204から放出された電磁波の波長は短くなる。前記加熱素子204の厚さが一定である場合、前記加熱素子204に印加された電圧が大きくなるほど、前記加熱素子204から放出された電磁波の波長は短くなる。従って、前記線熱源20は簡単に制御することができる。
【0049】
本実施例の線熱源20を空気雰囲気下に置き、前記二つの電極206により、前記加熱素子204に10V〜30Vの電圧を印加すると、該線熱源20の温度が50℃〜500℃に達する。前記カーボンナノチューブ構造体の温度を200℃〜450℃まで上げる場合、前記加熱素子204は熱輻射することができる。前記加熱素子204は、熱輻射が安定し、熱放出の効率が高く、放出する熱量が大きいという優れた点がある。
【0050】
図13は、異なる仕事率で、それぞれ異なる二つの測量器具を利用して、本実施例におけるカーボンナノチューブ構造体の表面温度を測量したグラフである。二つの測量器具は、それぞれ、赤外線温度計のRAYTEK RAYNER IP−M及び赤外線温度計のAZ−8859である。測量すると、加熱する仕事率が36ワットである場合、前記カーボンナノチューブ構造体の表面温度は、370℃に達することが分かる。該カーボンナノチューブ構造体は、電気エネルギーを熱エネルギーに転換する効率が高い。
【0051】
本実施例の線熱源20を真空装置に置き、前記二つの電極206により、前記加熱素子204に80V〜150Vの電圧を印加すると、該線熱源20は、短い波長を有する電磁波を放出することができる。該線熱源20は、例えば、赤光及び黄光などの可視光線を放出し、通常の熱輻射を形成することができる。この場合、前記線熱源20の温度は、1500℃程度に達することができる。前記線熱源20に印加された電圧が十分に強い場合、前記線熱源20は、紫外光線を放出することができる。
【0052】
前記線熱源20の二つの電極206を電源に電気的に接続させる場合、該線熱源20における加熱素子204のカーボンナノチューブ構造体は、所定の波長を有する電磁波を放出することができる。加熱対象を前記線熱源20に直接接触してもよく、又は、加熱対象を前記線熱源20と所定の距離を置いて設置してもよい。前記カーボンナノチューブ構造体から放出された電磁波により、前記加熱対象を加熱する。
【0053】
(実施例2)
本実施例は、線熱源を提供する。本実施例の線熱源は、前記実施例1の線熱源20の構造と基本的に同じである。異なる点は、前記加熱素子が複数のカーボンナノチューブ線状構造を含むカーボンナノチューブ構造体を含むことである。
【0054】
前記カーボンナノチューブ構造体は少なくとも一本のカーボンナノチューブ線状構造を含む。前記カーボンナノチューブ線状構造は、少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの熱容量は、2×10−4J/cm・K以下であり、0(0は含まず)〜5×10−5J/cm・Kであることが好ましい。一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は0.5ナノメートル〜100マイクロメートルであり、1.0マイクロメートル〜100マイクロメートルであることが好ましい。
【0055】
前記カーボンナノチューブ線状構造が二本以上のカーボンナノチューブワイヤを含む場合、各々のカーボンナノチューブワイヤが平行に配列され、非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造を形成する(図14に示すように)又は各々のカーボンナノチューブワイヤが、螺旋状に配列され、ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造を形成する(図15に示すように)。即ち、図14を参照すると、前記非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造160におけるカーボンナノチューブワイヤ161は、前記カーボンナノチューブ線状構造160の長手方向に沿って、平行に配列される。図15を参照すると、前記ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造170におけるカーボンナノチューブワイヤ171は、前記線状構造170の軸向に沿って、螺旋状に配列される。
【0056】
前記非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造160におけるカーボンナノチューブワイヤ161及び、前記ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造170におけるカーボンナノチューブワイヤ171は、それぞれ、非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ(図16に示すように)及びねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ(図17に示すように)である。
【0057】
前記カーボンナノチューブ線状構造の直径は、0.5ナノメートル〜2ミリメートルであり、該直径の大きさが前記カーボンナノチューブワイヤの数量及びその直径に関係がある。前記カーボンナノチューブワイヤの直径が大きいほど、数量が多いほど、前記カーボンナノチューブ線状構造の直径が大きくなる。これとは逆に、前記カーボンナノチューブワイヤの直径が小さいほど、数量が少ないほど、前記カーボンナノチューブ線状構造の直径が小さくなる。
【0058】
図16を参照すると、前記非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤは、カーボンナノチューブアレイから引き出されたカーボンナノチューブフィルムを有機溶剤で処理して、得たものである。該非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤは、その長手方向に沿って、配列し、端と端が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。この場合、一本のカーボンナノチューブワイヤは、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。前記カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各々の前記カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。
【0059】
前記複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。この場合、一本の前記非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤの直径は、0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。図17を参照すると、前記非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤをねじり、ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤを形成することができる。ここで、前記複数のカーボンナノチューブは前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列されている。この場合、一本の前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤの直径は、0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。
【0060】
前記カーボンナノチューブワイヤにおけるカーボンナノチューブが配向して配列されるので、該カーボンナノチューブワイヤからなるカーボンナノチューブ線状構造におけるカーボンナノチューブが配向して配列される。
【0061】
また、前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤを揮発性有機溶剤で処理してもよい。前記揮発性有機溶剤の表面力の作用で前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤにおける隣接するカーボンナノチューブが分子間力で緊密に接続されるので、該ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤは、直径及び比表面積が小さくなり、大きな密度、優れた機械強度及び優れた強靭性を有する。
【0062】
前記カーボンナノチューブ構造体が、一つの前記カーボンナノチューブ線状構造を含む場合、該カーボンナノチューブ線状構造におけるカーボンナノチューブの両端は、それぞれ、前記電極206に電気的に接続される。前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブ線状構造を含む場合、該複数のカーボンナノチューブ線状構造が平行に配列され、又は交叉して配列される。前記交叉して配列されたカーボンナノチューブ線状構造の交叉する角度は、制限されない。前記各々のカーボンナノチューブ線状構造を設置する方式が制限されず、均一な加熱素子204を形成することができることを確保してもよい。
【0063】
本実施例において、図18を参照すると、前記加熱素子204が複数の図15に示すねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造170を含み、各々のねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造170が前記線状の支持体202の表面に平行に配列する。該ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造170は、該ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造170の軸向に沿って螺旋状に配列された複数のねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ171を含む。該ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ171は、該カーボンナノチューブワイヤ171の軸向に沿って、螺旋状に配列された複数のカーボンナノチューブを含む。
【0064】
前記二つの電極206は、図14又は図15の示すカーボンナノチューブ線状構造を含むことができる。本実施例において、前記二つの電極206は一本の図14に示す前記カーボンナノチューブ線状構造160を含む。該カーボンナノチューブ線状構造160は、該線状構造160の長手方向に沿って平行に配列された複数の非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ161を含む。該非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ161は、その長手方向に沿って配列し、端と端が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。
【0065】
勿論、前記二つの電極206の少なくとも一つの電極206は、前記カーボンナノチューブ線状構造であってもよい。実施例1の二つの電極206は前記カーボンナノチューブ線状構造を含むこともできる。これに制限されず、前記二つの電極206は、前記カーボンナノチューブフィルムと前記カーボンナノチューブ線状構造との複合構造を含むこともできる。
【0066】
(実施例3)
図19を参照し、本発明の実施例3による線熱源が提供される。該線熱源は、前記実施例1の線熱源20の構造と基本的に同じである。異なる点は、前記加熱素子が複数のカーボンナノチューブ線状構造を含み、該複数のカーボンナノチューブ線状構造は交叉して配列されていることである。例えば、一部の前記複数のカーボンナノチューブ線状構造は平行に配列され、前記二つの電極206に電気的に接続され、もう一部の前記複数のカーボンナノチューブ線状構造は、前記二つの電極206に電気的に接続された前記カーボンナノチューブ線状構造に、垂直に配列される。前記カーボンナノチューブ線状構造は、非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造(図14に示すように)であり、又はねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ(図15に示すように)である。
【0067】
(実施例4)
図20を参照し、本発明の実施例4による線熱源が提供される。該線熱源は、前記実施例1の線熱源20の構造と基本的に同じである。異なる点は、前記加熱素子が一本のカーボンナノチューブ線状構造を含み、該カーボンナノチューブ線状構造が前記線状の支持体202に設置された反射層210の表面に巻き付かれ、該カーボンナノチューブ線状構造の両端がそれぞれ、前記二つの電極206に電気的に接続されることである。前記カーボンナノチューブ線状構造は、非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造(図14に示すように)であり、又はねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造(図15に示すように)である。また、前記カーボンナノチューブ線状構造は、一本のカーボンナノチューブワイヤだけを含んでもよい。
【0068】
前記カーボンナノチューブ構造体が、カーボンナノチューブフィルムとカーボンナノチューブ線状構造との複合構造でもあってもよい。前記カーボンナノチューブ線状構造が前記カーボンナノチューブフィルムに設置され、加熱素子204を形成する。
【0069】
前記線熱源において、従来の線熱源と比べると、本発明の線熱源において、前記二つの電極の少なくとも一つの電極がカーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブを含む。該カーボンナノチューブが優れた導電性を有するので、該電極の抵抗が小さくなる。従って、前記電極を利用した線熱源は、電気エネルギーを熱エネルギーに転換する効率が高くなる。前記カーボンナノチューブの密度が小さいので、前記電極を利用した線熱源は、重量が小さくなり、便利に応用されることができる。
【0070】
前記加熱素子がカーボンナノチューブフィルムを含み、該カーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブを含む。従って、該加熱素子は、均一的に熱を放出することができ、電気エネルギーを熱エネルギーに転換する効率が高く、前記カーボンナノチューブ構造体の単位面積の熱容量は、2×10−4J/cm・K以下である。従って、前記線熱源は、昇温速度が速く、熱応答速度が速く、熱交換速度が速い。
【0071】
前記電極おけるカーボンナノチューブは、優れた力学性能、優れた靭性及び優れた機械強度を有するので、該電極は、優れた力学性能、優れた靭性と機械強度を有し、使用寿命が長くなる。更に、前記電極を利用して、柔軟性の線熱源を製造することができる。
【0072】
本発明は、前記線熱源の製造方法を提供する。具体的には、図2〜図4を参照すると、前記実施例1の線熱源20を製造する方法を例として、詳しく説明する。
【0073】
第一ステップでは、線状の支持体202を提供する。
【0074】
線状の支持体202を提供する。該線状の支持体202は、前記加熱素子204を支持することに用いられる。該線状の支持体202の材料は、例えば、セラミックス、ガラス、樹脂、石英などの硬性材料であってもよく、プラスチック及び柔軟な繊維などの柔軟な材料であってもよい。前記線状の支持体202として柔軟な材料を利用する場合、前記線熱源20は、任意の形状に湾曲することができる。前記線状の支持体202は、長さ及び直径が制限されず、実際の応用に応じて選択することができる。本実施例において、前記線状の支持体202は、セラミックスの円柱体であり、その直径が1センチメートルである。
【0075】
第二ステップでは、前記線状の支持体202の表面に反射層210を形成する。
【0076】
塗布又はコーティングの方法で前記線状の支持体202の表面に反射層210を形成する。該反射層210の材料は、例えば、金属酸化物、金属塩及びセラミックスなどの絶縁材料である。本実施例において、前記反射層210は、酸化アルミニウム膜であり、その厚さが100マイクロメートル〜0.5ミリメートルである。前記反射層210は、前記カーボンナノチューブ構造体から放出された熱を反射し、熱を外界の空間に放出させる。勿論、前記反射層210を設置せず、前記加熱素子204を前記線状の支持体202の表面に直接設置することもできる。即ち、前記線熱源20の製造方法は、第二ステップを含まなくてもよい。
【0077】
第三ステップでは、カーボンナノチューブ構造体を提供する。
【0078】
カーボンナノチューブ構造体の構造及びその製造方法は、上述のカーボンナノチューブ構造体の構造及びその製造方法である。
【0079】
第四ステップでは、二つの電極206を提供し、該二つの電極206を、間隔を置いて前記反射層に設置される。
【0080】
前記二つの電極206は、導電フィルム又はリード線である。前記導電フィルムの材料は、金属、合金、酸化インジウムスズ(ITO)フィルム、酸化アンチモンスズ(ATO)、銀ペースト、導電重合体又はカーボンナノチューブ構造体などである。前記金属は、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、チタン、ネオジム、パラジウム又はセシウムなどである。前記合金は、前記金属の合金である。前記カーボンナノチューブ構造体は、上述の図5、図7、図8、図9又は図11の示す少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブ線状構造であり、例えば、該カーボンナノチューブ線状構造は、図14又は図15に示すカーボンナノチューブ線状構造である。
【0081】
前記二つの電極206が前記カーボンナノチューブ構造体である場合、該カーボンナノチューブ構造体自体の接着性を利用して、前記二つの電極206を前記反射層210の表面に接着することができる。或いは、導電接着剤を利用して、前記二つの電極206を前記加熱素子204の表面に接着することもできる。前記二つの電極206が前記カーボンナノチューブ構造体以外の物である場合、導電接着剤を利用して、前記二つの電極206を前記反射層210の表面に接着する。
【0082】
本実施例において、前記二つの電極206は、積層された複数の図5に示すようなカーボンナノチューブフィルム143aを含み、隣接するカーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブが0°の角度を成す。即ち、隣接するカーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列され、該配列された方向が、前記線状の支持体202の長手方向に平行する。前記二つの電極206は、銀ペーストにより前記反射層210の表面に接着される。
【0083】
第五ステップでは、前記カーボンナノチューブ構造体を前記反射層210及び前記二つの電極206の表面に設置し、加熱素子204とする。
【0084】
前記カーボンナノチューブ構造体が接着性を有するので、該カーボンナノチューブ構造体を直接前記反射層210及び前記二つの電極206の表面に被覆させ、又は巻き付けることができる。或いは、前記カーボンナノチューブ構造体を、導電接着剤で前記反射層210及び前記二つの電極206の表面に接着してもよい。前記導電接着剤は、銀ペーストである。前記線熱源20が反射層210を含まない場合、前記カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体202の表面に設置する。
【0085】
前記カーボンナノチューブ構造体が設置する方式は、該カーボンナノチューブ構造体の構造と関係がある。本実施例において、前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された百枚の図5に示すカーボンナノチューブフィルム143aである。前記隣接するカーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブは、90°の角度で交差される。該カーボンナノチューブ構造体自体の接着性を利用して、該カーボンナノチューブ構造体を前記反射層210及び前記二つの電極206の表面に被覆する。
【0086】
第六ステップでは、前記加熱素子204の表面に保護層208を形成する。
【0087】
前記保護層208の材料は、例えば、プラスチック、ゴム及び樹脂などの絶縁材料である。前記保護層208の厚さが制限されず、実際の応用に応じて選択することができる。前記保護層208は、前記加熱素子204の表面を被覆し、前記線熱源20を絶縁状態で使用させ、ほこりが前記加熱素子204に付着することを防止できる。本実施例において、前記保護層208は、材料がゴムであり、その厚さが0.5ミリメートル〜2ミリメートルであり、前記加熱素子204を保護することに用いられる。勿論、前記保護層208を設置しなくてもよい。即ち、該線熱源20の製造方法は、前記第六ステップを含まなくてもよい。
【0088】
前記線熱源の製造方法は、簡単であり、コストが減少し、極めて小型の線熱源を製造することができる。
【符号の説明】
【0089】
10、20 線熱源
102、202 支持体
104、204 加熱素子
106、208 保護層
108 固定素子
110、206 電極
210 反射層
143a カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ
160 非ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造
170 ねじれ状のカーボンナノチューブ線状構造
161、171 カーボンナノチューブワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の支持体と、前記線状の支持体に設置された加熱素子と、前記加熱素子と電気的に接続された二つの電極と、を含み、
前記二つの電極の少なくとも一つの電極が、複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブ構造体であり、
前記加熱素子は、同じ方向に沿って配列され、端と端が分子間力で接続されている複数のカーボンナノチューブからなるカーボンナノチューブフィルムであることを特徴とする線熱源。
【請求項2】
前記加熱素子におけるカーボンナノチューブが、前記二つの電極の一つの電極から他の電極に向かう方向に配列されることを特徴とする、請求項1に記載の線熱源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−101972(P2013−101972A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−18270(P2013−18270)
【出願日】平成25年2月1日(2013.2.1)
【分割の表示】特願2009−154347(P2009−154347)の分割
【原出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】