説明

線維症の非侵襲性の特異的イメージングのための、ポリペプチド、環状ポリペプチドおよびそれを含む医薬

本発明は、画像診断法、特に、線維症の画像診断法に関する。さらに詳しくは、本発明は、線維症の非侵襲性可視化に適した、ポリペプチド、環状ポリペプチドおよび医薬組成物を提供する。本発明のポリペプチドは、X1−X2−M−H−G−L−X7−L−X9−X10−D−E[式中、アミノ酸X1は、R、FまたPであり;アミノ酸X2は、FまたはVであり;アミノ酸X7は、Q、HまたはLであり;アミノ酸X9は、WまたはGであり;アミノ酸X10は、AまたはDである]からなるアミノ酸配列を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像診断法、特に、線維症の画像診断法に関する。より詳しくは、本発明は、コラーゲンを特異的に標的とし、線維症の非侵襲性の特異的イメージングに適しているポリペプチド、環状ポリペプチドおよび医薬組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
線維症は、結合組織による不適当な修復として病理学的に定義されており、基質タンパク質、最も特には、コラーゲンIおよびIII型の合成の増大および分解の減少によって引き起こされる。
【0003】
線維症は、事実上どの組織および器官系にも影響を及ぼし得る。身体のいかなる部分でも、物理的、熱的、代謝性、虚血性、感染性、炎症性または免疫学的損傷後に過剰の線維症が生じ得、影響を受けた構造、例えば、肺、腎臓、心臓、肝臓、血管系、皮膚、眼、骨髄の破壊を引き起こし得る。線維性組織は、正常な構築物の喪失、間質細胞の不足ならびに高密度な、均一な、ますます安定な細胞外マトリックスによる血管およびその他の必須の実質性の構造の置換を特徴とする。
【0004】
線維症は、多数の慢性疾患の重要な特徴としてますます認識されており、そのようなものとして、計り知れない健康負荷に相当する。米国政府は、米国における死亡の45%は、線維症を伴う状態に起因し得ると推定している。
【0005】
例えば、線維性肝疾患は、世界中で、8番目に最もよくある死亡原因と位置づけられており、毎年、130万人の死亡を計上している(MurrayおよびLopez、1997年、Lancet 349、1269〜1276頁)。線維症の細胞機構は、複雑である。例えば、慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染、B型肝炎ウイルス(HBV)感染、アルコール性肝疾患または脂肪性肝疾患、薬物誘導性肝疾患または原発性胆汁性肝硬変によって引き起こされる肝臓損傷に応じて、通常は静止状態の肝星状細胞が、活性化されて増殖性筋線維芽細胞となる。結果として、線維症は、組織およびコラーゲン様タンパク質の産生の増大と、これらの化合物の分解の減少によって蓄積し得、その結果、肝臓の機能が損なわれる。特に、ウイルス性慢性肝炎では、線維症の初期の検出は、線維症の発生が、大きな予後不良因子に相当するので、治療上の意思決定にとって臨床上関連がある。
【0006】
別の例は、加齢と相当に関連している、アテローム性動脈硬化症に関するものである。アテローム性動脈硬化症プラークは、I型コラーゲンに富んでいる。プラークが、不安定である場合、コラーゲンが血流に曝露されるようになり、動脈血栓症および下流組織の虚血の誘因となる。血栓性虚血性血管事象の危険にある患者を同定するために、不安定動脈硬化病変の非侵襲性分子イメージングは、大いに注目を引く。例えば、最近の研究では、不安定動脈硬化性プラークの非侵襲性イメージングのための、放射標識された可溶性糖タンパク質Vl(GPVI)物質の実現可能性を評価している。
【0007】
糖尿病では、間質性線維症を含む糖尿病性心筋症の初期の検出は、心不全の危険のある糖尿病患者の初期の同定のために臨床上注目される。また、特発性拡張型心筋症では、線維症は、主要な予後因子として認識されている。
【0008】
線維症を診断するために、いくつかのバイオマーカーが探索されてきたが、器官における線維症のin vivo可視化のために開発された方法はほとんどない。例えば、最近の研究は、一時的な超音波検査またはMRI弾性率計測法が、成人患者において肝臓硬直を非侵襲性に測定することによって肝臓線維症を評価するための方法に相当すると示している(de Ledinghen V.ら2007;Talwalkar JAら2007年)。また、肝臓線維症の定量化のために、拡散強調MRIを用いて予備実験が実施された(Taouli Bら、AJR Am J Roentgenol 2007年;189(4):799〜806頁)。
【0009】
心筋線維症をイメージングするために、ガドリニウム遅延造影(delayed−enhanced)MRIを用いていくつかの試みが実施された(Tzelepis GEら、Arthritis Rheum 2007年;56(11):3827〜36頁)。しかし、これらの技術は、線維症に特異的ではない。またそれらは、多量の線維症が、組織弾性を損なう必要があるので、感度を欠くという欠点を有する可能性がある。線維症の分子イメージングのための特異的イメージングトレーサーは、放射性核種イメージングおよびMRIをはじめ、種々のイメージング様式にとって課題および注目される大きな分野に相当する(collagen−targeted MRI contrast agent for molecular imaging of fibrosis、Caravan Pら、Angew Chem Int Ed Engl 2007年;46(43):8171〜73頁)。MRIと比較して、特異的放射性核種イメージングは、極めて低いトレーサー用量(ピコまたはナノモル)で、正確な標的対バックグラウンド比を得るのに十分であるので、高い感度と、毒性がないという利点を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
X1−X2−M−H−G−L−X7−L−X9−X10−D−E(配列番号1)
[式中、
アミノ酸X1は、R、FまたPであり、
X2は、FまたはVであり;
X7は、Q、HまたはLであり;
X9は、WまたはGであり
X10は、AまたはDである]
からなるアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。
【0011】
本発明はまた、本発明のポリペプチドが、2個のシステイン残基の間で結合されたジスルフィドによって環化されている環状ポリペプチドに関する。
【0012】
本発明はまた、本発明により標識されたポリペプチドまたは標識された環状ポリペプチドを含む造影剤に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目的は、
X1−X2−M−H−G−L−X7−L−X9−X10−D−E(配列番号1)
[式中、
アミノ酸X1は、R、FまたはPであり;
アミノ酸X2は、FまたはVであり;
アミノ酸X7は、Q、HまたLであり;
アミノ酸X9は、WまたはGであり、
アミノ酸X10は、AまたはDである]
からなるアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。
【0014】
全体として本明細書では、「アミノ酸」とは、天然タンパク質中に見ることができるL型のアミノ酸、すなわち、アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リシン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)およびバリン(V)を意味すると理解されることを思い起こされたい。しかし、本発明はまた、非天然アミノ酸、すなわち、D型の前述のアミノ酸ならびにアルギニン、リシン、フェニルアラニンおよびセリンなどのいくつかのアミノ酸のホモ型またはロイシンもしくはバリンのノル型に関する。
【0015】
特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、RVMHGLHLGDDE(配列番号2)、RFMHGLQLWADE(配列番号3)、RVMHGLQLWADE(配列番号4)、RVMHGLHLWDDE(配列番号5)、RVMHGLQLWDDE(配列番号6)、RVMHGLHLWADE(配列番号7)、FVMHGLHLGDDE(配列番号8)、PVMHGLHLWDDE(配列番号9)およびRVMHGLLLGADE(配列番号10)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0016】
特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドが、より良好な親和性でコラーゲンと結合するのを可能にするよう立体構造的に制約され得る。
【0017】
環化は、当技術分野で周知であり、通常、2つのシステイン残基間で結合されるジスルフィドの組み込みを含む。通常、環は、システイン、ペニシラミン、ホモシステイン、前記のものの組合せの対または側鎖が、1個もしくは2個の硫黄原子のいずれかと連結しているその他の対のアミノ酸間のモノスルフィドまたはジスルフィド橋を含む、側鎖対側鎖環によって形成される。ジスルフィド環状ポリペプチドの合成方法は、当技術分野で周知であり、例えば、US3,929,758、US4,216,141およびUS4,102,877に記載されている。
【0018】
したがって、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドの環化を可能にするよう、末端にシステイン残基を含み得る。特定の実施形態では、システイン残基は、本発明のポリペプチドの末端とは、1、2、3個またはそれ以上のアミノ酸分、離れている。通常、アミノ酸は、ポリペプチドのコラーゲン結合を妨げないように選択される。アミノ酸は、グリシンまたはプロリンなどの小さい、中性のアミノ酸の中から選択され得ることが好ましい。プロリンは、構造的に環化に有利に働き得る。別の特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドの末端をフランキングし、少なくとも1個のシステイン残基を含むトリペプチドを含み得る。特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、N末端にCGPトリペプチドおよびC末端にGPCトリペプチドを含み得る。
【0019】
したがって、本発明のポリペプチドは、
CGP−X1−X2−MHGL−X7−L−X9−X10−DE−GPC(配列番号11)
[式中、
アミノ酸X1は、R、FまたはPであり;
アミノ酸X2は、FまたはVであり;
アミノ酸X7は、Q、HまたはLであり;
アミノ酸X9は、WまたはGであり;
アミノ酸X10は、AまたはDである]
からなるアミノ酸配列を含み得る。
【0020】
別の特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、
CGPRVMHGLHLGDDEGPC(配列番号12)、CGPRFMHGLQLWADEGPC(配列番号13)、CGPRVMHGLQLWADEGPC(配列番号14)、CGPRVMHGLHLWDDEGPC(配列番号15)、CGPRVMHGLQLWDDEGPC(配列番号16)、CGPRVMHGLHLWADEGPC(配列番号17)、CGPFVMHGLHLGDDEGPC(配列番号18)、CGPPVMHGLHLWDDEGPC(配列番号19)およびCGPRVMHGLLLGADEGPC(配列番号20)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0021】
別の特定の実施形態では、上記のポリペプチドは、ポリペプチドの2個のシステイン残基間のジスルフィド結合によって環化される。
【0022】
別の特定の実施形態では、本発明は、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0023】
【化1】

[式中、
アミノ酸X1は、R、FまたはPであり;
アミノ酸X2は、FまたはVであり;
アミノ酸X7は、Q、HまたはLであり;
アミノ酸X9は、WまたはGであり;
アミノ酸X10は、AまたはDである]。
【0024】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0025】
【化2】

【0026】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0027】
【化3】

【0028】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0029】
【化4】

【0030】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0031】
【化5】

【0032】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0033】
【化6】

【0034】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0035】
【化7】

【0036】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0037】
【化8】

【0038】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0039】
【化9】

【0040】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0041】
【化10】

【0042】
本発明によって、その他の環化方法が考慮される。例えば、これらの方法として、それだけには限らないが、直交性保護基としてトリメチルシリル(TMSE)エステルを使用するTFA樹脂上でのペプチド環化を記載するMarlowe(1993年、Biorg.Med.Chem.Lett.3:437〜44頁);オキシム形成による水溶液中での保護されていないペプチドの環化を記載するPallinおよびTam(1995年、J.Chem.Soc.Chem.Comm.2021〜2022頁);リシン側鎖アンカリングによる頭尾結合環状ペプチドの固相合成を開示しているAlginら(1994年、Tetrahedron Lett.35:9633〜9636頁);三次元固相戦略による頭尾結合環状ペプチドの製造を記載しているKatesら(1993年、Tetrahedron Lett.34:1549〜1552頁);固定化されたペプチドの活性化が、無傷のN−保護基とその後の環化につながる除去を用いて実施される、固定化された活性化中間体からの環状ペプチドの合成を記載するTumeltyら(1994年、J.Chem.Soc.Chem.Comm.1067〜1068頁);アスパラギン酸およびグルタミン酸の側鎖によって不溶性支持体と結合しているペプチドの頭尾結合環化を開示している、McMurrayら(1994年、Peptide Res.7:195〜206頁);固体支持体を介してペプチドを環化する代替法を教示する、Hrubyら(1994年、Reactive Polymers22:231〜241頁);ならびにSchmidtおよびLanger(1997年、J.Peptide Res.49:67〜73頁)によって記載されるものならびにDavies JS(The cyclisation of peptides and depsipeptides J Pept Sci 2003年,8:471〜501頁);ならびにLiおよびRoller(PPCyclisation strategies in peptide derived drug design.Curr.Tp Med.Chem.2002年、3:325〜41頁)によって記載されるものが挙げられる。
【0043】
別の特定の実施形態では、本発明のポリペプチドまたは環状ポリペプチドは、その末端にスペーサー配列を含み得る。このようなスペーサー配列は、本発明の前記ポリペプチドまたは環状ポリペプチドを、検出可能な物質(例えば、ビオチン部分)を用いて標識するのに適したものであり得る。実際、スペーサー配列は、検出可能な物質の立体障害を防ぐのに有用であり得る。例えば、ビオチンのスペーサー配列は、本発明のポリペプチドまたは環状ポリペプチドのN末端と結合され得るSGSGアミノ酸配列にあり得る。
【0044】
特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、
SGSGCGP−X1−X2−MHGL−X7−L−X9−X10−DE−GPC(配列番号21)
[式中、
アミノ酸X1は、R、FまたはPであり;
アミノ酸X2は、FまたはVであり;
アミノ酸X7は、Q、HまたLであり;
アミノ酸X9は、WまたはGであり;
アミノ酸X10は、AまたはDである]
からなるアミノ酸配列を含み得る。
【0045】
別の特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、
SGSGCGPRVMHGLHLGDDEGPC(配列番号22);
SGSGCGPRFMHGLQLWADEGPC(配列番号23);
SGSGCGPRVMHGLQLWADEGPC(配列番号24);
SGSGCGPRVMHGLHLWDDEGPC(配列番号25);
SGSGCGPRVMHGLQLWDDEGPC(配列番号26);
SGSGCGPRVMHGLHLWADEGPC(配列番号27);
SGSGCGPFVMHGLHLGDDEGPC(配列番号28);
SGSGCGPPVMHGLHLWDDEGPC(配列番号29);および
SGSGCGPRVMHGLLLGADEGPC(配列番号30)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0046】
別の特定の実施形態では、本発明は、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0047】
【化11】

[式中、
アミノ酸X1は、R、FまたはPであり;
アミノ酸X2は、FまたはVであり;
アミノ酸X7は、Q、HまたLであり;
アミノ酸X9は、WまたはGであり;
アミノ酸X10は、AまたはDである]。
【0048】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0049】
【化12】

【0050】
以下の制約されたペプチドSGSGCPGRVMHGLHLGDDEGPCは、「コラジェリン」と名づけられている。
【0051】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0052】
【化13】

【0053】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0054】
【化14】

【0055】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0056】
【化15】

【0057】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0058】
【化16】

【0059】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0060】
【化17】

【0061】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0062】
【化18】

【0063】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0064】
【化19】

【0065】
別の特定の実施形態では、本発明はさらに、次式を有する環状ポリペプチドに関する:
【0066】
【化20】

【0067】
別の実施形態では、本発明のポリペプチドは、ペグ化されている。ポリエチレングリコールPEGと、ペプチドのコンジュゲーションは、生物活性期間(半減期)を有意に増大するということは広く実証されている。PEGは、より安定なコンホメーションを提供し、分子の大きさおよび重量を増大させ、それによって、ペプチドの循環時間を延長する。
【0068】
ポリエチレングリコール(PEG)は、エチレングリコールの反復単位を連結して種々の分子量の直鎖または分岐型のポリマーを形成する方法によって形成される。PEGは、一般式HO−(CH−CH−O)n−H(式中、n>4)の親水性で、生体適合性で、非毒性の水溶性ポリマーである。その分子量は、300〜40,000ダルトンで変わる。
【0069】
本発明のポリペプチドのペグ化は、当技術分野で公知の方法によって達成され得る。例えば、ポリエチレングリコールを、直接的に、または介在性リンカーによってのいずれかでタンパク質と結合してもよい。
【0070】
1つの非限定的な手順として、遊離アミノまたはカルボキシル基などの反応基によってアミノ酸残基を介してポリエチレングリコールが共有結合によって結合されることがある。ポリエチレングリコールとタンパク質を結合するためのリンカーのない系は、Delgadoら、Crit.Rev.Thera.Drug Carrier Sys.9:249〜304頁(1992年)、Francisら、Inter J. of Hematol.68:1〜18(1998年)、US4,002,531、U.S.5,349,052、WO95/06058およびWO98/32466に記載されている。
【0071】
介在性リンカーを用いずに、ポリエチレングリコールとタンパク質のアミノ酸残基を直接的に結合するための1つの系は、トレシルクロリドを使用するモノメトキシポリエチレングリコール(MPEG)の修飾によって生じるトレシル化MPEGを使用する。タンパク質とトレシル化MPEGとの反応の際に、ポリエチレングリコールが、タンパク質のアミン基に直接的に結合される。したがって、本発明は、本発明のタンパク質を、2,2,2−トリフルオレオタン(trifluoreothane)スルホニル基を有するポリエチレングリコール分子と反応させることによって生じるタンパク質−ポリエチレングリコールコンジュゲートを含む。
【0072】
ポリエチレングリコールはまた、いくつかの異なる介在性リンカーを使用してタンパク質と結合してもよい。例えば、US5,612,460には、ポリエチレングリコールとタンパク質を結合するためのウレタンリンカーが開示されている。ポリエチレングリコールが、リンカーによってタンパク質と結合しているタンパク質−ポリエチレングリコールコンジュゲートはまた、タンパク質と、MPEG−スクシンイミジルスクシネート、1,1’−カルボニルジイミダゾールで活性化されたMPEG、MPEG−2,4,5−トリクロロペニルカルボネート、MPEG−p−ニトロフェノールカルボネートおよび種々のMPEG−スクシネート誘導体などとの化合物の反応によって製造してもよい。いくつかのさらなるポリエチレングリコール誘導体およびポリエチレングリコールとタンパク質を結合するための反応化学は、WO98/32466に記載されている。
【0073】
各ポリペプチドと結合しているポリエチレングリコール部分の数(すなわち、置換度)もまた変わり得る。例えば、本発明のpeg化タンパク質は、平均1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20個またはそれ以上のポリエチレングリコール分子と連結され得る。同様に、タンパク質分子1個あたり1〜3、2〜4、3〜5、4〜6、5〜7、6〜8、7〜9、8〜10、9〜11、10〜12、11〜13、12〜14、13〜15、14〜16、15〜17、16〜18、17〜19または18〜20のポリエチレングリコール部分などの範囲内の平均置換度。置換度を決定する方法は、例えば、Delgadoら、Crit.Rev.Thera.Drug Carrier Sys.9:249〜304頁(1992年)に論じられている。
【0074】
本発明の別の実施形態では、本発明のポリペプチドは、オリゴマー化、好ましくは、二量体化される。
【0075】
オリゴマー化は、科学文献に広く記載されており、安定なポリマーを形成するための単量体のポリペプチドの特定の構築物からなる。
【0076】
オリゴマー化は、生物活性の大きさおよび重量を増大させ、それによって、ペプチドの循環時間(半減期)を延長する。
【0077】
特定の実施形態では、本発明のポリペプチドおよび環状ポリペプチドのNおよびC末端は、任意の当技術分野で周知の方法によって保護してもよい。例えば、本発明のポリペプチドおよび環状ポリペプチドのC末端のカルボキシル官能基は、アミドによって置換されてもよい。
【0078】
本発明のポリペプチドは、当技術分野でそれ自体公知の任意の技術、例えば、限定するものではないが、単独または組み合わせた、任意の化学的、生物学的、遺伝子的または酵素的技術によって製造してもよい。
【0079】
所望の配列のアミノ酸配列を知ることで、当業者ならば、ポリペプチドの製造のための標準技術によって前記ポリペプチドを容易に製造できる。例えば、それらは、周知の固相法を使用して、好ましくは、市販のペプチド合成装置(例えば、Applied Biosystems,Foster City,Californiaによって製造されたもの)を使用し、製造業者の使用説明書に従って合成できる。
【0080】
あるいは、本発明のポリペプチドは、組換えDNA技術が今では当技術分野で周知であるので、それによって合成してもよい。例えば、これらの断片は、所望の(ポリ)ペプチドをコードするDNA配列を、発現ベクターに組み込み、このようなベクターを、所望のポリペプチドを発現し、後に、周知の技術を使用してそれから所望のポリペプチドが単離され得る、適した真核生物または原核生物宿主に導入した後に、DNA発現産物として得てもよい。
【0081】
したがって、本発明のさらなる目的は、本発明のポリペプチドをコードする単離された核酸分子に関する。
【0082】
通常、前記核酸分子は、DNAまたRNA分子であり、これらは任意の適したベクター、例えば、プラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージまたはウイルスベクター中に含めてもよい。用語「ベクター」、「クローニングベクター」および「発現ベクター」とは、DNAまたはRNA配列(例えば、外来遺伝子)を宿主細胞に導入し、宿主を形質転換し、導入された配列の発現(例えば、転写および翻訳)を促進することができる媒介物を意味する。
【0083】
そのため、本発明のさらなる目的は、本発明の核酸分子を含むベクターに関する。
【0084】
このようなベクターは、被験体に投与した際に前記ポリペプチドの発現を引き起こすまたは指示するための、調節エレメント、例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどを含み得る。ベクターは、1種またはいくつかの複製開始点および/または選択マーカーをさらに含み得る。プロモーター領域は、コード配列に対して相同である場合も、非相同である場合もあり、in vivo使用のためを含めた任意の適当な宿主細胞において遍在性発現、構成的発現、調節された発現および/または組織特異的発現を提供する。プロモーターの例として、細菌プロモーター(T7、pTAC、Trpプロモーターなど)、ウイルスプロモーター(LTR、TK、CMV−IEなど)、哺乳類遺伝子プロモーター(アルブミン、PGKなど)等が挙げられる。
【0085】
プラスミドの例として、複製開始点を含む複製プラスミドまたは例えば、pUC、pcDNA、pBRなどの組込みプラスミドが挙げられる。ウイルスベクターの例として、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびAAVベクターが挙げられる。このような組換えウイルスは、当技術分野で公知の技術によって、例えば、パッケージング細胞をトランスフェクトすることによって、またはヘルパープラスミドまたはウイルスを用いた一時的なトランスフェクションによって製造してもよい。ウイルスパッケージング細胞の代表的な例として、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などが挙げられる。このような複製に欠陥のある組換えウイルスを製造するための詳細なプロトコールは、例えば、WO95/14785、WO96/22378、US5,882,877、US6,013,516、US4,861,719、US5,278,056およびWO94/19478中に見出すことができる。
【0086】
本発明のさらなる目的は、本発明による核酸および/またはベクターによってトランスフェクト、感染または形質転換されている細胞に関する。用語「形質転換」とは、宿主細胞が、導入された遺伝子または配列を発現して所望の物質、通常、導入された遺伝子または配列によってコードされるタンパク質または酵素を産生するような、宿主細胞への「外来」(すなわち、外因性または細胞外)遺伝子、DNAまたはRNA配列の導入を意味する。導入されるDNAまたRNAを受け取り、発現する宿主細胞は、「形質転換」されている。
【0087】
本発明の核酸を使用して、適した発現系において本発明の組換えポリペプチドを製造してもよい。用語「発現系」とは、適した条件下、例えば、ベクターによって運ばれ、宿主細胞に導入される外来DNAによってコードされるタンパク質の発現のための、宿主細胞および適合するベクターを意味する。
【0088】
よくある発現系として、大腸菌(E.coli)宿主細胞およびプラスミドベクター、昆虫宿主細胞およびバキュロウイルスベクターならびに哺乳類宿主細胞およびベクターが挙げられる。宿主細胞のその他の例として、限定するものではないが、原核細胞(例えば、細菌)および真核細胞(例えば、酵母細胞、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞など)が挙げられる。特定の例として、大腸菌、クリベロマイセス(Kluyveromyces)またはサッカロマイセス(Saccharomyces)酵母および哺乳類細胞系統(例えば、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞など)が挙げられる。
【0089】
本発明はまた、本発明によるポリペプチドを発現する組換え宿主細胞を製造する方法であって、(i)上記のようにin vitroまたはex vivoで組換え核酸またはベクターを、コンピテント宿主細胞に導入するステップと、(ii)得られた組換え宿主細胞を、in vitroまたはex vivoで培養するステップと、(iii)場合によって、前記ポリペプチドを発現し、場合によって、分泌する細胞を選択するステップとからなるステップを含む方法に関する。このような組換え宿主細胞を、先に記載されるような、本発明によるポリペプチドの製造のために使用してもよい。
【0090】
本発明はさらに、本発明のポリペプチドを製造する方法であって、(i)前記ポリペプチドの発現を可能にするのに適した条件下で、本発明による形質転換された宿主細胞を培養するステップと、(ii)発現されたポリペプチドを回収するステップとからなるステップを含む方法に関する。
【0091】
単離された(例えば、精製された)形態の、または膜または脂質小胞(例えば、リポソーム)などのベクター中に含まれる、本発明のポリペプチドを使用してもよい。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドまたは環状ポリペプチドは、蛍光分子、放射性分子または当技術分野で公知の任意のその他の標識などの検出可能な分子または物質で標識してもよい。通常、(直接的または間接的のいずれかで)シグナルを提供する標識は、当技術分野で公知である。
【0093】
本明細書において、本発明のポリペプチドまたは環状ポリペプチドに関して、用語「標識された」とは、検出可能な物質をカップリングすること(すなわち、物理的に連結すること)による本発明のポリペプチドまたは環状ポリペプチドの直接標識を包含するものとする。
【0094】
検出可能な物質の例として、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質および放射性物質が挙げられる。適した酵素の例として、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適した補欠分子族複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;適した蛍光物質の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例として、ルミノールが挙げられ;生物発光物質の例として、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられる。
【0095】
検出可能な物質は、放射性金属イオン、すなわち、放射性金属であり得る。適した放射性金属は、64Cu、48V、52Fe、55Co、94mTcまたは68Gaなどの陽電子放射体、99mTc111In113mInもしくは67Gaなどのγ放射体または67Cu、89Sr、90Y、153Sm、136Re188Reもしくは192Irなどのβ放射体のいずれかであり得る。
【0096】
この特定の実施形態では、放射性金属を標識するために、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)または1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸(DOTA)などのポリアミノポリカルボキシレートキレーターも開発された。これらのキレーターは、イメージングに適した放射性同位元素、例えば、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)のための111Inおよび陽電子放射型断層撮影法(PET)のための68Gaを用いる標識を可能にする。ポリアミノポリカルボキシレートはまた、90Yおよび177Lu同位元素のための適したキレーターである。
【0097】
検出可能な物質は、常磁性金属イオンであり得、適したこのような金属イオンとして、Gd(III)、Mn(II)、Cu(II)、Cr(III)、Fe(III)、Co(II)1 Er(II)1 Ni(II)、Eu(III)またはDy(III)が挙げられる。
【0098】
検出可能な物質は、γ放射性の放射性ハロゲンであり得る。放射性ハロゲンは、123I、131Iまたは77Brから選択されることが適している。
【0099】
検出可能な物質は、陽電子放射性の放射性非金属であり得る。適したこのような陽電子放射体として、11C、23N、15O、17F、18F、75Br、76Brまたは124Iが挙げられる。
【0100】
検出可能な物質は、過分極NMR活性核であり得る。このようなNMR活性核は、ゼロではない核スピン有し得、13C、15N、19F、29Siおよび31Pが挙げられる。用語「過分極」とは、NMR活性核の平衡分極化を上回る、その分極化の程度の増強を意味する。13Cの天然の存在量は(12Cと比較して)約1%であり、適した13C標識化合物は、過分極される前に少なくとも5%、好ましくは、少なくとも50%、最も好ましくは、少なくとも90%の存在量に濃縮されることが適している。本発明の造影剤の少なくとも1個の炭素原子は、13Cが濃縮され、続いて、過分極されることが適している。
【0101】
検出可能な物質は、in vivo光学イメージングに適したレポーターであり得、レポーターは、光学イメージング手順において直接的または間接的にのいずれかで検出できる任意の部分である。レポーターは、光散乱体(例えば、着色または非着色粒子)、光吸収体または光放射体であり得る。より好ましくは、レポーターは、発色団または蛍光化合物などの色素である。色素は、紫外光から近赤外の波長を有する電磁スペクトルの光と相互作用する任意の色素であり得る。最も好ましくは、レポーターは、蛍光特性を有する。
【0102】
好ましい有機発色団レポーターおよび発蛍光団レポーターとして、広範囲に非局在化した電子系を有する基、例えば、シアニン、メロシアニン、インドシアニン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、トリフェニルメチン、ポルフィリン、ピリリウム色素、チアピリリウム色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、アズレニウム色素、インドアニリン、ベンゾフェノキサジニウム色素、ベンゾチアフェノチアジニウム色素、アントラキノン、ナフトキノン、インダスレン、フタロイルアクリドン、トリスフェノキノン、アゾ色素、分子内および分子間電荷移動色素および色素複合体、トロポン、テトラジン、b/s(ジチオレン)複合体、ビスベンゼン−ジチオレート複合体、ヨードアニリン色素、b/s(S,O−ジチオレン)複合体が挙げられる。緑色蛍光タンパク質(GFP)および異なる吸収/発光特性を有するGFPの修飾などの蛍光タンパク質も有用である。特定の希土類金属(例えば、ユウロピウム、サマリウム、テルビウムまたはジスプロシウム)の複合体も、蛍光ナノ結晶(量子ドット)がそうであるように特定の関連で使用される。
【0103】
使用してよい発色団の特定の例として、フルオレセイン、スルホローダミン101(テキサスレッド)、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン19、インドシアニングリーン、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、マリーナブルー、パシフィックブルー、オレゴングリーン88、オレゴングリーン514、テトラメチルローダミンおよびアレキサフローラ(Alexa Fluor)350、アレキサフローラ430、アレキサフローラ532、アレキサフローラ546、アレキサフローラ555、アレキサフローラ568、アレキサフローラ594、アレキサフローラ633、アレキサフローラ647、アレキサフローラ660、アレキサフローラ680、アレキサフローラ700およびアレキサフローラ750が挙げられる。
【0104】
可視領域または近赤外(NIR)領域、400nmから3μmの間、特に、600から1300nmの間に吸収最大を有する色素が、特に好ましい。光学イメージング様式および測定技術として、それだけには限らないが、発光イメージング、内視鏡検査、蛍光内視鏡検査、光干渉断層法、透過率イメージング、時間分解透過率イメージング、共焦点イメージング、非線形顕微鏡、光音響イメージング、音響光学イメージング、分光法、反射分光法、干渉分光法、コヒーレンス干渉分光法、拡散光トモグラフィーおよび蛍光媒介性拡散光トモグラフィー(連続波、時間領域および周波数領域系)ならびに光散乱、吸収、分極化、発光寿命、蛍光寿命、量子収率およびクエンチングの測定が挙げられる。
【0105】
好ましい検出可能な物質は、投与後に、in vivoで非侵襲性の方法で外部から検出できるものである。最も好ましいイメージング部分は、放射性、特に、放射性金属イオン、γ放射性の放射性ハロゲンおよび陽電子放射性の放射性非金属、特に、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)または陽電子放射型断層撮影法(PET)を使用したイメージングに適したものである。
【0106】
なおさらなる態様では、本発明の目的は、造影剤として本発明の標識されたポリペプチドまたは環状ポリペプチド使用することに関する。
【0107】
用語「造影剤」とは、哺乳類において線維症を標的とするよう設計され、哺乳類の身体へのその投与後にin vivoで検出できる化合物を指す。
【0108】
別のさらなる態様では、本発明は、本発明の標識されたポリペプチドまたは環状ポリペプチドを含む造影剤に関する。
【0109】
別のさらなる態様では、本発明は、上記の造影剤を、生体適合性担体とともに含む、哺乳類投与に適した形態の医薬組成物を提供する。好ましい実施形態では、医薬組成物は、放射性医薬組成物である。
【0110】
「生体適合性担体」は、造影剤が、組成物が生理学的に容認できる、すなわち、哺乳類身体に毒性または過度の不快感を伴わずに投与できるように懸濁または溶解されている、流体、特に、液体である。生体適合性担体媒体は、注射用担体液体、例えば、滅菌注射水、生理食塩水などの水溶液、1種以上の張度調整剤物質(例えば、生体適合性対イオンを用いた血漿陽イオンの塩)、糖(例えば、グルコースまたはスクロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトールまたはマンニトール)、グリコール(例えば、グリセロール)またはその他の非イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液であることが適している。
【0111】
さらなる態様では、本発明は、本発明の医薬組成物を調製するためのキットを提供する。このようなキットは、本発明の標識されたポリペプチドまたは環状ポリペプチドを含む。したがって、このようなキットを再構成するための反応媒体は、上記で定義される「生体適合性担体」であることが好ましく、水性であることが最も好ましい。適したキット容器は、滅菌完全性および/または放射性安全性、ならびに場合によって、不活性のヘッドスペースガス(例えば、窒素またはアルゴン)の維持を可能にしながら、シリンジによる溶液の付加および除去を可能にする密閉された容器を含む。
【0112】
キットは、場合によって、放射保護剤、抗菌防腐剤、pH調整剤またはフィラーなどのさらなる構成要素をさらに含み得る。
【0113】
用語「放射保護剤」とは、非常に反応性に富むフリーラジカル、例えば、水の放射線分解に起因する酸素含有フリーラジカルを捕捉することによって、酸化還元プロセスなどの分解反応を阻害する化合物を意味する。本発明の放射保護剤は、アスコルビン酸、パラアミノ安息香酸(すなわち、4−アミノ安息香酸)、ゲンチジン酸(すなわち、2,5−ジヒドロキシ安息香酸)および生体適合性陽イオンとのそれらの塩から適宜選択される。「生体適合性陽イオン」およびその好ましい実施形態は、上記のとおりである。
【0114】
本発明の造影剤または医薬組成物は、線維症のin vivoイメージングにとって有用である。したがって、なおさらなる態様では、本発明は、in vivo診断法またはイメージング法、例えば、SPECTまたはPETにおいて使用するための本発明の造影剤または医薬組成物を提供する。前記方法は、線維症を伴う状態、例えば、肺線維症、肝臓腎臓線維症、心臓線維症、血管系線維症、皮膚線維症、眼線維症、骨および骨髄線維症のin vivo診断またはイメージングに関することが好ましい。特定の実施形態では、本発明の造影剤または医薬組成物は、アテローム性動脈硬化症および心筋梗塞、糖尿病性および特発性心筋症のin vivoイメージングに適している。
【0115】
本発明のこの態様はまた、線維症を伴う状態の患者におけるin vivo診断またはイメージングのための方法であって、本発明の医薬組成物の先行投与を含む方法を提供する。本発明によれば、用語「患者」は、線維症に冒された、または冒される可能性が高いヒトまたは非ヒト哺乳類を対象とする。前記患者は、好ましくは、哺乳類、最も好ましくは、ヒトである。「事前に投与された」とは、医薬が患者に、例えば、静脈内注射によって投与される、臨床医が関与するステップが、すでに実施されていることを意味する。
【0116】
あるいは、本発明は、患者において線維症を伴う状態をイメージングする方法であって、
a)本発明の造影剤または医薬組成物を提供するステップと、
b)前記患者に、前記造影剤または医薬品を投与するステップと、
c)前記患者において、前記造影剤を検出するステップと
からなるステップを含む方法を提供する。
【0117】
本発明の別の態様はまた、線維症を伴う状態のin vivo画像診断法のための医薬組成物の製造のための、本発明の造影剤の使用を包含する。
【0118】
本発明の別の態様は、in vitroおよびin vivoでのコラーゲンの直接ターゲッティングのための特定のツールとしての造影剤の使用に関する。
【0119】
本発明を、以下の図および実施例を考慮してさらに例示する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】9O12.2結合性細菌クローンのイムノブロッティング。A:単離した細菌クローンを溶解し、非還元状態での電気泳動によってタンパク質を分離し、9O12.2IgGを使用してイムノブロットすることによって分析した。FliTrx融合タンパク質の予測質量に相当するMr約63kDaの陽性バンドを観察すると、これらのクローンによって提示されるペプチドは、9O12.2と結合していることが示された。結果は、6種の選択されたクローン(クローン13、14、15、16、17、18からの抽出物について、および無関係の抗体を使用して同一のライブラリーから得られたクローンの溶解物を用いて実施された陰性対照について示されている。B〜C:9O12.2と結合するコラジェリン(collagelin)の表面プラズモン共鳴(SPR)分析。ビオチンとカップリングした、クローン14によって発現される配列に対応するペプチド(コラジェリン)を合成し、ストレプトアビジンコーティングされたセンサーチップ上に固定化した(20RUの平均)。Bでは、漸増濃度の9O12.2IgGを、センサーチップ上に流した(0、1.25、2.5、5および10μg/ml)。無関係のペプチドでコーティングされた対照フローセルから得られた非特異的バックグラウンドを差し引いた後の代表的なセンサーグラムが示されている。C:固定化されたビオチン−コラジェリンを、DTTを使用してセンサーチップ上で還元した。9O12.2IgG(8μg/ml)を、センサーチップ上に注入し(黒色センサーグラム)、還元されていないペプチド(灰色センサーグラム)と比較して、還元されたペプチドとは結合しなかった。D:9O12.2IgG(5μg/ml)を、組換え可溶性GPVI(25μg/ml)の存在下で、固定化されたビオチン−コラジェリン上に注入し(灰色センサーグラム)、これは、対照条件(黒色センサーグラム)と比較した場合に、IgGとペプチドの結合を完全に阻害した。組換えGPVIは、固定化されたペプチドと結合しなかった(明灰色センサーグラム)。
【図2】コラジェリンとコラーゲンの相互作用:A コラーゲンを、ストレプトアビジンコーティングされたセンサーチップ上に固定化されているビオチン−コラジェリン上に注入した。コラジェリンコーティングされた表面上に約10RUコラーゲンが結合された(暗色)。フィットも示されている(灰色)。無関係のペプチドでコーティングされた対照フローセルから得られた非特異的バックグラウンドシグナルを差し引いた。B コラジェリンと、固定化されたコラーゲンの結合。漸増量のビオチン−コラジェリン(250、500μg.mL−1)を、CM5センサーチップ上に固定化されたコラーゲン上に注入した。ペプチドを用いて得られたセンサーグラムおよび相互作用フィットが、黒色および灰色でそれぞれ示されている。無関係のペプチドを使用して測定される非特異的バックグラウンドを差し引いた。
【図3】コラーゲンとの、および種々の高分子とのペプチド相互作用:A 微量滴定プレートにおける、コラジェリンと、固定化されたコラーゲンの結合。ビオチン−コラジェリンまたは対照ペプチドを、固定化された線維性I型コラーゲンとともにインキュベートし、ペルオキシダーゼがカップリングしているエクストラビジン(extravidine)を使用して、結合しているペプチドを検出した。競合実験では、コラジェリンを組換え可溶性GPVI(50および20μg.mL−1)、9012IgG(50および20μg.mL−1)または3J24.2IgG(50μg.mL−1)と混合し、その後、コラーゲンでコーティングされたウェルに加えた。B:ビオチン−コラジェリンまたは対照ペプチド(50μg.mL−1)と、固定化されたフィブリノゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよびラミニンの結合。種々のタンパク質を用いた微量滴定ウェルのコーティングを、コラーゲンと同様に実施した。ペルオキシダーゼがカップリングしているエクストラビジンを使用して、結合しているペプチドを検出した。
【図4】コラジェリンファミリーペプチドとコラーゲンの結合:A ビオチンとカップリングした、20種の選択されたクローンから同定された9種の配列に対応するペプチドを合成した。100μgの各ペプチドを、固定化されたコラーゲンとともにインキュベートし、ペルオキシダーゼがカップリングしたストレプトアビジンを使用して検出した。結果は、三連で行った3実験の平均±SDである。Pcは、環状非関連ペプチドに相当する。は、コラジェリンを示す。B 3種のペプチドについて、ペプチド濃度の関数としてのコラーゲンとの結合が示されている。クローン16、19および14(コラジェリン)の配列に対応する漸増量の合成ペプチドを、コラーゲンがコーティングされたプレート上でインキュベートし、上記のように検出した。
【図5】組織コラーゲンとのペプチド結合の組織化学的分析:A ラットから得た大動脈の凍結切片を、ビオチン−コラジェリンまたは対照ペプチド(300μg/mL)とともにインキュベートし、ペルオキシダーゼがカップリングしているストレプトアビジンを使用して検出した。切片を、ヘマトキシリンを用いて対比着色した。連続切片を、コラーゲンについてシリウスレッドを用いて着色した。競合実験では、ペプチドを、抗GPVI IgG9O121.2(300μg/mL)と混合し、その後、大動脈切片に加えた。B ラット尾腱のパラフィン包埋切片を、上記のように処理した。
【図6】コラジェリン−ストレプトアビジン−Tc99mを使用する、in vivoシンチグラフィー、ex−vivo心筋オートラジオグラフィーおよび組織学的検査。A:対照ラット(偽)の平面胸部シンチグラフィー。B:線維性心筋梗塞を有するラットの平面および断層撮影(矢状図)胸部像:左心室心筋領域中にホットスポット(矢印)が見られる。C:薄層化線維性(赤)心筋瘢痕(矢印)におけるトレーサー取り込みを確認する、対応する心筋オートラジオグラフィーおよび組織学的検査(コラーゲンに特異的な、レッドシリウス呈色)。D:対照実験:無関係のPc−ストレプトアビジン−Tc99mを注射されたラットの心筋瘢痕では、活性は観察されない。
【図7】コラジェリン−Tc99mを使用する、in vivoシンチグラフィー、ex−vivo心筋オートラジオグラフィーおよび組織学的検査:A:線維性心筋梗塞を有するラットの平面胸部シンチグラフィー:左心室心筋領域中に明確なホットスポット(矢印)が見られる。B:薄層化線維性(赤)心筋瘢痕におけるトレーサー取り込みを確認する、対応する心筋オートラジオグラフィーおよび組織学的検査(コラーゲンに特異的なレッドシリウス呈色)。C:対照実験:無関係のPc−Tc99mを注射されたラットの心筋梗塞では、極めて低い活性が観察される。
【図8】99m Tc−B−コラジェリン−を使用する、in vivo肺シンチグラフィー。
【図9】99m Tc−B−コラジェリン−を使用する、ex−vivo肺オートラジオグラフィー。ブレオマイシン処理した、または対照マウスから得た肺の切片(20μM)を、オートラジオグラフィー(99m−TcコラジェリンIV投与の3時間後に屠殺)のためにインスタントイメージャー(Packard、USA)において曝露させた。
【図10】:肺における99m Tc−B−コラジェリンの取り込みおよび線維症の局在の比較。ブレオマイシン処理したマウスから得た肺の切片(20μM)を、オートラジオグラフィー後にシリウスレッドを用いて染色した。線維性コラーゲンの豊富な領域(矢印)を、99m−Tc−コラジェリン取り込みと重ね合わせたが、線維症では、対照ペプチドの取り込みはないことが観察される。
【0121】
<実施例1>
コラーゲン結合活性を用いた、ヒト血小板糖タンパク質Vlのペプチド模倣体の同定および特性決定。線維症の分子イメージングのためのその使用。
材料&方法:
FliTrx(商標)ペプチドライブラリーおよび抗GPVI抗体:FliTrx(商標)ランダムペプチドディスプレイライブラリーは、ペプチド相互作用のスクリーニングを可能にする大腸菌ベースの系である。FliTrx(商標)ライブラリーは、pFliTrx(商標)ベクター(Lu Z.ら1995年)で構築した。ランダムドデカペプチドの多様なライブラリー(10)は、細菌フラジェリン遺伝子(fliC)の不要な領域の内側の、チオレドキシンタンパク質(trxA)の活性部位ループ中に位置している。得られた組換え融合タンパク質(FLITRX)は、細菌細胞表面上に、輸送され、部分的に機能的な鞭毛に組み立てられる。ドデカペプチドは、ジスルフィド橋によって立体構造的に制約されて、細胞表面に表示される。この系に基づいたFliTrx(商標)ランダムペプチドライブラリーは、Invitrogen(San Diego、CA)から入手した。
【0122】
抗ヒト血小板GPVI9O12.2 IgGおよび可溶性組換えGPVI−Fc融合タンパク質は、先に記載されたように入手した(Lecut Cら2003年)。
【0123】
ランダムペプチドディスプレイライブラリーのスクリーニング:細菌培養および一般的なパニング法を、製造業者のプロトコールに従って実施した。手短には、発現を駆動するバクテリオファージに由来するPプロモーターを含むpFliTrx(商標)ベクターを、大腸菌GI826株(F、laclq、ampC::Ptrp cl、ΔfliC、ΔmotB、eda::Tn10)で増殖させた。プラスミドをもつ細菌を、100μg/mLアンピシリンを含有する、IMC培地[1% M9塩(40mM NaHPO、20mM KHPO、8.5mM NaCl、20mM NHCl)、0.2%カサミノ酸、0.5%グルコース、1mM MgCl]中で、25℃で一晩増殖させた。ペプチド挿入を含む、チオレドキシン−フラジェリン融合タンパク質の発現を、100μg/mLのアンピシリンおよび100μg/mLトリプトファンを含有するIMC培地50mLに、10個細胞(3mL)の一晩培養物を加えることによって誘導した。培養物を25℃で6時間増殖させた。6時間インキュベートした後、10mLの誘導された大腸菌培養物を採取し、1%の脱脂粉乳、NaCl(150mM)およびα−メチルマンノシド1%(最終濃度)に混合した。得られた溶液を、以下のスクリーニングのための準備の整ったペプチドライブラリーとして使用した。
【0124】
滅菌組織培養プレート(Nunc)は、1mLの滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)中、20μgの9O12.2 IgGを用いて4℃で一晩コーティングした。プレートを、10mLの滅菌水で洗浄し、穏やかな撹拌下、10mlのブロッキング溶液(IMC培地中、150mM NaCl、1%w/vの脱脂粉乳、1%w/vのα−メチルマンノシドおよび100μg/mLアンピシリン)とともに1時間インキュベートした。次いで、誘導された細菌培養物のアリコーティング(5ml)をプレートに加えた。次いで、プレートを、シェーカー上、50rpmで1分間穏やかに撹拌し、25℃で1時間インキュベートした。次いで、細菌懸濁液を破棄し、プレートを、アンピシリンおよびα−メチルマンノシドを含有するIMC培地4mLとともに5分間穏やかに撹拌することによって洗浄した。さらに4回洗浄した後、IMC1mLとともに30秒間激しく撹拌することによって、結合している細菌を分離した。細菌懸濁液の少量のアリコーティングを、IMC培地で希釈し、RMG(1% M9塩、2%カサミノ酸、0.5%グルコース、1mM MgCl、100μg/mLアンピシリンおよび1.5%寒天)プレート上に均等に広げ、次いで、37℃で一晩インキュベートした。各パニングの後、細菌を−80℃で凍結した。5ラウンドのバイオパニング後、RMGプレートから細菌コロニーを無作為に選び取り、さらなる同定のために増幅および誘導した。
【0125】
ウエスタンブロッティング分析:ウエスタンブロッティングによる陽性クローンの同定を、原則的に製造業者のプロトコールに従って行った。手短に述べると、増幅されたクローン培養物10mLを、100μg/mlのアンピシリンを含有するRM培地(1% M9塩、2%カサミノ酸、1%グリセロール、1mM MgCl2)2mlに移し、振盪しながら30℃で飽和まで増殖させた。一晩培養物から得た40μLのサンプルを、37℃で、100μg/mLアンピシリンおよび100μg/mLトリプトファンを含有するIMC 2mLに、細胞密度がA600nm0.5〜0.6に達するまで播種した。1.5mLの誘導された細胞培養物を、10,000gで5分間の遠心分離によって回収した。ペレットを、SDS−ポリアクリルアミドゲルローディングバッファーに再懸濁し、5分間煮沸した。タンパク質を12%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動によって分離し、一晩のパッシブトランスファーによってニトロセルロース上にブロットした。メンブランを2.5% Blotto/PBSを用いて室温で2時間ブロッキングし、次いで、1%BSA/PBS中、9O12 IgG、10μg/mLとともに2時間インキュベートした。0.1% Tween20/PBSを用いて3回洗浄した後、メンブレンを、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(AP)がコンジュゲートしているウサギ抗マウスIgGとともに室温で1.5時間インキュベートした。さらに3回の洗浄手順の後、結合しているIgGを、NBT/BCIPを使用して検出した。
【0126】
DNA配列決定:選択されたクローンのプラスミドDNAを、プラスミドDNA抽出の標準プロトコール(SambrookおよびRussel、2001年)を使用して単離した。PRISM310自動化DNAシーケンサー(Applied Biosystems、Foster city、CA)およびFLITrx(商標)フォワード配列決定プライマー(5’−ATT CAC CTG ACT GAC GAC−3’)を使用して、ヌクレオチド配列を決定した。各選択されたクローンのペプチド配列をDNA配列決定から推定した。
【0127】
ペプチド合成:10種の同定されたうちの1種の配列を、大規模ペプチド合成およびさらなる特性決定のために選択した。ペプチドを、短い柔軟なスペーサー(SGSG)配列を介して、N末端で遊離またはビオチン化のいずれかで合成した。環化は、配列をフランキングする、システイン残基(C5およびC22)のジスルフィド橋形成によって得た。ペプチドのC末端のカルボキシル官能基を、アミドで置換した。ペプチドを、半自動化マルチシンセタイザー(multisynthetizer)NPS4000(NeoMPS、Strasbourg、France)を用い、メリフィールドの固相法によって調製した。そのように得られたペプチドの配列は、SGSGCGPRVMHGLHLGDDEGPCであった。合成されたペプチド(ビオチン化または非ビオチン化)の品質は、HPLCおよび質量分析によって評価した。前記ポリペプチドは、コラジェリンと名づけた。
【0128】
N末端でビオチン化された、非環状ビオチン化ペプチド(SGSGVNVYAVTKENTIINPSENGD)および環状ペプチドPc(SGSGCGPNDANHDAVDNARGPC)(Mimotopes、Clayton Victoria、Australia)を、対照実験のための無関係のペプチドとして使用した。
【0129】
結合実験:タンパク質標的とのペプチド結合を、表面プラズモン共鳴および固相アッセイを使用して分析した。
【0130】
表面プラズモン共鳴(SPR):
Biacore2000機器(GE Healthcare Europe GmbH、Orsay、France)(Universite Paris 7、Institut Jacques Monod、Paris、France)を使用して、合成したペプチドの結合特性を特性決定した。ビオチン化ペプチド(約20RU)を、SA−センサーチップの表面と共有結合によってカップリングした。
【0131】
9O12.2IgGを、25℃で、HBS−EPバッファー[0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.005%ポリソルベート20(v/v)]中、20μL.min−1の流速で固定化したペプチド上に注入した。グリシン−HCl(10mM pH2.5)を、20μL.min−1で30秒間注入して、各サンプル間のセンサーチップを再生した。センサーグラムを、BIA evaluationバージョン3.1ソフトウェアを用いて分析した。1.25〜10μg.mL−1の範囲の4種の異なるIgG濃度で、会合および解離速度の分析から速度定数(kon、koff)を推定した。解離定数KDは、KD=koff/konから算出した。センサーグラムは、BIAevaluationバージョン3.1ソフトウェアを用いて分析した。いくつかの実験では、IgGの注入に先立って、ペプチドを、センサーチップ上でDTTによって還元した。競合実験は、IgGを、組換え可溶性GPVI(25μg.mL−1)と混合することによって実施した。ペプチドとのコラーゲン結合は、ペプチドでコーティングしたセンサーチップ上に、I型ウマコラーゲン(Collagen Horm、Nycomed. Germany)(EBS−EPバッファー中、200μg.mL−1)を注入することによって分析した。
【0132】
その他の実験では、線維性コラーゲンを、製造業者の使用説明書に従ってCM5−センサーチップ上に手作業で固定化した(Biacore、Uppsala、Sweden)。ビオチン化ペプチド(125;250、500および1000μg/mL)を、25℃、20μL.min−1の流速で固定化されたコラーゲン上に注入した。競合実験では、ペプチドを、表面上への注入に先立って、組換え可溶性ヒトGPVI−Fcまたは9O12.2IgGとともにプレインキュベートした。表面プラズモン共鳴強度をモニターし、BioEval2.0(Biacore)を使用してデータを分析した。
【0133】
固相アッセイ:
タンパク質[I型ウマ線維性コラーゲン(Horm)、ウシフィブリノゲン(Sigma)、ヒトフィブロネクチン(Sigma)、ラットビトロネクチン(Sigma)、マウスラミニン(Gibco)、およびウシ血清アルブミン(BSA Sigma)]を、微量滴定プレート(Immulon 2 Dynex vWR)上に、4℃で24時間コーティングした(1μg/ウェル)。遊離部位がBSAで飽和した後に、ウェルにビオチン化FLlGPVIペプチド(50μg/ml)を2時間加えた。次いで、ウェルと結合しているペプチドを、基質としてエクトラビジン−HRPおよびオルトフェニルジアミンを使用して検出した。
【0134】
組織化学的分析:2−メチルブタン中で凍結した後、ルイスラットから得た胸部大動脈の8μmの切片を、クリオスタットミクロトームで切断した。内因性ペルオキシダーゼの不活性化、内因性ビオチン部位および非特異的部位を、0.3% H2O2、20分間、ビオチンブロッキング系(DAKO)および1% BSAによってブロッキングした。各ステップの後、切片をTBS pH7.6で洗浄した。切片に、ビオチン化ペプチド(200μg/mL)を4℃で一晩適用した。3回の洗浄ステップの後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(DAKO)およびジアミノベンジジンを使用して染色を実施した。切片を、ヘマトキシリン−エオシン(Merck)を用いて対比着色した。
【0135】
ラット尾腱を切除し、−20℃でtissue−Tek OCTを用いて包埋した。20μMの切片を切断し、さらに上記のように処理した。
【0136】
あるいは、凍結切片を、ホルモールを用いて10分間固定した。再水和後、シリウスレッドを使用してコラーゲンを着色した。
【0137】
ペプチド放射標識:ストレプトアビジンのテクネチウム−99mを用いる標識:手短には、ストレプトアビジンを、1mg.mL−1の濃度に0.01%酢酸に溶解した。標識のために、反応物を、以下の順で1分間混合した:最初に、10μLのストレプトアビジン、続いて、4μLのスズ(sn−PYP)および2μLのKBH4(0.1N NaOH中、10mg/ml)、および50〜100μL中、740MBqのテクネチウム−99m。30分後、溶液は注射の準備が整った。品質管理は、メチル−セトン(methyl−cetone)を使用するペーパークロマトグラフィーを用いて実施した。標識されたストレプトアビジンは、移動できなかった。遊離テクネチウムは、溶媒フロントとともに移動した。30分で、96%を上回る高効率の標識が得られた。注射の直前に、標識されたストレプトアビジンを、ビオチン−コラジェリンと、1対4のモル比で混合した。
【0138】
コラジェリンSGSGCGPRVMHGLHLGDDEGPCを、上記と同一手順、濃度(10μLの0.01%コラジェリン1mg.mL−1)および対照を使用して直接標識した。いずれの場合にも、30分で96%を上回る高効率の標識が得られた。
【0139】
対照分析のためには、上記の手順を使用して、99mTc−ストレプトアビジンを用いて、または直接的に、Tc−99mによって放射標識した後に、環状Pcビオチン化ペプチドを使用した。
【0140】
標識されたストレプトアビジンおよびペプチドは、少なくとも3時間安定であり、次いで、6時間で40〜50%の遊離テクネチウムを伴って減少した。標識された生成物を、70MBq/動物の用量で静脈内に注射した。
【0141】
in vivoシンチグラフィーイメージング:雄のウィスターラット(Arland、France)を、12:12時間、明−暗周期で、温度および湿度を制御した環境に収容し、標準ラット固形飼料および水を、自由に給餌した。記載されるように(Fishbein MC.ら1978年;Sarda−Mantel L.ら2006年)、ラットを麻酔[1ml/kg ipケタミン(Imalgene 500、Merial)および0.5ml/kg ip キシラジン(2%Rompun、Bayer)]および陽圧換気下におきながら、左下行冠動脈の持続的結紮によって、左心室の心筋梗塞を得た。このプロトコールは、French Direction des Services Veterinairesの承認(承認番号75−214)の下、実施される。2種類の対照動物を使用した:健常なラットおよび簡単な開胸術(throracotomy)が実施された(偽手術された)ラット。
【0142】
放射線核種イメージングは、病変が治癒されるよう、冠動脈結紮(または開胸術)の3〜4週間後に実施した。標識されたペプチドを、放射標識の2時間以内に麻酔をかけた動物(ペントバルビタール6mg/100g、BW、Ceva Sante Animale、France腹膜内注射)に静脈内投与した。ペントバルビタール麻酔(4mg/100g BW、Ceva Sante Animale、France)下で、99mTc−ストレプトアビジン−ビオチン化ペプチド(74MBq)の注射の0〜2時間、4時間、6時間、10時間および24時間後、99mTc−ビオチン化ペプチド(74MBq)の注射の0〜2時間および4時間後にシンチグラフィー像を得た。平面および断層撮影1時間獲得を、2パラレル低エネルギー用高分解能コリメーター(マトリックス128×128、140KeVを中心とした15%エネルギーウィンドウ)を備えた、専用の小動物γIMAGER−S/CTシステム(Biospace Mesures、Paris、France)を使用して実施した。左心領域におけるANX取り込みを、視覚的に評価した。また、心臓にわたる、および右肺にわたる2つの注目する領域が、シンチグラムで描かれた。注目する各領域で、1ピクセルあたりの平均活性(cpm)を決定した。次いで、心臓対肺活性比(HLR)を、平面像で、ならびに横断断層撮影像で算出した。
【0143】
定量的オートラジオグラフィーおよび組織学的検査:動物を屠殺した後、心臓を採取および凍結し、次いで、クリオスタットで、20マイクロメーター厚の心筋切片を、心室の短軸に対して垂直に切断し、次いで、ラジオイメージャー(radioimager)(インスタントイメージャー、Packard、Meriden、USA)中で12時間曝露した。組織と等価のホモジネートの活性標準を用いて、先に報告されたように実施した較正研究によれば、50カウント/mm2の99mTc−アネキシンVは、オートラジオグラフィーで210kBq/mgに近似した(Petegnief Y.ら1998年)。次いで、アセトン(−20℃)中で固定された、オートラジオグラフィーのために使用した心筋切片ならびに5マイクロメートルの連続心臓切片を、ヘマトキシリン−エオシンおよびシリウスレッドで染色して、線維性心筋瘢痕の位置および程度を決定した。
【0144】
結果:
9O12.2−結合性ペプチドの同定:9O12.2 IgGを使用する、ドデカマーに制約されたペプチドのコンビナトリアルライブラリーの5ラウンドのバイオパニング後、いくつかの個々の細菌クローンが得られた。12のクローンを選択し、lgG9O12.2を使用するイムノブロッティングによって分析した(図1A)。これらのクローンは、9O12.2によって標識された融合鞭毛タンパク質を産生し、このことは、抗体によって認識されるペプチドを含むことを示す。
【0145】
20クローンのDNA配列決定の結果、表1)に示される9ペプチド配列が同定された。
【0146】
【表1】

【0147】
これらの配列は、1〜4個の残基で互いに異なっている。これらの配列のうち、データベースに登録されたものはなかった。
【0148】
対応するクローンが、9O12.2を用いるイムノブロッティングにおいて、より強いシグナルを生じたので(図1A)、クローン14の配列を合成のために選択した。以下の制約されたペプチドSGSGCGPRVMHGLHLGDDEGPC(コラジェリンとして設計された)を合成し、N末端と連結しているビオチンとコンジュゲートするか、しなかった(「ビオチン−コラジェリン」を設計した)。両ペプチドの純度は、95%よりも高いと、HPLC分析によって測定された。それらの分子量は、それぞれ2155および2405Daであった。
【0149】
ペプチドを、9O12.2IgGと結合するその能力、および固相アッセイにおいてGPVIと競合するその能力について分析した。表面プラズモン共鳴を使用して、9O12.2IgGは、固定化されたビオチン−コラジェリンと用量依存的に結合するとわかった(図1B)。推定されるKDは、10−6Mであった。ビオチン−コラジェリンをジスルフィド橋還元に付すと、これは、9O12.2エピトープが、立体構造的であるというこれまでに報告された知見(Lecut C.ら2003年)と一致して、9O12.2IgGと結合する能力を喪失した(図1C)。さらに、9O12.2は、組換え可溶性GPVI(GPVI−Fc)の存在下でペプチドと結合できず(図1D)、このことは、GPVIおよびコラジェリンは、9O12.2との結合について競合したということを示した。
【0150】
コラーゲンとの結合:これらのデータが、コラジェリンは、GPVIに対する9O12.2のエピトープを少なくとも部分的に摸倣すると仮定することにつながった。9O12.2は、コラーゲンとのGPVI結合を中和するので、本発明者らは、コラジェリンは、GPVIのコラーゲン結合部位を少なくとも部分的に摸倣できると仮定した。したがって、本発明者らは、コラジェリンのコラーゲンと相互作用する能力を調べた。
【0151】
本発明者らは、ビオチン−コラジェリンが固定化されている、ストレプトアビジンコーティングしたセンサーチップを使用して、I型コラーゲンと表面の結合を観察した(図2A)。次いで、アミンカップリング手順によって、I型コラーゲンをCM5センサーチップ上に固定化した。本発明者らは、漸増濃度のビオチン−コラジェリン(125;250、500および1000μg/mL)を使用して、用量依存性結合を観察した。センサーグラムの分析によって、1.10−7MというKDを算出することが可能であった(図2B)。
【0152】
微量滴定プレート上に固定化されているコラーゲンを使用して、コラーゲンとのペプチド相互作用をさらに分析した。無関係のペプチドと比較した場合には、ビオチン−コラジェリン(50μg/mL)は、コラーゲンと有意に結合した(図3A)。結合は、組換え可溶性GPVIの存在下、または9O12.2IgGの存在下で完全に阻害された(図3A)。対照的に、9O12.2とは異なるエピトープと結合し、コラーゲンとのGPVI相互作用を中和しない(Lagrue−Lak−Hal AH.ら2001年)、二次抗GPVIモノクローナル抗体、3J24.2は、ビオチン−コラジェリンとコラーゲンの結合を阻害しなかった。結局、これらの結果は、コラジェリンおよびGPVIは、コラーゲンの表面の同一部位または重複する部位と結合するということを実証する。このペプチドは、そのコラーゲン結合特性のために、コラジェリンと名づけられた。
【0153】
本発明者らは、コラジェリンの特異性を正確に言うために、細胞外マトリックスに由来する種々の固定化された高分子:フィブロネクチン、ビトロネクチンおよびマウスラミニン、または血管病変部位に蓄積される高分子(フィブリノゲン/フィブリン)と結合するその能力を調べた(図3B)。コラジェリンは、フィブリノゲン、ビトロネクチンおよびフィブロネクチンと、ウシ血清アルブミンよりも大幅には結合しなかった。対照的に、これは、GPVIアクセサリーリガンドとしてこれまでに同定されたラミニンと結合した(Inoue O.ら2006年)。この結果は、ラミニンおよびコラーゲンと相互作用するGPVIの部位は、コラジェリンによって摸倣される共通構造を共有することを示す。さらに、ラミニンは、SPR分析によってコラジェリンと結合するとわかり、算出されたKDは、1.83 10−5Mであった。対照的に、非関連ペプチドは、これらのタンパク質のいずれとも結合しなかった。
【0154】
9O12.2を用いて同定されたその他のクローンの配列に対応する8種の合成ペプチドを合成し、コラーゲンと結合するその能力について調べた。すべては、対照の非関連ペプチドと比較した場合に、コラーゲンと結合するとわかり、可変効率を有していた(図4)。
【0155】
コラジェリンを用いる、コラーゲンのex vivo標識:GPVIは、血管損傷部位でコラーゲンと結合するので、本発明者らは、組織化学分析によって、コラジェリンが血管コラーゲンと相互作用できるかどうかを調べた。
【0156】
ラット大動脈のパラフィン包埋切片の凍結切片を、ビオチン化コラジェリンIまたは無関係のペプチドとともにインキュベートした。ペルオキシダーゼがカップリングしているエクストラビジンを使用して、結合しているペプチドを検出した(図5A)。コラジェリンを含む大動脈切片では褐色が発色したが、無関係のペプチドを含むものでは発色しなかった。標識は、固定された切片上よりも、ラット大動脈の凍結切片で、より明確であった(図7B)。コラジェリンでの標識は、シリウスレッドを用いるコラーゲンの呈色と一致していた。抗GPVI IgG9O12.2の存在下では、コラジェリンを用いる標識の強度が低下し、このことは、ペプチドおよび血管マトリックス間の相互作用の特異性を示す。
【0157】
多量のI型コラーゲンを含むラット尾の切片を使用して、コラジェリンの、非血管コラーゲンと相互作用する能力を、次に調べた(図5B)。コラジェリンとともに、シリウスレッドで着色された線維の強い標識が観察されたが、対照ペプチドとともには観察されなかった。
【0158】
線維症のin vivo同位体分子イメージング:コラジェリンは、組織化学分析で、コラーゲンを強く標識したので、本発明者らは、コラーゲン蓄積の部位で in vivoで保持されるであろうと仮説をたてた。したがって、コラジェリンを標識し、治癒した心筋梗塞を呈するラットにおいて静脈内注射した。
【0159】
第1に、8匹のラット(4匹は心筋梗塞を有し、4匹は、偽手術された)に、混合Tc−99m標識したストレプトアビジン−ビオチン化コラジェリンを投与した。放射性トレーサーは、高い非特異的肝臓取り込みを示し、緩慢な血液クリアランスを示した(注射の12時間後まで、高い血液プール活性が見られた)。視覚的には、平面および断層撮影像によって、注射の4時間〜6時間後に、心筋梗塞を有するすべてのラットにおいて心臓領域において大幅なトレーサー取り込みが示されたのに対し(図6B)、すべての偽手術されたラットの心臓領域ではトレーサー取り込みは観察されなかった。平面シンチグラフィー像での心臓対肺比は、心筋梗塞を有するラットでは、2.76+/−0.36であり、対して、偽手術されたラットでは、1.95+/−0.28であった(p=0.003)。注射の6時間後に得た心臓の凍結切片では、シグナルは、コラジェリン/Tc−99mストレプトアビジン混合物で処理したラットの梗塞領域において顕著であり、梗塞心筋対遠隔心筋の比は、2.00+/−0.70であった(図6C)。梗塞領域は、コラーゲンが豊富であったと、シリウスレッドを用いた組織学的検査によって示された。対照実験は、非特異的99mTc−ストレプトアビジン−ビオチン−ペプチドを使用して、6匹の心筋瘢痕を有するラットで実施し、注射の6時間後に得たオートラジオグラフィーデータは、梗塞において、非特異的トレーサー取り込みを示さなかったか、軽度の非特異的トレーサー取り込みを示し、コラジェリンを用いて得たものよりも低い梗塞心筋対遠隔心筋の比を有していた(1.82+/−0.32対2.61+/−0.19、p<0.01)(図6D)。
【0160】
第2に、12匹のラット(8匹は心筋梗塞を有し、4匹は偽手術された)に、99mTc−コラジェリンを注射した。放射性トレーサーによって、初期の(<5分)胆汁中排泄および迅速な血液クリアランスが示された。視覚的には、トレーサー注射の1時間後に、心筋梗塞を有する5/8匹のラットの心臓領域において平面および断層撮影像で大幅なトレーサー取り込みが明確に見られた(図7A)。心筋梗塞を有する2匹のその他のラットの心臓領域では、イメージングは、疑わしいものであり、1匹では、陰性であった。6/10匹の手術されたラット(4匹は心筋梗塞を有し、2匹は偽手術された)の皮膚瘢痕および/または皮下胸部瘢痕において、トレーサー取り込みの増大も観察された。平面シンチグラフィー像での心臓対肺の比は、心筋梗塞を有するラットでは2.08+/−0.17であり、対して、偽手術されたラットでは1.45+/−0.03であった(p=0.03)。注射の6時間後に得た心臓の凍結切片では、シグナルは、処理したラットの梗塞領域において顕著であり、梗塞心筋対遠隔心筋の比は、3.06+/−0.45であった(図7B)。梗塞領域は、コラーゲンが豊富であったと、シリウスレッドを用いた組織学的検査によって示された。対照実験は、非特異的99mTc−ペプチドを使用して実施し、注射の4時間後に得たオートラジオグラフィーデータは、心筋組織において極めて低い絶対トレーサー取り込み(99mTc−コラジェリンを用いて観察されたものの10%)、および正常心筋と比較して、梗塞におけるトレーサー取り込みの軽度の増大を示し、これは、軽度の非特異的トレーサー蓄積に対応した(梗塞心筋対遠隔心筋:1.7)(図7C)。
【0161】
<実施例2>
99MTC標識コラジェリンを使用するシンチグラフィーによる肺線維症のイメージング:
方法:
6〜7週齢の、雄のC57BL/6Jマウスを、INSERMルールに従って維持した。0日目に、マウスに、80μgの塩酸ブレオマイシン(Bleomycine Bellon、Aventis、France)を気管内に投与した。死亡率を、14日間にわたって毎日評価した。未処理マウスを対照として使用した。
【0162】
14日目にマウスに、99mTc−B−コラジェリンまたは99mTc−B−Pc(3MBq)の1回静脈内注射を投与した。次いで、Biospace Lab専用の小動物γカメラを使用して、トレーサー注射の1時間後に、平面全身シンチグラフィーイメージング(60分間)を実施した。
【0163】
実験の最後に、動物を屠殺し、ガンマカウンティング、オートラジオグラフィーおよび組織学的検査(シリウスレッド呈色)のために肺を解剖した。
【0164】
結果:
シンチグラフィー:ブレオマイシンを投与されたマウスの肺領域において、相当な99mTc−B−コラジェリン取り込みが観察され(肺/筋肉バックグラウンド活性比:3.65±0.34)、これは、対照マウスの肺領域において観察されたものよりも高く(肺/筋肉バックグラウンド活性比:1.56±0.01、p<0.02)、ブレオマイシンマウスの肺領域における99mTc−B−Pc取り込みよりも高かった(肺/筋肉バックグラウンド活性比:2.20±0.11、p<0.03)(図8)。
【0165】
オートラジオグラフィー:オートラジオグラフィー研究によって、対照と比較して、肺線維症を有するマウスの肺の切片で、より高い99mTc−B−コラジェリン取り込みが確認され(平均カウント/mm:140±32対61±10、NS)、シリウスレッド呈色のものと対応する不均一な分布を有していた。この結果は、線維症への特異的99mTc−B−コラジェリン取り込みを高度に示唆する(図9)。
【0166】
線維性肺における対照ペプチドの取り込みは、99mTc−B−コラジェリンのものよりも大幅に低かったと、65±10カウント/mmの活性によって示された。さらに、対照ペプチド取り込みは、レッドシリウス呈色と相関していなかった(図10)。
【0167】
結論:
99mTc標識コラジェリンは、マウスにおける肺線維症の、効率的で、特異的なイメージングを可能にする。
【0168】
参考文献:
【0169】
【表2】

【0170】
【表3】

【0171】
【表4】

【0172】
【表5】

【0173】
【表6】

【0174】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
X1−X2−M−H−G−L−X7−L−X9−X10−D−E(配列番号1)
[式中、
アミノ酸X1は、R、FまたPであり、
X2は、FまたはVであり;
X7は、Q、HまたはLであり;
X9は、WまたはGであり
X10は、AまたはDである]
からなるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項2】
RVMHGLHLGDDE(配列番号2)、RFMHGLQLWADE(配列番号3)、RVMHGLQLWADE(配列番号4)、RVMHGLHLWDDE(配列番号5)、RVMHGLQLWDDE(配列番号6)、RVMHGLHLWADE(配列番号7)、FVMHGLHLGDDE(配列番号8)、PVMHGLHLWDDE(配列番号9)およびRVMHGLLLGADE(配列番号10)からなる群において選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号2において示されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
CGP−X1−X2−MHGL−X7−L−X9−X10−DE−GPC (配列番号11)
[式中、
アミノ酸X1は、R、FまたはPであり;
アミノ酸X2は、FまたはVであり;
アミノ酸X7は、Q、HまたはLであり;
アミノ酸X9は、WまたはGであり;
アミノ酸X10は、AまたはDである]。
からなるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
SGSGCGP−X1−X2−MHGL−X7−L−X9−X10−DE−GPC(配列番号21)
[式中、
アミノ酸X1は、R、FまたはPであり;
アミノ酸X2は、FまたはVであり;
アミノ酸X7は、Q、HまたはLであり;
アミノ酸X9は、WまたはGであり;
アミノ酸X10は、AまたはDである]
からなるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載のポリペプチド。
【請求項6】
請求項4または5に記載のポリペプチドが、2個のシステイン残基間で結合されるジスルフィドによって環化されている環状ポリペプチド。
【請求項7】
次式を有する、請求項6に記載の環状ポリペプチド。
【化1】

【請求項8】
次式を有する、請求項6に記載の環状ポリペプチド。
【化2】

【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする単離核酸分子。
【請求項10】
請求項9に記載の核酸を含むベクター。
【請求項11】
請求項9に記載の核酸または請求項10に記載のベクターによって形質転換されている宿主細胞。
【請求項12】
検出可能な物質で標識されている、請求項1から5のいずれかに記載のポリペプチドまたは請求項6から8のいずれかに記載の環状ポリペプチド。
【請求項13】
請求項12に記載の、標識されたポリペプチドまたは標識された環状ポリペプチドを含む造影剤。
【請求項14】
請求項13に記載の造影剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
線維症を伴う状態のin vivo診断またはイメージングのための、請求項13に記載の造影剤または請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記の線維症を伴う状態が、肺線維症、肝腎線維症、心臓線維症、血管系線維症、皮膚線維症、眼線維症、骨および骨髄線維症からなる群から選択される、請求項15に記載の造影剤または請求項15に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−505820(P2011−505820A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537442(P2010−537442)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067275
【国際公開番号】WO2009/074628
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(599176506)アンセルム(アンスチチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル) (23)
【出願人】(510164256)ユニヴェルシテ パリ ディドロ−パリ セットゥ (2)
【Fターム(参考)】