説明

線維筋痛症候群または慢性疲労症候群の処置のための経皮的組成物および方法

【課題】慢性疲労症候群および線維筋痛症候群に関連する症状を緩和する組成物および方法の提供。
【解決手段】アンドロゲンが、テストステロン、テストステロン誘導体またはテストステロンとテストステロン誘導体との組合せを含む約1%の濃度のアンドロゲンと、薬学的に許容できるゲルとを含む、血中アンドロゲンレベルを増加させるための組成物。血中の成長ホルモンまたはIGF−1レベルを増加させる化合物をさらに含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
エストロゲンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンを用いた、健康女性への併用ホルモン補充療法のリスクと利益をプロスペクティブに評価することを目的とした女性健康イニシアティブ(WHI)臨床試験が、最近中止された(Fletcher, S. W. et al., 2002, J. Amer. Med. Assoc., 288:366-368)。冠状動脈性心臓病、乳癌、卒中および肺塞栓におけるリスクの増加が、結腸直腸癌、子宮内膜癌、股関節の骨折および他の原因による死における利益の増加を上回り、これにより、これらのホルモンを摂取している女性における危険率の総合指標に対して、わずかだが統計的に有意に増加したリスクがもたらされた。しかし、著者らは、これらの研究がホルモン不足の症状を有する者ではなく、健康な女性のみを評価したことを指摘している。さらに、たとえば、経皮システムなどの他の送達経路は、経皮送達が、これらの患者の利益を増加させおよび/またはリスクを減少させ得る可能性があるので、研究の必要がある。ホルモン補充療法が、ほてりなどの閉経周辺期症状を軽減するために効果的であると依然考えられていることが、WHI研究の著者らにより言及された。
【0002】
性ホルモン補充療法を評価する臨床試験のほとんどは、エストロゲンおよびプロゲスチンに集中しているが、テストステロン欠乏であるかもしれない女性、たとえば、AIDS罹患女性の消耗症候群などの、筋量の損失および慢性疲労を伴う慢性疾病からのストレスを有する疾病状態に対するテストステロン補充療法への、経皮送達システムを用いた取り組みが現在始められている(Miller, K. Et. Al. 1998. J. Clin. Endocrinol. Metab. 83: 2717-2725; Javanbakht, M. Et. Al. 2000. J. Clin. Endocrinol. Metab. 85:2395-2401)。経皮送達を用いたテストステロン補充療法は、テストステロン欠乏の症状を有する男性、たとえば、パーキンソン病の男性などでも利益を有する(Okun, M. S. et. al. 2002. Arch. Neurol. 59: 1750-1753)。性ホルモン、特にエストロゲン、プロゲスチン、そして今回はテストステロンが、女性健康イニシアティブ試験では評価されなかったパラメータである、主観的な幸福感および生活の質のために重要であるという証拠が徐々に集まっている。
【0003】
米国特許第5,935,949号は、患者へのテストステロンなどのアンドロゲンの経口投与を含む、線維筋痛症候群および慢性疲労症候群の症状を軽減する方法を開示する。アンドロゲンが筋組織を増加し、疲労を改善することが知られているため、そのような状態の処置でのテストステロン治療の使用の背景にある見解は、線維筋痛症候群(FMS)の女性の初期症状である、筋痛および慢性疲労が、テストステロン欠乏に少なくとも一部関連するというものである。実際に、閉経前線維筋痛症患者の血清遊離テストステロン濃度の、健康なボランティアに対するわずかな減少が立証されたが、有意性は、閉経後女性では得られなかった(Dessein, P. H. et. al. 1999. Pain 83: 313-319)。テストステロンと痛覚との関係は、以前に示唆されていた(Blomqvist, A. 2000. Compar. Neurol. 423: 549-551)。性ホルモンが、個人の痛みの閾値を上昇させうるという概念を支持する証拠が集められた。たとえば、妊娠期間中(Gintzler, A. R. 1980. Science 210: 193-195)、エストロゲンおよびプロゲステロン濃度同様テストステロン濃度が上昇する(Bammann, B. L. et. al. 1980. Am. J. Obstet. Gynecol. 137: 293-298)。テストステロンが痛みを抑制しうるという理論は、痛みの感覚の最初の処理が起こる、高等脊椎動物(ウズラ)の脊髄後角で、アロマターゼ陽性細胞が発見されたことにより支持される(Evard, H. Et. al. 2000. J. Compar. Neurol. 423: 552-564)。エストロゲンが、内因性オピエートの合成に重要な場所である、脊髄後角の表面層に由来するエストロゲン受容体陽性細胞で、オピエートの転写を誘発しうることが知られているため(Amandusson, A. et al. 1996. Neurosci. Lett. 196:25-28、Amandusson, A. et al. 1996. Eur. J. Neurosci. 8:2440-2445、Amandusson, A. et al. 1999. Pain 83:243-248)、テストステロンを17βエストラジオールに変換するアロマターゼの存在は、興味深い。
【0004】
卵巣切除したメスのラットへのエストロゲン投与が、脊髄エンケファリン転写を増加させることが証明され(Amandusson, A. et. al. 1999. Pain. 83: 243-248)、エストロゲン受容体陽性細胞は、プレプロエンケファリンmRNAと共に局在化する(Amandusson, A. et. al. 1996. Eur. J. Neurosci. 8: 2440-2445)。これらの内因性オピエートは、一次求心性線維ならびに脳幹から下降する痛覚調節(pain-modulating)線維の両方で、侵害受容中継細胞の抑制を仲介するエンケファリン作用性ニューロンに作用する(Ma, W. Et. al. 1997. Neuroscience 77: 793-811)。従って、テストステロンおよびエストロゲンの両方は、痛覚の調節に重要であるように見える。しかし、性別に関連する痛覚についてのアンドロゲンのエストロゲンに対する示差的な重要性は、十分に理解されていない。
【0005】
テストステロンはまた、脳のレベルでも作用しうる。ラットの足にホルマリンを皮下注射した際、痛みの誘発に応えて、テストステロン濃度は、脳および脊髄において劇的に減少した。これらの動物において、中枢神経系でのテストステロンの喪失は、5α−レダクターゼによるジヒドロテストステロンへの代謝によるものであることが証明された(Amini. H. Et. al. 2002. Pharmacol. Biochem. Behav. 74: 199-204)。この著者らは、ジヒドロテストステロンが、脳内のGABAA受容体複合体の効果的なモジュレータである、5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオールに代謝されうることを指摘した。GABAA受容体は、脳の至る所で見いだされ、辺縁系、殊に扁桃体内のGABAA受容体モジュレータの作用は、恐怖の感覚と関連している。GABAA受容体イオンチャネル複合体は、脳内で最も重要な抑制イオンチャネルの1種である。従って、テストステロンは、痛みの調節のみならず、GABAA受容体のニューロステロイド部位への代謝物の結合を介した、感情的な幸福感にもまた重要であるが、これはいまだ証明されないままである。
【0006】
成長ホルモンなどの他のホルモンもまた、線維筋痛症および慢性疲労の発病および症状において役割を果たしうる。たとえば、線維筋痛症の患者は、急な運動に対し適正な成長ホルモン応答を示し得ず、この応答が成長ホルモン合成の強力な抑制剤である、ソマトスタチンのレベルの増加に関連するらしいことが、研究で示された(Crofford, L. J. et. al. 2002. Arthr. Rheumat. 46: 1136-1138; Paiva, E. S. et. al. 2002. Arthr. Rheumat. 46: 1344-1350)。テストステロンが、成長ホルモン分泌を増加させることはよく知られている。成長ホルモン分泌は、思春期後成年期でみられる減少した分泌レベルよりもさらに、老年期に減少する。この減少は、老年期に一部の人で起こることが知られている、除脂肪体重に対する脂肪量の比の減少に関連すると考えられる。従って、ソマトスタチンレベルの上昇は、線維筋症の患者において、テストステロンおよび成長ホルモン濃度の減少による同化作用および筋量の減少を反映している可能性がある。結果として、成長ホルモン治療は、線維筋症の患者の状態を改善しうる。
【0007】
女性での経皮ホルモン療法が、血清ホルモン濃度を、閉経前女性で一般的に見出される濃度に近似したレベルに上昇させると共に、線維筋痛症の患者の症状を緩和できることが、今回見いだされた。
【発明の概要】
【0008】
発明の概略
本発明の1つの目的は、約1%の濃度のアンドロゲンと、薬学的に許容できるゲルとを含む、血液中のアンドロゲンレベルを増加させる組成物である。本発明のアンドロゲン組成物は、テストステロンおよびその誘導体を含みうる。
本発明の他の目的は、血液中の成長ホルモンのレベルを増加させる化合物または成長ホルモン自体に加え、アンドロゲンゲル製剤を投与することである。
本発明の他の目的は、線維筋痛症候群および慢性疲労症候群に罹患した患者に、症状を緩和するアンドロゲンゲル製剤の有効量を投与することを含む、線維筋痛症候群および慢性疲労症候群の症状を緩和する方法である。該方法の他の態様において、投与される製品は、アンドロゲンホルモンならびに血液中の成長ホルモンレベルを増加させる化合物の組合せを含むゲルでありうる。さらに、本発明の方法は、患者へのアンドロゲンゲルの投与および別個の成長ホルモンの注射を意図する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、1日目(円で示す)および28日目(四角で示す)における、患者の血液中の経時的な総テストステロン量のグループ平均を示す。
【図2】図2は、処置前(0日目)および試験終了時(28日目)の圧痛点(tender point)評価の結果を示す。記録した結果は、0(無痛)〜10(最も高い痛みレベル)のスケールでの痛みレベルである。
【図3】図3は、処置前(0日目)および試験終了時(28日目)の圧痛点における痛みの痛覚計による測定評価の結果を示す。
【図4】図4は、試験の1日目と28日目との1〜10のスケールでの(10が最も高いレベル)、線維筋痛症および慢性疲労に関連する症状/状態の重篤性の対比を示す。評価した症状/状態は、リビドー、筋痛、倦怠感、頭痛の重篤性、頭痛の頻度、凝り、不眠、覚醒時の疲労、不安、憂鬱を含んだ。
【0010】
発明の詳細な説明
慢性疲労の症状は、近年多くの注目を受けた。慢性疲労症候群の診断の確認に用いることができる身体所見または臨床検査は存在しない。しかし、この症候群は、一般に、以下の症状の少なくとも4種またはそれ以上の症状が同時に起こる、6ヶ月より長く存続または再発する疲労により特徴づけられる:減じられた記憶または集中、のどの痛み、圧痛のある頸部または腋窩リンパ節、筋痛、多関節痛、新たな頭痛、爽快でない睡眠、労作後の不快感。初期の研究は、慢性疲労症候群の病態生理学について、伝染性または免疫異常調節のメカニズムを示唆した。より最近の研究では、神経学的、感情的および認知的症状もまたしばしば起こることが示された。
【0011】
線維筋痛症(結合組織炎とも呼ばれる)は、外来内科で最も一般的なリウマチ症候群の1つであり、一般人口の3〜10%が冒されている。線維筋痛症候群(FMS)の患者のほとんどは女性であり、これらの患者の約50〜75%は、年齢40〜60才の閉経周辺期/閉経後の女性である。閉経周辺期/閉経後の女性の約2〜5%がFMSに罹患しており、いくつかの推定値は0.5〜20%の範囲にわたる。この病気は、多くの圧痛点、疲労、頭痛、回復睡眠の欠如およびしびれを伴う、慢性の広範囲に及ぶ筋骨格痛症候群により特徴づけられる。線維筋痛症と慢性疲労症候群とは、閉経周辺期/閉経後の女性における増加した頻度、客観的所見の欠如、診断的な臨床検査の欠如を含む多くの特徴を共有する。さらにこれらの状態は、慢性疲労、頭痛および回復睡眠の欠如などを含む重複した臨床的特徴を有し、線維筋痛症では筋骨格痛が優勢であり、慢性疲労症候群では、感染への感受性または過剰な免疫学的反応性の明らかな増加が優勢である。
【0012】
アシクロビル、経口および経膣ナイスタチンおよびフルオキセチンを含む慢性疲労症候群の種々の治療が試行されたが、ほとんど成果がなかった。プラセボ対照試験は、線維筋痛症の処置において、アミトリプチリン、フルオキセチン、クロルプロマジンまたはシクロベンザプリンの軽度の効果を立証した。運動プログラムもまた、両方の状態に有益であることが示唆されている。したがって、このような衰弱性の状態に対するよりよい処置が必要であることが明かである。
アンドロゲンなどのホルモンの経皮投与が、FMSまたはCFS罹患患者の症状を緩和しうることが、今回見いだされた。「アンドロゲン療法」とは、アンドロゲン単独またはアンドロゲンの組合せの投与を含むものである。「緩和」とは、FMSまたはCFSの患者の症状を軽くし、減少もしくは低減させ、または軽減させもしくは取り除くことを意味する。FMSまたはCFSの「症状」とは、FMSまたはCFSによってもたらされる筋の痛みおよび萎縮、慢性疲労、回復睡眠の欠如、感染への増加した感受性および頭痛を含む。
【0013】
線維筋痛症治療のためのホルモン経皮送達の薬物動態学および有効性を調査する、臨床試験が行われた。施設内治験審査委員会に承認された広告により女性が募集された。年齢が40〜55才で、米国リウマチ学会の基準(腰の上方および下方の両側の18箇所の圧痛点のうちの11箇所、慢性疲労等(Wolfe, F. et. al. 1990. Arthrit. Rheumat. 33: 160-172))により線維筋痛症と診断された被験者を、彼女らが追加基準を満した場合、研究のために選択した。女性らは、他の全ての基準に合致することに加えて、研究期間中、彼女らの薬を変えないことに同意した場合に、試験に含めた(鎮痛剤の減少は許可される)。ホルモン補充療法を受けている女性は、他の適格性基準に合致することに加えて、試験の少なくとも2週間前から、そして試験期間中、ホルモン療法を中止することに同意した場合に登録される。閉経周辺期/閉経後女性には、適切な代替的避妊法を有し、妊娠テストで陰性であることが要求され、月経サイクルの卵胞期(増殖期)中に処置が始められる。患者は、治療中、テストステロンの効果を促進するために、1週間に5日、1日20分運動することに同意する場合に試験に含めた。これは、施設内治験審査委員会により導入された要件であった。
【0014】
小児、妊婦、およびホルモン治療、ホルモン避妊薬、または不妊薬を受けている女性は除外した。診断未確定の膣からの出血が報告された場合、体格指数BMIが30より大きい場合、エタノールまたは違法医薬品濫用が認められた場合、活動性の血栓性静脈炎、乳癌、高血圧(薬物治療の有無を問わず、5分着席後に収縮期/拡張期血圧が160/95を超えるもの)、または重大な皮膚疾患、座瘡もしくは多毛症を有する場合、女性を研究から除外した。登録に先立って、被験患者の血液について以下の一般健康基準に関する検査を行った(カッコ内は除外基準):脂質プロファイルによる心臓リスク要因---空腹時総コレステロール(>240mg/dL)、高密度リポタンパク質(<35mg/dL)、低密度リポタンパク質(>210mg/dL)、トリグリセリド(>300mg/dL);アラニンアミノトランスフェラーゼ(>1.5×N(正常値)、正常値は0〜40U/L)、アルカリホスファターゼ(>2×N、正常値は40〜120U/L)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(>1.5×N、正常値は10〜30U/L)、血清アルブミン(>N、正常値は3.2〜5.2g/dL)、総ビリルビン(>N、正常値は0.2〜1.3mg/dL)、および直接(抱合型、可溶性)ビリルビン(>N、正常値は0.0〜0.3mg/dL)による肝機能;血中尿素窒素(>2×N、正常値は8〜18U/dL)および血清クレアチン検査(>N、正常値は0.7〜1.2mg/dL)による腎機能;血液学的機能は、ヘモグロビン(正常値、12〜16g/dL)についての検査を含む完全血球計算により評価した。テストステロン治療が、被験患者の一般的な健康に不都合に作用したかを評価するために、研究の最後に血液検査および身体検査を行った。血清総テストステロン(>0.4ng/mL)およびFSH(<22IU/L)を、基準範囲(reference range)の下半分(lower half)のテストステロン濃度を患者が有することを確認し(18人中2人の患者がテストステロン濃度に基づき除外された)、閉経後状態を決定するために検査した(一晩絶食後の午前8時)。<22IU/LのFSH濃度は、閉経前または閉経周辺期状態であること、したがって、両方の卵巣摘出術を受けていない限り、適切な避妊が必要であることを示す。テストステロン血清濃度は、循環アンドロゲンの小幅な24時間周期リズムのために午前8時に検査した。最も頻繁に適用される除外基準は、BMI>30であった。セイヨウオトギリソウは、肝臓で、解毒作用のある酵素複合体、CYP3Aの活性化によりホルモンの異化作用を誘発することが知られているため、患者はセイヨウオトギリソウの服用の中止を求められた。上記の適格基準に適合する12人の患者について、圧痛点評価、線維筋痛症診断の確認および一般健康評価を含む身体検査の予定を組んだ。
【0015】
1日目、テストステロン血清濃度基準線の24時間薬学動態プロファイリングのために、0、1、2、3、4、6、8、10、12および24時間で血液を静脈穿刺により採取した。1%w/wのテストステロンゲル0.75gを、血液採取0時間後(午前8時)ちょうどに、患者の下腹部皮膚に適用した。患者はまた、痛み評価質問票に記入し、毎日午前8時に下腹部皮膚に適用するためのテストステロンゲルのパック、使用説明書、および28日間分の治療の患者投薬記録および運動記録を与えられた。28日目に、24時間薬学動態プロファイリング用の血液採取が繰り返され、28日間の治療の終わりに追加の検査が繰り返された。
この研究用の送達ビークルは、ゲル製剤であった。その使用を選択したのは、アンドロゲン治療の副作用を減じる方法として、有効レベルの血中ホルモンをもたらすホルモン用の経皮送達システムを特定することが研究の目的であったからである。本研究に使用されたゲルは、USPグレードの1%w/wのテストステロンゲルであった。1日に適用されるゲル用量は、0.75グラムであり、10%の生物学的利用能が期待できるため、24時間あたり0.75mgのテストステロンが送達される。このゲルは、Bently Pharmaceuticals Inc.(ノースハンプトン、NH)により、適正製造基準を用いて女性用に製剤されたもので、無色であり、皮膚に快適であり、汚れをつけることもない。
【0016】
テストステロン濃度は、研究対象からの血清テストステロンが、抗テストステロンmAbに結合した酵素結合テストステロンと競合する、酵素結合免疫測定(EIA、Diagnostic Systems LaboratoriesまたはDSL, Inc, Webster, Texas)により決定した。この分析システムは、テストステロンの高い範囲の濃度ならびに女性で見られる低い濃度を検知するよう設計された。遊離テストステロン濃度は、試験サンプル中の非結合テストステロンを識別し、グロブリンおよびアルブミンと結合した性ホルモンと低親和性の抗テストステロン抗体を用いたEIAにより決定した。テストステロン濃度の平均を決定する目的のために、時間は最も近い時間に基づいた。薬学動態データ用として得られた240のタイムポイント(1人10回×1人2セット×12人)のうち、1タイムポイントはミスし(♯12、4時間)、3つのタイムポイントを血液採取の標準時の間に追加した(♯10、8時間、♯12、4時間および10時間)。これらのタイムポイントの値は、平均テストステロン濃度を導くことを目的として、内挿により得た。WinNonlin Pro(Pharsight, Mountain View, California)を用いた非コンパートメント薬学動態分析は、すべての患者の記録された正確なタイムポイントを用いて行った。
【0017】
線維筋痛症症状緩和のための治療の有効性を決定するために、患者は、1日目と、治療の最後の28日目にもう一度、痛みの評価のために質問票に記入した。患者質問票は、公開され、承認された線維筋痛症の影響に関する質問票ならびに線維筋痛症患者評価のための他の許容された基準(Wolfe, F. Et. al. 1990. Arthrit. Rheumat. 33: 160-172; Goldenberg, D. Et. al. 1996. Arthrit. Rheumat. 39: 1852-1859; Burckhardt, C. S. et. al. 1991. J. Rheumatol. 18: 728-733)に基づいており、100mmの視覚的アナログスケール(VAS)を用いた。圧痛点試験は、線維筋痛症の女性の治療経験のある資格を有するリウマチ専門医により行われ、約9ポンドの圧力を圧痛点に加え、患者が痛みを感じるかどうか尋ねることを含むものであった。この実務は、米国リウマチ学会により指定された基準によるものである。試験は、治療1日目の前(したがって、「前処置」として明示する)および治療終了後に行われた。圧痛点評価の前処置は、治療開始前1週間以内に全ての患者に行われた。痛覚計の数値を、比較のために、12人の研究対象のうち11人の両側の第二肋骨軟骨接合部および僧帽筋圧痛点からも得た。
【0018】
血清テストステロン濃度データの薬学動態分析は、血管外入力を伴う非コンパートメントモデルを使用し、WinNonLin Prosoftwareを用いて行った。1日目と28日目の最大血漿濃度(Cmax)および経時的な血漿濃度のプロットによる濃度曲線下面積(AUC)の相違は、個々の対象の28日目から1日目をマイナスして算出し、有意性(p<0.05)が得られたかどうかを決定するために、これらの相違の95%信頼区間を推定して評価した。圧痛点データの評価は、Studentのt検定(対応あり、両側)により分析した。
【0019】
血中テストステロン濃度データの分析は、血清総テストステロン濃度が、線維筋痛症患者へのテストステロンゲルによるホルモン補充療法に応答して、確実に上昇することを明らかにした。1日目および28日目の経時的な血清フリーテストステロン濃度のデータを図1に示す。血清テストステロンデータの、女性の血清総テストステロン濃度の標準基準範囲との比較により、本研究の線維筋痛症患者は、当初、基準範囲の下半分の総テストステロン濃度であったことが確認された。しかし、1日目におけるホルモンの最初の用量の適用の24時間後、血清総テストステロン濃度の平均は、1日目の0時の血清濃度平均より有意に高く(図1、p=0.01)、これは、血清濃度が、28日間のタイムコース中、概して早い段階で、持続性となったことを示すものである。定常状態濃度には、24時間サンプリングの初めと終わりの平均濃度が同様であったことにより証明されるように、28日までに到達した(図1参照)。個人間をベースに分析した場合、血清テストステロンの24時間プロファイルには違いがあり、これは、このホルモンについて知られている複雑な調節に一致する。薬学動態パラメータ分析の概要は、テストステロン治療に応答して、総テストステロン最大濃度の平均が有意に増加することを明らかにした:Cmaxは、1日目の1.21ng/mLと比較して28日目で1.92ng/mLであり、p<0.05であった。総テストステロンの濃度曲線下面積の平均(24時間プロファイリング期間にわたって評価)の有意な増加もまた見いだされた:AUCは、1日目の18.36ng−h/mLと比較し、28日目で28.75ng−h/mLであり、p<0.05であった。総合して薬学動態データを考慮すると、治療により、血清総テストステロン濃度は、初期に、初めの3時間で素早く上昇し、その後、経時的に確実に持続することが明らかにされた。加えて、血清テストステロン濃度平均は、閉経前女性の基準範囲の下限から、ちょうど基準範囲の上限に上昇した。
【0020】
血清中の遊離テストステロンの濃度も検査し、薬学動態分析に供した。総テストステロンの結果に類似する結果が得られた。しかし、12人の患者のうち2人が、治療前から治療の間中、異常に高い遊離テストステロン濃度を有した。残りの患者の個々のプロファイルは、閉経後の範囲から、閉経前の基準範囲および閉経後基準範囲の上部へと増加した濃度を示した。薬学動態パラメータ分析の概要は、遊離テストステロンのCmaxの平均が、1日目で3.68pg/mLであるのに対し、28日目は4.69pg/mLであり(p>0.05)、遊離テストステロンのAUCの平均が、1日目で54.35pg−h/mLであるのに対し、28日目で71.38pg−h/mLであることを示した。遊離テストステロンのCmaxおよびAUCは、28日目の値から1日目のベースラインを引き算することで証明されるように、治療により増加したが、例外的に高い遊離テストステロン濃度を有する2つの個体のために、統計的な有意性は、これらの薬学動態パラメータでは達成されなかった。これら2人の患者の遊離テストステロン濃度の高さは、これら特定の個人の総テストステロンプロファイルが正常であるのと対照的であり、これは、他の説明が存在するものの、これらの高い遊離ホルモン濃度が、血清中のグロブリンに結合した性ホルモン濃度が低いことによりもたらされた可能性を高めるものである。これら研究対象の両方により報告されたが、他のいずれの対象も使用していなかった薬剤またはサプリメントは、しょうが根のみであった(しょうが根が、遊離テストステロンの酵素結合免疫測定、または性ホルモン結合グロブリンの代謝もしくは結合パラメータに干渉することは知られていない)。
【0021】
圧痛点痛みデータの分析は、経皮テストステロンゲル治療が、主観的な痛みの評価の減少を伴うことを示した。0が無痛である、0〜10のペインスケールを使用して、すべての圧痛点の痛みにおいて平均値の減少があり、評価した18のカテゴリーのうち9つにおいて、統計的な有意性が得られた(評価したカテゴリーを下の表1に列挙し、図2に結果を示す)。同じ来院の際に、痛みを評価する痛覚計を使用して、痛みの応答を、両側の第二肋骨軟骨接合部および両側の僧帽筋圧痛点で定量化した。個々の応答値は、2〜9で変動した。患者が痛みを報告した圧力における平均痛覚値は、28日間のテストステロン処置の終わりでより高く、痛覚計の結果は、統計的な有意性には到達しなかったけれども、治療が痛み閾値を上昇させることを予想させるものであった。
【0022】
【表1】

1−8 前部、9−18 後部
【0023】
痛みパラメーターはまた、0〜10の視覚的アナログスケール(VAS)を用いた患者質問票により評価した(図4)。テストステロン処置に応答して、リビドー(性的欲求)が上昇した。筋痛、圧痛、凝りおよび覚醒時の疲労は、テストステロン処置中すべて減少した。これらの所見は、閉経前血清テストステロン濃度の回復が、テストステロンの欠乏に最も特異的に関連する症状、例えば、性的衝動、筋機能の喪失および増加する疲労などを軽減するという考えに一致する。研究の終わりでの血液検査および身体検査により、テストステロン治療が、被験患者の一般的な健康に悪影響を与えないことが確認され、処置に起因する有害事象について、被験患者からは何の報告もなかった。
【0024】
ホルモン補充療法を含む治験のほとんどは、女性に天然に見いだされるホルモンの誘導体を使用している。誘導体ホルモンは、それらの特許性および延長された半減期のために奨励された。女性に最も処方されるアンドロゲンホルモンは、C−17位でのメチル化がその経口生物学的利用能を増加させるメチルテストステロンであるので、アンドロゲンも例外ではない。しかし、一部の患者は、誘導体ホルモンを極めて良好には耐容しない。内因性ホルモンと構造的に同一な非誘導体型外因性ホルモンは、10〜100分の範囲の短い血漿/血清半減期を有し、天然ホルモンの経口投与を問題あるものにしている。研究者らは、肝毒性を最小化しながら、持続した送達を提供する、経皮送達システムの開発に着手した。テストステロン皮膚パッチは、消耗症候群を有するHIV血清反応陽性女性に効果的であったが(Miller, K. et. al. 1998. J. Clin. Endocrinol. Metab. 83: 2717-2725、Javanbakht, M. Et al. 2000. J. Clin. Endocrinol. Metab. 85:2395-2401)、皮膚パッチは、多くの女性に局所皮膚刺激を引き起こし、その利用を問題あるものにしている。
【0025】
本発明は、女性に適する濃度のゲルとして製剤されたテストステロンの使用を含む。データは、この製剤が、線維筋痛症の患者に、テストステロンの効果的な全身送達を提供することを示した。1日あたり0.75gの1%(w/w)テストステロンゲルによる、28日間の治療は、線維筋痛症患者の血清総テストステロンおよび遊離テストステロン濃度を、閉経前女性のものに近似する濃度に上昇させた。この用量で、患者は、テストステロン治療に応答して、筋痛の有意な減少、凝りの減少、疲労の減少およびリビドーの上昇を示した。圧痛点の痛みも同様に減少した。薬物動態および疼痛評価の両方の観点からの結果は、線維筋痛症候群を有する個体の処置に、テストステロン補充療法を使用することを支持するものである。
【0026】
従って、アンドロゲン治療は、女性、好ましくは閉経周辺期/閉経後の年齢の女性において、FMS又はCFSに関連する症状を軽減する有益な手法を提供する。「閉経周辺期/閉経後の年齢」とは、およそ40〜60才の年齢を、最もしばしば意味する。この範囲外の女性もまた、これらの症候群が20〜60才の年齢で存在することが知られているので、利益を有しうる。好ましい態様として、投与されるアンドロゲンは、テストステロン、ジヒドロテストステロンもしくはアンドロステンジオンなどのテストステロンの活性代謝産物、またはエナント酸テストステロンもしくはテストステロンシピオネートなどのテストステロン誘導体を含む。本発明に有益であると思われる、利用可能なアンドロゲン医薬製剤の例は、限定されるものではないが、ダナゾール、フルオキシメステロン、オキサンドロロン、メチルテストステロン、デカン酸ナンドロロン、ナンドロロンフェンプロピオネート、オキシメタロン、スタノゾロール、メタンドロステノロン、テストラクトン、プレグネノロンおよびジヒドロエピアンドロステロン(DHEA)を含む。
【0027】
本発明において、アンドロゲンは、ゲル製剤で経皮的に投与される。本製剤は、現在の経口法ならびに経皮パッチ法に対しても利点を有し、これは改善された生物学的利用能および低い副作用プロファイルを含む。好ましい態様として、テストステロンまたはテストステロン誘導体などのアンドロゲンとDHEAとの組合せが、FMSまたはCFSの筋症状および神経学的症状の両方を軽減するために投与されうる。
この開示で当業者に明白であるように、他の薬学的に許容できるアンドロゲン療法が使用されうる。本発明でアンドロゲンまたはアンドロゲンの組合せが投与されうる、効果的な量および経路は、アンドロゲン療法の他の使用に従って、当業者により日常的に決定されうる。
【0028】
本発明の組成物は、上記のアンドロゲン/同化剤に加えて、薬学的な有効量の成長ホルモンエリシターまたはエフェクター、成長ホルモンまたは成長ホルモンを有効量で放出させるものとして知られる剤、即ち成長ホルモン放出剤(GRF)による併用処置を含む。GRFは、GHRHとして知られる内因性ホルモンの存在に基づく頭字語である。他の剤は、成長ホルモンの有効量を放出することが示されている、GHrelineまたは成長ホルモン放出ペプチドまたは類似物(GHRP; GHRP-6またはヘキサレリン、His-Dtrp-Ala-Trp-DPhe-Lys、およびGHRP-2またはDala-D-2-NaI-Ala-Trp-Dphe-Lysは例である)を含む。脳下垂体からの成長ホルモン放出の自然のリズムは、脂質形成および筋形成などの過程において、ホルモン調節およびバランスの方向を決定する、原因物質であると一般にみなされている、インシュリン様成長因子(IGF-1)の放出をもたらす。その結果、本発明の目的のためのホルモンエフェクターはまた、成長ホルモン自体の分泌の中間ルートを必ずしも通じてではなく、この二次的な同化促進成長因子(IGF-1)の放出に直接的に作用するペプチドまたはペプチド模倣薬であることが予想される。直接的ではない成長ホルモンルートは、IGF-1を誘導することが好ましいが、IGF-1を直接放出する後者のルートも、例により含まれる。
【0029】
本発明の他の態様において、組成物は、成長ホルモンまたは、より好ましくは成長ホルモン放出剤、またはIGF-1分泌エリシターの薬学的な有効量を含み、アンドロゲン処置と併用され、そして、そのような併用処置は、たとえば、成人において、筋肉脆弱、体脂肪増加および皮膚虚弱などの老化の悪影響を妨げることができる。本質的に、任意の適切な成長ホルモン放出剤は、任意のアンドロゲン、好ましくは強力な同化活性を有するテストステロンなどの1種と組み合わせて用いられ得る。アンドロゲン性剤として考えられていない、または最大限のアンドロゲン活性を有しない他の同化剤は、それらが相当の同化活性を有する限り使用されうる。実際、この発明は、アンドロゲン活性を完全に欠いている可能性のあるこれらの同化剤を想定しており、予想的な例として含む。そのような成長ホルモン放出剤の例は、ソマトリベリン;hGRF(1−29)アミドおよびヘキサレリン(GHRP-6)などの成長ホルモン放出ホルモン活性フラグメントを含む。ヘキサレリンは、成長ホルモン放出ペプチド模倣剤、即ち、体内で成長ホルモン放出ペプチドの効果を模倣し、2〜20個のアミノ酸を含む。特に好ましい態様において、2種以上の成長ホルモン放出剤が組合せて使用されうる。好ましい組合せは、成長ホルモン放出因子(GRFまたはGHRH)および成長ホルモン放出ペプチドまたはペプチド模倣薬(GHRP)を含む。この組合せは、内因性成長ホルモン放出について別のメカニズムにより作用することが報告され、その効果は、いくつかのケースでは、相加的であるか、さらには相乗的であることが示され、GHRH受容体と差別化するために、Ghrelin受容体としばしば呼ばれる別の受容体に作用する。Ghrelin受容体は最近解明されたので、この受容体の他のリガンドが、将来的に合成および/または発見されることが予想され、これらは例により包含される(Baldelli, R. et. al. Endrocrine 14 (1):95-99,2001)。これらは、しばしばGHS(成長ホルモン分泌促進剤(secretagogue))と呼ばれる。
【0030】
GHまたはIGH-1分泌促進剤の投与は、ヒトにおいて血漿アンドロゲン濃度を減じるであろう(Tapanainem J. et. al. Fertility and Sterility 58: 726-732)。この効果は、テストステロンなどの外因性アンドロゲンを、既存のレベルを回復および増幅するための併用処置として投与することの必要性を増加させる。
いくつかある用語の中でも特にGHの視床下部−下垂体−肝臓軸として知られるこの系に影響を与える他の化合物が知られている。このホルモン調節系に関与する他の化合物が、間接的または直接的にGH、IGF-1またはIGF-2のレベルに影響を与えおよび増加させる役割を果たしえ、本発明と関連して、そのような処置による成長/抗老化の最大限の効果を得るために、アンドロゲン補給と共に投与されうることが予想される。線維筋痛症の他に処置されうる他の適応症は、これに限定されるものではないが、下垂体性小人症、または内分泌学、成長および老化の分野の医師によく知られた状態または症候群を含む、個体の成長に影響を与える症候群でありうる。
【0031】
上記に詳細に説明したGH剤の投与に関して、これらは種々の手法によって投与することができる。これらの剤は、鼻腔内、経皮、非経口(皮下または静脈内)、または経口(透過促進剤とともにまたはなしで、ならびにタンパク質およびペプチドは胃液曝露により分解されうるので、好ましくは腸内保護物とともに)の様式を用いて、アンドロゲン投与とは別に投与されうる。GH自身は、限定された溶解性および限定された吸収性を有する大きなタンパク質であるために、実際面では、非経口手法による投与が最も好ましい。しかし、鼻腔内投与はまた、GHおよび他の大きなタンパク質またはペプチドのための許容できる手法である。GH剤の投与様式が選択された後、アンドロゲンは、異なる投与計画の別の処置により投与されうる。アンドロゲン投与の望ましい方法は、好ましくは経口、経皮、経膣または鼻腔内送達であるが、ゲルまたはパッチの形態で経皮的に投与されるのが最も好ましい。文献には、この開示に関連して、溶液、ゲル、エマルションまたはパッチ形態でのこれらの化合物の経皮投与のために適する組成物の例が、十分に備わっている。
【0032】
処置のために選択されたGH剤およびアンドロゲン化合物の別個の送達様式に加えて、単一の併用療法において、2つを組み合わせることができる。たとえば、両者は、任意のタンパク性の剤を胃内分解から適切に保護することに注意して、経口形態、錠剤または懸濁液に一緒に組み込むことができる。あるいは、剤の組合せは、鼻腔内送達における当業者に知られた、別個の送達チャンバーを通じて1つのユニットで、または共に同じ液体、半固体または固体送達形態で、鼻腔内投与することができる。たとえば、微粒子またはナノ粒子の乾燥固体システムは、鼻腔内投与しうる。または、組みあわせた剤は、ともに経皮的に投与しうる。2つの処置は、パッチ内に、最も好ましくは液体または半固体(ゲル)局所送達システムに、ともに組み込まれうる。後者の方法は、GHRP、GHRHまたは必要なGH放出活性を保持したままのGHRHフラグメントなどの分泌促進型のGH剤のために、実際上最も効果的に実現されている。適合性の理由は、その分子サイズに基づく。より小さな分子は、GHおよびIGF-1を含むオリゴペプチドなどの大きな分子より、経皮送達性の可能性がより高いことが、多くの文献で知られている。経皮送達効率はヘキサペプチドで良好であるので、ヘキサレリンなどのGHrelinおよびGHRH分泌促進剤は、小さい分子サイズに基づき、経皮ルートのために最も好ましく選択される。一般に、30アミノ酸以下のペプチドが経皮送達形式に好ましいと考えられている。
【0033】
これらの他のホルモンと組み合わせたアンドロゲン治療の、FMSの症状を緩和する効果を確認するための付加的な臨床研究が行われる。これらの研究では、FMSと診断された閉経周辺期/閉経後女性の筋痛を解決する、組合せ治療の効果が評価される。より具体的には、患者は、血清ホルモンレベルと筋痛の減少の間の逆相関について検討される。この研究は、本出願で上述した研究と同様に設計される。患者は、以下のレジメンの1つをランダムに割り当てられる:1)1日2回のプラセボを2ヶ月間、;2)テストステロンおよび被験ホルモン(たとえば、成長ホルモン)を含む併用テストステロン療法を2ヶ月間;3)テストステロンを2ヶ月間;4)被験ホルモンを2ヶ月間。これらの処置の後に、1ヶ月のウォッシュアウト期間が続き、そして患者らは、もう2ヶ月間、上記処置レジメンの1つを再度ランダムに割り当てられることになる。
【0034】
患者らには、ベースライン、2ヶ月および5ヶ月の時点で、その症状および痛みのレベルを記入し、半定量的な方法で評価するための患者質問票が提供される。質問票に含まれるのは、公表された有効なFMS患者用質問票と共通する、不眠、疲労、頭痛および凝りなどの(Wolfe et. al., Arthritis and Rheumatism, 1990, 33(2): 160-172; Goldenberg at. al., Arthritis and Rheumatism, 1996, 39(11): 1852-9; and Burckhardt et. al., J. Rheumatology, 1991, 18: 728-33)患者評価用のパラメータである。参加する医師はまた、ベースライン、2ヶ月および5ヶ月の時点で、患者がアメリカリウマチ学会によるFMSの基準を満たすことを検証し、FMS患者が有することが知られている18の一般的に認められている圧痛点のそれぞれの筋痛の強度を記録するための、医師用フォームに記入することになる。
【0035】
患者らは、ベースライン、2ヶ月および5ヶ月の時点で、総血清ホルモンレベル、血清エストラジオールレベル、心臓の健康状態および肝機能について検査を受ける。患者らは、1日の共通した時間、好ましくは深夜から絶食後の、アンドロゲンについての所定のピーク時間、また、彼女らがまだ月経を有する場合、月経期間の開始後3日目に検査を受ける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1%の濃度のアンドロゲンと、薬学的に許容できるゲルとを含む、血中アンドロゲンレベルを増加させるための組成物。
【請求項2】
アンドロゲンが、テストステロン、テストステロン誘導体またはテストステロンとテストステロン誘導体との組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
血中の成長ホルモンまたはIGF−1レベルを増加させる化合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
線維筋痛症候群または慢性疲労症候群罹患患者に、症状を緩和する請求項1に記載の組成物の有効量を投与することを含む、線維筋痛症候群および慢性疲労症候群の症状を緩和する方法。
【請求項5】
患者が、閉経周辺期/閉経後の年齢の女性である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アンドロゲンが、テストステロン誘導体を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
アンドロゲンの組合せが患者に投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
アンドロゲンの組合せが、テストステロンまたはテストステロン誘導体と、デヒドロエピアンドロステロンとを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アンドロゲンと成長ホルモンとの組合せが、患者に投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
アンドロゲンと、血中の成長ホルモンレベルを増加させる化合物との組合せが、患者に投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
化合物が、成長ホルモン放出ペプチド、成長ホルモン放出ホルモン、IGF−1およびIGF−2からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
化合物が、成長ホルモンおよびその誘導体、IGF−1およびIGF−2、またはそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項10に記載の方法 。
【請求項13】
化合物が、2〜20アミノ酸長であり、成長ホルモンを放出することが既知の成長ホルモン放出ペプチド模倣化合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
成長ホルモン放出ペプチド模倣薬がヘキサレリンである、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−46483(P2012−46483A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126449(P2011−126449)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【分割の表示】特願2006−517316(P2006−517316)の分割
【原出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(511134551)ホワイト マウンテン ファーマ,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】