説明

線路下構造物の構築方法

【課題】線路下横断工法の工期短縮を図ろうとするものである。
【解決手段】軌道(1)を受ける工事桁(20,21,22)を施工する段階、工事桁下方の地盤中軌道下に側壁部エレメント(31)を挿入し、コンクリートを打設して施工した左右側壁部(33)で工事桁を受け換える段階、工事桁下方の左右側壁部間を掘削し、上床版(35)、下床版(37)を施工する段階を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線路下の地盤中に構造物を構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道線路下の地盤中に構造物を構築する方法として、工事桁による開削工法、鋼製エレメントを地中に挿入して本体構造物とする非開削工法が知られている。
図3は工事桁による開削工法を説明する図で、図3(a)は断面図、図3(b)は平面図である。
この工法は、軌道(レール)1を受ける工事桁2を、軌道に沿って施工した複数の杭10で受けた後、H型鋼等からなる土留杭13を多数施工することで土留壁を形成し、土留壁で囲んだ中の地盤3を掘削し、開削した領域に構造物5を構築するものである。この例では、構造物5内に歩道と車道とが形成されている。なお、図中、11は工事桁2と杭10との間に介在させるゴムシュー等からなる支点である。
【0003】
図4は鋼製エレメントを地中に挿入して本体構造物とする非開削工法を説明する図であり、このような工法については、例えば、下記特許文献に開示されている。
図示は省略するが、発進立坑、到達立坑を掘削してそれぞれ土留工を施工した後、レール1の下方の地盤3の中に鋼製エレメント7を内部の土砂を掘削排土しながら発進立坑側から到達立坑側へ向けて順次挿入する。エレメント同士は継手で連結され、既設のエレメントの継手をガイドとして隣接するエレメントを順次挿入してエレメント内、エレメント間にコンクリートを打設し、エレメントで囲んだ領域を掘削する。こうして、鋼製エレメントを本体構造物とした地下構造物5が形成される。この例では、構造物5内に歩道と車道とが形成されている。なお、図中、9は軌道1を構成しているバラストである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2005−282115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した工事桁による開削工法、鋼製エレメントを地中に挿入して本体構造物とする非開削工法では、施工が夜間の線路閉鎖間合いに制限される工種が多いため、工期が長期化し、結果的に工費がかかってしまうという問題があった。例えば、工事桁による開削工法では、工事桁を受ける杭や土留杭を施工するなど夜間の線路閉鎖時間内に行う作業が多く、また、鋼製エレメントを地中に挿入する工法では、少なくとも上床板エレメントの施工は夜間の線路閉鎖時間内に行わなければならず、いずれの工法でも工期を短縮するのは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、線路下横断構造物の作業時間を要している工種、施工順序等を見直すことにより、安全性、及び施工性を向上させ、線路下横断工法の工期短縮を図ることを目的とする。
本発明の線路下構造物の構築方法は、軌道を受ける工事桁を施工する段階、
工事桁下方の軌道下地盤中に側壁部エレメントを挿入し、コンクリートを打設して施工した左右側壁部で工事桁を受け換える段階、
工事桁下方の左右側壁部間を掘削し、上床版、下床版を施工する段階を有することを特徴とする。
また、本発明は、工事桁が短スパンの工事桁からなり、工事桁を接続して連続化するとともに各短スパンの工事桁を左右側壁部でそれぞれ受けかえることを特徴とする。
また、本発明は、工事桁が長スパンであり、左右側壁部で工事桁を受けるとともに、左右側壁部間に工事桁杭を施工して工事桁を受けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、側壁部エレメントを挿入してコンクリートを打設し、施工した左右側壁部で工事桁を受け換えた後、工事桁の下方、左右側壁部内を掘削して上床版、下床版を施工することで、支持杭の施工、土留杭の施工をせず、営業時間内の工種を増やすことができ、工期の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】鋼製エレメントを用いる本実施形態の施工方法を説明する図である。
【図2】本実施形態の他の例を説明する図である。
【図3】工事桁による開削工法を説明する図である。
【図4】非開削工法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は鋼製エレメントを用いる本実施形態の施工方法を説明する図である。
図示は省略するが、現場の状況によっては、発進立坑、到達立坑を掘削してそれぞれ土留工を施工する。図1(a)に示すように、地下構造物の施工場所30の地盤上に直接、或いは簡易な支持材(図示せず)を設けて短スパンの工事桁21、22を施工し、軌道1を防護する。23は短スパン工事桁21、22の対向箇所を示している。次いで、発進立坑側から到達立坑側へ向けて軌道下地盤中に左右の側壁部を構成するための鋼製エレメント31、31を挿入し(図1(b))、コンクリートを充填して鋼製エレメントからなる側壁部33を構築する(図1(c))。このとき、短スパンの工事桁21、22は鋼製エレメントからなる左右側壁上部の路盤上に設置されていて、工事桁と左右側壁部との間にゴムシュー等からなり、高さ調整のためにコンクリートを打設したり、鋼材を挟んだりした支承部34を挿入して、左右側壁部33により工事桁を受け換える。工事桁21、22は左右側壁部により支持されるため、それらの対向箇所23において添接板等で接続して連続化し、工事桁20とする。次いで、工事桁下方を1次掘削して上床版コンクリート35を施工し(図1(d))、さらに、2次掘削して下床版コンクリート37を施工する(図1(e))。上床版、下床版を施工した後、工事桁を撤去して地下構造物が構築される(図1(f))が、工事桁は本設工事桁として残置してもよい。なお、上記においては、1次掘削して上床版を施工した後、2次掘削して下床版の施工を行うようにしたが、下床版位置まで一度に掘削して下床版、上床版を施工するようにしてもよい。また、工事桁は短スパンのものを2つ使用したが、左右側壁の間隔が大きい場合には3つ以上使用してもよく、また、状況によっては単一の連続スパンのものを使用するようにしてもよい。
【0010】
本実施形態では、工事桁の設置は線路閉鎖時に行う必要があるが、側壁部の施工は営業運転中でも可能であり、先ず、側壁部を施工して工事桁を支持するとともに、側壁部を土留壁として内部を掘削して上床版、下床版を施工できるため、工事桁杭、土留杭などの施工が必要なくなり、ほとんどの工事を営業運転中に行うことが可能となって工期の短縮を図ることができる。
【0011】
図2は本実施形態の他の例を説明する図で、地下構造物のスパンが長く、地盤が良い(支持層が浅い)場合に適用する工法を説明する図である。
図示は省略するが、現場の状況によっては、発進立坑、到達立坑を掘削してそれぞれ土留工を施工するのは同じである。図2(a)に示すように、スパンの長い地下構造物の施工場所30の地盤上に直接、或いは簡易な支持材(図示せず)を設けて長い工事桁20を施工し、軌道1を防護する。次いで、発進立坑側から到達立坑側へ向けて左右の側壁部を構成するための鋼製エレメントを軌道下の地盤中に挿入してコンクリートを充填し、左右側壁部40を施工する。次いで、工事桁と左右側壁部40との間にゴムシュー等からなり、高さ調整のためにコンクリートを打設したり、鋼材を挟んだりした支承部41を挿入して、側壁部を支承として工事桁を受け換えるとともに、左右側壁部の中間位置に、工事桁を受ける杭43を施工する(図2(b))。次いで、工事桁下方を1次掘削し、上床版コンクリート45を施工し(図1(c))、さらに、2次掘削して下床版コンクリート47を施工する(図1(d))。上床版、下床版を施工した後、工事桁、支持杭を撤去して地下構造物が構築される(図2(e))が、工事桁は本設工事桁として残置してもよい。また、上記においては、1次掘削して上床版を施工した後、2次掘削して下床版の施工を行うようにしたが、下床版位置まで一度に掘削して下床版コンクリート、上床版コンクリートを施工するようにしてもよい。
【0012】
本実施形態においても、側壁部の施工は営業運転中でも可能であり、先ず、側壁部を施工して工事桁を支持するとともに、側壁部間に工事桁杭を施工し、側壁部を土留壁として内部を掘削して上床版、下床版を施工できるため、土留杭などの施工が必要なくなり、ほとんどの工事を営業運転中に行うことが可能となって工期の短縮を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、支持杭の施工、土留杭の施工をせず、営業時間内の工種を増やすことができるので、工期を短縮し、安全性、施工性を向上させた線路下横断工法に利用することができる。
【符号の説明】
【0014】
1…軌道、3…地盤、20,21,22…工事桁、33,40…側壁部、35,45…上床版、37,47…下床版。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道を受ける工事桁を施工する段階、
工事桁下方の軌道下地盤中に側壁部エレメントを挿入し、コンクリートを打設して施工した左右側壁部で工事桁を受け換える段階、
工事桁下方の左右側壁部間を掘削し、上床版、下床版を施工する段階、
を有する線路下構造物の構築方法。
【請求項2】
前記工事桁が短スパンの工事桁からなり、工事桁を接続して連続化するとともに各短スパンの工事桁を左右側壁部でそれぞれ受けかえることを特徴とする。
【請求項3】
前記工事桁が長スパンであり、左右側壁部で工事桁を受けるとともに、左右側壁部間に工事桁杭を施工して工事桁を受けることを特徴とする請求項1記載の線路下構造物の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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