説明

線輪部品およびその製造方法

【課題】交流電流の分布中心の径を大きくし、巻き線のインダクタンスの増加、およびそれにより可能となる線輪部品の小型化を実現する線輪部品およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】巻軸2の周囲に素線を巻回して成る巻き線1を備え、巻軸2の軸線方向に直交する径方向における、巻軸2から素線内の交流電流が集中する部位までの平均距離が、巻き線1の平均半径よりも大きい線輪部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器や自動車等に用いられるチョークコイルやモータ等の線輪部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平角導線で内径または外径の異なる複数個のエッジワイズ巻電磁コイルを積層状に組み込み引出しリード線を接続したエッジワイズ巻電磁コイルが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−188988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載のエッジワイズ巻電磁コイルでは、複数個のエッジワイズ巻電磁コイルを積層状に組み込むことにより、所定の占積率の範囲内で巻数を増加させ、インダクタンスを増加させているが、この手法を用いた巻数の増加には物理的な限界があり、インダクタンスの増加に限界があるという問題があった。
【0005】
また、巻き線の巻き径を大きくすることによりインダクタンスを増加させることも可能であるが、この場合、巻き線が大型化してしまうという問題があった。
【0006】
また、一般に、巻き線のインダクタンスを高めるための設計要素として、巻き数や巻き高さ等の条件が同じ場合には巻き線の巻き径を大きくすることがよく知られているが、本質的には、巻き線内における交流電流の分布中心の径が大きいことと等価であり、特許文献1では、このような巻き線内における交流電流の分布に関して考慮されていない。
【0007】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、巻き線内における交流電流の分布中心の径を大きくし、巻き線のインダクタンスの増加、およびそれにより可能となる線輪部品の小型化を実現する線輪部品およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の線輪部品は、巻軸の周囲に素線を巻回して成る巻き線を備え、前記巻軸の軸線方向に直交する径方向における、前記巻軸から前記素線内の交流電流が集中する部位までの平均距離が、前記巻き線の平均半径よりも大きいことにより、前述した課題を解決したものである。
【0009】
前記素線の断面のアスペクト比は、2以上であり、前記径方向における前記巻軸から前記素線の断面の短辺部までの平均距離が、前記巻き線の平均半径よりも大きくてもよい。
【0010】
電気的に並列に接続された複数の素線を隣接状態で一列に並べて成るユニットを並列ユニットとした場合、前記並列ユニットの断面のアスペクト比は、2以上であり、前記径方向における前記巻軸から前記並列ユニットの断面の短辺部までの平均距離が、前記巻き線の平均半径よりも大きくてもよい。
【0011】
素線の断面のアスペクト比は、2以上であり、短辺部同士を隣接させた状態で、電気的に直列に接続された2つの素線を配置して成るユニットを直列ユニットとした場合、前記径方向における前記巻軸から前記直列ユニットの短辺部までの平均距離が、前記巻き線の平均半径よりも大きくてもよい。
【0012】
電気的に並列に接続された複数の素線を隣接状態で一列に並べて成るユニットを並列ユニットとした場合、前記並列ユニットの断面のアスペクト比は、2以上であり、短辺部同士を隣接させた状態で、電気的に直列に接続された2つの並列ユニットを配置して成るユニットを直列ユニットとした場合、前記径方向における前記巻軸から前記直列ユニットの短辺部までの平均距離が、前記巻き線の平均半径よりも大きくてもよい。
【0013】
巻軸の周囲に第1素線および第2素線を巻回して成る巻き線を備え、前記第1素線の断面のアスペクト比は、2以上であり、電気的に並列に接続された複数の第2素線を隣接状態で一列に並べて成るユニットを並列ユニットとした場合、前記並列ユニットの断面のアスペクト比は、2以上であり、短辺部同士を隣接させた状態で、電気的に直列に接続された1つの第1素線と1つの並列ユニットとを配置して成るユニットを直列ユニットとした場合、前記径方向における前記巻軸から前記直列ユニットの短辺部までの平均距離が、前記巻き線の平均半径よりも大きくてもよい。
【0014】
前記素線の断面の全ての短辺部、または、前記並列ユニットの断面の全ての短辺部、または、前記直列ユニットの断面の全ての短辺部は、前記径方向における前記巻軸からの距離が前記巻き線の平均半径よりも遠い位置に配置されていてもよい。
【0015】
本発明の線輪部品の製造方法は、前記巻軸の周囲に前記素線を巻回して前記巻き線を形成した後、前記径方向における前記巻軸から前記素線内の交流電流が集中する部位までの平均距離が前記巻き線の平均半径よりも大きくなるように、前記巻き線の形状を調整することにより、前述した課題を解決したものである。
【0016】
本発明の線輪部品の他の製造方法は、前記素線形状が所定形状になるように前記素線に加工を施した後、または、前記素線の形状が所定形状になるように前記素線に加工を施しながら、前記径方向における前記巻軸から前記素線内の交流電流が集中する部位までの平均距離が前記巻き線の平均半径よりも大きくなるように、前記巻軸の周囲に前記素線を巻回して前記巻き線を形成することにより、前述した課題を解決したものである。
【0017】
本発明の線輪部品の他の製造方法は、前記径方向における前記巻軸から前記素線内の交流電流が集中する部位までの平均距離が前記巻き線の平均半径よりも大きくなるように、前記巻軸の周囲に前記素線を巻回して前記巻き線を形成することにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、巻き線における交流電流の分布中心の径を大きくすることが可能であるため、線輪部品のインダクタンスを高めることが可能となり、それに伴い、より小型の線輪部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】直列に接続された2本の素線を近接状態で配置した場合の交流電流の分布を示す説明図である。
【図2】直列に接続された3本以上の素線を近接状態で配置した場合の交流電流の分布を示す説明図である。
【図3】並列に接続された複数の素線を近接状態で配置した場合の交流電流の分布、および、平角線における交流電流の分布を示す説明図である。
【図4】素線のアスペクト比と素線の断面の短辺部への電流の集中度合いとの関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第1実施例における巻き線を断面視して示す説明図である。
【図6】本発明の第2実施例における巻き線を断面視して示す説明図である。
【図7】本発明の第3実施例における巻き線を断面視して示す説明図である。
【図8】本発明の第4実施例における巻き線を断面視して示す説明図である。
【図9】本発明の第5実施例における巻き線を断面視して示す説明図である。
【図10】線輪部品の巻き線の製造方法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明に係る構成、作用に関して説明する。
【0021】
まず、本発明の特徴は、巻き線内における交流電流の分布を強く形成する近接効果に着目して、巻き線内における交流電流の分布中心の径(巻軸に直交する径方向における巻軸からの距離)を大きくすることにより、巻き線のインダクタンスを増加させること、およびそれにより可能となる線輪部品の小型化を実現することである。
【0022】
一般に、巻き線のインダクタンスを高めるための設計要素として、巻き数や巻き高さ等の条件が同じ場合には巻き線の巻き径を大きくすることがよく知られているが、本質的には、巻き線内における交流電流の分布中心の径が大きいことと等価である。また、巻き線の巻き方や形状等に工夫を施すことで巻き線の占積率を向上することも可能であるが、このような巻き線の占積率の向上にも当然に物理的な限界があり、また、単に巻き線の巻き径を大きくすると巻き線が大型化してしまうという問題が生じる。
【0023】
そこで、本出願人は、巻き線内における交流電流の分布に強い影響を与える近接効果の作用・性質を解析して見出し、近接効果を活用することにより、巻き線内における交流電流の分布中心の径を大きくし、巻き線のインダクタンスを増加させること、およびそれにより可能となる線輪部品の小型化を実現した。
【0024】
ここで、本出願人が見出した近接効果の作用・性質に関して以下に説明する。
【0025】
まず、近接効果の性質の一つとして、交流電流は素線の内部より表面に集中することが挙げられる。そして、この素線の表面への交流電流の集中は、素線自体の径が小さい場合には生じない。具体的には、10kHzの交流電流の例では、素線が丸線(または角線)である場合、素線の直径が1mmであると表面への交流電流の集中が生じず、素線の直径が2mmを超えたあたりから交流電流が内部より表面へ集中する傾向が顕著になる。
【0026】
また、断面に一定以上のアスペクト比を有する平角線の場合、近接効果により平角線の断面の短辺部側に交流電流が集中する。
なお、本明細書内では、平角線とは、その断面のアスペクト比が2以上のものを意味し、また、角線とは、その断面のアスペクト比が2未満のものを意味する。
【0027】
また、図1に示すように、直列に接続された2本の丸線(または角線)が近接状態で配置され2本の素線内を同一方向に向けて電流が流れる場合、素線の断面内で互いに遠ざかる方向に交流電流が集中し、線間に向う方向には交流電流が集中しない。
【0028】
また、図2に示すように、直列に接続された3本以上の丸線(または角線)が近接状態で配置され3本以上の素線内を同一方向に向けて電流が流れる場合、素線の断面内で互いに遠ざかる方向に交流電流が集中するとともに、線間に向う方向にも交流電流が集中する。
【0029】
また、図3に示すように、電気的に並列に接続された3本以上の丸線(または角線)を隣接状態で一列に並べた場合には、交流電流の分布に関して、これら3本以上の素線を1つの並列ユニットとしてみなすことができ、この並列ユニットは、交流電流の分布に関して前述した平角線と同様の挙動を示すことが判明した。すなわち、当該並列ユニットの断面の短辺部側に交流電流の集中が生じ、線間に向う方向には交流電流が生じない。
【0030】
また、前述した平角線および並列ユニットの断面のアスペクト比に関しては、アスペクト比が2以上、好ましくは4以上の場合に、近接効果により短辺部側に交流電流が集中する現象が顕著になることが判明した。
このことを、素線のアスペクト比と、素線断面の中央部と短辺部(端部)との交流電流密度の比である交流電流の集中度合いとの関係を示した図4のグラフを用いて具体的に説明すると、まず、板厚を2mmに設定したT2のグラフではアスペクト比2の箇所に変曲点があることから、アスペクト比が2以上である場合に短辺部側への交流電流の集中が顕著になることが分かり、また、板厚を1mmに設定したT1のグラフではアスペクト比4の箇所に変曲点があることから、アスペクト比が4以上である場合に短辺部側への交流電流の集中がさらに顕著になることが分かる。
さらに、アスペクト比が好ましくは10以上、さらに好ましくは100以上であれば、特に平角線の断面の短辺部側が巻き窓の外周側になるよう平角線を曲げる加工が容易になる。
【0031】
また、近接効果を生じる条件として、巻き線を構成する導体(素線)の抵抗率も挙げられる。具体的には、導体の抵抗率が10−5Ω/cmの場合には、導体の抵抗が高いため、導体内部での渦電流が流れにくく、近接効果はほとんど生じない。他方、導体の抵抗率が10−8Ω/cmの場合には、導体の抵抗率が低いため渦電流による近接効果が生じる。
【0032】
つぎに、一般的な巻き構造を有した巻き線における交流電流の分布について説明する。
【0033】
まず、エッジワイズ巻きの巻き線(平角線の短辺部を内周面としてソレノイド状に巻回して成る巻き線)では、前述したように平角線の断面の短辺部側に交流電流が集中するため、巻き窓の内周側と外周側の2辺に近接効果により交流電流が集中し、また、フラットワイズ巻きの巻き線(平角線の長辺を内周面としてスパイラル状に巻回して成る巻き線)では、前述したように平角線の断面の短辺部側に交流電流が集中するため、近接効果により巻き窓の上下の2辺に交流電流が集中することとなる。
なお、本発明で用いられる用語「巻き窓」とは、巻軸を含む平面で巻き線を切った場合には巻軸を挟んで左右対称に断面形状が2つ並ぶが、この2つの断面形状のうち一方のことを意味している。
【0034】
その結果、エッジワイズ巻きの巻き線およびフラットワイズ巻きの巻き線の両方に共通して、交流電流の中心が、巻軸に直交する径方向における巻き窓の中央に近いものとなってしまうため、巻軸を基準とした巻き窓の外周側に交流電流の中心が配置された場合と比較して、巻き線内における交流電流の分布中心の径が小さく、インダクタンスの値が小さくなる。
【0035】
また、丸線(または角線)を直列に整列巻きして成る巻き線においても、交流電流の中心が、巻軸に直交する径方向における巻き窓の中央に近いものとなってしまうため、巻軸を基準とした巻き窓の外周側に交流電流の中心が配置された場合と比較して、巻き線内における交流電流の分布中心の径が小さく、インダクタンスの値が小さくなる。
【0036】
そして、本発明では、上述したような一般的な巻き構造を有した巻き線における問題点を解消し、巻き線のインダクタンスを向上するために、具体的には、以下の構成を採用している。
【0037】
すなわち、本発明では、近接効果を利用して、平角線または並列ユニットの断面の短辺部側に交流電流を集中させるとともに巻き線の巻き窓形状を調整することにより、径方向における巻軸から平角線または並列ユニットの断面の短辺部までの平均距離が巻き線の平均半径よりも大きくなるように巻き線を構成し、更に好ましくは、平角線または並列ユニットの断面の全ての短辺部を、径方向における巻軸からの距離が巻き線の平均半径よりも遠い位置に配置している。
これにより、交流電流の分布中心の径を巻き窓の機械的な平均径より大きくして、巻き線のインダクタンスを増加させることができ、およびそれにより可能となる巻き線の小型化を実現でき、さらに、巻き線を小型化させた場合には、直流抵抗や交流抵抗の低下による低損失化や低下コストを実現できる。
【0038】
以下に、本発明の線輪部品の具体的な複数の実施例を説明する。
【実施例】
【0039】
全ての実施例に共通して、線輪部品は、軟磁性体磁芯(図示しない)と、素線から構成された巻き線1とから構成されている。また、符号5で示す部分は、近接効果により交流電流が集中する部分を示している。
【0040】
まず、図5に示すように、第1実施例である線輪部品では、断面に2以上のアスペクト比を有する平角線により巻き線1が構成され、平角線の断面をU字形状に湾曲させることにより、近接効果により交流電流が集中する平角線の断面の短辺部側が、巻き窓の外周側(すなわち、巻軸2からの距離が巻き線1の平均半径よりも遠い位置)にそれぞれ配置されている。これにより、巻き線内における交流電流の分布中心の径が大きくなるため、巻き線1のインダクタンスを増加させることができる。
【0041】
つぎに、図6に示すように、第2実施例である線輪部品では、巻き線1が平角線により構成され、平角線の断面をコ字状に屈曲させることにより、近接効果により交流電流が集中する平角線の断面の短辺部側を、巻き窓の外周側に配置している。第2実施例における効果は、第1実施例の場合と同様である。
【0042】
つぎに、図7に示すように、第3実施例である線輪部品では、巻き線1が丸線により構成され、電気的に並列に接続された複数の丸線を隣接状態で一列に並べて成るユニットを1つの並列ユニット3とみなした場合に、当該並列ユニット3の断面をコ字状に湾曲させることにより、近接効果により交流電流が集中する並列ユニット3の断面の短辺部側を、巻き窓の外周側に配置している。第4実施例における効果は、第1実施例の場合と同様である。なお、第4実施例において、丸線を角線に置き換えてもよく、また、並列ユニット3の断面をU字状に湾曲させてもよい。
【0043】
つぎに、図8に示す第4実施例では、巻軸2の軸線方向における巻き線1の中央で巻軸2に直交する平面で巻き線1を2分割し、平角線により構成された上側巻き線部1aおよび下側巻き線部1bを直列に接続している。
図8に示すように、上側巻き線部1aを構成する平角線の断面の短辺部と下側巻き線部1bを構成する平角線の断面の短辺部とを隣接させた状態で、上側巻き線部1aと下側巻き線部1bとが配置されている。
この場合、短辺部同士を隣接した状態で配置される上側巻き線部1aを構成する平角線と下側巻き線部1bを構成する平角線とから構成される直列ユニット4の断面の短辺部に交流電流が集中する。
そして、交流電流が集中する直列ユニット4の断面の短辺部は、図8に示すように、巻き窓の外周側に配置され、第1実施例の場合と同様の効果を奏する。
【0044】
つぎに、図9に示す第5実施例では、巻軸2の軸線方向における巻き線1の中央で巻軸2に直交する平面で巻き線1を2分割し、平角線により構成された上側巻き線部1aおよび丸線により構成された下側巻き線部1bを直列に接続している。
図9に示すように、上側巻き線部1aを構成する平角線の断面の短辺部と下側巻き線部1bの並列ユニット3の断面の短辺部とを隣接させた状態で、上側巻き線部1aと下側巻き線部1bとが配置されている。
この場合、短辺部同士を隣接した状態で配置される上側巻き線部1aを構成する平角線と下側巻き線部1bの並列ユニット3とから構成される直列ユニット4の断面の短辺部に交流電流が集中する。
そして、交流電流が集中する直列ユニット4の断面の短辺部は、図9に示すように、巻き窓の外周側に配置され、第1実施例の場合と同様の効果を奏する。
なお、下側巻き線部1bを角線から構成してもよい。
【0045】
なお、図8に示す第4実施例では、上側巻き線部1aおよび下側巻き線部1bが平角線から構成され、図9に示す第5実施例では、上側巻き線部1aが平角線から構成され、下側巻き線部1bが丸線(または、角線)から構成されている。しかしながら、上側巻き線部1aおよび下側巻き線部1bを丸線(角線)から構成してもよく、この場合、上側巻き線部1aの並列ユニット3の断面の短辺部と下側巻き線部1bの並列ユニット3の断面の短辺部とを隣接させた状態で、上側巻き線部1aと下側巻き線部1bとを配置し、交流電流が集中する直列ユニット4の断面の短辺部を巻き窓の外周側に配置すればよい。
【0046】
つぎに、本発明の線輪部品の製造方法について、図10に基づいて説明する。
図10に示す製造方法では、平角線を巻回することにより巻き線1を構成した後、外周側からプレス加工を施すことにより、巻き線1の形状を所定形状に調整し、近接効果により交流電流が集中する平角線の断面の短辺部側を外周側に配置させている。
しかしながら、素線形状が所定形状になるように、素線に予め加工(例えば、平角線の断面形状をU字状に湾曲させる加工)を施した後、または、素線に加工を施しながら、素線を巻回して巻き線1を構成することで、平角線の断面の短辺部側を外周側に配置させてもよい。
また、図10に示す製造方法では、平角線のみから構成される巻き線1を製造の対象としたが、丸線(または角線)を構成要素として含む巻き線1を製造する場合には、巻き線1が最終的な形状になるように丸線(または角線)を巻回して巻き線1を構成してもよく、または、丸線(または角線)を巻回して巻き線1を形成した後に、巻き線1にプレス加工を施すことで巻き線1の形状を所定形状に調整してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 ・・・ 巻き線
2 ・・・ 巻軸
3 ・・・ 並列ユニット
4 ・・・ 直列ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻軸の周囲に素線を巻回して成る巻き線を備え、
前記巻軸の軸線方向に直交する径方向における、前記巻軸から前記素線内の交流電流が集中する部位までの平均距離が、前記巻き線の平均半径よりも大きいことを特徴とする線輪部品。
【請求項2】
前記素線の断面のアスペクト比は、2以上であり、
前記径方向における前記巻軸から前記素線の断面の短辺部までの平均距離が、前記巻き線の平均半径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の線輪部品。
【請求項3】
電気的に並列に接続された複数の素線を隣接状態で一列に並べて成るユニットを並列ユニットとした場合、
前記並列ユニットの断面のアスペクト比は、2以上であり、
前記径方向における前記巻軸から前記並列ユニットの断面の短辺部までの平均距離が、前記巻き線の平均半径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の線輪部品。
【請求項4】
素線の断面のアスペクト比は、2以上であり、
短辺部同士を隣接させた状態で、電気的に直列に接続された2つの素線を配置して成るユニットを直列ユニットとした場合、
前記径方向における前記巻軸から前記直列ユニットの短辺部までの平均距離が、前記巻き線の平均半径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の線輪部品。
【請求項5】
電気的に並列に接続された複数の素線を隣接状態で一列に並べて成るユニットを並列ユニットとした場合、
前記並列ユニットの断面のアスペクト比は、2以上であり、
短辺部同士を隣接させた状態で、電気的に直列に接続された2つの並列ユニットを配置して成るユニットを直列ユニットとした場合、
前記径方向における前記巻軸から前記直列ユニットの短辺部までの平均距離が、前記巻き線の平均半径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の線輪部品。
【請求項6】
巻軸の周囲に第1素線および第2素線を巻回して成る巻き線を備え、
前記第1素線の断面のアスペクト比は、2以上であり、
電気的に並列に接続された複数の第2素線を隣接状態で一列に並べて成るユニットを並列ユニットとした場合、
前記並列ユニットの断面のアスペクト比は、2以上であり、
短辺部同士を隣接させた状態で、電気的に直列に接続された1つの第1素線と1つの並列ユニットとを配置して成るユニットを直列ユニットとした場合、
前記径方向における前記巻軸から前記直列ユニットの短辺部までの平均距離が、前記巻き線の平均半径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の線輪部品。
【請求項7】
前記素線の断面の全ての短辺部、または、前記並列ユニットの断面の全ての短辺部、または、前記直列ユニットの断面の全ての短辺部は、前記径方向における前記巻軸からの距離が前記巻き線の平均半径よりも遠い位置に配置されていることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の線輪部品。
【請求項8】
軟磁性体磁芯を更に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の線輪部品。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の線輪部品の製造方法において、
前記巻軸の周囲に前記素線を巻回して前記巻き線を形成した後、
前記径方向における前記巻軸から前記素線内の交流電流が集中する部位までの平均距離が前記巻き線の平均半径よりも大きくなるように、前記巻き線の形状を調整することを特徴とする線輪部品の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の線輪部品の製造方法において、
前記素線形状が所定形状になるように前記素線に加工を施した後、または、前記素線の形状が所定形状になるように前記素線に加工を施しながら、
前記径方向における前記巻軸から前記素線内の交流電流が集中する部位までの平均距離が前記巻き線の平均半径よりも大きくなるように、前記巻軸の周囲に前記素線を巻回して前記巻き線を形成することを特徴とする線輪部品の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の線輪部品の製造方法において、
前記径方向における前記巻軸から前記素線内の交流電流が集中する部位までの平均距離が前記巻き線の平均半径よりも大きくなるように、前記巻軸の周囲に前記素線を巻回して前記巻き線を形成することを特徴とする線輪部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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