説明

線量率監視方法及び線量率監視装置

【課題】放射性物質取り扱い施設の運転時において放射性核種を含む液体が流れる放射線検出対象物の線量率を精度良く測定することができる線量率監視方法を提供する。
【解決手段】原子力プラントの炉水が流れる配管12付近に放射線検出器1A,1Bを配置する。原子力プラントの運転時に、配管12内面に付着した測定対象核種(Co−60)9から放射されたγ線(カスケードγ線)17及び配管12内の炉水中の短半減期核種(N−16)10から放射されたバックグラウンドγ線18が、検出器1A,1Bで検出される。エネルギー弁別装置4A,4Bが検出器1A,1Bからのγ線検出信号のうち0.4〜2.0MeVのγ線検出信号を出力する。同時計数処理装置5はエネルギー弁別装置4A,4Bからのγ線検出信号を基に同時計数を行って同時計数信号を発生し、放射能演算装置6は同時計数信号に基づいて配管線量率を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線量率監視方法及び線量率監視装置に係り、特に、沸騰水型原子力プラントに適用するのに好適な線量率監視方法及び線量率監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、原子力プラントでは、原子炉格納容器内の配管の放射線監視、すなわち、配管内壁に付着する測定対象核種の同定、定量及び配管線量率の監視を、汎用の放射線検出器を用いて定期検査時にのみ実施している。
【0003】
γ線の検出精度を向上させる放射線計測方法が、特許4241633号公報及び特許第3595375号公報に記載されている。
【0004】
放射性物質取扱施設に設置される原子炉建屋等のコンクリート建造物では、コンクリート建造物に含まれるコンクリートが、天然放射能と共に、放射性物質取扱施設の運転時において発生する人工放射性核種(例えば、Co−60等)により汚染され、この人工放射性核種も含んでいる。このような測定対象物であるコンクリートに含まれる人工放射性核種に起因した人工放射能を測定する方法が、特許4241633号公報に記載されている。この人工放射能測定方法では、2つの平板型NaIシンチレータを用い、それぞれの平板型NaIシンチレータと測定対象物の間にアルミ製カット板及び平板型プラスティックシンチレータを配置した上で、各平板型プラスティックシンチレータでコンクリートの天然放射能を計測し、各平板型NaIシンチレータでコンクリートの人工放射能を計測する。さらに、コンクリートに含まれる人口放射性核種、例えば、Co−60から放射されるエネルギーの異なるカスケードγ線を個々に検出した2つの平板型NaIシンチレータがそれぞれ出力した検出信号に基づいて、同時計数を行っている。その人工放射能測定方法は、平板型NaIシンチレータで計測した人工放射能の計数率、平板型プラスティックシンチレータで計測した天然放射能の計数率、及び同時計数で得られた同時計数率を用いて、バックグラウンドである天然放射能の影響を抑制し、人工放射能量を精度良く同定している。
【0005】
特許第3595375号公報は、シンチレータ部及び光電子増倍管を有する2つの第1シンチレーション検出器、及びシンチレータ部及び光電子増倍管を有する2つの第2シンチレーション検出器を有するポジトロン検出装置を記載している。第2シンチレーション検出器のシンチレータ部は、第1シンチレーション検出器のシンチレータ部に形成された孔部内に挿入され、後者のシンチレータ部よりも小容積である。ポジトロン核種の崩壊時に放射される511keVの消滅γ線を、シンチレータ部の容積が異なる第1及び第2シンチレーション検出器の各シンチレータ部で検出することによって、検出可能な放射能のレベルを拡大することができる。正反対方向に放射される2つの消滅γ線を2つの第1シンチレーション検出器、及び2つの第2シンチレーション検出器で検出して、各第1シンチレーション検出器の出力信号を同時計数し、各第2シンチレーション検出器の出力信号を同時計数しているので、バックグラウンドγ線の影響を排除して、ポジトロン核種の崩壊により生じる消滅γ線の検出精度を高めることができる。
【0006】
原子力プラントの運転時に原子炉一次系配管の放射能を計測する例が、特開平8−304584号公報に記載されている。特開平8−304584号公報は原子炉一次系の炉水放射能濃度低減方法を記載している。この炉水放射能濃度低減方法では、原子炉一次系配管の側面に設置したオンライン式ゲルマニウム核種検出器によってその配管の内面に付着した放射能量を測定し、この測定結果に基づいて炉水及び給水の水質を制御している。この制御は、配管内面への放射能の付着抑制、及び定期検査時における作業員の被ばく低減をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4241633号公報
【特許文献2】特許3595375号公報
【特許文献3】特開平8−304584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者らは、原子力プラントの運転時において、原子炉に接続されて原子炉内の冷却水(以下、炉水という)が流れる配管の内面に付着した放射性核種から放射される放射線、特に、γ線を検出することを検討した。
【0009】
この結果、原子力プラント運転時においては、その配管内を流れる炉水に短半減期核種、例えば、N−16、N−13、F−18及びO−19等が含まれており、これらの短半減期核種から放射されるγ線が、バックグラウンドγ線となり、炉水が流れる配管の内面に付着した測定対象核種、例えば、Co−60及びCo−58等から放射されたγ線の計測に障害になることが明らかになった。具体的には、炉水が流れる配管が存在する原子炉格納容器内の線量率は、原子力プラント運転時にのみ存在する上記の各短半減期核種によって数mSv/hから数100mSv/hになり、原子力プラントの定期検査時においてもその配管の内面に付着している上記の各測定対象核種による数μSv/hから数mSv/h程度の線量率と比較して非常に高い値を示す。このため、定期検査時に実施される線量率監視方法を放射性物質取り扱い施設である原子力プラントの運転時における線量率監視に適用した場合には、原子力プラントの運転時において、配管内面に付着した測定対象核種による配管線量率と短半減期核種によるバックグラウンド線量率の弁別が困難であるため、配管内面に付着した測定対象核種による配管線量率を測定することができない。
【0010】
原子力プラント運転時に炉水が流れる配管の線量率を監視することが実現できれば、原子力プラントの定期検査の作業における遮蔽計画及び人員計画を定期検査前により適切に行うことができる。このため、定期検査の作業における作業員の被ばくの低減、及び定期検査の合理化及び効率化が実現できる。
【0011】
特許4241633号公報の人工放射能測定方法では、バックグラウンド核種のβ線を計数することによって測定対象核種及びバッググラウンド核種のそれぞれのγ線の計数を弁別している。原子力プラント運転中の原子炉格納容器内のバックグラウンド放射線を放射する放射性核種のほとんどは配管内を流れる炉水に含まれている。このため、特許4241633号公報の人工放射能測定方法を配管の放射線測定に適用した場合には、炉水及び炉水が流れる配管を透過してきたβ線を平板型プラスティックシンチレータで計測する必要がある。しかしながら、炉水に含まれる放射性核種から放射されたβ線はその配管で遮へいされてしまい、配管の外側に配置した平板型プラスティックシンチレータでβ線を計測することができない。
【0012】
特許第3595375号公報において想定しているバックグラウンド成分は、ターゲット物質に含まれる不純物と加速した荷電粒子との相互作用で生じるものである。現実的な不純物の割合から考えると、バックグラウンド成分による放射能が測定対象であるポジトロン核種の放射能より大きくなることはない。しかしながら、原子力プラントの運転時における原子炉格納容器内のバックグラウンド線量率は、炉水が流れる配管内面に付着する放射性核種による線量率と比較して数10倍以上になる。また、炉心が流れる配管を対象に計測されたγ線のエネルギースペクトルを考えたとき、短半減期核種によるコンプトン分布から測定対象核種による光電ピークを弁別することが困難である。特許第3595375号公報に記載されたポジトロン検出装置を炉水が流れる配管の放射線計測に適用した場合には、偶発同時計数による精度劣化は避けられない。
【0013】
特開平8−304584号公報に記載された原子炉一次系の炉水放射能濃度低減方法では、オンライン式ゲルマニウム核種検出器によって炉水が流れる原子炉一次系配管の内面に付着した放射能量を測定している。しかしながら、原子力プラント運転時における原子炉格納容器内のバックグラウンド線量率が、前述したように、数mSv/h〜数100mSv/hであるため、この高線量率環境下でのオンライン式ゲルマニウム核種検出器の正常な動作は困難である。コリメータ及び遮蔽体を組合せて用いることでオンライン式ゲルマニウム核種検出器の正常な動作を確保することができ、その配管内面に付着した測定対象核種による線量率とバックグラウンド線量率の比を改善できる可能性はある。しかしながら、実際には短半減期核種によるコンプトン分布から測定対象核種による光電ピークを弁別することは困難である。さらに、オンライン式ゲルマニウム検出器は、冷凍機を設ける必要があり、他の放射線検出器に比べて検出器サイズが大型になる。このため、遮蔽体も大型になり、オンライン式ゲルマニウム検出器を実際に原子炉格納容器内に設置する際の大きな制約となる。
【0014】
発明者らは、以上の検討により、原子力プラントの運転時においてバックグラウンド線量率が非常に高くなる原子炉格納容器内において、炉水が流れる配管の内面に付着した測定対象核種の線量率を精度良く測定することの必要性を切に感じた。
【0015】
本発明の目的は、放射性物質取り扱い施設の運転時において放射性核種を含む液体が流れる放射線検出対象物の線量率を精度良く測定することができる線量率監視方法及び線量率監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、内部に放射性核種を含む液体が流れる放射線検出対象物に対向させて複数の放射線検出器を配置し、
放射線検出対象物を有する放射性物質取り扱い施設の運転時に、放射線検出対象物の内面に付着した測定対象核種及び放射線検出対象物内を流れる液体に含まれる短半減期核種から放射される各γ線を、複数の放射線検出器で検出し、
そのγ線の検出によって各放射線検出器から出力されるγ線検出信号を、それぞれの放射線検出器に別々に接続される各エネルギー弁別装置に入力し、
各々のエネルギー弁別装置が、そのγ線のエネルギーである0.4MeVに対応する第1設定波高値から、そのγ線のエネルギーである2.0MeVに対応する第2設定波高値までの範囲に存在する波高値を有する、入力したγ線検出信号を出力し、第1設定波高値未満である波高値を有する、入力したγ線検出信号、及び第2設定波高値を超える波高値を有する、入力したγ線検出信号を除去し、
各々のエネルギー弁別装置からの各γ線検出信号による同時計数を行い、
各γ線検出信号が同時計数されたときに生成される同時計数信号に基づいて放射線検出対象物の線量率を求めることにある。
【0017】
複数の放射線検出器にエネルギー弁別装置が別々に接続されており、各エネルギー弁別装置が第1設定波高値から第2設定波高値までの範囲に存在する波高値を有する、入力したγ線検出信号を出力し、第1設定波高値未満である波高値を有する、入力したγ線検出信号、及び第2設定波高値を超える波高値を有する、入力したγ線検出信号を除去するので、それぞれのエネルギー弁別装置から出力された、第1設定波高値から第2設定波高値までの範囲に存在する波高値を有するγ線検出信号を同時計数する。各エネルギー弁別装置において第1設定波高値未満である波高値を有するγ線検出信号、及び第2設定波高値を超える波高値を有するγ線検出信号が除去されるので、第1設定波高値未満である波高値を有するγ線検出信号、及び第2設定波高値を超える波高値を有するγ線検出信号による偶発同時計数を避けることができる。このため、偶発同時計数が著しく低減されるので、同時計数の精度が向上して短半減期核種から放射されるバックグラウンドγ線の影響を排除することができ、放射性物質取り扱い施設の運転時の運転時において放射性核種を含む液体が流れる放射線検出対象物の線量率を精度良く測定することができる。
【0018】
好ましくは、放射線遮蔽体内に設置された複数の放射線検出器のそれぞれの前面で放射線検出器毎に放射線遮蔽体に形成された各コリメータの、放射線検出対象物を見込む範囲が、少なくとも一部で重なっていることが望ましい。各コリメータの、放射線検出対象物を見込む範囲が少なくとも一部で重なっているので、この重なっている部分に存在する測定対象核種から放射されたγ線を各放射線検出器で検出することができ、同時計数を精度良く行うことができる。
【0019】
好ましくは、同時計数信号をカウントして得られる同時計数率をncoin、複数の放射線検出器の個数をN個(N≧2)、放射線強度をA、放射線検出効率をα、補正計数をk、及び放射線強度Aを等価線量に変換する変換係数をΦとし、放射線検出効率αが、N個の放射線検出器の検出効率ε、コリメータによって定まる幾何効率Ω及び放射線遮蔽体による遮蔽効率dに基づいて求められるとき、放射線検出対象物の線量率Hが下記の式に
【0020】
【数1】

【0021】
よって求められることが望ましい。
【0022】
内部に放射性核種を含む液体が流れる放射線検出対象物に対向させて複数の放射線検出器を配置し、
放射線検出対象物を有する放射性物質取り扱い施設の運転時に、放射線検出対象物の内面に付着した測定対象核種及び放射線検出対象物内を流れる液体に含まれる短半減期核種から放射される各γ線を、複数の放射線検出器で検出し、
そのγ線の検出によって各放射線検出器から出力されるγ線検出信号を、それぞれの放射線検出器に別々に接続される各エネルギー弁別装置に入力し、
各々のエネルギー弁別装置が、そのγ線のエネルギーである0.4MeVに対応する第1設定波高値から、そのγ線のエネルギーである2.0MeVに対応する第2設定波高値までの範囲に存在する波高値を有する入力したγ線検出信号を出力し、第1設定波高値未満である波高値を有する入力したγ線検出信号及び第2設定波高値を超える波高値を有する入力したγ線検出信号を除去し、
同時計数処理装置が、各々のエネルギー弁別装置から出力された各γ線検出信号による同時計数を行い、これらのγ線検出信号が同時計数されたときに同時計数信号を出力し、
複数の放射線検出器のうち1つの放射線検出器からのγ線検出信号を入力する第1ゲート装置が、同時計数信号を入力したとき、入力したγ線検出信号を出力し、
複数の放射線検出器のうち他の1つの放射線検出器からのγ線検出信号を入力する第2ゲート装置が、同時計数信号を入力したとき、入力したγ線検出信号を出力し、
第1及び第2ゲート装置からそれぞれ出力されたγ線検出信号に基づいて放射線検出対象物の線量率を求めることによっても、上記の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、放射性物質取り扱い施設の運転時において、放射性核種を含む液体が流れる、放射性物質取り扱い施設の放射線検出対象物の線量率を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の、沸騰水型原子力プラントに適用した線量率監視方法に用いられる配管線量率監視装置の構成図である。
【図2】図1に示す配管線量率監視装置の原子炉格納容器内における配置例を示す説明図である。
【図3】測定対象核種であるCo−60の壊変図式を示す説明図である。
【図4】測定対象核種であるCo−58の壊変図式を示す説明図である。
【図5】図1に示すエネルギー弁別装置の機能を示す説明図である。
【図6】図1に示すエネルギー弁別装置を用いたときにおけるγ線エネルギースペクトルを示す説明図である。
【図7】図1に示す同時計数処理装置の機能を示す説明図である。
【図8】本発明の他の実施例である実施例2の、沸騰水型原子力プラントに適用した線量率監視方法に用いられる配管線量率監視装置の構成図である。
【図9】図8に示す放射能演算装置で作成される同時計数のγ線エネルギースペクトルの一例を示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施例である実施例3の、沸騰水型原子力プラントに適用した線量率監視方法に用いられる配管線量率監視装置の放射能演算装置で作成された、1つの放射線検出器に対する同時計数のγ線エネルギースペクトルの一例を示す説明図である。
【図11】実施例3の、沸騰水型原子力プラントに適用した線量率監視方法に用いられる配管線量率監視装置の放射能演算装置で作成された、他の放射線検出器に対する同時計数のγ線エネルギースペクトルの一例を示す説明図である。
【図12】本発明の他の実施例である実施例4の、沸騰水型原子力プラントに適用した線量率監視方法に用いられる配管線量率監視装置の構成図である。
【図13】本発明の他の実施例である実施例5の、沸騰水型原子力プラントに適用した線量率監視方法に用いられる配管線量率監視装置の構成図である。
【図14】本発明の他の実施例である実施例6の、沸騰水型原子力プラントに適用した線量率監視方法に用いられる配管線量率監視装置の構成図である。
【図15】本発明の他の実施例である実施例7の、沸騰水型原子力プラントに適用した線量率監視方法に用いられる配管線量率監視装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明者らは、前述した検討により見出した、炉水が流れる配管の内面に付着した放射性核種から放射されるγ線を計測する際に、その炉水に含まれる短半減期核種から放射されるγ線がバックグランドγ線になって配管の内面に付着した放射性核種から放射されるγ線の検出精度を低下させるという新たな課題を改善するために、種々の検討を行った。
【0026】
この検討の結果、発明者らは、炉水が流れる配管内の測定対象核種から放射された、エネルギーが異なるカスケードγ線を第1放射線検出器及び第2放射線検出器でそれぞれ検出し、第1放射線検出器から出力された、0.4MeV〜2.0MeVの範囲内のエネルギーを有する第1放射線検出信号と第2放射線検出器から出力された、0.4MeV〜2.0MeVの範囲内のエネルギーを有する第2放射線検出信号を同時計数することによって、炉水が流れる配管の内面に付着した放射性核種から放射されるγ線を精度良く計測できることを新たに見出した。0.4MeV〜2.0MeVは、測定対象核種であるCo−60及びCo−58等から放射されるカスケードγ線のエネルギーを考慮して設定した。
【0027】
本発明は、発明者らが見出した新たな知見に基づいて成されたものである。
【0028】
発明者らが見出した新たな知見に基づいて成された本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0029】
本発明の好適な一実施例である実施例1の線量率監視方法を、図1及び図2を用いて説明する。
【0030】
本実施例の線量率監視方法に用いる線量率監視装置を、図1を用いて説明する。この線量率監視装置の一例である配管線量率監視装置16は、放射線検出装置14及び放射線計測装置15を備えている。放射線検出装置14は、放射線検出器1A,1B及び遮蔽体2を有し、遮蔽体2内に2つのコリメータ3を形成している。放射線検出器1A及び放射線検出器1Bを遮蔽体2内に設置している。
【0031】
放射線検出器1A及び放射線検出器1Bは、γ線エネルギー分析が可能な放射線検出器とする。γ線エネルギー分析のために使用する代表的な放射線検出器は、半導体放射線検出器及びシンチレーション検出器である。
【0032】
半導体放射線検出器は、Si、Ge、CdTe、GaAs及びCZT等のいずれかで構成される半導体素子を有している。この半導体検出器は、半導体素子に電圧を印加することによって半導体素子内に形成される空乏層にγ線が入射したとき、空乏層に対となる電子及び正孔を生成し、電気信号であるγ線検出信号を出力する。
【0033】
シンチレーション検出器は、シンチレータ及び光検出器から構成される。代表的なシンチレータは、NaI(Tl)、BGO、GSO、LSO、YAP、LuAG(Pr)、LaCl(Ce)、LaBr(Ce)、CsI及びPWO等のいずれかで構成される。シンチレータはγ線をシンチレーション光に変換する機能を有する。シンチレータで生じたシンチレーション光を電気信号に変換する光検出器の代表的な例として、光電子増倍管、フォトダイオード及びアバランシェフォトダイオードがある。
【0034】
一般的な放射線検出器は、エネルギー分解能の維持及び向上と後段の放射線計測装置との整合性を持たせるために前置増幅器を有する。一般的な前置増幅器として帰還抵抗型前置増幅器及びトランジスタリセット型前置増幅器があり、前置増幅器は、半導体放射線検出器の後段及びシンチレーション検出器の後段に設置される。また、前置増幅器の替りに、波形整形型増幅器、ゲート付積分回路型増幅器及びタイミングフィルタ型増幅器のいずれかを設置してもよく、この場合には増幅器の出力を放射線計測装置に入力する。前置増幅器等の増幅器を用いないで、放射線検出器の出力を、直接、放射線計測装置に入力してもよい。
【0035】
本実施例では、放射線検出器1A,1Bとして、半導体放射線検出器及び前置増幅器を用いる。
【0036】
放射線を遮蔽する遮蔽体2は、数mSv/h〜数100mSv/hの放射線環境下での放射線検出器1A及び放射線検出器1Bの性能を担保するために、コリメータ3に入射されるγ線以外のバックグラウンドγ線を遮蔽する必要がある。遮蔽体2は、鉛及びタングステン合金等のγ線遮蔽能力が高い材料で構成される。特性X線及び中性子を遮蔽するために、鉛またはタングステン合金と、鉄、銅、アルミニウム及びアクリル等の材料のいずれかを組合せ、遮蔽能力を高めた遮蔽体2を構成してもよい。本実施例で用いる遮蔽体2は、例えば、鉛で構成されている。
【0037】
遮蔽体2に形成された各コリメータ3は、放射線を通過させる孔部であり、放射線検出器1A,1Bのそれぞれの前方に配置される。2つのコリメータ3の中心軸は、これらの中心軸間の寸法が、各コリメータ3の放射線検出器1A,1B側よりも各コリメータ3の開放端側で小さくなるように、遮蔽体2の端面に対して傾斜している(図1参照)。また、放射線検出器1A,1Bはγ線エネルギー分析をするために計数率の上限があるので、各コリメータ3は計数率の上限を上回らないような構成にする。
【0038】
放射線計測装置15は、エネルギー弁別装置4A,4B、同時計数処理装置5、放射能演算装置6及び表示装置7を有する。放射線検出器1Aがエネルギー弁別装置4Aに接続され、放射線検出器1Bがエネルギー弁別装置4Bに接続される。エネルギー弁別装置4A,4Bがそれぞれ同時計数処理装置5に接続される。放射能演算装置6が同時計数処理装置5及び表示装置7に接続される。
【0039】
放射線検出器1A,1Bから出力されたそれぞれのγ線検出信号の電圧が設定された下限電圧から上限電圧の範囲内に入るとき、エネルギー弁別装置4A,4Bはそのγ線検出信号をパルス信号として出力する。放射線検出器1A,1Bから出力されたそれぞれのγ線検出信号の電圧がその下限電圧未満またはその上限電圧を超えるとき、エネルギー弁別装置4A,4Bは入力したγ線検出信号を除去し出力しない。
【0040】
エネルギー弁別装置4A,4Bにそれぞれ設定された下限電圧(第1設定波高値)は、放射線検出器1A,1Bで0.4MeVのエネルギーを有するγ線を検出したときに出力されるγ線検出信号の電圧(波高値)である。エネルギー弁別装置4A,4Bにそれぞれ設定された上限電圧(第2設定波高値)は、放射線検出器1A,1Bで2.0MeVのエネルギーを有するγ線を検出したときに出力されるγ線検出信号の電圧(波高値)である。放射線検出器1A,1Bで検出されるγ線のエネルギーとこのγ線を検出することによって放射線検出器1A,1Bから出力されるγ線検出信号の電圧(波高値)は相関があり、検出されるγ線のエネルギーが高くなると、出力されるγ線検出信号の電圧(波高値)が大きくなる。
【0041】
同時計数処理装置5は、エネルギー弁別装置4A,4Bのそれぞれから出力されたパルス信号を入力し、これらのパルス信号を用いて同時計数を行ってパルス状の同時計数信号を出力する。放射能演算装置6は、入力した同時計数信号を計数して得られた同時計数率ncoinを用いて後述するように、再循環系配管12の配管線量率Hを求める。
【0042】
本実施例の線量率監視方法が適用される原子力プラントである沸騰水型原子力プラントを、図2を用いて説明する。沸騰水型原子力プラントは、原子炉格納容器20、原子炉圧力容器21、再循環系、主蒸気系、給水系及び原子炉浄化系24を備えている。
【0043】
原子炉圧力容器21を包囲する原子炉格納容器20が、原子炉建屋19内に設置される。複数の燃料集合体(図示せず)が装荷された炉心(炉心)が、原子炉圧力容器21内に設けられる。複数のジェットポンプ(図示せず)が炉心と原子炉圧力容器21の間に設置される。2系統の再循環系が設けられ、それぞれの再循環系は、再循環系配管12及び再循環ポンプ22を有する。再循環ポンプ22を設けた再循環系配管12の一端が原子炉圧力容器21に接続され、再循環系配管12の他端が原子炉圧力容器21内に設置されたライザー管(図示せず)に接続される。ライザー管はジェットポンプのノズル(図示せず)に接続されている。
【0044】
主蒸気系の主蒸気配管25が、原子炉圧力容器21に接続される。この主蒸気配管25は、原子炉建屋19と隣り合わせに建てられているタービン建屋(図示せず)内のタービン(図示せず)に接続され、原子炉圧力容器21内で発生した蒸気をタービンに供給する。給水系の給水配管26が、タービン建屋内に設置されてタービンから排気される蒸気を凝縮する復水器(図示せず)と原子炉圧力容器21を接続している。原子炉浄化系24の浄化系配管23の一端が再循環ポンプ22の上流で再循環系配管12に接続され、浄化系配管23の他端が給水配管26に接続される。浄化装置(図示せず)が浄化系配管23に設けられる。図2では浄化系配管23の一部が原子炉格納容器20の外側に配置されているが、実際には、浄化系配管23の全体が原子炉格納容器20内に配置されている。
【0045】
沸騰水型原子力プラントでは、例えば、配管線量率監視装置16,16Eが用いられる。配管線量率監視装置16Eの構成は、前述した配管線量率監視装置16の構成と同じである。配管線量率監視装置16の放射線検出装置14が原子炉格納容器20内に配置され、この放射線検出装置14の放射線検出器1A,1Bが、2系統の再循環系のうち1系統の再循環系の再循環系配管12に対向するように、配置される。配管線量率監視装置16Eの放射線検出装置14も原子炉格納容器20内に配置され、この放射線検出装置14の放射線検出器1A,1Bが、残りの再循環系の再循環系配管12に対向するように、配置される。配管線量率監視装置16,16Eのそれぞれの放射線計測装置15が、原子炉格納容器20の外側で原子炉建屋19内に形成された、例えば、中央制御室(図示せず)に配置される。放射線検出装置14の放射線検出器1Aに接続された接続ケーブル27が放射線計測装置15のエネルギー弁別装置4Aに接続され、放射線検出装置14の放射線検出器1Bに接続された接続ケーブル27が放射線計測装置15のエネルギー弁別装置4Bに接続される。
【0046】
2系統の再循環系のそれぞれの再循環系配管12は、図1に示すように、外面に保温材11が巻き付けられている。配管線量率監視装置16,16Eのそれぞれの放射線検出装置14の再循環系配管12に対する配置が同じであるので、配管線量率監視装置16を例に挙げて放射線検出装置14の再循環系配管12に対する配置を、図1を用いて説明する。
【0047】
放射線検出装置14は、コリメータ3が開口している遮蔽体2の一面が再循環系配管12を取り囲む保温材11に対向するように、配置される。放射線検出器1Aが、この放射線検出器1Aの前面に形成されたコリメータ3を通して、再循環系配管12を見込むコリメータ見込み範囲8Aと、放射線検出器1Bが、この放射線検出器1Bの前面に形成されたコリメータ3を通して、再循環系配管12を見込むコリメータ見込み範囲8Bのそれぞれの一部が、各コリメータ3のそれぞれの中心軸が前述したように傾斜している関係上、互いに重なっている。各コリメータ3は、再循環系配管12を見込み、それぞれのコリメータ見込み領域8A及びコリメータ見込み領域8Bの重なる領域で再循環系配管12の内面に付着した測定対象核種9を見込んでいる。
【0048】
沸騰水型原子力プラントの運転時では、原子炉圧力容器21内の冷却材である冷却水(炉水)が、再循環ポンプ22の駆動によって昇圧されて再循環系配管12内を流れ、ライザー管内に導かれる。ライザー管内に達した炉水は、ジェットポンプのノズルから噴射され、ノズルの周囲に存在する炉水をジェットポンプ内に吸引する。ジェットポンプから吐出された炉水は、炉心に供給され、各燃料集合体内の核燃料物質の核分裂によって発生する熱で加熱され、その一部が蒸気になる。この蒸気は、原子炉圧力容器21内に設けられた気水分離器(図示せず)及び蒸気乾燥器(図示せず)で湿分が除去された後、主蒸気配管25によりタービンに供給され、タービンを回転させる。タービンに連結された発電機(図示せず)が回転し、電力が発生する。タービンから排気された蒸気は、復水器で凝縮されて水になる。この水は、給水として、給水配管26により原子炉圧力容器21に供給される。
【0049】
再循環系配管12内を流れる炉水の一部が、浄化系配管23内に導かれ、浄化装置で浄化された後、給水配管26を介して原子炉圧力容器21内に戻される。
【0050】
核分裂で発生する放射線(中性子、γ線等)により炉心内で放射化されたクラッド等が、再循環系配管12等の炉水が流れる配管の内面に付着する。沸騰水型原子力プラントの運転時に、Co−58及びCo−60等の放射性核種を含むクラッドが再循環系配管12の内面に付着する。Co−58及びCo−60等のカスケードγ線を放射する放射性核種が、図1に示された測定対象核種9である。
【0051】
それぞれのコリメータ3が再循環系配管12を見込む範囲、すなわち、コリメータ見込み範囲8A,8Bが重なっている領域で再循環系配管12の内面に付着した測定対象核種9から放射されたγ線、及び短半減期核種10から放射されたバックグラウンドγ線18が、遮蔽体2に形成された各コリメータ3を通って放射線検出器1A,1Bに入射される。γ線を検出した放射線検出器1A,1Bは、入射したγ線のエネルギーに対応した電圧(波高値)を有するγ線検出信号をそれぞれ出力する。
【0052】
ここで、測定対象核種9及び測定対象核種9から放射されるγ線17について説明する。測定対象核種9は、沸騰水型原子力プラントの運転に伴い発生した人工放射性核種であり、安定核種に遷移する過程でカスケードγ線であるγ線17を放射する。カスケードγ線は、測定対象核種9からほぼ同時刻と見なせるほど極めて短い時間の間に放射された異なるエネルギーを有する複数のγ線である。カスケードγ線を放射する代表的な測定対象核種9として、Co−60及びCo−58がある。
【0053】
Co−60の崩壊図式を図3に示す。Co−60は炉心においてCo−59の(n,γ)反応で生成される。Co−60は、半減期が5.27年であり、β崩壊の過程でエネルギーの異なるγ線17を放射する。放射される主要なγ線17は、1.17MeVのエネルギーを有するγ線及び1.33MeVのエネルギーを有するγ線17である。1.17MeVのγ線17及び1.33MeVのγ線17はカスケードγ線である。
【0054】
Co−58の崩壊図式を図4に示す。Co−58は炉心においてNi−58の(n,p)反応で生成される。Co−58は、半減期が71.3日であり、電子捕獲もしくはβ崩壊の過程で消滅γ線を含むエネルギーの異なるγ線17を放射する。放射される主要なγ線17は、0.81MeVのエネルギーを有するγ線17及び0.511MeVのエネルギーを有するγ線17である。
【0055】
消滅γ線は、ほぼ180度の反対方向に放射される2本のγ線を含む。安定核種に遷移する過程で生じるカスケードγ線は4π方向へランダムに放射される。
【0056】
Co−60及びCo−58のそれぞれの半減期では沸騰水型原子力プラントの運転停止直後から定期検査開始時までの期間でCo−60及びCo−58が十分減衰することが無く、このため、Co−60及びCo−58は定期検査時において計測される主要な線源になっている。以降の説明における測定対象核種9としてCo−60を例に挙げて説明する。
【0057】
次に、短半減期核種10及び短半減期核種10から放射されるバックグラウンドγ線18について説明する。短半減期核種10も、沸騰水型原子力プラントの運転に伴い炉心において発生した人工放射性核種である。代表的な短半減期核種10として、N−16、N−13、F−18、O−19及びMn−56等がある。N−16は、O−16の(n,p)反応で生成されてβ崩壊の過程でγ線を放射し、半減期が7.1秒である。放射されるγ線の主要なエネルギーは6.1MeV及び7.1MeVである。N−13は、N−14の(n,2n)反応で生成されて電子捕獲もしくはβ崩壊の過程で消滅γ線を放射し、半減期が9.96分である。放射されるγ線の主要なエネルギーは0.511MeVである。F−18は、O−18の(p,n)反応で生成されて電子捕獲もしくはβ崩壊の過程で消滅γ線を放射し、半減期が109.8分である。放射されるγ線の主要なエネルギーは0.511MeVである。O−19は、O−18の(n,γ)反応で生成されてβ崩壊の過程でγ線を放射し、半減期が26.9秒である。放射されるγ線の主要なエネルギーは0.197MeV及び1.357MeVである。
【0058】
いずれの短半減期核種10も沸騰水型原子力プラントの運転停止から数日で存在が確認できなくなる。このため、これらの短半減期核種10は、定期検査時において計測される主要な線源にはならない。以降の説明における短半減期核種10としてN−16を例に挙げて説明する。
【0059】
沸騰水型原子力プラントの運転時において、炉水が流れている再循環系配管12の内面に付着した測定対象核種9であるCo−60から放射されたγ線17が、配管線量率監視装置16の放射線検出装置14に設けられた各コリメータ3を通って放射線半導体検出器である放射線検出器1A,1Bに入射される。しかしながら、放射線検出器1Aに入射されるγ線として、コリメータ見込み範囲8A内に存在する測定対象核種9から放射されたγ線17以外に、その範囲8Aに存在する短半減期核種10から放射されたバックグラウンドγ線18(以下、単にγ線18という)がある。放射線検出器1Bに入射されるγ線としても、コリメータ見込み範囲8B内に存在する測定対象核種9から放射されたγ線17以外に、その範囲8Bに存在する短半減期核種10から放射されたγ線18がある。
【0060】
再循環系配管12の内面に付着したCo−60から放射されたカスケードγ線のうち、1.17MeVのγ線17が放射線検出器1Aに入射され、1.33MeVのγ線17が放射線検出器1Bに入射されたとする。再循環系配管12内を流れている炉水に含まれた短半減期核種10、例えば、N−16から放射された6.1MeV及び7.1MeVのそれぞれのγ線18も各コリメータ3を通って放射線検出器1A,1Bにそれぞれ入射される。
【0061】
放射線検出器1Aは入射したγ線17のエネルギー(例えば、1.17MeV)に対応した電圧(波高値)を有するγ線検出信号を出力する。このγ線検出信号は、前置増幅器で増幅されてエネルギー弁別装置4Aに入力される。放射線検出器1Bは入射したγ線17のエネルギー(例えば、1.33MeV)に対応した電圧(波高値)を有するγ線検出信号を出力する。このγ線検出信号は、前置増幅器で増幅されてエネルギー弁別装置4Bに入力される。N−16から放射されたγ線18が入射された放射線検出器1A,1Bのそれぞれは、γ線18のエネルギーに対応した電圧(波高値)を有するγ線検出信号を出力する。
【0062】
γ線検出信号を入力したときにおけるエネルギー弁別装置4A,4Bのそれぞれの信号処理が同じであるので、代表して、エネルギー弁別装置4Aの信号処理を以下に説明する。エネルギー弁別装置4Aは、図5に示すように、下限電圧(第1設定波高値)29及び上限電圧(第2設定波高値)30がそれぞれ設定されており、下限電圧29以上で上限電圧30以下の範囲内の電圧を有するγ線検出信号(例えば、図5に示すγ線検出信号S1,S2)のパルス信号(例えば、図7に示すパルス信号Pa1,Pa2)を出力する。エネルギー弁別装置4Aは、下限電圧29未満の電圧を有するγ線検出信号(例えば、図5に示すγ線検出信号S3,S5)及び上限電圧30を超える電圧を有するγ線検出信号(例えば、図5に示すγ線検出信号S4)を除去する。これらの除去されたγ線検出信号のパルス信号が、エネルギー弁別装置4Aから出力されない。
【0063】
エネルギー弁別装置4Aがパルス信号の出力を許可するγ線検出信号の電圧範囲である波高ウインドウ31が、下限電圧29及び上限電圧30に基づいて、エネルギー弁別装置4Aに設定される。この波高ウインドウ31はエネルギー弁別装置4Bにも設定される。
【0064】
波高ウインドウ31とγ線のエネルギーの関係を図6に示す。前述したように、放射線検出器1A,1Bが0.4MeVのエネルギーを有するγ線を検出したときに出力されるγ線検出信号の電圧が波高ウインドウ31の下限電圧29であり、放射線検出器1A,1Bが2.0MeVのエネルギーを有するγ線を検出したときに出力されるγ線検出信号の電圧が波高ウインドウ31の上限電圧30である。波高ウインドウ31は、γ線のエネルギーで表すと、下限のエネルギーである0.4MeVから上限のエネルギーである2.0MeVの範囲のエネルギー領域に対応する。
【0065】
図6に示された波高ウィンドウ31を適用しない場合におけるγ線エネルギースペクトル33は、再循環系配管12の内面に付着した測定対象核種9がCo−60であり、再循環系配管12内を流れている炉水に含まれた短半減期核種10がN−16であるときのエネルギースペクトルである。このγ線エネルギースペクトル33は、γ線17に起因した複数のCo−60光電ピーク34、及びγ線18に起因した、N−16光電ピーク35、N−16シングルエスケープピーク36、N−16ダブルエスケープピーク37及びN−16コンプトン分布38を含んでいる。エネルギー弁別装置4A,4Bに波高ウィンドウ31が設定されていない場合には、これらのエネルギー弁別装置は、γ線エネルギースペクトル33の各エネルギーを有する全てのγ線検出信号に対してパルス信号を出力する。
【0066】
波高ウィンドウ31をエネルギー弁別装置4A,4Bに設定した場合において、弁別装置4A,4Bで出力信号であるパルス信号を生成させるγ線検出信号は、放射線検出器1A,1Bに入射されるγ線17のエネルギーが、図6に示すγ線エネルギースペクトル32に含まれているときである。このγ線エネルギースペクトル32は、上限である2.0MeVを超えるエネルギーを有するγ線、及び下限である0.4MeV未満のエネルギーを有するγ線を除外している。波高ウィンドウ31を設定したエネルギー弁別装置4A,4Bは、Co−60光電ピーク34を含む0.4MeV〜2.0MeVのエネルギーを有するγ線の放射線検出器1A,1Bへの入射によって放射線検出器1A,1Bから出力されたγ線検出信号に対してのみパルス信号(パルス状のγ線検出信号)を出力する。このため、短半減期核種10であるN−16から放射される、N−16光電ピーク35、N−16シングルエスケープピーク36及びN−16ダブルエスケープピーク37等の高エネルギー部分のγ線18、及びンプトン分布38の低エネルギー部分のγ線18によって発生した各γ線検出信号を、エネルギー弁別装置4A,4Bによって除外することができる。
【0067】
エネルギー弁別装置4Aが図5に示すγ線検出信号S1に基づいたパルス信号(例えば、図7に示すパルス信号Pa1)を同時計数処理装置5に出力し、エネルギー弁別装置4Bが図5に示すγ線検出信号S2に基づいたパルス信号(例えば、図7に示すパルス信号Pb1)を同時計数処理装置5に出力したとする。このとき、同時計数処理装置5で実行される同時計数処理を、図7を用いて説明する。同時計数処理装置5は、エネルギー弁別装置4A,4Bのそれぞれから入力したパルス信号に基づいて同時計数を行うために、時間ウインドウ39(図7参照)を設定している。この時間ウインドウ39は、設定された時間幅(例えば、数ns〜数10nsのオーダー)を有している。
【0068】
パルス信号Pa1及びパルス信号Pb1の両方が時間ウインドウ39内に入るので、同時計数処理装置5は、パルス信号Pa1,Pb1が同時に発生した(同時計数された)としてパルス状の同時計数信号を出力する。これは、パルス信号Pa1,Pb1を生成する各γ線検出信号が放射線検出器1A,1Bから出力されるために放射線検出器1Aに入射されたγ線17、及び放射線検出器1Bに入射されたγ線17が、Co−60から放射されたカスケードγ線である。同時計数処理装置5が、時間ウインドウ39内に入る、エネルギー弁別装置4Aからのパルス信号Pa2及びエネルギー弁別装置4Bからのパルス信号Pb2を入力したときも、同時計数処理装置5はパルス信号Pa2,Pb2の同時計数によって同時計数信号を出力する。なお、時間ウインドウ39内に入らないパルス信号Pa3,Pb3を入力した同時計数処理装置5は、パルス信号Pa3,Pb3を同時計数しないので同時計数信号を出力しない。
【0069】
同時計数処理装置5からの同時計数信号を入力する放射能演算装置6は、同時計数信号に基づいて配管線量率Hを算出する。放射能演算装置6で実行される配管線量率Hの算出について説明する。
【0070】
放射能演算装置6は、入力した同時計数信号をカウントして同時計数率ncoinを求める。そして、放射能演算装置6は、求められた同時計数率ncoin、放射線検出器1Aに対する放射線検出効率α、放射線検出器1Bに対する放射線検出効率α、放射線強度A及び放射線強度Aを等価線量に変換する変換係数Φを(1)式に代入して配管線量率Hを算出する。
【0071】
【数2】

【0072】
放射線検出効率αは、放射線検出器1Aの検出効率、放射線検出器1Aに対向するコリメータ3によるコリメータ見込み範囲8Aで決まる幾何効率、及び放射線検出装置14の設置箇所の構造上の遮蔽効率を用いて求められる。放射線検出効率αは、放射線検出器1Bの検出効率、放射線検出器1Bに対向するコリメータ3によるコリメータ見込み範囲8Bで決まる幾何効率(立体角)、及び放射線検出装置14の設置箇所の構造上の遮蔽効率(遮蔽体での減衰を考慮した遮蔽効率)を用いて求められる。なお、放射線検出器の検出効率は、放射線検出器に入射したN個のγ線に対する、放射線検出器と相互作用を起こすγ線の個数の割合を意味する。
【0073】
上記の処理を行う放射能演算装置6は、同時計数信号をカウントして同時計数率ncoinを求めるカウント部、及び(1)式により配管線量率Hを算出する演算部を有する。
【0074】
放射能演算装置6で算出された配管線量率Hは、表示装置7に出力されて表示される。オペレータは、表示装置7に表示された配管線量率Hを見ることによって再循環系配管12の内面に付着した測定対象核種9、例えば、Co−60から放射されるγ線17に起因した再循環系配管12の線量率を知ることができる。
【0075】
本実施例は、放射線検出器1Aから出力されたγ線検出信号を入力するエネルギー弁別装置4A、及び放射線検出器1Bから出力されたγ線検出信号を入力するエネルギー弁別装置4Bのそれぞれに、下限電圧29及び上限電圧30で範囲を規定された波高ウインドウ31を設定しているので、2.0MeVを超えるエネルギーを有するγ線に起因して放射線検出器から出力されたγ線検出信号、0.4MeV未満のエネルギーを有するγ線に起因して放射線検出器から出力されたγ線検出信号を、エネルギー弁別装置4A,4Bで除去することができる。換言すれば、再循環系配管12内を流れている炉水に含まれた短半減期核種10から放出された、2.0MeVを超えるエネルギーを有するγ線18に起因して放射線検出器から出力されたγ線検出信号を、エネルギー弁別装置4A,4Bのそれぞれで除去することができる。
【0076】
このため、2.0MeVを超えるエネルギーを有するγ線18に基づいて放射線検出器から出力されたγ線検出信号を入力するエネルギー弁別装置が、同時計数処理装置5へのパルス信号の出力を阻止できるので、γ線18に基づいた放射線検出器から出力されたγ線検出信号に起因した、同時計数処理装置5での偶発同時計数を避けることができる。偶発同時計数が著しく低減されるので、同時計数処理装置5で行われる同時計数の精度が向上して短半減期核種10から放射されるγ線18の影響を排除することができ、沸騰水型原子力プラントの運転時において短半減期核種10を含む炉水が流れる再循環系配管12の、再循環系配管12の内面に付着した測定対象核種9に起因した線量率(以下、単に、再循環系配管12の線量率という)を精度良く測定することができる。この再循環系配管12の線量率は、沸騰水型原子力プラントの運転停止時において、短半減期核種10から放射されるγ線18の影響を受けない時点での循環系配管12の線量率に相当する。
【0077】
0.4MeV未満のγ線に基づいて出力されたγ線検出信号をエネルギー弁別装置4A,4Bで除外しているので、後段の放射線計測装置15で不必要な計数をしなくて済み、放射線計測装置15にかかる負担が減少する。さらに、余計な計数をしなくて済むので、不感時間が減少し、データ収集時間が短くなる。
【0078】
本実施例によれば、沸騰水型原子力プラントの運転時に炉水が流れている再循環系配管12の線量率を精度良く測定することができるので、そのプラントの運転時において再循環系配管12の線量率を継続して監視することができる。また、沸騰水型原子力プラントの運転時に炉水が流れている再循環系配管12の線量率を精度良く測定できるので、沸騰水型原子力プラントの運転停止後の定期検査で行われる、再循環系配管12に対する保守点検、及び原子炉格納容器20内で、再循環系配管12の周囲に配置された配管及び機器に対する保守点検における各作業に必要な放射線遮蔽計画及び人員計画を、沸騰押すいがた原子力プラントの運転中に精度良く測定された再循環系配管12の線量率を用いて、定期検査前により適切に行うことができる。このため、それらの保守点検作業における作業員の被ばくの低減、及び保守点検作業に要する時間の短縮を図ることができる。
【0079】
各コリメータ3の見込み範囲8A,8Bが重なっているので、これらの見込み範囲が重なっている部分に存在する測定対象核種9から放射されたγ線17を放射線検出器1A,1Bで検出することができ、同時計数を精度良く行うことができる。各コリメータ3の見込み範囲8A,8Bが重なることによって、データ収集時間を短くすることができ、偶発同時計数を抑制できる。
【0080】
本実施例では、放射線検出器1A,1Bを有する放射線検出装置14を用いたが、3個以上の放射線検出器を有する放射線検出装置を用いてもよい。放射線検出器を3個以上設けた場合には、それぞれの放射線検出器に対して放射線検出効率を求める必要がある。例えば、3個の放射線検出器を用いた場合には、放射線検出効率α、α及びαが求められる。配管線量率監視装置16がN個の放射線検出器を備えている場合には、放射能演算装置6は、(2)式を用いて配管線量率Hを算出する。(2)式は、(1)式を放射線検出器の個数Nに対応させて一般化した式である。
【0081】
【数3】

【実施例2】
【0082】
本発明の他の実施例である実施例2の線量率監視方法を、図8及び図9を用いて説明する。
【0083】
本実施例の線量率監視方法に用いる配管線量率監視装置16Aは、実施例1で用いた配管線量率監視装置16において放射線計測装置15を放射線計測装置15Bに替えた構成を有する。配管線量率監視装置16Aの他の構成は配管線量率監視装置16と同じである。
【0084】
配管線量率監視装置16Aは、配管線量率監視装置16にリニアゲート44A,44Bを追加した構成を有する。リニアゲート(第1ゲート装置)44Aは、エネルギー弁別装置4A、同時計数処理装置5及び放射能演算装置6Aに接続される。リニアゲート(第2ゲート装置)44Bは、エネルギー弁別装置4B、同時計数処理装置5及び放射能演算装置6Aに接続される。表示装置7が放射能演算装置6Aに接続される。
【0085】
配管線量率監視装置16Aを用いた、沸騰押水型原子力プラントの運転時における本実施例の線量率監視方法では、実施例1と同様に、放射線検出装置14の放射線検出器1A,1Bが、炉水が流れている再循環系配管12に向き合うように配置される。コリメータ見込み範囲8Aで再循環系配管12の内面に付着した測定対象核種9、例えば、Co−60から放射されたγ線17、及びコリメータ見込み範囲8Aで再循環系配管12内を流れている炉水に含まれた短半減期核種10、例えば、N−16から放射されたγ線18が、放射線検出器1Aによって検出される。コリメータ見込み範囲8Bに存在する測定対象核種9であるCo−60から放射されたγ線17、及び炉水に含まれた短半減期核種10であるN−16から放射されたγ線18が、放射線検出器1Bによって検出される。
【0086】
放射線検出器1Aから出力されてエネルギー弁別装置4Aに入力されたγ線検出信号の電圧(波高値)が下限電圧(第1設定波高値)29以上で上限電圧(第2設定波高値)30以下の範囲内に存在するとき、エネルギー弁別装置4Aは、パルス信号を同時計数処理装置5及びリニアゲート44Aに出力する。放射線検出器1Bから出力されてエネルギー弁別装置4Bに入力されたγ線検出信号の電圧が下限電圧29以上で上限電圧30以下の範囲内に存在するとき、エネルギー弁別装置4Bは、パルス信号を同時計数処理装置5及びリニアゲート44Bに出力する。下限電圧29未満の電圧を有するγ線検出信号、及び上限電圧30を超える電圧を有するγ線検出信号がエネルギー弁別装置4A,4Bで除去されるので、このとき、エネルギー弁別装置4A,4Bからパルス信号が出力されない。
【0087】
同時計数処理装置5は、実施例1と同様に、エネルギー弁別装置4A,4Bのそれぞれから出力されたパルス信号の同時計数を実施する。エネルギー弁別装置4A,4Bの両者のパルス信号が時間ウインドウ39内に入ったとき、同時計数されて同時計数信号が同時計数処理装置5から出力されてリニアゲート44A及び44Bにそれぞれ入力される。リニアゲート44Aは、同時計数信号を入力したときにだけ、エネルギー弁別装置4Aから入力したパルス信号を放射能演算装置6Aに出力する。リニアゲート44Bは、同時計数信号を入力したときにだけ、エネルギー弁別装置4Bから入力したパルス信号を放射能演算装置6Aに出力する。
【0088】
放射能演算装置6Aは、リニアゲート44Aから入力したパルス信号を第1カウント部でカウントし、リニアゲート44Bから入力したパルス信号を第1カウント部とは別の第2カウント部でカウントする。このように、本実施例では、リニアゲート44Aから入力したパルス信号、及びリニアゲート44Bから入力したパルス信号が別々にカウントされる。リニアゲート44A,44Bのそれぞれから放射能演算装置6Aに入力されたパルス信号、具体的には、リニアゲート44Aから第1カウント部に入力されたパルス信号、及びリニアゲート44Bから第2カウント部に入力されたパルス信号は、同時計数処理装置5によって同時計数されたパルス信号である。本実施例では、第1カウント部でのカウントによって得られた、同時計数されたパルス信号の計数値(同時計数値)、及び同時計数されたパルス信号の各エネルギー(波高値(電圧))を用いて、図9に示す同時計数のγ線エネルギースペクトル49の情報を作成する。このγ線エネルギースペクトル49の情報は、放射能演算装置6の演算部で作成される。同時計数のγ線エネルギースペクトル49は、測定対象核種9がCo−60、短半減期核種10がN−16であるときのγ線エネルギースペクトルである。作成されたγ線エネルギースペクトル49の情報が表示装置7に表示される。
【0089】
γ線エネルギースペクトル49によって、γ線17の同時計数による同時計数ピーク50、及びγ線18の偶発同時計数によるバックグラウンド分布51を確認することができる。
【0090】
放射能演算装置6Aは、同時計数ピーク50のネット計数値を同時計数率ncoinとし、この同時計数率ncoin、放射線検出効率α,α、放射線強度A及び変換係数Φを(1)式に代入して配管線量率Hを算出する。バックグラウンド分布51を用いることで、γ線18による偶発同時計数との弁別が容易になる。放射能演算装置6Aは、カウント部位外に、γ線エネルギースペクトル49の情報の作成、及び配管線量率Hの算出を行う演算部を有する。
【0091】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。特に、2.0MeVを超えるエネルギーを有するγ線18に基づいて放射線検出器から出力されたγ線検出信号を入力するエネルギー弁別装置が、実施例1と同様に、同時計数処理装置5へのパルス信号の出力を避けるので、γ線18に基づいた放射線検出器から出力されたγ線検出信号に起因した、同時計数処理装置5での偶発同時計数を避けることができる。偶発同時計数が著しく低減されるので、同時計数処理装置5で行われる同時計数の精度が向上し、同時計数信号を入力したリニアゲート44A,44Bが短半減期核種10から放射されたγ線18を放射能演算装置6Aに出力することを回避できる。このため、沸騰水型原子力プラントの運転時において短半減期核種10を含む炉水が流れる再循環系配管12の内面に付着した放射性核種による線量率を精度良く測定することができる。また、実施例1ではタイミングだけで同時計数を判定しているが、本実施例では、γ線エネルギースペクトル(同時計数スペクトル)の情報を作成し、同時計数したときの波高値も求めるので、タイミング及びエネルギーで真の同時計数と偶発同時計数の弁別が可能になる。
【0092】
本実施例において、放射線検出装置14の替りに、後述の放射線検出装置14A,14B,14Cのいずれかを用いてもよい。
【実施例3】
【0093】
本発明の他の実施例である実施例3の線量率監視方法を、図10及び図11を用いて説明する。本実施例の線量率監視方法に用いる配管線量率監視装置は、実施例2で用いた配管線量率監視装置16Aである。
【0094】
本実施例では、配管線量率監視装置16Aの放射能演算装置6Aの機能が、実施例2で用いる配管線量率監視装置16Aの放射能演算装置6Aの機能と異なっている。本実施例で用いる配管線量率監視装置16Aの、放射能演算装置6A以外の機能は、実施例2で用いる配管線量率監視装置16Aの、放射能演算装置6Aの以外の機能と同じである。
【0095】
放射線検出器1A,1Bが、沸騰水型原子力プラントの再循環系配管12に対向して配置されている。本実施例において、放射能演算装置6Aの演算部は、放射線検出器1Aから出力されたγ線検出信号を用いた、同時計数のγ線エネルギースペクトル52(図10参照)、及び放射線検出器1Bから出力されたγ線検出信号を用いた、同時計数のγ線エネルギースペクトル53(図11参照)の各情報を作成する。
【0096】
同時計数処理装置5が同時計数信号を出力したとき、実施例2と同様に、リニアゲート44Aがエネルギー弁別装置4Aから出力されたパルス信号を放射能演算装置6Aに出力し、実質的に同時に、リニアゲート44Bがエネルギー弁別装置4Bから出力されたパルス信号を放射能演算装置6Aに出力する。実質的に同時にリニアゲート44A,44Bから出力されて放射能演算装置6Aに入力されたこれらのパルス信号は、同時計数されたパルス信号である。
【0097】
放射能演算装置6Aは、実施例2と同様に、リニアゲート44Aから入力したパルス信号(以下、パルス信号Aという)を第1カウント部でカウントし、リニアゲート44Bから入力したパルス信号(以下、パルス信号Bという)を第1カウント部とは別の第2カウント部でカウントする。放射能演算装置6Aの演算部は、第1カウント部で得られたパルス信号Aの計数値、及び同時計数されたパルス信号Aの各エネルギー(波高値である電圧)を用いて、図10に示す放射線検出器1Aに関する同時計数のγ線エネルギースペクトル52の情報を作成する。放射能演算装置6Aの演算部は、また、第2カウント部で得られたパルス信号Bの計数値、及び同時計数されたパルス信号Bの各エネルギー(波高値(電圧))を用いて、図11に示す放射線検出器1Bに関する同時計数のγ線エネルギースペクトル53の情報を作成する。同時計数のγ線エネルギースペクトル52,53は、それぞれ、測定対象核種9がCo−60、短半減期核種10がN−16であるときのγ線エネルギースペクトルである。γ線エネルギースペクトル52,53の各情報は表示装置7に表示される。
【0098】
しかしながら、一般的な放射線検出器を使用する場合には、原理的に、γ線ピークは放射線検出器の特性によりピーク幅を持っている。このため、放射線検出器1Aから出力されたγ線検出信号に基づいたパルス信号Aと放射線検出器1Bから出力されたγ線検出信号に基づいたパルス信号Bの同時計数を、放射能演算装置6Aのカウント部で、再度、以下のように行う。それぞれのγ線ピークの中心を、図10及び図11に示すように、γ1A1、γ1A2、γ1B1及びγ1B2とする。ここで、測定対象核種9がCo−60であるので、γ線ピークの中心γ1A1及びγ1B1は1.17MeV、及びγ線ピークの中心γ1A2及びγ1B2は1.33MeVとなる。各γ線ピークの中心に対するそれぞれのγ線ピーク領域58を以下のように設定する。
【0099】
≦γ1A1≦a
≦γ1A2≦a
≦a
≦γ1B1≦b
≦γ1B2≦b
≦b
定数であるaからa及びbからbの各値は放射線検出器1A,1Bのエネルギー分解能に合わせて設定する。ここで、測定対象核種9がCo−60であるので、例えば、a及びbを1.0MeV、a、a、b及びbを1.25MeV、a及びbを1.5MeVにする。
【0100】
タイマーを有する放射能演算装置6Aは、例えば、リニアゲート44A,44Bからそれぞれ出力された各パルス信号A,Bに、放射能演算装置6Aへの入力時点のタイミングtをそのタイマーにより付与する。リニアゲート44Aから出力されてタイミングtの情報が付与されたパルス信号Aの波高値情報をX(MeV)とする。この波高値情報は、放射線検出器1Aから出力されたγ線検出信号の波高値情報であって、このγ線検出信号を発生させる、放射線検出器1Aに入射されたγ線のエネルギーによって定まる。また、リニアゲート44Bから出力されてタイミングtの情報が付与されたパルス信号Bのエネルギーチャンネル情報(波高値情報)をX(MeV)とする。この波高値情報は、放射線検出器1Bから出力されたγ線検出信号の波高値情報であって、このγ線検出信号を発生させる、放射線検出器1Bに入射されたγ線のエネルギーによって定まる。X及びXが、a≦X≦a、且つb≦X≦b(またはa≦X≦a、且つb≦X≦b)を満足する場合はCo−60によるγ線17の同時計数とみなす。本実施例では、aが1.0MeVに、a及びbを1.25MeVに、及びbを1.5MeVに設定する。
【0101】
≦X≦a、且つb≦X≦b(またはa≦X≦a、且つb≦X≦b)を用いた同時計数は、放射能演算装置6Aで行われる。a≦X≦a、且つb≦X≦bによる同時計数処理を、例にとって、放射能演算装置6Aで行われる同時計数処理について説明する。この同時計数処理は、パルス信号Aが第1カウント部及びパルス信号Bが第2カウント部に入力される前で、放射能演算装置6Aの同時計数処理部で行われる。この同時計数処理部は、入力したパルス信号Aの波高値情報をXがa≦X≦aを満足しており、且つ入力したパルス信号Bの波高値情報をXがb≦X≦bを満足しているかを判定する。このとき、同時計数処理部は、そのパルス信号Aのタイミングtの情報、及びそのパルス信号Bのタイミングtの情報が、同時計数処理装置5と同様に、時間ウインドウ39に入っているかを判定する。各パルス信号のタイミングtが時間ウインドウ39に入ってa≦X≦a、且つb≦X≦bを満足するとき、放射能演算装置6Aの同時計数処理部は、タイミングtのパルス信号A,Bが同時に発生したと判定する。そして、このパルス信号Aが第1カウント部でカウントされ、このパルス信号Bが第2カウント部でカウントされる。もし、同時計数処理部が、パルス信号A,Bに対してa≦X≦a及びb≦X≦bの少なくとも1つを満足しない場合には、タイミングtのパルス信号A,Bが同時に発生したものではないと、判定する。この場合、パルス信号Aの第1カウント部でのカウント、及びパルス信号Bの第2カウント部でのカウントが行われない。これによって、偶発同時計数を生じたパルス信号A,Bを排除することができる。
【0102】
本実施例では、放射能演算装置6Aの演算部が、偶発同時計数のパルス信号Aを排除して第1カウント部でカウントして得られたパルス信号Aの計数値を用いてγ線エネルギースペクトル52の情報を作成し、偶発同時計数のパルス信号Bを排除して第2カウント部でカウントして得られたパルス信号Bの計数値を用いてγ線エネルギースペクトル53の情報を作成する。作成されたγ線エネルギースペクトル52,53の各情報は表示装置7に表示される。
【0103】
γ線エネルギースペクトル52,53によれば、Co−60から放射されたγ線17の同時計数ピーク54,55、及びγ線18によって生じるバックグラウンド分布56,57を確認することができる。
【0104】
放射能演算装置6Aは、同時計数ピーク54のネット計数値と同時計数ピーク55のネット計数値の平均値を同時計数率ncoinとし、この同時計数率ncoin、放射線検出効率α,α、放射線強度A及び変換係数Φを(1)式に代入して配管線量率Hを算出する。これにより、沸騰水型原子力プラントの運転時における再循環系配管12の線量率を得ることができる。
【0105】
本実施例は、実施例2で生じる各効果を得ることができる。また、時間及びエネルギーチャネル情報に基づいた同時計数値の導出が可能となるので、効果的に偶発同時計数を除去することができ、沸騰水型原子力プラントの運転時において短半減期核種10を含む炉水が流れる再循環系配管12の線量率をさらに精度良く測定することができる。本実施例では、放射能演算装置6Aの同時計数処理部で、パルス信号A,Bの波高値情報に基づいてパルス信号A,Bの同時計数を行っているので、偶発同時計数のパルス信号A,Bをさらに排除することができ、短半減期核種10を含む炉水が流れる再循環系配管12の線量率の精度をさらに向上させることができる。
【実施例4】
【0106】
本発明の他の実施例である実施例4の線量率監視方法を、図12を用いて説明する。本実施例の線量率監視方法に用いる配管線量率監視装置16Bは、実施例1で用いた配管線量率監視装置16において放射線検出装置14を放射線検出装置14Aに替えた構成を有する。配管線量率監視装置16Bの他の構成は配管線量率監視装置16と同じである。
【0107】
本実施例においても、配管線量率監視装置16Bは、沸騰水型原子力プラントの再循環系配管12の配管線量率を計測するために用いられる。配管線量率監視装置16Bの放射線検出装置14Aは、再循環系配管12の配管線量率を計測するために、再循環系配管12、具体的には、再循環系配管12を取り囲んでいる保温材11の表面から所定の距離だけ離れた位置に設置される。このような配置状態で、放射線検出器1Aの前面に位置するコリメータ3、及び放射線検出器1Bの前面に位置するコリメータ3のそれぞれの中心軸59の延長線が、再循環系配管12の中心軸60を通っている。放射線検出装置14Aの遮蔽体2には、各コリメータ3が、これらのコリメータの各中心軸59の延長線が配管線量率の計測対象である再循環系配管12の中心軸60を通ることが可能なように、傾斜して形成されている。
【0108】
本実施例の線量率監視方法では、遮蔽体2に形成された各コリメータ3のそれぞれの中心軸59の延長線が再循環系配管12の中心軸60を通るように、放射線検出装置14Aが再循環系配管12に対して配置される。本実施例の線量率監視方法は、沸騰水型原子力プラントの運転時において、配管線量率監視装置16Bを用いて実施例1と同様に行われ、配管線量率が求められる。本実施例では、コリメータの見込み範囲8A,8Bは、大部分が重なっている。
【0109】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例では、各コリメータ3のそれぞれの中心軸59が再循環系配管12の中心軸60を向いて放射線検出装置14Aを配置しているので、各コリメータ3に対する、コリメータ見込み範囲から求められる立体角に基づく幾何効率を、同じに取扱うことが可能になる。このため、配管線量率を算出する放射能演算が簡素化できる。
【実施例5】
【0110】
本発明の他の実施例である実施例5の線量率監視方法を、図13を用いて説明する。本実施例の線量率監視方法に用いる配管線量率監視装置16Cは、実施例1で用いた配管線量率監視装置16において放射線検出装置14を放射線検出装置14Bに替えた構成を有する。配管線量率監視装置16Cの他の構成は配管線量率監視装置16と同じである。
【0111】
放射線検出装置14Bでは、遮蔽体2内に放射線検出器1A,1Bを設置している構造は放射線検出装置14と同じである。放射線検出器1A,1Bのそれぞれの前面に形成されたコリメータ65は、放射線検出装置14と異なり、互いに平行になるように形成されている。各コリメータ65のコリメータ見込み範囲65A,66Bは、一部が重なっている。
【0112】
放射線検出装置14Bは、放射線検出器1A,1Bが沸騰水型原子力プラントの再循環系配管12の方を向くように配置される。本実施例の線量率監視方法は、沸騰水型原子力プラントの運転時において、配管線量率監視装置16Cを用いて実施例1と同様に行われ、配管線量率が求められる。
【0113】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、コリメータ65が平行に形成されているので、遮蔽体2におけるコリメータ65の製作が傾斜しているコリメータ3よりも容易になる。
【実施例6】
【0114】
本発明の他の実施例である実施例6の線量率監視方法を、図14を用いて説明する。本実施例の線量率監視方法に用いる配管線量率監視装置16Dは、実施例1で用いた配管線量率監視装置16において放射線検出装置14を放射線検出装置14Cに替えた構成を有する。配管線量率監視装置16Dの他の構成は配管線量率監視装置16と同じである。
【0115】
配管線量率監視装置16Dの放射線検出装置14Cは、1つのコリメータ71を遮蔽体2に形成し、このコリメータ71の軸心方向に放射線検出器1A,1Bを並べて配置している。例えば、放射線検出器1Aを放射線検出器1Bの前面に配置している。コリメータ71が放射線検出器1Aから遮蔽体2の一側面に向って伸びており、その一側面に開口している。放射線検出器1A,1Bの見込み範囲70は共通である。
【0116】
放射線検出装置14Cは、コリメータ71が沸騰水型原子力プラントの再循環系配管12の方を向くように配置される。本実施例の線量率監視方法は、沸騰水型原子力プラントの運転時において、配管線量率監視装置16Dを用いて実施例1と同様に行われ、配管線量率が求められる。
【0117】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、1つのコリメータ71を遮蔽体2に形成すればよいので、放射線検出装置14Cの遮蔽体2を、実施例1で用いる放射線検出装置14の遮蔽体2よりも小さくすることができ、放射線検出装置14Cを小型化することができる。このため、放射線検出装置14Cを、放射線計測対象の配管の周囲に形成された狭隘部にも配置することができる。
【実施例7】
【0118】
本発明の他の実施例である実施例7の線量率監視方法を、図15を用いて説明する。本実施例の線量率監視方法において、実施例1と同様に、配管線量率監視装置16の放射線検出装置14が、原子炉格納容器20内で1系統の再循環系配管12の側に配置され、配管線量率監視装置16Eの放射線検出装置14が、原子炉格納容器20内で他の系統の再循環系配管12の側に配置される。
【0119】
配管線量率監視装置16,16Eのそれぞれの放射線検出器1A,1Bは、それぞれ、再循環系配管12の、放射線検出器1Aのコリメータ見込み範囲8A,8Bに存在する測定対象核種9(例えば、C0−60)から放射されたγ線17、及び再循環系配管12内を流れている炉水に含まれた短半減期核種10(例えば、N−16)から放射されたγ線18を検出し、それぞれγ線検出信号を出力する。配管線量率監視装置16,16Eは、沸騰水型原子力プラントの運転時において放射線検出器1A,1Bから出力されたγ線検出信号を用いて、実施例1と同様に、再循環系配管12の配管線量率を求める。
【0120】
本実施例の線量率監視方法は、配管線量率監視装置16,16Eで計測された配管線量率に基づいて、給水配管26への亜鉛の注入量を制御する。このため、亜鉛注入装置70が給水配管26に設けられる。亜鉛注入装置70は、亜鉛イオンを含む溶液が充填されたタンク71、注入配管72及び流量調節弁73を備える。流量調節弁73が設けられた注入配管72が、タンク71と給水配管26を接続する。沸騰水型原子力プラントの運転時において、配管線量率監視装置16,16Eで計測された配管線量率は、水質制御装置69に入力される。
【0121】
流量調節弁73が開くと、タンク71内の亜鉛イオンを含む溶液が、注入配管72を通って給水配管26内を流れる給水に注入される。亜鉛イオンを含む溶液が注入された給水が原子炉圧力容器21内に供給され、亜鉛イオンが炉水に注入される。炉水の亜鉛イオン濃度は、配管線量率の主たる支配因子となる炉水のCo−60濃度、及び炉水が流れる配管内面へのCo−60の付着挙動と密接な関係があることが知られている。
【0122】
水質制御装置69は、配管線量率監視装置16,16Eから入力した配管線量率に基づいて、流量調節弁73の開度を調節し、給水に注入する亜鉛イオンを含む溶液の注入量を制御する。水質制御装置69によるこの注入量の制御は、水質制御装置69が、配管線量率の時間的な変化量と亜鉛イオンを含む溶液の注入量の相関関係に基づいて、配管線量率の時間的な増加量を小さくするように、流量調節弁73の開度を制御する。この制御は、例えば、再循環系配管12の内面に付着する放射性核種の量を低減する。結果として、沸騰水型原子力プラントの運転停止後における定期検査時の配管線量率を確実に低くすることができる。定期検査時における保守点検作業に従事する作業員の被ばくを低減する。
【0123】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0124】
亜鉛注入装置70の替りに鉄注入装置を給水配管26に設け、この鉄注入装置から鉄イオンを含む溶液を給水配管26に注入してもよい。鉄注入装置を設けた場合には、水質制御装置69が、鉄注入装置に設けられた流量調節弁の開度を制御し、給水に注入する鉄イオンを含む溶液の注入量を調節する。鉄イオンを含む溶液の注入量を調節によっても、亜鉛イオンを含む溶液の注入と同様に、例えば、再循環系配管12の内面に付着する放射性核種の量を低減することができる。
【実施例8】
【0125】
本発明の他の実施例である実施例8の線量率監視方法を、図1を用いて説明する。本実施例の線量率監視方法に用いる配管線量率監視装置16は、エネルギー弁別装置4A,4B、同時計数処理装置5、及び放射能演算装置6が10cps以上の計数性能を有している。
【0126】
本実施例の線量率監視方法では、放射線検出器1A,1Bが、再循環系配管12の側に設置され、沸騰水型原子力プラントの運転時において再循環系配管12から放射されるγ線17,18を検出し、γ線検出信号を出力する。これらのγ線検出信号がエネルギー弁別装置4A,4Bに入力され、同時計数処理装置5がエネルギー弁別装置4A,4Bから出力されたパルス信号に基づいて同時計数を行い、放射能演算装置6が同時計数処理装置5から出力された同時計数信号を用いて、実施例1と同様に、配管線量率を算出する。
【0127】
エネルギー弁別装置4A,4B、同時計数処理装置5、及び放射能演算装置6が10cps以上の計数性能を有しているので、単位時間に処理できる放射線情報を増加することができる。これによって、コリメータ長の短縮、コリメータ直径の拡大、遮蔽体2の小型化が可能となる。したがって、配管線量率監視装置1における配管線量率の計測時間の短縮化、放射線検出装置14の小型軽量化、及びデータ処理の高速化が達成される。
【0128】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
【0129】
実施例1〜8では、測定対象核種9がCo−58である場合でも、前述したCo−60の場合と同様に再循環系配管12の線量率を計測することができる。
【0130】
上記した各実施例では、沸騰水型原子力プラントの再循環系配管12を対象に放射線計測を行っているが、配管線量率監視装置16は、沸騰水型原子力プラントの運転時において炉水が流れる浄化系配管20、及び炉水をサンプリングする高温部サンプリングライン及び原子炉再循環系サンプリングラインのそれぞれの配管における放射線計測に適用することができる。
【0131】
さらには、実施例1〜8の線量率監視方法は、沸騰水型原子力プラントだけでなく、加圧水型原子力プラントの原子炉と蒸気発生器を連絡して炉水が流れる冷却水配管、高速増殖炉プラントの原子炉と中間熱交換器を接続して液体ナトリウムが流れる一次冷却系配管に適用することができる。また、配管だけでなく、沸騰水型原子力プラントの浄化系配管に設けられて炉水が流れる、再生熱交換器のシェルの線量率を計測するのに、実施例1〜8の線量率監視方法を適用することができる。実施例1〜8の線量率監視方法は、原子力プラントにおいて、原子力プラントの運転時における、放射性物質を含む液体が流れる配管及び機器の線量率の計測に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、沸騰水型原子力プラント等の原子力プラントにおける配管及び機器の線量率の計測に適用することができる。
【符号の説明】
【0133】
1A、1B…放射線検出器、2…遮蔽体、3,61,65,71…コリメータ、4A,4B…エネルギー弁別装置、5…同時計数処理装置、6…放射能演算装置、9…測定対象核種、10…短半減期核種、11…保温材、12…再循環系配管、14,14A,14B,14C…放射線検出装置、15,15A,15B…放射線計測装置、16,16A,16B,16C,16D,16E…配管線量率監視装置、20…原子炉格納容器、21…原子炉圧力容器、23…浄化系配管、69…水質制御装置、70…亜鉛注入装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に放射性核種を含む液体が流れる放射線検出対象物に対向させて複数の放射線検出器を配置し、
前記放射線検出対象物を有する放射性物質取り扱い施設の運転時に、前記放射線検出対象物の内面に付着した測定対象核種及び前記放射線検出対象物内を流れる前記液体に含まれる短半減期核種から放射される各γ線を、前記複数の放射線検出器で検出し、
前記γ線の検出によって各前記放射線検出器から出力されるγ線検出信号を、それぞれの前記放射線検出器に別々に接続される各エネルギー弁別装置に入力し、
各々の前記エネルギー弁別装置が、前記γ線のエネルギーである0.4MeVに対応する第1設定波高値から、前記γ線のエネルギーである2.0MeVに対応する第2設定波高値までの範囲に存在する波高値を有する前記入力したγ線検出信号を出力し、前記第1設定波高値未満である波高値を有する前記入力したγ線検出信号及び前記第2設定波高値を超える波高値を有する前記入力したγ線検出信号を除去し、
前記各々のエネルギー弁別装置からの各前記γ線検出信号による同時計数を行い、
前記各γ線検出信号が同時計数されたときに生成される同時計数信号に基づいて前記放射線検出対象物の線量率を求めることを特徴とする線量率監視方法。
【請求項2】
放射線遮蔽体内に設置された前記複数の放射線検出器のそれぞれの前面で前記放射線検出器毎に前記放射線遮蔽体に形成された各コリメータの、前記放射線検出対象物を見込む範囲が、少なくとも一部で重なっている請求項1に記載の線量率監視方法。
【請求項3】
前記放射線検出対象物が前記放射性物質取り扱い施設において前記液体が流れる配管及び機器の少なくとも一方である請求項1または2に記載の線量率監視方法。
【請求項4】
前記測定対象核種がカスケードγ線を放射する放射性核種である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の線量率監視方法。
【請求項5】
前記カスケードγ線を放射する放射性核種がCo−58及びCo−60の少なくとも1つである請求項4に記載の線量率監視方法。
【請求項6】
それぞれの前記コリメータの中心軸が前記放射線検出対象物の中心軸を向いている請求項2に記載の線量率監視方法。
【請求項7】
それぞれの前記コリメータが実質的に平衡に配置されている請求項2に記載の線量率監視方法。
【請求項8】
放射線遮蔽体内に形成された1つのコリメータの軸心の方向に前記複数の放射線検出器が前記コリメータの軸心の方向に並んで配置されており、前記複数の放射線検出器の前面に配置された前記コリメータの軸心が前記放射線検出対象物を向いている請求項1に記載の線量率監視方法。
【請求項9】
前記同時計数信号をカウントして得られる同時計数率をncoin、前記複数の放射線検出器の個数をN個(N≧2)、放射線強度をA、放射線検出効率をα、補正計数をk、及び放射線強度Aを等価線量に変換する変換係数をΦとし、放射線検出効率αが、N個の前記放射線検出器の検出効率ε、前記コリメータによって定まる幾何効率Ω及び前記放射線遮蔽体による遮蔽効率dに基づいて求められるとき、前記放射線検出対象物の線量率Hが下記の式に
【数1】

よって求められる請求項2及び6ないし8のいずれか1項に記載の線量率監視方法。
【請求項10】
内部に放射性核種を含む液体が流れる放射線検出対象物に対向させて複数の放射線検出器を配置し、
前記放射線検出対象物を有する放射性物質取り扱い施設の運転時に、前記放射線検出対象物の内面に付着した測定対象核種及び前記放射線検出対象物内を流れる前記液体に含まれる短半減期核種から放射される各γ線を、前記複数の放射線検出器で検出し、
前記γ線の検出によって各前記放射線検出器から出力されるγ線検出信号を、それぞれの前記放射線検出器に別々に接続される各エネルギー弁別装置に入力し、
各々の前記エネルギー弁別装置が、前記γ線のエネルギーである0.4MeVに対応する第1設定波高値から、前記γ線のエネルギーである2.0MeVに対応する第2設定波高値までの範囲に存在する波高値を有する前記入力したγ線検出信号を出力し、前記第1設定波高値未満である波高値を有する前記入力したγ線検出信号及び前記第2設定波高値を超える波高値を有する前記入力したγ線検出信号を除去し、
同時計数処理装置が、前記各々のエネルギー弁別装置から出力された各前記γ線検出信号による同時計数を行い、これらのγ線検出信号が同時計数されたときに同時計数信号を出力し、
前記複数の放射線検出器のうちの1つの前記放射線検出器からの前記γ線検出信号を入力する第1ゲート装置が、前記同時計数信号を入力したとき、入力した前記γ線検出信号を出力し、
前記複数の放射線検出器のうちの他の前記放射線検出器からの前記γ線検出信号を入力する第2ゲート装置が、前記同時計数信号を入力したとき、入力した前記γ線検出信号を出力し、
前記第1及び第2ゲート装置からそれぞれ出力された前記γ線検出信号に基づいて前記放射線検出対象物の線量率を求めることを特徴とする線量率監視方法。
【請求項11】
第1放射線検出器及び第2放射線検出器と、
前記第1放射線検出器に接続されてγ線の入射により前記第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号を入力し、前記γ線のエネルギーである0.4MeVに対応する第1設定波高値から、前記γ線のエネルギーである2.0MeVに対応する第2設定波高値までの範囲に存在する波高値を有する前記入力した第1γ線検出信号を出力し、前記第1設定波高値未満である波高値を有する前記入力した第1γ線検出信号及び前記第2設定波高値を超える波高値を有する前記入力した第1γ線検出信号を除去する第1エネルギー弁別装置と、
前記第2放射線検出器に接続されてγ線の入射により前記第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を入力し、前記第1設定波高値から前記第2設定波高値までの範囲に存在する波高値を有する前記入力した第2γ線検出信号を出力し、前記第1設定波高値未満である波高値を有する前記入力した第2γ線検出信号及び前記第2設定波高値を超える波高値を有する前記入力した第2γ線検出信号を除去する第2エネルギー弁別装置と、
前記第1エネルギー弁別装置及び前記第2エネルギー弁別装置に接続され、前記第1エネルギー弁別装置から出力される前記第1γ線検出信号と前記第2エネルギー弁別装置から出力される前記第2γ線検出信号の同時計数を行い、前記各γ線検出信号が同時計数されたときに同時計数信号を出力する同時計数処理装置と、
前記同時計数処理装置に接続され、前記同時計数信号に基づいて前記放射線検出対象物の線量率を求める演算装置とを備えたことを特徴とする線量率監視装置。
【請求項12】
第1放射線検出器及び第2放射線検出器と、
前記第1放射線検出器に接続されてγ線の入射により前記第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号を入力し、前記γ線のエネルギーである0.4MeVに対応する第1設定波高値から、前記γ線のエネルギーである2.0MeVに対応する第2設定波高値までの範囲に存在する波高値を有する前記入力した第1γ線検出信号を出力し、前記第1設定波高値未満である波高値を有する前記入力した第1γ線検出信号及び前記第2設定波高値を超える波高値を有する前記入力した第1γ線検出信号を除去する第1エネルギー弁別装置と、
前記第2放射線検出器に接続されてγ線の入射により前記第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を入力し、前記第1設定波高値から前記第2設定波高値までの範囲に存在する波高値を有する前記入力した第2γ線検出信号を出力し、前記第1設定波高値未満である波高値を有する前記入力した第2γ線検出信号及び前記第2設定波高値を超える波高値を有する前記入力した第2γ線検出信号を除去する第2エネルギー弁別装置と、
前記第1エネルギー弁別装置及び前記第2エネルギー弁別装置に接続され、前記第1エネルギー弁別装置から出力される前記第1γ線検出信号と前記第2エネルギー弁別装置から出力される前記第2γ線検出信号の同時計数を行い、前記各γ線検出信号が同時計数されたときに同時計数信号を出力する同時計数処理装置と、
前記第1放射線検出器及び前記同時計数処理装置に接続されて前記第1放射線検出器から出力される前記第1γ線検出信号を入力し、前記同時計数処理装置から前記同時計数信号を入力したとき、この第1γ線検出信号を出力する第1ゲート装置と、
前記第2放射線検出器及び前記同時計数処理装置に接続されて前記第2放射線検出器から出力される前記第2γ線検出信号を入力し、前記同時計数処理装置から前記同時計数信号を入力したとき、この第2γ線検出信号を出力する第2ゲート装置と、
前記第1ゲート装置及び前記第2ゲート装置に接続され、前記第1ゲート装置から出力される前記第1γ線検出信号及び前記第2ゲート装置から出力される前記第2γ線検出信号に基づいて前記放射線検出対象物の線量率を求める演算装置とを備えたことを特徴とする線量率監視装置。
【請求項13】
前記第1放射線検出器及び前記第2放射線検出器が放射線遮蔽体内に設置され、それぞれの前記放射線検出器の前面で前記放射線検出器毎にコリメータが前記放射線遮蔽体に形成された請求項11または12に記載の線量率監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−252817(P2011−252817A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127578(P2010−127578)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】