説明

線量計

【課題】 被検者に装着することが可能なコンパクトかつ軽量で、測定結果を無線送信することにより緊急事態が発生したような場合であっても迅速かつ確実に対応させることができる線量計を提供できる。
【解決手段】 被検者の身体に直接装着可能な線量計であって、放射線量を検知可能な放射線検出センサ120と、被検者の姿勢を検出する3次元加速度センサ150と、放射線検出センサ120での検出積算値を一定間隔で無線送信する通信制御部160と、動作電力を供給する電池(電源部)180と、前記各構成を収納保持するための合成樹脂で形成された収納ケース100と、収納ケース100を被検者に装着する装着手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線被曝量を検出して無線送信可能な線量計に関し、例えば被検者に直接装着する無線送信可能な線量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の排出量が問題となり、従来の火力発電などに代えて二酸化炭素排出量の少ない原子力発電が注目されてきている。また、従来より稼働されてきた原子力発電所の耐用年数切れも問題視されるようになってきた。更に、稼働中の原子力設備の放射能漏れに対する対策も万全を期す必要がある。
【0003】
特に、放射線は被曝すると重大な影響を受けるため、原子力施設で働く者や放射線被曝の機会が多い放射線技師などは特に被曝量の把握・管理が重要である。原子力発電所や原子力船舶などでは、大量の放射線に被曝する可能性も否定できず、健康上重大な結果をもたらす可能性があった。
【0004】
従来の被曝量の管理は、放射線被曝環境で作業などを行う原子力施設に立ち入る者や放射線技師に、かならず線量計の所持を義務化して、管理区域内での被曝量を管理させている。このため、作業者の作業衣等に線量計の収納箇所を設け、この中に線量計を収納して携帯させるようにしていた。
【0005】
そして、管理区域から退避するときなどに作業衣の中から線量計を取り出して被曝量管理装置等にセットして被曝量を読み取るか、あるいは線量計に被曝量表示機能を備え、これを読みとって被曝量管理装置などに入力しなければならなかった。
【0006】
これを解消するため、特許文献1に記載の線量計は、放射線検出器と検出器が検出した線量値を計数して被曝線量を求める機能と、至近距離無線通信機能を備え、作業者が線量計をいちいち手にとって操作することなく、作業衣に収納したまま処理装置に近接させるだけで被曝量等の計測値をデータ通信できる技術を開示していた。
【0007】
特許文献2に記載の線量計は、特許文献1と同様に、放射線検出器と検出器が検出した線量値を計数して被曝線量を求める機能と、無線通信機能を備え、作業者が線量計をいちいち手にとって操作することなく、作業衣に収納したまま処理装置に被曝量等の計測値をデータ通信できる技術を開示していた。
【0008】
また、特許文献2に記載の発明は線量計とは全く別に、独自に生体情報のみを収集する生体情報収集装置を腕に巻き付けてこの装置より生体情報を検出する構成を開示していた。
【0009】
特許文献3に記載の線量計は、一般の人の個人被爆量を正確に測定するために、腕時計の中に放射線被曝量を測定する放射線センサとセンサの検出結果を積算して記憶する記憶部を内蔵させた技術を開示する。そして、通常の被曝量検出動作とは別個に送信モードを備え、送信モードを選択すると記憶部に記憶されている被曝量を送信する技術を開示していた。
【0010】
特許文献4は、放射線被曝量を測定して測定結果を表示する腕時計形個人線量計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−35864号公報
【特許文献2】特開2003−14847号公報
【特許文献3】特開平11−190775号公報
【特許文献4】意匠登録第1195533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の線量計は、作業衣の収納部内に収納して持ち運びすることが前提であり、大型のケース内に収納されていた。そして、人間が被曝量を目視確認できるように具体的な数値で表示しており、この面でもケースの大型化を招いていた。被曝量についても、被曝量管理装置等の読み取り部に近接させなければならず、被曝量の遠隔監視などは全く考慮していないものであった。
【0013】
特許文献2に記載の線量計は、被曝量を遠隔監視できるものの、作業衣の収納部内に収納して持ち運びすることが前提であり、被検者に装着することを前提としていない、大型のケース内に収納されていた線量計を開示するに過ぎなかった。のみならず、図3に示された様に、被検者に装着しているのは、頭部にベルトで固定した装置、腰ベルトに固定した装置、腕に固定した装置等何れも大型の見るからに動きにくそうな装置ばかりであり、被検者の負荷について全く考慮することがない技術を開示するに過ぎなかった。
【0014】
さらに、特許文献3は、個人使用を前提とした線量計であり、緊急事態の発生を監視することなどは全く念頭にない、不具合の発生などについて全く考慮されていない発明であり、装着者の被曝量が異常となったときに警報音を出力するのみであった。また、被曝量送信機能は開示されているが、被爆者が自ら特別の操作をしなければ送信できず、被曝状態を遠隔監視するといったことは全く考慮されていなかった。
【0015】
特許文献4は、単に線量計を手首に装着する技術を開示するに過ぎず、被曝量の遠隔監視などは全く不可能な技術を開示するに過ぎなかった。
【0016】
このように、特許文献1乃至3は無線送信状況の変化などには全く考慮が成されておらず、させることがなかった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記従来技術の課題を解決することを目的としてなされたもので、合成樹脂製のケース内に主構成を収納し、被検者に装着することにより、電波の出射方向に遮蔽物がくることのない、確実に被曝データを送ることができる、また、装着による被検者の負荷を軽減することができる線量計を提供することを目的とする。係る目的を達成する一手段として以下の構成を備える。
【0018】
即ち、被検者の身体に直接装着可能な線量計であって、放射線量を検知可能な放射線検出センサと、前記放射線検出センサでの検出値を一定間隔で無線送信する無線通信手段と、動作電力を供給する電力供給手段と、前記各手段を収納保持するための合成樹脂で形成された収納ケースと、前記収納ケースを被検者に装着する装着手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
そして例えば、前記装着手段は、前記収納ケースに取り付けられる装着ベルトであり、被検者の手首に巻回して装着することを特徴とする。
【0020】
また例えば、前記装着手段は前記収納ケースより側面に延出する体表面に前記収納ケースを貼着する貼着パットであることを特徴とする。
【0021】
さらに例えば、前記放射線検出センサで検出した放射線量を積算する積算手段を備え、前記無線通信手段は前記積算手段の積算量を一定間隔で送信することを特徴とする。
【0022】
また例えば、前記無線送信手段はほぼ一定間隔で送信することを特徴とする。あるいは、前記無線送信手段は、特有の特定情報を付加して送信することを特徴とする。
【0023】
さらに例えば、前記無線送信手段は情報の送信毎に歩進する送信番号を付加して送信することを特徴とする。あるいは、前記放射線検出センサは、γ線(ガンマ線)空間線量を検出可能なシリコン半導体検出センサであることを特徴とする
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、被検者に負荷を与えることなく装着することが可能なコンパクトかつ軽量の線量計を提供できるのみならず、被曝状況を管理している装置などに放射線被曝量を迅速かつ確実に報知することができ、緊急事態が発生したような場合であっても迅速かつ確実に対応させることができる線量計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にかかる第1の実施の形態例の外観形状を示す図である。
【0026】
【図2】本実施の形態例の詳細構成を示すブロック図である。
【0027】
【図3】本発明に係る第2の実施の形態例の詳細構成を示すブロック図である。
【0028】
【図4】本発明に係る第3の実施の形態例の線量計の被検者への装着状態を示す図である。
【0029】
【図5】第3の実施の形態例の線量計の外観形状例を示す図である。
【0030】
【図6】第3の実施の形態例の心電電極の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
100、500 線量計ケース
110、310 制御部
120 放射線検出センサ
130 被曝量積算部
150 3次元加速度センサ
160、330 通信制御部
170 音響出力部
180 電源部
185 電源スイッチ
190、340 表示部
210 温度センサ
220、600 心電電極
300 生体監視装置
320 被検者情報管理部
350 入力部
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明に係る一発明の実施の形態例を詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する構成要素の相対配置、数値等に何ら限定されるものではなく、特に特定的な記載がない限り本発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨ではない。
【0033】
〔第1の実施の形態例〕
本発明に係る一実施の形態例として、時計形ケース内に各構成要素を収納した例を説明する。図1は本実施の形態例の外観形状を示す図、図2は詳細構成を示すブロック図である。
【0034】
図1において、100は本実施の形態例の線量計ケースであり、例えば合成樹脂(プラスチック)で形成されている。合成樹脂としてはポリスチレン系合成樹脂、或いは、ポリメチルメタクリレート系合成樹脂を使用することができる。
【0035】
大きさとしては、例えば、最大でも40×40×10mm程度以下の軽量小型の大きさとする。線量計ケース100において、185は電源スイッチ、195は表示部である発光ダイオード確認窓である。
【0036】
また、210、220は装着ベルトであり、215は尾錠、216はつく棒、217は游革、225はベルト孔である。装着ベルトを手首に巻き付けて適切なベルト孔に尾錠のつく棒を挿入して、腕時計ベルトのように装着して用いる。
【0037】
これにより、作業衣の収納ポケット等に出し入れする必要がなく、しかも体を良く動かすような環境であっても、確実に所持者の体に直接装着でき、作業性が向上する。
【0038】
図1に示す線量計の詳細構成を図2を参照して以下に説明する。図2において、110は線量計の全体制御を司る制御部であり、例えばマイクロプロセッサとメモリ、入出力インタフェース部などを備えている。各線量計にはそれぞれ固有の識別番号、例えば14桁の識別番号が付与されており、制御部110が管理している。
【0039】
120は放射線量を検出する放射線検出センサである。放射線検出センサ120としては、X線、α線、β線、γ線、中性子線の少なくとも一つを定量的に検出するものが望ましく、小形軽量化が可能な半導体検出器を用いることが望ましい。半導体検出器は、逆バイアスを与えられたP−N接合ダイオードであり、入射放射線のエネルギーに比例したパルス電流を生成することにより放射線被曝量を検出できる。
【0040】
本実施の形態例では、エネルギー範囲40KeV〜3MeVのγ(X)線量を検出できるアロカ株式会社製のポケットサーベイメータに使用している半導体検出器を用いることとしている。
【0041】
130は被曝量積算部であり、放射線検出センサ120で検出した放射線量(放射線検出値)の積算値を求める。なお、被曝量積算部130は制御部110に内蔵されていても、放射線検出センサ120と一体に構成されていてもよい。
【0042】
150は3次元加速度センサであり、本装置装着者の3次元の動きを検出してX方向、Y方向、Z方向のそれぞれの3方向の検出電圧値を出力する。加速度センサ150としては、例えばKionix社製のKXM52シリーズを適用できる。KXM52シリーズの加速度センサであればほぼ5mm×5mm×1.8mmの小形DFNパッケージであり、線量計も小型の構成とできる。
【0043】
160は通信制御部であり、制御部110の制御下で被曝量積算部130の保持する被曝量と3次元加速度センサ150の検出値を生体監視装置300の通信制御部330に一定の間隔でデータ伝送する。データ伝送は、例えば2.4GHzの周波数で行われる。
【0044】
線量計100が検出値を送信する間隔は、任意で良く数mS間隔であっても、数十mS間隔でも、数百mS間隔であってもよい。
【0045】
170は音響出力部であり、被曝量が予め設定された閾値を超えた場合や電源部の容量低下など、正常動作が保証できない状態になったときに例えば警報音を出力する。検知した状態により音響出力パターンを変化させることにより、より詳細に線量計の状態を報知できる。
【0046】
なお、この音響出力部170は必ず備えなければならないものではなく、通常のものでは省略し、特に緊急性を最優先する、原子炉解体現場などで用いられる場合などに限定して備えるようにすることがより望ましい。
【0047】
180は電源部であり、本実施の形態例ではボタン電池を採用している。しかし、電池に限定されるものではなく、必要な電力供給が可能であれば1次電池であるか2次電池であるかも問わない。
【0048】
185は電源スイッチであり、本実施の形態例に動作電源を供給するか否かを指示する。190は表示部であり、例えば発光ダイオードが含まれ、発光しているか否かで動作状態を示している。しかし、以上の例に限定されるものではなく、赤と青等の2種の発光ダイオードを備え、どちらを表示するかで被検者の状態を容易に目視確認できるようにしてもよい。
【0049】
300は線量計からの線量データなどを受け取って被検者の状態管理を行っている生体監視装置である。生体監視装置300において、310は全体制御を司る制御部、320は作業者毎の放射線被曝量や動作状態を管理する被検者情報管理部である。
【0050】
330は線量計100とのデータ通信を行う通信制御部であり、線量計100より一定間隔で送られてくる被曝量や被検者の状態を示す情報などを受信する。
【0051】
340は表示部であり、生体情報管理部で管理している被検者毎の状態を読み出してきて表示すると共に、線量計100よりの被曝量や姿勢状態を表示する。更に緊急時のメッセージ表示なども行う。350は各種指示や情報を入力するキーボードあるいはカードリーダなどからなるデータ入力部である。
【0052】
通信制御部160、330間のデータ通信制御の詳細を以下に説明する。本実施の形態例では、線量計からは一定間隔でパケットデータを送信し、これを生体監視装置300で受信している。
【0053】
パケットには、予め各線量計毎に割り当てられている識別番号(送信元情報)格納領域、パケットを送信する毎に歩進される送信番号情報(位置情報)格納領域、線量計で測定した送信するべきデータ等が割り当てられているデータ格納領域、誤り訂正符号であるCRCデータを格納するCRC格納領域等からなり、データ格納領域に被曝量データと加速度センサの各方向データなどが格納される。
【0054】
生体監視装置300では、順次受信した線量計毎の受信データ変化をリアルタイムで監視すると共に、表示部340に表示している。
【0055】
以上説明したように本実施の形態例によれば、放射線検出センサを備える線量計を被検者にほとんど負荷を与えることなく装着することを可能とするのみならず、無線通信によりリアルタイムで測定データを管理装置に送ることができる。
【0056】
また、手首に装着して被曝量を検出することができ、最悪の事態が発生して被検者が足場を踏み外したり、被曝量が多かったりして倒れ込む様な事態となっても、確実に無線電波が周囲に送信でき、例えば作業服のポケットに収納した場合のように被検者の体の下になって送信電波が監視装置まで届かないような事態を未然に防止できる。
【0057】
さらに、放射線被曝量をリアルタイムで監視することが可能になるため、一部の領域における放射線被曝量の異常が発生しても、速やかに事態を把握することができるという優れた作用効果を奏することができる。
【0058】
このため、原子炉の立て替え工事等において、被検者の状態がリアルタイムで把握可能であり、事態の急変に迅速に対処できる。
【0059】
さらに、本実施の形態例の線量計は放射線の被曝量のみならず、3次元加速度センサを備えているため、装着されている被検者の状態や作業状態をリアルタイムで確実に把握することができる。このため、体の向きや動作状態が把握でき、作業状況を離れた場所から監視できると共に、不足の事態が起きて被検者の動きが止まったような場合にもその状況を的確かつ迅速に把握することができ、迅速に対応策をとることが可能となる。
【0060】
(第2の実施の形態例)
以上の説明は、放射線検出センサと加速度センサとを備える例を説明した。しかし、近時は各種のセンサ類の小型軽量化も進み、同じ大きさのケースの中にさらに数多くのセンサ類を具備させることが可能である。
【0061】
被検者に装着して使用することが可能な特徴を生かして、放射線検出センサと3次元加速度センサに加え、温度センサを備え、あるいはさらに被検者のこころの状態までも検出可能な心電センサを備える、本発明に係る第2の実施の形態例を図3を参照して以下説明する。
【0062】
図3は第2の実施の形態例の被検者の状態を検出可能な多機能線量計の詳細構成を示すブロック図である。図3において、上述した第1の実施の形態例と同様構成には同一番号を附し詳細説明を省略する。
【0063】
図3において、210が被検者の体表面温度(体温)を検出する温度センサであり、例えば温度により抵抗値が変化するサーミスタ素子を用いている。体温の検出方法は電子体温計などで公知であるため詳細説明を省略する。
【0064】
220は第2の実施の形態例の線量計ケース100に着脱自在に接続可能な心電センサを構成する生体電極(心電電極)、225は線量計ケースと生体電極を電気的に接続するためのコネクタである。
【0065】
心電電極220は、生体皮膚表面に貼着するため、繰り返しの使用により劣化するため、心電電極のみ取り替え使用可能にする必要があるためである。心電電極についても公知の一般的なものをそのまま適用でき、コネクタ225も使用する心電電極220の仕様に合わせたものとする。具体的には、例えば、日本光電工業製の「ディスポ電極Tビトロード」を使用できる。
【0066】
なお、以上に説明した心電電極220を備えると、心電図情報を検出できる部位に装着することが必要となる。しかしながら、必ずしも心電図情報を収集することにこだわることはなく、心電電極220を備えることなく、被検者の足首等、無線通信が確実に行える部位に装着しても、必要な情報を収集することができる。このように心電電極220を備えていない構成も本発明に含まれることは勿論である。
【0067】
第2の実施の形態例においても、被検者の直接装着することを前提としているため、小形軽量化することが求められる。このため、温度センサ210により検出した温度データ及び心電電極220での検出電位を記憶などすることなく、通信制御部160がデータ送信をするタイミングになった時点での検出温度データと心電電極220での検出電位、3次元加速度センサ150のX,Y,Zの各センサ検出とをそれぞれ読み取って送信パケットの予め設定された領域に格納して送信する。
【0068】
これにより、線量計が備える制御部110などの構成をより簡略化でき、消費電力の省電力化を達成すると共に、小形軽量化を達成している。このため多くの生体情報の収集を実現しながら、被検者に直接装着しても、被検者に余分な負荷を与えることがない、優れた線量計を提供できる。
【0069】
(第3の実施の形態例)
以上の説明は、主に線量計を被検者の手首に装着する例について説明した。しかし、本発明は以上の例に限定されるものではなく、装着位置に限定はない。しかしながら、第2の実施の形態例のように、心電図情報を収集可能な心電電極が備えられている線量計では、心電図情報として最も信頼性が高いのはやはり胸部から収集する心電信号である。
【0070】
線量計を胸部に装着する心電電極に取り付ける様にした本発明にかかる第3の実施の形態例を図4乃至図6を参照して説明する。図4は第3の実施の形態例の線量計の被検者への装着状態を説明するための図、図5は第3の実施の形態例の線量計の概略を示す図、図6は第3の実施の形態例の心電電極(生体電極)を説明するための図である。
【0071】
第3の実施の形態例においては、コネクタ225に代えてスナップボタンで生体電極と線量計とを結合している。その他の線量計の構成は第2の実施の形態例の図3に示す構成と全く同一の構成としているため線量計の詳細構成については説明を省略する。心電電極は、図6に示すように、剥離紙650と、裏面に生体電極及び生体への貼着用ゲルが配設されている電極パッド600とで構成されており、生体電極は接続端子であるスナップボタン610を介して表面側と電気的に接続されている。なお、図6において、630は線量計の装着位置ガイドである。
【0072】
第3の実施の形態例の線量計500は、図6に示す外形としている。そして、電極パッド600のスナップボタン610と係合する対となるスナップボタン510,520が設けられており、該スナップボタン510,520で電極パッド600に固定された状態に維持可能に構成されている。なお、185は電源スイッチ、190は表面側に設けられている表示部(発光ダイオード)である。
【0073】
被検者への装着は、例えば、図4に示すように、左胸上部の心臓の心室位置近傍に装着することにより、心臓の状態はより明瞭に判別できる心電図信号がえられる。また、線量計の形状も小さく、又合成樹脂製のケースとすることより軽量化を実現している。このため、線量計を被検者に装着した状態であっても、被検者に与えるストレスを最小限に抑えることができ、違和感なく日常とほぼ同じ状態の放射線被曝量及び生体情報を検出できる。
【0074】
以上説明したように第3の実施の形態例によれば、放射線の被曝量を測定可能とするのみならず、被検者の動きを検出することができ、どのような動きをしているか類推することが可能となり、被検者の作業状態を知ることができる。
【0075】
更に、体温や心電図情報を検出することも可能であり、心電図信号から心拍数も検出できることから、被検者の興奮状態なども把握することができ、作業現場の状態を知ることができる。このため、作業現場などで緊急事態が発生したような場合であっても、状況を知ることが可能になることが考えられ、あらゆる事態により広範囲に対応することが可能となる。
【0076】
これらのことは単に放射線の被曝量を検出できるのみではとうてい得られない優れた作用効果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の身体に直接装着可能な線量計であって、
放射線量を検知可能な放射線検出センサと、
前記放射線検出センサでの検出値を一定間隔で無線送信する無線通信手段と、
動作電力を供給する電力供給手段と、
前記各手段を収納保持するための合成樹脂で形成された収納ケースと、
前記収納ケースを被検者に装着する装着手段とを備えることを特徴とする線量計。
【請求項2】
前記装着手段は、前記収納ケースに取り付けられる装着ベルトであり、被検者の手首に巻回して装着することを特徴とする請求項1記載の線量計。
【請求項3】
前記装着手段は体表面に貼着可能な貼着パットであることを特徴とする請求項1記載の線量計。
【請求項4】
前記放射線検出センサで検出した放射線量を積算する積算手段を備え、前記無線通信手段は前記積算手段の積算量を一定間隔で送信することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の線量計。
【請求項5】
前記無線送信手段はほぼ一定間隔で送信することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の線量計。
【請求項6】
前記無線送信手段は、特有の特定情報を付加して送信することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の線量計。
【請求項7】
前記無線送信手段は情報の送信毎に歩進する送信番号を付加して送信することを特徴とする請求項6記載の線量計。
【請求項8】
前記放射線検出センサは、γ線(ガンマ線)空間線量を検出可能なシリコン半導体検出センサであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の線量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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