説明

締切り機構付き減圧弁

【課題】内部構造の複雑化を招くことなく、受圧デバイス側への高圧流体の過大な漏れを防止することのできる締切り機構付き減圧弁を提供する。
【解決手段】高圧側の一次側圧力室13と、受圧デバイス側の二次側圧力室14を連通孔17によって連通する。二次側圧力室14の圧力を受けるダイヤフラム19を設け、弁体18をダイヤフラム19に連結する。ダイヤフラム19は開弁スプリング20で開弁方向に付勢する。弁体18に対する閉弁荷重の増減切り換えが可能な荷重操作手段29を設ける。荷重操作手段29は、弁体18に対して離接可能なプランジャ26と、プランジャ26を付勢する閉弁スプリング27と、プランジャ26に、弁体18から離間する方向の磁気推力を作用させる電磁コイル28と、によって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、供給源側の高圧流体を所定圧力に減圧して受圧デバイスの存在する低圧通路に供給する減圧弁に関し、とりわけ、受圧デバイスの停止時等に供給源側から低圧通路側への高圧流体の漏れを防止する機能を備えた締切り機構付き減圧弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池においては、高圧水素を充填した水素タンクをアノード側の流体供給源として用いることがある。このような高圧流体を扱うシステムにおいては、高圧流体の供給源と受圧デバイスの間に減圧弁を介装し、流体供給源の高圧流体を減圧弁によって所定圧力に減圧して受圧デバイスに供給する。
【0003】
このような用途で用いられる減圧弁として、受圧デバイス側の圧力に応動するダイヤフラムを設け、このダイヤフラムと一体に変位する弁体によって連通孔(ガス流路)を開閉するものが知られている。この減圧弁は、受圧デバイス側での流体使用によって下流側の圧力が低下すると、ダイヤフラムがその圧力低下に応動して弁体を開弁作動させ、上流側の高圧流体を、連通孔を通して所定圧力に減圧し、下流側に流入させるようになっている。
【0004】
ところが、この種の減圧弁は、高圧流体の圧力調整(減圧)を目的としたものであるため、弁体と弁座(連通孔の周縁部)の間の密閉は完全なものではなく、受圧デバイス側での流体の流れが長時間停止する場合等には、上流側の高圧流体が弁体と弁座の隙間を通って受圧デバイスの存在する下流側に漏れてしまう。そして、この高圧流体の漏れによって下流側の圧力が増大し過ぎると、下流側の圧力が受圧デバイスの最大許容圧力を超えてしまう可能性が考えられる。
このため、この種の減圧弁を用いる場合には、減圧弁の上流側または下流側に遮断弁を設け、その遮断弁によって高圧流体の漏れを防止するようにしている。
【0005】
ところで、このように減圧弁と遮断弁を配管中に直列に設ける場合、配管上の設置スペースが大きくなってシステムの大型化を余儀なくされ、また、設置部品の増加によって組み付け工数も増加してしまう。
このため、これに対処する減圧弁として、減圧弁ブロックの内部に遮断弁機能(締切り機構)を組み込んだものが案出されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−117971号公報
【特許文献2】特許第3607998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の減圧弁においては、減圧弁ブロックの内部に複数種の弁機構がそれぞれ組み込まれることになるため、内部構造が複雑になり、製品の大型化やコストの高騰を招いてしまう。
【0008】
そこでこの発明は、内部構造の複雑化を招くことなく、受圧デバイス側への高圧流体の過大な漏れを防止することのできる締切り機構付き減圧弁を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る締切り機構付き減圧弁では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、高圧流体の供給源(例えば、実施形態の水素タンク2)側の通路に導通する一次側圧力室(例えば、実施形態の一次側圧力室13)と、受圧デバイス(例えば、実施形態の受圧デバイス7)側の低圧通路に導通する二次側圧力室(例えば、実施形態の二次側圧力室14)と、前記一次側圧力室と二次側圧力室とを連通する連通孔(例えば、実施形態の連通孔17)と、前記二次側圧力室の圧力を受ける受圧面(例えば、実施形態の受圧面19a)を有し、この受圧面に作用する前記二次側圧力室の圧力に応じて変位するダイヤフラム(例えば、実施形態のダイヤフラム19)と、このダイヤフラムと一体変位可能に連結され、前記連通孔を前記一次側圧力室側から開閉する弁体(例えば、実施形態の弁体18)と、前記ダイヤフラムを前記弁体が前記連通孔を開く方向に付勢する開弁スプリング(例えば、実施形態の開弁スプリング20)と、を備え、前記二次側圧力室の圧力が所定圧力以下に低下したときに、前記弁体が連通孔を開口することによって、前記一次側圧力室から二次側圧力室に高圧流体を減圧して流入させる締切り機構付き減圧弁であって、前記弁体に対する閉弁荷重の増減切り換えが可能な荷重操作手段(例えば、実施形態の荷重操作手段29)が設けられていることを特徴とするものである。
これにより、通常使用時には、荷重操作手段によって弁体に対する閉弁荷重を減少させることにより、弁体は、比較的低い閉弁荷重で連通孔を開くようになり、ダイヤフラムに作用する二次側圧力室の圧力に応動し、一次側圧力室の高圧流体を減圧して二次側圧力室側に流入させるようになる。受圧デバイスを長時間停止させる場合等には、荷重操作手段によって弁体に対する閉弁荷重を増大させる。この結果、弁体は閉弁状態に維持される。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る締切り機構付き減圧弁において、前記荷重操作手段は、前記弁体に対して進退自在に設けられたプランジャ(例えば、実施形態のプランジャ26)と、このプランジャを介して前記弁体に閉弁荷重を付与する閉弁スプリング(例えば、実施形態の閉弁スプリング27)と、前記プランジャに、前記弁体から離反する方向の磁気推力を作用させる電磁コイル(例えば、実施形態の電磁コイル28)と、を備え、前記電磁コイルの励磁とその解除によって前記閉弁荷重の増減切り換えを行うことを特徴とするものである。
これにより、通常使用時には、電磁コイルを励磁することにより、閉弁スプリングの付勢力に抗してプランジャを後退させ、閉弁スプリングによる閉弁荷重が弁体に作用しないようにする。この結果、弁体は、ダイヤフラムに作用する二次側圧力室の圧力と開弁スプリングの付勢力とのバランスに応じて作動する。また、受圧デバイスを長時間停止させる場合等には、電磁コイルの励磁を解除することにより、閉弁スプリングによる閉弁荷重を弁体に作用させる。この結果、弁体は閉弁状態に維持される。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る締切り機構付き減圧弁において、前記荷重操作手段は、前記弁体に対して前記一次側圧力室側から当接離反可能に設けられたシャフト(例えば、実施形態の操作シャフト31)と、回転駆動力を発生するモータ(例えば、実施形態のモータ32)と、このモータの回転軸と前記シャフトの間に設けられ、このモータの回転を前記シャフトの進退作動に変換する作動変換機構(例えば、実施形態の作動変換機構33)と、を備え、前記モータの駆動によって前記閉弁荷重の増減切り換えを行うことを特徴とするものである。
これにより、通常使用時には、作動変換機構を介してモータの動力によってシャフトを後退させておくことにより、シャフトを通した閉弁荷重が弁体に作用しないようにする。この結果、弁体は、ダイヤフラムに作用する二次側圧力室の圧力と開弁スプリングの付勢力とのバランスに応じて作動する。また、受圧デバイスを長時間停止させる場合等には、作動変換機構を介してモータの動力によってシャフトを前進させ、シャフトを通して弁体に閉弁荷重を印加する。この結果、弁体は閉弁状態に維持される。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1に係る締切り機構付き減圧弁において、前記荷重操作手段は、前記弁体に連結されたピストン(例えば、実施形態のピストン40)と、このピストンを介して前記弁体に流体圧による付勢力を閉弁方向に作用させるシリンダ(例えば、実施形態のシリンダ41)と、このシリンダに対する流体圧の導入と導入停止を切換える流体圧操作機構(例えば、実施形態の油圧ポンプ42)と、を備え、前記流体圧操作機構による流体圧の導入と導入停止の切換えによって前記閉弁荷重の増減切り換えを行うことを特徴とするものである。
これにより、通常使用時には、流体圧操作機構によってシリンダに流体圧を導入することにより、流体圧による付勢力がピストンを介して弁体に作用する。この結果、弁体は、ダイヤフラムに作用する二次側圧力室の圧力と、スプリングと流体圧による付勢力とのバランスに応じて作動する。また、受圧デバイスを長時間停止させる場合等には、流体圧操作機構によってシリンダに対する流体圧の導入を停止する。この結果、ダイヤフラムに作用する二次側圧力室の圧力が開弁スプリングの付勢力に打ち勝ち、弁体は閉弁状態に維持される。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、弁体に対する閉弁荷重の増減切り換えが可能な荷重操作手段が設けられているため、通常使用時には、荷重操作手段によって弁体の閉弁荷重を減少させることにより、弁体を、ダイヤフラムに作用する二次側圧力室の圧力に応動させることができるとともに、受圧デバイスを長時間停止する場合等には、荷重操作手段によって弁体の閉弁荷重を増加させることにより、弁体を確実に閉弁状態に維持することができる。そして、この発明においては、流路遮断のための専用の弁機構を追加することなく、受圧デバイス側への高圧流体の過大な漏れを防止することができる。したがって、この発明によれば、内部構造が複雑にならずに、製品の大型化やコストの高騰を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施形態の締切り機構付き減圧弁を採用した燃料電池システムの概略構成図である。
【図2】この発明の第1の実施形態の締切り機構付き減圧弁の断面図である。
【図3】この発明の第1の実施形態の締切り機構付き減圧弁の断面図である。
【図4】この発明の第2の実施形態の締切り機構付き減圧弁の断面図である。
【図5】この発明の第2の実施形態の締切り機構付き減圧弁の断面図である。
【図6】この発明の第3の実施形態の締切り機構付き減圧弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、燃料電池システムの概略構成図であり、符号1は、燃料としての水素と酸化剤としての酸素が供給されて発電をする燃料電池スタック(燃料電池)を示している。燃料電池スタック1は、例えば固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)であり、MEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)をセパレータ(図示しない)で挟持してなる単セルが複数積層されて構成されている。
【0016】
燃料電池スタック1には、高圧の水素を貯蔵する水素タンク2(高圧流体の供給源)から水素供給流路3を介して所定圧力および所定流量の水素が供給されるとともに、図示しない空気供給装置を介して酸素を含む空気が所定圧力および所定流量で供給される。
水素タンク2は、長手方向の両端が略半球状の筒状をなし、その長手方向の一端が開口している。この開口部2aには、パイロット式電磁弁からなる主止弁10が取り付けられている。水素タンク2から水素供給流路3には、主止弁10を介して水素が供給される。
【0017】
水素供給流路3には、締切り機構付き減圧弁5(以下、「減圧弁5」と呼ぶ。)と受圧デバイス7とが介装されている。水素タンク3から放出される高圧(例えば、35MPaあるいは70MPa等)の水素は、減圧弁5によって所定の圧力(例えば、1MPa以下)に減圧されて受圧デバイス7に供給される。ここで、受圧デバイス7とは、減圧弁5と燃料電池スタック1との間に配置されるデバイスの総称であり、エゼクタ、インジェクタ、加湿器などが含まれる。エゼクタは、燃料電池スタック1から排出される水素オフガスを循環利用するために水素オフガスを再び水素供給流路3に戻すデバイスであり、インジェクタは燃料電池スタック1に供給する水素流量を調整するデバイスであり、加湿器は燃料電池スタック1に供給される水素を加湿するデバイスである。受圧デバイス7としていずれのデバイスが組み込まれるかは燃料電池システムの全体構成により決定される。
【0018】
図2,図3は、第1の実施形態の減圧弁5の詳細な構造を示す図である。
これらの図に示すように、減圧弁5は、弁ハウジング11の内部に隔壁12を挟んで一次側圧力室13と二次側圧力室14とが設けられている。一次側圧力室13は、弁ハウジング11の流入ポート15を介して水素供給流路3の上流側3a(水素タンク1側)に接続され、二次側圧力室14は、弁ハウジング11の流出ポート16を介して水素供給流路3の下流側3b(受圧デバイス7側)に接続されている。隔壁12には、一次側圧力室13と二次側圧力室14を連通する連通孔17が設けられ、この連通孔17が、後述する弁体18によって一次側圧力室13側から開閉されるようになっている。
【0019】
また、弁ハウジング11内には、二次側圧力室14に臨むようにダイヤフラム19が設置されている。ダイヤフラム19は、二次側圧力室14に臨む側の面が受圧面19aとされ、受圧面19aの背面側の空間部が大気に導通している。ダイヤフラム19の中央部には、隔壁12の連通孔17を貫通する上記弁体18の弁軸18bが連結されている。弁体18は、連通孔17内を貫通する弁軸18bと、弁軸18bの端部に連設されて連通孔17の一次側圧力室13側の端部を開閉する弁頭部18aと、を備えている。また、ダイヤフラム19の背面側には、弁体18が連通孔17を開口する方向にダイヤフラム19を付勢する開弁スプリング20が設けられている。
なお、この実施形態の場合、隔壁12の一次側圧力室13に臨む側の面のうちの、連通孔17の周縁部には、円環状に隆起した弁座23が設けられ、弁体18の弁頭部18aがこの弁座23に対して一次側圧力室13側で離接するようになっている。
【0020】
ダイヤフラム19には、開弁スプリング20の付勢力と二次側圧力室14の圧力とが作用し、弁体18は、これらの力のバランスに応じて連通孔17を開閉する。具体的には、受圧デバイス7側での水素ガスの消費(流れ)によって二次側圧力室14の圧力が所定圧力以下に低下すると、その圧力低下によってダイヤフラム19が応動し、それによって弁体18の弁頭部18aが連通孔17を開口し、一次側圧力室13から二次側圧力室14に高圧の水素ガスを減圧して流入させる。
【0021】
また、弁ハウジング11の一次側圧力室13側で連通孔17に対向する位置には、一次側圧力室13側に向かって開口するプランジャ収容穴25が設けられている。このプランジャ収容穴25には、磁性材料から成る円柱状のプランジャ26が進退自在に収容されている。プランジャ収容穴25の底面とプランジャ26の間には、プランジャ26を弁体18の弁頭部18a方向に向けて付勢する閉弁スプリング27が介装されている。プランジャ26は、弁体18と同軸に、かつ弁頭部18aに対して当接可能に配置されており、閉弁スプリング27は、プランジャ26を介して弁体18に閉弁荷重を付与するようになっている。また、プランジャ収容穴25の外周側には、プランジャ26に対して、弁体18から離反する方向の磁気推力を作用させる電磁コイル28が配置されている。
この実施形態においては、プランジャ26と、閉弁スプリング27と、電磁コイル28とが、弁体18に対する閉弁荷重の増減切り換えを行う荷重操作手段29を構成している。
【0022】
以上のように構成された減圧弁5は、燃料電池システムの受圧デバイス7が作動している間は、荷重操作手段29の電磁コイル28を励磁することにより、図3に示すように、閉弁スプリング27の力に抗してプランジャ26を後退させ、そのプランジャ26を弁体18の弁頭部18aから離間させる。これにより、弁体18に作用する閉弁スプリング27の閉弁荷重がキャンセルされ、弁体18には、ダイヤフラム19に作用する二次側圧力室14の圧力と開弁スプリング20の付勢力のみが作用することになる。したがって、この減圧弁5では、受圧デバイス7側の水素ガスの消費に応じて弁体18が連通孔17を開き、一次側圧力室13の高圧の水素ガスを所定圧に減圧して二次側圧力室14側に流出させる。
【0023】
また、この減圧弁5は、燃料電池システムの受圧デバイス7が長時間作動を停止する場合には、荷重操作手段29の電磁コイル28の励磁を解除することにより、図2に示すように、閉弁スプリング27の力によってプランジャ26を前進させ、そのプランジャ26を弁体18の弁頭部18aに当接させる。これにより、弁体18には閉弁スプリング27の付勢力が閉弁荷重として作用し、弁体18は、その閉弁スプリング27による大きな閉弁荷重を受けて閉弁状態に維持される。
【0024】
以上のように、この減圧弁5においては、荷重操作手段29の電磁コイル28の励磁とその解除によって、弁体18に作用する閉弁スプリング27の閉弁荷重を増減させる(印加または印加解除する)構造とされているため、受圧デバイス7の長時間の停止時等には、電磁コイル28の励磁解除によって弁体18によって連通孔17を確実に閉じ状態に維持することができる。
そして、この減圧弁5においては、流路を締切るための専用の弁体や弁座を設けるのではなく、減圧用の弁体18に対する閉弁荷重の増減切り換えを行う荷重操作手段29を付加したものであるため、製品の大型化やコストの高騰を招くことなく、不使用時における受圧デバイス7側への高圧ガスの漏れを確実に抑制することができる。
【0025】
また、この実施形態の減圧弁5の場合、荷重操作手段29がプランジャ26と、閉弁スプリング27と、電磁コイル28とによって構成されているため、構造が簡単で低コストでの製造が可能であるとともに、電磁コイル28の励磁とその解除によって弁体18に対する閉弁荷重を瞬時に増減切り換えできるという利点もある。
【0026】
つづいて、図4,図5に示す第2の実施形態について説明する。なお、この第2の実施形態も含め、以下で説明する各実施形態においては、第1の実施形態と同一部分に同一符号を付して重複する説明を省略するものとする。
この第2の実施形態の締切り機構付き減圧弁105(以下、「減圧弁105」と呼ぶ。)は、基本的な構成は第1の実施形態のものとほぼ同様であるが、弁体18に対する閉弁荷重の増減切り換えを行う荷重操作手段129の構成が第1の実施形態のものと異なっている。
【0027】
この減圧弁105の荷重操作手段129は、弁ハウジング11内の一次側圧力室13側において、弁体18と同軸となるように配置された操作シャフト31(シャフト)と、回転駆動力を発生するモータ32と、モータ32の回転作動を操作シャフト31の軸方向に沿う進退作動に変換する作動変換機構33と、を備え、操作シャフト31が弁体18の弁頭部18aに対して当接離反可能とされている。
【0028】
操作シャフト31は、弁ハウジング31に設けられた支持ブロック34に回転可能に支持されている。支持ブロック34の一次側圧力室13に臨む一端部は、操作シャフト31を、進退自在に、かつシールリング35を介して気密状態で保持している。また、支持ブロック34の他端部には、内面に雌ねじが切られたガイド孔36が設けられ、このガイド孔36の雌ねじに操作シャフト31の外面に設けられた雄ねじ37が螺合している。また、支持ブロック34の他端から突出した支持シャフト31の雄ねじ37には、モータ32の回転軸に設けられた駆動ねじ38が螺合されている。モータ32は、駆動ねじ38を介して操作シャフト31を回転させる。操作シャフト31の回転は、操作シャフト31と支持ブロック34の間の螺合部を通して操作シャフト31の軸方向の進退作動に変換される。
したがって、この実施形態では、操作シャフト31と支持ブロック34の螺合部が作動変換機構33を構成している。
【0029】
この減圧弁105は、燃料電池システムの受圧デバイス7が作動している間は、荷重操作手段129のモータ32を正転方向に回転駆動することにより、図5に示すように、作動変換機構33を介して操作シャフト31を後退させ、その操作シャフト31を弁体18の弁頭部18aから離間させる。これにより、操作シャフト31から弁体18には閉弁荷重が付与されなくなる。これにより、弁体18には、ダイヤフラム19に作用する二次側圧力室14の圧力と開弁スプリング20の付勢力のみが作用することになる。したがって、この減圧弁105では、受圧デバイス7側の水素ガスの消費に応じて弁体18が連通孔17を開き、一次側圧力室13の高圧の水素ガスを所定圧に減圧して二次側圧力室14側に流出させる。
【0030】
また、この減圧弁105は、燃料電池システムの受圧デバイス7が長時間作動を停止する場合には、荷重操作手段129のモータ32を逆転方向に回転駆動することにより、図4に示すように、作動変換機構33を介して操作シャフト31を前進させ、その操作シャフト31を弁体18の弁頭部18aに当接させる。これにより、弁体18が操作シャフト31によって弁座23に押し付けられ、この後、モータ32を停止させた後にも、螺合部のフリクションによって弁体18には閉弁荷重が付与され続ける。この結果、弁体18は、操作シャフト31から大きな閉弁荷重を受けて閉弁状態に維持される。
【0031】
この減圧弁105においては、荷重操作手段129のモータ32の作動によって弁体18に作用する閉弁荷重を増減させる(印加または印加解除する)構造とされているため、受圧デバイス7の長時間の停止時等には、モータ32による操作シャフト31の前進操作によって弁体18によって連通孔17を確実に閉じ状態に維持することができる。
この実施形態の減圧弁105の場合も、流路を締切るための専用の弁体や弁座を設けるのではなく、減圧用の弁体18に対する閉弁荷重の増減切り換えを行う荷重操作手段129を付加したものであるため、製品の大型化やコストの高騰を招くことなく、不使用時における受圧デバイス7側への高圧ガスの漏れを確実に抑制することができる。
【0032】
さらに、この実施形態の減圧弁105においては、螺合部のフリクションによって操作シャフト31の進退位置を保持することができるため、モータ32に常に電流を流し続ける必要がなく、消費電力の低減を図ることができるという利点がある。
【0033】
次に、図6に示す第3の実施形態について説明する。
この第3の実施形態の締切り機構付き減圧弁205(以下、「減圧弁205」と呼ぶ。)は、基本的な構成は第1の実施形態のものとほぼ同様であり、弁体18に対する閉弁荷重の増減切り換えを行う荷重操作手段229の構成のみが第1の実施形態のものと異なっている。
【0034】
この減圧弁205の荷重操作手段229は、二次側圧力室14内において、弁体18の弁軸18bに先端部が同軸に連結されたピストン40と、このピストン40の基端が摺動自在に挿入され、ピストン40の基端にオイル(流体)の圧力による付勢力を作用させるシリンダ41と、このシリンダ41に対するオイルの導入と導入停止を切り換える油圧ポンプ42(流体圧操作機構)と、を備えている。
【0035】
この減圧弁205は、通常使用時には、油圧ポンプ42からシリンダ41にオイルが導入され、そのオイルの圧力による付勢力がピストン40を介して弁体18に開弁方向の力として作用している。即ち、通常使用時には、弁体18には、開弁スプリング20の付勢力と、ダイヤフラム19に作用する二次側圧力室14の圧力に加えて、ピストン40を介した油圧ポンプ42による開弁方向の付勢力が作用しており、弁体18は、開弁スプリング20付勢力と油圧ポンプ42による付勢力を合わせた力と、ダイヤフラム19に作用する二次側圧力室14の圧力とのバランスに応じて開弁作動するようになっている。なお、シリンダ41には、オイルに代えて気体をポンプによって導入することも可能である。
【0036】
この減圧弁205は、燃料電池システムの受圧デバイス7が作動している間は、油圧ポンプ42が作動して油圧ポンプ42からシリンダ41にオイルが供給され、上述のように弁体18には、開弁スプリング20の付勢力と、ダイヤフラム19に作用する二次側圧力室14の圧力と、ピストン40を介した油圧ポンプ42による開弁方向の付勢力とが作用する。したがって、この減圧弁205では、受圧デバイス7側の水素ガスの消費に応じて弁体18が連通孔17を開き、一次側圧力室13の高圧の水素ガスを所定圧に減圧して二次側圧力室14側に流出させる。
【0037】
また、この減圧弁205は、燃料電池システムの受圧デバイス7が長時間作動を停止する場合には、荷重操作手段229の油圧ポンプ42が停止し、ピストン40を介して弁体18に作用する油圧ポンプ42による開弁方向の付勢力がキャンセルされることになる。これにより、弁体18が、ダイヤフラム19に作用する二次側圧力室14の圧力によって弁座23に押し付けられる。この結果、弁体18は、ダイヤフラム19に作用する二次側圧力室14の圧力によって閉弁状態に維持される。
【0038】
この減圧弁205においては、荷重操作手段229の油圧ポンプ42の作動と作動停止の切り換えによって弁体18に作用する開弁荷重(閉弁荷重)を増減させる(印加または印加解除する)構造とされているため、受圧デバイス7の長時間の停止時等には、油圧ポンプ42を停止させることによって弁体18によって連通孔17を確実に閉じ状態に維持することができる。
また、この実施形態の減圧弁205についても、流路を締切るための専用の弁体や弁座を設けるのではなく、減圧用の弁体18に対する閉弁荷重の増減切り換えを行う荷重操作手段229を付加したものであるため、製品の大型化やコストの高騰を招くことなく、不使用時における受圧デバイス7側への高圧ガスの漏れを確実に抑制することができる。
【0039】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
2…水素タンク(高圧ガスの供給源)
5,105,205…減圧弁(締切り機構付き減圧弁)
7…受圧デバイス
13…一次側圧力室
14…二次側圧力室
17…連通孔
18…弁体
19…ダイヤフラム
19a…受圧面
20…開弁スプリング
26…プランジャ
27…閉弁スプリング
28…電磁コイル
29,129,229…荷重操作手段
31…操作シャフト(シャフト)
32…モータ
33…作動変換機構
40…ピストン
41…シリンダ
42…油圧ポンプ(流体圧操作機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧流体の供給源側の通路に導通する一次側圧力室と、
受圧デバイス側の低圧通路に導通する二次側圧力室と、
前記一次側圧力室と二次側圧力室とを連通する連通孔と、
前記二次側圧力室の圧力を受ける受圧面を有し、この受圧面に作用する前記二次側圧力室の圧力に応じて変位するダイヤフラムと、
このダイヤフラムと一体変位可能に連結され、前記連通孔を前記一次側圧力室側から開閉する弁体と、
前記ダイヤフラムを前記弁体が前記連通孔を開く方向に付勢する開弁スプリングと、を備え、
前記二次側圧力室の圧力が所定圧力以下に低下したときに、前記弁体が連通孔を開口することによって、前記一次側圧力室から二次側圧力室に高圧流体を減圧して流入させる締切り機構付き減圧弁であって、
前記弁体に対する閉弁荷重の増減切り換えが可能な荷重操作手段が設けられていることを特徴とする締切り機構付き減圧弁。
【請求項2】
前記荷重操作手段は、
前記弁体に対して進退自在に設けられたプランジャと、
このプランジャを介して前記弁体に閉弁荷重を付与する閉弁スプリングと、
前記プランジャに、前記弁体から離反する方向の磁気推力を作用させる電磁コイルと、
を備え、
前記電磁コイルの励磁とその解除によって前記閉弁荷重の増減切り換えを行うことを特徴とする請求項1に記載の締切り機構付き減圧弁。
【請求項3】
前記荷重操作手段は、
前記弁体に対して前記一次側圧力室側から当接離反可能に設けられたシャフトと、
回転駆動力を発生するモータと、
このモータの回転軸と前記シャフトの間に設けられ、このモータの回転を前記シャフトの進退作動に変換する作動変換機構と、
を備え、
前記モータの駆動によって前記閉弁荷重の増減切り換えを行うことを特徴とする請求項1に記載の締切り機構付き減圧弁。
【請求項4】
前記荷重操作手段は、
前記弁体に連結されたピストンと、
このピストンを介して前記弁体に流体圧による付勢力を閉弁方向に作用させるシリンダと、
このシリンダに対する流体圧の導入と導入停止を切換える流体圧操作機構と、
を備え、
前記流体圧操作機構による流体圧の導入と導入停止の切換えによって前記閉弁荷重の増減切り換えを行うことを特徴とする請求項1に記載の締切り機構付き減圧弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−208802(P2012−208802A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74825(P2011−74825)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】