説明

締結固定部材

【課題】 取付ボルトの雄ネジと係合する雌ネジを内面に有する分割円筒状部材(ナット片)が操作部材(ケース)の軸方向への移動で接近及び離間されるナットであって、該ナットが螺合、非螺合される取付具は、少なくとも2つに分割された分割円筒状部材が使用されることによって部品点数を多くし、また、操作部材(ケース)の軸方向への移動で、軸方向への移動に占める空間を要し、狭い空間での作業の困難さを生じることになる。
【解決手段】 取付ボルトを挿通する拡張可能ネジ筒体、及び該拡張可能ネジ筒体を締結固定する内周面に軸方向の浅い溝面とこれに連なる深い溝面とでなるカム面を形成した締結筒体で構成され、取付ボルトを挿通して該締結筒体が捻られることによって、カム面による締結固定と非締結との切換えがされる締結固定部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器のような陶器に便座等のような器具を取付けるために使用される締結固定部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、トイレ等のような狭い空間での器具の取付け、取外しは狭いが故に困難を要する。よって、作業を簡単且つ容易に出来る締結固定部材が望まれている。
【0003】
従来にも、工具を用いず、簡単且つ容易に取付け、取外しができる締結固定部材として、内面に雌ネジが形成された少なくとも2つ以上の半筒状のナット片と、この各ナット片の雌ネジが取付ボルトの雄ネジと係合される係合位置からその係合が解除される非係合位置の方向に移動可能に付勢しておくための付勢手段とを有するナットと、前記付勢手段に抗して各ナット片を非係合位置から係合位置へ切換え可能にするケースとを備え、非係合位置から係合位置への切換えがケースを軸方向に移動させることで行い、移動の後、更に軸中心に回転させるカム手段を設けてなるものである(特許文献1)。
【0004】
また、内面に取付ボルトを螺合可能とする雌ネジが形成された複数の分割円筒状部材からなるナットと、該ナットに嵌合されて分割円筒状部材を互いに接近及び離間させる操作部材(ケース)とが備えられ、該操作部材のナットに対する軸方向への移動で、分割円筒状部材からなるナットが取付ボルトと螺合、非螺合され、この移動が、各分割円筒状部材に形成された案内部と、該案内部に挟入される操作部材の挟入部とでなる規制部を設け、この規制部により軸方向への規制される締結固定部材である(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開平9−119424
【特許文献2】 特開2003−214421
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の締結固定部材は、取付ボルトの雄ネジと係合する雌ネジを内面に有する分割円筒状部材(ナット片)が操作部材(ケース)の軸方向への移動で接近及び離間されるナットであって、該ナットが螺合(係合)、非螺合(非係合)されるものである。一般には、狭い空間での作業が強いられる関係から部品点数を少なくして、簡単且つ容易に作業できることが望まれているにもかかわらず、分割された分割円筒状部材(ナット片)は少なくとも2つであり、部品点数を多くし、また、取付ボルトの雄ネジとの螺合(係合)をするために行う操作部材(ケース)の軸方向への移動が、軸方向への移動に占める空間を要することになり、更に、容易にできるよう規制部を設けるなどして、構造を複雑化する結果になり、十分に満足できるものでない。そして更に、取付作業時に、締結固定部材を仮止め取付し、操作部材(ケース)が非螺合位置(非係合位置)から螺合位置(係合位置)へ軸方向移動させられているが、この作業を狭い空間でする為、軸方向へ移動させるという作業工程の困難を生じることになり、不都合である。
【0007】
尚、仮止め取付けから確実な螺合(係合)をさせる為、操作部材(ケース)の軸方向への移動がされる際、位置設定をした仮止め取付けに緩みを生じ、該緩みによるズレが起き、このズレを解消する為に更なる螺合が必要となり、作業工程を増すことになって不都合である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の締結固定部材は、取付ボルトを挿通する拡張可能ネジ筒体、及び該拡張可能ネジ筒体を締結固定する内周面に軸方向の浅い溝面とこれに連なる深い溝面とでなるカム面を形成した締結筒体で構成され、取付ボルトを挿通して該締結筒体が捻られることによって、カム面による締結固定と非締結との切換えがされるものである。
【0009】
本発明の締結固定部材は、拡張可能ネジ筒体には、被締結部材側となる一端に鍔部を形成し、他端に少なくとも2本のスリットを刻設して、該スリット間の相対する内周面の一部に取付ボルトの雄ネジと係合する雌ネジを向い合うように配置し、且つ外周面に突起部を形成し、締結筒体には、前記拡張可能ネジ筒体を挿通する内周面に、軸方向の浅い溝面とそれに連なる深い溝面とでなるカム面を有し、取付ボルトが拡張可能ネジ筒体に挿し込まれ、該拡張可能ネジ筒体の雌ネジを押し開いて装填され、組込まれた締結筒体を捻ることによって、前記突起部のカム面による押え込みで締結固定されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の締結固定部材は、拡張可能ネジ筒体と、締結筒体との構成で、部品点数を少なくし、狭い空間での作業を簡単且つ容易にすることができ、好都合である。
なお、取付け作業が、取付ボルトに拡張可能ネジ筒体及び締結筒体でなる締結固定部材を挿通するだけで、取付けができると共に固定の位置設定できる。よって、その後、取付けた位置で締結できるのでズレることのない取付けが可能になり、しかも、無駄な作業工程と時間とを費すことなく作業できるので都合よい。
【0011】
本発明の締結固定部材は、拡張可能ネジ筒体が、被締結部材側となる一端に鍔部を形成し、他端に少なくとも2本のスリットを刻設して、該スリット間の内周面の一部に取付ボルトの雄ネジと係合する雌ネジを向い合うように配置しているので、取付ボルトの押込み挿通が一気にでき、しかも、簡単且つ容易にできるので好効率な作業が可能である。そして、締結筒体を捻るだけで締結固定でき、また、捻るだけで解除できるので、好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 取付ボルトと、拡張可能ネジ筒体及び締結筒体でなる締結固定部材との一部断面正面図である。
【図2】 拡張可能ネジ筒体に締結筒体が組込まれた締結固定部材の上面図である
【図3】 拡張可能ネジ筒体に締結筒体が組込まれた締結固定部材の下面図である
【図4】 拡張可能ネジ筒体に締結筒体が組込まれた締結固定部材の一部断面の側面図である。
【図5】 締結筒体を捻った状態を示す締結固定部材の図4A−Aによる横断面図である。
【図6】 締結筒体の一部断面側面図である。
【図7】 締結筒体の上面図である。
【図8】 締結筒体の下図面である。
【図9】 締結筒体の図6B−Bによる縦断面図である。
【図10】 拡張可能ネジ筒体の一部断面側面図である。
【図11】 拡張可能ネジ筒体の上面図である。
【図12】 拡張可能ネジ筒体の下面図である。
【図13】 拡張可能ネジ筒体の図10C−Cによる縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の締結固定部材は、図1乃至図5に示す如く、取付ボルト1を挿通する拡張可能ネジ筒体2及び該拡張可能ネジ筒体を締結する締結筒体3とで構成している。
取付ボルト1は、頭部11と軸部12とを有し、軸部12には雄ネジ121が刻設され、ロータンク101、便器102等の被締結部材10に挿込み取付けている。
拡張可能ネジ筒体2は、予め締結筒体3に組込まれて締結固定部材4をなし、取付ボルト1の軸部12を拡張可能ネジ筒体2に押込み挿通し、図5に示す如く、締結筒体3を時計廻り方向へ捻ることによって拡張可能ネジ筒体2の締結がされ、取付ボルト1の係止固定がされる。
【0014】
締結筒体3は、図6乃至図9に示す如く、鍔部31を有する拡張可能ネジ筒体2が挿通される筒状体32であり、該筒状体の内周面には、軸方向の浅い溝面331とそれに時計廻り方向へ連なる深い溝面332とでなるカム面33を有し、筒状体32の外周面には、補強のための軸方向の縦リブ34及び周方向のリング状リブ35、36が設けられている。また、鍔部31の外周縁には上向凸縁部311が形成されている。
【0015】
拡張可能ネジ筒体2は、図10乃至図13に示す如く、被締結部材10側となる一端に鍔部21を有し、他端に縁部221を備えた縁付筒状体22でなり、該縁付筒状体の下端には、少なくとも2本のスリット23を刻設し、対となる該スリット間の内周面の一部に取付ボルト1の雄ネジ121と係合する雌ネジ24を向い合うように配設し、且つ外周面に突起部25を形成する。
なお、鍔部21には、締結筒体3の鍔部31の上向凸縁部311に嵌合する下向凹縁部211が形成され、縁付筒状体22の縁部221には、拡張可能ネジ筒体2の縁付筒状体22が締結筒体3に挿通組込まれたときに抜止めの係止をする。
【0016】
拡張可能ネジ筒体2は、締結筒体3に縁付筒状体22が挿入され、その縁部221が締結筒体3の筒状体32の下端に係合されると共に、その下向凹縁部211が締結筒体3の鍔部31の上向凸縁部311と嵌合して締結筒体3に組込まれ、締結固定部材4にする。
【0017】
この組込まれた拡張可能ネジ筒体2及び締結筒体3でなる締結固定部材4は、取付ボルト1を取付けた器具を締着させるために取付ボルト1の軸部12に装着される。
装着に当って、取付ボルト1の軸部12によって拡張可能ネジ筒体2の雌ネジ24が押し開かれて拡張し、器具の締着位置で拡張可能ネジ筒体2の押込みが止まるので、拡張した雌ネジ24がスリット23間の弾性で元に戻り、取付ボルト1の雄ネジ121に係止される。そこで、拡張可能ネジ筒体2のワンタッチの押込みで器具の緩みのない取付けができることになる。
【0018】
組込まれた締結筒体3には、拡張可能ネジ筒体2を挿通する内周面に、軸方向の浅い溝面331とそれに時計廻り方向へ連なる深い溝面332とでなるカム面33を有し、拡張可能ネジ筒体2のスリット23間の外周面に配設された突起部25が取付ボルト1の軸部12の押込み挿入で雌ネジ24を拡張するのに伴なって拡げられても、締結固定部材4を被締結部材に押し付けた状態で、締結筒体3が時計廻り方向へ捻られると、突起部25を収めることのできる深い溝面332から、突起部25を拡張可能ネジ筒体2の雌ネジ24が取付ボルト1の雄ネジ121に係合されている状態に締着させる浅い溝面331へと移行することになり、拡張可能ネジ筒体2は締結される。
そして、取付けた拡張可能ネジ筒体2は、組込まれた締結筒体3を捻るだけで、安全で、確実な締結がされることになる。
【0019】
そこで、締結された締結筒体3を反時計廻り方向へ捻ると拡張可能ネジ筒体2の突起部25が締結筒体3のカム面33の浅い溝面331から深い溝面332へ移行し、締結固定部材4を引き抜けば、拡張可能ネジ筒体2の雌ネジ24が取付ボルト1の雄ネジ121より外れる。
【0020】
尚、取付ボルト1への拡張可能ネジ筒体2の締結は、更に、確実で強固な締結にしたい場合には、これらの雄ネジ121と雌ネジ24との係合が螺合であるために、増し締めをすればよいことになる。
【符号の説明】
【0021】
10 被締結部材
1 取付ボルト
11 頭部
12 軸部
121 雄ネジ
2 拡張可能ネジ筒体
21 鍔部
211 下向凹縁部
22 縁付筒状体
221 縁部
23 スリット
24 雌ネジ
25 突起部
3 締結筒体
31 鍔部
311 上向凸縁部
32 筒状体
33 カム面
331 浅い溝面
332 深い溝面
34 縦リブ
35 リング状リブ
36 リング状リブ
4 締結固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付ボルトを挿通する拡張可能ネジ筒体、及び該拡張可能ネジ筒体を締結固定する内周面に軸方向の浅い溝面とこれに連なる深い溝面とでなるカム面を形成した締結筒体で構成され、取付ボルトを挿通して該締結筒体が捻られることによって、カム面による締結固定と非締結との切換えがされることを特徴とする締結固定部材。
【請求項2】
拡張可能ネジ筒体には、被締結部材側となる一端に鍔部を形成し、他端に少なくとも2本のスリットを刻設して、該スリット間の相対する内周面の一部に取付ボルトの雄ネジと係合する雌ネジを向い合うように配設し、且つ外周面に突起部を形成し、締結筒体には、前記拡張可能ネジ筒体を挿通する内周面に、軸方向の浅い溝面とそれに連なる深い溝面とでなるカム面を有し、取付ボルトが拡張可能ネジ筒体に挿し込まれ、該拡張可能ネジ筒体の雌ネジを押し開いて装填され、組込まれた締結筒体を捻ることによって、前記突起部のカム面による押え込みで締結固定されることを特徴とする請求項1に記載の締結固定部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate