説明

締結部材、セルスタック、燃料電池装置及び電子機器

【課題】セルスタックの部品数を減らす。
【解決手段】発電セルを間に挟持する一対の締結部材である。締結部材の少なくとも一方には、発電セルに供給する気体の水蒸気分圧を調節する水蒸気圧調節器が設けられているので、セルスタックの部品数を減らすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルスタックの締結部材、セルスタック及びこれを用いた燃料電池装置、燃料電池装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、高いエネルギー利用効率を実現できる燃料電池についての研究・開発が盛んにおこなわれている。燃料電池は、アノードガス中の水素ガスと空気中の酸素ガスとを電気化学的に反応させて化学エネルギーから電気エネルギーを直接取り出すものであり、将来性に富む有望な電池であると位置付けられている。
【0003】
従来の燃料電池は、2つのセパレータとその間に挟持された膜電極接合体とにより構成される燃料電池セルを備えている。膜電極接合体は電解質膜の一方の面に燃料極、他方の面に酸素極が設けられたものである。セパレータには、それぞれアノードガス流路及びカソードガス流路が形成され、アノードガス流路はアノードガスを膜電極接合体の燃料極に供給し、カソードガス流路はカソードガスを酸素極に供給する。
【0004】
燃料極に供給された水素ガスは水素イオンと電子となり、電子は燃料極に移動し、水素イオンは電解質膜を透過して酸素極に移動する。酸素極では、電解質膜を透過した水素イオンと、外部回路を経て水素極から酸素極へ移動した電子と、酸素極に供給された酸素ガスとが反応して水を生成する。この電子の移動するエネルギーを電気エネルギーとして利用することができる。
【0005】
このようなセルスタックには、複数の発電セルをスタックして両端部に集電板を配置し、集電板の外側に加湿器を配置し、発電セル、集電板、加湿器を一対の締結板により挟持し、締結板同士をボルトで締結したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−35737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のセルスタックでは、集電板と締結板とが、別個の部品とされていたため、セルスタックの部品数が多くなるという問題があった。
【0007】
本発明の課題は、集電板と締結板とを一体とし、セルスタックの部品数を減らすことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、発電セルを間に挟持する一対の締結部材であって、前記一対の締結部材はそれぞれ導電性を有し、前記一対の締結部材により集電できることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の締結部材であって、前記締結部材の少なくとも一方には、前記発電セルに供給する気体の水蒸気分圧を調節する水蒸気圧調節器が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の締結部材であって、前記発電セルに供給される第1の流体を内側に流通させるとともに、内側と外側との間で水分子を移動させる中空糸膜と、前記中空糸膜の外側に前記第1の流体と水蒸気分圧の異なる気体または水を含む液体のうち何れか一方である第2の流体を流通させる流路を有する筐体と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、発電セルと、前記発電セルを間に挟持する一対の締結部材とを備え、前記一対の締結部材はそれぞれ導電性を有し、前記一対の締結部材に接続された電極より電力が出力されることを特徴とするセルスタックである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のセルスタックであって、前記締結部材の少なくとも一方には、前記発電セルに供給する気体の水蒸気分圧を調節する水蒸気圧調節器が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のセルスタックであって、前記締結部材は、前記発電セルに供給される第1の流体を内側に流通させるとともに、内側と外側との間で水分子を移動させる中空糸膜と、前記中空糸膜の外側に前記第1の流体と水蒸気分圧の異なる気体または水を含む液体のうち何れか一方である第2の流体を流通させる流路を有する筐体と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか一項に記載のセルスタックを備えることを特徴とする燃料電池装置である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の燃料電池装置を備えることを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、セルスタックの部品数を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[第1の実施の形態]
図1は本発明の第1の実施の形態に係るセルスタック1の正面図であり、図2はセルスタック1の分解図である。セルスタック1は、発電セルユニット100と、発電セルユニット100の上下両端部に設けられた上部締結部材200及び下部締結部材300と、これらを締結するボルト404〜409とからなる。
【0018】
〔発電セルユニット〕
図3は発電セルユニット100の断面図である。図3に示すように、発電セルユニット100は、膜電極接合体を含む単位起電部20を、片面セパレータ50と両面セパレータ90との間、両面セパレータ90,90,90の間、両面セパレータ90と片面セパレータ70との間に挟持してなる。この片面セパレータ50と両面セパレータ90との間に単位起電部20が挟持された構造、両面セパレータ90,90,90の間に膜単位発電部20が挟持された構造、両面セパレータ90と片面セパレータ70との間に単位起電部20が挟持された構造が、それぞれ単位発電セルである。
【0019】
図4は単位起電部20の上面図であり、図5は図4のV−V矢視断面図である。図4,図5に示すように、この単位起電部20は、固体高分子電解質膜の一方の面に燃料極、他方の面に酸素極が設けられた膜電極接合体21と、ガス拡散層22,23と、ガスケット26,27とを備えて構成されている。
【0020】
固体高分子電解質膜は、矩形状又は正方形状に形成された膜であって、水素イオン(H+)を選択的に透過させるものである。固体高分子電解質膜の両面であってそれぞれの中央部には、図示しない電極を兼ねる触媒が矩形状又は正方形状に成膜され、触媒上にガス透過性と電気伝導性を有するガス拡散層22,23が成膜されている。ガス拡散層22は上述の一方の面の電極を兼ねる触媒に接続されるとともにアノード(水素極)として機能し、ガス拡散層23は上述の他方の面の電極を兼ねる触媒に接続されるとともにカソード(酸素極)として機能する。
【0021】
膜電極接合体21の外周部であって、一方の面には、ガス拡散層22を囲繞するよう矩形枠型又は正方形枠型のガスケット26が設けられており、他方の面には、ガス拡散層23を囲繞するよう矩形枠型又は正方形枠型のガスケット27が設けられている。ガスケット26,27は絶縁体であり、かつ弾性体である。ガスケット26,27は単位起電部20を挟む片面セパレータ50と両面セパレータ90との間、両面セパレータ90同士の間、両面セパレータ90と片面セパレータ70との間に、ガス拡散層22,23及び触媒を配置するためのスペーサーとして機能するとともに、片面セパレータ50,両面セパレータ90より供給されるアノードガス及び両面セパレータ90,片面セパレータ70より供給されるカソードガスがセルスタック1から漏れ出すことを防ぐガスシールとしても機能する。このようなガスケット26,27は、例えばイソブチレンゴムを用いて形成することができる。
【0022】
さらに、単位起電部20には、ガス拡散層22,23の外周部であって長手方向(左右方向)の両端部にアノードガス導入孔31、アノードガス排出孔32、カソードガス導入孔33、カソードガス排出孔34、加湿前カソードガス供給孔35が、長手方向の中央寄りの位置であって短手方向の両端部にそれぞれカソードガス加湿用流体供給孔36、カソードガス加湿用流体排出孔37が、短手方向の両端部にボルト孔44〜49が、それぞれ膜電極接合体21が備える固体高分子電解質膜及びガスケット26,27を貫通して形成されている。
なお、カソードガス導入孔33と加湿前カソードガス供給孔35とは、それぞれ単位起電部20の長手方向の反対方向の端部に設けられている。
【0023】
図6は片面セパレータ50の下面(ガス拡散層22と当接する面)図である。片面セパレータ50には、上述のアノードガス導入孔31、アノードガス排出孔32、カソードガス導入孔33、カソードガス排出孔34、加湿前カソードガス供給孔35、カソードガス加湿用流体供給孔36、カソードガス加湿用流体排出孔37、及びボルト孔44〜49と対応する位置に、アノードガス導入孔51、アノードガス排出孔52、カソードガス導入孔53、カソードガス排出孔54、加湿前カソードガス供給孔55、カソードガス加湿用流体供給孔56、カソードガス加湿用流体排出孔57、及びボルト孔64〜69が、それぞれ貫通して形成されている。
【0024】
片面セパレータ50の下面であってその中央部には、葛折り状の蛇行溝50aが形成されている。蛇行溝50aの一端部はアノードガス導入孔51に導かれ、他端部はアノードガス排出孔52に導かれている。蛇行溝50aがガス拡散層22により蓋されることで、アノードガス導入孔51からアノードガス排出孔52まで繋がったアノードガス流路が形成される。
【0025】
図7は片面セパレータ70の上面(ガス拡散層23と当接する面)図である。片面セパレータ70には、上述のアノードガス導入孔31、アノードガス排出孔32、カソードガス導入孔33、カソードガス排出孔34、加湿前カソードガス供給孔35、カソードガス加湿用流体供給孔36、カソードガス加湿用流体排出孔37、及びボルト孔44〜49と対応する位置に、アノードガス導入孔71、アノードガス排出孔72、カソードガス導入孔73、カソードガス排出孔74、加湿前カソードガス供給孔75、カソードガス加湿用流体供給孔76、カソードガス加湿用流体排出孔77、及びボルト孔84〜89が、それぞれ貫通して形成されている。
【0026】
片面セパレータ70の上面であってその中央部には、葛折り状の蛇行溝70bが形成されている。蛇行溝70bの一端部はカソードガス導入孔73に導かれ、他端部はカソードガス排出孔74に導かれている。蛇行溝70bがガス拡散層23により蓋されることで、カソードガス導入孔73からカソードガス排出孔74まで繋がったカソードガス流路が形成される。
【0027】
図8(a)は両面セパレータ90の下面(ガス拡散層22と当接する面)図であり、図8(b)は両面セパレータ90の上面(ガス拡散層23と当接する面)図である。両面セパレータ90には、上述のアノードガス導入孔31、アノードガス排出孔32、カソードガス導入孔33、カソードガス排出孔34、加湿前カソードガス供給孔35、カソードガス加湿用流体供給孔36、カソードガス加湿用流体排出孔37、及びボルト孔44〜49と対応する位置に、アノードガス導入孔91、アノードガス排出孔92、カソードガス導入孔93、カソードガス排出孔94、加湿前カソードガス供給孔95、カソードガス加湿用流体供給孔96、カソードガス加湿用流体排出孔97、及びボルト孔104〜109が、それぞれ貫通して形成されている。
【0028】
両面セパレータ90の下面であってその中央部には、葛折り状の蛇行溝90aが形成されている。蛇行溝90aの一端部はアノードガス導入孔91に導かれ、他端部はアノードガス排出孔92に導かれている。蛇行溝90aがガス拡散層22により蓋されることで、アノードガス導入孔91からアノードガス排出孔92まで繋がったアノードガス流路が形成される。
【0029】
両面セパレータ90の上面であってその中央部には、葛折り状の蛇行溝90bが形成されている。蛇行溝90bの一端部はカソードガス導入孔93に導かれ、他端部はカソードガス排出孔94に導かれている。蛇行溝90bがガス拡散層23により蓋されることで、カソードガス導入孔93からカソードガス排出孔94まで繋がったカソードガス流路が形成される。
【0030】
単位起電部20を、片面セパレータ50と両面セパレータ90との間、両面セパレータ90,90,90の間、両面セパレータ90と片面セパレータ70との間に挟持すると、図3に示すように、アノードガス導入孔31,51,71,91が連続したアノードガス導入流路、カソードガス導入孔33,53,73,93が連続したカソードガス導入流路となる。
同様に、図3には図示しないが、アノードガス排出孔32,51,71,91が連続したアノードガス排出流路、カソードガス排出孔34,54,74,94が連続したカソードガス排出流路、加湿前カソードガス供給孔35,55,75,95が連続した加湿前カソードガス供給流路、カソードガス加湿用流体供給孔36,56,76,96が連続したカソードガス加湿用流体供給流路、カソードガス加湿用流体排出孔37,57,77,97が連続したカソードガス加湿用流体排出流路となる。
また、ボルト孔44〜49,64〜69,74〜79,104〜109が連続したネジ挿通孔となる。
【0031】
〔上部締結部材〕
上部締結部材200は、蓋板210と、容体240と、容体240の内部に収容される中空糸膜モジュール280とからなり、蓋板210及び容体240によりカソードガスを加湿する加湿器の筐体が形成される。
なお、上部締結部材200には、図示しない出力用の外部電極と接続されており、上部締結部材200は集電板としても機能する。
【0032】
蓋板210及び容体240は、例えば金属等の剛性が高くかつ導電性を有する材料からなり、発電セルユニット100で電気エネルギーを取り出す集電板として機能することができる。さらに、熱伝導性が高いことが好ましい。
蓋板210及び容体240の表面には例えばNi下地メッキにAuメッキが施されることにより電気的な接触抵抗が低減されるとともに、腐食及び金属イオンの溶出が抑えられている。
【0033】
図9(a)は蓋板210の側面図であり、図9(b)は蓋板210の下面図である。図9に示すように、蓋板210には、上述のカソードガス導入孔53、加湿前カソードガス供給孔55、カソードガス加湿用流体供給孔56、カソードガス加湿用流体排出孔57、及びボルト孔64〜69と対応する位置に、カソードガス導入孔213、加湿前カソードガス供給孔215、カソードガス加湿用流体供給孔216、カソードガス加湿用流体排出孔217、及びボルト孔224〜229が、それぞれ設けられている。
【0034】
また、上述のアノードガス導入孔51、アノードガス排出孔52、カソードガス導入孔53、カソードガス排出孔54、加湿前カソードガス供給孔55、カソードガス加湿用流体供給孔56、カソードガス加湿用流体排出孔57と対応する部分の外周部には、それぞれOリング231,232,233,234,235,236,237が設けられている。Oリング231〜237は、片面セパレータ50の上面と蓋板210の下面との隙間を封止する。
【0035】
図10は容体240を示す三面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。容体240の下面であってその中央部には、中空糸膜モジュール280が収容される凹部240aが形成されている。また、容体240の下面には、上述のカソードガス導入孔213、加湿前カソードガス供給孔215、カソードガス加湿用流体供給孔216、カソードガス加湿用流体排出孔217と対応する位置からそれぞれ凹部に繋がるカソードガス導入溝243、加湿前カソードガス供給溝245、カソードガス加湿用流体供給溝246、カソードガス加湿用流体排出溝247が形成されている。また、容体240には、上述のボルト孔224〜229と対応する位置に、上下方向に貫通するボルト孔254〜259がそれぞれ設けられている。
この凹部240aに中空糸膜モジュール280が収納された構造が、後述するようにカソードガスを加湿する加湿器として機能する。
【0036】
中空糸膜モジュール280は、複数の中空糸膜281と、中空糸膜の両端部に設けられた封止固定部282,283とからなる。中空糸膜281は、中心部に空洞281aを有しており、水分子の透過性を有する膜である。このような中空糸膜281としては、ポリイミドやフッ素系の高分子膜、例えば、NOK(株)製の微多孔質であるポリフェニールスルホン、ポリエーテルイミドや、旭硝子(株)製の非多孔質であるテトラフルオロエチレン+パーフルオロビニルエーテル等からなるものを用いることができる。また、ポリエチレン、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース等からなる中空糸膜を用いてもよい。
【0037】
図11は中空糸膜モジュール280の側面図である。封止固定部282,283は、例えば加熱硬化樹脂、自然硬化する樹脂、光硬化樹脂等を硬化させてなり、中空糸膜の束の両端部を固定する。図11に示すように、中空糸膜281は封止固定部282,283を貫通している。
【0038】
図10(c)に示すように、中空糸膜モジュール280は中空糸膜281が左右方向に配置されるように凹部240aに収容され、凹部240a内の空間を封止固定部282,283により3区画に分割する。中空糸膜モジュール280よりも左右側方の区画は、それぞれカソードガス導入溝243と繋がるカソードガス導入部271、加湿前カソードガス供給溝245と繋がる加湿前カソードガス供給部272となる。カソードガス導入部271と加湿前カソードガス供給部272とは、中空糸膜281の空洞281aにより通じている。
一方、封止固定部282,283間の空間はカソードガス加湿用流体供給溝246及びカソードガス加湿用流体排出溝247と繋がるカソードガス加湿用流体流路273となる。
【0039】
中空糸膜281の空洞281aにカソードガスを流通させ、カソードガス加湿用流体流路273にカソードガス加湿用流体を流通させることで、カソードガス加湿用流体中の水分子が中空糸膜281を通過して空洞281aに移動し、カソードガス内で気化することにより、カソードガスを加湿することができる。
【0040】
〔下部締結部材〕
下部締結部材300は、蓋板310と、容体340と、容体340の内部に収容される中空糸膜モジュール380とからなり、蓋板310及び容体340によりアノードガスを加湿する加湿器の筐体が形成される。
なお、下部締結部材300には、図示しない出力用の外部電極と接続されており、下部締結部材300は集電板としても機能する。
【0041】
蓋板310及び容体340は、例えば金属等の剛性が高く、かつ導電性を有する材料からなり、発電セルユニット100で電気エネルギーを取り出す集電板として機能することができる。さらに、熱伝導性が高いことが好ましい。
蓋板310及び容体340の表面には例えばNi下地メッキにAuメッキが施されることにより電気的な接触抵抗が低減されるとともに、腐食及び金属イオンの溶出が抑えられている。
【0042】
図12(a)は蓋板310の上面図であり、図12(b)は蓋板310の側面図である。図12に示すように、蓋板210には、上述のアノードガス導入孔71、アノードガス排出孔72、カソードガス排出孔74、加湿前カソードガス供給孔75、カソードガス加湿用流体供給孔76、カソードガス加湿用流体排出孔77、及びボルト孔84〜89と対応する位置に、アノードガス導入孔311、アノードガス排出孔312、カソードガス排出孔314、加湿前カソードガス供給孔315、カソードガス加湿用流体供給孔316、カソードガス加湿用流体排出孔317、及びボルト孔324〜329が、それぞれ設けられている。
【0043】
また、上述のアノードガス導入孔71、アノードガス排出孔72、カソードガス導入孔73、カソードガス排出孔74、加湿前カソードガス供給孔75、カソードガス加湿用流体供給孔76、カソードガス加湿用流体排出孔77と対応する部分の外周部には、それぞれOリング331,332,333,334,335,336,337が設けられている。Oリング331〜337は、片面セパレータ70の下面と蓋板310の上面との隙間を封止する。
【0044】
図13は容体340を示す三面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。容体340には、上述のアノードガス排出孔312、カソードガス排出孔314、加湿前カソードガス供給孔315、カソードガス加湿用流体供給孔316、カソードガス加湿用流体排出孔317と対応する位置に、アノードガス排出孔342、カソードガス排出孔344、加湿前カソードガス供給孔345、カソードガス加湿用流体供給孔346、カソードガス加湿用流体排出孔347が、それぞれ上下方向に貫通して設けられている。
また、上述のボルト孔324〜329と対応する位置に、ボルト孔354〜359がそれぞれ設けられている。ボルト孔354〜359には、ボルト404〜409が螺合する雌ネジが切られている。
【0045】
また、容体340の上面であってその中央部には、中空糸膜モジュール380が収容される凹部340aが形成され、アノードガス導入孔311と対応する位置から凹部340aに繋がるアノードガス導入溝361が設けられている。この凹部340aに中空糸膜モジュール380が収納された構造が、後述するようにアノードガスを加湿する加湿器として機能する。
また、アノードガス導入溝361が設けられるのと反対方向の長手方向の端部には、加湿前アノードガス供給孔348が上下方向に貫通して設けられ、容体340の上面には、加湿前アノードガス供給孔348と凹部340aとを繋げる加湿前アノードガス供給溝368が設けられている。
【0046】
さらに、容体340の長手方向の中央寄りの位置であって短手方向の両端部には、それぞれアノードガス加湿用流体供給孔349、アノードガス加湿用流体排出孔350が上下方向に貫通して設けられ、容体340の上面には、アノードガス加湿用流体供給孔349、アノードガス加湿用流体排出孔350と凹部340aとを繋げるアノードガス加湿用流体供給溝369、アノードガス加湿用流体排出溝370がそれぞれ設けられている。
【0047】
容体340の下面において、アノードガス排出孔342、カソードガス排出孔344、加湿前カソードガス供給孔345、カソードガス加湿用流体供給孔346、カソードガス加湿用流体排出孔347、加湿前アノードガス供給孔348、アノードガス加湿用流体供給孔349、アノードガス加湿用流体排出孔350には、図示しないアノードガス排出管、カソードガス排出管、加湿前カソードガス供給管、カソードガス加湿用流体供給管、カソードガス加湿用流体排出管、加湿前アノードガス供給管、アノードガス加湿用流体供給管、アノードガス加湿用流体排出管がそれぞれ接続される。
【0048】
中空糸膜モジュール380は、中心部に空洞381aを有する複数の中空糸膜381と、中空糸膜の両端部に設けられた封止固定部382,383とからなる。中空糸膜モジュール380の構成は中空糸膜モジュール280と同様であるので説明を割愛する。
【0049】
図13に示すように、中空糸膜モジュール380は中空糸膜381が左右方向に配置されるように凹部340aに収容され、凹部340a内の空間を封止固定部382,383により3区画に分割する。中空糸膜モジュール380よりも左右側方の区画は、それぞれアノードガス導入溝361と繋がるアノードガス導入部371、加湿前アノードガス供給溝368と繋がる加湿前カソードガス供給部372となる。カソードガス導入部371と加湿前カソードガス供給部372とは、中空糸膜281の空洞281aにより通じている。
一方、封止固定部382,383間の空間はアノードガス加湿用流体供給溝369及びアノードガス加湿用流体排出溝370と繋がるアノードガス加湿用流体流路373となる。
【0050】
中空糸膜381の空洞381aにアノードガスを流通させ、アノードガス加湿用流体流路373にアノードガス加湿用流体を流通させることで、アノードガス加湿用流体中の水分子が中空糸膜381を通過して空洞381aに移動し、アノードガス内で気化することにより、アノードガスを加湿することができる。
【0051】
〔ボルト〕
ボルト404〜409は、ボルト孔354〜359と螺合する先端部に雄ネジが切られるとともに、雄ネジが切られた部分以外は例えば樹脂コーティングにより表面に絶縁処理が施されている。なお、この先端部とは逆の他端部の各ボルト頭部と上部締結部材200との間に、絶縁性樹脂からなるワッシャーを介在させることにより、ボルト404〜409と上部締結部材200との絶縁を確実にすることができる。
【0052】
上部締結部材200、発電セルユニット100、下部締結部材300をこの順に積層した状態で、上部締結部材200側からボルト404〜409をボルト孔44〜49,64〜69,84〜89,104〜109,224〜229,254〜259,324〜329に挿通させ、ボルト孔354〜359に螺合させることで、セルスタック1が図1に示す状態に組み立てられる。
【0053】
このように組み立てられるセルスタック1では、上部締結部材200及び下部締結部材300が、集電板と締結板との役割を兼ねるため、部品数を減らすことができる。
【0054】
〔セルスタックの動作〕
次に、セルスタック1の動作について説明する。まず、所定の動作温度のセルスタック1に、アノードガス加湿用流体、カソードガス加湿用流体、アノードガス及びカソードガスを供給する。
【0055】
1.アノードガス加湿用流体の供給
アノードガス加湿用流体供給孔349からアノードガス加湿用流体供給溝369、アノードガス加湿用流体流路373、アノードガス加湿用流体排出溝370を経て、アノードガス加湿用流体排出孔350から排出されるように、アノードガス加湿用流体を供給する。
【0056】
2.カソードガス加湿用流体の供給
カソードガス加湿用流体供給孔346,316からカソードガス加湿用流体供給流路、カソードガス加湿用流体供給孔216、カソードガス加湿用流体供給溝246、カソードガス加湿用流体流路273、カソードガス加湿用流体排出溝247、カソードガス加湿用流体排出孔217、カソードガス加湿用流体排出流路、カソードガス加湿用流体排出孔317を経て,カソードガス加湿用流体排出孔347から排出されるように、カソードガス加湿用流体を供給する。
【0057】
ここで、アノードガス加湿用流体、カソードガス加湿用流体として、アノードガスやカソードガスよりも水蒸気分圧が高い気体または水を含む液体のうち何れか一方の流体を用いることができる。このような流体として、例えば水を用いることができる。なお、アノードガス加湿用流体、カソードガス加湿用流体に、気泡が混入してもよいが、極端に多量の気体が混入するような場合には、アノードガス加湿用流体供給部37やカソードガス加湿用流体流路273の出口に気液分離膜を設け、アノードガス加湿用流体、カソードガス加湿用流体が通過しにくくすることにより加湿性能を向上させることができる。
【0058】
3.アノードガスの供給
加湿前アノードガス供給孔348から加湿前アノードガス供給溝368、加湿前カソードガス供給部372、中空糸膜381の空洞381a、アノードガス導入部371、アノードガス導入溝361、アノードガス導入孔311、アノードガス導入流路、蛇行溝50a,90a、アノードガス排出流路、アノードガス排出孔312を経て,アノードガス排出孔342から排出されるように、アノードガスを通水する。
【0059】
4.カソードガスの供給
加湿前カソードガス供給孔345から加湿前アノードガス供給溝315、加湿前カソードガス供給孔215、加湿前カソードガス供給溝245、加湿前カソードガス供給部272、中空糸膜281の空洞281a、カソードガス導入部271、カソードガス導入溝243、カソードガス導入孔213、カソードガス導入流路、蛇行溝70b,90b、カソードガス排出流路、カソードガス排出孔314を経て,カソードガス排出孔344から排出されるように、アノードガスを通水する。
【0060】
以上のように、アノードガス加湿用流体、カソードガス加湿用流体、アノードガス及びカソードガスをセルスタック1に供給すると、アノードガス加湿用流体流路373内の水分子が中空糸膜381を透過して空洞381a内で気化するため、空洞381a内を通過するアノードガスを加湿することができる。同様に、カソードガス加湿用流体流路273内の水分子が中空糸膜281を透過して空洞281a内で気化するため、空洞281a内を通過するカソードガスを加湿することができる。
【0061】
ここで、上部締結部材200及び下部締結部材300は発電セルユニット100と隣接するとともに、熱伝導性が高い材料からなる。
このため、第一に、上部締結部材200に備えられた中空糸膜モジュール280において、カソードガス加湿用流体中の水分子が中空糸膜281を通過して空洞281aに移動し、カソードガス内で気化するときの気化熱として、発電セルユニット100で発生する熱を利用することができるので、上部締結部材200と発電セルユニット100との間で効率よく熱交換することができる。同様の理由により、下部締結部材300と発電セルユニット100との間で効率よく熱交換することができる。
また、第二に、発電セルユニット100の熱が上部締結部材200及び下部締結部材300に伝達し、上部締結部材200及び下部締結部材300の温度は、発電セルユニット100の温度に合わせて変動する。したがって、アノードガス加湿用流体流路373内の水、及びカソードガス加湿用流体流路273内の水は発電セルユニット100の温度に合わせて変動するため、加湿されたアノードガス及びカソードガスが発電セルユニット100内で冷却されることがなく、結露が発生しにくい。
【0062】
図14は発電セルユニット100の温度と、上部締結部材200または下部締結部材300を通過したアノードガスまたはカソードガス(出口ガス)の露点温度との関係を示すグラフである。図14に示すように、出口ガスの露天温度は、セルスタックの温度よりも数℃低くなる。
このように、発電セルユニット100の温度変化に合わせて上部締結部材200及び下部締結部材300の温度が変化し、上部締結部材200及び下部締結部材300を通過したアノードガスまたはカソードガスの露点温度が発電セルユニット100の温度よりも低く維持されるため、上部締結部材200及び下部締結部材300に対して特別な制御をすることなく、アノードガス及びカソードガスに対して適正な加湿をすることができる。
【0063】
また、(アノードガス加湿用流体及びカソードガス加湿用流体を循環させることにより上部締結部材200及び下部締結部材300を冷却するとともに、)アノードガス加湿用流体流路373内の水が空洞381a内に移動して空洞381a内で気化するときの気化熱と、カソードガス加湿用流体流路273内の水が空洞281a内に移動して空洞281a内で気化するときの気化熱と、により上部締結部材200及び下部締結部材300が冷却され、発電セルユニット100を冷却することができる。
【0064】
加湿されたアノードガスは蛇行溝50a,90aからガス拡散層22に供給される。アノードガス中の水素ガスは、電気化学反応式(1)に示すように、図示しない触媒の作用により、水素イオンと、電子とに分離される。水素イオンは、膜電極接合体21が備える固体高分子電解質膜を透過してガス拡散層23に到達する。
2→2H++2e- ・・・ (1)
【0065】
一方、加湿されたカソードガスは蛇行溝70b,90bからガス拡散層23に供給される。カソードガス中の酸素ガスは、電気化学反応式(2)に示すように、図示しない触媒の作用により、膜電極接合体21が備える固体高分子電解質膜を透過した水素イオン及び電子とともに、水を生成する。
2H++1/2O2+2e-→H2O ・・・ (2)
【0066】
このように、ガス拡散層23で電子が消費され、ガス拡散層22で電子が生成されることにより、膜電極接合体21が備える固体高分子電解質膜の両面間に電位差が生じるため、電力を取り出すことができる。
【0067】
なお、上記実施形態においては、上部締結部材200でカソードガスを加湿し、下部締結部材300でアノードガスを加湿する構成としたが、2つの締結部材の両方でアノードガスのみ、またはカソードガスのみを加湿する流路構造としてもよい。アノードガスまたはカソードガスの一方のみを2つの締結部材の両方で加湿する場合には、最大2倍の流量に対応することができる。あるいは、各締結部材の容積を半分にすることができる。
【0068】
また、上記実施形態においては、アノードガスやカソードガスよりも水蒸気分圧が高いアノードガス加湿用流体、カソードガス加湿用流体をアノードガス加湿用流体流路373内、及びカソードガス加湿用流体流路273に通水したが、代わりに、乾燥した気体などの、アノードガスやカソードガスよりも水蒸気分圧が低い流体を供給することで、上部締結部材200や下部締結部材300をアノードガスまたはカソードガスの乾燥装置として用いることもできる。例えば、上記実施形態と比べて低出力で駆動するなど、燃料電池装置の駆動条件によって発電セルユニット100の動作温度が比較的低くなることがある。この場合、発電セルユニット100内部のアノードガス流路またはカソードガス流路において、これらのガスが結露する可能性が高くなるので、これらのガスが結露するのを抑制するため、上記実施形態の上部締結部材200または下部締結部材300の少なくとも一方を乾燥装置として利用することが好ましい。
【0069】
なお、上記実施形態においては、上部締結部材200にボルト404〜409を挿通させるとともに、下部締結部材300にボルト404〜409を螺合させることで発電セルユニット100を挟持する構造としたが、ボルト404〜409を用いる代わりに、例えば図示しない帯状または紐状の部材で上部締結部材200と下部締結部材300とを連結することで発電セルユニット100を挟持してもよい。あるいは、ボルト404〜409を用いる代わりに、例えば図示しない箱体にセルスタック1を収容し、箱体の壁面に螺合するネジ等の締付部材によりセルスタック1を締め付けてもよい。
【0070】
<変形例1>
図15は変形例に係るセルスタック1Bの正面図である。アノードガスのみを加湿し、カソードガスを加湿しない場合には、図15に示すように、上部締結部材200の代わりに締結板200Bを用い、締結板200B、発電セルユニット100、下部締結部材300をボルト404〜409で締結してもよい。カソードガスのみを加湿し、アノードガスを加湿しない場合も同様である。ここで、締結板200Bとしては、例えば金属等の剛性が高くかつ導電性を有する材料を用いることにより、発電セルユニット100で電気エネルギーを取り出す集電板として機能することができる。さらに、上述と同様の理由により、熱伝導性が高いことが好ましい。
【0071】
<変形例2>
図16は変形例に係るセルスタック1Cの正面図である。図16に示すように、上部締結部材200の代わりに、上部に空冷用のフィン290を供える締結板200Cを用い、締結板200C、発電セルユニット100、下部締結部材300をボルト404〜409で締結してもよい。ここで、締結板200Cとしては、例えば金属等の剛性が高くかつ導電性を有する材料を用いることにより、発電セルユニット100で電気エネルギーを取り出す集電板として機能することができる。さらに、上述と同様の理由により、熱伝導性が高いことが好ましい。
【0072】
<変形例3>
図17は本変形例に係る上部締結部材200Dの分解図である。上部締結部材200Dは、下側容体210Dと、上側容体240Dと、中空糸膜モジュール280Dとからなる。
ここで、下側容体210Dの上面であってその中央部には、凹部210dが形成されている。また、上側容体240Dの下面であってその中央部には、凹部240dが形成されている。中空糸膜モジュール280Dは下側容体210Dと、上側容体240Dとを重ね合わせたときに、この凹部210d,240d内に収容される。なお、中空糸膜モジュール280Dは、中空糸膜モジュール280と同様であるので説明を割愛する。
その他の構造については、上部締結部材200と同様であるので説明を割愛する。
【0073】
このように、蓋板210の代わりに厚みを増した下側容体210Dを用いることで、上部締結部材200D全体を薄くした場合でも、部品強度を維持することができる。また、Oリングを取り付けるのに充分な部材厚みを確保することができる。
【0074】
<変形例4>
図18(a)は本変形例に係る上部締結部材200Eを形成する蓋板210Eの側面図であり、図18(b)は蓋板210Eの下面図である。また、図19(a)は本変形例に係る上部締結部材200Eを形成する容体240Eの側面図であり、図19(b)は容体240Eの下面図である。
【0075】
蓋板210Eの蓋体210と異なる点は、加湿前カソードガス供給孔215、カソードガス加湿用流体供給孔216、カソードガス加湿用流体排出孔217が設けられていない点である。
【0076】
容体240Eの容体240と異なる点は、加湿前カソードガス供給溝245、カソードガス加湿用流体供給溝246、カソードガス加湿用流体排出溝247の代わりに、加湿前カソードガス供給継手245E、カソードガス加湿用流体供給継手246E、カソードガス加湿用流体排出継手247Eが設けられている点である。加湿前カソードガス供給継手245E、カソードガス加湿用流体供給継手246E、カソードガス加湿用流体排出継手247Eは、図示しない加湿前カソードガス供給管、カソードガス加湿用流体供給管、カソードガス加湿用流体排出管と接続される。
【0077】
加湿前カソードガス供給継手245E、カソードガス加湿用流体供給継手246E、カソードガス加湿用流体排出継手247Eを設け、加湿前カソードガス供給継手245E、カソードガス加湿用流体供給継手246E、カソードガス加湿用流体排出継手247Eに図示しない加湿前カソードガス供給管、カソードガス加湿用流体供給管、カソードガス加湿用流体排出管と接続することで、上部締結部材200Eに供給される加湿前カソードガスの供給流路や、カソードガス加湿用流体の供給流路及び排出流路をセルスタックから省略することができる。
【0078】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図20は本実施の形態に係るセルスタック1Fの正面図である。セルスタック1Fは、第1の実施の形態と同様の発電セルユニット100、上部締結部材200及び下部締結部材300と、第1の実施の形態のボルト404〜409よりも長いボルト404F〜409Fと、ナット414F〜419Fと、を備え、流路基板500に取り付けられる。
【0079】
図20に示すように、セルスタック1Fは、流路基板500上に下部締結部材300、発電セルユニット100、上部締結部材200がこの順に積層されている。ボルト404F〜409Fは上部締結部材200、発電セルユニット100に挿通され、下部締結部材300に螺合されるとともに、先端部を流路基板500に設けられたネジ孔504〜509(図21参照)に挿通されている。ナット414F〜419Fはボルト404F〜409Fの先端に螺合され、流路基板500を下部締結部材300の下面に締結している。
【0080】
〔流路基板〕
図21は流路基板500の下部締結部材300との当接部を示す平面図である。なお、二点鎖線で囲まれた部分が下部締結部材300と当接する部分である。図21に示すように、流路基板500には、下部締結部材300のネジ孔354〜359と対応する位置に、ネジ孔504〜509が設けられている。
【0081】
また、上述のアノードガス排出孔342、カソードガス排出孔344、加湿前カソードガス供給孔345、カソードガス加湿用流体供給孔346、カソードガス加湿用流体排出孔347、加湿前アノードガス供給孔348、アノードガス加湿用流体供給孔349、アノードガス加湿用流体排出孔350と対応する位置に、アノードガス排出孔512、カソードガス排出孔514、加湿前カソードガス供給孔515、カソードガス加湿用流体供給孔516、カソードガス加湿用流体排出孔517、加湿前アノードガス供給孔518、アノードガス加湿用流体供給孔519、アノードガス加湿用流体排出孔520が、それぞれ設けられている。
【0082】
アノードガス排出孔512、カソードガス排出孔514、加湿前カソードガス供給孔515、カソードガス加湿用流体供給孔516、カソードガス加湿用流体排出孔517、加湿前アノードガス供給孔518、アノードガス加湿用流体供給孔519、アノードガス加湿用流体排出孔520は、それぞれ流路基板500内に設けられたアノードガス排出流路522、カソードガス排出流路524、加湿前カソードガス供給流路525、カソードガス加湿用流体供給流路526、カソードガス加湿用流体排出流路527、加湿前アノードガス供給流路528、アノードガス加湿用流体供給流路529、アノードガス加湿用流体排出流路530と連通している。これらの流路は、流路基板500に設けられた後述する反応装置3や、図示しない空気ポンプ等に接続されている。
【0083】
また、アノードガス排出孔512、カソードガス排出孔514、加湿前カソードガス供給孔515、カソードガス加湿用流体供給孔516、カソードガス加湿用流体排出孔517、加湿前アノードガス供給孔518、アノードガス加湿用流体供給孔519、アノードガス加湿用流体排出孔520の外周部には、それぞれOリング532,534,535,536,537,538,539,540が設けられている。Oリング532,534,535,536,537,538,539,540は、下部締結部材300と流路基板500との隙間を封止する。
【0084】
〔燃料電池装置〕
図22は、本実施形態のセルスタック1Fが好適に適用される燃料電池装置10のブロック図である。この燃料電池装置10は、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、電子手帳、腕時計、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、ゲーム機器、遊技機、電子計算機その他の電子機器に備え付けられたものであり、電子機器本体を動作させるための電源として用いられる。
【0085】
燃料電池装置10は、セルスタック1Fと、燃料容器2と、反応装置3と、を備える。なお、図示しないが、反応装置3は流路基板500上に設けられ、燃料容器2は流路基板500に対して着脱自在に設けられる。
【0086】
燃料容器2は、燃料および水を貯留し、図示しないマイクロポンプにより燃料及び水の混合液を反応装置3に供給する。この燃料容器2内に貯留される燃料としては、炭化水素系の液体燃料が適用可能である。具体的には、メタノール、エタノールなどのアルコール類や、ジメチルエーテルなどのエーテル類、ガソリンなどがある。燃料容器2内には、燃料と水とは別々で貯蔵されていてもよいし、混合された状態で貯蔵されていてもよい。
なお、以下の説明では燃料としてメタノールを使用する場合について説明するが、他の化合物を用いてもよい。
【0087】
反応装置3は、気化器4、改質器5、一酸化炭素除去器6、媒燃焼器7及び図示しないヒータを有する。気化器4は、燃料容器2から供給される燃料と水を気化させる。改質器5は、気化器4から供給される気化された燃料および水蒸気を触媒による改質反応によって改質し、水素を含む混合気体を生成するものである。燃料としてメタノールを用いる場合、下記の化学反応式(3),(4)に示す改質反応によって、主生成物である水素ガス、二酸化炭素ガス及び副生成物である微量の一酸化炭素の混合気体が生成される。
【0088】
一酸化炭素除去器6は、一酸化炭素を化学反応式(5)のように酸化させることで混合気体から除去する。一酸化炭素除去器6には、改質器5から供給される混合気体の他に空気が供給される。一酸化炭素除去器6は、これらの混合気体中の一酸化炭素を、触媒により、下記の化学反応式(5)に示す一酸化炭素除去反応によって選択的に酸化して除去する。この一酸化炭素を除去した混合気体がアノードガスとして用いられ、カソードガス加湿用流体供給流路526に供給される。
【0089】
CH3OH+H2O→3H2+CO2 …(3)
2CH3OH+H2O→5H2+CO+CO2 …(4)
2CO+O2→2CO2 …(5)
【0090】
触媒燃焼器7及び図示しないヒータは、燃料容器2から供給された燃料と水、または、アノードガス排出流路522から排出されるオフガスに、酸素を混在させて燃焼し、改質器5を250℃以上、例えば約250〜400℃に加熱し、気化器4及び一酸化炭素除去器6を約110〜190℃に加熱する。
【0091】
〔電子機器〕
図23は、燃料電池装置10を電源として用いる電子機器851の一例を示す斜視図である。図22に示すように、この電子機器851は、携帯型の電子機器であって、例えばノート型パーソナルコンピュータである。電子機器851は、CPU、RAM、ROM、その他の電子部品から構成された演算処理回路を内蔵するとともにキーボード852を備え付けた下筐体854と、液晶ディスプレイ856を備え付けた上筐体858と、を備える。下筐体854と上筐体858はヒンジで結合されており、上筐体858を下筐体854に重ねてキーボード852に液晶ディスプレイ856を相対させた状態で折り畳むことができるように構成されている。下筐体854の右側面から底面にかけて、燃料電池装置10を装着するための装着部860が形成され、装着部860に燃料電池装置10を装着すると、燃料電池装置10の電気によって電子機器851が動作する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るセルスタック1の正面図である。
【図2】セルスタック1の分解図である。
【図3】発電セルユニット100の断面図である。
【図4】単位起電部20の上面図である。
【図5】図4のV−V矢視断面図である。
【図6】片面セパレータ50の下面図である。
【図7】片面セパレータ70の上面図である。
【図8】(a)は両面セパレータ90の下面図であり、(b)は両面セパレータ90の上面図である。
【図9】(a)は蓋板210の側面図であり、(b)は蓋板210の下面図である。
【図10】容体240を示す三面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。
【図11】中空糸膜モジュール280の側面図である。
【図12】(a)は蓋板310の上面図であり、(b)は蓋板310の側面図である。
【図13】容体340を示す三面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。
【図14】発電セルユニット100の温度と、出口ガスの露点温度との関係を示すグラフである。
【図15】変形例に係るセルスタック1Bの正面図である。
【図16】変形例に係るセルスタック1Cの正面図である。
【図17】変形例に係る上部締結部材200Dの分解図である。
【図18】(a)は本変形例に係る上部締結部材200Eを形成する蓋板210Eの側面図であり、(b)は蓋板210Eの下面図である。
【図19】(a)は本変形例に係る上部締結部材200Eを形成する容体240Eの側面図であり、(b)は容体240Eの下面図である。
【図20】セルスタック1Fの正面図である。
【図21】流路基板500の下部締結部材300との当接部を示す平面図である。
【図22】燃料電池装置10のブロック図である。
【図23】燃料電池装置10を電源として用いる電子機器851の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0093】
10 燃料電池装置
20 単位起電部
50,70 片面セパレータ
90 両面セパレータ
100 発電セルユニット
200,200D 上部締結部材
200B,200C 締結板
273 カソードガス加湿用流体流路
281,381 中空糸膜
300 下部締結部材
373 アノードガス加湿用流体流路
851 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電セルを間に挟持する一対の締結部材であって、
前記一対の締結部材はそれぞれ導電性を有し、前記一対の締結部材により集電できることを特徴とする締結部材。
【請求項2】
請求項1に記載の締結部材であって、
前記締結部材の少なくとも一方には、前記発電セルに供給する気体の水蒸気分圧を調節する水蒸気圧調節器が設けられていることを特徴とする締結部材。
【請求項3】
請求項1に記載の締結部材であって、
前記発電セルに供給される第1の流体を内側に流通させるとともに、内側と外側との間で水分子を移動させる中空糸膜と、
前記中空糸膜の外側に前記第1の流体と水蒸気分圧の異なる気体または水を含む液体のうち何れか一方である第2の流体を流通させる流路を有する筐体と、を備えることを特徴とする締結部材。
【請求項4】
発電セルと、
前記発電セルを間に挟持する一対の締結部材とを備え、
前記一対の締結部材はそれぞれ導電性を有し、前記一対の締結部材に接続された電極より電力が出力されることを特徴とするセルスタック。
【請求項5】
請求項4に記載のセルスタックであって、
前記締結部材の少なくとも一方には、前記発電セルに供給する気体の水蒸気分圧を調節する水蒸気圧調節器が設けられていることを特徴とするセルスタック。
【請求項6】
請求項4に記載のセルスタックであって、
前記締結部材は、前記発電セルに供給される第1の流体を内側に流通させるとともに、内側と外側との間で水分子を移動させる中空糸膜と、
前記中空糸膜の外側に前記第1の流体と水蒸気分圧の異なる気体または水を含む液体のうち何れか一方である第2の流体を流通させる流路を有する筐体と、を備えることを特徴とするセルスタック。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項に記載のセルスタックを備えることを特徴とする燃料電池装置。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料電池装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−123774(P2008−123774A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304893(P2006−304893)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】