説明

締結部材及び締結構造

【課題】安定した締め付けトルクを確保しつつ、ガタや異音を抑制して組付部材を被締結部材に締結する。
【解決手段】車両用シート10では、ボルトユニット40の頭部44に接触面52が設けられて、接触面52が支持軸34の先端面に接触されるまで、ネジ部46を軸部36に螺合させる。このため、接触面52と支持軸34の先端面とが面接触(メタルタッチ)されて、ボルトユニット40の締め付けトルクが確保される。さらに、ブッシュ54がボルトユニット40のフランジ部48に押圧されることで、突起58がアッパーレール14によって押し潰される。これにより、アッパーレール14及びフロントアーム28が取付フランジ38に締結される。従って、ボルトユニット40の安定した締め付けトルクを確保しつつ、フロントリンク機構26とアッパーレール14との間のガタや異音を抑制して、アッパーレール14及びフロントアーム28を支持軸34に締結できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
被締結部材に面接触される接触面を有し、組付部材を被締結部材に締結させる締結部材及び締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の車両用バックシートのサイドヒンジ機構では、ヒンジ取付部材(組付部材)としてのワッシャ、軸受け部材、ヒンジブラケット、及びスペーサに軸支部材の段付支軸部が挿通されており、ヒンジ取付部材が軸支部材によってバックフレーム(被締結部材)に締結されている。
【0003】
また、スペーサには突起部が設けられており、ヒンジ取付部材の全体締付け部厚さ(突起部を含む)が段付支軸部の軸方向長さに比して大きく設定されている。このため、軸支部材をバックフレームに締結させた際に、軸支部材の押圧部(頭部)がヒンジ取付部材を押圧することで、ヒンジ取付部材に適宜な締付け力が作用して、ヒンジ取付部材がバックフレームにガタなく締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−283890
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のサイドヒンジ構造では、軸支部材の段付支軸部から連結部(ネジ部)が延設されており、連結部がバックフレームのナットに螺合されている。このため、段付支軸部の周方向全体において、ナットの内周の縁部と軸支部材の段付支軸部の縁部とが接触されにくい(片あたりされやすい)構造にされていた。これにより、軸支部材の安定した締付けトルクを確保することが困難であった。また、ヒンジ取付部材をバックフレームに締結させる際には、スペーサをヒンジブラケットに仮置きしつつ、軸支部材をヒンジ取付部材に挿入させるため、組付け性が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、安定した締付けトルクを確保しつつ、ガタや異音を抑制して組付部材を被締結部材に締結できる締結部材及び締結構造を提供することを第1の目的とし、組付部材を被締結部材に締結させる際の組付け性を向上できる締結部材及び締結構造を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の締結部材は、頭部と、前記頭部から延設され、被締結部材に螺合されるネジ部と、樹脂により成形されると共に、前記頭部のネジ部側に配置され、前記頭部によって押圧されることで組付部材を前記被締結部材に締結させるブッシュ部と、前記頭部に設けられ、前記被締結部材に面接触される接触面と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の締結部材では、頭部から延設されたネジ部が被締結部材に螺合される。また、頭部のネジ部側には、樹脂により成形されたブッシュ部が配置されており、頭部によってブッシュ部が押圧されることで、組付部材が被締結部材に締結される。このため、組付部材と被締結部材との間におけるガタや異音が抑制される。
【0009】
ここで、頭部には接触面が設けられており、接触面が被締結部材に面接触される。このため、頭部と被締結部材とが面接触(メタルタッチ)されて、締結部材の被締結部材に対する締付けトルクが安定して確保される。
【0010】
請求項2に記載の締結部材は、請求項1に記載の締結部材において、前記ブッシュ部に設けられ、前記組付部材側へ突出されると共に、前記組付部材を前記被締結部材に締結させる際に前記組付部材によって押し潰される突起部を備えている。
【0011】
請求項2に記載の締結部材では、ブッシュ部に突起部が設けられており、突起部は組付部材側へ突出されている。ブッシュ部によって被締結部材に組付部材を締結させる際には、組付部材によって突起部が押し潰される。このため、ブッシュ部が組付部材を確実に押圧するため、組付部材が被締結部材に確実に締結される。
【0012】
請求項3に記載の締結部材は、請求項1又は請求項2に記載の締結部材において、前記ブッシュ部に設けられ、前記頭部に係止される係止爪を備えている。
【0013】
請求項3に記載の締結部材では、ブッシュ部には、係止爪が設けられており、係止爪は頭部に係止されている。これにより、ネジ部を被締結部材に螺合させる際には、ブッシュ部を組付部材に仮置きして組付ける必要がないため、組付性が向上される。
【0014】
請求項4に記載の締結部材は、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の締結部材において、前記頭部に設けられ、前記ブッシュ部が配置される段差部を備えている。
【0015】
請求項4に記載の締結部材では、頭部には段差部が設けられており、ブッシュ部が段差部に配置されているため、締結部材にブッシュ部を設けても締結部材の頭部における大型化が抑制される。
【0016】
請求項5に記載の締結構造は、請求項1〜請求項4の何れか一項に記載された前記締結部材を備え、前記被締結部材は、有底筒状に形成されると共に内周部に前記締結部材のネジ部に螺合される雌ネジが形成された軸部と、前記軸部に対して拡径に形成された取付部と、を有し、前記組付部材は、前記軸部が挿通される挿通孔を有すると共に、前記取付部に当接されたことを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の締結構造では、被締結部材の軸部が有底筒状に形成されており、軸部の内周部には雌ネジが形成されている。また、軸部は組付部材の挿通孔を挿通しており、組付部材が被締結部材の取付部に当接されている。
【0018】
さらに、締結部材のネジ部が軸部の雌ネジに螺合されて、締結部材の頭部の接触面が被締結部材に面接触される。このため、頭部と被締結部材とが面接触(メタルタッチ)されて、締結部材の被締結部材に対する締付けトルクが安定して確保される。
【0019】
請求項6に記載の締結構造は、請求項5に記載の締結構造において、前記被締結部材が車両用シートを構成するリンク機構の支持軸であり、前記組付部材が車両用シートを構成するアッパーレールである。
【0020】
請求項6に記載の締結構造では、被締結部材が車両用シートを構成するリンク機構の支持軸であり、組付部材が車両用シートを構成するアッパーレールであるため、車両用シートにおいて、アッパーレールをリンク機構に確実に締結できる。このため、アッパーレールとリンク機構との間におけるガタや異音が抑制又は防止される。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の締結部材によれば、安定した締付けトルクを確保しつつ、ガタや異音を抑制して組付部材を被締結部材に締結できる。
【0022】
請求項2に記載の締結部材によれば、安定した締付けトルクを確保しつつ、確実にガタや異音を抑制して組付部材を被締結部材に締結できる。
【0023】
請求項3に記載の締結部材によれば、組付部材を被締結部材に締結させる際の組付け性を向上できる。
【0024】
請求項4に記載の締結部材によれば、締結部材にブッシュ部を設けても締結部材の頭部における大型化を抑制できる。
【0025】
請求項5に記載の締結構造によれば、安定した締付けトルクを確保しつつ、ガタや異音を抑制して組付部材を被締結部材に締結できる。
【0026】
請求項6に記載の締結構造によれば、車両用シートにおけるアッパーレールとリンク機構との間のガタや異音を抑制又は防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係るボルトユニットを用いた締結構造が適用された車両用シートの要部を車両右斜め前方から見た分解した斜視図である。
【図2】図1に示される車両用シートのフロントリンク機構に適用された締結構造を示す車両前方から見た断面図(図1の2−2線断面図)である。
【図3】図1に示される車両用シートのリアリンク機構に適用された締結構造を示す車両前方から見た断面図(図1の3−3線断面図)である。
【図4】図1に示されるボルトユニットを示す側面図である。
【図5】(A)は、図4に示されるボルトユニットに用いられるブッシュを示すボルトユニットのネジ部側から見た斜視図であり、(B)は、ブッシュを示すボルトユニットの頭部側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、本発明の実施の形態に係るボルトユニット40を用いた締結構造が適用された車両用シート10の要部が車両右斜め前方から見た分解した斜視図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車両右方(車幅方向一側)を矢印RHで示し、上方を矢印UPで示す。
【0029】
この図に示されるように、車両用シート10の下方には、一対の長尺状のガイドレール12が設けられている。一対のガイドレール12は、車両前後方向に沿って平行に配置されて、車体フロアに固定されている。各ガイドレール12には、組付部材としての金属により製作されたアッパーレール14がそれぞれ設けられており、アッパーレール14はガイドレール12に対して車両前後方向にスライド移動可能に支持されている。
【0030】
図2にも示されるように、各アッパーレール14は長尺板状のメインアッパーレール14Aと長尺板状のサブアッパーレール14Bとで構成されている。メインアッパーレール14Aは断面略クランク形状に形成されており、メインアッパーレール14Aの下端部が略U字形状に屈曲されている。
【0031】
サブアッパーレール14Bは、断面略L字形状に形成されており、サブアッパーレール14Bの下端部が略U字形状に屈曲されている。また、サブアッパーレール14Bは、メインアッパーレール14Aの車幅方向外側(図2における車両右側)に配置されて、メインアッパーレール14Aに溶接等により締結されている。
【0032】
図1に示すように、アッパーレール14の車両前側の部分には、断面円形状の挿通孔16が貫通形成されている。また、アッパーレール14の車両後側の部分には、断面略円形状の挿通孔18が貫通形成されており、挿通孔18の内径寸法は挿通孔16の内径寸法と同じ寸法に設定されている。また、一対のアッパーレール14の車両後側の部分には、車幅方向内側において、金属により製作された板状の取付ブラケット20がそれぞれ設けられている。取付ブラケット20は、断面略C字形状に形成されて、アッパーレール14に固定されている。取付ブラケット20には、断面円形状の挿通孔22が貫通形成されている。挿通孔22の内径寸法は挿通孔18の内径寸法と同じ寸法に設定されており、挿通孔22は挿通孔18と同軸上に配置されている。
【0033】
アッパーレール14の上方には、シートクッション24が設けられている。シートクッション24の内部には、図示しないクッションフレームが設けられており、シートクッション24がクッションフレームに支持されている。
【0034】
クッションフレームには、後述するリンク機構としてのフロントリンク機構26及びリアリンク機構60が回動可能に連結されており、フロントリンク機構26及びリアリンク機構60は一対のアッパーレール14に回動可能に連結されている。これにより、シートクッション24の上下方向の位置を調整できるように構成されている。
【0035】
図2にも示すように、フロントリンク機構26には、組付部材としての金属により製作された一対のフロントアーム28が設けられている。フロントアーム28は、略板状に形成されており、フロントアーム28の一端部がクッションフレームに回動可能に連結されている。フロントアーム28の他端部には、断面円形状の挿通孔30が貫通形成されている。挿通孔30の内径寸法は、挿通孔16の内径寸法と同じ寸法に設定されており、挿通孔30はアッパーレール14の挿通孔16と同軸上に配置されている。
【0036】
一対のフロントアーム28の間には、長尺パイプ状の連結棒32が設けられている。連結棒32は、車幅方向に沿って配置されると共に、フロントアーム28の挿通孔30と同軸上に配置されている。
【0037】
図2に示すように、連結棒32の長手方向両端部には、被締結部材としての金属により製作された一対の支持軸34が設けられている。支持軸34は略有底円筒状に形成されており、支持軸34の軸線方向一端(図2の車両左側の端)の部分が連結棒32内に嵌入(圧入)されて、支持軸34が連結棒32に固定されている。
【0038】
支持軸34の先端(軸線方向他端)の部分には、略円筒状の軸部36が設けられており、軸部36の内周部には、雌ネジが形成されている。また、軸部36の外周部には、取付部としての円環状の取付フランジ38が設けられており、取付フランジ38の外径寸法は軸部36の外径寸法に比して拡径に設定されている。軸部36はフロントアーム28の挿通孔30内、及びアッパーレール14の挿通孔16内を挿通しており、取付フランジ38にフロントアーム28の車幅方向内側面が当接されている。
【0039】
図4にも示すように、支持軸34の車幅方向外側には、締結部材としてのボルトユニット40が設けられている。ボルトユニット40には、略六角柱状の頭部44と頭部44から車幅方向内側へ延出された軸状のネジ部46とが設けられている。ネジ部46の外周部には、雄ネジが形成されており、雄ネジが支持軸34の雌ネジに螺合されている。
【0040】
頭部44には、ネジ部46側の部分において、略円板状のフランジ部48が設けられており、フランジ部48は頭部44に比して拡径に形成されている。フランジ部48の外周部には、ネジ部46側の部分において、段差部50が設けられており、段差部50は円環状に形成されている。これにより、頭部44のネジ部46側の面における段差部50を除く部位が接触面52とされており、接触面52と支持軸34の先端面とが接触(メタルタッチ)されている。
【0041】
ボルトユニット40は、樹脂により製作されたブッシュ部としてのブッシュ54を備えている。ブッシュ54は、略円環板状に形成されて、頭部44の段差部50内に配置されており、ブッシュ54のネジ部46側の面と接触面52とが面一に配置されている。ブッシュ54の外周部には、車幅方向外側の面において、一対の係止爪56が設けられている(図5(B)参照)。係止爪56は、略板状に形成されると共に、ブッシュ54から車幅方向外側へ向けて突出されている。係止爪56の先端部には、断面略三角形状の爪部56Aが設けられており、爪部56Aは頭部44のフランジ部48に係止されている。これにより、ブッシュ54が本体部42に組付けられている。ブッシュ54のネジ部46側の面には、突起部としての略半球状の突起58が複数(本実施の形態では6つ)設けられており、突起58はブッシュ54からネジ部46側(アッパーレール14側)へ向けて突出されている(図5(A)参照)。
【0042】
ここで、支持軸34の先端面から支持軸34の取付フランジ38までの長さ寸法は、フロントアーム28の板厚寸法とアッパーレール14(メインアッパーレール14A及びサブアッパーレール14B)の板厚寸法との合計より大きく設定されている。このため、ブッシュ54のネジ部46側面とアッパーレール14との間には隙間が設けられている。また、突起58の突出寸法は、ブッシュ54のネジ部46側面とアッパーレール14との間の隙間寸法に比して大きく設定されている。このため、ボルトユニット40が支持軸34に螺合される際には、ブッシュ54がフランジ部48(頭部44)に押圧されることで、突起58がアッパーレール14によって押し潰されるように構成されている。また、この際には、ボルトユニット40の接触面52が支持軸34の先端面に接触されることで、ボルトユニット40の締付けトルクが確保される。
【0043】
一方、図1及び図3に示すように、リアリンク機構60には、組付部材としての一対のリアアーム62が設けられている。リアアーム62は、略板状に形成されており、リアアーム62の一端部がクッションフレームに回動可能に連結されている。リアアーム62の他端部には、断面円形状の挿通孔63が貫通形成されている。
【0044】
各リアアーム62の他端部には、被締結部材としての支持軸64が設けられている。支持軸64は、略有底円筒状に形成されており、支持軸64の軸線方向一端(図3の車両左側の端)には、取付部としての円板状の取付フランジ65が設けられている。支持軸64は挿通孔63を挿通すると共に、取付フランジ65にリアアーム62の車幅方向内側面が当接されており、支持軸64は、リアアーム62から車幅方向外側へ突出されている。
【0045】
支持軸64の先端の部分には、略円筒状の軸部66が設けられており、軸部66の内周部には、雌ネジが形成されている。軸部66は、それぞれアッパーレール14の取付ブラケット20の挿通孔22内を挿通すると共に、アッパーレール14の挿通孔18を挿通しており、リアアーム62がアッパーレール14の取付ブラケット20に当接されている。
【0046】
支持軸64の車幅方向外側には、前述したボルトユニット40が設けられている。ボルトユニット40のネジ部46は軸部66の雌ネジに螺合されており、ボルトユニット40の接触面52が支持軸64の先端面に接触している。
【0047】
ここで、支持軸64の先端面から取付フランジ65までの長さ寸法は、アッパーレール14の車幅方向外側面から取付ブラケット20の車幅方向内側面までの長さ寸法とリアアーム62の板厚寸法との合計より大きくされている。このため、ボルトユニット40のブッシュ54とアッパーレール14との間には隙間が設けられている。また、突起58の突出寸法は、ボルトユニット40のブッシュ54とアッパーレール14との間の隙間寸法に比して大きく設定されている。このため、ボルトユニット40が支持軸64に螺合される際には、ブッシュ54がフランジ部48(頭部44)に押圧されることで、突起58がアッパーレール14によって押し潰されるように構成されている。また、この際には、ボルトユニット40の接触面52が支持軸64の先端面に接触されることで、ボルトユニット40の締付けトルクが確保される。
【0048】
次に、フロントリンク機構26及びリアリンク機構60をアッパーレール14に組付ける手順を説明すると共に、本実施の形態の作用を説明する。
【0049】
クッションフレームに連結されたフロントリンク機構26では、支持軸34の軸部36がフロントアーム28の挿通孔30内に挿通されている。この状態で、支持軸34の軸部36をアッパーレール14の挿通孔16内に挿通させる。その後、ボルトユニット40のネジ部46を車幅方向外側から軸部36の内周部に挿入させて、ネジ部46の雄ネジを軸部36の雌ネジに螺合させる。
【0050】
ここで、ボルトユニット40の頭部44には、接触面52が設けられており、接触面52が支持軸34の先端面に接触されるまで、ネジ部46の雄ネジを軸部36の雌ネジに螺合させる。これにより、接触面52と支持軸34の先端面とが面接触(メタルタッチ)されて、ボルトユニット40の支持軸34に対する締付けトルクが確保される。さらに、この際には、ブッシュ54がボルトユニット40のフランジ部48(頭部44)に押圧されることで、突起58がアッパーレール14によって押し潰される。これにより、アッパーレール14及びフロントアーム28が支持軸34の取付フランジ38に確実に締結される。したがって、ボルトユニット40の安定した締付けトルクを確保しつつ、フロントリンク機構26とアッパーレール14との間におけるガタや異音を抑制して、アッパーレール14及びフロントアーム28を支持軸34に締結できる。
【0051】
次に、クッションフレームに連結されたリアリンク機構60の支持軸64の軸部66を取付ブラケット20の挿通孔22及びアッパーレール14の挿通孔18内に挿通させる。その後、ボルトユニット40のネジ部46を車幅方向外側から軸部66の内周部に挿入させて、ネジ部46の雄ネジを軸部66の雌ネジに螺合させる。
【0052】
ここで、上述したように、ボルトユニット40の頭部44には、接触面52が設けられており、接触面52が支持軸64の先端面に接触されるまで、ネジ部46の雄ネジを軸部66の雌ネジに螺合させる。これにより、ボルトユニット40の接触面52と支持軸64の先端面とが面接触(メタルタッチ)されて、ボルトユニット40の支持軸64に対する締付けトルクが確保される。さらに、この際には、ブッシュ54がボルトユニット40のフランジ部48(頭部44)に押圧されることで、突起58がアッパーレール14によって押し潰される。これにより、アッパーレール14(取付ブラケット20を含む)がリアアーム62に確実に締結される。したがって、ボルトユニット40の安定した締付けトルクを確保しつつ、リアリンク機構60とアッパーレール14との間におけるガタや異音を抑制して、アッパーレール14及びリアアーム62を支持軸64に締結できる。
【0053】
また、ボルトユニット40のブッシュ54には、係止爪56が設けられており、係止爪56の爪部56Aがボルトユニット40のフランジ部48に係止されている。このため、ボルトユニット40のネジ部46を支持軸34及び支持軸64の内周部に挿入させる際に、ブッシュ54をアッパーレール14に仮置きして組付ける必要がないため、組付性を向上できる。さらに、簡易な構造でブッシュ54をボルトユニット40の頭部44に設ける(組付ける)ことができ、ブッシュ54を容易に交換できる。したがって、ブッシュ54のサービス性を向上できる。
【0054】
さらに、ボルトユニット40には、段差部50が設けられており、ブッシュ54はボルトユニット40の段差部50内に配置されている。このため、ブッシュ54をボルトユニット40に設けても、ボルトユニット40の頭部44における大型化を抑制できる。
【0055】
なお、本実施の形態では、リアリンク機構60のリアアーム62の挿通孔63に支持軸64が挿入されているが、リアリンク機構60をフロントリンク機構26と同様の構成にしてもよい。つまり、一対のリアアーム62の間に連結棒32を配置して、連結棒32の長手方向両端部に設けられた支持軸34をリアアーム62の挿通孔63に挿通させてもよい。この場合には、アッパーレール14に取付ブラケット20を設ける必要がない。
【0056】
また、本実施の形態では、ボルトユニット40のブッシュ54に略半球形状の突起58が設けられているが、突起58の形状はこれに限らない。例えば、突起58を略三角錐形状に形成してもよい。つまり、ブッシュ54がボルトユニット40のフランジ部48に押圧された際に、突起58がアッパーレール14によって押し潰されるように構成されていればよい。
【0057】
さらに、本実施の形態では、ブッシュ54の係止爪56の爪部56Aがボルトユニット40のフランジ部48に係止されることで、ブッシュ54がボルトユニット40の頭部44に組付けられている。これに替えて、インサート成形によってブッシュ54をボルトユニット40の頭部44に一体に設けてもよい。
【符号の説明】
【0058】
14 アッパーレール(組付部材)
26 フロントリンク機構(リンク機構)
34 支持軸(被締結部材)
36 軸部
38 取付フランジ(取付部)
40 ボルトユニット(締結部材)
44 頭部
46 ネジ部
50 段差部
52 接触面
54 ブッシュ(ブッシュ部)
56 係止爪
58 突起(突起部)
60 リアリンク機構(リンク機構)
64 支持軸(被締結部材)
65 取付フランジ(取付部)
66 軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と、
前記頭部から延設され、被締結部材に螺合されるネジ部と、
樹脂により成形されると共に、前記頭部のネジ部側に配置され、前記頭部によって押圧されることで組付部材を前記被締結部材に締結させるブッシュ部と、
前記頭部に設けられ、前記被締結部材に面接触される接触面と、
を備えた締結部材。
【請求項2】
前記ブッシュ部に設けられ、前記組付部材側へ突出されると共に、前記組付部材を前記被締結部材に締結させる際に前記組付部材によって押し潰される突起部を備えた請求項1に記載の締結部材。
【請求項3】
前記ブッシュ部に設けられ、前記頭部に係止される係止爪を備えた請求項1又は請求項2に記載の締結部材。
【請求項4】
前記頭部に設けられ、前記ブッシュ部が配置される段差部を備えた請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の締結部材。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載された前記締結部材を備え、
前記被締結部材は、有底筒状に形成されると共に内周部に前記締結部材のネジ部に螺合される雌ネジが形成された軸部と、前記軸部に対して拡径に形成された取付部と、を有し、
前記組付部材は、前記軸部が挿通される挿通孔を有すると共に、前記取付部に当接されたことを特徴とする締結構造。
【請求項6】
前記被締結部材が車両用シートを構成するリンク機構の支持軸であり、前記組付部材が車両用シートを構成するアッパーレールである請求項5に記載の締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−202551(P2012−202551A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71123(P2011−71123)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】