説明

緩衝部材および梱包部材

【課題】 梱包ケースに用いられる緩衝部材において、最初の衝撃のみならず2度目以降の衝撃に対しても充分な緩衝作用を発揮するようにする。
【解決手段】 載置台21の向かい合う側辺の近傍に2対の孔22a,22b、孔23a,23bを形成する。そして、この載置台21の裏面と離隔対向して基台25を配置する。この基台25上の、2対の孔22a,22b、孔23a,23bの対向位置に2対の突起26a,26b、突起27a,27bを立設する。この突起26a,26b,27a,27bは、上端から下端に向かって断面積が連続的に大きくなる形状を有し、且つ突起の上部断面形状は孔の断面形状と略同一である。突起26a,26b,27a,27bが孔22a,22b,23a,23bに嵌入することによって載置台21と基台25とが連結し、外部から衝撃が加わると突起26a,26b,27a,27bが孔22a,22b,23a,23bを押し広げて押入し衝撃を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緩衝部材に関し、より詳細には外箱の内面に装着される緩衝部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、梱包ケース(梱包部材)内に製品を収容する際には、輸送時の衝撃や振動などから製品を保護するために緩衝部材が用いられている。かかる緩衝部材としては、発泡スチロール樹脂をブロック形状に成形したものやウレタンフォームなどがこれまで広く用いられていたが、近年の環境保護意識の高まりを受けて、焼却などの廃棄処理によって生じる環境汚染が問題となり、近年では段ボール材を材料としたものが種々提案され、また多く用いられている。
【0003】
例えば特許文献1では、図6に示すように、山折りと谷折りとを交互に行って段ボール材を波状に成形した緩衝部材4が提案されている。かかる緩衝部材4の両側部を梱包ケースの外箱1の底面に固着し、梱包ケースC’に収納された製品を落下などの衝撃から保護するようにしている。
【特許文献1】特開平7−61474号公報(特許請求の範囲、図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、提案された緩衝部材による緩衝作用は、衝撃によって緩衝部材4が塑性変形することによって奏されるものであるため、最初の衝撃に対しては緩衝作用が発揮されるものの、2度目以降の衝撃に対しては充分な緩衝作用が発揮されないことがある。
【0005】
本発明者は、約3kgの製品を図6のように梱包ケースに収納し、この梱包ケースを高さ80cmの所から繰り返し落下させて、製品にかかる衝撃荷重をそれぞれ測定した。この結果、1回目の落下試験では60G、2回目の落下試験では80G、そして3回目の落下試験では200Gの衝撃荷重が製品にかかった。なお、「G」は9.8cm/sec2である。製品に影響を与える衝撃荷重はおおよそ100G以上と一般に言われている。したがって、前記実験では3回目の落下によって梱包ケース内の製品が損傷を受けるおそれがある。
【0006】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、最初の衝撃のみならず2度目以降の衝撃に対しても充分な緩衝作用を発揮する緩衝部材を提供することにある。
【0007】
また本発明の目的は、落下や衝突などの衝撃が輸送中に複数回加わった場合であっても被梱包部材に損傷を与えない梱包部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、向かい合う側辺の近傍に少なくとも1対の孔が形成された載置台と、この載置台の裏面と離隔対向して配置された基台と、この基台上の、前記一対の孔の対向位置に立設された少なくとも一対の突起とを備え、前記突起は、上端から下端に向かって断面積が連続的に大きくなる形状を有し、且つ前記突起の上部断面形状は前記孔の断面形状と略同一であり、前記突起が前記孔に嵌入することによって前記載置台と前記基台とが連結し、外部から衝撃が加わると前記突起が前記孔を押し広げて押入し衝撃を吸収することを特徴とする緩衝部材が提供される。
【0009】
ここで、いずれの方向からの衝撃も吸収するようにする観点から、前記孔および前記突起を2対形成し、それぞれの孔および突起を前記載置台の中央を中心として90°回転した位置に形成するのが好ましい。
【0010】
また前記孔および前記突起の断面形状は長方形状であるのが好ましく、効果的に衝撃を吸収するには、孔の長辺を外方へ延ばした線にミシン目を形成するのがさらに好ましい。
【0011】
また本発明によれば、外箱と、外箱の内面に取り付けた緩衝部材とを備えた梱包部材において、前記緩衝部材として前記記載のものを使用することを特徴とする梱包部材が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の緩衝部材では、外部から衝撃が加わると、載置台の孔に嵌入した突起が、孔を押し広げて押入し、これによって衝撃を吸収するので、最初の衝撃のみならず複数回の衝撃に対しても安定して緩衝作用が奏される。
【0013】
また、前記孔および前記突起を2対形成し、それぞれの孔および突起を前記載置台の中央を中心として90°回転した位置に形成すると、いずれの方向からの衝撃に対しても緩衝作用が奏されるようになる。
【0014】
また孔および突起の断面形状を長方形状にすると、衝撃吸収度合いの調整が行い易くなると共に組立性が向上する。また、孔の長辺を外方へ延ばした線にミシン目を形成すると、突起の孔への押入が容易となり一層効果的に衝撃を吸収することができるようになる。
【0015】
また本発明の梱包部材では、前記記載の緩衝部材が外箱の内面に取り付けられているので、落下や衝突などの衝撃が輸送中に複数回加わったとしても被梱包部材を有効に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の緩衝部材および梱包部材について図に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0017】
本発明の梱包部材の一実施形態を示す斜視図を図1に示す。そして図1の梱包部材で用いられている緩衝部材の斜視図を図2に、緩衝部材の組立斜視図を図3に示す。図1に示すように、梱包ケース(梱包部材)Cは、上部開放可能な直方体形状の外箱1の内底面に緩衝部材2が取り付けられてなる。また図2及び図3に示すように、緩衝部材2は、長方形状の2対の孔22a,22b、孔23a,23b(以下、これらの孔を総称して「孔22」と記すことがある)が側辺の中央近傍に形成された、被梱包物3を載置する載置台21と、載置台21の裏面と離隔対向するように配置された長方形状の基台25と、基台25の4辺から垂直に立設された三角形状の2対の突起26a,26b、突起27a,27b(以下、これらの突起を総称して「突起26」と記すことがある)とを有する。なお、この実施形態では、基台25と突起26は一体成形されてなる。すなわち、板状部材(ここでは段ボール材)を正方形に成形した後、正方形の中心に頂点が重なる折り位置で4つの角部を垂直に折り曲げる。すると、図3に示すような、基台25の4辺から三角形状の2対の突起26a,26b、突起27a,27bが垂直に立設された状態となる。もちろん、基台25と突起26とを別部材としても構わないが、組立容易性の観点からは基台25と突起26は一体成形することが望ましい。
【0018】
載置台21に形成された2対の孔22は、突起26の上部断面形状と略同一の形状とされる。後述するように、突起26を孔22に嵌入することによって載置台21と基台25とを連結し、被梱包物3と載置台21を突起26によって支持する。このとき孔22が大きいと当初から突起26が深く嵌入するため、衝撃吸収領域が少なくなる。したがって、孔22の断面形状は、突起26の上部断面形状と略同一とし、突起26の上部で載置台21を支持するようにする。また孔22の長辺から外方に延長した線にミシン目24が形成されている。このようなミシン目24を形成することによって、外部から衝撃が加わったときに、突起26が孔22を押し広げて押入しやすくなり、効果的に衝撃を吸収できるようになる。なお、この実施形態では、2対の孔22a,22b、孔23a,23bおよび突起26a,26b、突起27a,27bが載置台21の中央を中心として90°回転した位置に形成されているが、これらの孔22および突起26は1対であってもよいし3対以上であっても構わない。ただし、衝撃の加わる方向性や載置台の強度を考慮すれば、この実施形態で示すような2対の孔22および突起26を載置台21の中央を中心として90°回転した位置に形成することが推奨される。
【0019】
次に、本発明の緩衝部材の緩衝機構について説明する。図4にその概説図を示す。同図(a)は、被梱包物3を梱包ケースCに収納した状態を示す図である。この梱包ケースCを例えば落下させると、同図(b)のように、落下の衝撃で突起26が載置台21の孔22を押し広げて押入する。これによって被梱包物3に加わる衝撃が抑えられる。そして再び、梱包ケースCを落下させると、同図(c)のように、落下の衝撃で突起26が載置台21の孔22をさらに押し広げて押入する。これによって前記と同様に、被梱包物3に加わる衝撃が抑えられる。このように、突起26が孔22に押し広げて押入できる限り梱包ケースCに幾度の衝撃が加わっても、被梱包物3に加わる衝撃を常に低く抑えることができるようになる。
【0020】
緩衝部材2による衝撃吸収の程度は、例えば突起26の断面積が上端から下端に向かって連続的に大きくなる割合、つまり突起26に形成された斜面の傾きθ(図4に図示)によって調整することができる。斜面の傾きθを急にすれば、比較的小さな衝撃に対しても載置台21の孔22に突起26が押入して衝撃吸収作用を奏するようになる。一方、斜面の傾きθを緩やかにすれば、載置台21の孔22に突起26が押入するのに大きな力が必要となり、大きな衝撃に対して吸収作用を奏するようになる。基台25に形成する突起26の形状はすべて同じにする必要はない。梱包ケースCが落下したときは、被梱包物3の重心からの距離の近い部分に大きな衝撃が加わるので、例えば被梱包物3の重心から近い位置に形成する突起26については、その斜面の傾きを他の突起よりも緩やかとし大きな衝撃を吸収できるようにしてもよい。
【0021】
落下等による底面からの衝撃のみならず各方向からの衝撃に対応するために、外箱1の内底面の他、天面および内周面に緩衝部材2を取り付けてもよい。緩衝部材2を、内底面及び/又は天面に取り付けることで、被梱包物3の垂直方向の衝撃を緩和することができ、内周面に取り付けることで、水平方向の衝撃を緩和することができる。
【0022】
本発明の緩衝部材の材料としては、人力によって容易に折り曲げることが可能なものが好ましく、中でも段ボールが好適に使用できる。また図1に示される載置台21および基台25、突起26は、例えば板状の段ボールを打ち抜き加工することによって作製できる。このとき各折り部にはミシン目あるいは細溝を形成しておけば組立てが容易となる。
【0023】
本発明で使用できる突起および孔の他の実施形態を図5に示す。同図(a)は、側面視において2つの斜面を有する台形状の突起28aと、この突起28aに対応して形成された載置台上の四角形の孔29aである。孔29aの長辺を外方へ延ばした線にはミシン目24が形成されている。同図(b)は、1つの斜面を有する台形状の突起28bと、この突起28bに対応して形成された載置台上の四角形の孔29bである。この孔29bの場合、突起28bの斜面と接触する側にのみミシン目24が形成されている。同図(c)は、上面を底面よりも小さくした円柱形状の突起28cと、この突起28cに対応して形成された載置台上の円形の孔29cである。この孔29cの外周には放射線状に90°間隔でミシン目24が形成されている。突起と孔の形状は、例示した形状に限定されるものではなく、両者が嵌合できる形状であれば特に限定はないが、成形性および衝撃吸収の調整などの点から断面形状が長方形のものが好ましい。
【実施例】
【0024】
本発明者は、前記と同様に、図1に示す梱包ケースに約3kgの製品を収納し、この梱包ケースを高さ80cmの所から繰り返し落下させて、製品にかかる加速度をそれぞれ測定した。この結果、1回目の落下試験では40G、2回目の落下試験では45G、そして3回目の落下試験では40Gであった。このように、本発明の梱包ケースでは、複数回の衝撃が加わっても、製品に伝わる衝撃力をいずれも低く抑えることができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の梱包部材および緩衝部材の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の梱包部材で使用されている緩衝部材の斜視図である。
【図3】図1の梱包部材で使用されている緩衝部材の組み立て図である。
【図4】本発明の緩衝部材の緩衝機構を説明する図である。
【図5】本発明で使用できる突起とそれに対応する孔の他の例を示す図である。
【図6】従来の梱包部材と緩衝部材を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 外箱
2 緩衝部材
3 被梱包物
C 梱包ケース(梱包部材)
21 載置台
22 孔
22a,22b 孔
23a,23b 孔
24 ミシン目
25 基台
26 突起
26a,26b 突起
27a,27b 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
向かい合う側辺の近傍に少なくとも1対の孔が形成された載置台と、この載置台の裏面と離隔対向して配置された基台と、この基台上の、前記一対の孔の対向位置に立設された少なくとも一対の突起とを備え、
前記突起は、上端から下端に向かって断面積が連続的に大きくなる形状を有し、且つ前記突起の上部断面形状は前記孔の断面形状と略同一であり、
前記突起が前記孔に嵌入することによって前記載置台と前記基台とが連結し、
外部から衝撃が加わると前記突起が前記孔を押し広げて押入し衝撃を吸収することを特徴とする緩衝部材。
【請求項2】
前記孔および前記突起が2対形成され、それぞれの孔および突起が前記載置台の中央を中心として90°回転した位置に形成されている請求項1記載の緩衝部材。
【請求項3】
前記孔および前記突起の断面形状が長方形状である請求項1又は2記載の緩衝部材。
【請求項4】
前記孔の長辺を外方へ延ばした線にミシン目が形成されている請求項3記載の緩衝部材。
【請求項5】
外箱と、外箱の内面に取り付けた緩衝部材とを備えた梱包部材において、
前記緩衝部材として請求項1〜4のいずれかに記載のものを使用することを特徴とする梱包部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−321545(P2006−321545A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147702(P2005−147702)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】