説明

練り歯磨きにおける結晶形成の防止

炭酸水素ナトリウム、およびナトリウムと水と反応して水和結晶を沈殿させるアニオン種を含む歯磨き剤において、アニオン種の塩析を大いに低減するために、歯磨き剤が0.60より高くない水分活性を有するように湿潤剤、研磨剤および/または増粘剤に対する水の比率を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、重曹を含む練り歯磨き、および重曹を含む安定な練り歯磨き製剤の提供を目的とする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
歯磨き剤としての炭酸水素塩(重曹)の使用、または歯磨き剤組成中へのそのような塩の組み入れは、オーラルケアの従来技術において周知である。
本件譲受人のデンタルケア(Dental Care:登録商標)およびペロキシケア(PeroxiCare:登録商標)製品の成功に鑑て、練り歯磨き中への炭酸水素塩の組み入れに新たな関心が寄せられている。
歯磨き剤への炭酸水素塩の添加は、歯磨き剤の白化特性を改善すると同時に、良好な歯垢除去能力を提供するというようないくつかの理由で有益である。
ここで重要なのは、炭酸水素塩がブラッシングおよび水によるすすぎの後、口腔中に清潔で新鮮な感覚を提供することである。
【0003】
高濃度の炭酸水素ナトリウムを含む練り歯磨きの製剤化における問題の1つは、製剤にある種の利益を与えるために加えられる特定のアニオンの組み入れである。
練り歯磨きの液相に存在するナトリウムイオンの濃度が、これらのナトリウム塩の結晶水和物のようなこれらのアニオンの塩析を導き得る。しばしば、これらの水和ナトリウムが好ましくなく大きな結晶として沈殿する。
【0004】
したがって、例えば、炭酸水素ナトリウム含有歯石コントロール練り歯磨きの製剤化において、ピロリン酸塩を加えることが好ましい。結石としても知られている歯石は、歯周に形成される硬質の鉱化沈着物である。この形成は、歯垢の薄膜および細胞外マトリックスにおけるリン酸カルシウムの結晶の沈着から生じる。リン酸カルシウムの種々の形態が確認されているが、除去するのが最も困難であり、熱力学的に最も安定な形態はヒドロキシアパタイト(HAP)と呼ばれる。リン酸カルシウムの非晶質形態は、HAPの前駆体であると考えられる。一般的なブラッシングは、通常、非晶質形態を除去することができるが、最終的に安定な結石形態を除去するには十分に効果的ではない。したがって、リン酸カルシウムの非晶質形態がHAPへ変換するのを防止することが望ましい。当該技術では、HAP結晶の形成を妨げる薬剤が効果的な抗歯石剤(anti-tartar agent)であると認識されている。
【0005】
可溶性の無機ピロリン酸塩は、この十年間にわたって、歯石コントロール剤として市販の標準品であった。この技術は、米国特許第4,590,066号、米国特許第4,515,772号および米国特許第4,684,518号を含む一連の特許でParran, Jr.らによって報告されている。
【0006】
しかしながら、炭酸水素ナトリウムにより提供される高濃度のナトリウムイオンの存在中では、ピロリン酸二水素二ナトリウム六水和物またはピロリン酸四ナトリウム十水和物は大きな結晶として沈殿し得る。
【0007】
同様に、再鉱化(remineralize)促進系を含む炭酸水素塩ベースの練り歯磨きの製剤化においては、オルトリン酸が要求される。歯におけるエナメル質および象牙質の主要成分は、カルシウムヒドロキシアパタイトの形成におけるリン酸カルシウムである。この材料は、通常の口腔pHで極めて不溶性である。しかしながら、歯が、種々の口腔バクテリアの作用によって、糖類の解糖から生成された酸に晒されたとき、歯における虫歯の病変(脱鉱化(demineralize))が形成する。これは、リン酸カルシウム塩が酸性媒体中に、より可溶性であるからである。
【0008】
唾液は、カルシウムおよびリン酸イオンに関して過飽和化される。したがって、唾液は、脱鉱化から歯を保護するのを助け、酸によって脱鉱化されるようになった歯をゆっくり再鉱化し得る。フッ化物イオンの存在が、自然な再鉱化プロセスを向上し得、このことがフッ化物練り歯磨きおよびすすぎが虫歯から保護するという、許容されるメカニズムの1つであることは周知である。歯を再鉱化するためのフッ化物含有練り歯磨きおよびすすぎの効果は、唾液中のカルシウムおよびリン酸の適度な濃度によって制限される。再鉱化プロセスを加速させるために、口腔中のカルシウムおよびリン酸イオンの有効な濃度を上げるのが非常に望ましいことは先行技術から明らかである。しかしながら、唾液のpHではリン酸カルシウムの溶解度が低いために、より高濃度の溶解カルシウムおよびリン酸イオンを添加することは容易ではない。
【0009】
歯中の表面病変の再鉱化、および露出した象牙質細管の鉱化を目的としたオーラル製品、すなわち再鉱化/鉱化製品は、例えば、WinstonおよびUsenの米国特許第5,603,922号、第5,605,675号、第6,159,448号、第5,833,957号および第5,858,333号に開示されている。最初に公開された鉱化歯磨き剤は、WinstonおよびUsen特許に基づいていると考えられる。これらの特許は、カルシウム塩を含む第一部分、およびリン酸塩とフッ化塩を含む第二部分からなる二部構成製品(a two-part product)について記載している。第一および第二部分は、チューブ中で仕切り物によって分離されているが、両部分は歯ブラシアプリケーター上にチューブから離されている。炭酸水素塩ベースの再鉱化練り歯磨きにおいて、カルシウム成分は、2相として、フッ化物、リン酸塩および炭酸水素塩成分から分離される。水、湿潤剤および他の練り歯磨き成分の主成分中に、カルシウム相はカルシウム塩および他の従来の練り歯磨き成分を含み、もう一方の相は、リン酸、炭酸水素塩およびフッ化物源を含む。残念ながら、炭酸水素ナトリウムおよびフッ化物を含む相へリン酸塩を添加すると、時々フッ化物イオンも含む水和したオルトリン酸モノ、ジまたはトリナトリウムの大きな結晶の形成をもたらし得るという問題が生じる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
驚くべきことに、炭酸水素ナトリウム含有練り歯磨きの水分活性を、約0.60以下に低下させることによって、ピロリン酸およびオルトリン酸のようなアニオンが、大きな水和結晶として沈殿するのを防止され得ることが見出された。水分活性とは、密封容器中に保持されたときの練り歯磨き上における水の平衡蒸気圧を意味するものであり、同温度で測定された水の飽和蒸気圧によって分類される。
【0011】
練り歯磨きの水分活性は、増粘剤、研磨剤および他の可溶種の含量と同様に、製剤における湿潤剤に対する水の比率の関数である。湿潤剤に対する水の比率を低下させることにより、あるいは増粘剤または水を結合させる他の材料の含量を増加させることにより、水分活性を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の望ましい実施態様
本発明の歯磨き剤は、練り歯磨き、デンタルクリームまたはデンタルゲルを含む。これらは、以下に開示される数種の必須かつ任意の成分を含む。
【0013】
歯磨き剤とは、歯の接触可能な表面の機械的洗浄を補助するための歯ブラシと共に用いられる薬物または製剤である。歯磨き剤(例えば、練り歯磨き)用の代表的な製剤は、変動する量の湿潤剤、有機増粘剤およびガム、無機増粘剤、ならびに香料および甘味料を含む。ほとんどの歯磨き剤は、例えば、腐敗を低減し、歯石蓄積を減少もしくは除去し、過敏症を低減し、または再鉱化を提供するための1つまたはそれ以上の活性成分を含む。
【0014】
歯磨き剤において最も広く使用されている活性成分は、抗う食剤(anti-caries agent)として効果的な水溶性のフッ化物イオン源である。このように、有用なフッ化物イオン源は、可溶性のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム、ヘキサフルオロジルコニウム酸ナトリウムまたはフルオロトリオキソリン酸ナトリウムのような無機フッ化物塩を含む。フッ化ナトリウムおよびフルオロトリオキソリン酸ナトリウムのようなアルカリ金属フッ化物ならびにその混合物は特に有用である。
【0015】
歯磨き剤における可溶性のフッ化物イオン源の量は、使用する特定の化合物および歯磨き剤の種類にもよるが、効果的であるが毒性のない量、一般に製剤の約5.0%以下で組み込まなければならない。このような化合物のいずれの好適な最小量を使用してもよいが、フッ化物イオンを約25ppm、最大5,000ppmまで、好ましくは約850〜1500ppm放出するのに十分な量を使用するのが好ましい。
一般的に、フッ化ナトリウムの場合、フッ化物イオン源は、歯磨き剤の重量に対して0.05重量%〜0.65重量%の量で存在する。フルオロトリオキソリン酸ナトリウムの場合、その化合物は約0.2〜2重量%の量で存在し得る。
【0016】
本発明の歯磨き剤において、炭酸水素ナトリウムは、抗結石補助薬および研磨剤の両方として組み込まれる。同一出願人による米国特許第5,318,773号は、抗結石補助薬としての炭酸水素ナトリウムの使用を説明する。この特許の全内容を参照としてここに組み込む。以前から認識されているように、炭酸水素塩は、ブラッシングおよび水でのすすぎの後、口中に清潔で新鮮な感覚を提供するので、炭酸水素塩を含む練り歯磨きは市場で非常に成功した。好ましくは、炭酸水素ナトリウムは、直径約5μm〜200μm、好ましくは約20μm〜120μmの平均粒子径を有する微粒子で提供される。炭酸水素塩粒子は、歯磨き剤が歯に使用されるときに、所望の研磨特性を与え、かつ所望であれば結石形成の防止を促進させる有効量で存在する限り、特定の製剤、例えば、練り歯磨きまたはゲルによって変動する量で歯磨き剤中に組み込まれ得る。
【0017】
したがって、ここで使用されるように、「効果的な」または「有効量」という用語は、好ましい効果または結果を提供するために利用される成分の十分な量を意味する。練り歯磨きまたはゲルのような歯磨き剤において、効果的な研磨作用を提供し、口腔中に新鮮な感覚を提供するために含まれる炭酸水素ナトリウムの量は、製剤の重量に対して約7重量%〜65重量%である。
【0018】
残念ながら、炭酸水素ナトリウムによって提供されるナトリウムイオンの存在中では、例えば、歯磨き剤における活性剤として提供されるアニオン種は、砂状の練り歯磨きを与え、活性成分として添加される塩の効果を低減させながら、大きな結晶として沈殿し得る。したがって、例えば、水和ナトリウム塩の大きな結晶を形成する傾向があるアニオン種は、オルトリン酸塩、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、メタリン酸塩、ホウ酸塩、チオ硫酸塩、グリセロールリン酸などを含む。水和ナトリウム塩の沈殿は、歯磨き剤の含水量を大幅に減少させることにより低減させることができるが、水は歯磨き剤の成分の均一な混合を提供し、歯磨き剤が業務用のゲルなどとして用いられる際、チューブから流れることができ、歯を効果的にコーティングすることができるように、歯磨き剤に適当な粘度を提供し、そして/またはブラッシングの間、口腔中にあるときに心地がよいとされる練り歯磨きの濃度を提供することがしばしば必要である。したがって、本発明の歯磨き剤は、歯磨き剤製剤の全重量に対して少なくとも5重量%の含水量を有するべきである。少なくとも7重量%の含水量が特に有用である。
【0019】
可溶性のピロリン酸塩は、本発明の歯磨き剤に組み込まれていてもよい活性剤の例である。このような塩は、歯の歯石形成を低減および防止するとして公知であり、ピロリン酸モノ、ジ、トリまたはテトラ−アルカリ金属塩およびこれらの混合物を含む。有用なピロリン酸塩の特定の非限定的な例は、ピロリン酸二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウムおよびこれらの混合物を含む。ピロリン酸塩はそれらの水和形態と同様に無水形態で使用してもよい。
【0020】
先に記載した米国特許第5,318,773号に開示されているように、水溶性のフッ化物イオン源および他の従来の歯磨き剤成分と共に、このような炭酸水素ナトリウム/ピロリン酸アルカリ金属混合物を含む歯磨き剤は、向上された抗結石特性を示す。このような歯磨き剤は、全ピロリン酸塩の低減された濃度を利用してもよく、さらに有効な抗結石活性を有する。さらに、このような歯磨き剤は、これらが実質的に1.5%未満の溶解ピロリン酸イオンおよび不溶解のピロリン酸四ナトリウム二水和物の量を高比率で含むにもかかわらず、有効な抗結石活性を示す。本発明では、炭酸水素ナトリウム歯磨き剤の水分活性は、抗歯石コントロールのために組み込まれてよいピロリン酸塩に対する、炭酸水素ナトリウム成分の塩析効果を低減できるようにコントロールされる。
【0021】
練り歯磨きに組み込まれ得るもう1つのアニオン付加物は無機リン酸塩であり、歯磨き剤に添加され、添加された水溶性もしくは部分的水溶性のカルシウム塩から分離されたときに、歯磨き剤に向上された再鉱化製剤を提供する。このような製剤において、カルシウムとリン酸塩は、好ましくはフッ化物の影響下に歯表面によって採取され、最終的に、不安定な(precarious)病変などを再鉱化するカルシウムヒドロキシアパタイトおよび/またはフルオロ-アパタイトを形成するために組み合わさる。分離したカルシウムおよびリン酸塩を開示しているWinstonおよびUsenの米国特許は上に記載されており、参照としてここに組み入れる。しかしながら、炭酸水素ナトリウムの存在中に、リン酸イオンは水和ナトリウム塩として塩析することができる。この塩析はフッ化物の存在中で増加され、混合水和リン酸フッ化ナトリウムが生成される。このとき、使用者が異物、例えばガラスと間違い得る大きな好ましくない結晶が形成される。
【0022】
本発明の再鉱化製剤に用いられ得る水溶性の無機リン酸塩の例は、例えば、オルトリン酸のジ-もしくはトリ-ナトリウム、カリウム、ナトリウムまたはアンモニウム塩のようなオルトリン酸のジ-もしくはトリ-アルカリ塩およびアンモニウム塩を含む。リン酸二カリウムが特に有用である。再鉱化歯磨き剤製剤中のリン酸イオンの濃度は、一般的に約250〜40,000ppmである。
【0023】
上記のアニオン成分およびその他の成分の水和ナトリウム塩の塩析を防止するために、炭酸水素ナトリウム含有歯磨き剤の水分活性を、約0.60以下に下げなければならないことが見出された。水分活性とは、密封容器中に保持されたときのように歯磨き剤上における水の平衡蒸気圧を意味するものであり、同温度で測定された水の飽和水圧によって分類される。好ましくなく形成された水和結晶の水分活性は約0.30であるので、結晶形成のために熱力学的に有利な条件である水分活性約0.60を有する練り歯磨き中の結晶形成を防止することができるのは驚くべきことである。
【0024】
したがって、含水量、または水分活性が約0.30より高くない必要があると考えられた。練り歯磨きの水分活性は、増粘剤、研磨剤および他の可溶種の含量と同様に、製剤中の湿潤剤に対する水の比率の関数である。湿潤剤に対する水の比率を低くすることによって、または増粘剤もしくは水を結合させる他の材料の含量を増加させることによって、水分活性を低下させることができる。さらに、歯磨き剤に所望の特性を提供するために、歯磨き剤中に十分な含水量が存在していることが重要である。先に述べたように、水の濃度は歯磨き剤の少なくとも約5重量%であるべきである。
【0025】
練り歯磨き、ゲルまたは他の液体ビヒクルは、所望により、炭酸水素ナトリウムに加え、従来の研磨剤(abrasive)または研磨材料(polishing material)も含んでいてもよい。非常に有用である従来の水不溶性の研磨剤は、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム脱水物、無水リン酸二カルシウム、ピロリン酸カルシウム、オルトリン酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、炭酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、水和シリカ、水和アルミナ、ベントナイトおよびそれらの混合物を含む。
【0026】
炭酸水素ナトリウムと混合されてもよい好ましい研磨剤材料(abrasive material)は、水和シリカ、シリカゲルまたはコロイダルシリカ、および非晶質アルミノ珪酸アルカリ金属塩複合体を含む。外観上透明なゲルが用いられるとき、水和もしくはコロイダルシリカ、アルミノ珪酸アルカリ金属塩複合体およびアルミナの研磨剤(polishing agents)は、これらがこのような歯磨き剤に一般に用いられるゲル化剤-液体(水および/または湿潤剤を含む)系の屈折率に近い屈折性を有するので特に有用である。
【0027】
前記の、いずれの水不溶性の研磨剤も、添加剤または第2の研磨剤として、歯磨き剤の重量に対して約50%以下の濃度、好ましくは約20%以下の量で存在していてもよい。
【0028】
有機界面活性剤は、洗浄作用を高め、口腔全体に抗結石剤を完全に分散するのを助け、そして歯磨き剤の洗浄性および発泡特性を改良するために、本発明の歯磨き剤に用いられ得る。そのようにして利用される有機界面活性剤は、本質的にアニオン性、ノニオン性または両性であり得る。
【0029】
好適なアニオン性界面活性剤の例は、ラウリル硫酸ナトリウム、または8〜18の炭素原子のアルキル基を有する他の好適なアルキル硫酸塩のような高級アルキル硫酸塩の水溶性塩、硬化ココナッツオイル脂肪酸のモノ硫酸化モノグリセリドのナトリウム塩のような高級脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸塩の水溶性塩、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムのようなアルキルアリール硫酸塩、高級アルキルスルホ酢酸塩、1,2-ジヒドロキシプロパン硫酸塩の高級脂肪酸エステル、および12〜16の炭素原子の脂肪酸、アルキルまたはアシル基を有するこれらのような低級脂肪族アミノカルボン酸化合物の実質的に飽和した高級脂肪族アシルアミドなどである。
最後に記載されたアミドの例は、石鹸もしくは類似の高級脂肪酸材料から実質的に遊離されるべきであるN-ラウロイルサルコシネート、およびN-ラウロイル、N-ミリストイルもしくはN-パルミトイルサルコシネートのナトリウム、カリウムおよびエタノールアミン塩である。
【0030】
他の好適な界面活性材料は、ソルビタンモノステアレートのエチレンオキシドとの縮合物、エチレンオキシドのプロピレンオキシドとの縮合物またはプロピレングリコールの縮合物(登録商標「Pluronics」で入手可能)のようなノニオン系薬剤を含む。本発明の歯磨き剤において有用な水溶性のノニオン系界面活性剤の他の例は、エチレンオキシドと反応しかつ長い疎水性の鎖(例えば、約12〜20の炭素原子の脂肪鎖)を有する種々の他の化合物との、エチレンオキシドの縮合生成物であり、縮合生成物(「エトキサマー(ethoxamers)」)がポリ(エチレンオキシド)の脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪族アミドまたは多価アルコール(例えば、ソルビタンモノステアレート)との縮合生成物のような親水性のポリオキシエチレンの一部分を含む。
【0031】
種々の界面活性剤は、単独でまたは互いの混合物で用いられ得る。練り歯磨きに使用される界面活性剤または複数の界面活性剤の総量は、重量で約0.05%〜約5%、より好ましくは約0.1%〜約1.0%の範囲が好ましい。
【0032】
好適な香味および甘味薬剤も、本発明の歯磨き剤に用いられ得る。好適な香料の例は、メチルサリチレートと同様に、香味油、例えば、スペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、サッサフラス、クローブ、セージ、ユーカリ、マジョラム、シナモン、レモンおよび/またはオレンジのオイルを含む。
好適な甘味料は、シクラミン酸ナトリウム、ペリラルチン、サッカリン、サッカリンナトリウムおよびアンモニア処理したグリチルリチン(例えば、そのモノアンモニウム塩)などを含む。
適切には、香味および甘味薬剤は、共に歯磨き剤の重量に対して約0.01%〜5%以上を含む。好ましくは、香味油の量は約0.3%、例えば0.8〜1.2%である。
【0033】
練り歯磨きにおいて、液体ビヒクルは、水および湿潤剤を一般に製剤の重量に対して約10%〜約90%の量で含む。グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、ポリプロピレングリコールおよび/またはポリエチレングリコール(例えば、400〜600の分子量)は、好適な湿潤剤/キャリアを例示する。水、グリセリンおよびソルビトールの液体混合物も有利である。屈折率が重要となる半透明のゲル中では、不透明なペースト中よりも水に対する湿潤剤の比率が高いことが好ましい。
【0034】
練り歯磨き、クリームおよびゲルも、一般的に天然もしくは合成増粘剤またはゲル化剤を、重量で約0.1%〜約10%、好ましくは約0.5%〜約5%の割合で含む。好適な有機増粘剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トラガントガム、スターチ、カラゲナン、ポリビニールピロリドン、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースを含み、通常0.1〜2.0%の濃度で用いられる。水和シリカのような無機増粘剤も約0.5〜10%の濃度で用いられ得る。
【0035】
本発明の歯磨き剤に種々の他の材料が組み込まれていてもよい。それらの例は、着色および白色剤、保存料、シリコーン、クロロフィル化合物、およびこれらの混合物、ならびに他の成分である。これらの補助薬は、所望の特性および特徴に実質的に悪影響を与えない量でこの組成物(instant composition)中に組み込まれ、特定の補助薬および含まれる製剤の種類によって選択され、有効量で使用される。
【0036】
次の実施例および対照は、本発明を説明する。
【0037】
実施例1
以下に示される実施例1および対照Aは、2相ポンプ(dual phase pump)またはスプリットチューブ(split tube)から供給される2相の鉱化練り歯磨きである。2セットの製剤間の顕著な差は、それぞれの相における湿潤剤に対する水の比率、および増粘剤、カルボキシメチルセルロースの含量のみである。
【0038】
実施例1 対照A
相A:
グリセリン 13.41 7.83
CMC 9M8F 0.25 0.40
水 5.70 11.13
フッ化ナトリウム 0.22 0.22
サッカリンナトリウム 0.50 0.50
炭酸ナトリウム 0.90 0.90
炭酸水素ナトリウム 27.00 27.00
無水リン酸水素二カリウム 0.90 0.90
ラウリル硫酸ナトリウム 0.63 0.63
香料 0.50 0.50

相B:
グリセリン 17.28 10.91
CMC 9M8F 0.25 0.25
キサンタンガム 0.15 0.30
メチルパラベン 0.03 0.03
プロピルパラベン 0.03 0.03
ソルビトール(70%水溶液) 14.50 14.50
水 5.00 10.35
硫酸カルシウム 2.00 2.00
硫酸ナトリウム 1.50 1.50
サッカリンナトリウム 0.25 0.25
FD&C Blue Dye#1(1%溶液) 0.15 0.15
増粘(Thickening)シリカ 1.00 1.00
研磨剤 水和シリカ 7.00 7.00
ラウロイル硫酸ナトリウム 0.00 1.25
ラウリル硫酸ナトリウム 0.38 0.00
香料 0.50 0.50

合計 100.00 100.00
【0039】
実施例1および対照Aにおける炭酸水素ナトリウム相の水分活性は、それぞれ0.58および0.76であった。冷蔵庫で2週間老化させた後、対照Aでは大量の大きなピラミッド形の結晶が見出された。しかしながら、本発明の実施例1では結晶は見出されなかった。さらに、対照Aでは製品を室温で貯蔵したときでさえ結晶が成長した。しかしながら、実施例1では結晶は成長しなかった。
【0040】
実施例2
以下に示される実施例2および対照Bは、抗歯石剤としてピロリン酸カリウムを利用する、2つの歯石コントロール重曹ベースの練り歯磨きを表わす。
【0041】
実施例2 対照B
グリセリン 39.00 27.00
CMC 9M8F 1.00 0.7
水 16.75 29.55
フッ化ナトリウム 0.25 0.25
サッカリンナトリウム 1.00 0.50
炭酸水素ナトリウム 35.00 35.00
ピロリン酸カリウム 5.00 5.00
ラウリル硫酸ナトリウム 1.00 1.00
香料 1.00 1.00
【0042】
実施例2および対照Bにおける炭酸水素ナトリウム-練り歯磨きの水分活性は、それぞれ0.51および0.76であった。冷蔵庫で2週間老化させた後、対照Bでは大量の大きなピラミッド形の結晶が見出された。しかしながら、本発明の実施例2では結晶は見出されなかった。さらに、対照Bでは製品を室温で貯蔵したときでさえ結晶が成長した。しかしながら、実施例2では結晶が成長しなかった。
【0043】
製剤に添加された炭酸水素ナトリウムとアニオン性成分の反応による水和結晶が、製剤で成長するか否かを比較するために、2つの対照を含む4つの練り歯磨き製剤を製造した。実施例1および2各々において、対照AおよびB各々に加えた唯一の変更点は、その含水量、グリセリンである湿潤剤含量および増粘剤、カルボキシメチルセルロースの含量であった。製剤を下記の表1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸水素ナトリウム、
ナトリウムと水と反応して水和結晶を形成するアニオン成分、
歯磨き剤の重量に対して少なくとも5重量%の含水量、および
湿潤剤、増粘剤、研磨剤または他の溶解種の少なくとも1つ
からなり、約0.60未満の水分活性を有する歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項2】
前記含水量が、歯磨き剤の重量に対して少なくとも7重量%である請求項1の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項3】
前記アニオン種が、ピロリン酸塩またはポリリン酸塩抗歯石剤である請求項1の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項4】
前記アニオン種がオルトリン酸塩であり、前記歯磨き剤がさらに前記オルトリン酸塩から分離されたままである水溶性もしくは部分的水溶性のカルシウム塩を含む請求項1の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項5】
前記炭酸水素ナトリウムが、製剤中、約7〜65重量%の量で存在する請求項1の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項6】
歯磨き剤中、少なくとも10重量%の量で湿潤剤を含む請求項1の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項7】
さらに約0.1〜10重量%の量で増粘剤を含む請求項6の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項8】
さらにフッ化物塩を含む請求項1の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項9】
少なくとも7重量%の水からなる請求項7の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項10】
さらにフッ化物塩を含む請求項9の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項11】
さらに界面活性剤を含む請求項1の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項12】
練り歯磨きの形態である請求項1の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項13】
デンタルクリームまたはゲルの形態である請求項1の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項14】
前記ピロリン酸塩が、ピロリン酸モノ、ジ、トリまたはテトラ−アルカリ金属塩である請求項3の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項15】
前記オルトリン酸塩が、オルトリン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩を含む請求項4の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項16】
前記ピロリン酸塩が、製剤中、約1.5〜15重量%の量で存在する請求項3の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項17】
前記炭酸水素ナトリウムが、製剤中、約7〜65重量%の量で存在する請求項3の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項18】
前記炭酸水素ナトリウムが、製剤中、約7〜65重量%の量で存在する請求項4の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項19】
歯磨き剤中、少なくとも10重量%の量で湿潤剤を含む請求項17の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項20】
歯磨き剤中、少なくとも10重量%の量で湿潤剤を含む請求項18の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項21】
さらに約0.1〜10重量%の量で増粘剤を含む請求項19の歯磨き剤または歯磨き剤相。
【請求項22】
さらに約0.1〜10重量%の量で増粘剤を含む請求項20の歯磨き剤または歯磨き剤相。

【公表番号】特表2007−527867(P2007−527867A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535349(P2006−535349)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/034084
【国際公開番号】WO2005/037240
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(504244210)チャーチ・アンド・ドゥワイト・カンパニー・インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】