説明

練り製品

【課題】従来品と比べてふっくらとして柔らかな食感を有し、魚臭、畜肉臭の軽減されたうまみの引き出された食感の魚肉練り製品または畜肉練り製品を提供すること
【解決手段】練り製品の原料にイヌリンもしくはイヌリン配合製剤を添加することにより得られる練り製品

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食感が改善された魚肉練り製品または畜肉練り製品、およびこれら練り製品に用いる食感改善用の製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
魚肉練り製品または畜肉練り製品はすり身またはミンチ肉に食塩、調味料、澱粉等の副原料を加えてらいかいし、成型し、加熱して製造される。
【0003】
通常はこれに風味素材を加えたり、臭いや嫌味を軽減させるため、或いは食感を改善するために加工澱粉、オリゴ糖、乳化剤などが加えられている(特許文献1〜4参照)。しかし、これらの添加剤では必ずしも十分な効果が得られない。
【0004】
【特許文献1】特開平10−014541号
【特許文献2】特開2002−300864号
【特許文献3】特開2000−004843号
【特許文献4】特開2000−083627号
【特許文献5】WO02/000865A1
【特許文献6】WO03/027304A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的はこのような現状に鑑み、より優れた食感等を有する練り製品および練り製品に用いる食感改善用の製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、水産練り製品および畜肉練り製品の原料にイヌリンを添加することにより本来の魚や肉の風味を引き出し、嫌な生臭みをマスキングし、従来品と比べてふっくらとして柔らかな食感を有し、上品な製品に仕上げることに成功し本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明は練り製品の原料にイヌリンを加えて得られる練り製品である。
【0008】
さらに、本発明は小麦粉及びイヌリンを含む練り製品添加用製剤である。
上記練り製品としては魚肉練り製品または畜肉練り製品が挙げられ、上記練り製品の原料としては小麦粉、糖類を魚肉の練り肉および/または畜肉の練り肉に練り込んだ混合物が挙げられる。イヌリンの添加量は練り製品の全重量に対して0.01重量%から20重量%である。
【0009】
また、使用するイヌリンはシュークロースから酵素合成法により得られたものまたは植物から抽出して得られたものである。
【発明の効果】
【0010】
イヌリンを魚肉練り製品および/または畜肉練り製品に添加することにより、やわらかな食感および好ましい風味の製品に品質を容易に改良することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0012】
本発明の水産練り製品および/または畜肉練り製品は魚肉および/または畜肉をすりつぶしてすり身または粗引きとしたものに必要に応じて調味料などの副原料を加え加熱して製造される食品である。魚肉すり身に用いられる魚としてはスケソーダラ、ホッケ、鯛、いわし、たこ、いか、かに、エビ等が挙げられる。畜肉としては豚、鳥、牛などが挙げられる。具体的な製品の例としてはかまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージ、はんぺん、さつま揚げ、ごぼう天、エビシュウマイ、かにシュウマイ、エビ餃子、つみれ、ウインナーソーセージ、ハム加工品などが挙げられる。また、すり身入り卵焼や魚肉ハンバーグなど一部焼成させたり、フライ等により加熱した加工食品も本発明にいう水産練り製品および/または畜肉練り製品に含まれる。
【0013】
本発明に使用するイヌリンは平均重合度がDP10以上の水溶性食物繊維として分類されるものであり、また、このイヌリンはシュークロースから酵素合成法により得られ、あるいは植物、例えばチコリの塊根部から抽出して得られるものであるが、特にこれらの製法に限定されるものではない。他の製法により得られるものであっても同等のイヌリンであれば本発明のイヌリンとして使用できる。
【0014】
本発明で使用するイヌリン(商品名フジFF)は次の方法により調製する(特許文献5〜6参照)。まず、精製砂糖シロップに酵素フラクトシルトランスフェラーゼを作用させてイヌリン反応シロップを作成する。ついで反応液は活性炭による脱色工程、RO膜による分離工程、イオン交換樹脂による脱塩工程をへて精製イヌリン溶液となる。精製されたイヌリン水溶液は紫外線殺菌装置により殺菌処理をされた後、スプレードライ装置にて粉末化され製品となる(特許文献5〜6参照)。酵素合成法によるイヌリンの特徴は酵素反応時間等により厳密に鎖長をコントロールしながら製造されるため自然界からの抽出物と異なり常に安定したものが供給される。
【0015】
練り製品へのイヌリンの添加効果はそれぞれの固有の重合度と添加量により調整されるが、その関係は必ずしも比例関係にはなく、安定した製品を供給するためにはその都度、製品における効果を確認する必要がある。特に植物由来の天然物は作物の種や作柄により鎖長(平均重合度)は異なることが知られており、常に安定した鎖長のイヌリンを調達するのは難しい。そのため大量生産においては常に一定した添加量で常に安定した効果を得ることのできる酵素合成法により作られたイヌリンがより好ましい。
【0016】
イヌリンの添加量は練り製品の全量に対して0.01重量%から20重量%が好ましく、更に好ましくは0.1重量%から10重量%が好ましい。製品により要求される硬さ等は異なるが、少なくとも使用量を変えることにより硬さやジューシー感をコントロールすることができる。
【0017】
また、精製されたイヌリンは比較的吸湿性があり、単独で水と触れ合うと飴状となる。一旦飴状となると溶解が困難になり作業が悪く、均質化しないためにできた製品にイヌリンの塊が生じる原因となることがある。そこで、これを避けるために、イヌリンを予め配合原料のうちの粉もの、例えば澱粉粉、小麦粉、砂糖等と混合しておくことが必要とされる。したがって、粉の混合設備のない場合または混合工程を省略する場合などには、イヌリンを混合が予想される1種類または数種類の粉と予め混合して製剤としたものを使用することができる。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
【0019】
また、実施例で使用されているイヌリンは商品名フジFF「フジ日本精糖株式会社製、平均DP=16」を使用している。なお、実施例における表中の数字の%および部はそれぞれ重量%および重量部を意味する。
【0020】
[実施例1]
アジのつみれ
アジのすりみ266重量部に塩5.3重量部、コーンスターチ8.1重量部、イヌリン(フジFF)2.8重量部を加えてよく混練を行なう。これを成形し熱湯で茹で上げる。なお、対照品としてイヌリンを加えないものを作成し比較評価を行なった。
【0021】
【表1】

【0022】
このようにして試作した2種類のアジのつみれを冷却し、試食を行い風味、硬さを比較評価した。試食は試作した当日および冷蔵保存1日目の2回にわたり行なった。評価は食品開発経験者10人が行い、良い2点、やや良い1点、コントロールに同じ0点、やや悪い−1点、悪い−2点の5段階法で評価した10名の平均点を算出した。
【0023】
試食評価の結果を下記第2表に示す。
【0024】
【表2】

【0025】
イヌリン(フジFF)を1重量%配合し、試作したつみれはふわふわとした柔らかな食感となり、しっとり感が増し、魚肉の生臭さを軽減して旨みの風味を増幅させることが認められた。また硬さに関しては調理当日よりも1日保存したものの方がよりはっきりと差異が認められた。これは、イヌリンが保存することにより食品の組織の中で経時的に粒子化が生じたためと考えられる。
【0026】
[実施例2]
アジのつみれ
アジのすりみ169重量部に塩3重量部、コーンスターチ5重量部およびイヌリン(フジFF)0、0.09、3.6、19.7、44.3重量部を加えてよく混練を行なう。これを成形し熱湯で茹で上げる。なお、対照品としてイヌリンを加えないものを作成し比較評価を行なった。
【0027】
【表3】

【0028】
このようにして試作した2種類のアジのつみれを冷却し、試食を行い風味、硬さを比較評価した。試食は試作した当日および冷蔵保存1日目の2回にわたり行なった。評価は食品開発経験者10人が行い、良い2点、やや良い1点、コントロールに同じ0点、やや悪い−1点、悪い−2点の5段階法で評価した10名の平均点を算出した。
【0029】
試食評価の結果を下記第4表に示す。
【0030】
【表4】

【0031】
イヌリン(フジFF)を2重量%配合し、試作したつみれは対照がゴムのような硬さであったのに対してソーセージ様の弾力のある高級感のある食感となった。また10重量%配合では最も味のバランスがよいとの評価された。弾力は軽減し、さらにふわふわとした柔らかな食感となり、老人食に最適な硬さと評価された。なお、硬さの変化はイヌリン0.05重量%の添加で既に違いが生じており、魚肉の生臭さを軽減して旨みの風味を増幅させることが認められた。イヌリンを20重量%添加したものは軟らかく食べやすいが、弾力弱く、もう少し歯ごたえが欲しいとのコメントが多かった。
【0032】
[実施例3]
さつま揚げ
真タラのすりみ265重量部に砂糖12重量部、塩3重量部、酒15重量部、みりん9重量部、片栗粉13重量部、イヌリン(フジFF)3.2重量部を加えてよく混練を行なう。これを成形し油で上げる。
なお、対照品としてイヌリンを加えないものを作成し比較評価を行なった。
【0033】
【表5】

【0034】
このようにして試作した2種類のさつまあげを冷却し、試食を行い風味、硬さを比較評価した。試食は試作した当日および冷蔵保存1日目の2回にわたり行なった。評価は食品開発経験者10人が行い、良い2点、やや良い1点、コントロールに同じ0点、やや悪い−1点、悪い−2点の5段階法で評価した10名の平均点を算出した。
【0035】
試食評価の結果を下記第6表に示す。
【0036】
【表6】

【0037】
イヌリン(フジFF)を1重量%配合し、試作したさつまあげは調理した当日はコントロールに比べて大きな差異は認められなかった。しかしながら1日間冷蔵保存後に再評価した所、ふわふわとした柔らかな食感となり、ジューシー感が増していることが認められた。
【0038】
[実施例4]
魚肉ソーセージ
まぐろ237重量部および白身魚60重量部を粗引きにしておく。これに豚のラード15重量部、コーンスターチ25重量部、塩11重量部、イヌリン(フジFF)7.1重量部を加えてよく混練を行なう。これを人工腸に詰めて85度の湯煎で60分茹で上げる。なお、対照品としてイヌリンを加えないものを作成し比較評価を行なった。
【0039】
【表7】

【0040】
このようにして試作した2種類の魚肉ソーセージを冷却し、試食を行い風味、硬さを比較評価した。試食は試作した当日および冷蔵保存1日目の2回にわたり行なった。評価は食品開発経験者10人が行い、良い2点、やや良い1点、コントロールに同じ0点、やや悪い−1点、悪い−2点の5段階法で評価した10名の平均点を算出した。
【0041】
試食評価の結果を下記第8表に示す。
【0042】
【表8】

【0043】
イヌリン(フジFF)を2重量%配合し、試作した魚肉ソーセージはふわふわとした柔らかな食感となり、しっとり感が増し、魚肉の生臭ささを軽減して旨みの風味を増幅させることが認められた。魚肉ソーセージに於いては調理当日に顕著にコントロールとの違いが出ており、1日冷蔵保存することによる効果は得られていない。
【0044】
[実施例5]
ウインナ−ソーセージ
十分に冷やしておいた豚ばら肉297重量部と牛乳55重量部にコーンスターチ10重量部、塩4重量部、イヌリン(フジFF)7.5重量部を加えてよく混練を行なう。これを人工腸に詰めて80度の湯煎で15分から20分茹で上げる。なお、対照品としてイヌリンを加えないものを作成し比較評価を行なった。
【0045】
【表9】

【0046】
このようにして試作した2種類のウインナ−ソーセージを冷却し、試食を行い風味、硬さを比較評価した。評価は食品開発経験者10人が行い、良い2点、やや良い1点、コントロールに同じ0点、やや悪い−1点、悪い−2点の5段階法で評価した10名の平均点を算出した。
【0047】
試食評価の結果を下記第10表に示す。
【0048】
【表10】

イヌリン(フジFF)を2重量%配合し、試作したウインナ−ソーセージはふわふわとした柔らかな食感となり、しっとり感が増し、畜肉の生臭さを軽減して旨みの風味を増幅させることが認められた。
【0049】
[実施例6]
ハンバーグ
玉ねぎ70重量部をみじん切りにして予め炒めておく。さめたら合い挽き肉317重量部、たまご30重量部、パン粉13重量部、コーンスターチ11重量部、塩3重量部、イヌリン(フジFF)9重量部を加えてよく混練を行ない、20分間休ませたのち、大き目のフライパンで焼く。なお、対照品としてイヌリンを加えないものを作成し比較評価を行なった。
【0050】
【表11】

【0051】
このようにして試作した2種類のハンバーグを冷却し、試食を行い風味、硬さを比較評価した。評価は食品開発経験者10人が行い、良い2点、やや良い1点、コントロールに同じ0点、やや悪い−1点、悪い−2点の5段階法で評価した10名の平均点を算出した。
【0052】
試食評価の結果を下記第12表に示す。
【0053】
【表12】

【0054】
イヌリン(フジFF)を2重量%配合し、試作したハンバーグはふわふわとした柔らかな食感となり、しっとり感が増し、畜肉の生臭さを軽減して旨みの風味を増幅させることが認められた。
【0055】
[実施例7]
イヌリン製剤
イヌリン(フジFF)1に対してタピオカ澱粉1を予め混合したミックス粉をイヌリン製剤とする。これを添加量を調整しながら練り物に加えて常に均質な練り製品を作ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
練り製品の原料にイヌリンを加えて得られる練り製品。
【請求項2】
練り製品が魚肉練り製品または畜肉練り製品である請求項1記載の練り製品。
【請求項3】
練り製品の原料が小麦粉、糖類を魚肉の練り肉および/または畜肉の練り肉に練り込んだ混合物である請求項1記載の練り製品。
【請求項4】
イヌリンの添加量が練り製品の全重量に対して0.01重量%から20重量%である請求項1乃至3のいずれかの項記載の練り製品。
【請求項5】
イヌリンがシュークロースから酵素合成法により得られたものまたは植物から抽出して得られたものである請求項1乃至4のいずれかの項記載の練り製品。
【請求項6】
小麦粉及びイヌリンを含む練り製品添加用製剤。
【請求項7】
イヌリンがシュークロースから酵素合成法により得られたものまたは植物から抽出して得られたものである請求項6記載の練り製品添加用製剤。

【公開番号】特開2006−61129(P2006−61129A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250867(P2004−250867)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(502281585)フジ日本精糖株式会社 (14)
【Fターム(参考)】