説明

練パイ用油脂組成物

【課題】 呈味成分が均一に分散し、浮きが良好で且つ均一である層状食品を提供すること。
【解決手段】 層状食品を練パイ方式で製造し、その際に練パイ用油脂として可塑性油脂及びペースト状素材をヘテロの形態で含有する練パイ用油脂組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、練パイ用油脂組成物に関するものであり、詳しくは、練パイ方式で製造するパイ、クロワッサン、デニッシュ・ペストリー等の様々な風味を有する層状食品を製造する際に使用する、ペースト状素材を含有する練パイ用油脂組成物に関するものである。また、本発明は、該練パイ用油脂組成物を使用してなる練パイ生地、及び該練パイ生地を加熱してなる層状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
パイ、クロワッサン、デニッシュ・ペストリー等の層状食品は、通常は、シート状のロールイン用油脂を生地に積載し、包み込み、圧延及び折りたたみの操作を複数回行なって、層状生地を作成した後、これを各種成形し、次いで、必要に応じホイロをとった後、焼成することによって得られる。その風味は、古くからバター風味の商品が好まれ、現在もこれが主流となっているが、最近、嗜好の変化から、バター風味以外に、チーズ、チョコレート、コーヒー等の風味を有する層状食品も販売されるようになってきている。
【0003】
これらの風味を有する層状食品を得るためには、生地中に、チーズ、 チョコレート、 カスタード、コーヒー等の呈味成分を配合する方法、若しくはシート状のフラワーペースト(フラワーシート)に代表されるような呈味成分を配合した水中油型乳化組成物を生地に折り込んだ層状生地を焼成する方法が用いられてきた。
【0004】
生地中に呈味成分を配合する方法において、呈味成分が、粉末果汁や粉末カカオパウダー等の粉状、あるいはチョコチップやダイス状のプロセスチーズ等の固体状である場合は、それらを生地に練り込むことも容易であり、且つ層状食品の浮きも十分なものが得られるが、呈味成分がペースト状の場合は、生地に練り込むと、グルテンの形成阻害やイーストの発酵阻害が発生し易くなり、層状食品の浮きが悪化する問題に加え、老化が早くなるといった欠点がある。
【0005】
また、フラワーシート類を層状生地製造時にロールイン油脂と共に又は別個に折り込んでベーカリー製品を焼成した場合、フラワーシートが焼成時の生地の膨張を阻害するため、浮きが悪化することに加え、ロールイン用油脂を折り込んだ場合と比べ、生地の折数が増やせないので、良好な層状構造を有するベーカリー製品が得られず、食感がねちゃつきやすく、歯切れのよい食感が得られにくいといった欠点がある。
【0006】
このため、ロールイン油脂組成物及びペースト状の呈味成分を、浮きを阻害しない形態で生地に折り込むことを可能とするために、種々の開発検討が行なわれてきた。例えば、呈味成分をロールイン油脂中に乳化する方法(例えば特許文献1参照)、シート状油脂に溝孔を施し、呈味成分を充填、塗布あるいは散布した折り込み用油脂組成物を使用する方法(例えば特許文献2参照)、呈味成分を層状食品の各層に偏在させる方法(例えば特許文献3参照)、生地の上に折り込み油脂を配置した後、予め所定の形状に成型した呈味成分を折り込み油脂上に配置し、これを折りたたんで作製する方法(例えば特許文献4参照)が提案されてきた。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の方法は、呈味成分が油脂中に均一に乳化するため、呈味成分の配合量が制限されてしまう上に、層状食品にした場合、呈味成分の風味が発現しにくいという問題があった。特許文献2に記載の方法及び特許文献3に記載の方法は、特殊な形態のシート状のロールイン用油脂を使用する必要があるため、一般的に汎用し得る方法ではなく、また、層状生地作成時に油脂切れを起こす等、均質な層状生地を得ることができないという問題があった。特許文献4に記載の方法は、呈味成分を均一に層状食品に分散させることが難しいことに加え、層状食品の浮きが不均一となる問題がある。また、いずれの方法においても、シート状油脂を使用するため、生地に油脂組成物を包み込む操作が必要であり、操作が煩雑であることに加え、折り畳みの操作により生地端部にシート状油脂の入らない耳生地が必ず発生するため、歩留まりが悪いという問題もあった。
【0008】
【特許文献1】特開平1−231841号公報
【特許文献2】特開平11−289978号公報
【特許文献3】特開2001−178354号公報
【特許文献4】特開2001−321064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、特殊なシート状のロールイン油脂を使用することなく、呈味成分が均一に分散されており、浮きが良好で且つ均一である層状食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、種々検討した結果、層状食品を練パイ方式で製造し、その際、練パイ用油脂として、可塑性油脂及びペースト状素材をヘテロの形態で含有させた練パイ用油脂組成物を用いることにより、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0011】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、可塑性油脂及びペースト状素材をヘテロの形態で含有することを特徴とする練パイ用油脂組成物、該練パイ用油脂組成物を使用してなる練パイ生地、並びに該練パイ生地を加熱してなる層状食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特殊なシート状のロールイン油脂を使用することなく、呈味成分が均一に分散されており、浮きが良好で且つ均一である層状食品を提供することができ、また、練パイ生地の歩留まりを向上させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の練パイ用油脂組成物について詳述する。
【0014】
本発明の練パイ用油脂組成物で使用する可塑性油脂としては、特に限定されず、一般的な可塑性油脂が使用可能である。可塑性油脂としては、バターや、水中油型マーガリン、油中水型マーガリン、ショートニング等が挙げられる。これらの可塑性油脂は、勿論、一般的な可塑性油脂に含まれる各種の糖や呈味成分等を含有するものであってもよい。
【0015】
本発明の練パイ用油脂組成物で使用するペースト状素材としては、層状食品に呈味成分を配合するために用い得るペースト状の素材を特に制限なく用いることができ、具体例としては、フラワーペースト、シュー生地、カスタードクリーム、ジャム、ゼリー、アーモンドクリーム、マロンペースト、あん、チョコペースト、ヌガー等を挙げることができる。本発明においては、これらの中でも、可塑性のあるシート状から軟らかいペースト状まで適度の硬さに調整することが可能であり、且つ所望の各種風味を付与することが可能である点において、フラワーペーストを使用するのが好ましい。
【0016】
また、これらのペースト状素材は、それらの中に固形物が存在していても、全体の物性が層状生地製造時の障害にならない限りは、問題なく使用可能である。この場合の固形物としては、例えば、果肉、つぶあん、チョコチップ、ナッツのダイス等が挙げられる。
【0017】
本発明の練パイ用油脂組成物は、上記可塑性油脂及び上記ペースト状素材をヘテロの形態で含有する。ヘテロの形態とは、練パイ用油脂組成物において、ペースト状素材と可塑性油脂とが乳化されていたり、ペースト状素材が可塑性油脂中に溶解していたりする、いわゆるホモの形態ではなく、練パイ用油脂組成物において、可塑性油脂及びペースト状素材が、マーブル状、縞状又は層状の状態で存在するか、可塑性油脂及びペースト状素材の一方が、他方の中に粒状の状態で存在するか、あるいは、可塑性油脂がペースト状素材で被覆された状態や、ペースト状素材が可塑性油脂で被覆された状態等、可塑性油脂とペースト状素材とが別個に視認できる状態で存在することを指す。
【0018】
具体的には、マーブル状、縞状又は層状である場合は、可塑性油脂とペースト状素材とが別個に視認できればよいが、練パイ用油脂組成物中の可塑性油脂及びペースト状素材の層について、厚さの最大部分が好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.5mm以上あればヘテロの形態で存在すると判断する。なお、その上限は特に制限されるものではないが、5cm以内であることが好ましい。
【0019】
また、粒状である場合は、練パイ用油脂組成物中の可塑性油脂又はペースト状素材の粒径が好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.5mm以上あればヘテロの形態で存在すると判断する。なお、その上限は特に制限されるものではないが、5cm以内であることが好ましい。
【0020】
また、可塑性油脂がペースト状素材で被覆された状態や、ペースト状素材が可塑性油脂で被覆された状態である場合は、その全面が被覆されたものであるのが好ましいが、一部が被覆されない状態であっても十分使用可能である。なお、被覆層の厚さは好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.5mm以上である。
【0021】
本発明の練パイ用油脂組成物は、層状生地を得る際に従来の練パイ用油脂組成物と同一の使用方法で使用可能な点で、ペースト状素材が可塑性油脂で被覆された状態であることが好ましい。
【0022】
本発明の練パイ用油脂組成物中における上記可塑性油脂と上記ペースト状素材との配合比は、特に限定されないが、可塑性油脂1重量部に対し、好ましくはペースト状素材が0.1〜10重量部、より好ましくは0.3重量部〜3重量部である。
【0023】
次に、本発明の練パイ用油脂組成物の製造方法を説明する。
【0024】
可塑性油脂及びペースト状素材をヘテロな状態に含有させる方法としては、マーブル状、縞状、層状又は粒状とする場合は、シート状の可塑性油脂とシート状のペースト状素材とを重ね合わせる方法や、可塑性油脂とペースト状素材とをミキサー等で軽く混合する方法、あるいは、粒状としたペースト状素材を可塑性油脂中に分散させる方法、粒状に成形した可塑性油脂とペースト状素材とを軽く混合する方法等が挙げられる。
【0025】
可塑性油脂がペースト状素材で被覆された状態とする方法としては、例えば、ペースト状素材を外包材とし、可塑性油脂を内包材として、包餡機を使用して包餡する方法や、ダイス状に成形した可塑性油脂を、ペースト状素材でコーティングする方法等が挙げられる。
【0026】
ペースト状素材が可塑性油脂で被覆された状態とする方法としては、例えば、可塑性油脂を外包材とし、ペースト状素材を内包材として、包餡機を使用して包餡する方法や、ダイス状に成形したペースト状素材を、可塑性油脂でコーティングする方法等が挙げられる。このコーティングの際に用いる可塑性油脂としては、溶解、冷却後テンパリング等の特殊な温度調整を行なわずとも良好な可塑性油脂皮膜が得られることから、直接β型の微細油脂結晶を5重量%以上含有する油脂組成物を用いることが好ましく、該油脂組成物を用いることにより、簡便な操作で本発明の練りパイ用油脂組成物を得ることが可能である。
【0027】
上記の直接β型の微細油脂結晶とは、油脂結晶を融解し、冷却し、結晶化したときに、熱エネルギー的に不安定なα型結晶から、準安定形のβプライム型を経由せず、最安定形のβ型微細結晶に直接転移する油脂結晶のことである。この際、上記の結晶化の条件は、如何なる結晶化条件であってもよく、テンパリング等の特殊な熱処理を必要としない。
【0028】
ここで、上記の直接β型の微細油脂結晶の例を挙げる。
上記の直接β型の微細油脂結晶の1つ目の例として、StEE(St:ステアリン酸、E:エライジン酸)で表されるトリグリセリド(以下StEEとする)の油脂結晶が挙げられる。
また、上記の直接β型の微細油脂結晶の2つ目の例として、S1MS2(S1及びS2は飽和脂肪酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリセリド(以下S1MS2とする)とMS3M(S3は飽和脂肪酸、Mはモノ不飽和脂肪酸を表す)で表されるトリグリセリド(以下MS3Mとする)とからなるコンパウンド結晶が挙げられる。
【0029】
上記のS1MS2のS1及びS2並びにMS3MのS3は、好ましくは炭素数16以上の飽和脂肪酸であり、さらに好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸である。また、上記のS1、S2及びS3が、同じ飽和脂肪酸であるのが最も好ましい。
上記のS1MS2のM及びMS3MのMは、好ましくは炭素数16以上のモノ不飽和脂肪酸、さらに好ましくは炭素数18以上のモノ不飽和脂肪酸、最も好ましくはオレイン酸である。
【0030】
上記の直接β型の微細油脂結晶を5重量%以上含有する油脂組成物としては、該範囲で直接β型の微細油脂結晶を含有するように、StEEを含有する油脂、及び/又はS1MS2を含有する油脂とMS3Mを含有する油脂の混合油を用いて調製した油脂組成物を用いればよい。
【0031】
上記のStEEを含有する油脂としては、例えば、大豆油、ひまわり油、シア脂及びサル脂の中から選ばれた1種又は2種以上に、水素添加及び/又は分別の処理を施した加工油脂を用いることができるが、好ましくは、ハイオレイックひまわり硬化油、シア分別軟部油の硬化油又はこの硬化油の分別硬部油、サル分別軟部油の硬化油又はこの硬化油の分別硬部油を用いる。
【0032】
上記のS1MS2を含有する油脂としては、例えば、パーム油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、コクム脂、デュパー脂、モーラー脂、フルクラ脂、チャイニーズタロー等の各種植物油脂、これらの各種植物油脂を分別した加工油脂、下記のエステル交換油、及び該エステル交換油を分別した加工油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
上記のMS3Mを含有する油脂としては、例えば、豚脂、豚脂分別油、及び下記のエステル交換油の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
上記のエステル交換油としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種動植物油脂、これらの各種動植物油脂を必要に応じて水素添加及び/又は分別した後に得られる加工油脂、脂肪酸、脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油が挙げられる。
【0035】
上記の直接β型の微細油脂結晶を5重量%以上含有する油脂組成物においては、直接β型の油脂結晶として、StEEの油脂結晶、及びS1MS2とMS3Mとからなるコンパウンド結晶のどちらを用いてもよく、また併用してもよい。
【0036】
そして、前述の方法で得られた、可塑性油脂及びペースト状素材をヘテロな状態に含有した本発明の練パイ用油脂組成物は、必要に応じ小片状に成形する。小片状に成形することにより、練パイ製造時に直ちに生地製造することが可能となる。
【0037】
上記小片状とは、立方体状、直方体状、角柱状、円柱状、半円柱状、球状等の形状で、その大きさが、立方体状又は直方体状のものは一辺の長さが35mm以下、角柱状のものは断面となる多角形の一辺が35mm以下で長さが100mm以下、円柱状又は半円柱状のものは直径が35mm以下で長さが100mm以下、球状のものは直径が35mm以下程度のものである。
【0038】
小片状に成形する方法としては、特に限定されるものではないが、可塑性油脂及びペースト状素材をヘテロな状態に含有する本発明の練パイ用油脂組成物を、包丁や自動ラインでカットする方法や、小穴をあけた口金を通す押し出し成形で吐出させた後にカットする方法等が挙げられる。
【0039】
次に、本発明の練パイ生地について述べる。
【0040】
本発明の練パイ生地は、小麦粉等の穀類を主体とするベーカリー生地に、本発明の練パイ用油脂組成物を含むものであり、練パイ方式で製造される層状食品を得るための生地である。具体的には、練パイ方式で製造されるパイ、クロワッサン、デニッシュ・ペストリー、フライパイ等のベーカリー生地が挙げられる。
【0041】
本発明の練パイ生地には、ベーカリー生地に通常使用する主原料や副原料を特に制限なく使用することが可能であり、また、イーストを含む生地であっても、含まない生地であってもよい。
【0042】
本発明の練パイ生地中の本発明の練パイ用油脂組成物の含有量は、生地中で使用する小麦粉等の穀類100重量部に対して、好ましくは10〜130重量部、さらに好ましくは15〜90重量部、最も好ましくは20〜70重量部である。10重量部未満であると、層状食品の層が形成されないおそれがあり、130重量部を超えると、焼成時に油の流出が起こるおそれがある。
【0043】
また、本発明の練パイ生地は常法に準じて製造することができる。小麦粉等の穀類を主体とするベーカリー生地中に本発明の練パイ用油脂組成物を添加する方法は、特に限定されず、一般の練パイの製造方法と同様の方法で添加することができる。具体的には、オールインミックス法でもよく、いったん製造した小麦粉等の穀類を主体とするベーカリー生地中に、練パイ用油脂組成物を添加してもよく、小麦粉等の穀類を主体とするベーカリー生地をブレークダウンするまでミキシングした生地に練パイ用油脂組成物を分散させてもよい。
【0044】
また、本発明の練パイ用油脂組成物をベーカリー生地に添加・混合する際は、練パイ用油脂組成物を冷蔵又は冷凍した状態で添加・混合することが好ましい。
【0045】
また、本発明の練パイ生地は、小麦粉等の穀類を主体とするベーカリー生地中に本発明の練パイ用油脂組成物を添加後、折り畳み操作を加えないものであっても良いが、好ましくは、シーター等を用いて圧延・折り畳み操作により、好ましくは9〜1024層、より好ましくは27〜432層の層状生地とする。9層未満であると、浮きが不均一になりやすく、また、焼成時に油の流出が起こるおそれがある。1024層を超えると、層状食品の層が形成されないおそれがある。
なお、勿論、本発明の練パイ生地は、冷凍保存することも可能である。
【0046】
次に、本発明の層状食品について述べる。
【0047】
本発明の層状食品は、本発明の練りパイ生地を、常法により、必要に応じ、折り畳み、圧延、包餡、成形、ホイロ等の処理をした後、焼成及び/又はフライしてなるものである。
【0048】
なお、包餡する場合は、小麦粉等の穀類を主体とするベーカリー生地中に本発明の練パイ用油脂組成物を添加・分散させただけの練パイ生地を外包材とし、餡、ジャム、シュー生地等を内包材として、包餡機を使用して包餡成形すると、シーター等による折り操作を省略できる上に、均質な食感とすることができ、さらに2種以上の風味を違った食感と呈味で味わうことができるため、特に好ましい。
【0049】
本発明の層状食品は、マーブル状のきれいな呈味あるいは着色された層状構造を持ち、見た目がたいへんきれいであることに加え、浮きも均一で良好である。また、呈味成分が偏在することもないため、食感も良好である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等により何等制限されるものではない。なお、下記実施例及び比較例中の「%」は、「重量%」を意味する。
【0051】
〔実施例1〕
パーム45℃硬化油、大豆35℃硬化油及びパーム油を、35:50:15の重量割合で配合した混合油脂81%、レシチン0.5%並びにステアリン酸モノグリセリド0.5%からなる油相と、水17%及び食塩1%からなる水相とを、常法により、油中水型乳化後、急冷可塑化し、マーガリンを得た。
外包材として上記マーガリンを、内包材としてストロベリージャム(糖度50%)を使用し、包餡機(レオン自動機製CN500)を用いて、外包材:内包材の重量比が1:1、直径30mm、長さ30mmの略円柱状となるように包餡成形し、ペースト状素材を可塑性油脂で被覆した形態である本発明の練パイ用油脂組成物を得た。
得られた練パイ用油脂組成物を使用して、下記の練パイの配合・製法で練パイを製造したところ、練パイ用油脂組成物の延展性及びストロベリージャムの分散性は良好であり、得られた練パイはきれいなマーブル状となった。また、得られた練パイは、浮き倍率が8倍以上と良好であり、ジャムの風味も強く感じられる上に、食感もさっくりしており大変良好であった。
【0052】
<練パイの配合・製法>
予め−20℃に調温しておいた薄力粉40重量部、強力粉60重量部及び練パイ用油脂組成物56重量部をミキサーボウルに投入し、縦型ミキサーにて低速で30秒混合後、食塩1.5重量部を水54重量部に溶解した食塩水を投入し、低速1分で混合した後、5℃で12時間静置した。次いで、リバースシーターを用いて、3つ折りを4回行ない(計81層)、5℃で1時間レストをとった後、3mmまで圧延し、これを50mm×30mmの大きさに打ち抜き成形し、ピケローラーでピケ孔をあけた後、室温で15分レストし、200℃の固定窯で15分焼成した。
【0053】
〔実施例2〕
ストロベリージャムに代えて、下記の配合・製法で得られたカスタード風味のフラワーペーストを使用した以外は、実施例1と同様にして、ペースト状素材を可塑性油脂で被覆した形態である本発明の練パイ用油脂組成物を得た。
得られた練パイ用油脂組成物を使用して、実施例1と同様の配合・製法で練パイを製造したところ、練パイ用油脂組成物の延展性及びフラワーペーストの分散性は良好であり、得られた練パイはきれいなマーブル状となった。また、得られた練パイは、浮き倍率が8倍以上と良好であり、カスタードの風味も強く感じられる上に、食感もさっくりしており大変良好であった。
【0054】
<フラワーペーストの配合・製法>
パーム油24.5%及びナタネ極度硬化油0.5%に、キサンタンガム0.01%及びペクチン0.3%を添加し、油相とした。水30%、デンプン4%、小麦粉3%、ゼラチン2%、砂糖混合果糖ブドウ等液糖(糖分75%、水分25%)27%、脱脂粉乳3%、乾燥全卵5%及び香料0.69%を混合し水相とした。この油相と水相とを混合、乳化、均質化した後、加熱殺菌し、次いで、22℃まで冷却した後、長さ400mm、幅200mm、厚さ8mmのシート状に成形し、シート状のカスタード風味のフラワーペーストを得た。
【0055】
〔実施例3〕
ストロベリージャムに代えて、小倉餡を使用した以外は、実施例1と同様にして、ペースト状素材を可塑性油脂で被覆した形態である本発明の練パイ用油脂組成物を得た。
得られた練パイ用油脂組成物を使用して、実施例1と同様の配合・製法で練パイを製造したところ、練パイ用油脂組成物の延展性及び小倉餡の分散性は良好であり、得られた練パイはきれいなマーブル状となった。また、得られた練パイは、浮き倍率が8倍以上と良好であり、小倉餡の風味も強く感じられる上に、食感もさっくりしており大変良好であった。
【0056】
〔実施例4〕
ストロベリージャムに代えて、下記の配合・製法で得られた生チョコを使用した以外は、実施例1と同様にして、ペースト状素材を可塑性油脂で被覆した形態である本発明の練パイ用油脂組成物を得た。
得られた練パイ用油脂組成物を使用して、実施例1と同様の配合・製法で練パイを製造したところ、練パイ用油脂組成物の延展性及び生チョコの分散性は良好であり、得られた練パイはきれいなマーブル状となった。また、得られた練パイは、浮き倍率が8倍以上と良好であり、生チョコの風味も強く感じられる上に、食感もさっくりしており大変良好であった。
【0057】
<生チョコの配合・製法>
純生クリーム24%に、蜂蜜5%、ブドウ糖果糖液糖5%、加糖練乳15%及びラム酒1%を添加し、水相の糖度を70に調整した。
また、カカオマス8%、砂糖22%、ココアバター10%及び全脂粉乳10%から成る配合にて、常法に従いミルクチョコレート生地を製造した。
そして、溶解した上記ミルクチョコレート生地と上記水相とを混ぜ合わせて、水中油型乳化チョコレートを製造した。
【0058】
〔実施例5〕
ストロベリージャムに代えて、以下の配合・製法で得られたシュー生地を使用した以外は、実施例1と同様にして、ペースト状素材を可塑性油脂で被覆した形態である本発明の練パイ用油脂組成物を得た。
得られた練パイ用油脂組成物を使用して、実施例1と同様の配合・製法で練パイを製造したところ、練パイ用油脂組成物の延展性及びシュー生地の分散性は良好であり、得られた練パイはきれいなマーブル状となった。また、得られた練パイは、浮き倍率が8倍以上と良好であり、卵の風味も強く感じられる上に、食感もさっくりしており大変良好であった。
【0059】
<シュー生地の配合・製法>
シュー用マーガリン140重量部及び水140重量部をミキサーボウルに計量し、ガスコンロにかけ、105℃になるまで加熱溶解した。これに小麦粉100重量部を一気に投入し、十分糊化・混合して糊化物を得た。ミキサーボウルをミキサーにセットし、中速で2分ミキシングし、糊化物が55℃まで冷えたところで、膨張剤1重量部と全卵250重量部との混合物を、中速でミキシングしながら徐々に加え、均一なシュー生地とした。
【0060】
〔実施例6〕
実施例2で使用したフラワーペーストをシーターで厚さ10mmまで圧延した後、10mm角のダイス状に切り出し、10mm角のダイス状フラワーペーストとした。一方、下記配合・製法により得られたコーティング用ショートニングをボウルにあけ、撹拌しながら湯煎し、ペースト状となるまで加温した。上記ダイス状フラワーペーストをこのコーティング液中に浸漬後、直ちに引き上げ、可塑性油脂コーティング層を施した後、5℃で24時間冷却し、ペースト状素材が可塑性油脂でコーティングされた形態である本発明の練パイ用油脂組成物を得た。
得られた練パイ用油脂組成物を使用して、実施例1と同様の配合・製法で練パイを製造したところ、練パイ用油脂組成物の延展性及びフラワーペーストの分散性は良好であり、得られた練パイはきれいなマーブル状となった。また、得られた練パイは、浮き倍率が8倍以上と良好であり、カスタードの風味も強く感じられる上に、食感もさっくりしており大変良好であった。
【0061】
<コーティング用ショートニングの配合・製法>
豚脂分別軟部油47%、パーム油52.4%、並びに乳化剤としてのステアリン酸モノグリセリド0.5%及びレシチン0.1%を混合し、急冷可塑化工程(冷却速度−20℃/分以上)にかけ、コーティング用ショートニングを得た。得られたコーティング用ショートニングは、光学顕微鏡下で3μm以下の微細結晶であり、S1MS2を13%、MS3Mを13%含有していた。従って、得られたコーティング用ショートニングは、直接β型の微細結晶であるコンパウンド結晶を26%含有していた。
【0062】
〔実施例7〕
実施例2で使用した可塑性油脂(マーガリン)とフラワーペーストとを軽くミキサーで混合した後、押し出し成形により、直径13mm、長さ30mmのストロー状に成形し、可塑性油脂及びペースト状素材をマーブル状に含有する本発明の練パイ用油脂組成物を得た。
得られた練パイ用油脂組成物を使用して、実施例1と同様の配合・製法で練パイを製造したところ、練パイ用油脂組成物の延展性及びフラワーペーストの分散性は良好であり、得られた練パイはきれいなマーブル状となった。また、得られた練パイは、浮き倍率が8倍以上と良好であり、カスタードの風味も強く感じられる上に、食感もさっくりしており大変良好であった。
【0063】
〔実施例8〕
実施例2で使用した可塑性油脂(マーガリン)をシート状に圧延後、実施例2で使用したシート状のフラワーペーストを重ね合わせ、シーターで10mmまで圧延し、10mm角のダイス状に切り出し、可塑性油脂及びペースト状素材を層状に含む本発明の練パイ用油脂組成物とした。
得られた練パイ用油脂組成物を使用して、実施例1と同様の配合・製法で練パイを製造したところ、練パイ用油脂組成物の延展性及びフラワーペーストの分散性は良好であり、得られた練パイはきれいなマーブル状となった。また、得られた練パイは、浮き倍率が8倍以上と良好であり、カスタードの風味も強く感じられる上に、食感もさっくりしており大変良好であった。
【0064】
〔実施例9〕
実施例1で得られた練パイ用油脂組成物を使用して、下記の配合・製法により、パイ饅頭を製造したところ、練パイ用油脂組成物の延展性及びフラワーペーストの分散性は良好であり、得られたパイ饅頭において、練パイからなる外包材は、きれいなマーブル状となった。また、練パイからなる外包材は、ストロベリージャムの風味も強く感じられる上に、食感もさっくりしており大変良好であった。また、生地のストロベリー風味と包餡した小倉餡との風味・食感のマッチングも良好であった。
【0065】
<パイ饅頭配合・製法>
配合:強力粉40重量部、薄力粉60重量部、食塩1重量部、練込油脂(マーガリン)5重量部、全卵(正味)5重量部、モルト1重量部、水50重量部、練パイ用油脂組成物100重量部
製法:練パイ用油脂組成物以外の全原料をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で4分、中速で5分混捏し、得られた生地をバットに入れ、袋掛け後5℃の冷蔵庫で一晩リタードした。この生地を再びミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で4分、中高速で10分混捏した。ここでストロー状の練パイ用油脂組成物を投入して30秒混合した。
この生地を外包材、小倉餡を内包材とし、包餡機(レオン自動機製CN208)を用いて、内包材:外包材の重量比が20:20、合計重量が60gのパイ饅頭生地を得た。このパイ饅頭生地を軽く押しつぶし、20℃で60分リタードした後、200℃の固定窯で20分焼成し、パイ饅頭を得た。
【0066】
〔比較例1〕
ミキシング時間を中速で7分とし均一の混合状態とした以外は、実施例7と同様にして、ペースト状素材が完全に均一に可塑性油脂に混合され、可塑性油脂とペースト状素材とが別個に視認できない状態である比較例の練パイ用油脂組成物を得た。
得られた練パイ用油脂組成物を使用して、実施例1と同様の配合・製法で練パイを製造したところ、練パイ用油脂組成物の可塑性が悪いため延展性が悪く、得られた練パイはきれいなマーブル状とならず斑状であった。また、得られた練パイは、浮き倍率が6倍以下と不良であり、カスタードの風味は薄く、食感もねっとりしており不良であった。
【0067】
〔比較例2〕
実施例2で使用したフラワーペーストをシーターで厚さ10mmまで圧延した後、10mm角のダイス状に切り出し、10mm角のダイス状フラワーペーストとした。一方、実施例2で使用した可塑性油脂(マーガリン)を10mm角のダイス状とした。
練パイの配合において、練パイ用油脂56重量部を、上記ダイス状フラワーペースト28重量部及び上記ダイス状可塑性油脂28重量部の混合物に変更した以外は、実施例1と同様の配合・製法で練パイを製造したところ、フラワーペーストが均質な層にならないため、浮きが不均一であり、また、延展性も悪く、得られた練パイはきれいなマーブル状とならず斑状であった。また、得られた練パイは、浮き倍率が6倍以下と不良であり、カスタードの風味が偏在し、食感もねっとりしており不良であった。
【0068】
〔比較例3〕
ダイス状フラワーペーストの添加時期を3つ折り2回目の延展時とした以外は、比較例2と同様の配合・製法で練パイを製造したところ、フラワーペーストが厚い層になり、浮きが不均一であり、また、延展性も大変悪く、得られた練パイはきれいなマーブル状とならず斑状であった。また、得られた練パイは、浮き倍率が6倍以下と不良であり、カスタードの風味が偏在し、食感もねっとりしており不良であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑性油脂及びペースト状素材をヘテロの形態で含有することを特徴とする練パイ用油脂組成物。
【請求項2】
上記ペースト状素材がフラワーペーストである請求項1記載の練パイ用油脂組成物。
【請求項3】
上記ヘテロの形態が、上記ペースト状素材を上記可塑性油脂で被覆した形態であることを特徴とする請求項1又は2記載の練パイ用油脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の練パイ用油脂組成物を使用してなる練パイ生地。
【請求項5】
請求項4記載の練パイ生地を加熱してなる層状食品。

【公開番号】特開2006−66(P2006−66A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180891(P2004−180891)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】