説明

縦管用耐火二層遮音管

【課題】耐火二層管の性能と遮音性を損なわずに遮音シートへの浸水を簡単且つ確実に防止する。
【解決手段】合成樹脂製の内管1を繊維混入モルタル製の外管2で被覆した耐火二層管3の外周を、吸音材6からなる内層と、防水性耐火材8の外層と、これら内層と外層の間に遮音材7からなる中間層とを有する耐火防水性の遮音シート5で捲回した構成の縦管用耐火二層遮音管12において、縦管用耐火二層遮音管の上端側で外管を遮音シートから突出させ、該外管の突出部13の周面から該遮音シートの上端部周面までを防水材14で被覆した。防水材を、外管の突出部の周面から該遮音シートの上端部周面までを覆う第1防水材14aと、第1防水材の外管の周面上の端部を覆う第2防水材14bで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦管用として使用される耐火二層管の周囲に遮音シートを捲回した構成の縦管用耐火二層遮音管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高層住宅やオフィスビルなどの配管として、図1乃至図3に示したような、硬質塩化ビニール製の内管1の外周を繊維混入モルタル製の外管2で被覆した構成の耐火二層管3が使用されている(特許文献1)。この耐火二層管3は、内管1が塩化ビニール製であるため錆びることがなく排水などの流通性が良く、繊維混入モルタルの外管2は耐火性があるので、火災の延焼を防止できる利点があり、通常は、床スラブに埋設された繊維混入モルタルの外皮で合成樹脂製の継手内管を被覆した構成の耐火二層管継手4を介して配管接続される(特許文献2)。
【0003】
また、これらの耐火二層管3や耐火二層管継手4に、その内部を流通する排水の騒音が外部へ漏れ難くするための遮音シート5で覆うことも行われている(特許文献3、特許文献4)。この遮音シート5の一例の詳細は図3に示す如くであり、フェルトや発泡ウレタンなどの吸音材6と、ゴムやポリ塩化ビニールシートなどの遮音材7を重層し、その上に更にアルミフィルムとガラスクロスを重合したアルミガラスクロスの防水性耐火材8を貼り合わせて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−161392
【特許文献2】特開平9−310389
【特許文献3】特開2006−90538
【特許文献4】特開2008−101762
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように耐火二層管継手4は床スラブ10に埋設され、その上下の縦管接続口に耐火二層管3が接続されるが、遮音シート5を巻きつけた耐火二層管継手4の場合、排水騒音は小さくなるが、上層階で床スラブ上に水溜りが生じると、図2の経路9で示したようにその水が遮音シート5の層と繊維混入モルタルの外皮との間を伝って床スラブ10を抜け、更に耐火二層管3の外管2とその遮音シート5との間に侵入し、階下の室が浸水したり、耐火二層管3にカビが発生したりするようになる。耐火二層管継手4の床スラブ10の貫通部上縁11に防水塗装を施せば階下への漏水を防止できるが、実際は、継手4の横枝管と床スラブ10との間には狭い隙間しかないので、完全な防水塗装は困難である。
【0006】
また、配管工事現場において耐火二層管3が雨水を被って遮音シート5へ浸透する事故が生じた場合は、吸音材から水分が抜けにくく、カビ発生などの原因になるので、この場合は水濡れした耐火二層管3を交換する再工事を行なうことが要求され、工事費用が嵩む不都合がある。
【0007】
本発明は、こうした不都合等を解消し、耐火二層管の性能と遮音性を損なわずに遮音シートへの浸水を簡単且つ確実に防止することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記課題を解決すべく、合成樹脂製の内管を繊維混入モルタル製の外管で被覆した耐火二層管の外周を、吸音材からなる内層と、防水性耐火材の外層と、これら内層と外層の間に遮音材からなる中間層とを有する耐火防水性の遮音シートで捲回した構成の縦管用耐火二層遮音管において、該縦管用耐火二層遮音管の上端側で外管を遮音シートから突出させ、該外管の突出部の周面から該遮音シートの上端部周面までを防水材で被覆した。該防水材は、該外管の突出部の周面から該遮音シートの上端部周面までを覆う第1防水材と、第1防水材の外管の周面上の端部を覆う第2防水材で構成され、該遮音シートの内層をフェルトあるいは発泡樹脂の吸音材とし、外層をアルミガラスクロス製の防水性耐火材とし、中間層をポリ塩化ビニールシートの遮音材とし、該防水材をアルミガラスクロス製の粘着テープとすることで、安価に本発明の課題を解決できる。
【発明の効果】
【0009】
上層の階で漏水が発生したとき、床スラブに埋設した耐火二層管継手の周囲を伝って縦管用耐火二層遮音管の上端部へと漏水するが、該遮音管に巻かれた遮音シートよりも外管が突出しており、遮音シートの上端部は外管の突出部の周面から該遮音シートの上端部周面までを覆った防水材により遮蔽されているので、漏水は防水材の表面に沿って遮音シートの外層の防水性耐火材の表面へと流れ、遮音シートの吸音材に侵入することがなく、カビや異臭の発生が防止できる。また、配管作業のために用意した縦管用耐火二層遮音管が降雨などにより水濡れしても、その防水材を設けた上端側からは遮音シート内に浸水することがないので資材の品質の低下を防止できる。
【0010】
この耐火二層管はその長さを調整するとき、外管を内管からスライドさせ、必要な寸法に内管及び外管を切断し、遮音シートも切断されるが、防水材を外管の周面と遮音シートの上端周面にまたがって被覆してあるので、この切断作業を滞り無く実施できる。
【0011】
該防水材を、上記のように外管の突出部の周面から該遮音シートの上端部周面までを第1防水材で覆い、更に第1防水材の外管の周面上の端部を第2防水材で覆うことにより、外管の周面から第1防水材が遊離することを防げ、確実な防水性が得られる。また、該防水材をアルミガラスクロス製の粘着テープとすることにより、耐火性が具備されるので、遮音シートの内層をフェルトあるいは発泡樹脂の吸音材とし、外層をアルミガラスクロス製の防水性耐火材とし、中間層をポリ塩化ビニールシートの遮音材とした遮音シートを持つ耐火二層管の耐火性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の縦管用耐火二層遮音管の施工状態の側面図
【図2】図1の場合の漏水経路の説明図
【図3】図1の要部の拡大図
【図4】本発明の実施例の一部切断側面図
【図5】図4の要部の拡大図
【図6】本発明の縦管用耐火二層遮音管の施工状態における漏水経路の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を図面に基づき説明すると、図4及び図5において、符号3は合成樹脂製の内管1を繊維混入モルタル製の外管で被覆した耐火二層管、符号5は該耐火二層管3の外周に捲回した遮音シートを示し、該遮音シート5は、内層を構成するフェルトや発泡ポリウレタンなどの吸音材6と、アルミ箔とガラスクロスを重合したアルミガラスクロス製の防水性耐火材8の外層と、これらの内層と外層の間のポリ塩化ビニールシート製の遮音材7からなる中間層を備えて縦管用耐火二層遮音管12に構成されており、こうした構成は前記した従来のものと略同様で、合成樹脂製の継手内管17の外周を繊維混入モルタル製の継手外管18で覆い、その外周に遮音シート5aを備えた耐火二層管継手4の上下の接続口に縦管として接続されることも従来のものと同様である。
【0014】
本発明のものでは、図5に明示したように、縦管用耐火二層遮音管12の上端側で外管2と遮音シート5の上端から例えば20〜30mm突出させ、その突出部13の周面から遮音シート5の上端部周面までをアルミガラスクロス製の粘着テープからなる防水材14を被覆接着し、これにより縦管として耐火二層管継手4に接続したとき、その周囲からの漏水が遮音シート5の吸音材6に浸入することがないようにした。その詳細は図6に示す如くであり、防水材14は外管2の突出部13の周面から遮音シート5の上端部周面までを覆う第1防水材14aと、第1防水材14aの外管の周面上の端部15を覆う第2防水材14bで構成し、第1防水材14aが突出部13の周面から遊離し難くなるようにした。
【0015】
本発明のものによれば、耐火二層管継手4の周囲からの漏水は図6に示すように接続部を覆う耐火カバー16の内面を伝って遮音シート5へと流下するが、第1、第2の防水材14に阻まれて防水性耐火材8の表面に沿って流れ、吸音材6に浸透することがなく、カビや異臭の原因になることがなく、漏水に伴う後始末を短時間に終え得る。また、配管現場において降雨などに曝されても防水材14により吸音材6に浸水することが防止でき、資材の品質の低下を防止できる。また、縦管用耐火二層遮音管12の長さ寸法を短く調整するときは、該内管1と外管2を相対的にスライドさせ、内管1、外管2および遮音シート5を切断することで簡単に調整できる。
【符号の説明】
【0016】
1 内管、2 外管、3 耐火二層管、4 耐火二層管継手、5 遮音シート、6 吸音材、7 遮音材、8 防水性耐火材、12 縦管用耐火二層遮音管、13 突出部、14 防水材、14a 第1防水材、14b 第2防水材、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の内管を繊維混入モルタル製の外管で被覆した耐火二層管の外周を、吸音材からなる内層と、防水性耐火材の外層と、これら内層と外層の間に遮音材からなる中間層とを有する耐火防水性の遮音シートで捲回した構成の縦管用耐火二層遮音管において、該縦管用耐火二層遮音管の上端側で外管を遮音シートから突出させ、該外管の突出部の周面から該遮音シートの上端部周面までを防水材で被覆したことを特徴とする縦管用耐火二層遮音管。
【請求項2】
上記防水材を、上記外管の突出部の周面から該遮音シートの上端部周面までを覆う第1防水材と、第1防水材の外管の周面上の端部を覆う第2防水材で構成したことを特徴とする請求項1に記載の縦管用耐火二層遮音管。
【請求項3】
上記遮音シートの内層をフェルトあるいは発泡樹脂の吸音材とし、外層をアルミガラスクロス製の防水性耐火材とし、中間層をポリ塩化ビニールシートの遮音材とし、上記防水材をアルミガラスクロス製の粘着テープとしたことを特徴とする請求項1に記載の縦管用耐火二層遮音管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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