説明

縮小開口生物学的試料収集及び移動デバイス

【課題】
【解決手段】
生物学的試料収集及び移動デバイスに基づくろ過を提供する。ろ過及び移動デバイスは、2つの軸端を有する管状体と、一方の軸端に配置された環状フランジと、環状フランジの外側面に取り付けた生物学的試料フィルタと、を具える。好ましくは、環状フランジは、その外側面上に、均一な高さを有し、フィルタが位置する平面リムを形成する環状リッジを配置する。選択的に、環状フランジは2つの設置部を具え、これらの各設置部にフィルタが接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、一般的に生物学的試料作成用の微視的粒子の収集及び移動用デバイスに関する。
【0002】
本発明の背景
パパニコラウスミア(pap smears)を含む多くの医療試験は、器具を用いて標的領域の皮膚又は粘膜を擦過及び/又は掻爬することによって、医師が細胞を収集する必要がある。次いで、細胞をスライド上にこすりつけて固定して、実験室に運んでスライドを染色する。次いで、細胞検査技師及び/又は病理学者によって、このスライドを顕微鏡下で観察して、細胞異常性を特定することができる。判定中、病理学者は、細胞の核部分を染色することによって特徴付けられるポリクローム技術を用いて、形成異常、又は異常増殖の存在を決定することができる。また、病理学者は、細胞の原形質を見るために、対比染色を適用することもできる。サンプルは、デブリス、血液、粘液、及びその他の光を吸収するアーティファクトを含むことがあるので、この試験は評価することが難しく、収集したサンプルの適切な診断評価を提供することができない。
【0003】
保存液内に収集した剥離した細胞に基づく細胞診は、スライド上に直接細胞をこすりつける伝統的な方法を越える多くの利点を提供する。米国特許第6,572,824号、第6,318,190号、第5,772,818号、第5,364,597号、及び第5,143,627号に記載されているように、フィルタートランスファ技術(filter transfer technique)を用いて、細胞検査液からスライドを作成することができる。
【0004】
フィルタートランスファ法は、一般的に、液体中に懸濁した細胞を収集することで開始する。これらの細胞は保存液内に集めて分散させるか、又は、収集した生物学的な液体中に、自然に存在させることができる。PreservCytTM溶液等のメタノールを含有する保存液中の分散は、対象の細胞に作用することなく、粘液を壊し、赤血球或いは炎症細胞を崩解させる。次いで、この液体は膜を被せた固定径の開口を有するフィルタを通って、濃縮し、細胞収集する。膜との孔を通って流れる崩解した血球や分散した粘液等のデブリスは膜で集められず、分散とろ過を併用する方法によって大きく低減する。次いで、膜上に集めた細胞を、スライド上に移す。
【0005】
現在のフィルタートランスファ法は、固定径の開口を有するフィルタを使用している。従って、特別な試験のために、細胞サンプルのスポットは、例えば7mmのより小さいスポットが所望される場合でも、例えば21mmの均一な大きさである。分散した細胞の単分子層を収集し、試験用の顕微鏡スライドに移す従来のデバイスは、非常に平面的な配列を有するフィルタ位置決めリム付の管を有し、収集した粒子の空間分布を忠実に維持して、顕微鏡スライドに収集した細胞を移すようにフィルタを位置決めする。このデバイスを製造し、使用する装置は、フィルタが固定されている管の直径に基づいて標準化される。
【0006】
この管の直径を変更することなく、上記の型のこの公知のフィルタデバイスの開口を調節することで、移すときに、収集した粒子の空間分布を変形させるミクロ流体の動的作用が生じることが分かった。開口を調節する方法には、フィルタの下側でのMylar(登録商標)リングの使用、及び開領域又は閉領域での膜の使用が含まれる。その結果、現在のフィルタートランスファ法は、均一の開口を有するフィルタを使用しており、移動する細胞が過剰になって廃棄することになる。これらの過剰な細胞は、余分な試験試薬の使用が必要となり、コストの増加が生じる。細胞サンプルを形成する間に消失する細胞の量を減らすことは、使用する試験試薬の量を低減するだけでなく、1つのサンプル収集手順を行う間に回収される細胞で実施することができる試験の数を増やす。このことは、サンプルより多くの確認試験を可能にし、細胞の収集を難しくし、患者が収集手順にさらされる回数を少なくする。
【0007】
本発明の概要
本発明の一の実施例によれば、生物学的試料収集及び移動デバイスが提供されている。ろ過及び移動デバイスは、2つの軸端を有する管状体と、一方の軸端に配置した環状フランジと、この環状フランジの外側表面に取り付けられた生物学的試料フィルタと、を具える。好ましくは、この環状フランジは、その外側表面に、均一の高さを有し、フィルタが位置する上に平面リムを形成する環状リッジを配置している。また、好ましくは、この環状フランジは、その外側表面に、フィルタをフランジに結合する際に使用する2つの環状溝を配置している。
【0008】
選択的に、環状フランジは、2つの設置部を具え、これらの各設置部にフィルタが接合されている。また、選択的に、このフィルタは、フィルタ部と、フィルタ部の半径方向外向きの設置部を具え、この設置部は環状フランジ上の2つの設置部に接合されている。ろ過及び移動デバイスは、選択的に、キャップを具え、このキャップは、環状フランジが配置されている軸端の反対側の管状体軸端を流体的に閉じる。更に、ろ過及び移動デバイスは、選択的に空気源の導管と、圧力モニタの導管を具え、これらの導管は、空気源と圧力モニタにそれぞれ連結されている。
【0009】
本発明の別の実施例によれば、流体中に担持されている微視的な生物学的粒子を収集する方法が提供されている。この方法は、微視的な生物学的粒子を担持している流体中に上記のろ過及び移動デバイスを配置するステップと、真空にして、このデバイス内に流体を引き込み、フィルタで生物学的粒子を収集するステップと、を具える。
【0010】
本発明の別の実施例によれば、生物学的試料収集に基づくろ過及び移動システムが提供されている。この収集及び移動システムは、2つの軸端を有する管状体と、一方の軸端に配置した環状フランジと、この環状フランジの外側表面に取り付けた生物学的試料フィルタと、を具える。更に、このシステムは、空気源の導管を介して前記管状体に連結した空気源と、圧力モニタの導管を介して前記管状体に連結した圧力モニタと、を具える。好ましくは、この環状フランジは、その外側表面に均一の高さを有し、フィルタを設置する平面リムを形成する環状リッジを配置する。また好ましくは、環状フランジは、その外側表面にフランジにフィルタを接合する際に使用する2つの環状溝を配置している。
【0011】
選択的に、環状フランジは、2つの設置部を具え、フィルタが、これらの各設置部に接合されている。また、選択的に、このフィルタはフィルタ部と、フィルタ部の半径方向外向きの設置部とを具え、この設置部は環状フランジ上の2つの設置部に接合されている。ろ過及び移動システムは、選択的に、キャップを具え、これは、環状フランジが配置されている軸端の反対側の管状体の軸端を流体的に閉じる。
【0012】
本発明の更に別の実施例によれば、生物学的試料収集に基づくろ過及び移動システム用キットが提供されている。このキットは、2つの軸端を有する第1管状体と、一方の軸端に配置された第1開口を規定する第1環状フランジと、この第1環状フランジの外側表面に取り付けた第1生物学的試料フィルタとを具える。更にこのキットは、2つの軸端を有する第2管状体と、一方の軸端に配置された第2の開口を規定する第2環状フランジと、この第2環状フランジの外側表面に取り付けた第2生物学的試料フィルタとを具える。第1及び第2開口は、開口が異なる。
【0013】
本発明の更なる実施例によれば、生物学的試料収集に基づいたろ過及び移動デバイスを製造する方法が提供されている。この方法は、管状体の軸端に配置した環状フランジに、生物学的試料フィルタを接合するステップと、このフィルタを熱収縮させるステップと、二回目の環状フランジにフィルタを接合するステップと、を具える。好ましくは、この接合は熱的に、又は超音波で行われる。
【0014】
図面は、本発明の実施例の設計及び有用性を例示するものであり、同一の要素は、共通の符号を付して参照する。
【0015】
例示された実施例の詳細な説明
図1を参照して、生物学的試料フィルタデバイス100の一実施例について述べる。フィルタデバイス100は生物学的試料収集及び移動システム166で使用することができ(図7)、フィルタリング技術を用いてサンプル収集コンテナ168から生物学的試料スライド132(図4に示す)に生物学的試料を移動するように設計されている。このため、フィルタデバイス100は、一般的に、管状体102と、管状体102の一端に配置した環状フランジ104と、この環状フランジ104に取り付けた生物学的試料フィルタ膜106と、を具える。
【0016】
管状体102は、縦軸に沿って延在する円筒型の壁108の形状をしている。円筒型の壁108は、完全に開口している近位軸端112と、環状フランジ104の遠位軸端114で終了する。環状フランジ104は、管状体102によって規定される真空キャビティ111と連通した中央開口103を規定する半径方向内向き面101を具える。例示の実施例では、管状体102及び環状フランジ104は、番号Styron685Dとして、Dow Chemical Companyによって販売されているポリスチレン樹脂から、単一ピースとして成型される。その結果として、フィルタデバイス100の使用中に圧力下で空気が漏れることがあるこれらの部品間に継ぎ目がない。しかしながら、代替的に、管状体102と環状フランジ104は、まず別々の部品として形成して、次いで互いに接合するようにしてもよい。
【0017】
環状フランジ104は、フィルタ膜106を取り付ける外側取付面105を具える。環状フランジ104に取り付けたときに、フィルタ膜106は、環状フランジ104と一致する環状周辺部136と、管状体102の遠位端114に形成した中央開口103と一致して、これにまたがる中央開口部126と、を具える。以下に更に詳細に述べるように、粒子を含む溶液がそこを流れる一方で、粒子を中央フィルタ開口部126で捕捉することができる。このため、フィルタ膜106は、製造者から商業的に入手できる親水性の湿潤剤で処理した多孔性ポリカーボネート膜の形をしている。例示の実施例では、フィルタ膜106は、約16ミクロンの厚さであり、メーン州04024、スタンフォード所在のWhatman Corporationから入手可能である。
【0018】
フィルタ膜106は、いずれかの好適な方法で、環状フランジ104の取付面105に取り付けることができるが、例示の実施例では、以下により詳細に記載するように取付面に熱接着している。代替的に、フィルタ膜106を、環状フランジ104の取付面105に超音波で接合することもできる。好適な超音波接合プロセスは、マサチューセッツ州02370、ロックランド所在のPolyfiltronics,Inc.から入手可能である。同様に、フィルタ膜106を、環状フランジ104の取付面105に溶剤接着することもできる。
【0019】
従って、管状体102の直径は同じであるが、環状フランジ104が、中央フィルタ開口部126の直径は小さくすることができることが分かる。更に、図8に示すように、生物学的試料ろ過及び移動キット200は、異なる開口206/208を有する2つ又はそれ以上の管状体202/204から組み立てることができる。管状体206/208は、同じキャップ142によって閉じるように構成されており(図5参照)、生物学的試料収集及び移動システム166中で交換可能に使用される(図7参照)。
【0020】
ここで図2及び図3を参照すると、環状フランジ104は、ろ過デバイス100の効力を強化するいくつかの特徴を具える。特に、環状フランジ104は、取付面116から半径方向内向きに配置された環状リッジ120を具える。環状リッジ120は、その上でフィルタ膜106を伸ばす遠位リム122を特徴とする。中央フィルタ部126が非常に平面的なジオメトリを取ることができるように、位置決めリム122は、縦軸110にほぼ垂直な平面124内に位置し、環状リッジ120は、均一な高さである。例示の実施例では、環状リッジ120は、環状フランジ104の半径方向内向き面101と同一面にある半径方向内向きリッジ面107を具える。代替的に、半径方向内向きリッジ面107が、半径方向内向きフランジ面101から半径方向外向きにオフセットしていてもよい。
【0021】
図3に示すように、取付面105は、内側環状取付面116と、外側環状取付面118とに、位相的に分けられており、互いに同軸関係にある。以下に更に詳細に述べるように、取付面116/118を使用することで、フィルタ膜106を段階的に環状フランジ104に有利に取り付けることができる。この環状フランジ104は、リッジ120と内側取付面116と同軸で、これらの間半径方向に間挿された内側環状空気バリア128を具える。例示のバリア128は、内部環状溝130の形をしており、これは、フィルタ膜106の熱接着中に取付面105で発生したあらゆる熱を絶縁する熱バリアである。これによって、位置決めリム122の歪み、或いは、幾何学的な変形を最小にする。溶剤接着を用いて環状フランジ104にフィルタ膜106を取り付ける場合は、バリア128は、溶媒の作用によってリム122が変形してしまうことも防止する。更に、バリア128は、内側取付面116にフィルタ膜106を接合又はその他の取付中に、デブリスその他の過剰物或いは流れる物質を捕捉、さもなければ受けるための容器を提供する。従って、バリア128は、歪みから、及び、位置決めリム122が規定する所望の高度な平担面を変更する、又は平坦面を損なう材料デブリスから、位置決めリム122を実質的に隔離する。
【0022】
従って、フィルタ膜106の取付によって起こる取付面105の歪みは、位置決めリム122の正確な位置決め形状を変更しない。結果として、中央フィルタ領域126は、正確な平面配置を有することができる。従って、図4に示すように、顕微鏡スライド等の生物学的試料スライド132が、中央フィルタ領域126と接触すると、中央フィルタ領域126全体が、同一平面上で、支持デバイス132に隣接する。この実質的に均一な隣接部が、収集した粒子を中央フィルタ領域126の全面に配置して、支持デバイス132に直接移すことを可能にする。結果として、移動後にフィルタ膜上に残る粒子量を最小限にする。フィルタ膜上の同じ空間分布で、試料スライド132が移動される。
【0023】
また、環状フランジ104は、内側と外側の取付面116/118の間に配置した外環状空気バリア109を特徴とする。内側環状空気バリア128に関して上述したのと同様に、外環状バリア109は、内側取付面116にフィルタ膜106を接合又はその他の取付中に、デブリスその他の過剰物或いは流れる物質を捕捉、さもなければ受けるための容器を提供する環状溝の形状を取る。
【0024】
上に簡単に記載されているように、環状フランジ104にフィルタ膜106を取り付ける1つの方法は、熱接着である。このプロセスでは、フランジ104上の外側取付面118にフィルタ膜106を熱で溶接する第1熱接着ステップを最初に実行する。次いで、フィルタ膜106を均一に伸ばして、フランジ104上のフィルタ膜106の平らでしわのない配置を強化するフィルタ収縮ステップを実行する。上述したように、好ましくは、フィルタ膜106をフランジ104の外側取付面118に熱接着する第1ステップの後に、このフィルタ収縮ステップを実行することによって、収集フィルタ膜106から試料スライド132への粒子の移動が促進されることが分かった。最後に、流体力学的効果で、フィルタ粒子の移動が妨害されることを防ぐために、フランジ104上の内側取付面116にフィルタ膜106を熱で溶接する熱接着の第3ステップを実行する。
【0025】
図9は、熱接着プロセスの方法で、環状フランジ104にフィルタ膜106を取り付けるために使用する熱接着装置170を示す。この製造装置170は、本質的にラムチップ174を有する加熱ラム172を用いた軸プレスである。フランジ104の外側環状取付面118とほぼ同じ直径を有するホーン又は中空管のような形状をしたラムチップ174を、フィルタ膜106に対して直接プレスし、フィルタ膜106、好ましくはフィルタ膜106の周辺領域136をフランジ104に溶接することができる温度に維持する。好ましくは、ラムチップ温度を、例えばデジタル制御で制御し、±1°Fの精度を得る。例示した装置では、プレス盤178上に設置した空気シリンダ176上で管状体102を支持することによって、ラムチップ174と、フィルタ膜106と、フランジ104との間の接触圧力が制御される。ラム172は、ストップに係合するまで、下に下がる。次いで、プレス盤178上の空気シリンダ176が、負荷を吸収する。空気シリンダ176への圧力を変えることによって、負荷を設定することができる。接合ステップの加圧保持時間、すなわち、ラムチップ174がフィルタ膜106及びフランジ104に圧迫され続ける時間を、時間を計って空気シリンダ176の方向を反転することによって制御し、フランジ104とフィルタ膜106の負荷及び熱を取り除くことができる。例えば、リミットスィッチ(図示せず)は、軸ラム172がストップに当たると、タイマを作動させ、フィルタ膜106とフランジ104に対するラムチップ174の加圧保持時間を決定する。
【0026】
装置170は、ラムチップ温度と、圧縮力と、加圧保持時間とを制御する制御ユニット180を具える。制御ユニット180は、空気シリンダ176の圧力感知ユニットと、ラムチップ174の温度感知ユニットと、ストップと、係合しているラム172によって作動するマイクロスイッチとに接続したマイクロプロセッサによって駆動することが望ましい。この目的のための制御ユニット170を設けてもよい。
【0027】
ラム170が下がってストップに係合すると、制御ユニット180は、空気シリンダ176に連結した空気ポンプ又は空気源を作動させる。制御ユニット180は、空気シリンダ176に対する圧力を監視して調節し、ラムチップ174がフィルタ膜106とフランジ104によって接触される時に、この圧力が所望の圧縮力と一致するようにする。この接触保持時間は、ラム172によるストップとの接触と比較して決定されるか、又は、代替的に、空気シリンダ176中の設定圧力値の達成と比較して決定することができる。所定の保持時間の終わりに、制御ユニット180は、空気シリンダ176中の圧力を放出し、これによって、ラムチップ174からフランジ104とフィルタ膜106を取り除く。制御ユニット180は、ラム172及びラムチップ174の温度を感知して調節し、所望のラムチップ温度が±1°F以内に維持されるようにする。
【0028】
熱接着ステップの動作条件には、測定温度と、保持時間と、接着力又は圧力が含まれる。例えば、ラム172の温度の上昇は、一般的に保持時間と圧縮力の低下、及びその逆によって弱めることができる。このプロセスは、フランジ溶融が最小であり、フランジ/フィルタ界面の湿潤が均一であり、フランジ104に接合したフィルタ膜106の機械的強度が高い場合に、最適であると考えられる。温度と、保持時間と、負荷力パラメータが大きすぎる場合、結果は、フランジ104の望ましくない変形となる。逆に、これらのパラメータが小さすぎる場合、もたらされる結合が弱く、フィルタ膜106は、フランジからより容易にはがれる。これらのプロセス条件のうちの1つの特に有益な試験は、フィルタデバイス100によって、フィルタ膜106からサンプル材料の沈殿によって製造したスライドの質を決定することに由来する。
【0029】
フィルタ膜106を外側取付面118に取り付けた後、フィルタ膜106を切り取って形を整えて、ほぼフランジ104の直径にする。これは、粒子収集及び移動プロセスに干渉する過剰なフィルタ材料を除去する。上述したように、フィルタ膜106は、ポリカーボネートからなり、管状体102及びフランジ104は、ポリスチレンからなる。図9の装置を用いて、上記の方法で、ポリカーボネートフィルタ膜106をポリスチレンフランジ104に機械的に接合するためのプロセスパラメータは、以下の通りである。
【0030】

【0031】
ポリカーボネートの融点は、ポリスチレンの融点よりも高く、従ってこれらの条件下では、フィルタ膜106を通って導かれるラムチップ174からの熱によって、外側取付面118が溶けて、ポリカーボネートフィルタ膜106で機械的な接合を形成する。フィルタ膜106をフランジ104へ熱的に誘導する機械的接合用のパラメータの1つの特に好ましい組み合わせは、以下の通りである。
【0032】

【0033】
図10は、熱収縮ステップを実行するために使用できる熱収縮装置182を示す。装置182は、可変温度の熱風源184と、流れ方向付け調節板186を具え、フランジ104に固定したフィルタ膜106上に、熱風流188を向ける。熱接着フィルタ膜106を有する管状体102を、制御された速度及び選択した最小間隔190で、熱風源184の流れ方向付け調節板186の下に通す。熱風温度は、フィルタ膜106が収縮し、全方向に実質的に均一に引っ張られるように維持される。熱を適用する時間を変えるために、管状体102が、熱流188を通過する速度を変えることができる。
【0034】
例示した実施例によって実行される熱収縮ステップのためのプロセスパラメータは、以下の通りである。
【0035】

【0036】
1つの特定の例では、使用される熱風源は、可変温度の熱風銃(Master Appliance,VariTemp Heat Gun VT 752C)、及び8インチ×0.2インチの出力寸法を有する流れ方向付け調節板である。空気温度は400°Fに維持され、管状体102は、毎秒1.3インチの速度で加熱空気流326を通過する。管状体102を、流れ方向付け調節板324の真下に直接設置する場合は、これらのアイテムは、ほぼ0.5インチ離す。
【0037】
第2フィルタ接合ステップは、ある差異を有する第1フィルタ接合ステップについて上述したような方法を用いて、フィルタ膜106を内側環状接合面116に熱的に接合する。第2フィルタ接合ステップで使用される軸ラム(図示せず)は、ラムチップ(図示せず)を有し、フランジ104の内側環状取付面116とほぼ同じ直径を有する。
【0038】
図6に示すように、フィルタデバイス100の近位端112は、取り外し可能なキャップ142をきつく受けるように構成されている。図5を更に参照すると、キャップ142は、フィルタデバイス100内への挿入用のより小さいオス型端部146を有する中空シリンダ144と、真空源(図7に示す)と結合する大きなメス型端部148と、を具える。取り外し可能なキャップ142とフィルタデバイス100との流動性のあるきつい取付を容易にするために、キャップ142は、オス型キャップ端146の外側表面内に形成した2つの環状溝154と、環状溝154内に受けられる2つの対応するO−リング140と、を具える。O−リング140は、ゴム等の弾性材料からなり、溝154内に固定されている。図1に示すように、2つの溝は、近位端112で、管状体102の内側表面内に形成されており、キャップ142のO−リング140をきつく受けるように構成されている。
【0039】
フィルタデバイス100と機械的に接合するために、収集及び移動システム166は、フィルタデバイス100のキャップ142と結合する結合機構152を具える。また、収集及び移動システム166は、2つの導管156及び160と、結合機構152を介してフィルタデバイス100の内部と液通して延在する遠位端と、を具える。導管156及び160の近位端は、収集及び移動システム166の空気源158と圧力モニタ162に、それぞれ連結している。このように、空気源158は、流体サンプル113から粒子を収集するために、導管156を介してフィルタデバイス100の内部に負の圧力パルスを適用することができる。空気源158は、スライド132上に収集した粒子を分散させるために、導管156を介してサンプル収集デバイス123の内部に正の圧力パルスを適用することもできる。圧力モニタ162によって、収集及び移動システム166はフィルタデバイス100の圧力をより正確に制御することができる。
【0040】
図面及び記載を簡潔にするために、収集及び移動システム166の連結機構152と、導管156及び160と、空気源158と、圧力モニタ162のみが示されている。このようなタイプの収集及び移動システムの構造及び機能は、米国特許第6,318,190号及び第6,572,824号により詳細に記載されている。
【0041】
上記特許に更に記載されているように、中央フィルタ領域126の外側面上の粒子を有するろ過及び移動デバイス100は、液体を含む粒子から除去した後に、図3に例示されるように、顕微鏡スライド等の生物学的試料支持デバイス132に隣接して配置することができる。フィルタ膜106上に収集した細胞及びその他の粒子が、支持デバイス132に移動される。フィルタ膜106から支持デバイス132への粒子の移動は、中央フィルタ領域126の内側面へ高圧を適用することによって容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の一の実施例によって構築した生物学的試料ろ過及び移動デバイスの側断面図である。
【図2】図2は、図1のろ過及び移動デバイスの斜視図である。
【図3】図3は、図1のろ過及び移動デバイスの詳細な側断面図である。
【図4】図4は、顕微鏡スライドに隣接した図1のろ過及び移動デバイスの側断面図である。
【図5】図5は、図1のろ過及び移動デバイスに使用するように構成したキャップの斜視図である。
【図6】図6は、本発明の一の実施例によって構築した生物学的試料ろ過及び移動デバイスの斜視図である。
【図7】図7は、本発明の一の実施例による生物学的試料ろ過及び移動システムの斜視図である。
【図8】図8は、本発明の一の実施例によって構築した2つの生物学的試料ろ過及び移動デバイスの斜視図である。
【図9】図9は、本発明の一の実施例による生物学的試料ろ過及び移動デバイスの組み立てプロセスを示す概略図である。
【図10】図10は、本発明の一の実施例による生物学的試料ろ過及び移動デバイスの組み立てプロセスを示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料フィルタデバイスにおいて:
軸上に配置した第1及び第2の軸端と、これらの軸端間に形成した真空キャビティと;
前記第1軸端に配置され、前記真空キャビティと液通する開口を規定する環状フランジであって、設置面を有する環状フランジと;
流体中に担持されている微視的な生物学的粒子を収集するように構成された生物学的試料フィルタ膜であって、前記設置面に取り付けた周辺部と、前記開口に渡る中央部と、を有するフィルタ膜と;
を具えることを特徴とする生物学的試料フィルタデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスが;
前記設置面から半径方向内向きに外環状フランジ上に配置された環状リッジと;
前記環状リッジ上に配置された平面リムであって、前記フィルタ膜が、前記リム上に位置する平面リムと;
を更に具えることを特徴とするデバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のデバイスにおいて、前記設置面が、外面であることを特徴とするデバイス。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のデバイスにおいて、前記環状フランジが、前記環状リッジと、前記設置面との間に設置した環状空気境界を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項1に記載のデバイスにおいて、前記環状フランジが、前記設置面を、同心の内部設置面と外部設置面に分割する環状空気境界を具えることを特徴とするデバイス。
【請求項6】
生物学的試料フィルタデバイスアッセンブリが、請求項1に記載のデバイスと、前記管状体の第2軸端内に密封して挿入されるように構成したキャップを具えることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
生物学的試料収集及び移動システムが:
軸上に配置した第1及び第2の軸端と、これらの軸端間に形成した真空キャビティと;
前記第1軸端と、前記真空キャビティと液通する開口に配置された環状フランジであって、設置面を有する環状フランジと;
流体中に担持されている微視的な生物学的粒子を収集する前記設置面に取り付けた生物学的試料フィルタ膜と;
前記第2軸端を介して前記管状体の前記真空キャビティと液通した空気源と;
を具えることを特徴とする生物学的試料収集及び移動システム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムにおいて、前記フィルタ膜が、前記設置面に取り付けた周辺部と、前記開口に渡る中央部と、を有することを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のシステムが、前記第2軸端を介して前記管状体の前記キャビティと液通する圧力モニタを更に具えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載のシステムが:
前記設置面から半径方向内向きに、前記外環状フランジ上に配置された環状リッジと;
前記環状リッジ上に配置された平面リムであって、前記フィルタ膜が、前記リム上に位置する平面リムと;
を更に具えることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか1項に記載のシステムにおいて、前記設置面が、外面であることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項10に記載のシステムにおいて、前記環状フランジが、前記環状リッジと、前記設置面との間に設置した環状空気境界を具えることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項7に記載のシステムにおいて、前記管状フランジが、前記設置面を、同心の内部設置面と外部設置面に分割する環状空気境界を具えることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−518203(P2008−518203A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537919(P2007−537919)
【出願日】平成17年10月10日(2005.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/036320
【国際公開番号】WO2006/047076
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(507130015)サイテック コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】