説明

繊維ウェブの製造工程中に炭酸カルシウムをインライン製造するための方法及び反応器

本発明は、標的懸濁液の流れの中で炭酸カルシウムをインラインで製造するための方法及び反応器に関する。本発明による方法及び反応器は、該反応器が、反応ゾーン中に位置する構造物の表面に炭酸塩の結晶が付着することを防止するための手段(16、18、20)を具備しているので、標的懸濁液の流れの中に石灰乳及び二酸化炭素を、それらの反応中に形成される炭酸カルシウムの結晶が反応器(10)の壁(12)上に析出することがないように導入し、混合するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維ウェブ製造工程と連結して炭酸カルシウム(PCC)をインラインで製造するための方法及び反応器に関する。本発明は、特に、繊維ウェブの製造で使用する予定の懸濁液中へのPCCのインライン製造、とりわけ好ましくは、繊維パルプの製造で使用される繊維パルプ流、その部分パルプ流の1つ、又は濾液流中におけるPCCの直接的なインライン製造に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウムは、製紙工程においてフィラー及びコーティング材料として一般的に使用され、とりわけ炭酸塩の高白色度及び低コストのために使用されている。炭酸カルシウムは、チョーク、大理石、又は石灰石を粉砕することによって製造することができ、その場合、粉砕炭酸カルシウム(GCCと略記される)と呼ばれる。炭酸カルシウムを製造するもう一つの方法は化学的な方法であり、例えば、水酸化カルシウムのもう1つの成分であるカルシウムイオンと二酸化炭素を水に溶解した場合に形成される炭酸イオンを反応させると、形成された炭酸カルシウムは溶液から結晶として析出し、その形状は、例えば、反応条件に依存する。この製造法の最終生成物はPCCと呼ばれ、それは「沈降炭酸カルシウム(Precipitated Calcium Carbonate)」という用語の省略形である。本発明は、PCCの製造、及び特に紙のフィラーとしてのその使用に傾注する。
【0003】
伝統的に、PCCの製造は、実際の製紙から切り離されて行われてきた。これまで、PCCは、PCCスラリーをパイプラインに沿って紙の製造に向けてポンプで送液する、製紙工場の近くに位置する専用プラント、又はPCCを遠く離れて位置する製紙工場にタンクローリーで輸送する相応のプラントのいずれかで生産されてきた。この方法によって製造されるPCCは、繊維が化学的又は機械的に製造されるかどうかに関係なく、PCCを繊維に固着させるために、製紙の際に保持材料の使用を必要とする。保持材料の使用は、当然、化学物質自体の取得、及び化学物質によって引き起こされる可能性のある析出又はリサイクル性の問題のような形態で、製紙に対して付加的なコストをもたらす。簡単に上述した伝統的なPCC製造法は、保持材料の使用に関する問題に加えていくつかの問題を引き起こす。製造現場から製紙工場へのPCCのタンク輸送は、輸送コストを発生させ、且つ分散剤及び殺生物剤の使用を必要とする。添加剤の使用は、取得コスト及び処理コストをさらに増加させると同時に、PCCの特性に影響を及ぼす。
【0004】
独立したPCCプラントを工場と連結して建設することは、高価な投資であり、且つ1日24時間、数人の要員を必要とする。従来技術によるPCCプラントは、また、大量の真水及びエネルギーを消費する。
【0005】
したがって、最近、紙の製造コストを低減するため、製紙工場で直接的にPCCを製造し、それによって、少なくともPCCの輸送コストを紙のコスト構成から除外するための多くの提案がなされてきた。さらに、繊維懸濁液の存在下でのPCCのインライン製造は、PCC結晶の繊維へのより良好な固着につながり、それによって、保持材料の必要性が少なくとも低減され、一部の事例ではそれらの使用を完全に排除できることが注目されている。この文脈で、インライン製造とは、繊維ウェブの製造で使用される懸濁液中でPCCを直接製造し、その結果、PCC又は懸濁液を中間貯蔵所に保管せず、繊維ウェブの製造で直接的に使用するようになることを意味する。ここで、懸濁液は、広義には、繊維又はフィラーを、種々の高粘稠性成分から、繊維ウェブの製造中に形成される様々な濾液、例えば繊維回収フィルターからの任意の濾液へ輸送する種々の液体を意味する。
【0006】
最新で現在実際に、工業的応用の可能な唯一のPCC製造法が、国際公開第2009/103854号パンフレットに開示されている。この開示は、二酸化炭素及び石灰乳を極めて効果的に、好ましくはインジェクションミキサーを使用することによって、送液管内のパルプ中で直接混合して、パルプを抄紙機のヘッドボックスへ輸送するように、二酸化炭素及び石灰乳からのPCCの製造を教示している。これによって、その効率的な混合のため、炭酸イオン及びカルシウムイオンは、互いに接近して配置され、結晶の形成は極めて速い。しかしながら、本発明に関する試運転は、炭酸カルシウムの結晶化に典型的な方式において、炭酸塩の結晶が、標的懸濁液の繊維及びその他の固体粒子に加え、送液管の表面上にも析出することを示した。炭酸塩は、化学物質供給装置及びミキサーの種々の構造物などのその他の固体構造物上にも析出する。このような析出は、例えば、より小さな又はより大きな粒子として放出された場合に、炭酸塩の析出が、例えば、製造された紙に穴及び/又は斑点を、或いは最終製品の品質の悪化として反映されるヘッドボックスの流れにおいて不都合な変化を生じさせるという点で、製紙にとって有害である。もう1つの起こり得る不都合は、化学物質の供給及び/又は混合装置中での炭酸塩の析出によって生じる機能低下による、混合の低下である。
【0007】
しかしながら、炭酸カルシウム析出の問題は、従前よりそれ自体知られている。しかしながら、今日において、この問題は、前述の国際公開第2009/103854号パンフレット中に記載のようなPCCのインライン製造のために、例えば、欧州特許第1064427号、欧州特許第1219344号、フィンランド特許第111868号、フィンランド特許第115148号、及びフィンランド特許第116473号に記載のインジェクションミキサーを使用する場合に強調されている。問題が大きくなる理由は、インジェクションミキサーが、二酸化炭素及び石灰乳を極めて急速に、且つ流れの中に一様に混合することができるので、炭酸カルシウムの完全な結晶化反応の持続時間が極めて短いことにある。このため、結晶化相の大量の炭酸カルシウムが、同時に、送液管の壁の近くに存在し、その結果、前記化学物質が固体結晶を形成する際に、固体結晶は、送液管の壁、或いはより広い意味では、繊維又はフィラー粒子などの別の固形材料にではなく、送液管に連結されている任意の固形構造物に固着される。従前に、二酸化炭素及び石灰乳を、出力のより小さいミキサーを用いて供給し、それにより化学物質が互いに反応するのに数十秒、時には数分間を費やし、そのため、送液管の内部表面上に形成される炭酸塩の析出物は、送液管の本質的により長い距離上に分配された。換言すれば、従前には、析出物は、導入箇所後の抄紙機の短循環路の全長に沿って、しばしば数十メートルの長さまで分配されたが、現在では、析出物は、多くの場合、二酸化炭素及び石灰乳の導入から測定して数メートル或いはより短い距離で、送液管の表面を覆う。より詳細には、送液管の表面上への析出物の蓄積は、後に導入される化学物質の導入箇所で始まり、実際には、少なくとも一つの化学物質が結晶化反応で使い果たされた箇所で終わる。従来の混合及びインジェクションミキサーを使用する混合の双方の事例において、本質的に同一量の炭酸カルシウムが送液管の表面上に析出すると仮定することができるので、インジェクションミキサーを使用した場合に形成される析出物の層は、従来の混合法に比べて、同一時間でかなりより厚く、さらには数倍より厚くなり得るだろう。同時に、析出物が破壊され断片として流れに放出されるリスクが増大し、断片によって引き起こされる問題の発生率がいっそう増大する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、繊維ウェブ機の環境において、繊維ウェブ機の製品の製造中に使用される固体含有懸濁液、又は実際の繊維パルプ、又は短循環路若しくはそうでなければ繊維ウェブ機に関連する任意のその他の液体流(例えば、繊維再生フィルターの任意の濾液)中で炭酸カルシウムを直接製造する新規な方法を、従来技術の問題を低減又はさらには完全に排除することのできる方式で提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、炭酸塩析出のリスクのない、炭酸カルシウムすなわちPCCの前記インライン製造に十分適合した反応器を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、繊維ウェブ機へのアプローチシステムの一部、又はさらには繊維ウェブ機のヘッドボックスへのアプローチ配管の一部である反応器を提供することであり、該反応器は、化学物質のための混合系及び反応器を清浄に維持するための手段の双方を含み、該反応器の設計及び操作方法は、炭酸カルシウムの結晶化反応が、本質的に反応器の長さで完全に行われる大きさである。
【0011】
本発明の別のさらなる目的は、PCCの製造に使用される反応器を、反応器の壁に固着し次いでばらばらになるPCC断片による大きな不都合が存在しない、又は反応器の位置がPCCの析出に関して最適化されるような短循環路の位置に配置することである。換言すれば、PCC反応器を、PCCを含んだ懸濁液中でばらばらになる粒子/断片が、少なくとも1つの選別ステージを通って移動するような短循環路の位置に配置し、その結果、それらの中で起きる選別が、粒子/断片が繊維ウェブの製造における問題を引き起こさないように、懸濁液からそれらを除去することができる。また、PCC反応器を、懸濁液自体のために(その保持を改善するための濾液の微細繊維(fines)内への析出)又は実際のPCCの析出のために、PCCの析出が望ましい懸濁液を輸送するパイプラインに連結して配置することが好ましい。
【0012】
繊維ウェブ機の繊維ウェブ形成工程の標的懸濁液中への炭酸カルシウムのインライン製造に関する本発明の好ましい実施形態による方法は、該工程の標的懸濁液が、次の構成:すなわちバージンパルプ懸濁液(長繊維パルプ、短繊維パルプ、機械パルプ、化学機械パルプ、化学パルプ、ミクロ繊維パルプ、ナノ繊維パルプ)、再生パルプ懸濁液(再生パルプ、リジェクト、繊維回収フィルターからの繊維画分)、添加剤懸濁液、及び標的懸濁液を輸送する送液管中で生じる固体含有濾液の少なくとも1種を含んでおり、;該送液管がPCC反応器を具備すること、該反応器がPCCが反応器中又はそれと連結された装置の表面上で析出する傾向によって引き起こされる不都合を防止する手段を具備すること、二酸化炭素及び石灰乳を、反応器内部を流れる前記標的懸濁液に、前記二酸化炭素及び石灰乳を前記標的懸濁液中で混合することによって添加すること、前記化学物質が前記反応器中で一緒に反応して炭酸カルシウムの結晶を形成し、それによって前記防止装置が反応器中に、本質的に前記化学物質が反応する長さ、いわゆる反応ゾーンに配置されることを特徴とする。
【0013】
繊維ウェブ機の繊維ウェブ形成工程の標的懸濁液中での炭酸カルシウムのインライン製造に関する本発明の好ましい実施形態による反応器は、該工程の標的懸濁液が次の構成:すなわちバージンパルプ懸濁液(長繊維パルプ、短繊維パルプ、機械パルプ、化学機械パルプ、化学パルプ、ミクロ繊維パルプ、ナノ繊維パルプ)、再生パルプ懸濁液(再生パルプ、リジェクト、繊維回収フィルターからの繊維画分)、添加剤懸濁液、及び標的懸濁液を輸送する送液管中で生じる固体含有濾液の少なくとも1種を含むものであって、該反応器は、該反応器の内部表面を炭酸カルシウムの析出から清浄に維持する手段、該反応器中に少なくとも二酸化炭素又は石灰乳を導入する手段、及び前記標的懸濁液中で前記少なくとも二酸化炭素及び石灰乳を混合するための手段を具備し;それによって、二酸化炭素及び石灰乳が、反応器中を流れる前記標的懸濁液中に添加され、前記化学物質を、炭酸カルシウムの結晶を形成するために、反応器中で一緒に反応させることを特徴とする。
【0014】
本発明による方法及び反応器に典型的なその他の特徴は、添付の特許請求の範囲、及び本発明の最も好ましい実施形態を開示する以下の説明から明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、例えば、本発明による反応器が、PCCを製造するために二酸化炭素及び石灰乳によって必要とされる反応時間に本質的に対応する長さ方向の大きさ(パイプ流速と反応時間との比率が反応器の長さを決める)である場合に、とりわけ以下の利点を達成する。
・最終製品の品質を低下させる、又はその製造に影響を及ぼす析出物を、送液管の表面に形成又は固着させないことが可能である、
・析出物を除去するための配管洗浄を回避することができる、
・種々のさらなる化学物質の使用を完全に回避できるか、或いは相当に低減することができる、
・固体の保持が改善される、
・固体又は繊維上へのPCCの析出を最適化することができる、
・反応の進行を測定することによる転化率の完全制御、
・短い反応帯−反応器を種々の処理ステップの間の送液管の短い部分にさえ配置することができる、
・短い反応器は、通常の鋼鉄に比べてより高価な材料で反応器を製造又は被覆することができる、
・反応器及び工程の運転性の制御、
・報告は、制御システムによって容易に提供される、及び
・トモグラフィーの使用は、いくつかの異なる警報を提供することを可能にし、そのため品質管理を相当に容易にする。
次に、本発明による方法及び反応器及びその操作を、添付の概略図を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1a】本発明の好ましい実施形態による反応器を概略的に示す図である。
【図1b】本発明の好ましい実施形態による反応器を概略的に示す図である。
【図2】本発明の別の好ましい実施形態による反応器を示す図である。
【図3】本発明の第3の好ましい実施形態による反応器を示す図である。
【図4】図3に示す反応器を用いて二酸化炭素及び石灰乳から炭酸カルシウムを製造する場合の、時間の関数としてのpH値の変化を示す図である。
【図5】本発明の第4の好ましい実施形態による反応器を示す図である。
【図6】本発明の第5の好ましい実施形態による反応器を示す図である。
【図7】本発明の第6の好ましい実施形態によるPCC反応器の位置を示す図である。
【図8】本発明の第7の好ましい実施形態によるPCC反応器の位置を示す図である。
【図9】本発明の第8の好ましい実施形態によるPCC反応器の位置を示す図である。
【図10】本発明の第9の好ましい実施形態によるPCC反応器の位置を示す図である。
【図11】本発明の第10の好ましい実施形態によるPCC反応器の位置を示す図である。
【図12】本発明の第11の好ましい実施形態によるPCC反応器の位置を示す図である。
【図13】本発明の第12の好ましい実施形態によるPCC反応器の位置を示す図である。
【図14】本発明の第13の好ましい実施形態による反応器に付随する流れの連結を示す図である。
【図15】本発明の第14の好ましい実施形態による反応器に付随する流れの連結を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1a及び1bは、本発明の1つの好ましい実施形態による反応器10を相対的、概略的に示す。図1の反応器10は、まっすぐな円筒状送液管12を含み、その内部に、反応器の壁の内表面から一定の距離をおいて、送液管の好ましくは本質的に中央に、少なくとも1つの導電性電極棒16がアーム14によって固定され、該電極棒は、この実施形態において、少なくとも1つのアーム14’を経由して、適切な電圧源を好ましくは含む制御系18に電気的に連結される。ほとんどの事例でそうであるように送液管12が金属製である場合、電極棒16を、送液管12から電気的に絶縁しなければならない。この絶縁は、例えば、電極棒16の固定アーム14及び14’を非導電性材料で構成することによって、又は電極棒16を主として非導電性材料から製造し、且つその適切な部分を導電性材料で被覆することによって実現することができる。もう1つの電極20は、送液管12の内部表面上に配置される。前記の第2電極20は、第1電極と同様、電圧源/制御系18に電気的に連結され、その結果、送液管12の内部表面と管の中央に配置された電極棒16との間に所望の電位差を創り出すことができる。当然、最も簡単な解決策は、送液管12を金属で作製することであり、それによって、該送液管はその全体で電極20として機能することができ、独立した電極を必要としない。送液管12を非導電性材料で作製するなら、最も好ましくは送液管12の円周方向及び反応器10の長さ方向の双方に一様な間隔で配置された、いくつかの前記第2電極20が好ましくは存在すべきである。別の選択肢は、送液管の内部を導電性材料で被覆することであり、それによって前記被覆が電極20として機能する。
【0018】
制御系に必須ではないが好ましくは連結される第3の部品は、とりわけ反応器10中での混合効率及び/又は反応進行を監視するためのいくつかの種類の測定センサー22である。このセンサーは、例えば、トモグラフィー(ここでは、好ましくは、繊維懸濁液の導電率に基づくトモグラフィー測定)に基づくことができるが、センサーは、パルプのpH値又はその導電率を測定できればよい。測定センサーの目的は、混合効率、反応進行、及び/又は反応器の表面清浄性を監視することであり、結果として、必要なら、例えば、導入圧力又は容積流量を調節することができる。必要なら、前記測定センサー、及び前記センサーに加えて第2測定センサーを、電極棒16に連結して配置することができ、それによって、反応器の表面付近に加えて、流れの中央での例えば反応の伝搬を監視することが可能である。必要なら、測定センサーを、絶縁材料で作製された例えばアームによって実際の電極から一定の距離に、すなわち、反応器の軸方向、反応器の半径方向、又は双方の方向に位置するように配置することができる。
【0019】
本発明による反応器は、さらに、化学物質を供給するための装置を含む。PCCの製造では導入される化学物質の量が比較的多いので、その装置の役割は特に重要である。例えば、標的懸濁液として紙パルプを使用する場合には、繊維パルプ中でのその濃度が1g/L又はそれを超えるように、カルシウム(石灰乳として)を導入することが必要なこともある。結晶化反応が、部分パルプ又は別の標的懸濁液のようなより小さな流体容積中で実施される場合、前記部分パルプ中でのカルシウム濃度は、当然より高く、時には、前述の値に比べてさらに数倍高い。この記載において、用語「標的懸濁液」は、バージンパルプ懸濁液(長繊維パルプ、短繊維パルプ、機械パルプ、化学機械パルプ、化学パルプ、ミクロ繊維パルプ、ナノ繊維パルプ)、再生パルプ懸濁液(再生パルプ、リジェクト、繊維回収フィルターからの繊維画分)、添加剤懸濁液、又は固体含有濾液、或いはこれらの組合せを意味する。本発明のこの実施形態において、送液管の壁は、説明の序文で言及した少なくとも1つのインジェクションミキサー24、好ましくは、Wetend Technologies Oyによって開発されたTrumpJet(登録商標)インジェクションミキサーを具備し、それによって、二酸化炭素及び/又は石灰乳を、迅速に導入し、送液管12中を流れる標的懸濁液中に一様に混合することができる。化学物質を、プロセス流体の流れ方向に対して本質的に垂直(すなわち、プロセス流体の流れ方向に対して垂直±30℃の方向)に、且つプロセス流体すなわち標的懸濁液の流速に対して大きな(3〜12倍の)導入速度で導入することが、前記インジェクションミキサーの操作にとって典型的である。インジェクションミキサー24のあるバージョンの典型的な特徴は、二酸化炭素及び石灰乳の導入及び混合が、導入流体を用いて行われ、その結果、その混合物を標的懸濁液中に注入した場合に、化学物質は、導入流体と本質的に同時に接触するようになる。インジェクションミキサーを使用する場合、二酸化炭素及び石灰乳の量を、導入流体の量に対して大きく変えることができ、それによって、比較的大量の導入流体を使用し、そのため、一部の事例では、極めて少量の化学物質でさえ標的懸濁液中に深く進入し、その中に一様に混合されることを確実にすることが可能である。導入される二酸化炭素及び石灰乳の量は、好ましくは化学量論的に保持され、その結果、化学物質の本質的にすべての量が反応器中で反応し、どちらかの化学物質の残留物が、標的懸濁液中に残存することはない。インジェクションミキサーの別のバージョンの典型的な特徴は、混合される予定の少なくとも1種の化学物質及び導入流体を、実際の導入装置以前に、互いの中に導入し、必要なら、一緒に混合することである。
【0020】
インジェクションミキサー24では、実際の工程から入手可能な流体、工程の付近から入手可能な固体含有流体、フィラー画分、又は繊維懸濁液を導入流体として使用することができる。換言すれば、使用予定の流体は、例えば、上水、原水、又は工程からの濁った、澄明な、又は超澄明な濾液であり得る。考慮する価値のある1つの選択肢は、標的懸濁液自体、又はその繊維若しくはフィラー成分の1つの導入流体としての使用である。標的懸濁液を導入流体として使用することは、例えば、送液管12からの側流を採取することによって達成することができ、ここで、この実施形態での流れは、標的懸濁液であり、次いで、その懸濁液を、ポンプを用いてインジェクションミキサー24に導入する。
【0021】
インジェクションミキサー24のもう1つの本質的特徴は、導入流体及び二酸化炭素又は石灰乳の噴射速度が、標的懸濁液、すなわち送液管中を流れるプロセス流体のそれに比べて本質的により大きいことである。したがって、化学物質及び導入流体の噴射は、プロセス流体流中に深く進入し、流体と効果的に混合される。流速の比率は、2〜20の範囲内で、好ましくは3〜12の範囲内で変化することができる。必須ではないが好ましくは、すべての導管、配管、ポンプ、及び洗浄手段が、フランジ26及び28によって画定される長さ以内の配管内部に位置するように、本発明による反応器10を構築することが可能であり、それによって配管への反応器10の取付けを、できるだけ容易に実施することが当然できる。反応器の操作に関する本質的な構造的解決策は、電極棒、及び送液管の円周上の少なくとも1つの電極の双方を、それらの効果が反応ゾーンの上流側に向かって一定の距離まで、及び反応ゾーンの長さまでの双方に及ぶように配置することである。換言すれば、前記電極は、少なくとも、後の化学物質の導入点と同一直径の送液管に配置され、それらは、化学物質の結晶化反応が事実上終了するまで流れ方向に伸びている。
【0022】
反応器において、1種の化学物質又は化合物を導入するのに使用されるインジェクションミキサーの数は、反応器の直径又は送液管の直径に依存する。Wetend Technologies Oyの標準サイズのTrumpJet(登録商標)−インジェクションミキサーを使用する場合、送液管の直径に応じて1〜6個が必要である。
【0023】
図1aは、二酸化炭素又は石灰乳が、反応器10内で右側に向かって流れる標的懸濁液中にインジェクションミキサー24から、導入噴射物が反応器/送液管の本質的にすべての断面にほとんど瞬時に進入するように、導入される状況を示す。導入は、その目的のために設計されたノズルから噴射することによって行われるので、吐出される化学物質の流れは、大部分、二酸化炭素又は石灰乳の標的懸濁液中への混合が極めて急速に、実質的には直ちに起こるような、小さな液滴又は泡(気体状二酸化炭素を導入する場合)の状態である。同時に、一緒に反応する化学物質、及び該化学物質と反応する又はそうでなければ協力する標的懸濁液の成分の双方が、インジェクション混合の本質的に直後に互いに接触することが可能になる。換言すれば、効果的に実現されたインジェクション混合は、反応に先立つ物質移動に必要とされる時間が、従来の混合法と比較して最小化されることを保証する。
【0024】
図1a及び1bに示す本発明の好ましい実施形態による反応器10の壁12の洗浄システムは、電極棒16及び反応器の壁12と連結された電極20に電圧供給/制御系18を介して、電極棒16がカソードとして機能し、反応器の壁12がアノードとして機能するようにDC電圧を印加することによって、存在する炭酸カルシウムの析出物を溶解し、且つ新たな炭酸カルシウムの析出物の形成を防止する。壁12がアノードである場合、壁12に隣接する流体のpH値は、明瞭に酸領域に、6未満に、好ましくは5未満に、最も好ましくは2〜3の値に低下し、かくして炭酸塩が壁12に固着するのを防止する。実際、炭酸塩の結晶は、低pHで液相に溶解するので、壁に接触することさえ許されない。前記表面の近くのpHが高い場合には、当然、炭酸塩は、カソードとして機能する電極棒の表面上に析出する傾向を有する。前記の析出傾向から生じる不都合は、制御系18を、系の極性を変更するようにプログラムすることによって、容易に排除され、それによって、カソードとして機能する表面上に以前析出された炭酸塩は、今やアノードとして機能する電極の近くに形成される酸性流体中に急速に溶解される。双方の電極を清浄に維持するための最も簡単な制御方法は、特定の間隔(1秒未満から分単位又は時間単位まで)で極性を変更するように制御系をプログラムすることである。極性変化を制御するもう1つの方式は、プロセスからの制御インパルスを利用することである。例えば、カソードとアノードとの間の電圧変化を監視することが可能であり、それによって、特定の電圧増加は、実際に、特定の深さの析出層(絶縁として機能する層)を意味する。したがって、制御系は、特定の電位差において系の極性を変更するように較正することができる。相応して、前記電位差がその元のレベルに低下した場合、又は電位差がもはや変化しない場合、制御系は極性を元の状態に戻す。
【0025】
図2は、本発明の別の好ましい実施形態による反応器を送液管中に配置するための1つの解決策を示す。図の解決策において、反応器は、2つのエルボ管32と34との間に配置され、その結果、電極棒16を、その両末端でエルボ管に支持し、且つ必要とされる場合にのみ、反応器の中間部分への1つのアーム配置による、又は電極棒16に沿ったいくつかのアーム配置による、アーム14による支えを配置することができる。この実施形態において、反応器の反応ゾーン中に配置される電極棒の支持アーム14は、好ましくは、炭酸塩粒子が固着しない材料で完全に作製されるか、又は少なくとも被覆される。図の実施形態において、電極棒16は反応器のエルボ管34の外側まで伸びているので、反応器内部の電極棒に支持アームを介して導線を配線する必要なく、電極棒を制御ユニットに直接連結することができる。この場合、電極棒16は、送液管、すなわち反応器10から絶縁され、それによって、反応器の壁自体が、第2電極として機能することができる。反応器の他の部分、器具、及び操作は、図1に対応する。電極棒及び配管表面上の電極ができる限り最適に作動することを確実にしたければ、エルボ管の領域上に位置する電極棒の部分(単数又は複数)を絶縁材料で被覆することができる。したがって、電極棒の電気的表面の配管表面からの距離は、電極棒の全長に沿って一定であり、したがって、pH値も、双方の電極表面の近くで一様である。
【0026】
図3は、本発明の第3の好ましい実施形態による反応器を示す。図3の反応器は、図1のそれと同様のタイプから主としてなるが、ここでの反応器は、送液管の2つの続いた円周上に2つのインジェクションミキサー又はミキサーステーション(反応器の本質的に同一円周上で同一化学物質を混合するいくつかのミキサー)24’及び24’’を具備する。前記ミキサー24’及び24’’を使用して、二酸化炭素及び石灰乳を以前よりもかなり効率的で迅速且つ一様に流動する標的懸濁液に導入、及び混合することを確実にすることが可能である。実際、インジェクションミキサー24’及び24’’は、少なくとも1つのミキサー24’が反応器の第1円周30上に位置し、少なくとも1つのミキサー24’’が、ミキサー24’の円周の後の距離に、相応して、反応器の第2円周31上に位置するように配置される。ミキサーの円周30と31との間の距離は、とりわけ、ほんの少しのパラメーターを挙げれば、反応器中のパルプの流速、化学物質の導入順序、二酸化炭素及び/又は石灰乳の導入速度及び導入流体、前記気体/流体の容積速度、反応器の直径、噴射ノズルの構造に依存する。しかしながら、好ましくは、円周30と31との間の距離は、0.05〜3メートル、より好ましくは0.1〜1メートル程度である。
【0027】
図3に記載の反応器、すなわち、2つの連続したインジェクションミキサー/インジェクションミキサーステーションを有する反応器は、例えば、二酸化炭素が、第1円周30上の第1インジェクションミキサー24’又は一連のミキサー群24’から導入され且つ混合され、石灰乳が、第2円周31上の第2インジェクションミキサー24’’又は一連のミキサー群24’’から導入されるように、PCCのインライン製造で使用される。当然、前記化学物質の導入は、また、反対の順序で、すなわち、最初に石灰乳(Ca(OH))次いで二酸化炭素(CO)の順で配置することもできる。また、前記ミキサーステーションを送液管の同一円周上に交互交替方式で配置し、それによって、化学物質の導入及び混合を同時的に実施するか、或いは双方の化学物質を、同一ミキサーステーションを用いて導入することができる。本発明者らの試験において、本発明者らは、いかなる種類の洗浄又は固着防止系もなければ、かなりのPCCの層が、ヘッドボックスに至る送液管の壁、すなわち反応器10上に極めて急速に固着し、前述の諸問題を引き起こすことに気づいた。PCCは、インジェクションミキサー24’’の先端部、ノズルに固着する相応の傾向を有し、その傾向は、大きなPCC粒子を除去するリスクを増大させることに加え、ノズルからの化学物質の導入及び導入噴射物の進入の両方、並びに混合の一様性をも徐々に低下させる。
【0028】
PCCを製造する図3に記載の試験反応器が、やはり図3に記載の電気的洗浄系、すなわちアーム14及び14’により反応器に中央で固定された電極棒16を具備した場合、反応器の内表面は、試験運転の全期間中、輝いたままであり、換言すれば、該洗浄系は、送液管の表面上での炭酸塩の析出を完全に防止することができた。図3は、電極棒16が、第1化学物質のインジェクションミキサー24’と同じ径線(円周30)まで本質的に伸びる構造的解決策を示す。しかしながら、ほとんどの場合、電極棒は、第2化学物質を導入するインジェクションミキサー24’’の径線(円周31)から流れ方向へ伸びれば十分である。しかしながら、洗浄系を計画する場合には、炭酸カルシウムは、当然、電極棒16を支えるアーム14及び14’にも固着することに注意すべきである。これは、少なくとも2つの方法によって、すなわち、炭酸塩の結晶が固着しない材料からのアームを製造することによって、又はアームを反応ゾーンの外側に配置することによって防止することができ、ここで、他方では、第1の上流アームの位置で、ここまでは結晶化相の炭酸カルシウムが存在せず、他方では、第2の下流アームの位置で、炭酸塩の結晶は、もはや固着能力のある不安定な形態にはない。
【0029】
したがって、製紙用フィラーとして使用される炭酸カルシウムの標的懸濁液中での析出は、抄紙機のヘッドボックスに至るプロセス配管中での直接的なインライン法によって実施することができる。前記目的のために使用される反応器では、二酸化炭素及び石灰乳の双方を導入するためのインジェクションミキサー又はミキサーステーションが好ましくは必要とされる。化学物質の一方が、ことによると別のタイプのミキサーを使用して前のステージで既に標的懸濁液中に導入されていることも、当然あり得る。しかしながら、ここで、少なくとも後で導入される化学物質のインジェクション混合は、PCC、すなわち沈降炭酸カルシウムの結晶化がプロセス配管中の極めて短い距離で行われることを可能にする。換言すれば、図1aを参照し、化学物質(Ca(OH)及びCO)の一方が反応器10の前で既に標的懸濁液中に導入され十分に一様に混合されていることを仮定するか、或いは図3を参照し、二酸化炭素及び石灰乳が、まずミキサー24’から導入され、次いで二酸化炭素又は石灰乳がミキサー24’’から導入されることを仮定すると、PCCの実際の結晶化反応は、実質上、後者の化学物質の導入箇所の直後で始まる。
【0030】
図4のプロットは、図3に示す反応器を用いて炭酸カルシウムを標的懸濁液中で析出させる場合の、時間(横軸、秒)の関数としての標的懸濁液のpH値(縦軸)の変化を示す。図に概略的に示す結晶化過程では、二酸化炭素が、まず標的懸濁液中に導入され(両軸の原点)、それによって、標的懸濁液のpH値は、約7.5の通常pHから、導入された二酸化炭素の量及び二酸化炭素の導入と石灰乳の導入との間の時間に応じて若干低下する。石灰乳の導入及び混合の開始直後に、標的懸濁液のpH値は、増加し始め、実際に、それは、その最大値、11〜12の範囲に到達し、一旦化学物質が結晶化反応で消費され尽くすと、そこから、約7.5の範囲に急速に戻る。試験において、互いに化学量論比で導入された化学物質は、2秒未満、さらには約1秒半未満で枯渇した。このような急速な結晶化反応のための要件は、化学物質(単数又は複数)の混合が、正確に実行されるインジェクション混合を使用すると(少なくとも後で導入される化学物質について、好ましくは双方について)本質的に完全であること、及び標的懸濁液中で形成されるCa2+及びCO2−イオンが互いに迅速に遭遇し、反応して炭酸カルシウムの結晶を形成することである。反応の全継続時間が極めて短いので、形成される炭酸塩結晶の粒度分布は極めて一様である。いくつかの推定によれば、既に簡単に上述した通り、PCCのこの種の生成反応の場合、結晶化反応の直後に、炭酸塩結晶は、このような相中、即ち、方解石に変化する前の不安定な結晶形態中にあることが典型的であり、そのため、近くに位置する任意の適当な固体粒子又は表面で実際に固着する傾向がある。標的懸濁液において、このような粒子としては、繊維、種々の微細固体粒子、フィラー粒子、及びその他の炭酸塩結晶が挙げられる。当然、送液管の壁、及び導入ノズル及び混合手段などの送液管中に配置されたその他の物体も、炭酸塩結晶が固着する申し分のない基体であり、それによって、送液管の表面上に形成される析出物が存在する。換言すれば、炭酸塩の析出物は、結晶形が不安定である場合にのみ、送液管の壁及びその他の構造物上に形成され、したがって、本発明の好ましい一部の実施形態において前述したように、不安定な炭酸塩が送液管の表面上に析出するのを防止することによって、送液間を実際に完全に清浄に維持することができる。
【0031】
二酸化炭素及び石灰乳を導入し、結晶化反応が進行し、特に結晶化反応が終了する際の、前に述べたpH値の激しい変化は、前述のpH値を測定するセンサーを使用して反応の進行を追跡する可能性を提供する。センサー22を、図1a及び3に示すように、電極棒の一方の終端のレベルに、すなわち反応器の終端のレベルに配置する場合には、センサー22によって測定されるpH値は、配管表面上での析出物のさらなる形成を回避するため、第1化学物質の導入前と同じ程度でなければならない。したがって、このように配置されたセンサーを使用して測定されるpH値が相当に高い場合には、化学物質の混合効率を改善するために、化学物質の導入/混合パラメーターを変更するべきである。当然、反応器の長さに沿って(反応器の壁上又は電極棒上、或いはその双方)いくつかのこのようなpHセンサーが存在することができ、それによって、pH値の変化が、結晶化反応の進行に関する明確な見解を与える。
【0032】
反応器の反応ゾーンに到着する懸濁液のpH値を測定するセンサーを反応器の上流に配置し、それによって、制御系が、反応器に到着する懸濁液のpH値に関する最新データを受け取る解決策である。実際、このようなセンサーは、化学物質の影響を受けずに繊維懸濁液のpH値を見出すために、最初に導入される化学物質の上流に配置されるべきである。このセンサーの後に反応器中に導入される二酸化炭素と石灰乳の比率は、流量計量値の制御下で化学物質を導入することによって化学量論的に保持され、所望なら、備え付けのpHセンサーを使用して炭酸塩の結晶化反応の進行を追跡することが可能である。結晶化反応が終結したことを、反応器の終端で相応に保証することも可能である。このことは、反応器の終端でのpH値を反応器の前で測定される値と比較することによって容易に検証される。もしその値が同じであれば、化学物質は完全に反応してしまい、配管表面又はその中に配置された構造物上へ炭酸塩が析出するリスクはもはや存在しない。
【0033】
図5に示す本発明の第4の好ましい実施形態では、実際には2つの別々に適用可能な解決策が存在する。第1に、図は、以前の実施形態中で既に示した電極棒16及びアーム14を含む洗浄手段が比較的すぐ後に存在するような機械的ミキサー40を、本発明による反応器にさらにどのように具備させることができるかを示す。換言すれば、前の実施形態中で既に説明したように、例えば噴射によって反応器10の壁を経て混合される予定の化学物質又は化学物質群を、今度はミキサー40の付近で導入し、それによって、該ミキサーは、噴射によって既に開始されている混合を改善することが可能である。しかしながら、図5は、第2の選択肢として、化学物質を、どのようにミキサー40のシャフト管42を経てシャフトの穴44からプロセス配管、すなわち反応器10へ導入し、それによって、機械式ミキサー40が化学物質をさらに流れ中に混合するかを示す。さらに、ミキサーのシャフト、別々の軸及び/又は半径方向の導入管の双方を介して、並びに送液管の壁上に配列された導管又は噴射ノズルから化学物質を標的懸濁液中に導入すること、換言すれば、1種又は複数の前述の導入方法によって導入することも、もちろん可能である。
【0034】
前記の本発明の好ましい実施形態の1つから明らかなように、本発明は、二酸化炭素及び石灰乳を標的懸濁液中に導入、混合し、これらを互いに反応させ、その結果、反応中に形成される炭酸カルシウム結晶のミキサーの表面を含む反応器の種々の表面上への析出が回避されるインライン混合反応器に関する。本発明の目的は、反応器の構造及びその機能を、実際にすべての反応が反応器の長さに沿って進行する時間を有するような大きさにすることである。したがって、主として、電極棒の有効長は、反応器の長さとして計算される。換言すれば、目的は、電極棒を、電極棒の後端で互いに反応する物質がもはや実際には存在しないような、標的懸濁液の流れ方向に沿ったプロセス配管中の長さまで伸ばすことである。前述の実施形態からも明らかなように、効率的で一様な混合は、急速な材料輸送及び急速な反応につながり、それゆえ、混合の調節は反応器の必要長に対して影響を及ぼすことができる。
【0035】
電極棒は送液管/反応器の中心部に取り付けられると前に説明したが、一部の事例では、それを、反応器の軸に対して傾斜した姿勢で取り付けることも可能である。このような解決策は、反応器/送液管が、そこで反応がなお進行するエルボ管を構成する場合に特に可能である。この場合、送液管の直線部分に向かって中心で伸びている電極棒を、両側のエルボ管上に、エルボ管内の直線部分の間になお直線電極棒を備えて配置することが可能であり、該電極棒は、当然、好ましくは、エルボ管区域の洗浄に対するその効果が可能な限り最良であるように取り付けられる。特に、太い送液管では、いくつかの並列した電極棒を使用することが必須である可能性もある。したがって、清浄に維持されるべき表面の近くの流体のpH値が所望の範囲にあることを確かめることが可能である。
【0036】
図6は、本発明の第5の好ましい実施形態として、炭酸カルシウムの結晶化反応を、炭酸塩が反応ゾーンに位置する任意の表面に付着することを許さないように実施する別の方式を極めて概略的に示す。この別の方法は、送液管12の周囲に永久磁石又は電磁石50を配置することである。このような装置は、例えば、米国特許第5725778号及び5738766号中に開示されている。永久磁石は、その方向及び強さが一定である磁界を形成する。例えば、送液管12の周囲に導電体52を巻きつけること、及びこうして形成されるコイル中に電流を流すことによって、電磁石50を送液管と連結して配置することが可能である。制御系18を使用して電流の大きさ、方向、及び/又は周波数を変えることによって、形成される磁界の方向及び強度を所望通りに変えることができる。さらに、電磁石50のコイル中に異なる形状の波として電流を流すことも可能である。しかしながら、磁界が、永久磁石又は電磁石のいずれを使用して創り出されるにせよ、操作原理は常に同じである。送液管内部の磁石によって、電界が誘導される。前記電界を利用できるためには、管内を流れる懸濁液が、イオン、この場合にはカルシウムイオン及びその対イオン(炭酸イオン又は炭酸水素イオン)を含まなければならない。電界は、その範囲のイオンを、該電界に関してそれら自身の電荷によって要求されるような方向に流れるようにする。送液管内の限られた長さでの単なる電界の存在及び電界の方向の変化は、イオンが電界の変化に一致した方向に流れる傾向があるので、流れに引きずられたイオンの向きを変え、最終的にはイオン結合が解放され、遊離しているイオンが互いに反応し、炭酸カルシウムの結晶を形成することにつながる。換言すれば、電界及び特にその方向の変化は、イオンの方向の連続的変化が懸濁液中でのそれらの一様な混合を助けるので、イオン相互の化学反応を加速する。さらに、形成された炭酸カルシウムの結晶は、直ちに、それらの結晶が送液管の表面に付着し、析出物を形成することはできないような相になるか、或いはそれらが析出物を形成しても、それらは非常に柔らかくなるので、適切な流速の流れの中に直ちに取り込まれる。
【0037】
炭酸カルシウムの結晶化反応を、反応ゾーン中に位置する任意の表面に炭酸塩が付着することを許さないように管理する、本質的に異なる第3の方式は、前に言及したように電極棒の支持アームと連結して、このような部分、すなわち送液管及びその内部に位置する構造物を、炭酸塩の結晶がそれに固着しないような材料から作製することである。このような材料の例としては、ポリアミドを挙げることができる。その他の考え得る被覆又は製造用材料としては、PE樹脂、各種ポリウレタン、Teflon(登録商標)などの各種フッ化化合物、ワックス、シリコーン及びエポキシ樹脂が挙げられる。さらに、合成ゴム又は天然ゴムを含め、各種の弾性ゴム状化合物を考えることができ、中でも、例としてEPDM(エチレンプロプロピレンジエンモノマー)を挙げることができる。さらに、同様の結果は、表面のトポロジーを利用して(主としていわゆるナノ表面を利用して)達成することができる。
【0038】
以下で、PCC反応器を短循環路中に配置する種々の選択肢を、図7〜14を参照して考察する。繊維ウェブ機のヘッドボックスに向かって流れる繊維パルプ中でPCCを直接製造することは以前から公知である。この方法はそれ自体、標的懸濁液が繊維パルプ全体であるために、特に特定の部分パルプ又は懸濁液に関してPCCの析出を実施することができないなどの不都合を有する。さらなる不都合は、任意の部分工程におけるようなPCCの析出中に起こり得るすべての乱れ(disturbance)が、製造に向けて直接的に移動するプロセス流に送られることである。したがって、ほとんどの場合、乱れは、製造に直接に影響を及ぼす。
【0039】
したがって、以下のイメージ7〜14に示されるすべての解決策は、PCC反応器を側流に配置することに関するものであり、それによって、他方では、PCCを最も大きな利益をもたらす標的懸濁液中だけで析出させることが可能であり、他方では、製造に何の影響も与えずに、乱れを隔離することができる。
【0040】
図7は、本発明の第6の好ましい実施形態による装置を概略的に示す。図の装置において、PCC反応器10は、繊維ウェブ機に至るライン62からワイヤーピット66と連結されたそれ自身のライン64へ移動させられている。濾液60は、例えば、繊維ウェブ機からワイヤーピットに集められる。図に示した実施形態において、高粘稠性パルプ68、すなわち標的懸濁液の製造に必要とされる実際にはすべてのパルプ成分、長繊維パルプ、短繊維パルプ、機械パルプ、化学機械パルプ、化学パルプ、ミクロ繊維パルプ、ナノ繊維パルプ、再生パルプ、リジェクト、微細繊維、及び繊維回収フィルターからの繊維画分を含む成分(そのそれぞれは、1種又は複数の種類でもよい)は、希釈/混合ポンプ70に送られ、そこで、該高粘稠性パルプは、約3%〜5%である最初の粘稠度から、前記粘稠度と約0.5%〜1.8%であるヘッドボックスでの粘稠度との間に、好ましくは0.5%〜2.5%の範囲に、ワイヤーピットからの流体で希釈される。この中間希釈パルプは、PCC反応器10に送られ、その中で、二酸化炭素及び石灰乳が、好ましくはインジェクションミキサー(単数及び複数)を使用してパルプ中に導入され、前記特許文献に記載のように、PCCが、二酸化炭素及び石灰乳から繊維及びその他の固体上に結晶化する。PCCを載せた中間希釈パルプは、配管ライン64に沿ってさらにワイヤーピット66に送られ、その中でPCCを載せたパルプは、希釈/混合ポンプ72を使用して、ヘッドボックスの粘稠度又はその近辺まで希釈され、続いて、パルプは、繊維ウェブ機PMに至る配管ライン62に送られる。換言すれば、標的懸濁液は、繊維ウェブ機に送られる繊維パルプであるが、PCCの製造は、別個の循環路の中で行われる。
【0041】
図8は、本発明の第7の好ましい実施形態による装置の概略的例示である。図の装置において、PCC反応器10は、図7と同様、繊維ウェブ機に至るライン62からワイヤーピット66と連結されたそれ自身のライン64へ移動させられている。図に示す実施形態において、1種又は複数の高粘稠性パルプ画分若しくは成分78又はフィラー成分は、図7のように高粘稠性パルプのすべてではないが、希釈/混合ポンプ70に送られ、そこで、前記高粘稠性パルプ画分78は、約3%〜5%であるその最初の粘稠度から、この粘稠度と0.5%〜1.8であるヘッドボックスでの粘稠度との間、好ましくは0.5%〜2.5%にワイヤーピット66からの流体を使用して希釈される。この中間希釈パルプ画分は、PCC反応器10に送られ、そこで、前記特許文献に記載のように、PCCが、二酸化炭素及び石灰乳から繊維及びその他の固体上で結晶化する。PCCを載せた中間希釈パルプは、配管ライン64に沿って再びワイヤーピット66に送られ、その中で、希釈/混合ポンプ72を使用して、PCCを載せたパルプと、それと接触した高粘稠性パルプの残りの画分88とが混合され、ヘッドボックスでの粘稠度又はその近辺まで希釈され、繊維ウェブ機PMに至る配管ライン62に送られる。
【0042】
図9は、本発明の第8の好ましい実施形態による装置の概略的例示である。図の装置において、PCC反応器10は、図7及び8と同様、繊維ウェブ機に至るライン62からワイヤーピット66と連結されたそれ自身のライン64へ移動させられている。図に示した実施形態において、再循環ポンプ70は、繊維ウェブ機からワイヤーピット66に送られる少なくとも濾液60を、PCC反応器10を経由してワイヤーピット66にポンプで送り戻すだけである。換言すれば、PCCは、微細繊維材料及びフィラーの双方を主として含む濾液中の固体に析出する。図の実施形態において、PCCを載せた前記濾液は、高粘稠性パルプ68、すなわち実際には標的懸濁液の製造に必要とされるすべてのパルプ成分(これらには、とりわけ、長繊維パルプ、短繊維パルプ、機械パルプ、化学機械パルプ、化学パルプ、ミクロ繊維パルプ、ナノ繊維パルプ、再生パルプ、リジェクト、微細繊維、及び繊維回収フィルターからの繊維画分を含み、それらのそれぞれは1種又は複数の種類でよい)を、希釈/混合ポンプ72を使用してヘッドボックスの粘稠度又はその近辺まで希釈するのに使用され、それに続いて、それは、繊維ウェブ機PMに至る配管62に送られる。
【0043】
図10は、本発明の第9の好ましい実施形態による装置の概略的例示である。図10の実施形態では、1つの渦流分離機を使用する渦流式洗浄(voltex cleaning)ステーション80を記載して、繊維ウェブ機へのアプローチシステムをわずかではあるがより詳細に説明する。したがって、前記アプローチシステムにおいて、繊維ウェブ機からワイヤーピット66に到着する濾液60は、導入ポンプ72を使用してヘッドボックスの粘稠度まで希釈され、VC(渦流式洗浄)ステーション80を経由して(時には、アプローチシステムがVCステーションを含まないなら直接的に)気体分離タンク83、いわゆるデキュレーターにポンプで送られ、気体を含まない標的懸濁液は、そのタンクから繊維ウェブ機PMに送られる。機体分離タンク82の表面高さは、オーバーフローにより一定に保持され、結果として、タンクからオーバーフローとして取り出される標的懸濁液は、配管84に沿ってプロセスに戻る。図10の実施形態において、このオーバーフローの戻りは、高粘稠性パルプ68の中で、高粘稠性パルプの全体が前記オーバーフロー懸濁液で希釈されるように実施される。オーバーフローと高粘稠性パルプとの希釈された混合物は、ワイヤーピット66に連結された導入ポンプ72に、前記希釈後のみ送られ、それに連結されて、パルプはヘッドボックスの粘稠度又はその近辺まで希釈される。
【0044】
図11は、本発明の第10の好ましい実施形態による装置の概略的例示である。この実施形態では、図10のように渦流式分離機を使用する渦流式洗浄ステーション80を記載して、繊維ウェブ機へのアプローチシステムを示す。したがって、前記アプローチシステムにおいて、繊維ウェブ機からワイヤーピット66に到着する濾液60は、導入ポンプ72を使用してヘッドボックスの粘稠度まで希釈され、VCステーション80を経由して(時には、アプローチシステムがVCステーションを含まないなら、直接的に)気体分離タンク82、いわゆるデキュレーターにポンプで送られ、気体を含まない標的懸濁液は、そのタンクから繊維ウェブ機PMに送られる。気体分離タンク82の表面高さは、オーバーフローにより一定に保持され、その結果、タンクからオーバーフローとして取り出される標的懸濁液は、配管84に沿ってプロセスに戻される。図11の実施形態において、このオーバーフローの戻りは、高粘稠性パルプの中にもたらされ、その結果、高粘稠性パルプ78の1種又は複数の繊維又はフィラー成分が前記オーバーフロー懸濁液で希釈される。オーバーフローと高粘稠性パルプ成分(単数及び複数)との希釈された混合物78は、前記希釈後だけワイヤーピット66に連結された導入ポンプ72に送られ、高粘稠性成分88の残りは、ポンプ72に運ばれ、それと連結されて、パルプはヘッドボックスの粘稠度又はその近辺まで希釈される。
【0045】
図12は、本発明の第11の好ましい実施形態による装置の概略的例示である。該図は、繊維ウェブ機のアプローチシステムを前に比べてより詳細に例示する。例えば、種々の高粘稠性成分68を含み、ワイヤーピット66と連結されて希釈された標的懸濁液を、ポンプ72を用いて渦流式洗浄ステーション80(そのステージの数は、実際にはより多くてもよいが、この場合3つのステージ92、94及び96からなる)に送ることが提案されている。アクセプト、すなわち渦流式洗浄ステーションの第1ステージ92のオーバーフローは、繊維ウェブ機又は図に示すように気体分離タンク82、デキュレーターに直接送られ、本質的に気体を含まない画分が、そこから、繊維ウェブ機PMに送られ、気体分離タンク82の表面レベルを一定に維持するオーバーフロー壁を越えて取り出される一部の標的懸濁液は、ライン84に沿ってほとんどの場合ワイヤーピット66と連結されたポンプ72の導入部に戻る。渦流式洗浄ステーション80の第1ステージ92のリジェクト、すなわち下向流は、ポンプ98を使用してVCステーションの第2ステージ94に送られる。通常、ワイヤーピット66からポンプ98に至る希釈流体ライン100も存在する。本発明のこの実施形態において、PCC反応器10は、VCステーション80の第2ステージ94の供給液中に位置している。第2ステージのVC94、すなわち固体上へのPCCの結晶化及び析出に続くステージにおいて、標的懸濁液は、2つの画分に分割され、それからオーバーフローはライン102に沿って、通常的にはワイヤーピット66に連結されたポンプ72の導入部に送られ、そこから、VCステーション80の第1ステージ92及び気体分離タンク82を経由して繊維ウェブ機PMに輸送される。VCステーション80の第2ステージ94のリジェクト、すなわち下向流は、ポンプ104を用いて、通常的にはワイヤーピット66からライン108に沿って到着するワイヤー水で希釈されて、ライン196に沿ってVCステーション80の第3ステージ96に、送られる。VCステーションの第3ステージ96のアクセプトは、通常、ライン110に沿ってVCステーションの第2ステージ94の導入部に送られる。すなわち、実際上、本発明のこの実施形態において、PCCは、VCステーションの第1ステージのリジェクトに加え、第3ステージのアクセプト中でも析出される。
【0046】
この実施形態、また実際には次の実施形態の利点の1つは、PCCの結晶化の際に、PCCが、実際の反応器又はそれに続く配管中で析出し、次いで、その析出物が、時にはより大きな粒子として放出される場合に、該粒子が、VCステーションの第2ステージ94で既にリジェクト中に分離されており、それらの粒子が繊維ウェブの製造に影響を及ぼさないことである。
【0047】
図13は、本発明の第12の好ましい実施形態による装置の概略的例示である。図12と同様、この図は、繊維ウェブ機のアプローチシステムを若干より詳細に例示する。例えば、種々の高粘稠性成分68を含み、且つワイヤーピット66と連結されて希釈された標的懸濁液を、ポンプ72を用いて、渦流式洗浄ステーション80(ステージの数は実際にはより多くてもよいがこの場合は3つのステージ92、94及び96からなる)に送ることが提案されている。アクセプト、すなわち渦流式洗浄ステーションの第1ステージ92のオーバーフローは、直接的に繊維ウェブ機に、又は図に示すように気体分離タンク82、デキュレーターに送られ、それから、本質的に気体を含まない画分が、繊維ウェブ機PMに送られ、気体分離タンク82の表面レベルを一定に維持するオーバーフロー壁を越えて取り出される一部の標的懸濁液は、ライン84に沿って、ほとんどの場合ワイヤーピット66と連結され、標的懸濁液をVCステーションに向けてポンプ輸送するポンプ72の導入部に戻される。渦流式洗浄ステーション80の第1ステージ92のリジェクト、すなわち下向流は、ポンプ98を使用してVCステーションの第2ステージ94に送られる。通常、ワイヤーピット66からポンプ98に至る希釈流体ライン100も存在する。VCの第2ステージ94において、標的懸濁液は、2つの画分に分割され、それから、アクセプト、すなわちオーバーフローは、ライン102に沿って通常的にはワイヤーピット66に連結された導入ポンプ72の給液部に送られ、そこからVCステーション80の第1ステージ92及び気体分離タンク82を経由して繊維ウェブ機PMに輸送される。リジェクト、すなわちVCステーション80の第2ステージ94の下向流は、ポンプ104で、通常的にはワイヤーピット66からライン108に沿って到着するワイヤー水で希釈されて、ライン196に沿ってVCステーション80の第3ステージ96に送られる。この実施形態において、PCC反応器10はVCステーション80の第3ステージ96の導入部に配置され、その結果、反応器10中で製造され、VCステーションのステージでアクセプトされたPCCは、まず、ライン110に沿って、VCステーション80の第2ステージ94の導入部のポンプ98の入り口側に、次いで、第2ステージからライン102に沿って導入ポンプ72に、そこからさらに気体分離タンク82及び最終的には繊維ウェブ機PMに輸送される。
【0048】
図14に示す配置を、本発明のさらに別の第13の実施形態として挙げることができ、該配置は、他の点では図12の実施形態と類似の種類であるが、ここでは、気体分離タンク82のオーバーフローが、ワイヤーピット66に連結されたポンプ72には送られず、代わりに、VCステーション80の第2ステージ94の導入ポンプ98に送られる。換言すれば、オーバーフローを、単独で、又はワイヤーピット66からライン100に沿って利用できるワイヤー水と一緒に、第1ステージ92のリジェクト及びVCプラントの第3ステージ96のアクセプトの粘稠度を、PCC反応器10に適するように調節するのに使用することができる。白水フィルターからの濾液を、前記粘稠度の調節に使用することもできる。
【0049】
最後に、図15は、本発明の第14の実施形態として、PCC反応器中でのPCC析出の不都合な効果を防止するための解決策を例示する。前記解決策は、反応器の一方のみを現行の生産で主として使用し、同時に残りの反応器を洗浄するような、(少なくとも)2つの並列した反応器10’及び10’’の使用に基づくものである。これは、各反応器10’、10’’を配管64に、バルブ(示さない)を用いて、該反応器を所望通りにPCC製造に連結し、且つPCC製造から遮断できるように連結して実施することができる。換言すれば、好都合なさらなる実施形態により、PCCの製造をある反応器から別の反応器に変える予定の場合には、第1反応器のバルブ(導入及び出口バルブ)を閉じ、同時に、第2反応器のバルブを開放する。ここでの目的は、当然、反応器10’及び10’’を通る一定の容積流量を達成することである。反応器10’及び10’’中に導入される化学物質の流量は、形成予定の懸濁液中でのPCC濃度を一様で/所望通りに保持するために、それら自身のバルブ(示さない)により相応に調節される。PCCの製造が完全に第2反応器に移行され、第1反応器がPCCの製造循環路64から遮断されている場合、反応器の壁及び化学物質の導入手段に付着するPCCを迅速に溶解するために、適切な強度の酸溶液が第1反応器中に送られる。前記一連の洗浄の頻度は、経験で、又は適切な電気的方法(トモグラフィー、層になったPCC上の抵抗など)を使用して決定することができる。通常、反応器は、用途に応じて、数日〜数週間の範囲の間隔での洗浄が必要である。
【0050】
使用される反応器10’、10’’の対を示しているが、繊維ウェブ機のアプローチシステム中の特定の位置だけに存在する第14の実施形態に関して、その対は、また、ただ1つのPCC反応器を配置することができるプロセスの任意の場所に配置することができることに留意されたい。
【0051】
最後に、少数の最も好ましい実施形態のみを、上述していることに留意されたい。したがって、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明を、添付の特許請求の範囲によって規定される範囲内の多くの方式で適用できることは明らかである。例えば、本発明の種々の実施形態と連結して使用される標的懸濁液の定義は、単に一例と理解されるべきであることは明らかである。したがって、本発明の目的は、繊維ウェブ機の短循環路中でのPCCのインライン製造であるので、化学物質の導入及びそれによるPCCの製造は、パルプ自体に加えて、パルプの製造において直接的又は間接的に使用される任意の画分又は懸濁液に対して実施することができることは明らかである。したがって、二酸化炭素及び石灰乳を導入し、そうして繊維画分(例えば、長繊維パルプ、短繊維パルプ、機械パルプ、化学パルプ、再生パルプ、微細繊維)又はフィラー画分(例えば、TiO)又は繊維濾液中でPCCを製造することができる。実際の繊維ウェブ機(ワイヤー/圧搾部分)から流れてくる種々の濾液、繊維回収フィルターからの曇った及び澄明な濾液、並びにヘッドボックスなどの種々の希釈標的中に導入される濾液を、濾液の例として挙げることができる。化学物質は、さらに、例えば、渦流式洗浄ステーション中のステップ、パルプ中に引き入れられるオーバーフロー中に導入することができる。したがって、前記で使用される用語「送液管」は、また、抄紙機のヘッドボックスに向かうパルプ用の流れ導管としてのみならず、前記の部分パルプ、懸濁液、紙の最終製造に向けて流される成分又は画分のための流れ導管と理解すべきである。さらに、たとえワイヤーピットが、前図7〜15中に伝統的な円筒状タンクとして示されていても、本発明によるPCCの製造は、広い面積の浅い容器及びそれから出ているオーバーフロー管から形成される新たな種類のワイヤーピット中で実施することもできることを理解されたい。したがって、PCCの製造は、前記ワイヤーピットの出口管中で、白水の全体積、又は白水のほとんど全体積で有利には実施することができる。
【0052】
さらに、繊維パルプの製造で使用される前記の繊維パルプ、その部分パルプ及びその他の懸濁液、並びに濾液が、たとえ一部の文脈中で挙げられていても、標的懸濁液は、繊維ウェブの製造に使用される繊維成分の種々の製造ステップにおいて1つの方式又はその他の方式で使用されるすべての種類の懸濁液を意味することに留意されたい。したがって、本発明は、通常の抄紙機に加え、例えば、種々のティッシュ及び厚板機に関する。種々の実施形態に関連させて開示された特徴は、また、本発明の範囲内の他の実施形態と関連させて使用することができ、且つ/又は異なる組み立て部品を、開示された特徴から組み合わせることができ、このことは、当然、望ましく、且つ技術的に実現可能であるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維ウェブ機の繊維ウェブ形成工程の標的懸濁液中に炭酸カルシウムをインラインで製造する方法であって、繊維ウェブ形成工程の標的懸濁液が次の成分、すなわち、バージンパルプ懸濁液(長繊維パルプ、短繊維パルプ、機械パルプ、化学機械パルプ、化学パルプ、ミクロ繊維パルプ、ナノ繊維パルプ)、再生パルプ懸濁液(再生パルプ、リジェクト、繊維回収フィルターからの繊維画分)、添加剤懸濁液、そして、固体含有濾液の少なくとも1種を含み、炭酸カルシウムが前記標的懸濁液を輸送する送液管中で製造され、前記送液管がPCC反応器(10、10’、10’’)を具備すること、前記反応器(10、10’、10’’)がその反応器(10、10’、10’’)中に又はそれと連結された装置の表面上にPCCが析出する傾向によって引き起こされる不都合を防止するための装置を具備すること、前記標的懸濁液中に二酸化炭素及び石灰乳を混合することによって、前記二酸化炭素及び石灰乳を前記反応器(10、10’、10’’)の内部を流れる前記標的懸濁液中に添加すること、そして、前記化学物質を、炭酸カルシウムの結晶を形成するための前記反応器(10、10、10’’)中で一緒に反応させ、それによって、前記防止装置が前記反応器(10、10’、10’’)中の前記化学物質が反応する長さ、いわゆる反応ゾーンに本質的に配置されることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
少なくとも1つのインジェクションミキサー(24、24’、24’’)を使用して、化学物質、すなわち二酸化炭素及び石灰乳の少なくとも一方を、前記反応器(10、10’、10’’)中に導入することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの電極棒(16)を、反応器(10、10’、10’’)の内部に配置すること、及び前記電極棒(16)に対して絶縁された少なくとも1つの電極(20)を、前記反応器(10、10’、10’’)の内部表面上に、電極棒(16)が前記反応器(10、10’、10’’)の反応ゾーンの全長まで本質的に伸びるように配置することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記電極棒(16)がカソードを形成し且つ前記の少なくとも1つの電極(20)がアノードを形成するように、それらの電極(16及び20)に電流を流し、それによって、アノードの近くに形成される低pHのゾーンが、反応器(10、10’、10’’)の内部表面上での析出物の形成を防止することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記電極棒(16)を清浄に維持するために、電極対(16、20)の極性を変更するように制御系(18)を配置することを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記制御系(18)が、プリセットタイマーに基づいて極性を変更することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記制御系(18)が、前記電極棒(16)と前記少なくとも1つの電極(20)との間の電圧が参照値を超える場合に、極性を変更することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記制御系(18)が、前記電極棒(16)と前記少なくとも1つの電極(20)との間の電圧が参照値に復帰する場合に、極性を初期状態に戻すことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
永久磁石又は電磁石(50)が、前記反応器(10、10’、10’’)の外側に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
コイル(50)を、前記反応器(10、10’、10’’)の外表面に導電体(52)を巻きつけることによって配置し、前記反応器(10、10’、10’’)の周囲において制御系(18)に連結することを特徴とする、請求項1又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記コイル(50)によって形成される磁界の方向又は強度が、制御系(18)によって変更されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
結晶化反応の伝搬を、1つ又は複数のpHセンサー、導電率センサーによって、又はトモグラフィーによって監視することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応器(10、10’、10’’)を、反応ゾーンの全長が炭酸カルシウムの結晶が固着しない材料からなるように製作し又は具備させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
反応器が、並列で連結された2つの同様の反応器(10’、10”)から構成され、PCCを製造するために一度に使用される反応器が主として1つのみであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
固体を含有する濾液(60)を標的懸濁液としてワイヤーピット(66)から取り出し、前記濾液をそこから繊維ウェブ機(PM)に送り、PCCを載せた前記標的懸濁液を前記ワイヤーピット(66)に戻すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
標的懸濁液を形成するために、次のもの、すなわち、バージンパルプ懸濁液(長繊維パルプ、短繊維パルプ、機械パルプ、化学機械パルプ、化学パルプ、ミクロ繊維パルプ、ナノ繊維パルプ)、再生パルプ懸濁液(再生パルプ、リジェクト、繊維回収フィルターからの繊維画分)、添加剤懸濁液、そして、ワイヤーピット(66)と連結している固体含有濾液の少なくとも1種を、繊維ウェブ機(PM)からの固体含有濾液(60)で希釈し、PCCを前記標的懸濁液中で析出させ、PCCを載せた前記標的懸濁液を、製造プロセスに適した粘稠度にさらに希釈するために、前記ワイヤーピット(66)に戻すことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
繊維パルプを形成するために、次のものの少なくとも1種、すなわち、バージンパルプ懸濁液(長繊維パルプ、短繊維パルプ、機械パルプ、化学機械パルプ、化学パルプ、ミクロ繊維パルプ、ナノ繊維パルプ)、再生パルプ懸濁液(再生パルプ、リジェクト、繊維回収フィルターからの繊維画分)、そして、添加剤懸濁液、の少なくとも1種を、PCCを載せた標的懸濁液中に添加することを特徴とする、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
繊維ウェブ機の繊維ウェブ形成工程の標的懸濁液中に炭酸カルシウムをインラインで製造するための反応器であって、繊維ウェブ形成工程の標的懸濁液が次の成分、すなわち、バージンパルプ懸濁液(長繊維パルプ、短繊維パルプ、機械パルプ、化学機械パルプ、化学パルプ、ミクロ繊維パルプ、ナノ繊維パルプ)、再生パルプ懸濁液(再生パルプ、リジェクト、繊維回収フィルターからの繊維画分)、添加剤懸濁液、そして、固体含有濾液の少なくとも1種を含み、反応器(10、10’、10’’)が、前記反応器(10、10’、10’’)の内表面を炭酸カルシウムの析出物から清浄に維持するための手段(14,14’、16、18、20、50、52)、少なくとも二酸化炭素又は石灰乳を前記反応器(10、10’、10’’)中に導入するための手段(24、24’、24’’)、並びに前記の少なくとも二酸化炭素及び石灰乳を前記標的懸濁液中で混合するための手段(24、24’、24’’、40)を具備し、それによって、二酸化炭素及び石灰乳が、前記反応器(10、10’、10’’)中を流れる前記標的懸濁液中に添加され、前記標的懸濁液中で混合されている前記二酸化炭素及び石灰乳並びに前記化学物質を、炭酸カルシウムの結晶を形成するために、前記反応器(10、10’、10’’)中で一緒に反応させることを特徴とする、上記反応器。
【請求項19】
表面を清浄に維持するための前記手段が、反応器(10)の内部に反応器(10)の壁から一定の距離に配置された少なくとも1つの電極棒(16)、及び反応器(10)の壁の表面上に位置する少なくとも1つの他の電極(20)、並びに表面を清浄するための手段を制御するための手段(18)を含むことを特徴とする、請求項18に記載の反応器。
【請求項20】
表面を清浄するための前記制御手段(18)が、電流源及び制御系を含むことを特徴とする、請求項19に記載の反応器。
【請求項21】
前記電極棒(16)が、アーム(14、14’)によって反応器(10)の壁に支持されていることを特徴とする、請求項19又は20に記載の反応器。
【請求項22】
前記電極棒(16)が、反応器(10)として機能する送液管(12)から絶縁されていることを特徴とする、請求項19又は21に記載の反応器。
【請求項23】
前記電極棒(16)が、反応器(10)中の本質的に中央に配置されていることを特徴とする、請求項19から22のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項24】
前記の二酸化炭素又は石灰乳の導入手段(24、24’、24’’)が、同時に、前記二酸化炭素又は石灰乳を標的懸濁液中で混合するための装置として機能することを特徴とする、請求項18から23のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項25】
前記の二酸化炭素又は石灰乳の導入及び混合手段(24、24’、24’’)が、インジェクションミキサーであることを特徴とする、請求項24に記載の反応器。
【請求項26】
前記の二酸化炭素又は石灰乳の導入手段が、反応器(10)の中央に配置され、その末端が、二酸化炭素又は石灰乳のための少なくとも1つの開口部(44)を具備する円筒管(42)であることを特徴とする、請求項18から25のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項27】
前記円筒管(42)が、同時に、機械式ミキサー(40)のためのシャフトとして機能することを特徴とする、請求項26に記載の反応器。
【請求項28】
表面を洗浄するための前記手段が、反応器(10)の周囲に配置された永久磁石又は電磁石(50)であることを特徴とする、請求項18に記載の反応器。
【請求項29】
前記電磁石(50)が、反応器(10)の周囲に巻かれた導電体(52)によって構成され、制御系(18)に連結されていることを特徴とする、請求項28に記載の反応器。
【請求項30】
前記反応器(10)が、少なくとも1つの測定装置(22)を具備し、前記装置によって、例えば、反応器(10)中での結晶化反応の伝搬を監視、制御又は調節することが可能であることを特徴とする、請求項18から29のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項31】
前記反応器(10)中に具備された少なくとも1つの測定装置(22)が、トモグラフィー装置、pH値を測定するセンサー、又は導電率を測定するセンサーであることを特徴とする、請求項30に記載の反応器。
【請求項32】
2つのセンサーが、pH値を測定するために反応器の内部に配置され、その一方が、反応器(10)中の化学薬品の導入の前に位置し、他方が、反応ゾーンの終点又はその後に位置していることを特徴とする、請求項30に記載の反応器。
【請求項33】
前記反応器(10)が、炭酸カルシウムの結晶が固着しない材料で作製又は被覆されていることを特徴とする、請求項18に記載の反応器。
【請求項34】
前記反応器(10)を清浄するための前記装置が、反応器(10)の内部において後の化学物質の導入点の下流に配置され、本質的に反応ゾーンの全長まで伸びていることを特徴とする、請求項18から33のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項35】
前記反応器が、並列で連結された2つの同様の反応器(10’、10’’)からなり、PCCを製造するために一度に使用される反応器が主として1つの反応器のみであることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項36】
前記PCC反応器(10、10’、10’’)が、ワイヤーピット(66)から始まりそこで終わる特殊な反応器循環路(10、64)中のワイヤーピット(66)に連結されて配置されていることを特徴とする、請求項18から35のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項37】
前記反応器循環路(10、64)が、ポンプ(70)をも含み、それによって、次のもの、すなわち、バージンパルプ懸濁液(長繊維パルプ、短繊維パルプ、機械パルプ、化学機械パルプ、化学パルプ、ミクロ繊維パルプ、ナノ繊維パルプ)、再生パルプ懸濁液(再生パルプ、リジェクト、繊維回収フィルターからの繊維画分)、添加剤懸濁液、及び固体含有濾液の少なくとも1種が、反応器循環路(10、64)中を循環することを特徴とする、請求項36に記載の反応器。
【請求項38】
前記反応器循環路(10、64)が、繊維パルプを繊維ウェブ機に向かってポンプ輸送するポンプ(72)で終わり、前記ポンプがワイヤーピット(66)に連結されて配置されていることを特徴とする、請求項36又は37に記載の反応器。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−521417(P2013−521417A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556558(P2012−556558)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【国際出願番号】PCT/FI2011/050203
【国際公開番号】WO2011/110744
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(512233101)ユーピーエム − キュンメネ コーポレイション (1)
【出願人】(506118559)ウエテンド テクノロジーズ オサケユキチュア (7)
【Fターム(参考)】