説明

繊維シート及び繊維シートの製造方法

【課題】 電気絶縁性能、分離性能、液体保持性能、払拭性、或いは隠蔽性などの各種性能に優れていることに加えて、耐熱性に優れている繊維シートを提供すること、及びこの繊維シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の繊維シートは、異方性ポリマー繊維と結晶性樹脂とを含み、結晶性樹脂は結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも5℃以上高い融解ピーク温度を有する。この繊維シートは、異方性ポリマー繊維と結晶性樹脂とを含む前駆繊維シートを形成した後に、結晶性樹脂の融解ピーク温度の17℃低い温度から、結晶性樹脂の融解ピーク温度以下での熱処理を実施して製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維シート及び繊維シートの製造方法に関する。より具体的には、電気二重層キャパシタ用セパレータとして好適に使用することができる繊維シート及び繊維シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から不織布、編物、織物等の繊維シートは、繊維、繊維シートの製造方法及び後加工を適宜選択し、組み合わせることによって、各種特性をもつことができるため、様々な用途に適用されている。
【0003】
例えば、繊維シートの特性の1つである電気絶縁性能を利用した1つの用途として、電気二重層キャパシタのセパレータ用途がある。つまり、電気二重層キャパシタはイオン性溶液中に1対の電極が浸漬された構造を有し、電極に電圧を印加すると、電極と反対符号のイオンが電極の近傍に分布してイオンの層を形成する一方で、電極の内部にイオンと反対符号の電荷が蓄積される。そのため、電極間に負荷をつなげば、電極内部の電荷が放電されるとともに、電極近傍に分布していたイオンは電極近傍から離れて中和状態に戻る。このような電気二重層キャパシタにおいて、1対の電極同士が接触してしまうと、電極近傍においてイオンの層を形成することが困難になるため、1対の電極間にセパレータが配置されている。
【0004】
このような電気二重層キャパシタ用セパレータとして、本願出願人は「融解温度又は炭化温度が300℃以上の樹脂から構成されているフィブリルを有する繊維と、繊度が0.45dtex(デシテックス)以下の細ポリエステル繊維とを含む繊維シートからなる電気二重層キャパシタ用セパレータ。」(特許文献1)、「融点又は炭化温度が300℃以上の樹脂からなる耐熱性繊維が、繊維交点に非繊維状態で凝固した、200℃以上、かつ耐熱性繊維の融点又は炭化温度よりも低い融点をもつ熱可塑性樹脂によって固定された不織布であり、前記不織布を示差走査熱量測定して描いたDSC曲線に結晶化ピークが描かれない電気二重層キャパシタ用セパレータ。」(特許文献2)等を提案した。これらの電気二重層キャパシタ用セパレータは耐熱性のフィブリルを有する繊維又は耐熱性繊維と、細ポリエステル繊維又は200℃以上の融点をもつ熱可塑性樹脂とを含み、耐熱性に優れているため、電気二重層キャパシタ用セパレータを用いて電極群を組み立てた後に、電極群を高温で乾燥して水分を除去したとしても、セパレータが破断することなく、耐電圧の高い電気二重層キャパシタやエネルギー密度の高い電気二重層キャパシタを製造できるものであり、また、鉛フリー半田の使用に耐えられるものであった。しかしながら、前記耐熱性にバラツキが生じる場合があったため、更に耐熱性の優れる電気二重層キャパシタ用セパレータが待望されていた。
【0005】
このように、繊維シートは上述のような電気絶縁性能、或いは分離性能、液体保持性能、払拭性、隠蔽性などの各種性能に優れていることに加えて、耐熱性に優れていると、更に様々な用途に適用できるため、より耐熱性に優れる繊維シートが待望されていた。
【0006】
【特許文献1】特開2001−244150号公報(請求項1、請求項2など)
【特許文献2】特開2005−259983号公報(請求項1、請求項8など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述のような問題点を解決するためになされたもので、電気絶縁性能、分離性能、液体保持性能、払拭性、或いは隠蔽性などの各種性能に優れていることに加えて、耐熱性に優れている繊維シートを提供すること、及びこの繊維シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1にかかる発明は、「異方性ポリマー繊維と結晶性樹脂とを含む繊維シートであり、前記結晶性樹脂は結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも5℃以上高い融解ピーク温度を有することを特徴とする繊維シート。」である。
【0009】
本発明の請求項2にかかる発明は、「異方性ポリマー繊維が全芳香族ポリアミド繊維からなり、結晶性樹脂がポリエステル樹脂からなることを特徴とする、請求項1記載の繊維シート。」である。
【0010】
本発明の請求項3にかかる発明は、「沸騰したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に45分間浸漬した前後における、ポリエステル樹脂の減量率が5%以下であることを特徴とする、請求項2記載の繊維シート。」である。
【0011】
本発明の請求項4にかかる発明は、「電気二重層キャパシタ用セパレータとして用いることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の繊維シート。」である。
【0012】
本発明の請求項5にかかる発明は、「異方性ポリマー繊維と結晶性樹脂とを含む前駆繊維シートを形成した後に、熱処理前における前駆繊維シートを構成する結晶性樹脂の融解ピーク温度の17℃低い温度から、熱処理前における前駆繊維シートを構成する結晶性樹脂の融解ピーク温度以下での熱処理を、前駆繊維シートに対して1回以上実施し、結晶性樹脂の融解ピーク温度を結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも5℃以上高くすることを特徴とする、繊維シートの製造方法。」である。
【0013】
本発明の請求項6にかかる発明は、「異方性ポリマー繊維が全芳香族ポリアミド繊維からなり、結晶性樹脂がポリエステル樹脂からなることを特徴とする、請求項5記載の繊維シートの製造方法。」である。
【0014】
本発明の請求項7にかかる発明は、「結晶性樹脂が繊維形態からなることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の繊維シートの製造方法。」である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1にかかる発明は、異方性ポリマー繊維は耐熱性に優れており、しかも結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも5℃以上高い融解ピーク温度を有するため、従来よりも耐熱性の向上した繊維シートである。
【0016】
本発明の請求項2にかかる発明は、全芳香族ポリアミド繊維とポリエステル樹脂との組み合わせからなると、ポリエステル樹脂の融解ピーク温度が本来の溶融点よりも確実に5℃以上高い、耐熱性の向上した繊維シートである。
【0017】
本発明の請求項3にかかる発明は、従来ポリエステルの抽出用溶媒として使用されているヘキサフルオロイソプロパノールによっても抽出されない、耐溶剤性に優れたものであるため、従来使用が困難であった用途にも使用できる、汎用性に優れたものである。
【0018】
本発明の請求項4にかかる発明は、電極群を組み立てた後に電極群を高温で乾燥して水分を除去し、耐電圧の高い電気二重層キャパシタやエネルギー密度の高い電気二重層キャパシタを製造することができ、また、鉛フリー半田の使用にも耐えることのできる電気二重層キャパシタを製造することができる。
【0019】
本発明の請求項5にかかる発明は、特定の熱処理を実施することによって、結晶性樹脂の融解ピーク温度を結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも5℃以上高くできる、耐熱性の優れる繊維シートを製造できる方法である。つまり、請求項1にかかる繊維シートを製造できる方法である。
【0020】
本発明の請求項6にかかる発明は、ポリエステル樹脂の融解ピーク温度が本来の溶融点よりも確実に5℃以上高い、耐熱性の向上した繊維シートを製造できる方法である。
【0021】
本発明の請求項7にかかる発明は、結晶性樹脂が繊維形態からなるため、粉体などと異なり取り扱い性が容易な上に、結晶性樹脂繊維の長さを活かしてシート強度の強い繊維シートを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の繊維シートは耐熱性に優れ、各種用途に適用できるように、異方性ポリマー繊維を含んでいる。この異方性ポリマー繊維とは異方性ポリマーからなる繊維であり、異方性ポリマーとはリオトロピックポリマーとサーモトロピックポリマーの両方を含んでいる。前者のリオトロピックポリマーはポリマーの溶液が溶媒の種類や濃度変化に応じて液晶挙動を示すポリマーであり、後者のサーモトロピックポリマーはポリマーの溶融体が温度変化によって液晶挙動を示すポリマーである。より具体的には前者のリオトロピックポリマーとして、全芳香族ポリアミド、芳香族ポリアゾメチン、芳香族ポリイミド、芳香族複素環ポリマーなどを挙げることができ、後者のサーモトロピックポリマーとして、芳香族ポリエステルを挙げることができる。これらの中でも、全芳香族ポリアミド(メタ系全芳香族ポリアミド、パラ系全芳香族ポリアミド)は耐熱性に優れているとともに、後述の結晶性樹脂の融解ピーク温度を高くしやすいため好適である。この好適である全芳香族ポリアミド繊維は耐熱性に優れるように、異方性ポリマー繊維の50mass%以上を占めているのが好ましく、異方性ポリマー繊維の70mass%以上を占めているのがより好ましく、異方性ポリマー繊維の90mass%以上を占めているのが更に好ましく、異方性ポリマー繊維の100mass%を占めているのが最も好ましい。
【0023】
このような異方性ポリマー繊維はフィブリルを有しない繊維であっても良いし、フィブリルを有する繊維であっても良いが、フィブリルを有する異方性ポリマー繊維を含んでいるのが好ましい。フィブリルを有する異方性ポリマー繊維を含んでいることによって、緻密な構造を有する繊維シートであることができ、電気絶縁性能、分離性能、液体保持性能、払拭性、或いは隠蔽性などの各種性能に優れているためである。このようなフィブリルを有する異方性ポリマー繊維はその含有比率が高ければ高い程、前記性能に優れているため、異方性ポリマー繊維の50mass%以上がフィブリルを有する異方性ポリマー繊維からなるのが好ましく、異方性ポリマー繊維の70mass%以上がフィブリルを有する異方性ポリマー繊維からなるのがより好ましく、異方性ポリマー繊維の90mass%以上がフィブリルを有する異方性ポリマー繊維からなるのが更に好ましく、異方性ポリマー繊維がフィブリルを有する異方性ポリマー繊維100mass%からなるのが最も好ましい。なお、「フィブリルを有する異方性ポリマー繊維」とは、機械的剪断力などによって、1本の異方性ポリマー繊維から無数の微細繊維(フィブリル)が発生した異方性ポリマー繊維をいう。
【0024】
なお、フィブリル化していない異方性ポリマー繊維を含む場合、緻密な構造を有する繊維シートであるように、繊度は2dtex以下であるのが好ましく、1dtex以下であるのがより好ましく、0.8dtex以下であるのが更に好ましい。他方、フィブリル化した異方性ポリマー繊維の濾水度は緻密な構造をもつ繊維シートであるように、300mlCSF以下であるのが好ましく、200mlCSF以下であるのがより好ましく、100mlCSF以下であるのが更に好ましい。なお、フィブリル化した異方性ポリマー繊維の濾水度は50mlCSF以上であるのが好ましい。この「濾水度」はJIS P8121 カナダ標準ろ水度試験機により測定した値をいう。
【0025】
このような異方性ポリマー繊維は耐熱性に優れているように、繊維シート中、40mass%以上含まれているのが好ましく、50mass%以上含まれているのがより好ましく、60mass%以上含まれているのが更に好ましい。他方、後述の結晶性樹脂との関係から、90mass%以下であるのが好ましく、80mass%以下であるのがより好ましい。なお、異方性ポリマー繊維は組成、フィブリルの有無、繊度、濾水度の中から選ばれる少なくとも1点が異なる2種類以上の異方性ポリマー繊維を含んでいても良い。2種類以上の異方性ポリマー繊維を含んでいる場合には、その合計質量が前記範囲内にあるのが好ましい。
【0026】
本発明の繊維シートは前述のような異方性ポリマー繊維に加えて、融解ピーク温度が本来有する溶融点よりも高い結晶性樹脂を含んでいるため、繊維シートに強度を付与できるとともに、耐熱性に優れている。この「結晶性樹脂」とは、示差走査熱量測定を行い、DSC曲線を描いた時に結晶化ピークが描かれる樹脂であり、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂などを挙げることができる。これらの中でも本来有する融点が高く、耐熱性の優れるポリエステル樹脂からなるのが好ましく、このポリエステル樹脂は全芳香族ポリアミド繊維との組み合わせによって融解ピーク温度が高くなりやすいため、好適な組み合わせである。
【0027】
この結晶性樹脂は結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも5℃以上高い融解ピーク温度を有する耐熱性の向上したものである。この融解ピーク温度が高い程、耐熱性に優れていることになるため、結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも8℃以上高い融解ピーク温度を有するのが好ましく、結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも10℃以上高い融解ピーク温度を有するのがより好ましく、結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも12℃以上高い融解ピーク温度を有するのが更に好ましく、15℃以上高い融解ピーク温度を有するのが更に好ましく、20℃以上高い融解ピーク温度を有するのが更に好ましく、25℃以上高い融解ピーク温度を有するのが更に好ましい。なお、融解ピーク温度が高ければ高いほど耐熱性に優れているため、結晶性樹脂の融解ピーク温度の上限は特に限定するものではない。
【0028】
なお、「結晶性樹脂が本来有する溶融点」とは、「繊維総覧」(日本繊維機械学会繊維総覧編さん委員会編さん,日本繊維機械学会,昭和45年5月26日発行)に記載の溶融点を意味し、溶融点に幅がある場合には溶融点の上限を結晶性樹脂が本来有する溶融点とみなす。例えば、ポリエステル樹脂が本来有する溶融点は260℃であり、ポリエチレンが本来有する溶融点は135℃であり、ポリプロピレンが本来有する溶融点は173℃であり、ナイロン6が本来有する溶融点は220℃であり、ナイロン66が本来有する溶融点は260℃である。このように繊維総覧を基準としているのは、後述のように結晶性樹脂が繊維に由来するのが好ましいためである。
【0029】
また、本発明における「融解ピーク温度」は、示差走査熱量測定をJIS K 7121(熱流束示差走査熱量測定)に準じ、次の条件下で行なってDSC(Differential Scanning Calorimetry)曲線を描き、そのDSC曲線における融解ピーク温度を意味する。なお、融解ピークが2ヶ所以上描かれた場合には、最も温度の低い融解ピークを融解ピーク温度とみなす。低い融解ピークが存在すると、その温度で一部が溶融してしまい、耐熱性に劣るためである。また、示差走査熱量測定はTA Instruments社製Q1000を用いて行う。
1.試験片(繊維シート)の形状、大きさ及び質量;試験片として、直径6.4mmの円形の繊維シートを使用する。試験片の質量は電子天秤で5mgを目安として、小数点第2位まで計量する。
2.窒素ガス流量;50ml/min.
3.昇温速度;5.0℃/min.
4.測定開始温度;0℃
【0030】
本発明の繊維シートにおいては、結晶性樹脂はどのような状態で含まれていても良いが、例えば、非繊維状態で凝固した状態で含まれていても良いし、繊維状態で異方性ポリマー繊維と混在した状態で含まれていても良い。なお、前者のように非繊維状態で凝固した状態にあると、結晶性樹脂は繊維のように長く伸びる直線状又は曲線状の皮膜を形成しておらず、面ではなく点状に存在した状態にあるため、イオン透過性、気体透過性、液体透過性等に優れているという特徴がある。
【0031】
また、結晶性樹脂は繊維シートの厚さ方向において、偏在していないのが好ましい。偏在していないことによって、結晶性樹脂量が同じであれば、イオン透過性、気体透過性、或いは液体透過性等に優れているためである。このような状態はエマルジヨン型接着剤によって異方性ポリマー繊維を接着した場合には困難である。つまり、エマルジョン型接着剤で接着するために乾燥した場合、液体(通常、水)の揮発に伴って接着剤も繊維シート表面へ移動(いわゆるマイグレーション)するためである。
【0032】
このような結晶性樹脂は繊維シートの機械的強度に優れているように、繊維シートの10mass%以上を占めているのが好ましく、20mass%以上占めているのがより好ましい。他方、異方性ポリマー繊維との関係から、60mass%以下占めているのが好ましく、50mass%以下占めているのがより好ましく、40mass%以下占めているのが更に好ましい。なお、結晶性樹脂は樹脂組成の点で異なる2種類以上の結晶性樹脂を含んでいても良い。2種類以上の結晶性樹脂を含んでいる場合には、その合計質量が前記範囲内にあるのが好ましく、いずれの結晶性樹脂も本来有する溶融点よりも5℃以上高い融解ピーク温度を有するのが好ましい。
【0033】
本発明の繊維シートは前述のような異方性ポリマー繊維と結晶性樹脂とを含んでいるが、その形態は、例えば、不織布、織物、編物、或いはこれらの複合体であることができる。これらの中でも、不織布は細い繊維が分散した状態にあることができ、電気絶縁性能、分離性能、液体保持性能、払拭性、或いは隠蔽性等に優れているため好適である。特に、繊維が均一に分散した状態にある湿式不織布が好適である。
【0034】
本発明の繊維シートの目付、厚さ、及び見掛密度は用途により異なり、特に限定するものではないが、目付は5〜150g/m、厚さは10〜700μm、及び見掛密度は0.2〜0.75g/cmであることができる。この「目付」はJIS P 8124(紙及び板紙−坪量測定方法)に規定する方法に基いて得られる坪量をいい、「厚さ」はJIS B 7502に規定する方法による測定値、すなわち、5N荷重時の外側マイクロメーターによる測定値をいい、更に、「見掛密度(D、単位:g/cm)」は目付(W、単位:g/cm)を厚さ(T、単位:cm)で除した商、つまり、次の式から得られる値をいう。
D=W/T
【0035】
例えば、本発明の繊維シートを電気二重層キャパシタ用セパレータとして使用する場合には、目付が5〜60g/m、厚さが17〜55μm、かつ見掛密度が0.32〜0.7g/cmであるのが好ましい。このような物性を同時に満足する繊維シート(電気二重層キャパシタ用セパレータ)は、空隙が多いことによってイオン透過性に優れているためである。つまり、繊維シートの目付が5g/m未満であると、強度的に弱い傾向があり、目付が60g/mを超えると、一定体積中における繊維シート(電気二重層キャパシタ用セパレータ)の占める体積が大きくなり過ぎて、エネルギー密度を高められない傾向があるためで、より好ましい目付は10〜25g/mである。また、繊維シート(電気二重層キャパシタ用セパレータ)の厚さが17μm未満であると、十分な電気絶縁性を発揮するのが困難となり、漏れ電流を生じるなど、不安定になる傾向があり、厚さが55μmを越えると、一定体積中におけるセパレータの占める体積が大きくなり、エネルギー密度を高められない傾向があるためで、より好ましい厚さは20〜55μmである。更に、繊維シートの見掛密度が0.32g/cm未満であると、機械的強度が弱くなって、取り扱いにくくなる傾向があり、見掛密度が0.7g/cmを越えると、緻密な構造となりすぎて、イオン透過性が悪くなる傾向があるためで、より好ましい見掛密度は0.35〜0.6g/cmである。
【0036】
本発明の繊維シートは、少なくとも一方向における引張り強さが10N/15mm幅以上と引張り強さが高く、取り扱いやすいものであるのが好ましい。このような引張り強さをもつ方向はどの方向であっても良いが、繊維シートはその長手方向に対して張力をかけながら使用する場合が多いため、繊維シートの長手方向における引張強さが10N/15mm幅以上であるのが好ましい。なお、「引張強さ」は、繊維シートから長方形の試料(幅:15mm、長さ:200mm)を採取した後に、JIS P−8113に準じて測定した引張強度をいう。
【0037】
本発明の繊維シートの中でも好適である全芳香族ポリアミド繊維とポリエステル樹脂からなる繊維シートの場合、沸騰したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に45分間浸漬した前後における、ポリエステル樹脂の減量率が5%以下であるのが好ましい。このHFIPは従来からポリエステルの抽出用溶媒として使用されているもので、このような抽出用溶媒によっても抽出されない耐溶剤性に優れたものであると、従来は困難であった用途にも適用できるためである。より好ましくは減量率が3%以下であり、更に好ましくは減量率が1%以下であり、最も好ましくは0%である。
【0038】
このポリエステル樹脂のHFIPによる減量率は、次の手順により得られる値をいう。
1.繊維シートから40mm×400mmの長方形状試験片を採取し、その質量(Mb1)を計測する。
2.繊維シートにおけるポリエステル樹脂の比率から、試験片におけるポリエステル分の質量(Mbp1)を算出する。なお、「繊維シートにおけるポリエステル樹脂の比率」は、全芳香族ポリアミド繊維とポリエステル樹脂からなる繊維シートの試験片をThemogravimetry法(TG法、マックサンエンス社製、TG−DTA2000使用)によって、温度25℃から500℃に昇温した時における減量分の、試験片の質量に対する比率(Rm)と、前記繊維シートと同じ全芳香族ポリアミド繊維のみからなる繊維シートの試験片をThemogravimetry法(TG法、マックサンエンス社製、TG−DTA2000使用)によって、温度25℃から500℃に昇温した時における減量分の、試験片の質量に対する比率(Ra)との差(=Rm−Ra)から算出することができる。
3.ビーカーにヘキサフルオロイソプロパノールを80mL注ぎ込んだ後、温度120℃に設定したホットプレート上に置き、ヘキサフルオロイソプロパノールを沸騰させる。
4.前記沸騰中のヘキサフルオロイソプロパノール中に前記試験片を投入し、15分間煮沸させた後、試験片を取り出す。
5.前記3〜4の操作を繰り返して、計45分間試験片を沸騰したヘキサフルオロイソプロパノール中に浸漬した後、ビーカーから試験片を取り出し、付着しているヘキサフルオロイソプロパノールを濾紙で吸収し、除去した後、温度120℃に設定したドライヤーで10分間乾燥し、ヘキサフルオロイソプロパノールを完全に除去する。
6.ヘキサフルオロイソプロパノールを除去した試験片の質量(Ma1)を計測する。
7.前記1〜6の操作を繰り返し、3つの試験片に関して、それぞれ試験片の試験前質量(Mb1、Mb2、Mb3)、ポリエステル分の質量(Mbp1、Mbp2、Mbp3)、及び試験片の試験後質量(Ma1、Ma2、Ma3)を計測し、次いで、試験片の試験前質量の算術平均値(Mbav)、ポリエステル分の質量の算術平均値(Mbpav)、及び試験片の試験後質量の算術平均値(Maav)をそれぞれ算出する。
8.ヘキサフルオロイソプロパノールによって除去される可能性があるのはポリエステル樹脂だけであるため、次の式から減量率(R、単位:%)を算出する。
R={(Mbav−Maav)/Mbpav}×100
本発明の繊維シートは前述の通り、沸騰したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に45分間浸漬した前後における、ポリエステル樹脂の減量率が5%以下であるのが好ましいが、HFIPと同様にポリエステル樹脂の抽出用溶媒として用いられている、オルトクロロフェノール(o−CP)によっても、減量率が5%以下であるのが好ましく、3%以下であるのがより好ましく、理想的には0%である。更に、耐溶剤性に優れ、各種用途に適用できるためである。
【0039】
このポリエステル樹脂のo−CPによる減量率は、(1)オルトクロロフェノールを加熱するホットプレートの設定温度を200℃とすること、及び(2)オルトクロロフェノールを除去するためのドライヤーの乾燥温度を200℃とすること以外は、前述のポリエステル樹脂のHFIPによる減量率の測定と全く同様の操作により得られる値をいう。
【0040】
本発明の繊維シートは前述のように、耐溶剤性に優れていることによって、溶剤に晒された前後において、前述の引張り強さの維持率が90%以上であることができ、好ましくは92%以上であり、更に好ましくは94%以上である。なお、この「引張り強さ維持率」は次の式から算出される値である。
Sr=(Sa/Sb)×100
ここで、Srは引張り強さ維持率、Saは前述の手順により沸騰したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に45分間浸漬した後の長手方向における引張り強さ、Sbは前述の手順により沸騰したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に45分間浸漬する前の長手方向における引張り強さ、をそれぞれ意味する。
【0041】
本発明の繊維シートは、繊維シートの基本的な性能である電気絶縁性能、分離性能、液体保持性能、払拭性、或いは隠蔽性等に優れているばかりでなく、耐熱性にも優れ、しかも耐溶剤性にも優れていることができるため、各種用途に使用できるものである。例えば、本発明の繊維シートは電気二重層キャパシタ用セパレータ用途、リチウム二次電池用セパレータ用途、アルカリ二次電池用セパレータ用途、気体又は液体濾過材用途、積層板用基材用途、電極支持材用途、ワイピング材用途、医療用基材用途などに好適に使用することができる。
【0042】
特に、本発明の繊維シートを電気二重層キャパシタ用セパレータとして用いた場合には、(1)本発明の繊維シートは耐熱性に優れているため、電気二重層キャパシタ用セパレータ、集電極、及び電極から電極群を組み立てた後に、一緒に高温で乾燥して水分を除去したとしても、高温時においても機械的強度を維持できるため、セパレータが破断することなく、耐電圧の高い電気二重層キャパシタやエネルギー密度の高い電気二重層キャパシタを製造できる、(2)本発明の繊維シートは耐熱性に優れているため、鉛フリー半田の使用にも耐えることのできる電気二重層キャパシタを製造することができる、(3)電気絶縁性に優れているため、漏れ電流が発生しにくい安定した電気二重層キャパシタを製造することができる、(4)非繊維状態で結晶性樹脂が凝固していると、空隙が多く、イオン透過性に優れているため、内部抵抗が低く、容量の大きい電気二重層キャパシタを製造できる、など、様々な効果を奏するため、本発明の繊維シートは電気二重層キャパシタ用セパレータとして好適に使用できる。
【0043】
本発明の繊維シートは、例えば、異方性ポリマー繊維と結晶性樹脂とを含む前駆繊維シートを形成した後に、熱処理前における前駆繊維シートを構成する結晶性樹脂の融解ピーク温度の17℃低い温度から、熱処理前における前駆繊維シートを構成する結晶性樹脂の融解ピーク温度以下での熱処理を、前駆繊維シートに対して1回以上実施し、結晶性樹脂の融解ピーク温度を結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも5℃以上高くすることにより製造することができる。このような熱処理を実施することによって、結晶性樹脂の融解ピーク温度を高めることができることを見出したのである。
【0044】
まず、異方性ポリマー繊維と結晶性樹脂とを含む前駆繊維シートを形成する。この前駆繊維シートの形成は常法により実施することができ、例えば、織物は異方性ポリマー繊維と結晶性樹脂繊維とを用いて、タペット織機、ドビー織機、ジャカード織機、フライシャトル織機、シャトルレス織機等により形成することができ、編物は異方性ポリマー繊維と結晶性樹脂繊維とを用いて、よこ編機、丸編機、トリコット機、ミラニーズ機、ラッセル機等により形成することができ、不織布は異方性ポリマー繊維と結晶性樹脂繊維とを用いて、カード法やエアレイ法などの乾式法、湿式法により繊維ウエブを形成した後に、接着剤により接着したり、結晶性樹脂繊維の融着性を利用して融着したり、或いは水流やニードルなどによる絡合作用により絡合することによって形成することができる。これらの中でも、繊維が均一に分散することができる湿式法により繊維ウエブを形成し、湿式法により形成した繊維の均一分散を損なうことなく結合できる、結晶性樹脂繊維の融着性を利用して融着するのが好ましい。このように、結晶性樹脂が繊維形態からなると、粉体などと異なり取り扱いが容易な上に、結晶性樹脂繊維の長さを活かしてシート強度の強い繊維シートを製造することができる。なお、異方性ポリマー繊維を使用して織物、編物、又は繊維ウエブを形成した後に、結晶性樹脂を付与して前駆繊維シートを形成することもできる。また、前述の通り、本来の溶融点よりも確実に5℃以上高い、耐熱性の向上した繊維シートを製造できるように、異方性ポリマー繊維が全芳香族ポリアミド繊維からなり、結晶性樹脂繊維がポリエステル樹脂繊維からなるのが好ましい。
【0045】
好適である湿式繊維ウエブは、水平長網方式、傾斜ワイヤー型短網方式、円網方式、順流円網・逆流円網コンビネーション方式、順流円網・円網フォーマーコンビネーション方式、逆流円網・円網フォーマーコンビネーション方式、短網・円網コンビネーション方式、又は長網・円網コンビネーション方式等の方法によって形成できる。なお、湿式法により繊維ウエブを形成する場合、繊維配向が同じ又は異なる湿式繊維ウエブを2枚以上積層した、積層湿式繊維ウエブ(特には、隣接する繊維ウエブの繊維配向が異なる積層湿式ウエブ)を形成するのが好ましい。このような積層湿式繊維ウエブは孔径が小さく、電気絶縁性能、分離性能、液体保持性能、払拭性、隠蔽性などの各種性能が更に優れる不織布を製造できるためである。より具体的には、同じ種類の網によって抄造した湿式繊維ウエブを積層したり、異なる種類の網(例えば、短網と円網、長網と円網)によって抄造した湿式繊維ウエブを積層して積層湿式繊維ウエブを製造することができ、異なる種類の網によって抄造した湿式繊維ウエブを積層すると、繊維配向の異なる積層湿式繊維ウエブを形成できる。
【0046】
前駆繊維シートを形成する際に結晶性樹脂繊維を使用する場合、結晶性樹脂繊維の繊度は特に限定するものではないが、0.45dtex以下であるのが好ましい。結晶性樹脂繊維の繊度が小さければ小さいほど、均一に分散することができ、電気絶縁性能、分離性能、液体保持性能、払拭性、或いは隠蔽性等に優れており、また、結晶性樹脂繊維を溶融させて繊維形態を消滅させる場合には、結晶性樹脂繊維が繊維形態でなくなることによる異方性ポリマー繊維の均一分散性を損なわないためである。結晶性樹脂繊維のより好ましい繊度は0.35dtex以下であり、更に好ましい繊度は0.25dtex以下であり、最も好ましい繊度は0.15dtex以下である。結晶性樹脂繊維の繊度の下限は特に限定するものではないが、0.01dtex程度であるのが好ましい。
【0047】
なお、異方性ポリマー繊維、結晶性樹脂繊維の繊維長は繊維シート形態によって異なり、例えば、湿式法により繊維ウエブを形成する場合には、1〜25mmであるのが好ましく、3〜20mmであるのがより好ましい。
【0048】
このような異方性ポリマー繊維と結晶性樹脂繊維との比率は、前述の通り、(異方性ポリマー繊維):(結晶性樹脂繊維)=40〜90:60〜10であるのが好ましく、(異方性ポリマー繊維):(結晶性樹脂繊維)=50〜80:50〜20であるのがより好ましく、(異方性ポリマー繊維):(結晶性樹脂繊維)=60〜80:40〜20であるのが更に好ましい。
【0049】
好適である結晶性樹脂繊維の融着性を利用する異方性ポリマー繊維の融着は、加圧下で行っても良いし、無圧下で行っても良いが、イオン透過性、気体透過性、液体透過性等を必要とする場合には、結晶性樹脂繊維を皮膜化させないように、無圧下で実施するのが好ましい。この無圧下での融着は、例えば、赤外線乾燥機、熱風噴射式赤外線乾燥機、熱風式乾燥機、熱風貫通式乾燥機等により実施することができる。これらの中でも、赤外線乾燥機又は熱風噴射式赤外線乾燥機により融着させると、繊維ウエブの外側(表面近傍)に存在する結晶性樹脂繊維ばかりでなく、繊維ウエブの内部に存在する結晶性樹脂繊維も十分に融着させることができるため好適な融着方法である。なお、結晶性樹脂繊維は繊維形態を維持するように融着させても良いし、結晶性樹脂繊維を溶融させて繊維形態を消滅させても良い。
【0050】
この好適である赤外線乾燥機又は熱風噴射式赤外線乾燥機により融着させる場合、結晶性樹脂繊維は溶融するものの、異方性ポリマー繊維は溶融又は炭化しない温度で行う。つまり、結晶性樹脂繊維の融解ピーク温度以上、異方性ポリマー繊維の融解ピーク温度又は炭化温度よりも低い温度で照射する。このような条件は結晶性樹脂繊維及び異方性ポリマー繊維の種類によって変化するため、特に限定するものではない。この赤外線照射条件は実験を繰り返すことによって適宜設定することができる。
【0051】
このように形成した前駆繊維シートに対して、熱処理前における前駆繊維シートを構成する結晶性樹脂の融解ピーク温度の17℃低い温度から、熱処理前における前駆繊維シートを構成する結晶性樹脂の融解ピーク温度以下での熱処理を、前駆繊維シートに対して1回以上実施し、本発明の繊維シート、つまり、結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも5℃以上高い融解ピーク温度を有する繊維シートを製造することができる。好ましくは熱処理前における前駆繊維シートを構成する結晶性樹脂の融解ピーク温度の8℃低い温度から、熱処理前における前駆繊維シートを構成する結晶性樹脂の融解ピーク温度の1℃低い温度の範囲内での熱処理を実施し、更に好ましくは熱処理前における前駆繊維シートを構成する結晶性樹脂の融解ピーク温度の5℃低い温度から、熱処理前における前駆繊維シートを構成する結晶性樹脂の融解ピーク温度の2℃低い温度の範囲内での熱処理を実施して、結晶性樹脂の融解ピーク温度を結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも5℃以上高くする。
【0052】
例えば、結晶性樹脂がポリエステル樹脂からなる前駆繊維シートに対して1回目の熱処理を実施する場合、ポリエステル樹脂の融解ピーク温度が258℃の場合、温度241〜258℃、好ましくは250〜257℃、更に好ましくは253〜256℃で熱処理を実施する。この熱処理は、イオン透過性、気体透過性、液体透過性等を必要とする場合には、結晶性樹脂を皮膜化させないように、無圧下で実施するのが好ましい。例えば、熱風式乾燥機、熱風貫通式乾燥機等により無圧下で実施する。
【0053】
また、熱処理時間は結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも5℃以上高い融解ピーク温度となるまで実施すれば良く、実験によって適宜設定することができる。例えば、結晶性樹脂がポリエステル樹脂からなる場合、3時間以上熱処理を実施することによって、融解ピーク温度を5℃以上高くすることができる。なお、結晶性樹脂がポリエステル樹脂からなる場合、10時間以上熱処理を実施することによって、沸騰したHFIP又は沸騰したo−CPに45分間浸漬した前後におけるポリエステル樹脂の減量率の小さい、耐溶剤性に優れる繊維シートを製造することができ、14時間以上熱処理を実施すると、更に耐溶剤性に優れる繊維シートを製造することができ、16時間以上の熱処理を実施すると、沸騰したHFIP又は沸騰したo−CPによる減量率が5%以下の繊維シートを製造できる場合があり、18時間以上の熱処理を実施すると、更に耐溶剤性に優れる繊維シートを製造することができ、20時間以上の熱処理を実施すると、確実に沸騰したHFIP又は沸騰したo−CPによる減量率が5%以下の繊維シートを製造できる。また、引張り強さの維持率が90%以上の繊維シートは、10時間以上の熱処理を実施することにより製造できる場合があり、12時間以上の熱処理を実施することにより引張り強さ維持率を更に高めることができ、14時間以上の熱処理を実施することにより、確実に引張り強さ維持率が90%以上の繊維シートを製造することができる。
【0054】
このような熱処理は1回である必要はなく、結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも5℃以上高くなっていない場合、又は結晶性樹脂の融解ピーク温度を更に高くして耐熱性を更に向上させたい場合、或いは耐溶剤性や引っ張り強さ維持率を高めたい場合には、2回目の熱処理を実施する。例えば、1回目の熱処理によってポリエステル樹脂の融解ピーク温度が272℃となった前駆繊維シートに対して2回目の熱処理を実施する場合、温度255〜272℃、好ましくは264〜271℃、更に好ましくは267〜270℃で熱処理を実施する。この熱処理も、イオン透過性、気体透過性、液体透過性等を必要とする場合には、結晶性樹脂を皮膜化させないように、無圧下で実施するのが好ましく、例えば、熱風式乾燥機、熱風貫通式乾燥機等により無圧下で実施する。また、熱処理時間は結晶性樹脂が所望の融解ピーク温度となるまで実施すれば良く、実験によって適宜設定することができる。
【0055】
なお、結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも5℃以上高くなっていない場合、又は結晶性樹脂の融解ピーク温度を更に高くして耐熱性を更に向上させたい場合、或いは耐溶剤性や引っ張り強さ維持率を更に高めたい場合には、3回目以降の熱処理を実施する。この3回目以降の熱処理は2回目の熱処理と全く同様にして実施することができる。
【0056】
なお、繊維シートに厚さのバラツキがある場合や、見掛密度、引張り強さ等が所望範囲内にない場合には、結晶性樹脂の軟化温度よりも低い温度(好ましくは20℃以上低い温度)でカレンダー処理(カレンダー工程)を行うのが好ましい。なお、カレンダー工程における圧力は、厚さのバラツキの程度、所望見掛密度、所望引張り強さ等によって異なるため特に限定するものではない。この圧力は、実験を繰り返すことによって、適宜設定することができる。
【0057】
以上、本発明の繊維シートの製造方法について説明したが、上述の説明においては、結晶性樹脂繊維を融着させて前駆繊維シートを形成する熱処理と、結晶性樹脂の融解ピーク温度を上昇させる熱処理とを別の工程において実施する方法について説明したが、結晶性樹脂の融解ピーク温度を上昇させる熱処理を実施することによって、同時に結晶性樹脂繊維を融着させることもできる。同時に実施する場合には、熱風式乾燥機、熱風貫通式乾燥機等により無圧下で実施するのが好ましい。
【0058】
なお、本発明の繊維シートを各種用途へ適用するにあたり、各用途への適合性を高める後加工を実施することができる。例えば、電気二重層キャパシタ用セパレータ用途、リチウム二次電池用セパレータ用途、アルカリ二次電池用セパレータ用途に用いる場合には、電解液との親和性をもたせるために、公知のスルホン化処理、放電処理、フッ素ガス処理、グラフト処理、界面活性剤付与処理等の親和性付与処理、気体又は液体濾過材用途或いはワイピング用途に用いる場合には、塵埃等の捕捉性を高めるためのエレクトレット化処理、積層板用基材用途に用いる場合には、ワニスとの親和性を高めるための親和性付与処理、電極支持材用途に用いる場合には、金属膜との密着性を高めるための親和性付与処理、医療用基材用途に用いる場合には、汚染液体の透過を抑制するための撥水・撥油処理、などを実施することができる。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
パラ系全芳香族ポリアミドからなるフィブリルを有する異方性ポリマー繊維(製品名:トワロン1094、帝人製、濾水度(CSF):150ml)、及びポリエチレンテレフタレートからなる、繊度0.11dtex、繊維長3mmのポリエステル繊維(本来有する溶融点:260℃、融解ピーク温度:258.14℃、軟化温度:253℃)を用意した。
【0061】
次いで、前記異方性ポリマー繊維をリファイナーによりフィブリル化を促進させた異方性ポリマー繊維(濾水度(CSF):90ml)と、ポリエステル繊維とを80:20の質量比率で分散させたスラリーを形成した。
【0062】
その後、順流円網、傾斜ワイヤー型短網、順流円網、及びヤンキードライヤーを備えた抄紙機に、前記スラリーを各網へ供給し、それぞれ湿潤繊維ウエブを形成し、それぞれの湿潤繊維ウエブを積層した積層湿潤繊維ウエブを形成し、続いて、この積層湿潤繊維ウエブを温度120℃に設定したヤンキードライヤーにより乾燥して、繊維配向が一方向、ランダム、一方向の三層湿式繊維ウエブを形成した。
【0063】
次いで、温度490℃に設定した遠赤外線セラミックヒータ(Ryoka製)を、上下にそれぞれ12基づつ備えた遠赤外線照射装置の遠赤外線セラミックヒータ間を、速度10m/min.で前記三層湿式繊維ウエブを通過させることにより、ポリエステル繊維を溶融させて繊維形態を消滅させた後、無圧下、室温で空冷して、凝集したポリエステル樹脂を凝固させて、ポリエステル樹脂が厚さ方向にも均一に分散した前駆湿式不織布を製造した。なお、いずれの遠赤外線セラミックヒーターとも50mm離間させた状態で前記三層湿式繊維ウエブを通過させた。また、移動する三層湿式繊維ウエブに対して、温度220℃の熱風を吹き付けた。
【0064】
その後、前記前駆湿式不織布を、温度255℃に加熱した熱風式乾燥機により6時間熱処理を実施して、湿式不織布(目付:20g/m、厚さ:55μm、見掛密度:0.36g/cm)を製造した。この湿式不織布のDSC曲線を描き(図1参照)、そのDSC曲線における融解ピーク温度、つまりポリエステル樹脂の融解ピーク温度を測定したところ、272.80℃であった。また、湿式不織布の長手方向における引張強さは12N/15mm幅であった。
【0065】
(実施例2)
実施例1と全く同様にして作製した前駆湿式不織布を、温度255℃に加熱した熱風式乾燥機により3時間熱処理を実施して、湿式不織布(目付:20g/m、厚さ:55μm、見掛密度:0.36g/cm)を製造した。この湿式不織布のDSC曲線を描き(図2参照)、そのDSC曲線における融解ピーク温度、つまりポリエステル樹脂の融解ピーク温度を測定したところ、270.30℃であった。また、湿式不織布の長手方向における引張強さは12N/15mm幅であった。
【0066】
(比較例1)
実施例1と全く同様にして作製した前駆湿式不織布を、温度255℃に加熱した熱風式乾燥機により2時間熱処理を実施して、湿式不織布(目付:20g/m、厚さ:55μm、見掛密度:0.36g/cm)を製造した。この湿式不織布のDSC曲線を描き(図3参照)、そのDSC曲線における融解ピーク温度、つまりポリエステル樹脂の融解ピーク温度を測定したところ、248.28℃(本発明のおける融解ピーク温度)と271.88℃の2ヶ所に融解ピークが発現していた。高温側に融解ピークを有するものの、本来有する溶融点よりも11℃以上低い融解ピークも有するものであったため、耐熱性に不安が残るものであった。また、湿式不織布の長手方向における引張強さは16N/15mm幅であった。
【0067】
(実施例3)
フィブリル化を促進させた異方性ポリマー繊維とポリエステル繊維とを55:45の質量比率で分散させたスラリーを使用したこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂が厚さ方向にも均一に分散した前駆湿式不織布を製造した。
【0068】
その後、前記前駆湿式不織布を、温度255℃に加熱した熱風式乾燥機により7時間熱処理を実施して、湿式不織布(目付:20g/m、厚さ:55μm、見掛密度:0.36g/cm)を製造した。この湿式不織布のDSC曲線を描き(図4参照)、そのDSC曲線における融解ピーク温度、つまりポリエステル樹脂の融解ピーク温度を測定したところ、272.34℃であった。また、湿式不織布の長手方向における引張強さは13N/15mm幅であった。
【0069】
(実施例4)
実施例1と同様にして製造した湿式不織布(ポリエステル樹脂の融解ピーク温度:272.80℃)を、温度270℃に加熱した熱風式乾燥機により6時間、2回目の熱処理を実施して、湿式不織布(目付:20g/m、厚さ:55μm、見掛密度:0.36g/cm)を製造した。この湿式不織布のDSC曲線を描き(図5参照)、そのDSC曲線における融解ピーク温度、つまりポリエステル樹脂の融解ピーク温度を測定したところ、285.22℃であった。また、湿式不織布の長手方向における引張強さは10N/15mm幅であった。
【0070】
(実施例5)
実施例1と全く同様にして作製した前駆湿式不織布を、温度242℃に加熱した熱風式乾燥機により120時間熱処理を実施して、湿式不織布(目付:20g/m、厚さ:55μm、見掛密度:0.36g/cm)を製造した。この湿式不織布のDSC曲線を描き(図6参照)、そのDSC曲線における融解ピーク温度、つまりポリエステル樹脂の融解ピーク温度を測定したところ、273.33℃であった。また、湿式不織布の長手方向における引張強さは11N/15mm幅であった。
【0071】
(実施例6〜9、比較例2)
実施例1と全く同様にして、三層湿式繊維ウエブ(遠赤外線照射装置による熱処理を実施していない)を形成した後、三層湿式繊維ウエブを、温度255℃に加熱した熱風式乾燥機により、2時間(比較例2)、3時間(実施例6)、4時間(実施例7)、8時間(実施例8)、10時間(実施例9)でそれぞれ熱処理を実施して、それぞれ湿式不織布(目付:20g/m、厚さ:55μm、見掛密度:0.36g/cm)を製造した。各湿式不織布のDSC曲線を描き(図7〜図11参照)、そのDSC曲線における融解ピーク温度、つまりポリエステル樹脂の融解ピーク温度を測定したところ、251.77℃(比較例2)、267.70℃(実施例6)、268.11℃(実施例7)、269.09℃(実施例8)、270.04℃(実施例9)であった。また、湿式不織布の長手方向における引張強さはそれぞれ12N/15mm幅(比較例2)、12N/15mm幅(実施例6)、12N/15mm幅(実施例7)、10N/15mm幅(実施例8)、10N/15mm幅(実施例9)であった。
【0072】
(比較例3)
実施例1における前駆湿式不織布を湿式不織布(目付:20g/m、厚さ:55μm、見掛密度:0.36g/cm)とした。この湿式不織布のDSC曲線を描き(図12参照)、そのDSC曲線における融解ピーク温度、つまりポリエステル樹脂の融解ピーク温度を測定したところ、257.84℃であった。また、湿式不織布の長手方向における引張強さは11N/15mm幅であった。
【0073】
(比較例4)
ポリエステル繊維を100%使用したこと以外は実施例1と全く同様にして、三層湿式繊維ウエブ(遠赤外線照射装置による熱処理を実施していない)を形成した後、この三層湿式繊維ウエブを、温度255℃に加熱した熱風式乾燥機により6時間熱処理を実施したところ、溶融してしまい、不織布形態を維持していなかった。この溶融したポリエステル樹脂のDSC曲線を描き(図13参照)、そのDSC曲線における融解ピーク温度を測定したところ、236.97℃(本発明のおける融解ピーク温度)と272.07℃の2ヶ所に融解ピークが発現していた。
【0074】
(比較例5)
実施例1と全く同様にして、作製した前駆湿式不織布を、温度240℃に加熱した熱風式乾燥機により120時間熱処理を実施して、湿式不織布(目付:20g/m、厚さ:55μm、見掛密度:0.36g/cm)を製造した。この湿式不織布のDSC曲線を描き(図14参照)、そのDSC曲線における融解ピーク温度、つまりポリエステル樹脂の融解ピーク温度を測定したところ、258.37℃であった。また、湿式不織布の長手方向における引張強さは11N/15mm幅であった。
【0075】
(比較例6)
実施例1と全く同様にして、作製した前駆湿式不織布を、温度260℃に加熱した熱風式乾燥機により6時間熱処理を実施して、湿式不織布(目付:20g/m、厚さ:55μm、見掛密度:0.36g/cm)を製造した。この湿式不織布のDSC曲線を描き(図15参照)、そのDSC曲線における融解ピーク温度、つまりポリエステル樹脂の融解ピーク温度を測定したところ、244.71℃(本発明のおける融解ピーク温度)と275.04℃の2ヶ所に融解ピークが発現していた。高温側に融解ピークを有するものの、本来有する溶融点よりも15℃以上低い融解ピークも有するものであったため、耐熱性に不安が残るものであった。また、湿式不織布の長手方向における引張強さは14N/15mm幅であった。
【0076】
実施例1〜2及び比較例1、3の結果から、また実施例6〜9及び比較例2の結果から、3時間以上熱処理をすることによって、結晶性樹脂の融解ピーク温度を本来有する溶融点よりも5℃以上高くできることがわかった。
【0077】
また、実施例1〜2、6〜9の結果から、結晶性樹脂を溶融させた後に熱処理を実施した方が、短時間で結晶性樹脂の融解ピーク温度を本来有する溶融点よりも5℃以上高くできることがわかった。
【0078】
更に、実施例1、3及び比較例4の結果から異方性ポリマー繊維を含み、しかも異方性ポリマー繊維量が多い方が結晶性樹脂の融解ピーク温度を高くしやすいこと、実施例4の結果から熱処理を繰り返すことによって結晶性樹脂の融解ピーク温度を更に高くすることができること、及び実施例1、5及び比較例5、6の結果から熱処理前における前駆繊維シートを構成する結晶性樹脂の融解ピーク温度の17℃低い温度から、熱処理前における前駆繊維シートを構成する結晶性樹脂の融解ピーク温度以下での熱処理によって、結晶性樹脂の融解ピーク温度を高めることができることがわかった。
【0079】
(実施例10〜14)
実施例1と全く同様にして作製した前駆湿式不織布を、温度255℃に加熱した熱風式乾燥機により、12時間(実施例10)、15時間(実施例11)、18時間(実施例12)、20時間(実施例13)、24時間(実施例14)、それぞれ熱処理を実施して、湿式不織布(目付:20g/m、厚さ:55μm、見掛密度:0.36g/cm)をそれぞれ製造した。
【0080】
これら湿式不織布のDSC曲線を描き(図16〜図20参照)、そのDSC曲線における融解ピーク温度、つまりポリエステル樹脂の融解ピーク温度を測定した。この結果は表1に示す通りであった。また、沸騰したHFIPに45分間浸漬した前後におけるポリエステル樹脂の減量率、沸騰したo−CPに45分間浸漬した前後におけるポリエステル樹脂の減量率、各湿式不織布の長手方向における引張強さ、沸騰したHFIPに45分間浸漬した後における各湿式不織布の長手方向における引張強さ、及び引張り強さの維持率は表1に示す通りであった。なお、参考のために、熱処理時間が6時間の実施例1のデータも併せて記す。
【0081】
【表1】

#:**/++における**は沸騰したHFIPに45分間浸漬する前における湿式不織布の長手方向における引張強さ、++は沸騰したHFIPに45分間浸漬した後における湿式不織布の長手方向における引張強さ、をそれぞれ意味する
【0082】
この表1の結果から、熱処理を16時間程度以上実施することにより、HFIP又はo−CPによる減量率が5%以下の耐溶剤性に優れる繊維シート(湿式不織布)を製造できることがわかった。また、熱処理時間を10時間程度以上とすることにより、引張り強さを維持できる耐溶剤性に優れる繊維シート(湿式不織布)を製造できることもわかった。
【0083】
(実施例15〜19、比較例7)
実施例3と全く同様にして作製した前駆湿式不織布を、温度255℃に加熱した熱風式乾燥機により、6時間(比較例7)、12時間(実施例15)、15時間(実施例16)、18時間(実施例17)、20時間(実施例18)、24時間(実施例19)、それぞれ熱処理を実施して、湿式不織布(目付:20g/m、厚さ:55μm、見掛密度:0.36g/cm)をそれぞれ製造した。
【0084】
これら湿式不織布のDSC曲線を描き(図21〜図26参照)、そのDSC曲線における融解ピーク温度、つまりポリエステル樹脂の融解ピーク温度を測定した。この結果は表2に示す通りであった。また、沸騰したHFIPに45分間浸漬した前後におけるポリエステル樹脂の減量率、沸騰したo−CPに45分間浸漬した前後におけるポリエステル樹脂の減量率、各湿式不織布の長手方向における引張強さ、沸騰したHFIPに45分間浸漬した後における各湿式不織布の長手方向における引張強さ、及び引張り強さの維持率は表2に示す通りであった。
【0085】
【表2】

#:**/++における**は沸騰したHFIPに45分間浸漬する前における湿式不織布の長手方向における引張強さ、++は沸騰したHFIPに45分間浸漬した後における湿式不織布の長手方向における引張強さ、をそれぞれ意味する
【0086】
この表2の結果から、熱処理を19時間程度以上実施することにより、HFIP又はo−CPによる減量率が5%以下の耐溶剤性に優れる繊維シート(湿式不織布)を製造できることがわかった。また、熱処理時間を14時間程度以上とすることにより、引張り強さを維持できる耐溶剤性に優れる繊維シート(湿式不織布)を製造できることもわかった。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例1におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図2】実施例2におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図3】比較例1におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図4】実施例3におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図5】実施例4におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図6】実施例5におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図7】比較例2におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図8】実施例6におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図9】実施例7におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図10】実施例8におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図11】実施例9におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図12】比較例3におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図13】比較例4におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図14】比較例5におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図15】比較例6におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図16】実施例10におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図17】実施例11におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図18】実施例12におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図19】実施例13におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図20】実施例14におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図21】比較例7におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図22】実施例15におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図23】実施例16におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図24】実施例17におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図25】実施例18におけるポリエステル樹脂のDSC曲線
【図26】実施例19におけるポリエステル樹脂のDSC曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異方性ポリマー繊維と結晶性樹脂とを含む繊維シートであり、前記結晶性樹脂は結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも5℃以上高い融解ピーク温度を有することを特徴とする繊維シート。
【請求項2】
異方性ポリマー繊維が全芳香族ポリアミド繊維からなり、結晶性樹脂がポリエステル樹脂からなることを特徴とする、請求項1記載の繊維シート。
【請求項3】
沸騰したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に45分間浸漬した前後における、ポリエステル樹脂の減量率が5%以下であることを特徴とする、請求項2記載の繊維シート。
【請求項4】
電気二重層キャパシタ用セパレータとして用いることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の繊維シート。
【請求項5】
異方性ポリマー繊維と結晶性樹脂とを含む前駆繊維シートを形成した後に、熱処理前における前駆繊維シートを構成する結晶性樹脂の融解ピーク温度の17℃低い温度から、熱処理前における前駆繊維シートを構成する結晶性樹脂の融解ピーク温度以下での熱処理を、前駆繊維シートに対して1回以上実施し、結晶性樹脂の融解ピーク温度を結晶性樹脂が本来有する溶融点よりも5℃以上高くすることを特徴とする、繊維シートの製造方法。
【請求項6】
異方性ポリマー繊維が全芳香族ポリアミド繊維からなり、結晶性樹脂がポリエステル樹脂からなることを特徴とする、請求項5記載の繊維シートの製造方法。
【請求項7】
結晶性樹脂が繊維形態からなることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の繊維シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2007−327167(P2007−327167A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121615(P2007−121615)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】