説明

繊維・微粒子複合断熱材

【課題】従来使用されている繊維系の断熱材は断熱性能に劣り、施工時に過大な厚みとなるため、低熱伝導率化が望まれ、一方、高断熱性能を有する多孔質系断熱材は生産性や、取扱や施工性が悪いという問題がある。
【解決手段】 繊維を絡合および/または接着させてなる繊維構造体、例えば嵩高で柔軟性、剛性のある不織布、の空間に、微粒子を添加、保持させることにより、断熱性に優れ、施工性に優れる繊維・微粒子複合断熱材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、断熱性に優れ、施工性に優れ、例えば建材用等に最適な繊維・微粒子複合断熱材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、住宅用に使用されている繊維系断熱材としてグラスウールがある。グラスウールは安価で、クッション性に優れることから施工しやすいこと等を理由に好んで使用されてきた。一方、近年問題となっている地球温暖化を防止するため、省エネルギー化が世界的な政策として進められているが、それに伴い住宅用断熱材にも高度な断熱性能が要求されるようになっている。例えば、1999年3月に改正告示された「住宅に係わるエネルギーの使用の合理化に関する建築主の判断の基準」及び「同設計及び施工の指針」(通称「次世代省エネルギー基準」)に適応させて、屋根または天井や壁部位にグラスウールを使用する場合、断熱性能が劣る(熱伝導率値で表すと0.034W/mKを超える)ため、過大な厚みとなり収まりが悪く、施工が難しいといった問題がある。特に、次世代省エネルギー基準I地域で壁部位に適用する場合には、断熱必要厚みが100mmを超えた分厚いものとなってしまう。
【0003】また最近、繊維系の断熱材として特開2000−96497に開示されるようなポリエステル樹脂繊維と熱融着繊維とからなる吸音性繊維成形体が上市されており、触り心地が良く、剛性、断熱性を備えるものがある。しかし、この繊維成形体も、断熱材としての性能はグラスウール程度であるため、過大な厚みとなり施工が困難である。
【0004】一方、高度な断熱性能を有する多孔質系断熱材として、気体による伝導伝熱を抑制した真空断熱材やエアロゲル断熱材、マイクロポーラス断熱材等がある。このうち、真空断熱材を建材用断熱材として使用する場合、僅かなピンホールが生じるだけで真空によって発現されていた断熱効果が無くなるため、建築現場での取扱や加工が困難であるといったことや、製造に真空工程があり生産効率が悪い等の問題がある。また、エアロゲル断熱材やマイクロポーラス断熱材は、微細な空隙からなるため真空でなくとも非常に優れた断熱性を示すが、脆く取扱が困難である。その脆さや成形性、剛性、断熱性を改善するため、例えば、エアロゲルに関する断熱材として、特開平1−199095や特開平1−157473、特開平8−34678に記載されるようにハニカム構造体と一体化する方法や、繊維を微量添加する方法、不織布とゾルを一体化したりする方法が開示されている。
【0005】しかしながら、これらの方法であっても超臨界乾燥工程が必要で生産性が悪く、しかも依然として脆く取り扱いにくい問題が残る。一方、マイクロポーラス断熱材としては、特開平9−217890に開示されている断熱パネルがある。この公報に開示される発明内容は、通気性のある封体(例えば通気性の不織布)に微粒子を詰めたものを圧縮成形し、微粒子を押し固めたものを主たる構造体として、断熱性や成形性や脆さを改善させたという発明である。しかし、微粒子を押し固めたものを主たる構造体とするため、やはり脆く割れやすい問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来使用されている繊維系の断熱材は断熱性能に劣り、施工時に過大な厚みとなるため、低熱伝導率化が望まれ、一方、高断熱性能を有する真空断熱材、エアロゲル断熱材、マイクロポーラス断熱材はその取扱や施工性が悪いという前記した問題がある。
【0007】本発明はかかる課題に関して行われたものであり、詳しくは、繊維構造体、例えば嵩高で、柔軟性、強度に優れる不織布を主たる構造体とし、微粒子を添加、包含させることにより、断熱性、施工性に優れ、脆くて割れやすい欠点を解決し、更に容易に製造可能な繊維・微粒子複合断熱材を提供することである。
【0008】
【発明が解決するための手段】本発明者らは、前記課題の解決のため、鋭意研究の結果、本発明に至った。
【0009】すなわち本発明は、(1)繊維を絡合および/または接着させてなる嵩密度が0.01g/cm3以上である繊維構造体100重量部の空間に対し、平均粒子径1μm以下の微粒子1〜250重量部を、該繊維構造体により保持させてなる繊維・微粒子複合断熱材に関する。
【0010】また、本発明は、(2)前記繊維構造体が不織布である(1)記載の繊維・微粒子複合断熱材に関する。
【0011】また、本発明は、(3)前記微粒子が酸化ケイ素、酸化チタン、カーボンブラック等の無機微粒子および/またはポリ塩化ビニル樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子等のポリマー微粒子から選ばれる1以上の微粒子である(1)又は(2)記載の繊維・微粒子複合断熱材に関する。
【0012】
【発明の実施形態】以下、本発明の繊維・微粒子複合断熱材について説明する。
【0013】本発明で用いられる繊維構造体は限定される物でなく、不織布や織布を使用できる。嵩高で立体的な構造を得やすく、圧縮や曲げに対する立体的強度を得やすいため、好ましくは不織布が使用される。使用される不織布は、カード法やエアレイ法等の公知技術によって短繊維をウエブ化し、ニードルパンチ法により絡合したり、接着成分を混合し加熱成形したりする事により得られる短繊維不織布や、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等の方法により長繊維を直接不織布化したものを使用することができる。
【0014】短繊維より不織布を作成する場合は、嵩密度を調整しやすいように捲縮していることが好ましい。捲縮していることによって、繊維同志が絡み合いやすくなり、更に接着することでその絡み合いが強固になり、嵩高さや適度な剛性を付与することが出来るようになる。圧縮に対する弾性が向上する点でも捲縮短繊維の使用が好ましい。
【0015】本発明で使用される繊維の断面構造は、円形断面、扁平断面、中空断面、多角断面、芯鞘断面の繊維が使用でき、中でも、ミクロボイドを有する繊維や中空、扁平、多角断面を有する異形断面繊維が嵩高で立体的な構造を得やすく、また、伝熱における輻射伝熱を反射する機会が多くなり、断熱性も若干向上されるので好適に使用される。
【0016】本発明で使用される繊維の繊度は繊維構造体を形成出来る範囲で有れば特に限定されないが、0.2デニール〜50デニールが好ましく使用される。繊度を繊維の平均径に換算する場合は、以下の式で行う。
【0017】
平均径(μm)=11.91×(d/ρ)1/2(dは繊度、ρは比重)
本発明で用いられる繊維構造体の素材としては、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂等、また、レーヨン等の半合成繊維や獣毛等の天然繊維等を使用でき、およびこれらの共重合体等も使用することができる。これら有機繊維は必要に応じて難燃化処理していても良い。また、使用する繊維は有機繊維に限定されず、グラスファイバー、グラスウール、ロックファイバー、ロックウール、アルミナ繊維、炭素繊維等も使用できる。無論、例示した以外の繊維も、不織布化可能であるならば任意に使用できる。不織布をなす繊維は単一素材からなる物でも、強度や密度、繊維同士の接着性、触感、難燃性等の性能をバランス良く満たす等の目的から、複数の素材を混合した物を使用しても良い。
【0018】繊維構造体の厚みは、熱伝導率値が従来の繊維系断熱材よりも優れ、好適に使用できる範囲であれば限定しないが、積層体全体の厚みが100mm以下となるようにすると、切断等の加工性が容易で且つ、断熱施工部位への収まりも良いので好ましい。
【0019】繊維構造体の嵩密度は、繊維構造体全体として0.01g/cm3以上で、繊維に使用している素材自体の密度未満であることが好ましい。ここで繊維構造体の嵩密度とは、繊維構造体嵩密度(g/cm3)=繊維構造体重量(g)/繊維構造体見かけ体積(cm3)により求めた。繊維構造体重量には繊維構造体を構成する接着成分重量も含む。見かけ体積は繊維構造体が占有する空間を示し、繊維構造体が見かけ状直方体形状であれば、繊維構造体見かけ体積(cm3)=高さ(cm)×長さ(cm)×幅(cm)となる。
【0020】また「繊維構造体全体として」という意味は、繊維構造体の内部に局所的に密度差がある様な場合、例えば繊維構造体表層部は高密度で内部が低密度のものや表層部は低密度で内部が高密度のもの、漸次的に厚み方向に密度が変化するもの、高密度層と低密度層を積層したものを一つの構造体として捉えることを意味する。繊維構造体の嵩密度が0.01g/cm3よりも低密度の場合、繊維構造体の剛性が低くなるため取り扱いにくく、また、繊維構造体としての断熱性能が劣るため過剰に微粒子を添加する必要性が生じ、微粒子を保持することが困難となる。繊維構造体の嵩密度が、繊維に使用している素材自体の密度以上であることは実質的に微粒子を保持するような空隙が存在しないことを意味する。
【0021】本発明では繊維構造体内部に平均粒子径1μ以下の微粒子を存在させ該繊維構造体外に漏出せぬよう保持させてなることに特徴を有する。ここで「平均粒子径」とは電子顕微鏡画像から中の個々の粒子を円近似して直径を測定した算術平均粒子径である。「保持」状態とは、繊維構造体が占有する見かけ体積を有する空間に微粒子が存在する状態、つまりが網目状に入り組んだ繊維間に含まれる状態であって、繊維表面に付着あるいは浮遊するような状態を意味している。従って、従来技術のように袋体で、微粒子を覆うのではなく微粒子を繊維構造体で包囲あるいは包含(以下、保持の代わりに包含と称することがある。)する際に、その密度を、サンドイッチ状のごとく上下方向に、あるいは周囲を、部分的にあるいは全体的に緻密化させたり、更に、こうした繊維構造体の上下表面にシートなどの繊維体で被覆する等の状態にするのが好ましい。このようにすることにより、公知技術のように微粒子を袋体内に収容し、さらに微粒子を固化させてブロック化させる必要が必ずしも生じなくなる。
【0022】本発明に好適に使用される微粒子として、カーボンブラック、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等の無機微粒子や、ポリマー微粒子、例えばソープフリー乳化重合や非水系分散重合、ミニエマルジョン重合とシード重合との組合せにより得られるサブミクロン粒径のポリ塩化ビニル樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子がある。また、ゾル−ゲル法から超臨界乾燥法によって得られるエアロゲルや、微細多孔質体等がある。しかし微粒子はこれらに限定されない。好適に使用される微粒子は、その平均粒子径が1μ以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは100nm以下の粒子であり、そのような微粒子は、粒子同士の接点が点接触であるため固体の伝熱抵抗が大きく、また、粒子間の空隙が小さいので空気の対流伝熱を抑制する。さらに、空気を構成する気体分子の平均自由行程よりも小さな空隙が多く生じるため、気体分子運動による伝熱をも抑制し非常に断熱性を高める効果を有する。
【0023】これらの微粒子は空気中の水分によって凝集し易いため、疎水化処理を施しておくことが好ましい。疎水化処理剤としては、特に限定はされないが、例えばアルキルシランやフッ素化アルキルシラン、等のシラン系化合物やシリコーン化合物、脂肪酸類などの両親媒性物質などが挙げられ、対象物に適した物質を適宜使用することが出来る。
【0024】本発明に使用される微粒子の包含形態は、繊維構造体の熱伝導率を所望値まで低下させるように、繊維構造体に均一に保持させやすい形であれば限定されず、そのまま粉体状で使用しても良く、また取扱上、圧縮するなどして二次凝集させ嵩密度を変化させた粉体や、ペレット状、フレーク状、シート状、ブロック状にして使用することが出来る。
【0025】繊維構造体への微粒子の添加量としては、繊維構造体100重量部に対して1重量部〜250重量部、好ましくは5〜200重量部、より好ましくは10〜150重量部である。添加量が1重量部未満の場合、微細空隙による低熱伝導率化の効果が少なく、断熱性に劣る。添加量が250重量部を越えると繊維構造体に微粒子を保持することが困難となる。
【0026】本発明の繊維構造体は微粒子を構造体外部に容易に漏れ出さない程度に局所的にもしくは全体的に緻密化していることが好ましい。本発明で使用される微粒子は繊維構造体に包含されているため、繊維との分子間により容易には外部に漏れ出さないが、乱暴な取扱などをすると微粒子が空気中に洩れ出す可能性があるため、微粒子を包含した部分の繊維構造体を緻密化し、微粒子が洩れないようにすることが好ましい。繊維構造体表面だけを急加熱し溶融させ通気性を減少させる方法や、最外層に通気性の少ない繊維構造体や防水フィルムを積層するといった方法があるが、これに限らず微粒子が洩れないような方法であればよい。
【0027】本発明の繊維・微粒子複合断熱材の製造方法は、例として、短繊維をウエブ化したものを平面上に均一な厚みに積層した後、微粒子を均一に散布し、更にその上にウエブを積層したのちニードルパンチにより絡合させることにより繊維・微粒子複合断熱材を得る方法や、前記方法に必要に応じて接着繊維を混合し加熱成形する方法、ブレンダー等で短繊維と微粒子を予め混合し繊維表面に付着させた後、繊維を構造体へと加工する方法、長繊維よりなる薄物の不織布を多層重ねた中に包含させる方法等により繊維構造体中に微粒子を包含させるが、これらの方法を組み合わせた方法でも良いし、請求項記載の構成となれば特に製造方法に関して限定されない。
【0028】
【実施例】次に本発明の繊維・微粒子複合断熱材を、実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。
【0029】以下に示す実施例1〜6、比較例1〜5の方法で得られた繊維・微粒子複合断熱材の特性として、繊維構造体嵩密度、熱伝導率、断熱必要厚みを下記の方法にしたがって調べた。
【0030】1)繊維構造体嵩密度(g/cm3):密度は次の式、繊維構造体嵩密度(g/cm3)=繊維構造体重量(g)/繊維構造体見かけ体積(cm3)により求めた。繊維構造体重量には接着成分の重量も含まれる。繊維構造体は見かけ状直方体形状であるため、繊維構造体見かけ体積(cm3)=高さ(cm)×長さ(cm)×幅(cm) となる。
【0031】2)熱伝導率(W/mK):JIS A 9511に準じ、熱伝導率測定装置HC−072(英弘精機社製)を使用し、熱伝導率を測定した。
【0032】3)次世代省エネルギー基準のII〜V地域(日本における極寒地域、及び沖縄を除く地域)において、木造住宅の壁部位への充填断熱工法で断熱材を適用する時に、必要とされる熱抵抗値を得るための断熱材の厚みを、2)で測定した熱伝導率より算出した。断熱材必要厚みをTとし、以下の基準で評価した。
T≦65mm:○65mm<T≦75mm:△75mm<T:×また、I地域についても同様に算出し、断熱材必要厚みをtとし以下の基準で評価した。
t≦100mm:◎100mm<t:×以下の実施例により得られた断熱材の評価結果を表1に示した。
【0033】実施例1モダクリル短繊維(鐘淵化学工業(株)製、商品名:カネカロン、繊維径13μ、繊維長30mm)90重量部に対してホットメルト不織布(呉羽テック(株)製、商品名:ダイナックシートLNS3000、溶融温度90℃)を細片化したものを10重量部添加し、ブレンダーにより混合したのち、混合した繊維を平面上に均一に積層、ニードルパンチを行い、繊維同士を絡み合わせた。その後、熱風オーブン中で120℃の温度で30秒間加熱処理した後、空冷することで繊維構造体を得た。
【0034】得られた繊維構造体を模式的に例示すれば、例えば図1(a)のごとくである。得られた繊維構造体は厚み15mmで見かけ密度は0.05g/cm3であった。同様の方法で2個の繊維構造体を作成した。このうち1つの繊維構造体上面に粒子径が15nmである疎水性酸化ケイ素微粒子(日本アエロジル(株)製、商品名:AEROSIL−R202)を繊維構造体1個100重量部に対して40部、均一に散布し、他の1つの繊維構造体を積層した後、120℃の熱風オーブン中で30秒加熱処理し加圧することで2つの繊維構造体間に微粒子を挟んだ形で一体化した。
【0035】この様にして厚み25mmで、繊維構造体のみの密度0.06g/cm3で、繊維構造体に対して20重量部の酸化ケイ素微粒子を包含する繊維・微粒子複合断熱材を得た。このようにして得られた繊維・微粒子複合断熱材を模式的に例示すれば、例えば図2のごとくである。1は本発明の繊維・微粒子複合断熱材であり、(a)は繊維構造体、(b)は微粒子層、(c)は微粒子、(d)は繊維である。
【0036】この繊維・微粒子複合断熱材の熱伝導率を測定したところ、0.0276W/mKと非常に優れた熱伝導率であった。この断熱材をII〜V地域の壁部位に適用する場合、必要厚みは61mm、I地域に適用する場合、92mmと薄く柔軟性があり施工が容易であった。
【0037】実施例2モダクリル短繊維(鐘淵化学工業(株)製、商品名:カネカロン、繊維径18μ、繊維長38mm)80重量部に対して、実施例1と同様のホットメルト不織布を細片化したものを20重量部添加し、ブレンダーにより混合したのち、混合した繊維を実施例の2倍の厚みになる様に平面上に均一に積層、ニードルパンチを行い、繊維同士を絡み合わせた。その後、熱風オーブン中で120℃の温度で30秒間加熱処理した後、空冷することで繊維構造体を得た。得られた繊維構造体は厚み30mmで見かけ密度は0.03g/cm3であった。繊維構造体と繊維構造体100重量部に対して実施例1と同様の疎水性酸化ケイ素微粒子を150重量部、ドラム式回転体に同時に投入し繊維構造体中に酸化ケイ素を包含させた。
【0038】こうして得られた繊維構造体と微粒子の混合物を模式的に例示すれば、図3のごとくであり、繊維構造体中に微粒子が均一に分散された状態となっている。繊維構造体と微粒子の混合物を取り出し、重量を測定したところ、実質的に繊維構造体に包含された酸化ケイ素の量は85重量部であった。この状態でも繊維・微粒子複合断熱材として使用できる。
【0039】更に、微粒子漏洩を防ぐため、酸化ケイ素を包含させた繊維構造体の上下面にホットメルト不織布を介して透湿防水シート(旭・デュポンフラッシュスパンプロダクツ(株)製、製品名:タイベック)を加熱加圧接着し、繊維・微粒子複合断熱材を得た。得られた繊維・微粒子複合断熱材を模式的に例示すれば、図4のごとくである。図4(e)は防水シートであり微粒子の漏洩を防止する構造となっている。この繊維・微粒子複合断熱材は厚み25mmで、繊維構造体のみの見かけ密度0.036g/cm3で、繊維構造体に対して85重量部の酸化ケイ素微粒子を包含する、表面に緻密な層があり、繊維と粒子が全体的に均等に配合されている繊維・微粒子複合断熱材となった。
【0040】この繊維・微粒子複合断熱材の熱伝導率を測定したところ、0.0270W/mKと非常に優れた熱伝導率であった。この断熱材をII〜V地域の壁部位に適用する場合、必要厚みは60mm、I地域に適用する場合、90mmと薄く、柔軟性があり施工が容易であった。
【0041】実施例3酸化ケイ素の代わりに粒子径が15nmの疎水化酸化チタン(テイカ(株)製、商品名:SMT−150IB)を使用した以外は、実施例1と同様の条件で繊維・微粒子複合断熱材を得た。得られた断熱材の特性を表1に示す。下記、比較例1〜7と比較し、断熱性が著しく向上した断熱材が得られた。
【0042】実施例4酸化ケイ素の代わりに粒子径が24nmのカーボンブラック(三菱化学(株)製、商品名:#40)を50部使用した以外は、実施例1と同様の条件で繊維・微粒子複合断熱材を得た。得られた断熱材の特性を表1に示す。下記、比較例1〜7と比較し、断熱性が著しく向上した断熱材が得られた。
【0043】実施例5酸化ケイ素の代わりに粒子径が400nmのアクリル樹脂微粒子(綜研化学(株)、商品名:MP−1000)を30部使用した以外は、実施例1と同様の条件で繊維・微粒子複合断熱材を得た。得られた断熱材の特性を表1に示す。下記、比較例1〜7と比較し、断熱性が著しく向上した断熱材が得られた。
【0044】実施例6最終的な繊維構造体の見かけ密度が0.1g/cm3で、繊維構造体100重量部に対して酸化ケイ素が97重量部含まれる以外は実施例2と同様の条件で繊維・微粒子複合断熱材を得た。得られた断熱材の特性を表1に示す。下記、比較例1〜7と比較し、断熱性が著しく向上した断熱材が得られた。
【0045】比較例1酸化ケイ素を添加しない以外は実施例1と同様の方法にて見かけ密度0.06g/cm3の繊維系断熱材を得た。得られた断熱材の特性を表1に示す。実施例と比較して断熱性に劣っており、断熱に必要な厚みも分厚い物となった。
【0046】比較例2酸化ケイ素を0.5重量部添加した以外は実施例1と同様の方法にて、繊維構造体の嵩密度0.06g/cm3の繊維・微粒子複合断熱材を得た。得られた断熱材の特性を表1に示す。実施例と比較して断熱性に劣っており、断熱に必要な厚みも分厚い物となった。
【0047】比較例3実施例2と同様の方法にて、嵩密度0.03g/cm3の繊維構造体に対して酸化ケイ素を300重量部を添加しようとしたが繊維構造体による形態の保持が出来ず、繊維・微粒子複合断熱材を得ることが出来なかった。
【0048】比較例4実施例2と同様の方法にて、嵩密度0.005g/cm3の繊維構造体に対して酸化ケイ素を20重量部を添加したが、断熱性に劣る物となった。
【0049】比較例5実施例2と同様の方法にて、嵩密度0.005g/cm3の繊維構造体に対して酸化ケイ素を80重量部を添加しようとしたが、繊維構造体に酸化ケイ素を包含させることができなかった。
【0050】比較例6粒子径が2.2μmの炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)製、ソフトン1000)を20重量部添加した以外は実施例1と同様の方法にて、繊維構造体の嵩密度0.06g/cm3の繊維・微粒子複合断熱材を得た。得られた断熱材の特性を表1に示す。実施例と比較して断熱性に劣っており、断熱に必要な厚みも分厚い物となった。
【0051】比較例70.080g/cm3のグラスウール断熱材の熱伝導率を測定したところ、0.0344W/mkであった。
【0052】
【表1】


【0053】
【発明の効果】本発明の繊維・微粒子複合断熱材により、断熱性能に優れ、施工性に優れ、取り扱いやすい住宅用断熱材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる繊維構造体の一例の斜視図を示す。
【図2】繊維構造体層間に微粒子が包含された繊維・微粒子複合断熱材の斜視図を示す。
【図3】繊維構造体全体に均一に微粒子が包含された繊維・微粒子複合断熱材の一例の斜視図を示す。
【図4】断熱材表面を緻密化した繊維・微粒子複合断熱材の斜視図を示す。
【符号の説明】
1 繊維・微粒子複合断熱材
(a)繊維構造体
(b)微粒子層
(c)微粒子
(d)繊維
(e)防水シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】 繊維を絡合および/または接着させてなる嵩密度が0.01g/cm3以上である繊維構造体100重量部の空間に対し、平均粒子径1μm以下の微粒子1〜250重量部を、該繊維構造体により保持させてなる繊維・微粒子複合断熱材。
【請求項2】 前記繊維構造体が不織布である請求項1記載の繊維・微粒子複合断熱材。
【請求項3】 前記微粒子が酸化ケイ素、酸化チタン、カーボンブラック等の無機微粒子および/またはポリ塩化ビニル樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子等のポリマー微粒子から選ばれる1以上の微粒子である請求項1又は2記載の繊維・微粒子複合断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2002−333092(P2002−333092A)
【公開日】平成14年11月22日(2002.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−139085(P2001−139085)
【出願日】平成13年5月9日(2001.5.9)
【出願人】(000000941)鐘淵化学工業株式会社 (3,932)
【Fターム(参考)】