説明

繊維先端により生じる力特性を評価するための方法

1つ以上の繊維の繊維先端により生じる力特性を評価するための方法は、(a)1つ以上の繊維の繊維試料であって、自由部分及び端部を有する繊維試料を提供する工程と、(b)繊維試料又は触覚センサのどちらかを互いの方へ鉛直に移動させるための手段に繊維試料又は触覚センサが接続され、繊維試料を触覚センサの上方に触覚センサから鉛直方向に少なくとも0.1mm離して吊るす工程と、(c)自由部分のいくらかの長さにわたって自由部分を取り囲み且つ安定して配置されたカバーで繊維試料の自由部分を取り囲む工程であって、カバーが本請求項の工程を通じて自由部分の方向を実質的に鉛直の配向に誘導する工程と、(d)繊維試料の端部が触覚センサと接触するように、繊維試料又は触覚センサを鉛直に移動させる工程と、(e)繊維試料の端部の接触により生じる力ベクトルの分布を測定するための手段を触覚センサに設ける工程と、(f)力ベクトルの分布に基づいて力特性を評価する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維先端により生じる力特性を評価するための方法に関する。本発明はまた、繊維先端により生じる刺激の減少及び繊維の柔らかさを評価するのに有用である。本発明は、繊維先端により生じる刺激の減少及び繊維の柔らかさのための組成物の有益性を実証するのに特に有用である。本発明は宣伝文句を立証するために利用され得る。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の毛等の繊維の繊維先端は、例えば繊維を処理するとき手のひら付近、又は単に重力により首、肩、若しくは胸部付近の皮膚の表面に触れるとき、ある刺激を与える。繊維先端の比較的強い刺激は、剛直性、チクチクした感触又は痒い感触として表現され得、消費者によっては否定的な知覚感触とみなされる。刺激として知覚される繊維先端により生じる力は、繊維先端の粗さ及び繊維の長さにわたる可撓性等の要素が挙げられるがこれらに限定されない繊維の特性次第で変化する。通常、繊維先端が滑らかであるほど、繊維はその全長に沿ってより柔らかく、繊維先端が皮膚に触れる際に生じる力が少ない。繊維が哺乳類の毛である場合、繊維先端のより強い力又は刺激は、消費者によっては「毛の柔らかさの不足」として認識され得、枝毛、乾燥、表皮の粗さ、及び毛の全体的な剛直性、脆性又は不撓性等の毛の粗悪な状態を連想させ得る。毛に柔らかさを与えるように設計されたヘアコンディショニング又はヘアトリートメント組成物は、毛に柔らかさを与えるだけでなく、そのような粗悪な状態を改善することで、繊維先端により生じる刺激を軽減し得る。したがって、毛の繊維先端により生じる剛直性又はチクチクした感触等の不愉快な刺激は、柔らかな毛を好む消費者には、あまり処理されていない又はコンディショニングされていない毛の症状とみなされ得る。
【0003】
消費者によっては、手のひらにチクチクした感触を感知するために、毛の房を下から保持して毛の柔らかさを測定する癖がある。コンディショニングした後で、コンディショニングする前の毛の繊維先端のチクチクした感触が低減すると、柔らかな毛を好む消費者は毛が十分にコンディショニングされたと評価し得る。しかしながら、そのような方法は主観的であり、消費者によって異なる。毛の状態を客観的に測定するための方法は、例えば顕微鏡を使用して、又は米国特許第6,817,222号明細書等にあるように皮膚の表面の特性を検出することで提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,817,222号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの方法は通常、多種の機器を必要とし、当業者により解釈されるが一般消費者にはほとんど理解できないデータを提供する。一般消費者による「刺激の感知」と類似し相関関係にある直接的な視覚化が可能な方法の必要性が依然として存在する。
【0006】
前述に基づいて、毛の繊維先端により生じる力の直接的な視覚化が可能であり、それによって毛の繊維先端により生じる刺激を減少させるためのヘアケア組成物の有益性を直接的に視覚化できるようにする方法の必要性が存在する。加えて、一般消費者及び/又はサロンスタイリストを含む非当業者により容易に理解され得る方法の必要性が存在する。毛の繊維先端により生じる刺激を減少させるためのヘアケア組成物の有益性に関する宣伝文句を立証するための方法の必要性も存在する。毛の繊維先端により生じる刺激を減少させる、したがって毛を柔らかくするための少なくとも2つのヘアケア組成物の有益性の比較に関する宣伝文句を立証するための方法の必要性も存在する。最後に、毛の繊維先端により生じる刺激を減少させることができ、したがって毛を柔らかくすることができるヘアケア組成物を市販する方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様において、本発明は1つ以上の繊維の繊維先端により生じる力特性を評価するための方法に関し、該方法は、
(a)1つ以上の繊維の繊維試料であって、自由部分及び端部を有する繊維試料を提供する工程と、
(b)繊維試料又は触覚センサのどちらかを互いの方へ鉛直に移動させるための手段に繊維試料又は触覚センサが接続され、繊維試料を触覚センサの上方に触覚センサから鉛直方向に少なくとも0.1mm離して吊るす工程と、
(c)自由部分のいくらかの長さにわたって自由部分を取り囲み且つ安定して配置されたカバーで繊維試料の自由部分を取り囲む工程であって、カバーが本請求項の工程を通じて自由部分の方向を実質的に鉛直の配向に誘導する工程と、
(d)繊維試料の端部が触覚センサと接触するように、繊維試料又は触覚センサを鉛直に移動させる工程と、
(e)繊維試料の端部の接触により生じる力ベクトルの分布を測定するための手段を触覚センサに設ける工程と、
(f)力ベクトルの分布に基づいて力特性を評価する工程とを含む。
【0008】
別の態様では、本発明は、毛の繊維先端により生じる刺激を減少させることができるヘアコンディショニング組成物の有益性を実証する方法に関し、該方法は、
(1)第1の繊維試料を作るために1つ以上の繊維を提供すると共に、第2の繊維試料を作るために別の1つ以上の繊維を提供する工程と、
(2)第1の繊維試料を第1のヘアコンディショニング組成物で処理し、所望により第2の繊維試料を第2のヘアコンディショニング組成物で処理する工程と、
(3)上述の方法により第1の繊維試料及び第2の繊維試料の繊維先端の力特性を個別に評価する工程と、
(4)第1の繊維試料及び第2の繊維試料の評価した力特性を比較する工程とを含む。
【0009】
更に別の態様では、本発明は、毛の繊維先端により生じる刺激を減少させる又は毛を柔らかくすることができるヘアコンディショニング組成物の有益性を実証することによってヘアコンディショニング組成物を市販する方法に関し、該方法は、
(1)ヘアコンディショニング組成物を売り出す工程と、
(2)毛の繊維先端により生じる刺激を減少させる又は毛を柔らかくするとしてヘアコンディショニング組成物の有益性を宣伝する工程と、
(3)上記を実証する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書は、本発明を特に指摘し明確に請求する請求項をもって結論とするが、本発明は、以下の好ましい非限定的な実施形態の説明及び添付図面と併せた描写から更なる理解が得られると考えられる。
【図1】本発明の方法のための測定器の好ましい実施形態。
【図2】本発明による評価した力特性を再構成した視覚化表示の好ましい実施形態。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、試料を触覚センサに向かって鉛直に移動させ接触させることにより試料の繊維先端の力特性を評価するための方法に関する。本発明は繊維の繊維先端により生じる刺激、又は繊維の柔らかさを評価するのに有用であり得る。本発明はまた、繊維の繊維先端により生じる刺激を減少させる、又は繊維に柔らかさを与えるための、ヘアケア組成物等の組成物の有益性を実証するのに有用であり得る。本発明はまた、繊維の繊維先端により生じる刺激を減少させる、又は繊維に柔らかさを与えるための、少なくとも2つの組成物の有益性を比較するのに有用であり得る。本発明は、ヘアコンディショニング組成物等の組成物を市販するのに有用であり得る。
【0012】
繊維先端、例えば哺乳類の毛の接触により生じる力特性は、そのような接触により生じる力ベクトルの分布を測定するための手段を有する触覚センサの上方に繊維試料を吊るし、繊維試料の端部が触覚センサと接触するように繊維試料又は触覚センサを互いの方へ鉛直に移動させることを含む方法によって評価することができることを、本発明者らは発見した。繊維試料又は触覚センサのどちらかを鉛直に移動させることで、繊維試料の前記自由部分のいくらかの長さにわたって自由部分を取り囲み且つ安定して配置されたカバーで繊維試料を取り囲み、自由部分の方向をほぼ鉛直の配向に誘導する。カバーがないと自由部分は、触覚センサと接触すると容易に曲がるか、又は水平方向に滑って離れる可能性があり、力特性の正確な評価を妨げる。カバーは自由部分のそのような滑り、又は自由部分の曲がりを防ぐ。自由部分の長さ、及び繊維試料又は触覚センサの移動の仕方に応じて、カバーは自由部分の全長又は限られた長さにわたって取り囲んでもよい。特に、このようにして繊維先端の接触により生じる力特性は、例えば、手のひらにチクチクした感触を感知するために毛の房を下から保持するときに消費者が体験する刺激と多かれ少なかれ関連することを、本発明者らは発見した。力の大きさが大きいほど、より大きな刺激を消費者が感じると予想される。理論に拘束されないが、繊維先端の接触により生じる力特性は、毛等の繊維の柔らかさに関係すると考えられる。柔らかい毛を好む一部の消費者は、毛の柔らかさを毛のコンディショニングの度合いと関連づける。したがって、そのような消費者にとって、力の大きさが小さいほど、より小さい刺激が毛の繊維先端により生じ、毛の状態がより良好であると認識される。
【0013】
本発明者らは、この方法が宣伝文句の立証に有用であり得ることも発見した。試料が組成物で処理されるとき、本方法は、接触すると繊維先端の力特性を減少させる組成物の有益性を実証するのに有用である。この実証は、繊維の繊維先端により生じる刺激を減少させるこの組成物の有益性に関する宣伝文句の立証に有用である。具体的には、適切な方法で表示される場合、この方法により、非当業者、すなわち一般消費者又はヘアスタイリストが組成物の有益性を容易に評価し、この有益性を他の組成物の有益性及び/又は処理なしとで容易に比較することができることを、本発明者らは発見した。理論に拘束されないが、非当業者は宣伝文句が実験結果によって証明される又は裏付けされることを望むと考えられる。実演実験として又は録画フィルムを介して消費者の前でこの方法を実行することで、消費者に組成物の有益性を納得させ得、組成物を購入及び/又は使用するように納得させ得るとも考えられる。
【0014】
本発明の方法は、組成物で処理する前及び後の繊維試料の繊維先端の力特性を比較することで組成物の有益性を実証するのに有用である。理論に拘束されないが、毛の繊維先端により生じる刺激を減少させる能力、又は毛を柔らかくする能力を有する組成物で試料を処理するとき、繊維試料の繊維先端により生じる力特性が減少すると考えられる。
【0015】
本発明の方法はまた、第1の組成物及び第2の組成物で処理した繊維試料の繊維先端の力特性を比較することで、少なくとも2つの組成物の有益性を比較するのに有用である。理論に拘束されないが、毛の繊維先端により生じる刺激を減少させるより良い能力を有する組成物で試料が処理されるとき、より少ない力特性が繊維試料の毛の繊維先端により生じると考えられる。
【0016】
本方法は、自由部分及び端部を有する1つ以上の繊維の少なくとも1つの試料を提供する工程を含む。本明細書で使用する場合、「繊維」は、その繊維先端の知覚を生成しやすい任意の繊維を意味する。特に本発明の方法が有益であるのは、哺乳類の毛であり、より好ましくは、ヒト、ウマ、ネコ、イヌの毛であり、更により好ましくはヒトの毛である。あるいは、繊維は、織物、布地、衣服、不織布、紙等を含む様々な用途に使用される任意の天然繊維又は合成繊維であり得る。「繊維先端」は、1本の繊維又は繊維の房の繊維の端部及びその付近の横断面を意味する。
【0017】
繊維試料は、一端部で結束させた、当業者に一般にヘアースイッチ(hair switches)と呼ばれる多数の毛であってよい。そのような繊維試料は、繊維端部が全て実質的に同一の水平面にあるように、該繊維の自由部分を垂れ下げて、鉛直に吊り下げられる。繊維試料は、0.1g〜200g、より好ましくは2g〜50gの重量を有する哺乳類の毛の房であるのが好ましい。繊維試料は、1cm〜150cm、より好ましくは1cm〜50cm、更に好ましくは5cm〜30cmの長さを有するのが好ましい。少なくとも2つの繊維試料が比較のために提供される場合、これらの試料は、試料間で+/−50%、好ましくは+/−30%、より好ましくは+/−10%の毛の偏差で同数の個々の毛を有する。
【0018】
本発明の方法を、図1を参照して測定器の好ましい実施形態に従って説明する。繊維試料10は吊るされ、繊維試料を鉛直に移動させるための手段20に接続され、繊維試料は自由部分11及び端部13を有する。好ましくは、繊維は全て同一の水平面にあるように、自由部分の端部は均一にそろえて切る。繊維試料を鉛直に移動させる手段20は、試料を一定の速度で正確な距離だけ動かすことができるものが好ましい。繊維試料の端部13は、繊維試料の繊維先端の力特性を測定する目的で触覚センサと接触する部分である。繊維試料の自由部分は、自由部分のいくらかの長さにわたって自由部分を取り囲み且つ安定して触覚センサ30から鉛直方向に少なくとも0.1mm離れて配置されたカバー12で取り囲まれ、カバー12は本明細書の工程を通じて繊維試料の方向をほぼ鉛直の配向に誘導する。カバー12は安定して配置され、繊維試料のみが鉛直に移動する。カバーの下端部と触覚センサとの間の距離は、繊維が触覚センサ30と有効に接触する、すなわち端部13が滑って離れず、自由部分が容易に曲げられないように調整される。カバー12は、空隙が繊維試料の幅よりわずかに大きな直径又は大きな幅を有する限りは、円筒形、立方形、又は他の形状であってもよい。カバーは、繊維の接触によって測定中に変形せず、好ましくはよく見えるように透明又は半透明の任意の剛性材で作製することができる。カバーの下端部と触覚センサとの間の距離、並びにカバー12の形状及び寸法は、繊維の硬さ、繊維の各本の直径、繊維試料の寸法、繊維試料の長さ、及び他の特性を考慮に入れて、繊維試料の端部が有効に触覚センサと接触するように調整される。好ましくは、カバー12の下端部と触覚センサ30との間の距離は、約0.1mm〜約15mmである。好ましくは、繊維試料の下端部及びカバーが整合されて実質的に同一の水平面にあるように、繊維試料及びカバーが最初に位置付けられる。
【0019】
このように位置付けられた繊維試料を、端部からある長さの自由部分がカバーの外部に移動し触覚センサ30と接触するように鉛直に下方に移動させる。触覚センサ30は、端部の接触により生じる力ベクトルの分布を測定するための手段が備わっている。最後に、力ベクトルの分布に基づいた力特性が評価される。評価は少なくとも力の大きさとして表され、好ましくは力の分布、大きさ、及び方向の3つ全てで表される。
【0020】
極めて好ましい一実施形態では、触覚センサは、透明弾性体、弾性体内部に分散配置されたマーカーの組、及びマーカーの動きを取得するためのカラーCCDカメラを含み、動きは端部13が弾性体の表面に接触することにより生じ、弾性体が接触によって変形され、それによりマーカーの変化情報を提供する。弾性体はx−y方向に水平面及びz−方向に深さを有する。マーカーはx−y方向に沿って分散配置される組で提供され得る。マーカーの間隔及び分散配置は、所望の精度及び再現性で所望量の情報を収集するように調整されてもよい。マーカーの組はまた2つの異なるz方向の深さに提供され得る。マーカーの動きを弾性体の下から捕らえるように、CCDカメラは好ましくはz方向に弾性体から離れて配置される。CCDカメラによる容易な解像のために、2組のマーカーは赤及び青等の異なる色で提供されることができる。CCDカメラに面する面を除いて、弾性体の表面は、測定と無関係な任意の光学的動きを遮蔽するために好ましくは黒色になっている。本明細書で非常に好ましいのは、米国特許出願公開第2008/0245955号明細書、同第2007/0040107号明細書、同第2007/0043508号明細書、同第2003/0178556号明細書、及び日本国特開2007−147443号公報に記載される光学触覚センサであり、Nitta Corporation(Osaka,Japan)から入手可能な商品名GelForceで市販されている。
【0021】
上述のもののように触覚センサが弾性体である場合、繊維試料の鉛直移動は、繊維試料の端部と触覚センサの表面との第1の接触点を越えて継続され得る。すなわち、繊維試料は弾性体に圧接され得る。この場合、カバーは弾性体の中に押し込むことができる剛体材料で作製されるべきである。第1の接触点を越えた繊維の端部の力特性を評価することによって、繊維試料の柔軟性等の第1の接触点後の繊維試料の挙動が測定され得る。更に、第1の接触点を越えるそのような測定は、手のひらにチクチクした感触を感知するために、毛の房を下から保持することにより毛の柔らかさを測定する消費者の癖によく似ている。
【0022】
このように評価した力特性は、力特性の要素の数値で説明され得る。このように評価した力特性はまた、力ベクトル分布を提供するために再構成され得る。そのように再構成されると、あるベクトルはより良い視覚化のために変更され得る。図2は、本発明による評価した力特性を再構成した視覚化表示の好ましい実施形態である。
【0023】
図1に示す測定器の代わりに、繊維試料及びカバーは安定位置に設けられてもよく、一方、繊維端部と接触させるために触覚センサのみを上方向に鉛直に移動させる。この実施形態では、初期位置において繊維試料の端部からある長さがカバーの外部にある。
【0024】
本発明の方法は、測定前に、繊維先端により生じる刺激を減少させることができる、及び/又は毛を柔らかくすることができる組成物で試料を処理する工程を更に含んでもよい。好ましくは、組成物はヘアケア組成物である。より好ましくは、ヘアケア組成物は、シャンプー、ヘアコンディショニング組成物、ヘアスタイリング組成物、又はこれらの組み合わせから選択される。更により好ましくは、組成物は、ヘアコンディショニング組成物である。
【0025】
本明細書で使用するとき、「ヘアコンディショニング組成物」とは、少なくとも1つのコンディショニング活性剤を含む組成物を意味する。繊維先端により生じる刺激を減少させるためのコンディショニング剤は、いくらかのシリコーン成分、いくらかの脂肪族アルコール等を含む従来のコンディショニング剤から選択し得る。ヘアコンディショニング剤の好適な実施例は、CFTA International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,11th edition,2006に見つけることができる。
【0026】
繊維試料は、繊維試料1グラム当たり約0.01ml〜約1ml、より好ましくは約0.05ml〜約0.5mlの組成物で処理されることが好ましい。
【0027】
ヘアコンディショニング組成物で繊維試料を処理する前及び処理した後に評価した繊維試料の力特性を比較することによって、本発明の方法は、ヘアコンディショニング組成物の有益性を実証するのに有用であり得る。そのように実証するために、処理されていない繊維試料及び処理された繊維試料が比較される。したがって、本発明はまた、毛の繊維先端により生じる刺激を減少させる又は毛を柔らかくすることができるヘアコンディショニング組成物の有益性を実証する方法に関し、該方法は、
(1)第1の繊維試料を作るために1つ以上の繊維の試料、及び第2の繊維試料を作るために1つ以上の繊維の別の試料を提供する工程と、
(2)第1の繊維試料を第1のヘアコンディショニング組成物で処理する工程と、
(3)請求項1に記載の方法により第1の繊維試料及び第2の繊維試料の繊維先端の力特性を個別に評価する工程と、
(4)第1の繊維試料及び第2の繊維試料の評価した力特性を比較する工程とを含む。
【0028】
本発明の方法はまた、第1のヘアコンディショニング組成物で処理した繊維試料及び第2のヘアコンディショニング組成物で処理した別の繊維試料の評価した力特性を比較することで、第2のヘアコンディショニング組成物と比較した第1のヘアコンディショニング組成物の有益性を実証するのに有用であり得る。
【0029】
本発明は更に、毛の繊維先端により生じる刺激を減少させる又は毛を柔らかくすることができるヘアコンディショニング組成物の有益性を実証することによってヘアコンディショニング組成物を市販する方法に関し、該方法は、
(1)ヘアコンディショニング組成物を売り出す工程と、
(2)毛の繊維先端により生じる刺激を減少させる又は毛を柔らかくするとしてヘアコンディショニング組成物の有益性を宣伝する工程と、
(3)前述の方法を行うことにより、毛の繊維先端により生じる刺激の減少を実証する工程とを含む。
【実施例】
【0030】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある好ましい実施形態を更に説明及び実証する。この実施例は、実例の目的のためだけに与えられるものであり、その範囲を逸脱することなくその多数の変形が可能であるため、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0031】
(実施例1)
長さ20.32cm及び重量4gの自由部分を有するヒトのヘアースイッチの繊維試料を日本市場で市販されているヘアコンディショナー製品で処理する。図1に描く測定器を使用してヘアースイッチを鉛直に移動させるための手段上に留め、次の条件で測定した。
カバーは、孔の直径20mm及び長さ195mmを有する透明プラスティック管であり、
カバーの下方端部と触覚センサとの間の距離は1.5mmであり、
ヘアースイッチの端部をカバーの下端部と合わせ、
繊維試料を、触覚センサと接触するように150cm/分の速度で3cm下方に移動させ、
使用した触覚センサは、ゲイン300及び閾値0.005で記録し、ゲイン0.7及び閾値0.5で動くNitta Corporation(Osaka,Japan)から入手可能なGelForceバージョン1.0である。
【0032】
図2は、評価した力特性を再構成した視覚化表示として得られる。
【0033】
本明細書で開示した寸法及び値は、列挙した厳密な数値に厳格に限定されるものとして解釈されるものではない。むしろ、別段の指定がない限り、そのような各寸法は、列挙した値と、その値周辺の機能的に等価な範囲との双方を意味することを意図したものである。例えば、「40mm」として開示した寸法は、「約40mm」を意味することを意図したものである。
【0034】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は出願書類を含め、本明細書において引用される全ての文献は、明示的に除外ないしは制限されない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。更に、本書における用語のいずれかの意味又は定義が、参照により組み込まれた文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいては、本書においてその用語に与えられた定義又は意味が適用されるものとする。
【0035】
本発明の特定の実施形態が例示され、記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を、添付の「特許請求の範囲」で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の繊維の繊維先端により生じる力特性を評価するための方法であって、
(a)1つ以上の繊維の繊維試料であって、自由部分及び端部を有する繊維試料を提供する工程と、
(b)前記繊維試料又は触覚センサのどちらかを互いの方へ鉛直に移動させるための手段に前記繊維試料又は前記触覚センサが接続され、前記繊維試料を前記触覚センサの上方に前記触覚センサから鉛直方向に少なくとも0.1mm離して吊るす工程と、
(c)前記自由部分のいくらかの長さにわたって前記自由部分を取り囲み且つ安定して配置されたカバーで前記繊維試料の前記自由部分を取り囲む工程であって、前記カバーが本請求項の工程を通じて前記自由部分の方向を実質的に鉛直の配向に誘導する工程と、
(d)前記繊維試料の前記端部が前記触覚センサと接触するように、前記繊維試料又は前記触覚センサを鉛直に移動させる工程と、
(e)前記繊維試料の前記端部の前記接触により生じる力ベクトルの分布を測定するための手段を前記触覚センサに設ける工程と、
(f)前記力ベクトルの分布に基づいて前記力特性を評価する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記繊維試料は、約0.1g〜約200gの重量及び約1cm〜約50cmの長さを有する哺乳類の毛の房である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カバーは円筒形である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維の端部及び前記カバーの下端部は当初は実質的に同一の水平面にあり、前記触覚センサに接触するように前記繊維試料を鉛直に下方に移動させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カバーは、前記触覚センサから鉛直方向に約0.1mm〜約15mm離れて安定して配置される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維の端部に接触するように前記触覚センサを鉛直に上方に移動させる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記触覚センサは、透明弾性体、前記弾性体内部に分散配置されたマーカーの組、及び前記マーカーの動きを取得するためのカラーCCDカメラを含み、前記動きは前記繊維試料の前記端部が前記弾性体の表面に接触することにより生じ、前記弾性体は前記接触によって変形され、それにより前記マーカーの変化情報を提供する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記繊維試料を、前記弾性体の前記表面に接触させた後、前記弾性体に向かって引き続き鉛直に移動させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記弾性体はx−y方向に水平面及びz方向に深さを有し、前記マーカーの組はx−y方向に沿って分散配置される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記触覚センサは、2つの異なるz方向の深さにマーカーの組の層を2層含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記2組のマーカーは異なる色で提供される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記CCDカメラは、前記z方向に前記弾性体から離れて配置される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記評価を目的とした力特性は、前記力の分布、大きさ及び方向を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記マーカーの前記変化情報は、力ベクトル分布を提供するように再構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
測定前に、毛の繊維先端により生じる刺激を減少させることができる組成物で前記繊維を処理する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物はヘアコンディショニング組成物である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
毛の繊維先端により生じる刺激を減少させることができるヘアコンディショニング組成物の有益性を実証する方法であって、
(1)第1の繊維試料を作るために1つ以上の繊維を提供すると共に、第2の繊維試料を作るために別の1つ以上の繊維を提供する工程と、
(2)前記第1の繊維試料を第1のヘアコンディショニング組成物で処理する工程と、
(3)請求項1に記載の方法により前記第1の繊維試料及び前記第2の繊維試料の前記繊維先端の前記力特性を個別に評価する工程と、
(4)前記第1の繊維試料及び前記第2の繊維試料の前記評価した力特性を比較する工程と
を含む方法。
【請求項18】
前記第2の繊維試料は前記工程(2)で第2のヘアコンディショニング組成物で処理される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
毛の繊維先端により生じる刺激を減少させることができるヘアコンディショニング組成物の有益性を実証することによって前記ヘアコンディショニング組成物を市販する方法であって、
(1)前記ヘアコンディショニング組成物を売り出す工程と、
(2)毛の繊維先端により生じる刺激を減少させるとして前記ヘアコンディショニング組成物の有益性を宣伝する工程と、
(3)請求項17又は18に記載の方法を行うことにより、毛の繊維先端により生じる刺激の減少を実証する工程と
を含む方法。
【請求項20】
毛を柔らかくすることができるヘアコンディショニング組成物の有益性を実証することによって前記ヘアコンディショニング組成物を市販する方法であって、
(1)前記ヘアコンディショニング組成物を売り出す工程と、
(2)毛を柔らかくするとして前記ヘアコンディショニング組成物の有益性を宣伝する工程と、
(3)請求項17又は18に記載の方法を行うことにより、毛の繊維先端により生じる刺激の減少を実証する工程と
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−512436(P2013−512436A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541157(P2012−541157)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/057768
【国際公開番号】WO2011/068718
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】