説明

繊維強化されたスイングバケットを備えた遠心ロータ、及び当該遠心ロータを製造するための方法

遠心ロータ10は、遠心ロータ10の回転軸線を規定するロータコア16を有している。複数のバケット支持部20a,20bが、回転軸線14を中心として配置されている。遠心ロータ10は、対角線上において対向している2つのバケット支持部20bの周囲に巻き付けられている、第1のストラップ36及び第2のストラップ38を含んでおり、これにより、2つのバケット支持部20a,20bがロータコア16に対して相対的に外方に移動することを制限している。第1のストラップ36と第2のストラップ38とが、回転軸線14を貫通している位置において互いに交差している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には遠心ロータ、具体的にはスイングバケットと共に利用される高速遠心ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ロータは、一般に研究用途の遠心分離機において、遠心分離中にサンプルを保持するために利用されている。遠心ロータの構成及び大きさは著しい多様性を有しており、一般的な遠心ロータの構造としては、遠心ロータの外縁又は外壁を形成している中実のロータ本体と、ロータ本体内部において径方向に分配されていると共に回転軸線に関して対称に配置されている、例えば2つ、4つ、又は6つの竪穴又は溝とを有している、スイングバケット付遠心ロータが挙げられる。外縁又は外壁を設けることによって、特に遠心分離中に作用する大きな動的な力を考慮しても、ロータの構造的剛性が高められる。バケットが竪穴内に配設されており、それぞれが特定の液体材料を収容するサンプルチューブ又は類する実験用容器を保持するように構成されている。高速回転している際には、バケットは竪穴内部において揺動され、バケットが略水平方向に向けられることによって、液体材料がサンプルチューブ内において径方向外向きに容易に移動可能とされる。
【0003】
従来型のスイングバケット付遠心ロータは、対角線上においてロータの回転軸線に関して対向している側において、例えば4つ、6つ、又は8つのような偶数個のスイングバケットを支持するように構成されている、実質的に金属製のロータを含んでいる。このようなタイプのロータでは、遠心分離中の回転速度が非常に大きいので、ロータ本体は、スイングバケットが回転中心軸線を中心として高速回転することによって発生する、動的な応力及び動的な力に耐えることができる必要がある。これら動的な応力及び動的な力が、例えば疲労破壊のような金属製ロータの故障の原因となる。付加的又は代替的には、従来技術に基づく、このようなタイプの金属製ロータは、腐食疲労及び応力疲労を受ける。最後に、略中実な構成を有している従来技術に基づくロータは、結果として、比較的重く、製造コストが高いロータとなる。従って、従来技術に基づく遠心ロータのこれら欠点及び他の欠点を克服する、改良されたスイングバケット付ロータに対するニーズが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第12/429569号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、遠心分離するために利用される既知の遠心ロータに関する、上述の欠陥及び欠点並びに他の欠陥及び欠点を克服するものである。本発明は、特定の実施例に関連して説明されるが、本発明は特定の実施例に限定される訳ではないことに留意すべきである。逆に、本発明は、本発明の技術的思想に属するすべての代替例、改良例、及び均等物を含んでいる。
【0006】
一の実施例では、遠心ロータは、遠心ロータの回転軸線を規定しているロータコアを有している。複数のバケット支持部が、回転軸線を中心として配置されている。遠心ロータは、第1のストラップ及び第2のストラップを含んでいる。第1のストラップが、第1の組のバケット支持部がロータコアに対して外方に移動することを制限するために、対角線上において対向している第1の組のバケット支持部の周囲に延在している。第2のストラップが、第2の組のバケット支持部がロータコアに対して外方に移動することを制限するために、対角線上において対向している第2の組のバケット支持部の周囲に延在している。第1のストラップと第2のストラップとが、回転軸線を貫通している位置において互いに交差している。遠心ロータは、バケット支持部それぞれが複数の細長アームのうち一の細長アームの長手方向端部に配置されている状態において、ロータコアの中心部分から延在している複数の細長アームを含んでいる。遠心ロータでは、バケット支持部それぞれが、第1のトラニオン及び第2のトラニオンを有しており、第1のトラニオン及び第2のトラニオンそれぞれが、バケットを支持するように構成されており、バケットそれぞれが、遠心ロータの外周を形成している。
【0007】
第1のストラップ及び第2のストラップが、高引張強度を有している繊維材料から作られている場合がある。第1のストラップ及び第2のストラップは、例えば炭素繊維、アラミド繊維、ポリオレフィン繊維、又はこれらに類する物から作られている場合もある。さらに、第1のストラップ及び第2のストラップは、繊維が例えば熱可塑樹脂や熱硬化樹脂のような樹脂で包まれている複合材料から作られていても良い。炭素繊維が熱硬化材料でコーティングされた複合材料は、一例にすぎない。第1のストラップが第1のループを形成しており、第2のストラップが第2のループを形成しており、第2のループが第1のループよりも大きい。一の実施例では、第1のストラップ全体が、第1のストラップと第2のストラップとが互いに交差している位置において、第2のループ内に配置されている。代替的又は付加的には、第2のストラップは、対角上において対向している第2の組のバケット支持部を横断している湾曲した面内において延在している、上側表面を有している。対角上において対向している第1の組のバケット支持部及び第2の組のバケット支持部のうち少なくとも1つの組は、第1のストラップ又は第2のストラップを受容するための溝を含んでいる場合がある。
【0008】
一の実施例では、バケット支持部それぞれが、例えば略V字状、略T字状や略Y字状のような、適切に選定された形態に配置されている第1のセグメント及び第2のセグメントを含んでおり、第1のセグメント及び第2のセグメントそれぞれが、第1のトラニオン及び第2のトラニオンを含んでいる。第1のトラニオン及び第2のトラニオンそれぞれが、第1のストラップ及び第2のストラップのうち隣接しているストラップに対して鋭角を形成するように向いている。4つのバケットを支持している実施例では、第1のストラップ及び第2のストラップは互いに対して略直角に向いている。遠心ロータは、ロータコアに結合されていると共に遠心スピンドルを介して係合するように構成されている、ロータハブを含んでいる場合がある。ロータハブは、第1のストラップ及び第2のストラップから周方向に離隔している位置においてロータコアに結合している。
【0009】
他の実施例では、一の遠心ロータが設けられている。遠心ロータは、遠心ロータの回転軸線を規定しているロータコアと、それぞれが回転軸線を中心として配置されている複数のバケット支持部とを有している。バケット支持部それぞれが、第1のトラニオン及び第2のトラニオンを有しており、第1のトラニオン及び第2のトラニオンそれぞれが、バケットを支持するように構成されている。遠心ロータは、互いに対して略直角に向いている第1のストラップ及び第2のストラップを含んでいる。第1のストラップが、第1の組のバケット支持部がロータコアに対して外方に移動することを制限するために、対角線上において対向している第1の組のバケット支持部の周囲に延在している。第2のストラップが、第2の組のバケット支持部がロータコアに対して外方に移動することを制限するために、対角線上において対向している第2の組のバケット支持部の周囲に延在している。第1のストラップと第2のストラップとが、回転軸線と交差している。
【0010】
さらなる他の実施例は、遠心ロータを製造するための方法を備えている。当該方法は、複数のバケット支持部を、回転軸線を含んでいるロータコアの周囲に配置するステップを含んでいる。当該方法は、第1の組のバケット支持部がロータコアに対して外方に移動することを制限するために、第1のストラップを、対角線上において対向している第1の組のバケット支持部に結合するステップを含んでいる。第1のストラップが、回転軸線と交差している。当該方法は、第2のストラップを、対角線上において対向している第2の組のバケット支持部に結合するステップと、第1のストラップと回転軸線とが交差している位置において第1のストラップ及び第2のストラップが互いに交差しているように、第1のストラップ及び第2のストラップを配置するステップとを含んでいる。
【0011】
本発明の上述の目的及び利点並びに他の目的及び利点については、発明の詳細な説明及び添付図面から明らかとなる。
【0012】
本願に含まれると共に本願の一部分を構成している添付図面は、上述の発明の概略的な説明と共に本発明の実施例を図解するものである。以下の発明の詳細な説明も本発明を解説するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一の実施例における遠心ロータの斜視図である。
【図2】複数の開いたバケットを支持している、図1に表わす遠心ロータの別の斜視図である。
【図3】図1の断面3−3における断面図である。
【図4】図1〜図3に表わす遠心ロータの部分的な分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図4は、本発明の一の実施例における典型的な遠心ロータ10を表わす。遠心ロータ10は、複数のスイングバケット12を支持しており、これらスイングバケット12それぞれが、遠心ロータ10のロータコア16によって規定される回転中心軸線14を中心としてサンプルチューブ及び/又は類する実験用容器13を遠心回転させるために、サンプルチューブ及び/又は類する実験用容器13を保持するように構成されている、スイングバケット12それぞれが、選択的に閉じることができる蓋12aと、遠心分離をしている最中に所定位置において蓋12aをロックするように構成されている一組のラッチ12bとを含んでいる。特許文献1には、遠心ロータ10と共に利用するように適合されている典型的なスイングバケット12が開示されている。言うまでもなく、当該特許文献全体が参照により本願に組み込まれている。
【0015】
遠心ロータ10は、回転中心軸線14を中心として回転するように配置されている複数のバケット支持部20a,20bを含んでいる。図示の如く、典型的なバケット支持部20a,20bは略V字状とされるが、代替的には、当該バケット支持部は異なる形状であっても良く、例えば略T字状や略Y字状又は他の形状とされる。バケット支持部20a,20bは、バケット支持部20a,20bそれぞれがスイングバケット12のうち2つのスイングバケットを支持するように配置されている。より具体的には、バケット支持部20a,20bそれぞれは、それぞれが自身の長手方向端部にトラニオン又はピン22a,24aを有している、一組のセグメント22,24を含んでおり(図4参照)、スイングバケット12のうち一のスイングバケットを支持するように構成されている。このために、トラニオン22a,24aそれぞれが、スイングバケット12の側壁から延在しているブッシュ30に係合しており、これにより遠心分離している最中において、図示する略立向姿勢又は(図示しない)略横向姿勢でスイングバケット12を支持することができる。
【0016】
図1及び図2に表わすように、バケット支持部20a,20bは遠心ロータ10の外周を形成している。これに関連して、遠心ロータ10は、従来技術に基づくスイングバケットを備えた遠心ロータとは異なり、外壁、リム、又はこのような外壁やリムを形成する中実体を有していない。特に、このような外壁又はリム及び中実体構造(例えば、スイングバケットを支持するためのロータの溝(bay)又は穴(well)を形成する、沈降部又はボアを有している金属体)を有していないので、遠心ロータ10を比較的軽量にすると共に比較的容易に製造可能となる。本明細書は、代替的に、遠心ロータ10が、例えば空気力学的抵抗及び風切り騒音を低減するために、周方向に延在している外側シェル又は外側シールド(図示しない)を任意に有していることも予定している。このことは、例えば、より広範囲において温度を容易に制御すると共に遠心ロータ10の駆動に必要な電力を低減するために望ましい。
【0017】
特に図4を参照すると、ロータコア16は、ロータコア16の中心部分16aから延在していると共に対角線上において対向している第1の組のバケット支持部20aの間に跨設されている、第1の組の細長部材31と、ロータコア16の中心部分16aから延在していると共に対角線上において対向している第2の組のバケット支持部20bの間に跨設されている、第2の組の細長部材33とを含んでいる。従って、バケット支持部20a,20bそれぞれが、細長部材31,33それぞれの長手方向端部に配置されている。他の実施態様では、ロータコア16の中心部分16aは、以下において詳述するように、遠心ロータ10を高速回転させるために遠心ロータ10を遠心スピンドル(図示しない)と容易に結合可能とする、複数の開口部34を含んでいる。
【0018】
図1〜図4を参照すると、遠心ロータ10は略軽量構造をしているが、遠心ロータは、遠心分離をしている際に必要な構造的一体性を維持している。当該典型的な実施例では、このような構造的一体性は、互いに対して略直交している一組の補剛ストラップによって実現される。当該補剛ストラップは、バケット支持部20a,20bがロータコア16に対して、特にロータコア16の中心部分16aに対して外向きに移動することを制限する。より具体的には、遠心ロータ10は、第1のストラップ36と第2のストラップ38とを含んでいる。第1のストラップ36は、対角線上において対向している第1の組のバケット支持部20aそれぞれの周囲に延在しており、当該バケット支持部それぞれに機能的に結合している。一方、第2のストラップ38は、対角線上において対向している第2の組のバケット支持部20bのバケット支持部それぞれの周囲に延在しており、当該バケット支持部それぞれに機能的に結合している。第1のストラップ36及び第2のストラップ38は、セグメント22,24それぞれが、特にバケット支持部20a,20bそれぞれのトラニオン22a,24aが、バケット支持部20a,20bそれぞれが結合している第1のストラップ36及び第2のストラップ38それぞれに対して、鋭角を形成する方向に延在している。
【0019】
当業者であれば容易に理解することができるように、図面に表わした鋭角が単なる例示であり、本発明において当該鋭角に限定される訳ではない。従って、当業者が想到可能な範囲であれば、他の鋭角であっても良い。より具体的には、当該実施例では、4つのバケット支持部20a,20bとバケット支持部20a,20bによって支持されている4つのスイングバケット12とが上述のように配置されているので、鋭角は約45°である。他の実施例では、例えば2つ、6つや8つのように異なる数量のスイングバケット12(及びバケット支持部20a,20b)を有していても良い。6つ又は8つのスイングバケット12を有している代替的な実施例では、トラニオン22a,24aの向きと隣り合う第1のストラップ36及び第2のストラップ38の向きとが成す鋭角それぞれが、約45°よりも大きい。同様に、2つのスイングバケット12を有している実施例では、鋭角が約45°よりも小さい。同様に、このような代替的な実施例では、ストラップの数量が、図面に表わす実施例におけるストラップ36,38の典型的な2つとは異なるが、そうであっても本発明の技術的範囲内である。
【0020】
第1のストラップ36及び第2のストラップ38それぞれが、例えば繊維材料、非繊維材料、複合材料や他の材料のような、軽量でありながら高強度な材料から作られている。図示の実施例では、第1のストラップ36及び第2のストラップ38は、熱硬化樹脂でコーティングされた高強度炭素繊維から作られている。しかしながら、このような構成は、非限定的な単なる例示にすぎない。適切な代替物としては、コーティングの有無を問わず、他の高張力繊維が挙げられる。このような代替物としては、例えば熱可塑樹脂でコーティングされた炭素繊維や熱可塑樹脂でコーティングされていない炭素繊維が挙げられるが、これらに制限される訳ではない。これに関連して、第1のストラップ36及び第2のストラップ38は、例えば熱可塑樹脂又は熱硬化樹脂でコーティングされた炭素繊維のフィラメント又はストランドを、対角線上において対向しているバケット支持部20a,20bから成る組それぞれの周囲に巻き付けた後に、圧力及び熱を作用させ、ストランドを一体構造に成形することによって形成されている。特に繊維が熱可塑樹脂又は熱硬化樹脂でコーティングされている場合には、樹脂が所定時間の間において硬化処理されるので、繊維を遠心ロータ10の他の部分と一体化することができる。第1のストラップ36及び第2のストラップ38それぞれが、図示の如く、バケット支持部20a,20bから成る組それぞれの周囲に巻き付けられており、これにより高速回転中に、バケット支持部20a,20bがロータコア16から離隔するように外方に移動することが防止される。第1のストラップ36及び第2のストラップ38それぞれが、ロータコア16の細長部材31,33の上方に位置しており、ロータコア16の細長部材31,33によって支持されている。
【0021】
さらに、バケット支持部20a,20bそれぞれが溝40(図4参照)を含んでいる。当該溝は、第1のストラップ36及び第2のストラップ38のうち一方のストラップの一部分を受容するように適合された形状及び大きさとされ、これにより利用中に、第1のストラップ36及び第2のストラップ38それぞれが、バケット支持部20a,20bそれぞれ及び細長部材31,33それぞれに対して相対的に運動することが防止される。また、溝40は、遠心ロータ10を製造している際に第1のストラップ36及び第2のストラップ38を案内するための、経路を有している。
【0022】
第1のストラップ36及び第2のストラップ38それぞれは、第1のループが第2のループよりも小さい状態において第1のループ及び第2のループを規定するように、遠心ロータ10内に配置されている。より具体的には、第1のストラップ36は、図面の垂直方向において第2のストラップ38に対応している第2のループよりも小さい、第1のループを規定している。また、これに関連して、第1のループの形状及び大きさは第1の細長部材31の形状及び大きさによって決定され、第2のループの形状及び大きさはロータコア16の第2の細長部材33の形状及び大きさによって決定される。第1のストラップ36及び第2のストラップ38は、第1のストラップ36及び第2のストラップ38がロータコア16の中心部分16aに容易に配置される、寸法的関係を有している。これに関連して、第1のストラップ36及び第2のストラップ38は、回転中心軸線14が縦断している中心部分16aにおいて互いに交差している。第1のストラップ36及び第2のストラップ38が交差している位置では、第1のストラップ36全体が第2のストラップ38によって形成されている第2のループの内側に位置するように、第2のストラップ38が第1のストラップ36を覆っている。
【0023】
当業者であれば理解可能なように、第1のストラップ36及び第2のストラップ38をロータコア16の中心部分16aに正確に配置することが単なる例示にすぎず、このような配置に限定される訳ではない。これに関連して、第1のストラップ36及び第2のストラップ38が、単なる非限定的な例示にすぎない炭素繊維、ケブラーやガラスから作られた様々な大きさのトウや単方向テープから形成されている場合がある。この場合には、第1のストラップ36及び第2のストラップ38それぞれのストランドは、互いに編み合わせられている(すなわち、絡み合っている)。従って、結論として、このような代替的な配置によって、第1のループ及び第2のループの大きさが、必ずしも互いに相違するとは限らない。当該実施例では、遠心ロータ10が、炭素繊維から作られている第1のストラップ36及び第2のストラップ38を有しているが、代替的には、第1のストラップ36及び第2のストラップ38が、遠心ロータ10に対して必要な構造的一体性を有している限り、繊維材料又は非繊維材料に関わらず、他の高強度材料から作られている。
【0024】
第1のストラップ36及び第2のストラップ38それぞれが、上側表面36a,38aを含んでいる。概略的に、第2のストラップ38の上側表面38aは、第2のストラップ38が結合されている2つのバケット支持部20bの間に跨設された状態において、僅かに湾曲した面内に配設されている。また、第1のストラップ36の上側表面36aは、第1のストラップ36が結合されている2つのバケット支持部20aの間に跨設された状態において、僅かに湾曲した面内に配設されているが、第2のストラップ38の上側表面38a程湾曲していない。さらに図示の実施例では、第2のストラップ38は、バケット支持部20bの一組の溝40それぞれに埋設されているので、上側表面38aが配設されている表面も、バケット支持部20bを、特にバケット支持部20bの上側表面20cを交差している。当該実施例では、第2のストラップ38は、ロータコア16の中心部分16aの近傍において部分的に僅かに隆起しており、これにより中心部分16aにおいて第1のストラップ36を収容している。これら寸法的関係によって、容易に製造可能で従来技術に基づくロータより小型な遠心ロータ10が形成される。細長部材33の高さが中心部分16a近傍において細長部材33の他の部分と比較して大きいので、これに対応して、第2のストラップ38を容易に僅かに上昇させることができる。
【0025】
図3〜図4を参照すると、遠心ロータ10は、遠心ロータ10を遠心回転させるためのスピンドル(図示しない)に遠心ロータ10を容易に係合可能とする、ロータハブ50を含んでいる。ロータハブ50は、ロータハブ50内において第1のストラップ36及び第2のストラップ38の一部分と干渉しないように、ロータコア16の中心部分16aに結合されている。より具体的には、ロータハブ50は、2つ以上の駆動ピン52(当該実施例では、4つの駆動ピン52)を介して中心部分16aに結合されている。駆動ピン52は、第1のストラップ36及び第2のストラップ38の隣り合う部分同士の間において延在しており、これにより第1のストラップ36及び第2のストラップ38それぞれから周方向に離隔している。特に、駆動ピン52は、垂直方向に延在しており、隣り合う第1のストラップ36と第2のストラップ38との間において互いから周方向に離隔しており、開口部34を通じてロータコア16の中心部分16a内に受容されている。また、駆動ピン52は、遠心駆動するためのスピンドル(図示しない)に遠心ロータ10を固定する継手59の下面において、対応するボア内部で支持されている。図示の実施例の一の態様では、駆動ピン52の外側表面が、第1のストラップ36及び第2のストラップ38の側縁部36e,38eそれぞれに対して接しており、第1のストラップ36及び第2のストラップ38の側縁部36e,38eそれぞれと接触状態にある。
【0026】
特に図3を参照すると、遠心ロータ10は、利用時において、適切に選定された遠心スピンドル(図示しない)の上方にロータハブ50を取り付けることによって動作する。より具体的には、スピンドルは、ロータハブ50の底部においてハブ開口部60内に受容されている。スピンドルが動作している場合には、スピンドルの回転によって、駆動ピン52が駆動トルクをロータコア16に伝達した後に、スイングバケット12を含む遠心ロータ10を回転させる。
【0027】
様々な実施例を相当詳細に説明することによって本発明の原理に基づく様々な実施態様について説明しているが、これら実施例が、本発明の技術的範囲をそのような詳細なレベルに制限又は限定することを意図している訳ではない。本願において図示及び説明した様々な特徴は、単独でも任意に組み合わせても利用することができる。さらなる利点及び改良については、当業者であれば容易に想到することができるだろう。従って、より広い態様における本発明は、特定の詳細な代表的な装置及び方法並びに図解した実施例に限定される訳ではない。以上より、一般的発明概念から逸脱することなく、このような詳細部分については自由に変更可能であることを留意すべきである。
【符号の説明】
【0028】
10 遠心ロータ
12 スイングバケット
12a 蓋
12b 一組のラッチ
13 実験用容器
14 回転中心軸線
16 ロータコア
16a 中心部分
20a バケット支持部
20b バケット支持部
22 セグメント
22a トラニオン(ピン)
24 セグメント
24a トラニオン(ピン)
30 ブッシュ
31 (第1の)細長部材
33 (第2の)細長部材
34 開口部
36 第1のストラップ
36a 上側表面
36e 側縁部
38 第2のストラップ
38a 上側表面
38e 側縁部
50 ロータハブ
52 回り止めピン
60 ハブ開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心ロータ(10)であって、
ロータコア(16)の中心部分(16a)から延在していると共に前記遠心ロータ(10)の回転軸線(14)を規定している、複数の細長アーム(31,33)を有している前記ロータコア(16)と、
前記ロータコア(16)に機能的に結合されていると共に前記回転軸線(14)を中心として配置されている、複数のバケット支持部(20a,20b)と、
を備えている前記遠心ロータ(10)において、
前記バケット支持部(20a,20b)それぞれが、前記細長アーム(31,33)のうち一の細長アームの長手方向端部に配置されており、
第1のストラップ(36)が、対角線上において対向している前記バケット支持部(20a,20b)から成る第1の組の周囲に延在しており、これにより前記バケット支持部(20a,20b)から成る前記第1の組が、前記ロータコア(16)に対して相対的に外方に移動することを制限しており、
第2のストラップ(38)が、対角線上において対向している前記バケット支持部(20a,20b)から成る第2の組の周囲に延在しており、これにより前記バケット支持部(20a,20b)から成る前記第2の組が、前記ロータコア(16)に対して相対的に外方に移動することを制限しており、前記第1のストラップ(36)と前記第2のストラップ(38)とが、前記回転軸線(14)を貫通している位置において互いに交差していることを特徴とする遠心ロータ(10)。
【請求項2】
前記第1のストラップ(36)と前記第2のストラップ(38)とが、炭素繊維から作られていることを特徴とする請求項1に記載の遠心ロータ(10)。
【請求項3】
前記第1のストラップ(36)と前記第2のストラップ(38)とが、熱可塑樹脂又は熱硬化樹脂でコーティングされている炭素繊維から作られていることを特徴とする請求項2に記載の遠心ロータ(10)。
【請求項4】
前記バケット支持部(20a,20b)それぞれが、第1のトラニオン(22a)及び第2のトラニオン(24a)を有しており、
前記第1のトラニオン(22a)及び前記第2のトラニオン(24a)それぞれが、バケット(12)を支持するように構成されており、
前記バケット支持部(20a,20b)それぞれが、前記遠心ロータ(10)の外周を形成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の遠心ロータ(10)。
【請求項5】
前記バケット支持部(20a,20b)それぞれが、略V字状に配置されている第1のセグメント(22)及び第2のセグメント(24)を含んでおり、
前記第1のセグメント(22)及び前記第2のセグメント(24)それぞれが、第1のトラニオン(22a)及び第2のトラニオン(24a)を有しており、
前記第1のトラニオン(22a)及び前記第2のトラニオン(24a)それぞれが、バケット(12)を支持するように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の遠心ロータ(10)。
【請求項6】
前記バケット支持部(20a,20b)それぞれが、第1のトラニオン(22a)及び第2のトラニオン(24a)を有しており、
前記第1のトラニオン(22a)及び前記第2のトラニオン(24a)それぞれが、バケット(12)を支持するように構成されており、
前記第1のトラニオン(22a)及び前記第2のトラニオン(24a)それぞれが、前記第1のストラップ(36)及び前記第2のストラップ(38)のうち隣り合うストラップに対して鋭角を形成するように向いていることを特徴とする請求項1〜3及び5のいずれか一項に記載の遠心ロータ(10)。
【請求項7】
前記第1のストラップ(36)が、第1のループを形成しており、
前記第2のストラップ(38)が、第2のループを形成しており、
前記第2のループが、前記第1のループよりも大きいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の遠心ロータ(10)。
【請求項8】
前記第1のストラップ(36)全体が、前記第1のストラップ(36)と前記第2のストラップ(38)とが互いに交差する位置において、前記第2のループ内に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の遠心ロータ(10)。
【請求項9】
前記第1の組の前記バケット支持部(20a,20b)それぞれが、上側表面(20c)を有しており、
前記第1のストラップ(36)と前記第2のストラップ(38)とが、前記第1の組の前記バケット支持部(20a,20b)それぞれの前記上側表面(20c)を横断している湾曲した面内において延在している、上側表面(36a,38a)を有していることを特徴とする請求項6に記載の遠心ロータ(10)。
【請求項10】
前記第1の組又は前記第2の組の前記バケット支持部(20a,20b)のうち少なくとも1つのバケット支持部それぞれが、前記第1のストラップ(36)又は前記第2のストラップ(38)を受容するための溝(40)を含んでいることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の遠心ロータ(10)。
【請求項11】
前記第1のストラップ(36)及び前記第2のストラップ(38)が、互いに対して略直角に向いていることを特徴する請求項1〜10のいずれか一項に記載の遠心ロータ(10)。
【請求項12】
前記遠心ロータ(10)が、前記ロータコア(16)に結合されていると共に遠心スピンドルを介して前記ロータコア(16)に係合するように構成されている、ロータハブ(50)を備えており、
前記ロータハブ(50)が、前記第1のストラップ(36)及び前記第2のストラップ(38)から周方向に離隔している位置において、前記ロータコア(16)に結合されていることを特徴する請求項1〜11のいずれか一項に記載の遠心ロータ(10)。
【請求項13】
前記ロータハブ(50)と前記ロータコア(16)との間における継手が、前記ロータコア(16)から延在していると共に外側表面を有している、複数の駆動ピン(52)を含んでおり、
前記駆動ピン(52)のうち少なくとも1つの駆動ピンの前記外側表面が、前記ロータハブ(50)と前記ロータコア(16)とが互いに結合している場合に、前記第1のストラップ(36)及び前記第2のストラップ(38)のうち少なくとも1つのストラップに接触していることを特徴とする請求項12の記載の遠心ロータ(10)。
【請求項14】
遠心ロータ(10)を製造するための方法であって、前記遠心ロータ(10)が、ロータコア(16)の中心部分(16a)から延在していると共に前記遠心ロータ(10)の回転軸線(14)を規定している、複数の細長アーム(31,33)を有している前記ロータコア(16)と、前記ロータコア(16)に機能的に結合されていると共に前記回転軸線(14)を中心として配置されている、複数のバケット支持部(20a,20b)とを備えている、前記方法において、
前記バケット支持部(20a,20b)それぞれを、前記細長アーム(31,33)のうち一の細長アームの長手方向端部に配置するステップと、
対角線上において対向している前記バケット支持部(20a,20b)から成る第1の組が前記ロータコア(16)に対して相対的に外方に移動することを制限するために、第1のストラップ(36)を、対角線上において対向している前記バケット支持部(20a,20b)から成る前記第1の組に結合するステップと、
第2のストラップ(38)を、対角線上において対向している前記バケット支持部(20a,20b)から成る第2の組に結合するステップと、
前記第1のストラップ(36)と前記第2のストラップ(38)とが前記回転軸線(14)において互いに交差しているように、前記第1のストラップ(36)及び前記第2のストラップ(38)を配置するステップと、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記第1のストラップ(36)及び前記第2のストラップ(38)それぞれを、対角線上において対向している前記バケット支持部(20a,20b)から成る第1の組及び第2の組に結合するステップが、前記第1のストラップ(36)及び前記第2のストラップ(38)それぞれを、対角線上において対向している前記バケット支持部(20a,20b)から成る前記第1の組又は前記第2の組の周囲に巻き付けることを含んでいることを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−512777(P2013−512777A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543197(P2012−543197)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/059231
【国際公開番号】WO2011/071880
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(510016645)ファイバーライト・セントリフュージ・エルエルシー (4)
【Fターム(参考)】