繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置およびモニタリング方法、ならびにこれらを用いた繊維強化プラスチックの製造方法
【課題】
FRPの成形において、液状体の含浸、及び、熱硬化過程を経て成形される繊維強化基材の成形状況を経時的に正確に連続モニタリングし、設計値どおりの厚さの、良好な成形体を得ること。
【解決手段】加熱炉内に設置された成形型内に配置した板状の強化繊維基材への液状体の含浸、及び、熱硬化過程において、前記強化繊維基材の第1の面、及び、前記成形型の第1の面に配置した各変位測定手段を用いて、加熱炉内の温度変化による、前記変位測定手段、前期成形型、及び、変位測定手段の固定手段の熱変形の影響を軽減して、前記強化繊維基材の厚さを測定することを特徴とする、繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置及びモニタリング方法。
FRPの成形において、液状体の含浸、及び、熱硬化過程を経て成形される繊維強化基材の成形状況を経時的に正確に連続モニタリングし、設計値どおりの厚さの、良好な成形体を得ること。
【解決手段】加熱炉内に設置された成形型内に配置した板状の強化繊維基材への液状体の含浸、及び、熱硬化過程において、前記強化繊維基材の第1の面、及び、前記成形型の第1の面に配置した各変位測定手段を用いて、加熱炉内の温度変化による、前記変位測定手段、前期成形型、及び、変位測定手段の固定手段の熱変形の影響を軽減して、前記強化繊維基材の厚さを測定することを特徴とする、繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置及びモニタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチックの成形状況、特に加熱炉内における、液体状の含浸、及び、熱硬化状況に応じた繊維強化プラスチックの連続厚さモニタリング装置およびモニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やガラス繊維を強化繊維として用いた炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(以下、GFRP)に代表される繊維強化プラスチック(以下、FRP)は軽量でかつ高い耐久性を有するため、自動車や航空機などの各種構成部材として適用されている。
【0003】
これらFRPの代表的な製造方法としては、プリプレグを用いたオートクレーブ成形法が知られている。かかる成形法では、強化繊維にマトリックス樹脂を予め含浸させたプリプレグと呼ばれる中間基材を成形型上に積み重ねた後、フィルム材料で真空シールしてオートクレーブ中で加熱・加圧して複合材料を成形する。しかしながら、プリプレグに含浸されているマトリックス樹脂は硬化剤を含有した熱硬化性樹脂であるため硬化反応が徐々に進行してしまい、使用できる時間が短く、冷凍保管設備が必要となることから、熱硬化性樹脂のマトリックス樹脂を使用するには制約があった。
【0004】
そこで、近年では従来のプリプレグを用いたオートクレーブ成形より容易に成形できる方法として、RTM成形方法が注目されている。Resin Transfer Molding(以下、RTM)成形方法とは、強化繊維基材(あらかじめ賦形した強化繊維シートの積層体)を型に配置した状態で加熱炉内に投入した後、強化繊維基材にマトリックス樹脂を注入し、加熱によりマトリックス樹脂を硬化させる方法である。このRTM成形方法では、マトリックス樹脂の注入直前に、主剤である樹脂と硬化剤を混合させれば良く、硬化反応の進行を懸念する必要がない。また、マトリックス樹脂を主剤である樹脂と硬化剤に分けて常温で保管可能なため、大がかりな冷凍保管設備は不要である。また、成形時にオートクレーブ等の大型設備も必要としないといった利点もある。
【0005】
一方、RTM成形方法はプリプレグを用いたオートクレーブ成形に比べると、特にマトリックス樹脂の注入工程において、強化繊維基材を含む成形部材の厚さ変化量が大きくなりやすい。このため、前記成形部材全体の厚さ変化量に相当するマトリックス樹脂の注入量を把握し、成形部材全体の厚さが目標となる厚さになった時点でマトリックス樹脂注入を停止し、注入されたマトリックス樹脂を硬化させる必要がある。しかし、加熱炉内でのマトリックス樹脂の注入工程、及び硬化工程において、目視等ではマトリックス樹脂が含浸した成形部材の厚さを把握できづらい。その結果、加熱炉内でのマトリックス樹脂の注入工程、及び硬化工程における成形部材が設計値と異なる厚さになったとしても、マトリックス樹脂の硬化および成形部材の脱型が終わるまでは確認することができないため、成形部材の一部に厚さ不良が生じて製品全部が無駄になるといったことを未然に防げない問題もある。
【0006】
特に、航空機の翼の成形のように大量に材料を用いて時間をかけて含浸を行うような成形工程では、厚さ不良による製造ロスは大きなものになる。このような理由から、加熱炉内において成形部材の厚さの変化量を連続的に測定し、マトリックス樹脂の注入、及び硬化によって経時的に変化する成形部材の厚さの変化量を常時把握することは非常に重要である。
【0007】
測定対象物の厚さを温度変化の影響を受けずに正確に測定する方法として、加熱雰囲気内に熱膨張の小さい(温度変化に対する変形の小さい)基準となる試料と、厚さ変化量を測定したい試料とを配置し、差動トランスに接続された2つの検出棒を前記各試料にそれぞれ接触させ、各検出棒の変位の差をもとに、測定したい試料の厚さを測定する方法が知られている(特許文献1)。
【0008】
この測定方法では、2つの検出棒自体の温度変化に対する変形が差動トランスを用いることで相殺される工夫がなされており、測定したい試料の厚さを正確に測定することができる。
【0009】
しかし、この方法では、温度変化に対する変形の小さい基準となる試料を配置することが必要であるため、測定操作上の試料準備が複雑になる。また、検出棒を測定対象物に接触させる必要があるため、測定対象物に損傷を与えるという問題がある。更に、差動トランスを用いた測定構成であることから、基準となる試料と測定したい試料との配置に関し、その距離に制約が発生し、任意のポイントの測定が困難であった。
【0010】
また、測定対象物の厚さを温度変化の影響を受けずに正確に測定する別の方法としては、レーザビームを用いた1つの変位センサを走査し、厚さを測定したい試料とリファレンスとなる試料との高さ(厚さ)とを、各試料と非接触の状態で測定し、それぞれの測定値の差を演算することで、各試料の温度変化に対する変形の影響を除去し、正確に測定対象物の厚さを測定する方法が知られている(特許文献2)。
【0011】
この方法によると、測定対象物と非接触の測定であるため測定対象物への損傷はないものの、測定対象物と同一素材かつ同一肉厚のリファレンス試料の配置が必要であるため、測定操作上の試料準備が複雑になる。また、レーザビームを発する変位センサにおいては、センサ内部の光学部品、例えばレンズなどの耐熱温度がせいぜい40℃程度までのため、それ以上の温度に加熱された環境の場合は測定できないという問題があった。
【0012】
また、測定対象物の厚さを温度変化の影響を受けずに正確に測定する別の方法としては、レーザ光源を室温雰囲気に配置し、加熱雰囲気に配置されたビームスプリッタによりレーザビームを分光し、基準位置及び測定対象位置から反射されたレーザビームの干渉縞を用いて測定対象物の変位を測定する方法が知られている(特許文献3)。
【0013】
この方法では、レーザ光源は室温雰囲気に配置されているため光学部品の耐熱性の点では問題なく、非接触の測定構成であるため測定対象物への損傷もない。しかし、加熱雰囲気内で反射されたレーザビームが室温雰囲気に配置された受光素子に入光する際、空気温度の違いによる屈折率の変化の影響を受けるため、正確に測定対象物の変位を測定することが出来なかった。
【0014】
以上のように、加熱雰囲気において温度変化の影響を受けずに、測定対象物に損傷なく、容易に、かつ、正確に測定対象物の厚さを測定する技術は存在しなかった。
【特許文献1】特許第2759770号公報
【特許文献2】特開2001−289619号公報
【特許文献3】特開2003−302358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来技術によるモニタリング方法を用いて、成形中の部材の厚さの変化を測定する場合、温度変化による厚さ変化量の測定値への影響が避けられないこと、成形中の部材に対し損傷を与えること、温度変化に対し変形の少ない基準となる試料の準備が必要となり煩雑であること、測定できるポイントに制約があることから、温度変化を有する加熱炉内での成形中部材の厚さを正確に、かつ、容易に測定することができない。
【0016】
本発明の目的は、かかる問題点を解決すること、すなわち、FRPの成形において、成形中の部材の成形状況、特に成形中の部材の厚さを、温度変化の影響を受けずに連続的にモニタリングし、設計値どおりの厚さを有する良好な成形体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記目的を達成するために、次のいずれかの構成を有する。
(1)加熱炉の内部に、成形型と、導電体および前記導電体と非接触で対向する変位測定手段からなる複数組の測定手段とを備え、前記変位測定手段からの信号を処理する演算処理手段を備えたことを特徴とする、繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
(2)前記成形型上に強化繊維基材が配置され、前記成形型上に少なくとも1組の前記測定手段を配置するとともに、前記強化繊維基材上にも少なくとも1組の前記測定手段を配置したことを特徴とする、(1)に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
(3)前記変位測定手段は、電気的または磁気的手段によって測定することを特徴とする、(1)または(2)のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
(4)前記測定手段を構成する変位測定手段は、固定手段を介して固定されていることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
(5)前記変位測定手段を固定する前記固定手段が、1つの固定部材にまとめて固定されていることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
(6)加熱炉内に設けられた成形型上に配置した強化繊維基材に対して、
前記強化繊維基材の第1の面上に導電体を配置し、前記導電体に非接触で対向するように第1の変位測定手段を前記加熱炉内に配置するとともに、
前記強化繊維基材の第2の面に接する前記成形型の第1の面上に導電体を配置し、前記導電体と非接触で対向するように第2の変位測定手段を前記加熱炉内に配置して、
前記第1の変位測定手段を用いて前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量を測定するとともに、前記第2の変位測定手段を用いて前記成形型の厚さ方向の変位量を測定することを特徴とする、繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
(7)前記第1の変位測定手段から得られる変位量と、前記第2の変位測定手段から得られる変位量とを前記演算処理手段で補正処理し、前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量とすることを特徴とする、(6)に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
(8)前記第1の変位測定手段から得られる変位量と、前記第2の変位測定手段から得られる変位量との差を前記演算処理手段で演算し、前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量とすることを特徴とする、(6)に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
(9)前記第1の変位測定手段から得られる変位量の値と、前記第2の変位測定手段から得られる変位量の値は、前記演算処理手段で補正処理した後、前記補正処理後のそれぞれの変位量の差を前記演算処理手段で演算することを特徴とする、(6)に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
(10)前記各第1の変位測定手段とそれに対向して配置された前記導電体との距離と、前記第2の変位測定手段とそれに対向して配置された前記導電体との距離とを前記加熱炉の加熱前に同じ距離に調整する工程を経た後、前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量もしくは前記成形型の厚さ方向の変位量の測定を開始する工程を有することを特徴とする、(6)〜(9)のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
(11)前記加熱炉を加熱する前に前記強化繊維基材の厚さを予め測定する工程を有し、前記厚さ測定値と、前記加熱炉の加熱中及び加熱完了後に得られる前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量から前記強化繊維基材の厚さを前記演算処理手段で演算することを特徴とする、(6)〜(10)のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
(12)強化繊維基材に液状体を含浸させる繊維強化プラスチックの製造方法であって、(6)〜(11)のいずれかに記載の成形状況モニタリング方法を用いて含浸工程、硬化工程が制御されてなることを特徴とする繊維強化プラスチックの製造方法。
【0018】
本発明において「成形型」とは、閉空間(成形キャビティ)を形成する成形型であれば、通常のRTM成形に用いられる複数の型を組み合わせて閉空間(成形キャビティ)を形成するものでも良いし、下型上に強化繊維基材を配置しシール材とフィルムで閉空間(成形キャビティ)を形成するフィルム材料による成形型でもよい。閉空間を形成するための被覆フィルム(バギングフィルム)の材料としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが耐熱性の観点から好ましい。本発明は、かかる閉空間内に配置した強化繊維基材に液状体を含浸、及び、硬化させる工程に適用するものである。
【0019】
本発明において「強化繊維基材」とは、強化繊維の織物、編み物、組み物、強化繊維の短繊維を抄紙等したもの等の強化繊維布帛を積層したものや強化繊維を3軸織物とした強化繊維がある厚さを持った集合体をいう。また、強化繊維基材に含まれる強化繊維は、通常数千〜数万本の単繊維の集合した繊維束である。
【0020】
なお、本発明が対象とする強化繊維基材の形状は、少なくとも一部に板状部を有するものであれば良い。強化繊維基材の全てが板状であっても良いが、液状体を含浸し、成形状況をモニタリングする部位が板状であれば良い。強化繊維基材は、強化繊維材の積層体または単体のものであり、曲面、多角面または凹凸を持った面であってもよい。本発明において、「強化繊維基材の第1の面」とは、成形型に直接接触している強化繊維基材面と反対側の表面のことをいい、「強化繊維基材の第2の面」とは、成形型に直接接触している強化繊維基材面の表面のことをいう。
【0021】
本発明における「強化繊維」は、炭素繊維及びガラス繊維、アラミド繊維などの高強度、高弾性率繊維を用いることが出来る。
【0022】
本発明において、「成形型の第1の面」とは、強化繊維基材の第2の面と直接接触している表面のことをいう。
【0023】
本発明において、「変位測定手段」とは、変位測定用のセンサヘッドのことをいい、「第1の変位測定手段」とは、強化繊維基材上に配置された導電体と非接触で対向して配置されたセンサヘッドをいい、「第2の変位測定手段」とは、成形型上に配置された導電体と非接触で対向して配置されたセンサヘッドをいう。本発明において、「導電体」とは、変位測定手段を含む閉ループ回路において、そのグラウンド(GND)との抵抗値が4kΩ以下である電気通電性物体のことをいう。また、導電体は接地されていることが電気ノイズの影響を受けにくいという点で好ましい。
【0024】
本発明において、「測定手段」とは、前記「導電体」、及び、導電体と非接触で対向する「変位測定手段」との対をもって定義する。
【0025】
本発明において、「強化繊維基材の第1の面上に導電体を配置」するとは、導電体を直接強化繊維基材の第1の面に接触する形で配置すること以外にも、導電体と強化繊維基材の第1の面の間にバギングフィルムや金属部材などを介して配置されることも含む。
【0026】
本発明において、「加熱炉」とは、空気の摂氏温度が5℃以上200℃以下の範囲において、40℃以上の温度操作がなされる空間を備えた加熱炉のことをいう。加熱する手段としては加熱空気を循環し、加熱炉内の温度が設定値になるように空気を加熱するヒーター出力を制御し、加熱空気を媒体とする温風加熱方式や、熱媒により加熱された成形型から直接、加熱対象物に熱エネルギーを供給し加熱する熱媒加熱方式、電気コイルを加熱対象物に近接し、加熱対象物表面に得られる誘導電流(渦電流)によって加熱する誘導加熱方式等があり、本発明においては特に制限するものではないものの、成形型及び強化繊維基材の設置の容易さなどの観点から温風加熱方式が好ましく利用できる。
【0027】
本発明で用いる「液状体」とは、全体として流動性を有していれば良く、熱可塑性の樹脂、水等の単なる液体、固形分を含有した液体(例えば微粒子状の物質等が分散したもの)が含まれているものであってもよい。FRP成形においては主として熱硬化性樹脂を想定しているが、室温で液状のものばかりでなく、熱可塑性樹脂のように成形温度において流動するものも含む。なお、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などがあるが、硬化後の寸法安定性、耐水性、耐薬品性、高電気絶縁性などの観点から、エポキシ樹脂が最も好ましく用いられる。
【0028】
なお、本発明における液状体の含浸は、上記説明では、成形型内に繊維強化基材を配置し、外部から液状体(液状樹脂)を注入するプロセスをベースとした。このプロセス以外にも、あらかじめ液状体である樹脂が部分的に含浸したシート状の強化繊維基材である部分含浸プリプレグや、室温で固形の樹脂フィルムを成形型内に配置して、積層・昇温するときに、樹脂が軟化または溶融し強化繊維間または強化繊維層間に染み込んで行くようなものも含まれる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、液状体の含浸及び熱硬化に応じて変化する強化繊維基材の厚さを、加熱雰囲気内で、温度変化の影響を受けずに簡単かつ確実に連続モニタリングできる。そして、本発明のモニタリング方法を用いてFRP成形体を生産する場合には、強化繊維基材への液状体の含浸状態、及び熱硬化に応じて変化する成形中の部材の厚さを簡単かつ確実にモニタリングすることが可能となる。
【0030】
その結果、FRP成形体の生産における成形中の部材の厚さ測定値をもとに、マトリックス樹脂注入及び熱硬化工程における異常の早期発見、及び、商品認可基準をより確実に満足することが可能となる。更には、成形中の部材の厚さ測定値をもとに、マトリックス樹脂注入、停止操作の自動化なども可能になり人手を減らすこともできる。
【0031】
特に、前記した効果に加えて、従来正確に知り得なかった繊維強化プラスチックの製造条件と、強化繊維基材の厚さ変化とを関連付けることができ、最適な製造条件を選択することで、厚さが設計値通りとなる良好なFRP成形体を得ることができるという効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置およびモニタリング方法の好ましい実施形態例を、図面を参照しながら説明する。なお、強化繊維基材として平板状基材を用いる場合を例にとって説明する。なお、本発明はこれらの例に限られるものではなく、例えば強化繊維基材が多角面を有するものであってもよい。
【0033】
図1は、変位測定手段として、非接触方式の変位センサを用いた本発明にかかる繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置の一実施形態を模式的に表す側面図である。温度変化を有する加熱炉5内に成形型4を配置し、成形型4の第1の面41上に強化繊維基材3が配置されている。加熱炉5内の温度は、強化繊維基材3の昇温、液状体の注入、停止、熱硬化のそれぞれの過程に応じて、常温から約200℃までの間で制御される。なお、常温とは約5℃から30℃程度のことをいう。
【0034】
強化繊維基材3の第2の面32は成形型4の第1の面41に密着するように配置されている。強化繊維基材3の第1の面31に密着するように導電体2Sが加熱炉5内に配置され、導電体2Sに非接触で対向するように変位測定手段1Sが加熱炉5内に配置されている。また、成形型4の第1の面41に密着するように導電体2Rが加熱炉5内に配置され、導電体2Rに非接触で対向するように変位測定手段1Rが加熱炉5内に配置されている。
【0035】
なお、図1に図示しないが、変位測定手段1S及び1Rは、加熱炉5の外に配置された信号処理機能を有する処理アンプにケーブルを介して接続されており、また、導電体2S及び2Rも前記信号処理機能を有する処理アンプのグランド端子にケーブルを介して接続されている。
【0036】
変位測定手段1S及び1Rは、電気式もしくは磁気的な作用により変位を測定するセンサを用いることが好ましい。例えば、電気式では、変位測定手段1S(1R)と導電体2S(2R)間に電界を形成し静電容量の変化から変位を検出する静電容量式変位センサを、磁気式では、変位測定手段1S(1R)と導電体2S(2R)間に磁界を形成しそのインピーダンス変化から変位を検出する渦電流式変位センサなどを用いることが最も好ましい。
【0037】
なお、変位測定手段1S及び1Rとして、光学式変位センサ、例えばレーザビームを照射し変位を測定するレーザ式変位センサなどを用いると、前述した通り、センサ内部の光学部品の熱損傷が発生し、測定精度が悪くなるどころかセンサ自体が故障する可能性が高くなる。このため、光学式センサを使用する場合は、センサ自体の冷却設備を別途設けなければならなくなることから、低コストの測定方法を提供するためには、前述のとおり、電気式もしくは磁気式の変位センサを用いることが最も好ましい。
【0038】
また、変位測定手段1Sに電気式のセンサを用いる場合には変位測定手段1Rも同様の電気式のセンサを用い、変位測定手段1Sに磁気式のセンサを用いる場合には変位測定手段1Rも同様の磁気式のセンサを用いることが、測定能力に対するセンサの機差を最小限にする観点から最も好ましい。更には、変位測定手段1S及び1Rは、同一型式のセンサを用いることが最も好ましい。
【0039】
変位測定手段1S及び1Rは、固定手段6を介して配置されている。なお、図1には、変位測定手段1Rのみ固定手段6を介して配置していることを図示しており、変位測定手段1Sの固体手段は図示しないが、変位測定手段1Sに関しても、変位測定手段1Rの固定手段6と同じ固定手段で固定されている。
【0040】
なお、変位測定手段1S及び1Rの固定手段6は全て同一の固定手段を用いることが、固定手段6自身の熱膨張を考慮する観点から最も好ましい。例えば、ステンレスなどの熱膨張しにくい材料を用い、同一寸法、同一形状の固定手段を用いればよい。全て同一の固定手段を用いることにより、特に線膨張率の小さい材質、例えばインバーやチタンなど高価な材料を用いる必要がなくなり低コストの測定方法が提供できる。
【0041】
変位測定手段1S及び1Rの固定手段6には、変位測定手段1S及び1Rを強化繊維基材3の厚さ方向に移動させる機構を有することが最も好ましい。これは、液状体の注入前に成形型4上に配置される強化繊維基材3の厚さは様々であり、強化繊維基材3の厚さに応じて、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離をほぼ一定になるように設定し、調整する必要があるからである。例えば、図1に示すように固定手段6にマイクロメーターヘッド6Aなどを設置し、マイクロメーターヘッド6Aの先端に変位測定手段1Sまたは1Rを配置することで、マイクロメーターヘッド6Aのつまみを回転させるだけで、変位測定手段1Sまたは1Rを強化繊維基材3の厚さ方向に容易に移動することができる。
【0042】
また、変位測定手段1Sまたは1Rの固定手段6が備えるマイクロメーターヘッド6Aなどの移動機構に関し、マイクロメーターヘッド6A自体も加熱炉5内の加熱により熱膨張が発生し、変位測定手段1Sまたは1Rの変位測定誤差の要因になり得る。このため、同一のマイクロメーターヘッド6Aを有する固定手段6を用いると、後述する差分演算により、マイクロメーターヘッド6A自身の熱膨張及び熱収縮の影響を相対的にキャンセルでき、強化繊維基材3の厚み変化量をより正確に測定することができる点で最も好ましい。
【0043】
この移動機構によって、変位測定手段1Sの先端面と導電体2S、及び変位測定手段1Rの先端面と導電体2Rとの距離をそれぞれ調整することができる。それぞれの距離は、変位測定手段1Sまたは1Rの測定範囲の半分程度とすることが好ましい。例えば、変位測定手段1Sの測定範囲が0〜5mmの場合は、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離が2〜3mmになるように移動機構を調整する。加熱炉5内に設置した固定手段6の全てがほぼ同じ距離になるように調整することが最も好ましい。
【0044】
変位測定手段1Sまたは1Rを固定する固定手段6は、各変位測定手段1Sまたは1Rそれぞれに対して1体ずつ準備することが好ましい。これは、変位測定手段1S及び1Rを用いて強化繊維基材3の厚さ変化量を測定する際、測定したい任意の位置に変位測定手段1Sあるいは1Rを移動させやすくするためである。
【0045】
変位測定手段1Sまたは1Rを固定する固定手段6は、1つの部材上に固定されることが好ましく、特に、図1に示すように成形型4の第1の面41上に固定されることが最も好ましい。成形型4も加熱炉5内の昇温に伴って熱膨張したり、また加熱炉5内の降温に伴って熱収縮したりするため、固定手段6を成形型4の第1の面41上に固定しておくと、成形型4の熱膨張及び熱収縮の影響は変位測定手段1S及び1Rに同一量の変位測定誤差をもたらす。このため、後述する差分演算により、成形型4の熱膨張または熱収縮の影響を相対的にキャンセルでき、強化繊維基材3の厚さ変化量をより正確に測定することができる。
【0046】
導電体2S及び2Rは平板状の電気通電物質であればよく、鉄やアルミに代表される金属であることが最も好ましい。導電体2S及び2Rは、加熱状態における熱膨張の観点から同一厚さであることが好ましく、約2〜10mmの厚さが好適である。更に、同一材質であることが最も好ましい。なお、導電体2S及び2Rは線膨張係数の小さい材質、例えば、インバーやチタンなど高価な材料でもよいが、低コストの測定方法を提供するという観点からはその限りではなく、加工の容易なSUS303、SUS304のようなステンレスが好ましく用いられる。導電体2Sと変位測定手段1Sとの平行度もしくは導電体2Rと変位測定手段1Rとの平行度は、それぞれ3°以内になるように、変位測定手段1Sまたは1Rを配置するのが好ましい。
【0047】
導電体2Sにおいて、変位測定手段1Sとの対向面の面積は、変位測定手段1Sの先端の面積以上であればよく、変位測定手段1Sの先端の面積の1.2倍以上が最も好ましい。同様に、導電体2Rにおいて、変位測定手段1Rとの対向面の面積は、変位測定手段1Rの先端の面積以上であればよく、変位測定手段1Rの先端の面積の1.2倍以上が最も好ましい。
【0048】
また、変位測定手段1Sの先端面の任意の位置から、その先端面に対し法線方向の垂線を考えた場合、各垂線が導電体2Sの変位測定手段1Sとの対向面表面と交差するように、導電体2S及び変位測定手段1Sを配置するのが最も好ましい。同様に、変位測定手段1Rの先端面の任意の位置から、その先端面に対し法線方向の垂線を考えた場合、各垂線が導電体2Rの変位測定手段1Rとの対向面表面と交差するように、導電体2R及び変位測定手段1Rを配置するのが最も好ましい。
【0049】
変位測定手段1Sの先端面と、それに対向する導電体2Sの変位測定手段1Sとの対向面との距離は、任意に設定してもよいが、距離が大きくなるほど測定精度が低下し、また変位測定手段1Sは寸法が大きなものになってしまうため実用上好ましくない。このことから、変位測定手段1Sの先端面と、それに対向する導電体2Sの変位測定手段1Sとの対向面との距離は0.5mm以上10mm以下が好ましい。更に測定精度をより高精度にするためには、強化繊維基材3の厚さの変化量の最大値になるべく近い距離に配置するのが好ましく、0.5mm以上5mm以下に配置するのが最も好ましい。変位測定手段1Rの先端面と、それに対向する導電体2Rの変位測定手段1Rとの対向面との距離に関しても同様である。
【0050】
次に、上記のように構成されたモニタリング装置を用いるにあたり、変位測定手段1Sによって測定される変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離、あるいは変位測定手段1Rによって測定される変位測定手段1Rの先端面と導電体2Rとの距離の演算処理に関する、好ましい実施形態例を図3に従って説明する。
【0051】
図3は処理アンプ内での信号処理フローの概念図を示している。前述の通り、変位測定手段1S及び1Rは、加熱炉5の外に配置された信号処理機能を有する処理アンプ(図示せず)にケーブルを介して接続されており、変位測定手段1S及び1Rから処理アンプ内に入力される電気信号はそれぞれ、処理アンプ内で信号増幅処理などの入力処理が施され、処理アンプから電圧出力信号Voutとして出力される。
【0052】
例えば、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離がdA0の場合、処理アンプからの出力電圧VoutはVa0となる。これは、理想的には、図3中の破線3Aに示すように、実距離dと出力電圧の間には、Vout=k*d+α(k:定数、α:定数)なる直線関係が成立することが好ましいものの、実際にはこの直線関係は成立せず、例えば図3中の実線3Bで示すように、直線関係が成り立たない場合が多い(これを直線性エラーという)。そこで、処理アンプの内部で直線補正処理(演算処理1)を施す。
【0053】
具体的には、例えば図3に示すように、変位測定手段の先端面と導電体間の距離がdA0の場合、出力電圧Vout=Va0であるが、この出力電圧Va0を、VA0=k*dA0から算出される出力電圧VA0に変換して、Voutとして出力するものである。次に、演算処理2として差分演算処理が行われる。これに関しても、図3に従って説明する。前述のように、演算処理1によって補正処理が行われた出力電圧Voutと、変位測定手段の先端面と導電体との距離dとの間には、図3中の実線3Cに示すように直線関係が成立する。ここで、同一時刻において、変位測定手段1Sから入力され演算処理1された後の出力電圧をVA1、変位測定手段1Rから入力され演算処理1された後の出力電圧をVBとすると、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離、及び、変位測定手段1Rの先端面と導電体2Rとの距離は、それぞれ、dA1、dBと認識される。その後、同一時間経過後の同一時刻において、変位測定手段1Sから入力され演算処理1された後の出力電圧をVA1’、変位測定手段1Rから入力され演算処理1された後の出力電圧をVB’とすると、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離、及び、変位測定手段1Rの先端面と導電体2Rとの距離は、それぞれ、dA1’、dB’と認識される。
【0054】
これらのことから、同一時間経過時の、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離の変化量ΔdA1=dA1’−dA1、変位測定手段1Rの先端面と導電体2Rとの距離の変化量ΔdB=dB’−dBと表され、前記両結果の差分値Δd1=ΔdA1−ΔdBなる演算処理2(差分演算処理)を実施する。このようにして得られた差分値Δd1を強化繊維基材3の厚さの変化量とする。
【0055】
なお、前述したとおり、実際の測定においては液状体を注入する前に、更に好ましくは加熱炉の昇温を開始する前に、変位測定手段1Sから入力され演算処理1された後の出力電圧VA1と変位測定手段1Rから入力され演算処理1された後の出力電圧VBとを、言い換えると、変位測定手段1Sの先端と導電体2Sとの距離dA1と変位測定手段1Rの先端と導電体2Rとの距離dBとを、マイクロメーターヘッド6Aを用いて同一に調整すれば、すなわち、dA1=dBとなるように調整すれば、強化繊維基材3の厚さの変化量Δd1=dA1’−dB’となり、演算処理2が簡素化され、最も好ましい。
【0056】
前述のような演算処理2(差分演算処理)により、以下の(a)〜(d)の効果がある。
(a)変位測定手段1S及び1Rの各固定手段6の熱膨張あるいは熱収縮の影響を軽減できる。
(b)変位測定手段1S及び1Rの温度特性の影響を軽減できる。
(c)導電体2S及び2Rの熱膨張あるいは熱収縮の影響を軽減できる。
(d)成形型4の熱膨張あるいは熱収縮の影響を軽減できる。
なお、前記(d)に関しては、変位測定手段1Sまたは1Rの各固定手段6を、前述のように成形型4の第1の面41上に配置した場合は、成形型4の熱膨張による成形型4の厚み方向の変形により、固定手段6を介して変位測定手段1Sまたは1Rもその変形に追従して強化繊維基材3の厚み方向に動くと同時に、強化繊維基材3、ならびに導電体2S及び2R自体も強化繊維基材3の厚み方向に動くため、相対的には成形型4の熱膨張の影響を受けにくくなり、成形型4の熱膨張あるいは熱収縮の影響に対する大きな効果はない。しかし、どうしても固定手段6を成形型4の第1の面41上に配置スペースの問題で配置ができず、他の1つの部材上に固定を余儀なくされる場合などは、前記差分処理を施すことにより、成形型4の厚さ方向の変位をキャンセルできるため、成形型4の熱膨張あるいは熱収縮の影響に対する効果が大きい。
【0057】
なお、前述した演算処理1(直線補正処理)及び演算処理2(差分演算処理)は、1つの処理アンプ内で実施してもよいし、個別の演算器、例えばパソコンなどを用いてそれぞれの演算処理をしても良い。このように差分処理によって得られた値を結果出力処理する。
【0058】
結果出力処理とは、以下の操作を繰り返しながら算出処理することを言う。
(a)例えば図4に示すように、導電体2Sを配置した箇所の強化繊維基材3の絶対厚さを事前にマイクロメータなどの厚さ測定器具で測定しておく(絶対厚み測定値T0)。
(b)図5に示すように、変位測定手段1Sあるいは1Rを、各固定手段6を介して配置し、導電体2S、2Rを配置し、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離をdA1、変位測定手段1Rの先端面と導電体2Rとの距離をdBになるようにマイクロメータなどの移動機構6Aを用いてそれぞれ調整する。
(c)その後、図6に示す(固定手段6は図示しない)ように、ある時間経過後に、例えば、強化繊維基材3の厚さが変化(増加)した際の、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離をdA1’、変位測定手段1Rの先端面と導電体2Rとの距離をdB’とした際に、前述の差分演算処理によって得られた値Δd1=(dA1’−dA1)−(dB’−dB)をもとに、強化繊維基材3の厚さTを、T=T0−Δd1なる演算式で算出する。
【0059】
結果出力処理には、各種データの保存、画面表示、印刷などを併せて処理することも含むことができる。
【0060】
以上のような構成及び調整を経た後、変位測定手段1Sあるいは1R、導電体2Sあるいは2R、固定手段6を配置した状態で、前述の演算処理を用いて、強化繊維基材3の成形状況の連続モニタリングを開始するとともに、加熱炉5内の昇温を開始し、所定の炉内温度、もしくは、強化繊維基材3の表面温度が所定の温度になるまで昇温を継続する。
【0061】
この間、加熱炉5内の昇温に伴って、変位測定手段1Sあるいは1R、及び導電体2Sあるいは2R、固定手段6、強化繊維基材3、成形型4のそれぞれにおいて、主に熱膨張による変形が発生する。そのような状況下において、変位測定手段1Sは導電体2Sとの距離を時間的に連続的に測定し、また、変位測定手段1Rも導電体2Rとの距離を時間的に連続的に測定すると同時に、処理アンプにて前述の演算処理1や演算処理2、結果出力処理を実施することにより、温度変化の影響をキャンセルした上で、強化繊維基材3のみの厚さTをT=T0−Δd1の演算により正確に測定することができる。
【0062】
加熱炉5内が所定の温度に到達し、かつ所定の経過時間後に、強化繊維基材3の内部に液状体が注入される。すると、図1のハッチング部分11に示す液状体の含浸が図1中の含浸方向Dに従って進行する。図1は液状体の含浸途中の模式図を示し、液状体の含浸途中を示す未含浸部12が存在するが、液状体の含浸が完了すると未含浸部12はなくなる。
【0063】
この液体状の含浸過程において、注入された液状体の影響で強化繊維基材3の厚さは増加し、それに伴って、強化繊維基材3の第1の面上の導電体2Sも変位測定手段1Sの先端面に近付いていく状態となり、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離dA1が小さくなる。この過程でも、変位測定手段1Sあるいは1R、及び導電体2Sあるいは2R、固定手段6、強化繊維基材3、成形型4のそれぞれにおいて、主に熱膨張による変形は発生しているが、演算処理1、演算処理2及び結果出力処理を実施することにより、昇温による温度変化の影響をキャンセルした上で、正確に、液状体が含浸された強化繊維基材3のみの厚さTをT=T0−Δd1の演算により測定できる。
【0064】
また、液状体が強化繊維基材3に含浸しきった後に、液状体の注入を止めた後、ブリードと呼ばれる余剰液状体の排出作業を行う。その過程では、余剰液状体が強化繊維基材3から排出されるため、強化繊維基材3の厚みは減少し、それに伴って、強化繊維基材3の第1の面上の導電体2Sも変位測定手段1Sの先端面から離れていく状態となり、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離dA1は、ブリード作業開始直前に比べて増加する。
【0065】
この過程でも、変位測定手段1Sあるいは1R、及び導電体2Sあるいは2R、固定手段6、強化繊維基材3、成形型4のそれぞれにおいて、主に熱膨張による変形は発生しているが、演算処理1、演算処理2及び結果出力処理を実施することにより、昇温による温度変化の影響をキャンセルした上で、液状体が含浸された強化繊維基材3のみの厚さTをT=T0−Δd1の演算により正確に測定できる。
【0066】
その後、ブリードと呼ばれる余剰液状体の排出を停止し、強化繊維基材3内に含浸された液状体の注入量を維持した状態で、更に加熱炉5の温度を更に所定の温度まで上昇し、強化繊維基材3内に含浸された液状体を熱硬化させる過程となる。この過程においては、強化繊維基材3内に含浸された液状体が熱収縮するため、液状体が含浸された強化繊維基材3の厚さは減少する。それに伴って、強化繊維基材3の第1の面上の導電体2Sも変位測定手段1Sの先端面から離れていく状態となり、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離dA1が大きくなる。
【0067】
この過程でも、加熱炉5内の昇温に伴って、変位測定手段1Sあるいは1R、及び導電体2Sあるいは2R、固定手段6、強化繊維基材3、成形型4のそれぞれにおいては、主に熱膨張による変形が発生するが、演算処理1、演算処理2及び結果出力処理を実施することにより、昇温による温度変化の影響をキャンセルした上で、正確に、液状体が含浸された強化繊維基材3のみの厚さTをT=T0−Δd1の演算により測定できる。
【0068】
加熱炉5の温度を更に所定の温度まで上昇させた後、所定の時間経過すると、強化繊維基材3内に含浸された液状体の熱硬化が完了する。その後、加熱炉5内を常温まで降温する過程を経て、繊維強化プラスチックの成形が完了する。
【0069】
この過程においても加熱炉5内の温度は徐々に低下している状態であり、それに従って、変位測定手段1Sあるいは1R、及び導電体2Sあるいは2R、固定手段6、強化繊維基材3、成形型4のそれぞれにおいては、これまでの熱膨張による変形が緩和していく。しかし、演算処理1、演算処理2及び結果出力処理を実施することにより、降温による温度変化の影響をキャンセルした上で、正確に、液状体が含浸された強化繊維基材3のみの厚さTをT=T0−Δd1の演算により測定できる。加熱炉5の温度が常温になり、出来上がった繊維強化プラスチックを加熱炉5から取り出す前に、強化繊維基材3の成形状況のモニタリングを終了させる。
【0070】
以上のような全ての過程において、本発明による成形状況のモニタリング方法を用いると、時間的に連続的に、強化繊維基材3の厚さをモニタリングすることができる。さらに、前記全ての過程において成形途中の異常の早期発見にもつながり、更にモニタリングした値をもとに各過程の移行を制御することにより、設計値どおりの厚さの繊維強化プラスチックの製造が可能となる。
【0071】
図2は、変位測定手段として、非接触方式の変位センサを用いた本発明にかかる繊維強化プラスチックの成形状況のモニタリング方法の他の一実施形態を模式的に表す側面図である。図2に示すように、変位測定手段1S及び導電体2Sを強化繊維基材3の厚さを測定したい位置に複数(図2は変位測定手段1S及び導電体2Sを3組配置した場合の例を示す)配置し、前述の演算処理1、演算処理2及び結果出力処理を実施することにより、複数の位置における強化繊維基材3の厚さ測定を同時に実施すことも可能である。
【実施例】
【0072】
[実施例1]
図1に示すように、FRP構造体製造工程において、300mm×300mmの寸法の厚さ5mmの鉄製の平板状の成形型4を、加熱炉5内に設置した。この鉄製の成形型4の第1の面41上に離型処理を施し、その上に、150mm×150mmの強化繊維に炭素繊維を用いた150mm×150mmの平板状の強化繊維基材3を配置した。この強化繊維基材3は疑似等方積層の構成で、24枚の炭素繊維織物(東レ(株)製CZ8431DP、T800の一方向織物)を積層したものである。ちなみに、この強化繊維基材3の厚さT0を成形型4上に配置前にマイクロメータ(ミツトヨ株式会社 型式:OMC−150MJ)を用いて測定した結果、20.642mmであった。
【0073】
強化繊維基材3の上に、強化繊維基材3を密閉するようにバギングフィルムを被せた。なお、図面では省略しているが、離型布や樹脂拡散媒体、加圧用金属プレートを、強化繊維基材3と成形型4との間、あるいは強化繊維基材3とバギングフィルムとの間に挟みこんだ。バギングフィルムに覆われた強化繊維基材3等を含む密閉空間の圧力をポンプにて減圧した後、導電体2Sを強化繊維基材3の第1の面31上に、バギングファイルムを介して配置し、それに対向する様に変位測定手段1Sを配置した。また成形型4の第1の面41上にバギングフィルムを介して導電体2Rを配置し、それに対向する様に変位測定手段1Rを配置した。
【0074】
変位測定手段1Sと1Rとは、図1の左右の方向に約100mm離して配置した。変位測定手段1S及び1Rの固定手段6は、それぞれ成形型4の第1の面41上に設置した。固定手段6としてはマグネットスタンド(KANETEC株式会社 型式:MB−B)を用いた。マグネットスタンドを構成する各金属棒の接続箇所は全て溶接した。
【0075】
導電体2S及び2Rは、ともに厚さ3mm、30mm×30mmの寸法の平板状の金属板を用いた。金属板の材質はSUS303とした。また、変位測定手段1S及び1Rとして、静電容量型変位センサ(ナノテックス株式会社 200℃耐熱静電プローブ 中芯電極径φ=11mm、測定範囲:0〜5000ミクロン)を用いた。
【0076】
変位測定手段1S及び1Rは、それぞれ処理アンプ(ナノテックス株式会社 型式:PS−III−2D)に約10mの高周波同軸ケーブルを介して、それぞれチャネル1、チャネル2の信号入力端子に接続した。また、導電体2S及び2Rも、それぞれ約10mの耐熱被覆ケーブル(断面積0.75mm2)にて、チャネル1及びチャネル2のグランド端子(GND端子)に接続した。
【0077】
処理アンプから各チャネルのモニタ出力信号(アナログ電圧出力信号)を取り出した。各チャネルのモニタ出力信号は、変位測定手段と導電体との距離が0〜5000(ミクロン)の変化に対して、0〜10(V)と変化する電圧信号が出力するように設定した。但し、出力電圧信号において、約0〜+2%の直線性(つまり、実際の距離に対して、最大100ミクロン大きめに出力される)の精度しかない。
【0078】
それぞれのモニタ出力信号をアナログコントローラ(キーエンス株式会社 型式:RD−50R)の入力信号端子に対し、約50cmの長さの高周波同軸ケーブルにて1対1で接続した。各アナログコントローラでは、処理アンプからの入力信号を予め設定した値に演算するリニアライズ機能を有している。これにより、処理アンプからの出力電圧信号において、約0〜+2%の直線性を、リニアライズ機能によって約0〜+0.2%の直線性(つまり、実際の距離に対して、最大10ミクロンしか大きめに出力されない)の精度に改善できることが確認できた。
【0079】
アナログコントローラにてリニアライズした信号を各アナログコントローラの出力端子から取り出し、記録装置(以降、データロガーと記載する。キーエンス株式会社 型式:NR−1000)のチャネル1に処理アンプのチャネル1側(変位測定手段1S側)の信号が入力されるアナログコントローラからの出力信号を取り込んだ。また、データロガーのチャネル2に処理アンプのチャネル2側(変位測定手段1R側)の信号が入力されるアナログコントローラからの出力信号を取り込み、10秒周期で各アナログコントローラからの入力信号を記録する構成とした。
【0080】
その後、各固定手段6に取り付けた移動機構6Aを用い、変位測定手段1Sの先端と導電体2Sとの距離dA1、及び、変位測定手段1Rの先端と導電体2Rとの距離dBを、それぞれ約2500ミクロンに近づけるべく、各アナログコントローラの前面の電圧表示を見ながら、各アナログコントローラの電圧表示が、5.000±0.010(V)になるように移動機構6Aを調整した。移動機構6Aとしては、どちらもマイクロメーターヘッド(ミツトヨ株式会社 型式:MHK−15)を用いた。
【0081】
以上のような各機器の配置、及び、調整を経た後に、加熱炉5内を約20℃から約70℃に加熱を開始すると同時に、データロガーによる記録による強化繊維基材3の厚さ変化量のモニタリングを開始した。その後、加熱炉5内の温度が約70℃に到達してから一定時間保持し、加熱炉5内の温度を約70℃のままで図1における強化繊維基材3の左から、マトリックス樹脂(液状体)を左側から右側へ、つまり含浸方向Dに従って流動するように注入開始した。マトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂組成物を用いた。
【0082】
一定時間経過後、マトリックス樹脂注入を止め、ブリード作業を実施し、注入したマトリックス樹脂の一部を排出した。その後、加熱炉5内の温度を約70℃から約130℃に昇温し、加熱炉5内の温度が約130℃の状態を一定時間保持して、注入されたマトリックス樹脂を熱硬化した。その後、加熱炉5内を約40℃にまで降温した後、データロガーの記録を停止し、モニタリングを終了した。
【0083】
なお、一連のモニタリングに併せて、モニタリング開始直前、樹脂注入直前、ブリード開始直前、70℃から130℃への昇温直前、降温完了後のモニタリング停止直前のタイミングで、前記マイクロメータ(ミツトヨ株式会社 型式:OMC−150MJ)を用いて強化繊維基材3の厚さを測定した。モニタリング開始直前の厚さと各タイミングでマイクロメータ測定によって得られる厚さとの差と、データロガーのチャネル1のモニタリング結果(結果出力演算結果)とを突き合わせることにより、厚さ測定精度の評価を実施した結果を表1に示す。この結果から、液状体の含浸、熱硬化などの一連の成形過程における強化繊維基材3の厚さ状況(厚さ変化量)を精度よく、具体的には、マイクロメータ測定値ΔTrefに比べて、最大30ミクロンの誤差でモニタリングすることができた。
【0084】
【表1】
【0085】
[実施例2]
実施例1と同じ構成、条件にてモニタリングを実施し、データロガーのチャネル1とチャネル2に同一時刻に記録された各変位測定値の差分演算処理を別途準備したパソコンで実施した。実施例1と同様に、一連のモニタリングに併せて、モニタリング開始直前、樹脂注入直前、ブリード開始直前、70℃から130℃への昇温直前、降温完了後のモニタリング停止直前のタイミングで、前記マイクロメータ(ミツトヨ株式会社 型式:OMC−150MJ)を用いて強化繊維基材3の厚さを測定し、モニタリング開始直前の厚さと各タイミングでマイクロメータ測定によって得られる厚さとの差との突合せ評価を行った。結果を表2に示す。
【0086】
この結果から、差分処理を行うことにより、液状体の含浸、熱硬化などの一連の成形過程における強化繊維基材3の厚さ状況(厚さ変化量)を、加熱炉5内の温度変化による影響を軽減し、更に精度良く、具体的には、マイクロメータ測定値ΔTrefに比べて最大17ミクロンの誤差でモニタリングすることができた。
【0087】
【表2】
【0088】
[実施例3]
実施例2と同じ構成、条件にてモニタリングを実施し、データロガーのチャネル1とチャネル2に同一時刻に記録された各変位測定値の差分演算処理を別途準備したパソコンで実施した。更に、実施例1と同様に、モニタリング開始直前に、前記マイクロメータ(ミツトヨ株式会社 型式:OMC−150MJ)を用いて、強化繊維基材3の厚さを測定した結果T0を用いて、前記別途準備したパソコンでの演算で得られた差分演算結果Δd1から、強化繊維基材3の厚さT=T0−Δd1なる演算を別途準備したパソコンで実施した。その結果を、樹脂注入直前、ブリード開始直前、70℃から130℃への昇温直前、降温完了後のモニタリング停止直前のタイミングで、前記マイクロメータ(ミツトヨ株式会社 型式:OMC−150MJ)を用いて測定した強化繊維基材3の厚さ測定結果との突合せ評価を行った。結果を表3に示す。
【0089】
この結果から、液状体の含浸、熱硬化などの一連の成形過程における強化繊維基材3の絶対厚さ量を、加熱炉5内の温度変化による影響を軽減し、更に精度良くモニタリングすることができた。
【0090】
【表3】
【0091】
[参考例1](変位測定手段、固定手段の個体間差と温度影響の確認テスト)
図7に示すように、強化繊維基材3を成形型4上に配置せず、導電体2Sを直接成形型4の第1の面41上に配置し、変位測定手段1Sと変位測定手段1Rの左右の方向の距離を30mmになるように配置した以外は、実施例1と同じ構成、及び条件で、データロガーのチャネル1、2で記録される変位データを測定した。測定結果を表4に示す。
【0092】
この結果から、加熱炉5内の温度変化に関わらず、データロガーのチャネル1とチャネル2の測定値の差Δd1の絶対値は5ミクロン以内であり、変位測定手段1Sと変位測定手段1Rの測定能力における個体間差、及び各固定手段6の熱膨張の個体間差は極めて小さいことを確認できた。
【0093】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0094】
上述した本発明の繊維強化プラスチックの成形状況のモニタリング装置、及びモニタリング方法は、加熱炉内において、強化繊維基材に液状の樹脂を含浸させた後、樹脂を硬化させるFRP構造体の製造方法に好ましく適用されるが、適用対象としてはこれに限定されず、たとえば、加熱炉内に配置された測定対象物の熱膨張量のモニタリングにおいても好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明にかかわる変位測定手段1Sと変位測定手段1Rを用いた繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法の一実施形態を模式的に表す側面図である。
【図2】本発明にかかわる変位測定手段1Sを複数個と変位測定手段1Rを用いた繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法の一実施形態を模式的に表す側面図である。
【図3】本発明にかかわる変位測定手段1Sと変位測定手段1Rとの測定値の演算方法に関する一実施形態を示す処理フロー図である。
【図4】繊維強化基材3の初期厚さの測定に関するイメージを表す図である。
【図5】加熱炉を昇温前の、変位測定手段他の配置構成のイメージを表す図である。
【図6】加熱炉を昇温開始後の、変位測定手段他の配置構成のイメージを表す図である。
【図7】強化繊維基材3を成形型4上に配置しない状態での、各変位測定手段を用いて測定、演算処理を行う評価構成を表すイメージ図である。
【符号の説明】
【0096】
1S 変位測定手段
1R 変位測定手段
2S 変位測定手段1Sに対向する導電体
2R 変位測定手段1Rに対向する導電体
3 強化繊維基材
31 強化繊維基材3の第1の面
32 強化繊維基材3の第2の面
4 成形型
41 成形型4の第1の面
5 加熱炉
6 変位測定手段の固定手段
6A 変位測定手段の移動機構
11 液状体
12 液状体11の未含浸部
D 液状体11の含浸方向
d 変位測定手段の先端と導電体表面との距離
Vout 処理アンプ出力電圧
3A 距離dと出力電圧Voutとの理想の直線
3B 距離dと出力電圧Voutとの実際の相関を表す曲線
3C 距離dと出力電圧Voutとの相関を表す直線
dA0 変位測定手段の先端と導電体表面とのある距離
Va0 距離dA0に相当する補正演算前の処理アンプ出力電圧
VA0 距離dA0に相当する補正演算後の処理アンプ出力電圧
dA1 モニタリング開始前の変位測定手段1Sの先端と導電体2Sの距離
dA1’ モニタリング開始後t秒経過後の変位測定手段1Sの先端と導電体2Sの距離
dB モニタリング開始前の変位測定手段1Rの先端と導電体2Rの距離
dB’ モニタリング開始後t秒経過後の変位測定手段1Rの先端と導電体2Rの距離
VA1 変位測定手段1Sの先端と導電体2Sの距離がdA1の時の演算処理1後の出力電圧
VA1’ 変位測定手段1Sの先端と導電体2Sの距離がdA1’の時の演算処理1後の出力電圧
VB 変位測定手段1Rの先端と導電体2Rの距離がdBの時の演算処理1後の出力電圧
VB’ 変位測定手段1Rの先端と導電体2Rの距離がdB’の時の演算処理1後の出力電圧
ΔdA1 dA1’とdA1との差
ΔdB dB’とdBとの差
Δd1 ΔdA1とΔdBとの演算処理2(差分演算処理)の結果
T 本発明によるモニタリング方法を用いて測定した強化繊維基材3の絶対厚さ
T0 加熱炉5の昇温前に測定される強化繊維基材3の初期絶対厚さ
Tref マイクロメータによる強化繊維基材3の厚さ測定値
ΔTref マイクロメータ測定による強化繊維基材3の厚さ変化量
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化プラスチックの成形状況、特に加熱炉内における、液体状の含浸、及び、熱硬化状況に応じた繊維強化プラスチックの連続厚さモニタリング装置およびモニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やガラス繊維を強化繊維として用いた炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(以下、GFRP)に代表される繊維強化プラスチック(以下、FRP)は軽量でかつ高い耐久性を有するため、自動車や航空機などの各種構成部材として適用されている。
【0003】
これらFRPの代表的な製造方法としては、プリプレグを用いたオートクレーブ成形法が知られている。かかる成形法では、強化繊維にマトリックス樹脂を予め含浸させたプリプレグと呼ばれる中間基材を成形型上に積み重ねた後、フィルム材料で真空シールしてオートクレーブ中で加熱・加圧して複合材料を成形する。しかしながら、プリプレグに含浸されているマトリックス樹脂は硬化剤を含有した熱硬化性樹脂であるため硬化反応が徐々に進行してしまい、使用できる時間が短く、冷凍保管設備が必要となることから、熱硬化性樹脂のマトリックス樹脂を使用するには制約があった。
【0004】
そこで、近年では従来のプリプレグを用いたオートクレーブ成形より容易に成形できる方法として、RTM成形方法が注目されている。Resin Transfer Molding(以下、RTM)成形方法とは、強化繊維基材(あらかじめ賦形した強化繊維シートの積層体)を型に配置した状態で加熱炉内に投入した後、強化繊維基材にマトリックス樹脂を注入し、加熱によりマトリックス樹脂を硬化させる方法である。このRTM成形方法では、マトリックス樹脂の注入直前に、主剤である樹脂と硬化剤を混合させれば良く、硬化反応の進行を懸念する必要がない。また、マトリックス樹脂を主剤である樹脂と硬化剤に分けて常温で保管可能なため、大がかりな冷凍保管設備は不要である。また、成形時にオートクレーブ等の大型設備も必要としないといった利点もある。
【0005】
一方、RTM成形方法はプリプレグを用いたオートクレーブ成形に比べると、特にマトリックス樹脂の注入工程において、強化繊維基材を含む成形部材の厚さ変化量が大きくなりやすい。このため、前記成形部材全体の厚さ変化量に相当するマトリックス樹脂の注入量を把握し、成形部材全体の厚さが目標となる厚さになった時点でマトリックス樹脂注入を停止し、注入されたマトリックス樹脂を硬化させる必要がある。しかし、加熱炉内でのマトリックス樹脂の注入工程、及び硬化工程において、目視等ではマトリックス樹脂が含浸した成形部材の厚さを把握できづらい。その結果、加熱炉内でのマトリックス樹脂の注入工程、及び硬化工程における成形部材が設計値と異なる厚さになったとしても、マトリックス樹脂の硬化および成形部材の脱型が終わるまでは確認することができないため、成形部材の一部に厚さ不良が生じて製品全部が無駄になるといったことを未然に防げない問題もある。
【0006】
特に、航空機の翼の成形のように大量に材料を用いて時間をかけて含浸を行うような成形工程では、厚さ不良による製造ロスは大きなものになる。このような理由から、加熱炉内において成形部材の厚さの変化量を連続的に測定し、マトリックス樹脂の注入、及び硬化によって経時的に変化する成形部材の厚さの変化量を常時把握することは非常に重要である。
【0007】
測定対象物の厚さを温度変化の影響を受けずに正確に測定する方法として、加熱雰囲気内に熱膨張の小さい(温度変化に対する変形の小さい)基準となる試料と、厚さ変化量を測定したい試料とを配置し、差動トランスに接続された2つの検出棒を前記各試料にそれぞれ接触させ、各検出棒の変位の差をもとに、測定したい試料の厚さを測定する方法が知られている(特許文献1)。
【0008】
この測定方法では、2つの検出棒自体の温度変化に対する変形が差動トランスを用いることで相殺される工夫がなされており、測定したい試料の厚さを正確に測定することができる。
【0009】
しかし、この方法では、温度変化に対する変形の小さい基準となる試料を配置することが必要であるため、測定操作上の試料準備が複雑になる。また、検出棒を測定対象物に接触させる必要があるため、測定対象物に損傷を与えるという問題がある。更に、差動トランスを用いた測定構成であることから、基準となる試料と測定したい試料との配置に関し、その距離に制約が発生し、任意のポイントの測定が困難であった。
【0010】
また、測定対象物の厚さを温度変化の影響を受けずに正確に測定する別の方法としては、レーザビームを用いた1つの変位センサを走査し、厚さを測定したい試料とリファレンスとなる試料との高さ(厚さ)とを、各試料と非接触の状態で測定し、それぞれの測定値の差を演算することで、各試料の温度変化に対する変形の影響を除去し、正確に測定対象物の厚さを測定する方法が知られている(特許文献2)。
【0011】
この方法によると、測定対象物と非接触の測定であるため測定対象物への損傷はないものの、測定対象物と同一素材かつ同一肉厚のリファレンス試料の配置が必要であるため、測定操作上の試料準備が複雑になる。また、レーザビームを発する変位センサにおいては、センサ内部の光学部品、例えばレンズなどの耐熱温度がせいぜい40℃程度までのため、それ以上の温度に加熱された環境の場合は測定できないという問題があった。
【0012】
また、測定対象物の厚さを温度変化の影響を受けずに正確に測定する別の方法としては、レーザ光源を室温雰囲気に配置し、加熱雰囲気に配置されたビームスプリッタによりレーザビームを分光し、基準位置及び測定対象位置から反射されたレーザビームの干渉縞を用いて測定対象物の変位を測定する方法が知られている(特許文献3)。
【0013】
この方法では、レーザ光源は室温雰囲気に配置されているため光学部品の耐熱性の点では問題なく、非接触の測定構成であるため測定対象物への損傷もない。しかし、加熱雰囲気内で反射されたレーザビームが室温雰囲気に配置された受光素子に入光する際、空気温度の違いによる屈折率の変化の影響を受けるため、正確に測定対象物の変位を測定することが出来なかった。
【0014】
以上のように、加熱雰囲気において温度変化の影響を受けずに、測定対象物に損傷なく、容易に、かつ、正確に測定対象物の厚さを測定する技術は存在しなかった。
【特許文献1】特許第2759770号公報
【特許文献2】特開2001−289619号公報
【特許文献3】特開2003−302358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来技術によるモニタリング方法を用いて、成形中の部材の厚さの変化を測定する場合、温度変化による厚さ変化量の測定値への影響が避けられないこと、成形中の部材に対し損傷を与えること、温度変化に対し変形の少ない基準となる試料の準備が必要となり煩雑であること、測定できるポイントに制約があることから、温度変化を有する加熱炉内での成形中部材の厚さを正確に、かつ、容易に測定することができない。
【0016】
本発明の目的は、かかる問題点を解決すること、すなわち、FRPの成形において、成形中の部材の成形状況、特に成形中の部材の厚さを、温度変化の影響を受けずに連続的にモニタリングし、設計値どおりの厚さを有する良好な成形体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記目的を達成するために、次のいずれかの構成を有する。
(1)加熱炉の内部に、成形型と、導電体および前記導電体と非接触で対向する変位測定手段からなる複数組の測定手段とを備え、前記変位測定手段からの信号を処理する演算処理手段を備えたことを特徴とする、繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
(2)前記成形型上に強化繊維基材が配置され、前記成形型上に少なくとも1組の前記測定手段を配置するとともに、前記強化繊維基材上にも少なくとも1組の前記測定手段を配置したことを特徴とする、(1)に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
(3)前記変位測定手段は、電気的または磁気的手段によって測定することを特徴とする、(1)または(2)のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
(4)前記測定手段を構成する変位測定手段は、固定手段を介して固定されていることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
(5)前記変位測定手段を固定する前記固定手段が、1つの固定部材にまとめて固定されていることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
(6)加熱炉内に設けられた成形型上に配置した強化繊維基材に対して、
前記強化繊維基材の第1の面上に導電体を配置し、前記導電体に非接触で対向するように第1の変位測定手段を前記加熱炉内に配置するとともに、
前記強化繊維基材の第2の面に接する前記成形型の第1の面上に導電体を配置し、前記導電体と非接触で対向するように第2の変位測定手段を前記加熱炉内に配置して、
前記第1の変位測定手段を用いて前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量を測定するとともに、前記第2の変位測定手段を用いて前記成形型の厚さ方向の変位量を測定することを特徴とする、繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
(7)前記第1の変位測定手段から得られる変位量と、前記第2の変位測定手段から得られる変位量とを前記演算処理手段で補正処理し、前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量とすることを特徴とする、(6)に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
(8)前記第1の変位測定手段から得られる変位量と、前記第2の変位測定手段から得られる変位量との差を前記演算処理手段で演算し、前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量とすることを特徴とする、(6)に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
(9)前記第1の変位測定手段から得られる変位量の値と、前記第2の変位測定手段から得られる変位量の値は、前記演算処理手段で補正処理した後、前記補正処理後のそれぞれの変位量の差を前記演算処理手段で演算することを特徴とする、(6)に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
(10)前記各第1の変位測定手段とそれに対向して配置された前記導電体との距離と、前記第2の変位測定手段とそれに対向して配置された前記導電体との距離とを前記加熱炉の加熱前に同じ距離に調整する工程を経た後、前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量もしくは前記成形型の厚さ方向の変位量の測定を開始する工程を有することを特徴とする、(6)〜(9)のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
(11)前記加熱炉を加熱する前に前記強化繊維基材の厚さを予め測定する工程を有し、前記厚さ測定値と、前記加熱炉の加熱中及び加熱完了後に得られる前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量から前記強化繊維基材の厚さを前記演算処理手段で演算することを特徴とする、(6)〜(10)のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
(12)強化繊維基材に液状体を含浸させる繊維強化プラスチックの製造方法であって、(6)〜(11)のいずれかに記載の成形状況モニタリング方法を用いて含浸工程、硬化工程が制御されてなることを特徴とする繊維強化プラスチックの製造方法。
【0018】
本発明において「成形型」とは、閉空間(成形キャビティ)を形成する成形型であれば、通常のRTM成形に用いられる複数の型を組み合わせて閉空間(成形キャビティ)を形成するものでも良いし、下型上に強化繊維基材を配置しシール材とフィルムで閉空間(成形キャビティ)を形成するフィルム材料による成形型でもよい。閉空間を形成するための被覆フィルム(バギングフィルム)の材料としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが耐熱性の観点から好ましい。本発明は、かかる閉空間内に配置した強化繊維基材に液状体を含浸、及び、硬化させる工程に適用するものである。
【0019】
本発明において「強化繊維基材」とは、強化繊維の織物、編み物、組み物、強化繊維の短繊維を抄紙等したもの等の強化繊維布帛を積層したものや強化繊維を3軸織物とした強化繊維がある厚さを持った集合体をいう。また、強化繊維基材に含まれる強化繊維は、通常数千〜数万本の単繊維の集合した繊維束である。
【0020】
なお、本発明が対象とする強化繊維基材の形状は、少なくとも一部に板状部を有するものであれば良い。強化繊維基材の全てが板状であっても良いが、液状体を含浸し、成形状況をモニタリングする部位が板状であれば良い。強化繊維基材は、強化繊維材の積層体または単体のものであり、曲面、多角面または凹凸を持った面であってもよい。本発明において、「強化繊維基材の第1の面」とは、成形型に直接接触している強化繊維基材面と反対側の表面のことをいい、「強化繊維基材の第2の面」とは、成形型に直接接触している強化繊維基材面の表面のことをいう。
【0021】
本発明における「強化繊維」は、炭素繊維及びガラス繊維、アラミド繊維などの高強度、高弾性率繊維を用いることが出来る。
【0022】
本発明において、「成形型の第1の面」とは、強化繊維基材の第2の面と直接接触している表面のことをいう。
【0023】
本発明において、「変位測定手段」とは、変位測定用のセンサヘッドのことをいい、「第1の変位測定手段」とは、強化繊維基材上に配置された導電体と非接触で対向して配置されたセンサヘッドをいい、「第2の変位測定手段」とは、成形型上に配置された導電体と非接触で対向して配置されたセンサヘッドをいう。本発明において、「導電体」とは、変位測定手段を含む閉ループ回路において、そのグラウンド(GND)との抵抗値が4kΩ以下である電気通電性物体のことをいう。また、導電体は接地されていることが電気ノイズの影響を受けにくいという点で好ましい。
【0024】
本発明において、「測定手段」とは、前記「導電体」、及び、導電体と非接触で対向する「変位測定手段」との対をもって定義する。
【0025】
本発明において、「強化繊維基材の第1の面上に導電体を配置」するとは、導電体を直接強化繊維基材の第1の面に接触する形で配置すること以外にも、導電体と強化繊維基材の第1の面の間にバギングフィルムや金属部材などを介して配置されることも含む。
【0026】
本発明において、「加熱炉」とは、空気の摂氏温度が5℃以上200℃以下の範囲において、40℃以上の温度操作がなされる空間を備えた加熱炉のことをいう。加熱する手段としては加熱空気を循環し、加熱炉内の温度が設定値になるように空気を加熱するヒーター出力を制御し、加熱空気を媒体とする温風加熱方式や、熱媒により加熱された成形型から直接、加熱対象物に熱エネルギーを供給し加熱する熱媒加熱方式、電気コイルを加熱対象物に近接し、加熱対象物表面に得られる誘導電流(渦電流)によって加熱する誘導加熱方式等があり、本発明においては特に制限するものではないものの、成形型及び強化繊維基材の設置の容易さなどの観点から温風加熱方式が好ましく利用できる。
【0027】
本発明で用いる「液状体」とは、全体として流動性を有していれば良く、熱可塑性の樹脂、水等の単なる液体、固形分を含有した液体(例えば微粒子状の物質等が分散したもの)が含まれているものであってもよい。FRP成形においては主として熱硬化性樹脂を想定しているが、室温で液状のものばかりでなく、熱可塑性樹脂のように成形温度において流動するものも含む。なお、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などがあるが、硬化後の寸法安定性、耐水性、耐薬品性、高電気絶縁性などの観点から、エポキシ樹脂が最も好ましく用いられる。
【0028】
なお、本発明における液状体の含浸は、上記説明では、成形型内に繊維強化基材を配置し、外部から液状体(液状樹脂)を注入するプロセスをベースとした。このプロセス以外にも、あらかじめ液状体である樹脂が部分的に含浸したシート状の強化繊維基材である部分含浸プリプレグや、室温で固形の樹脂フィルムを成形型内に配置して、積層・昇温するときに、樹脂が軟化または溶融し強化繊維間または強化繊維層間に染み込んで行くようなものも含まれる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、液状体の含浸及び熱硬化に応じて変化する強化繊維基材の厚さを、加熱雰囲気内で、温度変化の影響を受けずに簡単かつ確実に連続モニタリングできる。そして、本発明のモニタリング方法を用いてFRP成形体を生産する場合には、強化繊維基材への液状体の含浸状態、及び熱硬化に応じて変化する成形中の部材の厚さを簡単かつ確実にモニタリングすることが可能となる。
【0030】
その結果、FRP成形体の生産における成形中の部材の厚さ測定値をもとに、マトリックス樹脂注入及び熱硬化工程における異常の早期発見、及び、商品認可基準をより確実に満足することが可能となる。更には、成形中の部材の厚さ測定値をもとに、マトリックス樹脂注入、停止操作の自動化なども可能になり人手を減らすこともできる。
【0031】
特に、前記した効果に加えて、従来正確に知り得なかった繊維強化プラスチックの製造条件と、強化繊維基材の厚さ変化とを関連付けることができ、最適な製造条件を選択することで、厚さが設計値通りとなる良好なFRP成形体を得ることができるという効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置およびモニタリング方法の好ましい実施形態例を、図面を参照しながら説明する。なお、強化繊維基材として平板状基材を用いる場合を例にとって説明する。なお、本発明はこれらの例に限られるものではなく、例えば強化繊維基材が多角面を有するものであってもよい。
【0033】
図1は、変位測定手段として、非接触方式の変位センサを用いた本発明にかかる繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置の一実施形態を模式的に表す側面図である。温度変化を有する加熱炉5内に成形型4を配置し、成形型4の第1の面41上に強化繊維基材3が配置されている。加熱炉5内の温度は、強化繊維基材3の昇温、液状体の注入、停止、熱硬化のそれぞれの過程に応じて、常温から約200℃までの間で制御される。なお、常温とは約5℃から30℃程度のことをいう。
【0034】
強化繊維基材3の第2の面32は成形型4の第1の面41に密着するように配置されている。強化繊維基材3の第1の面31に密着するように導電体2Sが加熱炉5内に配置され、導電体2Sに非接触で対向するように変位測定手段1Sが加熱炉5内に配置されている。また、成形型4の第1の面41に密着するように導電体2Rが加熱炉5内に配置され、導電体2Rに非接触で対向するように変位測定手段1Rが加熱炉5内に配置されている。
【0035】
なお、図1に図示しないが、変位測定手段1S及び1Rは、加熱炉5の外に配置された信号処理機能を有する処理アンプにケーブルを介して接続されており、また、導電体2S及び2Rも前記信号処理機能を有する処理アンプのグランド端子にケーブルを介して接続されている。
【0036】
変位測定手段1S及び1Rは、電気式もしくは磁気的な作用により変位を測定するセンサを用いることが好ましい。例えば、電気式では、変位測定手段1S(1R)と導電体2S(2R)間に電界を形成し静電容量の変化から変位を検出する静電容量式変位センサを、磁気式では、変位測定手段1S(1R)と導電体2S(2R)間に磁界を形成しそのインピーダンス変化から変位を検出する渦電流式変位センサなどを用いることが最も好ましい。
【0037】
なお、変位測定手段1S及び1Rとして、光学式変位センサ、例えばレーザビームを照射し変位を測定するレーザ式変位センサなどを用いると、前述した通り、センサ内部の光学部品の熱損傷が発生し、測定精度が悪くなるどころかセンサ自体が故障する可能性が高くなる。このため、光学式センサを使用する場合は、センサ自体の冷却設備を別途設けなければならなくなることから、低コストの測定方法を提供するためには、前述のとおり、電気式もしくは磁気式の変位センサを用いることが最も好ましい。
【0038】
また、変位測定手段1Sに電気式のセンサを用いる場合には変位測定手段1Rも同様の電気式のセンサを用い、変位測定手段1Sに磁気式のセンサを用いる場合には変位測定手段1Rも同様の磁気式のセンサを用いることが、測定能力に対するセンサの機差を最小限にする観点から最も好ましい。更には、変位測定手段1S及び1Rは、同一型式のセンサを用いることが最も好ましい。
【0039】
変位測定手段1S及び1Rは、固定手段6を介して配置されている。なお、図1には、変位測定手段1Rのみ固定手段6を介して配置していることを図示しており、変位測定手段1Sの固体手段は図示しないが、変位測定手段1Sに関しても、変位測定手段1Rの固定手段6と同じ固定手段で固定されている。
【0040】
なお、変位測定手段1S及び1Rの固定手段6は全て同一の固定手段を用いることが、固定手段6自身の熱膨張を考慮する観点から最も好ましい。例えば、ステンレスなどの熱膨張しにくい材料を用い、同一寸法、同一形状の固定手段を用いればよい。全て同一の固定手段を用いることにより、特に線膨張率の小さい材質、例えばインバーやチタンなど高価な材料を用いる必要がなくなり低コストの測定方法が提供できる。
【0041】
変位測定手段1S及び1Rの固定手段6には、変位測定手段1S及び1Rを強化繊維基材3の厚さ方向に移動させる機構を有することが最も好ましい。これは、液状体の注入前に成形型4上に配置される強化繊維基材3の厚さは様々であり、強化繊維基材3の厚さに応じて、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離をほぼ一定になるように設定し、調整する必要があるからである。例えば、図1に示すように固定手段6にマイクロメーターヘッド6Aなどを設置し、マイクロメーターヘッド6Aの先端に変位測定手段1Sまたは1Rを配置することで、マイクロメーターヘッド6Aのつまみを回転させるだけで、変位測定手段1Sまたは1Rを強化繊維基材3の厚さ方向に容易に移動することができる。
【0042】
また、変位測定手段1Sまたは1Rの固定手段6が備えるマイクロメーターヘッド6Aなどの移動機構に関し、マイクロメーターヘッド6A自体も加熱炉5内の加熱により熱膨張が発生し、変位測定手段1Sまたは1Rの変位測定誤差の要因になり得る。このため、同一のマイクロメーターヘッド6Aを有する固定手段6を用いると、後述する差分演算により、マイクロメーターヘッド6A自身の熱膨張及び熱収縮の影響を相対的にキャンセルでき、強化繊維基材3の厚み変化量をより正確に測定することができる点で最も好ましい。
【0043】
この移動機構によって、変位測定手段1Sの先端面と導電体2S、及び変位測定手段1Rの先端面と導電体2Rとの距離をそれぞれ調整することができる。それぞれの距離は、変位測定手段1Sまたは1Rの測定範囲の半分程度とすることが好ましい。例えば、変位測定手段1Sの測定範囲が0〜5mmの場合は、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離が2〜3mmになるように移動機構を調整する。加熱炉5内に設置した固定手段6の全てがほぼ同じ距離になるように調整することが最も好ましい。
【0044】
変位測定手段1Sまたは1Rを固定する固定手段6は、各変位測定手段1Sまたは1Rそれぞれに対して1体ずつ準備することが好ましい。これは、変位測定手段1S及び1Rを用いて強化繊維基材3の厚さ変化量を測定する際、測定したい任意の位置に変位測定手段1Sあるいは1Rを移動させやすくするためである。
【0045】
変位測定手段1Sまたは1Rを固定する固定手段6は、1つの部材上に固定されることが好ましく、特に、図1に示すように成形型4の第1の面41上に固定されることが最も好ましい。成形型4も加熱炉5内の昇温に伴って熱膨張したり、また加熱炉5内の降温に伴って熱収縮したりするため、固定手段6を成形型4の第1の面41上に固定しておくと、成形型4の熱膨張及び熱収縮の影響は変位測定手段1S及び1Rに同一量の変位測定誤差をもたらす。このため、後述する差分演算により、成形型4の熱膨張または熱収縮の影響を相対的にキャンセルでき、強化繊維基材3の厚さ変化量をより正確に測定することができる。
【0046】
導電体2S及び2Rは平板状の電気通電物質であればよく、鉄やアルミに代表される金属であることが最も好ましい。導電体2S及び2Rは、加熱状態における熱膨張の観点から同一厚さであることが好ましく、約2〜10mmの厚さが好適である。更に、同一材質であることが最も好ましい。なお、導電体2S及び2Rは線膨張係数の小さい材質、例えば、インバーやチタンなど高価な材料でもよいが、低コストの測定方法を提供するという観点からはその限りではなく、加工の容易なSUS303、SUS304のようなステンレスが好ましく用いられる。導電体2Sと変位測定手段1Sとの平行度もしくは導電体2Rと変位測定手段1Rとの平行度は、それぞれ3°以内になるように、変位測定手段1Sまたは1Rを配置するのが好ましい。
【0047】
導電体2Sにおいて、変位測定手段1Sとの対向面の面積は、変位測定手段1Sの先端の面積以上であればよく、変位測定手段1Sの先端の面積の1.2倍以上が最も好ましい。同様に、導電体2Rにおいて、変位測定手段1Rとの対向面の面積は、変位測定手段1Rの先端の面積以上であればよく、変位測定手段1Rの先端の面積の1.2倍以上が最も好ましい。
【0048】
また、変位測定手段1Sの先端面の任意の位置から、その先端面に対し法線方向の垂線を考えた場合、各垂線が導電体2Sの変位測定手段1Sとの対向面表面と交差するように、導電体2S及び変位測定手段1Sを配置するのが最も好ましい。同様に、変位測定手段1Rの先端面の任意の位置から、その先端面に対し法線方向の垂線を考えた場合、各垂線が導電体2Rの変位測定手段1Rとの対向面表面と交差するように、導電体2R及び変位測定手段1Rを配置するのが最も好ましい。
【0049】
変位測定手段1Sの先端面と、それに対向する導電体2Sの変位測定手段1Sとの対向面との距離は、任意に設定してもよいが、距離が大きくなるほど測定精度が低下し、また変位測定手段1Sは寸法が大きなものになってしまうため実用上好ましくない。このことから、変位測定手段1Sの先端面と、それに対向する導電体2Sの変位測定手段1Sとの対向面との距離は0.5mm以上10mm以下が好ましい。更に測定精度をより高精度にするためには、強化繊維基材3の厚さの変化量の最大値になるべく近い距離に配置するのが好ましく、0.5mm以上5mm以下に配置するのが最も好ましい。変位測定手段1Rの先端面と、それに対向する導電体2Rの変位測定手段1Rとの対向面との距離に関しても同様である。
【0050】
次に、上記のように構成されたモニタリング装置を用いるにあたり、変位測定手段1Sによって測定される変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離、あるいは変位測定手段1Rによって測定される変位測定手段1Rの先端面と導電体2Rとの距離の演算処理に関する、好ましい実施形態例を図3に従って説明する。
【0051】
図3は処理アンプ内での信号処理フローの概念図を示している。前述の通り、変位測定手段1S及び1Rは、加熱炉5の外に配置された信号処理機能を有する処理アンプ(図示せず)にケーブルを介して接続されており、変位測定手段1S及び1Rから処理アンプ内に入力される電気信号はそれぞれ、処理アンプ内で信号増幅処理などの入力処理が施され、処理アンプから電圧出力信号Voutとして出力される。
【0052】
例えば、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離がdA0の場合、処理アンプからの出力電圧VoutはVa0となる。これは、理想的には、図3中の破線3Aに示すように、実距離dと出力電圧の間には、Vout=k*d+α(k:定数、α:定数)なる直線関係が成立することが好ましいものの、実際にはこの直線関係は成立せず、例えば図3中の実線3Bで示すように、直線関係が成り立たない場合が多い(これを直線性エラーという)。そこで、処理アンプの内部で直線補正処理(演算処理1)を施す。
【0053】
具体的には、例えば図3に示すように、変位測定手段の先端面と導電体間の距離がdA0の場合、出力電圧Vout=Va0であるが、この出力電圧Va0を、VA0=k*dA0から算出される出力電圧VA0に変換して、Voutとして出力するものである。次に、演算処理2として差分演算処理が行われる。これに関しても、図3に従って説明する。前述のように、演算処理1によって補正処理が行われた出力電圧Voutと、変位測定手段の先端面と導電体との距離dとの間には、図3中の実線3Cに示すように直線関係が成立する。ここで、同一時刻において、変位測定手段1Sから入力され演算処理1された後の出力電圧をVA1、変位測定手段1Rから入力され演算処理1された後の出力電圧をVBとすると、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離、及び、変位測定手段1Rの先端面と導電体2Rとの距離は、それぞれ、dA1、dBと認識される。その後、同一時間経過後の同一時刻において、変位測定手段1Sから入力され演算処理1された後の出力電圧をVA1’、変位測定手段1Rから入力され演算処理1された後の出力電圧をVB’とすると、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離、及び、変位測定手段1Rの先端面と導電体2Rとの距離は、それぞれ、dA1’、dB’と認識される。
【0054】
これらのことから、同一時間経過時の、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離の変化量ΔdA1=dA1’−dA1、変位測定手段1Rの先端面と導電体2Rとの距離の変化量ΔdB=dB’−dBと表され、前記両結果の差分値Δd1=ΔdA1−ΔdBなる演算処理2(差分演算処理)を実施する。このようにして得られた差分値Δd1を強化繊維基材3の厚さの変化量とする。
【0055】
なお、前述したとおり、実際の測定においては液状体を注入する前に、更に好ましくは加熱炉の昇温を開始する前に、変位測定手段1Sから入力され演算処理1された後の出力電圧VA1と変位測定手段1Rから入力され演算処理1された後の出力電圧VBとを、言い換えると、変位測定手段1Sの先端と導電体2Sとの距離dA1と変位測定手段1Rの先端と導電体2Rとの距離dBとを、マイクロメーターヘッド6Aを用いて同一に調整すれば、すなわち、dA1=dBとなるように調整すれば、強化繊維基材3の厚さの変化量Δd1=dA1’−dB’となり、演算処理2が簡素化され、最も好ましい。
【0056】
前述のような演算処理2(差分演算処理)により、以下の(a)〜(d)の効果がある。
(a)変位測定手段1S及び1Rの各固定手段6の熱膨張あるいは熱収縮の影響を軽減できる。
(b)変位測定手段1S及び1Rの温度特性の影響を軽減できる。
(c)導電体2S及び2Rの熱膨張あるいは熱収縮の影響を軽減できる。
(d)成形型4の熱膨張あるいは熱収縮の影響を軽減できる。
なお、前記(d)に関しては、変位測定手段1Sまたは1Rの各固定手段6を、前述のように成形型4の第1の面41上に配置した場合は、成形型4の熱膨張による成形型4の厚み方向の変形により、固定手段6を介して変位測定手段1Sまたは1Rもその変形に追従して強化繊維基材3の厚み方向に動くと同時に、強化繊維基材3、ならびに導電体2S及び2R自体も強化繊維基材3の厚み方向に動くため、相対的には成形型4の熱膨張の影響を受けにくくなり、成形型4の熱膨張あるいは熱収縮の影響に対する大きな効果はない。しかし、どうしても固定手段6を成形型4の第1の面41上に配置スペースの問題で配置ができず、他の1つの部材上に固定を余儀なくされる場合などは、前記差分処理を施すことにより、成形型4の厚さ方向の変位をキャンセルできるため、成形型4の熱膨張あるいは熱収縮の影響に対する効果が大きい。
【0057】
なお、前述した演算処理1(直線補正処理)及び演算処理2(差分演算処理)は、1つの処理アンプ内で実施してもよいし、個別の演算器、例えばパソコンなどを用いてそれぞれの演算処理をしても良い。このように差分処理によって得られた値を結果出力処理する。
【0058】
結果出力処理とは、以下の操作を繰り返しながら算出処理することを言う。
(a)例えば図4に示すように、導電体2Sを配置した箇所の強化繊維基材3の絶対厚さを事前にマイクロメータなどの厚さ測定器具で測定しておく(絶対厚み測定値T0)。
(b)図5に示すように、変位測定手段1Sあるいは1Rを、各固定手段6を介して配置し、導電体2S、2Rを配置し、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離をdA1、変位測定手段1Rの先端面と導電体2Rとの距離をdBになるようにマイクロメータなどの移動機構6Aを用いてそれぞれ調整する。
(c)その後、図6に示す(固定手段6は図示しない)ように、ある時間経過後に、例えば、強化繊維基材3の厚さが変化(増加)した際の、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離をdA1’、変位測定手段1Rの先端面と導電体2Rとの距離をdB’とした際に、前述の差分演算処理によって得られた値Δd1=(dA1’−dA1)−(dB’−dB)をもとに、強化繊維基材3の厚さTを、T=T0−Δd1なる演算式で算出する。
【0059】
結果出力処理には、各種データの保存、画面表示、印刷などを併せて処理することも含むことができる。
【0060】
以上のような構成及び調整を経た後、変位測定手段1Sあるいは1R、導電体2Sあるいは2R、固定手段6を配置した状態で、前述の演算処理を用いて、強化繊維基材3の成形状況の連続モニタリングを開始するとともに、加熱炉5内の昇温を開始し、所定の炉内温度、もしくは、強化繊維基材3の表面温度が所定の温度になるまで昇温を継続する。
【0061】
この間、加熱炉5内の昇温に伴って、変位測定手段1Sあるいは1R、及び導電体2Sあるいは2R、固定手段6、強化繊維基材3、成形型4のそれぞれにおいて、主に熱膨張による変形が発生する。そのような状況下において、変位測定手段1Sは導電体2Sとの距離を時間的に連続的に測定し、また、変位測定手段1Rも導電体2Rとの距離を時間的に連続的に測定すると同時に、処理アンプにて前述の演算処理1や演算処理2、結果出力処理を実施することにより、温度変化の影響をキャンセルした上で、強化繊維基材3のみの厚さTをT=T0−Δd1の演算により正確に測定することができる。
【0062】
加熱炉5内が所定の温度に到達し、かつ所定の経過時間後に、強化繊維基材3の内部に液状体が注入される。すると、図1のハッチング部分11に示す液状体の含浸が図1中の含浸方向Dに従って進行する。図1は液状体の含浸途中の模式図を示し、液状体の含浸途中を示す未含浸部12が存在するが、液状体の含浸が完了すると未含浸部12はなくなる。
【0063】
この液体状の含浸過程において、注入された液状体の影響で強化繊維基材3の厚さは増加し、それに伴って、強化繊維基材3の第1の面上の導電体2Sも変位測定手段1Sの先端面に近付いていく状態となり、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離dA1が小さくなる。この過程でも、変位測定手段1Sあるいは1R、及び導電体2Sあるいは2R、固定手段6、強化繊維基材3、成形型4のそれぞれにおいて、主に熱膨張による変形は発生しているが、演算処理1、演算処理2及び結果出力処理を実施することにより、昇温による温度変化の影響をキャンセルした上で、正確に、液状体が含浸された強化繊維基材3のみの厚さTをT=T0−Δd1の演算により測定できる。
【0064】
また、液状体が強化繊維基材3に含浸しきった後に、液状体の注入を止めた後、ブリードと呼ばれる余剰液状体の排出作業を行う。その過程では、余剰液状体が強化繊維基材3から排出されるため、強化繊維基材3の厚みは減少し、それに伴って、強化繊維基材3の第1の面上の導電体2Sも変位測定手段1Sの先端面から離れていく状態となり、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離dA1は、ブリード作業開始直前に比べて増加する。
【0065】
この過程でも、変位測定手段1Sあるいは1R、及び導電体2Sあるいは2R、固定手段6、強化繊維基材3、成形型4のそれぞれにおいて、主に熱膨張による変形は発生しているが、演算処理1、演算処理2及び結果出力処理を実施することにより、昇温による温度変化の影響をキャンセルした上で、液状体が含浸された強化繊維基材3のみの厚さTをT=T0−Δd1の演算により正確に測定できる。
【0066】
その後、ブリードと呼ばれる余剰液状体の排出を停止し、強化繊維基材3内に含浸された液状体の注入量を維持した状態で、更に加熱炉5の温度を更に所定の温度まで上昇し、強化繊維基材3内に含浸された液状体を熱硬化させる過程となる。この過程においては、強化繊維基材3内に含浸された液状体が熱収縮するため、液状体が含浸された強化繊維基材3の厚さは減少する。それに伴って、強化繊維基材3の第1の面上の導電体2Sも変位測定手段1Sの先端面から離れていく状態となり、変位測定手段1Sの先端面と導電体2Sとの距離dA1が大きくなる。
【0067】
この過程でも、加熱炉5内の昇温に伴って、変位測定手段1Sあるいは1R、及び導電体2Sあるいは2R、固定手段6、強化繊維基材3、成形型4のそれぞれにおいては、主に熱膨張による変形が発生するが、演算処理1、演算処理2及び結果出力処理を実施することにより、昇温による温度変化の影響をキャンセルした上で、正確に、液状体が含浸された強化繊維基材3のみの厚さTをT=T0−Δd1の演算により測定できる。
【0068】
加熱炉5の温度を更に所定の温度まで上昇させた後、所定の時間経過すると、強化繊維基材3内に含浸された液状体の熱硬化が完了する。その後、加熱炉5内を常温まで降温する過程を経て、繊維強化プラスチックの成形が完了する。
【0069】
この過程においても加熱炉5内の温度は徐々に低下している状態であり、それに従って、変位測定手段1Sあるいは1R、及び導電体2Sあるいは2R、固定手段6、強化繊維基材3、成形型4のそれぞれにおいては、これまでの熱膨張による変形が緩和していく。しかし、演算処理1、演算処理2及び結果出力処理を実施することにより、降温による温度変化の影響をキャンセルした上で、正確に、液状体が含浸された強化繊維基材3のみの厚さTをT=T0−Δd1の演算により測定できる。加熱炉5の温度が常温になり、出来上がった繊維強化プラスチックを加熱炉5から取り出す前に、強化繊維基材3の成形状況のモニタリングを終了させる。
【0070】
以上のような全ての過程において、本発明による成形状況のモニタリング方法を用いると、時間的に連続的に、強化繊維基材3の厚さをモニタリングすることができる。さらに、前記全ての過程において成形途中の異常の早期発見にもつながり、更にモニタリングした値をもとに各過程の移行を制御することにより、設計値どおりの厚さの繊維強化プラスチックの製造が可能となる。
【0071】
図2は、変位測定手段として、非接触方式の変位センサを用いた本発明にかかる繊維強化プラスチックの成形状況のモニタリング方法の他の一実施形態を模式的に表す側面図である。図2に示すように、変位測定手段1S及び導電体2Sを強化繊維基材3の厚さを測定したい位置に複数(図2は変位測定手段1S及び導電体2Sを3組配置した場合の例を示す)配置し、前述の演算処理1、演算処理2及び結果出力処理を実施することにより、複数の位置における強化繊維基材3の厚さ測定を同時に実施すことも可能である。
【実施例】
【0072】
[実施例1]
図1に示すように、FRP構造体製造工程において、300mm×300mmの寸法の厚さ5mmの鉄製の平板状の成形型4を、加熱炉5内に設置した。この鉄製の成形型4の第1の面41上に離型処理を施し、その上に、150mm×150mmの強化繊維に炭素繊維を用いた150mm×150mmの平板状の強化繊維基材3を配置した。この強化繊維基材3は疑似等方積層の構成で、24枚の炭素繊維織物(東レ(株)製CZ8431DP、T800の一方向織物)を積層したものである。ちなみに、この強化繊維基材3の厚さT0を成形型4上に配置前にマイクロメータ(ミツトヨ株式会社 型式:OMC−150MJ)を用いて測定した結果、20.642mmであった。
【0073】
強化繊維基材3の上に、強化繊維基材3を密閉するようにバギングフィルムを被せた。なお、図面では省略しているが、離型布や樹脂拡散媒体、加圧用金属プレートを、強化繊維基材3と成形型4との間、あるいは強化繊維基材3とバギングフィルムとの間に挟みこんだ。バギングフィルムに覆われた強化繊維基材3等を含む密閉空間の圧力をポンプにて減圧した後、導電体2Sを強化繊維基材3の第1の面31上に、バギングファイルムを介して配置し、それに対向する様に変位測定手段1Sを配置した。また成形型4の第1の面41上にバギングフィルムを介して導電体2Rを配置し、それに対向する様に変位測定手段1Rを配置した。
【0074】
変位測定手段1Sと1Rとは、図1の左右の方向に約100mm離して配置した。変位測定手段1S及び1Rの固定手段6は、それぞれ成形型4の第1の面41上に設置した。固定手段6としてはマグネットスタンド(KANETEC株式会社 型式:MB−B)を用いた。マグネットスタンドを構成する各金属棒の接続箇所は全て溶接した。
【0075】
導電体2S及び2Rは、ともに厚さ3mm、30mm×30mmの寸法の平板状の金属板を用いた。金属板の材質はSUS303とした。また、変位測定手段1S及び1Rとして、静電容量型変位センサ(ナノテックス株式会社 200℃耐熱静電プローブ 中芯電極径φ=11mm、測定範囲:0〜5000ミクロン)を用いた。
【0076】
変位測定手段1S及び1Rは、それぞれ処理アンプ(ナノテックス株式会社 型式:PS−III−2D)に約10mの高周波同軸ケーブルを介して、それぞれチャネル1、チャネル2の信号入力端子に接続した。また、導電体2S及び2Rも、それぞれ約10mの耐熱被覆ケーブル(断面積0.75mm2)にて、チャネル1及びチャネル2のグランド端子(GND端子)に接続した。
【0077】
処理アンプから各チャネルのモニタ出力信号(アナログ電圧出力信号)を取り出した。各チャネルのモニタ出力信号は、変位測定手段と導電体との距離が0〜5000(ミクロン)の変化に対して、0〜10(V)と変化する電圧信号が出力するように設定した。但し、出力電圧信号において、約0〜+2%の直線性(つまり、実際の距離に対して、最大100ミクロン大きめに出力される)の精度しかない。
【0078】
それぞれのモニタ出力信号をアナログコントローラ(キーエンス株式会社 型式:RD−50R)の入力信号端子に対し、約50cmの長さの高周波同軸ケーブルにて1対1で接続した。各アナログコントローラでは、処理アンプからの入力信号を予め設定した値に演算するリニアライズ機能を有している。これにより、処理アンプからの出力電圧信号において、約0〜+2%の直線性を、リニアライズ機能によって約0〜+0.2%の直線性(つまり、実際の距離に対して、最大10ミクロンしか大きめに出力されない)の精度に改善できることが確認できた。
【0079】
アナログコントローラにてリニアライズした信号を各アナログコントローラの出力端子から取り出し、記録装置(以降、データロガーと記載する。キーエンス株式会社 型式:NR−1000)のチャネル1に処理アンプのチャネル1側(変位測定手段1S側)の信号が入力されるアナログコントローラからの出力信号を取り込んだ。また、データロガーのチャネル2に処理アンプのチャネル2側(変位測定手段1R側)の信号が入力されるアナログコントローラからの出力信号を取り込み、10秒周期で各アナログコントローラからの入力信号を記録する構成とした。
【0080】
その後、各固定手段6に取り付けた移動機構6Aを用い、変位測定手段1Sの先端と導電体2Sとの距離dA1、及び、変位測定手段1Rの先端と導電体2Rとの距離dBを、それぞれ約2500ミクロンに近づけるべく、各アナログコントローラの前面の電圧表示を見ながら、各アナログコントローラの電圧表示が、5.000±0.010(V)になるように移動機構6Aを調整した。移動機構6Aとしては、どちらもマイクロメーターヘッド(ミツトヨ株式会社 型式:MHK−15)を用いた。
【0081】
以上のような各機器の配置、及び、調整を経た後に、加熱炉5内を約20℃から約70℃に加熱を開始すると同時に、データロガーによる記録による強化繊維基材3の厚さ変化量のモニタリングを開始した。その後、加熱炉5内の温度が約70℃に到達してから一定時間保持し、加熱炉5内の温度を約70℃のままで図1における強化繊維基材3の左から、マトリックス樹脂(液状体)を左側から右側へ、つまり含浸方向Dに従って流動するように注入開始した。マトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂組成物を用いた。
【0082】
一定時間経過後、マトリックス樹脂注入を止め、ブリード作業を実施し、注入したマトリックス樹脂の一部を排出した。その後、加熱炉5内の温度を約70℃から約130℃に昇温し、加熱炉5内の温度が約130℃の状態を一定時間保持して、注入されたマトリックス樹脂を熱硬化した。その後、加熱炉5内を約40℃にまで降温した後、データロガーの記録を停止し、モニタリングを終了した。
【0083】
なお、一連のモニタリングに併せて、モニタリング開始直前、樹脂注入直前、ブリード開始直前、70℃から130℃への昇温直前、降温完了後のモニタリング停止直前のタイミングで、前記マイクロメータ(ミツトヨ株式会社 型式:OMC−150MJ)を用いて強化繊維基材3の厚さを測定した。モニタリング開始直前の厚さと各タイミングでマイクロメータ測定によって得られる厚さとの差と、データロガーのチャネル1のモニタリング結果(結果出力演算結果)とを突き合わせることにより、厚さ測定精度の評価を実施した結果を表1に示す。この結果から、液状体の含浸、熱硬化などの一連の成形過程における強化繊維基材3の厚さ状況(厚さ変化量)を精度よく、具体的には、マイクロメータ測定値ΔTrefに比べて、最大30ミクロンの誤差でモニタリングすることができた。
【0084】
【表1】
【0085】
[実施例2]
実施例1と同じ構成、条件にてモニタリングを実施し、データロガーのチャネル1とチャネル2に同一時刻に記録された各変位測定値の差分演算処理を別途準備したパソコンで実施した。実施例1と同様に、一連のモニタリングに併せて、モニタリング開始直前、樹脂注入直前、ブリード開始直前、70℃から130℃への昇温直前、降温完了後のモニタリング停止直前のタイミングで、前記マイクロメータ(ミツトヨ株式会社 型式:OMC−150MJ)を用いて強化繊維基材3の厚さを測定し、モニタリング開始直前の厚さと各タイミングでマイクロメータ測定によって得られる厚さとの差との突合せ評価を行った。結果を表2に示す。
【0086】
この結果から、差分処理を行うことにより、液状体の含浸、熱硬化などの一連の成形過程における強化繊維基材3の厚さ状況(厚さ変化量)を、加熱炉5内の温度変化による影響を軽減し、更に精度良く、具体的には、マイクロメータ測定値ΔTrefに比べて最大17ミクロンの誤差でモニタリングすることができた。
【0087】
【表2】
【0088】
[実施例3]
実施例2と同じ構成、条件にてモニタリングを実施し、データロガーのチャネル1とチャネル2に同一時刻に記録された各変位測定値の差分演算処理を別途準備したパソコンで実施した。更に、実施例1と同様に、モニタリング開始直前に、前記マイクロメータ(ミツトヨ株式会社 型式:OMC−150MJ)を用いて、強化繊維基材3の厚さを測定した結果T0を用いて、前記別途準備したパソコンでの演算で得られた差分演算結果Δd1から、強化繊維基材3の厚さT=T0−Δd1なる演算を別途準備したパソコンで実施した。その結果を、樹脂注入直前、ブリード開始直前、70℃から130℃への昇温直前、降温完了後のモニタリング停止直前のタイミングで、前記マイクロメータ(ミツトヨ株式会社 型式:OMC−150MJ)を用いて測定した強化繊維基材3の厚さ測定結果との突合せ評価を行った。結果を表3に示す。
【0089】
この結果から、液状体の含浸、熱硬化などの一連の成形過程における強化繊維基材3の絶対厚さ量を、加熱炉5内の温度変化による影響を軽減し、更に精度良くモニタリングすることができた。
【0090】
【表3】
【0091】
[参考例1](変位測定手段、固定手段の個体間差と温度影響の確認テスト)
図7に示すように、強化繊維基材3を成形型4上に配置せず、導電体2Sを直接成形型4の第1の面41上に配置し、変位測定手段1Sと変位測定手段1Rの左右の方向の距離を30mmになるように配置した以外は、実施例1と同じ構成、及び条件で、データロガーのチャネル1、2で記録される変位データを測定した。測定結果を表4に示す。
【0092】
この結果から、加熱炉5内の温度変化に関わらず、データロガーのチャネル1とチャネル2の測定値の差Δd1の絶対値は5ミクロン以内であり、変位測定手段1Sと変位測定手段1Rの測定能力における個体間差、及び各固定手段6の熱膨張の個体間差は極めて小さいことを確認できた。
【0093】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0094】
上述した本発明の繊維強化プラスチックの成形状況のモニタリング装置、及びモニタリング方法は、加熱炉内において、強化繊維基材に液状の樹脂を含浸させた後、樹脂を硬化させるFRP構造体の製造方法に好ましく適用されるが、適用対象としてはこれに限定されず、たとえば、加熱炉内に配置された測定対象物の熱膨張量のモニタリングにおいても好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明にかかわる変位測定手段1Sと変位測定手段1Rを用いた繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法の一実施形態を模式的に表す側面図である。
【図2】本発明にかかわる変位測定手段1Sを複数個と変位測定手段1Rを用いた繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法の一実施形態を模式的に表す側面図である。
【図3】本発明にかかわる変位測定手段1Sと変位測定手段1Rとの測定値の演算方法に関する一実施形態を示す処理フロー図である。
【図4】繊維強化基材3の初期厚さの測定に関するイメージを表す図である。
【図5】加熱炉を昇温前の、変位測定手段他の配置構成のイメージを表す図である。
【図6】加熱炉を昇温開始後の、変位測定手段他の配置構成のイメージを表す図である。
【図7】強化繊維基材3を成形型4上に配置しない状態での、各変位測定手段を用いて測定、演算処理を行う評価構成を表すイメージ図である。
【符号の説明】
【0096】
1S 変位測定手段
1R 変位測定手段
2S 変位測定手段1Sに対向する導電体
2R 変位測定手段1Rに対向する導電体
3 強化繊維基材
31 強化繊維基材3の第1の面
32 強化繊維基材3の第2の面
4 成形型
41 成形型4の第1の面
5 加熱炉
6 変位測定手段の固定手段
6A 変位測定手段の移動機構
11 液状体
12 液状体11の未含浸部
D 液状体11の含浸方向
d 変位測定手段の先端と導電体表面との距離
Vout 処理アンプ出力電圧
3A 距離dと出力電圧Voutとの理想の直線
3B 距離dと出力電圧Voutとの実際の相関を表す曲線
3C 距離dと出力電圧Voutとの相関を表す直線
dA0 変位測定手段の先端と導電体表面とのある距離
Va0 距離dA0に相当する補正演算前の処理アンプ出力電圧
VA0 距離dA0に相当する補正演算後の処理アンプ出力電圧
dA1 モニタリング開始前の変位測定手段1Sの先端と導電体2Sの距離
dA1’ モニタリング開始後t秒経過後の変位測定手段1Sの先端と導電体2Sの距離
dB モニタリング開始前の変位測定手段1Rの先端と導電体2Rの距離
dB’ モニタリング開始後t秒経過後の変位測定手段1Rの先端と導電体2Rの距離
VA1 変位測定手段1Sの先端と導電体2Sの距離がdA1の時の演算処理1後の出力電圧
VA1’ 変位測定手段1Sの先端と導電体2Sの距離がdA1’の時の演算処理1後の出力電圧
VB 変位測定手段1Rの先端と導電体2Rの距離がdBの時の演算処理1後の出力電圧
VB’ 変位測定手段1Rの先端と導電体2Rの距離がdB’の時の演算処理1後の出力電圧
ΔdA1 dA1’とdA1との差
ΔdB dB’とdBとの差
Δd1 ΔdA1とΔdBとの演算処理2(差分演算処理)の結果
T 本発明によるモニタリング方法を用いて測定した強化繊維基材3の絶対厚さ
T0 加熱炉5の昇温前に測定される強化繊維基材3の初期絶対厚さ
Tref マイクロメータによる強化繊維基材3の厚さ測定値
ΔTref マイクロメータ測定による強化繊維基材3の厚さ変化量
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉の内部に、成形型と、導電体および前記導電体と非接触で対向する変位測定手段からなる複数組の測定手段とを備え、前記変位測定手段からの信号を処理する演算処理手段を備えたことを特徴とする、繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
【請求項2】
前記成形型上に強化繊維基材が配置され、前記成形型上に少なくとも1組の前記測定手段を配置するとともに、前記強化繊維基材上にも少なくとも1組の前記測定手段を配置したことを特徴とする、請求項1に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
【請求項3】
前記変位測定手段は、電気的または磁気的手段によって測定することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
【請求項4】
前記測定手段を構成する変位測定手段は、固定手段を介して固定されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
【請求項5】
前記変位測定手段を固定する前記固定手段が、1つの固定部材にまとめて固定されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
【請求項6】
加熱炉内に設けられた成形型上に配置した強化繊維基材に対して、
前記強化繊維基材の第1の面上に導電体を配置し、前記導電体に非接触で対向するように第1の変位測定手段を前記加熱炉内に配置するとともに、
前記強化繊維基材の第2の面に接する前記成形型の第1の面上に導電体を配置し、前記導電体と非接触で対向するように第2の変位測定手段を前記加熱炉内に配置して、
前記第1の変位測定手段を用いて前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量を測定するとともに、前記第2の変位測定手段を用いて前記成形型の厚さ方向の変位量を測定することを特徴とする、繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
【請求項7】
前記第1の変位測定手段から得られる変位量と、前記第2の変位測定手段から得られる変位量とを前記演算処理手段で補正処理し、前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量とすることを特徴とする、請求項6に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
【請求項8】
前記第1の変位測定手段から得られる変位量と、前記第2の変位測定手段から得られる変位量との差を前記演算処理手段で演算し、前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量とすることを特徴とする、請求項6に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
【請求項9】
前記第1の変位測定手段から得られる変位量の値と、前記第2の変位測定手段から得られる変位量の値は、前記演算処理手段で補正処理した後、前記補正処理後のそれぞれの変位量の差を前記演算処理手段で演算することを特徴とする、請求項6に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
【請求項10】
前記各第1の変位測定手段とそれに対向して配置された前記導電体との距離と、前記第2の変位測定手段とそれに対向して配置された前記導電体との距離とを前記加熱炉の加熱前に同じ距離に調整する工程を経た後、前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量もしくは前記成形型の厚さ方向の変位量の測定を開始する工程を有することを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
【請求項11】
前記加熱炉を加熱する前に前記強化繊維基材の厚さを予め測定する工程を有し、前記厚さ測定値と、前記加熱炉の加熱中及び加熱完了後に得られる前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量から前記強化繊維基材の厚さを前記演算処理手段で演算することを特徴とする、請求項6〜10のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
【請求項12】
強化繊維基材に液状体を含浸させる繊維強化プラスチックの製造方法であって、請求項6〜11のいずれかに記載の成形状況モニタリング方法を用いて含浸工程、硬化工程が制御されてなることを特徴とする繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項1】
加熱炉の内部に、成形型と、導電体および前記導電体と非接触で対向する変位測定手段からなる複数組の測定手段とを備え、前記変位測定手段からの信号を処理する演算処理手段を備えたことを特徴とする、繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
【請求項2】
前記成形型上に強化繊維基材が配置され、前記成形型上に少なくとも1組の前記測定手段を配置するとともに、前記強化繊維基材上にも少なくとも1組の前記測定手段を配置したことを特徴とする、請求項1に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
【請求項3】
前記変位測定手段は、電気的または磁気的手段によって測定することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
【請求項4】
前記測定手段を構成する変位測定手段は、固定手段を介して固定されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
【請求項5】
前記変位測定手段を固定する前記固定手段が、1つの固定部材にまとめて固定されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング装置。
【請求項6】
加熱炉内に設けられた成形型上に配置した強化繊維基材に対して、
前記強化繊維基材の第1の面上に導電体を配置し、前記導電体に非接触で対向するように第1の変位測定手段を前記加熱炉内に配置するとともに、
前記強化繊維基材の第2の面に接する前記成形型の第1の面上に導電体を配置し、前記導電体と非接触で対向するように第2の変位測定手段を前記加熱炉内に配置して、
前記第1の変位測定手段を用いて前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量を測定するとともに、前記第2の変位測定手段を用いて前記成形型の厚さ方向の変位量を測定することを特徴とする、繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
【請求項7】
前記第1の変位測定手段から得られる変位量と、前記第2の変位測定手段から得られる変位量とを前記演算処理手段で補正処理し、前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量とすることを特徴とする、請求項6に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
【請求項8】
前記第1の変位測定手段から得られる変位量と、前記第2の変位測定手段から得られる変位量との差を前記演算処理手段で演算し、前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量とすることを特徴とする、請求項6に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
【請求項9】
前記第1の変位測定手段から得られる変位量の値と、前記第2の変位測定手段から得られる変位量の値は、前記演算処理手段で補正処理した後、前記補正処理後のそれぞれの変位量の差を前記演算処理手段で演算することを特徴とする、請求項6に記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
【請求項10】
前記各第1の変位測定手段とそれに対向して配置された前記導電体との距離と、前記第2の変位測定手段とそれに対向して配置された前記導電体との距離とを前記加熱炉の加熱前に同じ距離に調整する工程を経た後、前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量もしくは前記成形型の厚さ方向の変位量の測定を開始する工程を有することを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
【請求項11】
前記加熱炉を加熱する前に前記強化繊維基材の厚さを予め測定する工程を有し、前記厚さ測定値と、前記加熱炉の加熱中及び加熱完了後に得られる前記強化繊維基材の厚さ方向の変位量から前記強化繊維基材の厚さを前記演算処理手段で演算することを特徴とする、請求項6〜10のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形状況モニタリング方法。
【請求項12】
強化繊維基材に液状体を含浸させる繊維強化プラスチックの製造方法であって、請求項6〜11のいずれかに記載の成形状況モニタリング方法を用いて含浸工程、硬化工程が制御されてなることを特徴とする繊維強化プラスチックの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−32478(P2010−32478A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197810(P2008−197810)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
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