説明

繊維強化ポリアミド用塗工材

【課題】繊維強化ポリアミドに優れた密着性を発現する繊維強化ポリアミド用塗工材を提供する。
【解決手段】水酸基価がソリッドで80〜450mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)が1000〜2万、かつ酸価がソリッドで5mgKOH/g未満であるポリエステル(A)を用いた繊維強化ポリアミド用塗工材である。また、SP値が10.2〜12.5、重量平均分子量(Mw)が2000〜50万であるアクリル系樹脂(B)をポリエステル(A)100重量部に対して100重量部未満含み、活性水素および/または水酸基と反応可能な硬化剤を含有するむ繊維強化ポリアミド用塗工材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸基を含有するポリエステルからなる繊維強化ポリアミド用塗工材に関する。さらに詳しくは、繊維強化ポリアミドに高い密着性を発現する繊維強化ポリアミド用塗工材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアミドとしてナイロン6、ナイロン66など広く知られており、その優れた特性から、自動車部品、電気・電子部品、機械部品など広く用いられている。さらに、ガラス繊維を始めとする無機充填剤による補強効果に優れるため前記分野で広く用いられている。また、電子機器のダウンサイジング化、高性能化、ポータブル化が急速に進んでおり、種々のポリアミドが使用されてきている。しかしながら、これらに十分な密着力を発現するものがなく、塗料との付着性を向上させるために火炎処理、オゾン処理、プラズマ処理などにより表面を処理する方法等が行われてきた。また、基材にプライマーを塗工することで塗料との密着性を向上させる方法(特許文献1)や、基材に密着付与剤の添加する方法(特許文献2)等の提案もされているが、十分な密着を発現するものではない。
さらに近年では、ガラス等の繊維で強化されたポリアミドが使用されようとしているが、前記同様、基材に十分な密着を発現するものがない。
【特許文献1】特開2000−210946号公報
【特許文献2】特開2002−179909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、前記の背景技術に記載した問題点を解決し、繊維で強化されたポリアミドに優れた密着性を発現する繊維強化ポリアミド用塗工材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記課題を達成する塗料の開発に鋭意研究及び検討を重ねてきた結果、水酸基価がソリッドで80〜450mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)が1000〜2万、かつ酸価がソリッドで5mgKOH/g未満であるポリエステル(A)を用いる事が、前記目的を達成する上で極めて有用なものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。ここで、ソリッドとは樹脂分100%を意味する。また、SP値が10.2〜12.5、重量平均分子量(Mw)が2000〜50万であるアクリル系樹脂(B)をポリエステル(A)100重量部に対して100重量部未満含む繊維強化ポリアミド用塗工材である。また、本発明は、前記塗工材を含む主剤と、活性水素および/または水酸基と反応可能な硬化剤を含有する繊維強化ポリアミド用塗工材である。
さらに、記載の繊維がガラス繊維である繊維強化ポリアミドであり、この塗工材からなる
塗料・プライマーである。また、この塗工材を塗工して得られる成型体である。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、繊維強化ポリアミドに優れた密着性を発現する繊維強化ポリアミド用塗工材を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明の詳細を説明する。
【0007】
<ポリエステル(A)>
本発明に用いられるポリエステルは、カルボン酸成分とアルコール成分を縮重合することによって得られる。
カルボン酸成分として例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,10−デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フマル酸等の多価カルボン酸およびその低級アルコールエステル、パラオキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸、および安息香酸等の1価カルボン酸等を用いる事ができ、また2種類以上併用する事も可能である。
【0008】
また、アルコール成分として例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチル−ペンタンジオール、2,2’−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等を用いることができ、また2種類以上併用する事も可能である。
【0009】
上記のポリエステルは、基材である繊維強化ポリアミドへの密着性の観点から、水酸基価がソリッドで80〜450mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)が1000〜2万、かつ酸価がソリッドで5mgKOH/g未満である。好ましくは、水酸基価がソリッドで120〜400mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)が1000〜1.5万、かつ酸価がソリッドで5mgKOH/g未満である。尚、本願における水酸基価および酸価はJIS K−0070法により、重量平均分子量(Mw)はGPCによって測定されたものである。
【0010】
<アクリル系樹脂(B)>
また、本発明ではアクリル樹脂を混合して用いることができる。本発明に用いられるアクリル系樹脂は、有機溶媒中、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーを重合して得ることができる。
【0011】
本発明に用いる有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、塗料等で一般的に使用されているものを用いることができる。例えば、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、n−酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3メトキシブチルアセテート等のエステル系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、セロソルブ(エチルセロソルブ)、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル系等の有機溶剤を用いることができ、またこれらの2種以上からなる混合物であっても構わない。有機溶媒の量は、アクリル樹脂に対し、不揮発分で10〜80重量%となる範囲で用いることが好ましい。
【0012】
本発明に用いられる、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーを以下に挙げる。
【0013】
α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有ビニル類及びこれらのモノエステル化物、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル類、ビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナート等のイソシアナート基含有ビニル類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等のアミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、モノ(2−メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等の不飽和リン酸類、その他アクリロニトリル、メタクリルニトリル、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、エチレン、プロピレン、C〜C20のα−オレフィン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0014】
また、前記単量体、或いはその共重合体をセグメントに有し、末端にビニル基を有するマクロモノマー類等も使用できる。また、本発明に用いられるその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーとしては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の無水カルボン酸類等が挙げられる。また、ここに記載されたメチル(メタ)アクリレートのような記載は、メチルアクリレート及びメチルメタアクリレートを示す。
【0015】
上記のアクリル樹脂は、SP値が10.2〜12.5、重量平均分子量(Mw)が2000〜50万のものが用いられる。また、基材である繊維強化ポリアミドへの密着性の観点から、水酸基を含有するものは、水酸基価がソリッドで80〜350mgKOH/gが好ましく、カルボキシル基を含有するものは、酸価がソリッドで20〜400mgKOH/gが好ましく、さらに、水酸基とカルボキシル基の両方を含有するものは、水酸基価がソリッドで70〜350mgKOH/g、かつ酸価がソリッドで15〜400mgKOH/gが好ましい。アクリル系樹脂(B)の含有量はポリエステル(A)100重量部に対して100重量部未満である。
【0016】
なお、ここでSP値とは、「設計溶解性パラメーター(SP)」であり、その計算方法は、Fedorsの方法により決定され、「Polymer Engineering and Science,14巻,2月号,147〜154ページ,1974年」に記載されている。また、水酸基価および酸価は計算により求めたものであり、重量平均分子量(Mw)はGPCにより測定されたものである。本発明の塗工材は水酸基を含有するが、この塗工材を含む主剤と、これら水酸基と反応可能な硬化剤の一つである分子内にイソシアナート基を有する硬化剤と混合することで、ウレタン結合を有する塗工材として用いることができる。
【0017】
水酸基と反応可能な分子内にイソシアナート基を有する硬化剤としては、フェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート等の芳香族ジイソシアナート類、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、リジンジイソシアナート等の脂肪族ジイソシアナート類、イソホロンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート等の脂環族ジイソシアナート類、その他イソシアナート化合物の一種又は二種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、キシリレングリコール、ブチレングリコール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3価アルコール等の多価アルコールを付加物、イソシアナート基と反応可能な官能基を有する低分子量ポリエステル樹脂または水等の付加物、またはビュレット体、ジイソシアナート同士の重合体、さらに低級1価アルコール、メチルエチルケトオキシム等公知のブロック剤でイソシアナート基をブロックしたもの等が使用できる。イソシアナートプレポリマーを使用する場合についても、例えば、ジブチルチンジラウレート、トリエチルアミン等の外部触媒を添加することができる。
【0018】
また、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル等の少なくとも1種とホルムアルデヒドから合成される樹脂であって、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコールによってメチロール基の1部または全部をアルキルエーテル化したようなアミノ樹脂も硬化剤として使用することができる。本発明の塗工材と水酸基と反応可能な硬化剤は任意の割合で使用する事ができる。
【0019】
水酸基と反応可能な硬化剤がイソシアナート基を有する硬化剤である場合の配合割合は、活性水素とイソシアナート基の当量比で0.5:1.0〜1.0:0.5の範囲が好ましく、0.8:1.0〜1.0:0.8の範囲が更に好ましい。
また、水酸基と反応可能な硬化剤がアミノ樹脂である場合は、本発明の樹脂溶液/アミノ樹脂のソリッドの重量比で95/5〜20/80の範囲で用いるのが好ましく、90/10〜60/40の範囲が更に好ましい。
上記に記載の硬化剤を混合したものは、そのままでも塗工し硬化させることもできるが、必要に応じて反応性触媒を併用することもできる。
【0020】
本発明の繊維強化ポリアミド用塗工材は、必要に応じて、アゾ顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料、アゾ染料、アントラキノン系染料等の染料、酸化チタン、モリブデン、カーボンブラック等の無機顔料等の着色剤、重合禁止剤、光安定剤、酸化防止剤、黄変防止剤、耐候安定剤、耐熱防止剤等の各種安定剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤、防曇剤、分散剤、湿潤剤、界面活性剤、防カビ剤、抗菌剤、防腐剤、触媒、充填剤、ワックス、ブロッキング防止剤、だれ防止剤、カップリング剤、可塑剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、スリップ剤等の成分を含有させることができる。
【0021】
本発明の繊維強化ポリアミド用塗工材を繊維強化ポリアミドの成型体に塗布する方法に限定はなく、スプレーコート、ロールコート、スピンコーター、ハケ塗り、ディップコートなどの常法によって行われ、例えば、スプレーガンで被塗装表面に吹きつけ塗工を行ったり、凸版、平版、グラビア、スクリーン印刷機で塗工を行ったり、スピンコーターで塗工を行ったり、ハケでの塗工を行ったり、樹脂液に浸漬させて塗工を行なうことができる。塗布は通常、常温にて容易に行なうことができ、また塗工後の乾燥方法についても特に限定はなく、自然乾燥や加熱強制乾燥等、適宜の方法で乾燥することができる。硬化剤を導入したものについては、塗膜の硬化性の観点から、加熱強制乾燥を行なうことが好ましい。
【0022】
そして、本発明の繊維強化ポリアミド用塗工材は、その特徴から繊維強化ポリアミドからなるシート、あるいは成型物等の塗料、プライマーとして好適に用いる事ができる。また、上塗りには、ウレタン塗料、ポリエステル塗料、メラミン塗料、エポキシ塗料を主成分とする塗料を用いる事ができ、各種被塗物表面への付着性を改善するとともに、より鮮映性等に優れる塗膜を形成させる為に使用することもできる。
【0023】
また、本発明のガラス繊維強化ポリアミド用塗工材は、その特徴から上記以外にも、溶剤型熱可塑性アクリル樹脂塗料、溶剤型熱硬化性アクリル樹脂塗料、アクリル変性アルキド樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、及びメラミン樹脂塗料等に添加して使用することができる。本発明の被塗物として用いられる繊維強化ポリアミドは、ポリアミドに繊維等を導入することで得られる。被塗物に用いられるポリアミドとしては、特に限定はされないが、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6T、ナイロン11、ナイロン12、芳香族骨格含有ポリアミド等からなるアミド結合を有するもので、これらの2種以上からなる混合物であっても構わない。
【0024】
ポリアミドに導入する繊維材料としては、例えば、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、金属硬化物繊維、アスベスト繊維およびホウ素繊維等の無機繊維や、アラミド繊維、炭素繊維等の有機繊維等が挙げられる。これらの中でも、引張強度、曲げ強度等の機械的特性および耐熱特性向上の面から、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、通常、平均長さが0.01〜20mm、アスペクト比が5〜2000のものを使用することが好ましい。また、繊維材料にシランカップリング剤、チタンカップリング剤等で処理、および/または集束剤を塗布することができ、これらにより、外観、強度特性が向上する。
【0025】
繊維強化ポリアミドは、上記のポリアミドと繊維材料を溶融混練して使用できるが、ポリアミド成分/繊維の割合は、重量比で90/10〜40/60の範囲でが好ましい。溶融混練は、特に限定されるものではなく、一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いることができ、混練後に造粒、粉砕する方法がある。これらで得られたペレット、粉末を、圧縮成形法、射出成形法、押出し成形法等で各種成形品にすることができる。本発明の繊維強化ポリアミド用塗工材は、上記のようにして得られた成型品に対して優れた密着性を発現するため、自動車部品、パソコン、携帯電話、電化製品、玩具、化粧品容器、カバン、建築材料などの用途で好適に使用できるものである。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の樹脂及び樹脂溶液の製法および各種試験例を挙げ、更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
[実施例1]
攪拌機、温度計、シュタックディン付き還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸44部、マレイン酸2部、フタル酸2部、1,3−ブタンジオール11部、1,4−ブタンジオール7部、トリメチロールプロパン34部を仕込み、窒素気流中で150〜230℃に加熱して脱水反応を行い、水酸基価270mgKOH/g、酸価1mgKOH/g、Mw2500のポリエステルを得た。
【0028】
[実施例2]
攪拌機、温度計、シュタックディン付き還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸20部、イソフタル酸15部、フタル酸13部、1,3−ブタンジオール10部、トリメチロールプロパン42部を仕込み、窒素気流中で150〜230℃に加熱して脱水反応を行い、反応後に酢酸ブチル10部と3−メトキシブチルアセテート20部を添加し、水酸基価220mgKOH/g、酸価3mgKOH/g、Mw5000、不揮発分76%のポリエステルを得た。
【0029】
[実施例3]
攪拌機、温度計、シュタックディン付き還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸29部、フタル酸28部、1,3−ブタンジオール9部、トリメチロールプロパン34部を仕込み、窒素気流中で150〜230℃に加熱して脱水反応を行い、水酸基価120mgKOH/g、酸価2mgKOH/g、Mw3500のポリエステルを得た。
【0030】
[実施例4]
実施例1で得られた樹脂と下記のアクリル樹脂溶液(A)を樹脂比で6/4で混合し樹脂溶液を得た。
【0031】
<アクリル樹脂溶液(A)>
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、有機溶剤として酢酸ブチルを900部仕込み、窒素置換しながら98℃に加熱昇温した。次いでこの中に、重合可能な単量体としてメチルメタクリレート220部、n−ブチルメタクリレート310部、ラウリルメタクリレート100部、ヒドロキシエチルメタクリレート320部、ヒドロキシエチルアクリレート50部と重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略記する)10部の混合液を5時間かけてフィードした。フィード終了より1時間後と2時間後にAIBNをそれぞれ2部添加した。最後のAIBNの添加後より2時間放置して反応させ、希釈溶剤として酢酸ブチルを100部添加し、水酸基価160mgKOH/gのアクリル樹脂溶液を得た。
【0032】
[実施例5〜8]
実施例1〜4で得られた樹脂溶液に硬化剤としてタケネートD−160N(三井武田ケミカル(株)製)をそれぞれNCO/OH=1となるように混合して樹脂溶液を得た。
【0033】
[実施例9]
実施例1で得られた樹脂溶液100部に、硬化剤としてユーバン20SE−60(三井化学(株)製)を25部混合して樹脂溶液を得た。
【0034】
[実施例10]
実施例1で得られた樹脂100部に、酸化チタン顔料(Tipeqe−CR93:石原産業(株)製)を30部、キシレン/トルエン/メチルイソブチルケトン=1/1/1の混合有機溶剤を100部添加し分散して、樹脂溶液を得た。
【0035】
[実施例11]
実施例1で得られた樹脂100部に、アルミペースト(アルペースト7640NS:東洋アルミニウム(株)製)を10部、トルエンを100部添加し分散して、樹脂溶液を得た。
【0036】
[実施例12]
実施例10で得られた樹脂溶液に硬化剤としてタケネートD−160NをNCO/OH=1となるように混合して樹脂溶液を得た。
【0037】
[実施例13]
実施例11で得られた樹脂溶液に硬化剤としてタケネートD−160NをNCO/OH=1となるように混合して樹脂溶液を得た。
【0038】
[比較例1]
攪拌機、温度計、シュタックディン付き還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸45部、エチレングリコール35部、1,3−ブタンジオール20部を仕込み、窒素気流中で150〜230℃に加熱して脱水反応を行い、水酸基価500mgKOH/g、酸価1mgKOH/g、Mw300のポリエステルを得た。
【0039】
[比較例2]
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、バイロン500(東洋紡績(株)製)を100部、トルエン100部を仕込み、100℃に加熱して、水酸基価5mgKOH/g、酸価2mgKOH/g、Mw23000のポリエステルを得た。
【0040】
[比較例3]
攪拌機、温度計、シュタックディン付き還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸50部、フタル酸15部、ネオペンチルグリコール20部、1,4−ブタンジオール15部を仕込み、窒素気流中で150〜230℃に加熱して脱水反応を行い、水酸基価20mgKOH/g、酸価100mgKOH/g、Mw1100のポリエステルを得た。
【0041】
[比較例4]
実施例1で得られた樹脂溶液に硬化剤としてタケネートD−160N(三井武田ケミカル(株)製)をそれぞれNCO/OH=1となるように混合して樹脂溶液を得た。
【0042】
[基材−製造例1]
ポリアミドとして、1,6−ジアミノヘキサン50モル%、アジピン酸50モル%からなるポリアミド(以下、ナイロン6,6と略記する。極限粘度[η]=1.2dl/g、融点(DSC法)Tm=260℃)100部に、ガラス繊維(日本電気硝子(株)製:ESC03−615)100部を、二軸押出機で溶融混練してペレタイズし、射出成形により基材Aを得た。
【0043】
[基材−製造例2]
ポリアミドを、BASF社製のウルトラゾーンE101に変更した以外は、基材−製造例1と同様にして基材Bを得た。
【0044】
<評価>
1.樹脂液の安定性
<樹脂溶液の貯蔵安定性>
実施例1〜13、比較例1〜4で得られた繊維強化ポリアミド用塗工材を、40℃の条件で暗室で1週間静置し、溶液の状態を評価した。1週間の経過後、この樹脂溶液につき分離および沈殿がともに確認されなかったものを○、分離および/または沈殿の観察されたもので攪拌にて容易に分散できるものを△、分離および/または沈殿の観察された攪拌にて容易に分散できないものを×とし、その結果を表−2に示した。尚、硬化剤を混合したものでは評価を行わなかった。
<樹脂溶液のスプレー適性>
塗装ガンを使用し、塗装ブース内の温度30℃にて、実施例1〜13、比較例1〜4で得られた樹脂溶液をスプレーし、糸曳きが発生するか否かを観察し、発生しなかったものを○、1本でも発生したものを×とし、結果を表−2に記載した。
【0045】
2.繊維強化ポリアミドでの接着評価
≪試験1≫
前記で得られた2種の基材に、実施例1〜13、比較例1〜4で得られた樹脂溶液を乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工し、80℃、30分乾燥させた。これを室温にて1日放置したものについて、碁盤目剥離試験を行い、評価結果を表−2に記載した。
≪試験2≫
前記で得られた各種基材に、実施例5〜9、実施例12、13で得られた樹脂溶液を乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工し、80℃、30分乾燥させた。これを室温にて1日放置したものについて、60℃の温水に48時間浸漬し、浸漬後の塗膜の変化を目視で評価し、変化のあるものには×、変化のないものには○を表−2に記載した。また、変化のないものについては、前記の碁盤目剥離試験を行い、評価結果を表−2に記載した。尚、比較例は基材に密着しないため、評価を行わなかった。
≪試験3≫
前記で得られた各種基材に、実施例1〜10で得られた樹脂溶液を乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工した後、下記の塗料Aを乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗工し、80℃、30分乾燥させた。これを室温にて1日放置したものについて、碁盤目剥離試験を行い、評価結果を表−2に記載した。尚、比較例は基材に密着しないため、評価を行わなかった。
≪試験4≫
前記で得られた各種基材に、実施例10〜13で得られた樹脂溶液を乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工した後、下記の塗料Bを乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗工し、80℃、30分乾燥させた。これを室温にて1日放置したものについて、碁盤目剥離試験を行い、評価結果を表−2に記載した。尚、比較例は基材に密着しないため、評価を行わなかった。
≪試験5≫
前記で得られた各種基材に、実施例10〜13で得られた樹脂溶液を乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工した後、下記の塗料Cを乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工し、室温にて乾燥させた。これを、80W/cmの高圧水銀灯1灯を通過方向に垂直に設置した紫外線照射装置(日本電池(株)製、EPSH−600−3S型)を用い、光源下15cmの位置に置いてコンベアスピードを10m/分の速度で移動させ紫外線を照射し、塗膜を得た。照射後1日放置したものについて、碁盤目剥離試験を行い、評価結果を表−2に記載した。尚、比較例は基材に密着しないため、評価を行わなかった。
【0046】
碁盤目剥離試験
JIS−K−5400に記載されている碁盤目剥離試験の方法に準じ、碁盤目を付けた試験片を作成し、粘着テープ(ニチバン(株)品)を碁盤目上に貼り付けた後、速やかに90°方向に引っ張って剥離させ、碁盤目100個の中、剥離されなかった碁盤目数にて評価した。表−3には、剥離が全くなかったものを○、一部(30%未満)剥離したものを△、一部(30%以上)剥離したものを△×、全面剥離したものを×として評価結果を記載した。
塗料A:オレスターQ186(三井化学(株)製、商品名、不揮発分50%、水酸基価(ソリッド)60mgKOH/g)に紫外線吸収剤(TINUVIN327)を樹脂分に対して0.2%、酸化防止剤(IRGANOX1330)を樹脂分に対して0.2%、酸化チタン顔料(Tipeqe−CR93(石原産業(株)製商品名))を樹脂分に対して30%となる様に分散させた主剤と、NCOを含有する硬化剤であるタケネートD−160NをOH/NCO=0.95となる様に混合したものを用いた。
塗料B:オレスターQ186(三井化学(株)製、商品名、不揮発分50%、水酸基価(ソリッド)60mgKOH/g)に紫外線吸収剤(TINUVIN327)を樹脂分に対して0.2%、酸化防止剤(IRGANOX1330)を樹脂分に対して0.2%添加した主剤と、NCOを含有する硬化剤であるタケネートD−160NをOH/NCO=0.95となる様に混合したものを用いた。
塗料C:オレスターRA1573(三井化学(株)製、商品名、不揮発分100%)に光重合開始剤(チバスペシャリティケミカル(株)製、商品名、イルガキュア184)を樹脂分に対して3%添加したのち、酢酸エチルで樹脂分が80%となるよう希釈したものを用いた。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を含有するポリエステル(A)であって、水酸基価がソリッドで80〜450mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)が1000〜2万、かつ酸価がソリッドで5mgKOH/g未満である繊維強化ポリアミド用塗工材。
【請求項2】
SP値が10.2〜12.5、重量平均分子量(Mw)が2000〜50万であるアクリル系樹脂(B)をポリエステル(A)100重量部に対して100重量部未満含む請求項1に記載の繊維強化ポリアミド用塗工材。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載した塗工材を含む主剤と、活性水素および/または水酸基と反応可能な硬化剤を含有する繊維強化ポリアミド用塗工材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の繊維がガラス繊維である繊維強化ポリアミド用塗工材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の塗工材からなる繊維強化ポリアミド用塗料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の塗工材からなる繊維強化ポリアミド用プライマー。
【請求項7】
繊維強化ポリアミドに、請求項1〜6のいずれかに記載の材料を塗工して得られる成型体。

【公開番号】特開2007−16164(P2007−16164A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200335(P2005−200335)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】