説明

繊維構造物

【課題】洗濯耐久性に優れた撥水性と防汚性とを備えた繊維構造物を提供する。
【解決手段】単繊維表面に、トリアジン環含有重合性単量体を重合成分として含有してなる樹脂皮膜を有し、該皮膜中にフッ素系撥水撥油剤が含有されてなり、撥水度が4級以上であることを特徴とする繊維構造物。該繊維構造物の洗濯10回後の撥水度は3級以上である。トリアジン環含有重合性単量体とはトリアジン環を含有し、重合性官能基を少なくとも2個有する化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性のある撥水性と防汚性、詳しくは花粉付着防止性、泥防汚性を兼ね備えた繊維構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、春先になると飛散する花粉により鼻、目などに症状が起こり、不快感を覚えるいわゆる花粉症の人が増加し、花粉症は国民病ともいわれている。花粉症は治療方法が確立されておらず、予防策として人的にはマスクをしたり、また衣服面では花粉を付きにくくしたり、手で払うと落ちやすくしたりして家の中に持ち込まないようにする観点から様々な繊維布帛が提案されている。
【0003】
例えば、スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩などを有する化合物を使用するもの(特許文献1)は花粉のアレルゲン物質を化学的に吸着するもので、衣料に付きにくくするとか落ちやすくするなどの機能は有して無く、家の中に花粉を持ち込むことになる。また、
生地の表面にコロイダルシリカ類の微粒子を均一に付着させる方法(特許文献2)は、
花粉が付きにくく、落ちやすいという性能はある程度、有するものの、洗濯耐久性に欠けるという問題点がある。
また、野球やサッカーなどのスポーツ用途ユニホームや幼児や学生の制服、体操着の泥除去性の要求も年々高まっており、泥汚れ除去性に関するものとして、繊維表面のイオン性やゼータ電位に着目したものが提案されているが(特許文献3、4参照)、表面を親水化するものであり、撥水撥油性はなく用途が限定されるものであった
【特許文献1】特開平6−158494号公報
【特許文献2】特開2004−3046号公報
【特許文献3】特開2003−227072
【特許文献4】特開2004−137617
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、洗濯耐久性に優れた撥水性と防汚性、詳しくは花粉付着防止性、泥防汚性を兼ね備えた繊維構造物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
(1)単繊維表面に、トリアジン環含有重合性単量体を重合性分として含有してなる樹脂皮膜を有し、該皮膜中にフッ素系撥水撥油剤が含有されてなり、撥水度が4級以上であることを特徴とする繊維構造物。
(2)洗濯10回後の撥水度が3級以上である前記1記載の繊維構造物。
(3)該フッ素系撥水撥油剤が下記一般式1で示される有機フッ素系化合物の少なくとも一種である前記1または2記載の繊維構造物。
【0006】
【化1】

【0007】
(4)該皮膜中に無機微粒子または/およびまたは有機微粒子が含有されている前記1〜3のいずれかに記載の繊維構造物。
(5)該無機微粒子が酸化ケイ素である前記4記載の繊維構造物。
(6)下記測定法により測定したときの繊維構造物表面への擬似花粉の付着数が250個以下の布帛である前記1〜5のいずれかに記載の繊維構造物。
(測定方法)
7×7cmの繊維布帛30枚を20℃×65%RH環境下に24時間放置後、1gの擬似花粉とともにポリエチレンの袋の中に入れ、20℃×65%RHの空気で、約20リットルに膨らませて口を縛る。かかるポリエチレン袋を1回/1秒の速度で縛り口を基準に上下に100回振ったのち、繊維布帛を取り出し、繊維布帛表面を50倍に拡大した写真を3カ所撮り、写真の7.5×10cmの擬似花粉の個数を数え、3カ所の平均を計算する。
(7)下記測定法により測定したときの泥防汚性が4級以上である前記1〜5のいずれかに記載の繊維構造物。
(測定方法)
赤玉土/黒土/水を1/1/1の重量比で採取し、乳鉢に入れて粉砕混合し、汚染用泥を作製する。10cm×10cmの布地表面に、該汚染剤20gをナイフコーターで塗布し、24時間放置した後、汚染剤を手で叩き落とし、JI S L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
(8)前記1〜7のいずれかに記載の繊維構造物を用いてなる衣料用途品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、洗濯耐久性の撥水度と防汚性、具体的には花粉付着防止性、泥防汚性を有する繊維構造物を安定して供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、前記課題、つまり洗濯耐久性に優れた花粉付着防止性を付与することについて鋭意検討した結果、単繊維表面に、トリアジン環含有単量体の重合体とフッ素系撥水撥油剤および/または微粒子の混合された皮膜を形成することにより、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0010】
本発明のトリアジン環含有化合物とはトリアジン環を含有し、重合性官能基を少なくとも2個有する化合物であり、例えば下記一般式2で示されるものが挙げられる。
【0011】
【化2】

【0012】
本発明では、上記一般式で表されるもの以外に、上記化合物のエチレン尿素共重合化合物、ジメチロール尿素共重合化合物、ジメチロールチオ尿素共重合化合物、酸コロイド化合物なども使用することができる。
【0013】
本発明のフッ素系撥水撥油剤としては、撥水度が4級以上となるものが用いられる。例えばフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合単位を必須とする重合体が好ましく用いられ、共重合体であっても良い。フルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合単位を必須とする重合体とはフルオロアルキル基が(メタ)アクリル酸エステルのアルコール残基部分に存在する化合物である。かかるフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換された基をいう。フルオロアルキル基の炭素数は1〜20が好ましく、特に6〜16が好ましい。また、フルオロアルキル基は、直鎖状または分岐状の基が好ましい。分岐状の基である場合には、分岐部分がフルオロアルキル基の末端部分に存在し、かつ、炭素数1〜4程度の短鎖であるのが好ましい。さらにフルオロアルキル基は、アルキル基の水素原子の全てがフッ素原子に置換された基(すなわちパーフルオロアルキル基)、またはパーフルオロアルキル基を末端部分に有する基が好ましい。パーフルオロアルキル基の場合、炭素数は、4〜16が特に好ましい。炭素数が4未満の場合には、加工剤組成物の撥水性能が低下する傾向にあり、16より多い場合には、共重合体が常温で固体となり、昇華性も大きく、取扱いが困難になる恐れがある。かかるフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合単位を必須とする重合体は、かかる重合単位を1種または2種以上含んでいてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で分子中にOH基、COOH基、NH2基などの親水基を有するものや、ポリアルキレングリコールセグメントを有する化合物が含まれていてもよい。本発明のフッ素系撥水撥油剤の具体例として、以下の一般式1で示される化合物が挙げられる。
【0014】
【化3】

【0015】
本発明において、トリアジン環含有重合性単量体を重合成分としてなる樹脂とフッ素系撥水撥油剤の固形分重量配合比率は、5〜80/3〜30であることが好ましく、繊維重量あたり0.5〜5重量%付着させるのが好ましい。
【0016】
本発明においては、樹脂被膜中に無機系微粒子または/および有機微粒子が含有されていることが皮膜の均一形成性や皮膜強度の向上の点で好ましい。
無機微粒子としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、カオリン、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム等が例示され、これらを単独あるいは2種以上を混合して使用することができ、水分散体として使用するのが好ましい。中でも酸化ケイ素が好ましく使用できる。該粒子の数平均粒子径としては好ましくは5〜500nmであり、より好ましくは10〜100nmである。
有機微粒子としては、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂またはウレタン系樹脂などからなる粒子であり、該粒子の数平均粒子径としては好ましくは0.01〜5μmであり、より好ましくは0.1〜2μmである。
また、有機系粒子の表面をシリカやアルミナで被覆した複合粒子も使用することができる。該粒子の配合により、皮膜に微細な凹凸が形成されるので、花粉が付きにくく、かつ落ちやすい機能を高めることができる。また、皮膜の形成性がよくなり、強靱な皮膜となり耐久性を高めることができるものである。
【0017】
本発明において、微粒子を含有する場合、重合性単量体を重合成分としてなる樹脂と、フッ素系撥水撥油剤と微粒子との固形分重量配合比率は、8〜80/3〜30/1〜10であることが好ましく、繊維重量あたり0.5〜5重量%付着させることが好ましい。
【0018】
本発明においては、重合性単量体、フッ素系撥水撥油剤が配合された水系液に触媒を混合したものを繊維上に付与した後、重合皮膜化すべく熱処理を行う。かかる触媒としては、酢酸、蟻酸、アクリル酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、フタル酸、硫酸、過硫酸、塩酸、燐酸などの酸類およびこれらのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などであり、これらの一種以上を使用することができる。中でも、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが好ましく使用できる。かかる触媒は、重合性単量体の使用量に対して0.1〜20重量%の割合で使用することが好ましい。
【0019】
重合のための熱処理は、好ましくは50〜180℃の温度で0.1〜30分間の条件で乾熱処理または蒸熱処理する。蒸熱処理の方が繊維表面に均一な皮膜を形成しやすく、かつ皮膜強度も高く、得られた布帛の風合いが柔軟である。蒸熱処理は、好ましくは80〜160℃の飽和水蒸気または過熱水蒸気が用いられる。より好ましい飽和水蒸気は90〜130℃であり、過熱水蒸気は110〜160℃であり、いずれも数秒から数分の処理を行う。かかる蒸熱処理を行った後、未反応の単量体や触媒の除去、また染色堅牢度の確保のために、50〜95℃の温度で湯洗いか、ノニオン界面活性剤や炭酸ソーダ、ハイドロサルファイトなどを使用した洗浄を行うことが好ましい。
【0020】
本発明の樹脂皮膜としては、透過型電子顕微鏡(TEM)を100000倍の倍率として用いて観察した場合の厚みが5〜100nmであることが好ましい。
【0021】
本発明の樹脂皮膜には、多官能性イソシアネート化合物が含まれていても良い。多官能性イソシアネート系化合物としては、分子中に2個以上のイソシアネート官能基を含む有機化合物であれば特に限定されるものではなく、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニールメタンジイソシアネート、水素添加ジフェニールメタンジイソシアネート、トリフェニールトリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、フリセリントリレンジイソシアネートアダクトなどにブロッキング化化合物(イソシアネートアダクトとともに70〜200℃に加熱することで、イソシアネート基を再生させる化合物)である、フェノール、マロン酸ジエチルエステル、メチルエチルケトオキシム、重亜硫酸ソーダ、ε−カプロラクタムなどを反応させた多官能ブロックイソシアネートウレタン樹脂を挙げることができる。ブロックイソシアネートの熱分離速度の向上と熱解離温度の低下とを促進するために用いる解離触媒としてはジブチルスズジオレート、ジブチルスズステアレート、ステアリル亜鉛、有機アミン化合物が好ましい。かかる混合剤の混合は、フッ素系撥水撥油剤の耐久性を高める効果があり、重合性単量体、フッ素系撥水撥油剤配合処理液に0.01〜1%の濃度で混合すればよい。
本発明の繊維構造物は、耐久性ある花粉付着防止性能をも有するものである。花粉付着防止性能を、擬似花粉を用いて評価した場合に、以下の性能を有することが好ましい。擬似花粉とは、石松子((有)津田商店 製)という花粉の粒径に近い天然物を指す。石松子は粒径30〜40μmのシダ科のヒカゲノカズラの胞子で花粉に近い粒径、形状を有するものであり、この石松子を擬似花粉として花粉の付着防止性を確認することが可能である。該花粉付着防止性能を測定する方法は、以下の方法により実施される。すなわち、7×7cmの繊維布帛30枚を20℃×65%RHの環境下に24時間放置後、1gの擬似花粉とともにポリエチレンの袋の中に入れ、20℃×65%RHの空気で、約20リットルに膨らませて口を縛る。かかるポリエチレン袋を1回/1秒の速度で縛り口を基準に上 下に100回振ったのち、繊維布帛を取り出し、繊維布帛表面を50倍に拡大した写真を任意に3カ所撮り、写真の7.5×10cmの範囲内の擬似花粉の個数を数え、3カ所の平均を計算する。
【0022】
本発明の繊維構造物は、該測定方法による花粉付着防止性能が、3カ所の平均値の個数が250個以下であるものであるのが好ましい。付着個数が250個を越えると、布帛表面を肉眼で見たときに明らかに花粉の付着が確認され、花粉が付着しにくいとは言い難いものである。本発明においては、フッ素系撥水剤の離形効果と微粒子による皮膜の凹凸効果により、上記の疑似花粉の付着数を250個以下とすることができる。
本発明の繊維構造物は、耐久性ある制電性と撥水撥油性に加えて泥防汚性能をも有するものである。本発明の効果は、次の方法で評価した場合、以下の性能を有することが好ましい。赤玉土、黒土を用いて、赤玉土/黒土/水を1/1/1の重量比で採取し、乳鉢に入れて粉砕混合し、汚染用泥を作製し、10cm×10cmの布地表面に、該汚染剤20gをナイフコーターで塗布し、24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定し、3級以上であり、好ましくは4級以上である。3級を下回ると汚染防止性が良いとは言い難いものである。本発明においては、フッ素系撥水剤の離形効果により、上記の泥防汚性を4級以上とすることができる。
本発明の繊維構造物に使用される繊維素材としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル系繊維、芳香族ポリエステルに第三成分例えば、イソフタル酸、イソフタル酸スルホネート、アジピン酸およびポリエチレングリコールなどが共重合またはブレンドした芳香族ポリエステル系繊維、L−乳酸を主成分とするもので代表される脂肪族ポリエステル系繊維、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリアクリルニトリルを主成分とするアクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などの合成繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維、木綿、麻、絹および羊毛などの天然繊維などが挙げられる。本発明ではこれらの繊維を単独または2種以上の混合物として使用することができるが、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維を主成分にした繊維が好ましく使用される。
【0023】
本発明で用いられる繊維は、通常のフラットヤーン以外に、仮撚り加工糸、強撚糸、タスラン糸、太細糸および混繊糸などのフラットヤーンであってもよく、ステープルファイバーやトウ、あるいは紡績糸などの各種形態の繊維であってもよい。
【0024】
本発明の繊維構造物には、前記繊維を使用してなる編物、織物または不織布などの布帛状物、あるいは紐状物などが含まれる。
【0025】
本発明の繊維構造物は、耐久性ある花粉付着防止性を有することから、特にアウターと呼ばれる衣服や寝装具、具体的には、コート、ブルゾン、ウインドブレーカー、ブラウス、ドレスシャツ、スカート、スラックス、手袋、帽子、布団側地、布団干しカバー、カーテンまたはテント類など、衣料用途品、非衣料用途品などの用途に好適に使用されるものである。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例中の品質評価は次の方法で実施した。
【0027】
(撥水性)
JIS L 1092「繊維製品の防水性試験方法」(1998年)に規定される方法でスプレー法により評価を行い、級判定を行った。
【0028】
(花粉付着防止性)
7×7cmの繊維布帛30枚を20℃×65%RHの環境下に24時間放置後1gの擬似花粉とともにポリエチレンの袋の中に入れ、20℃×65%RHの空気で、約20リットル に膨らませて口を縛る。かかるポリエチレン袋を1回/1秒の速度で縛り口を基準に上 下に100回振ったのち、繊維布帛を取り出し、繊維布帛表面を50倍に拡大した写真を任意に3カ所撮り、写真の7.5×10cmの範囲内の擬似花粉の個数を数え、3カ所の平均を計算する。
【0029】
(泥防汚性)
赤玉土、黒土を用いて、赤玉土/黒土/水を1/1/1の重量比で採取し、乳鉢に入れて粉砕混合し、汚染用泥を作製する。10cm×10cmの布地表面に、該汚染剤20gをナイフコーターで塗布し、24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
【0030】
(洗濯耐久性)
自動反転渦巻き電気洗濯機に、JIS K 337に規定される弱アルカリ性合成洗剤を0.2重量%の濃度になるように溶解し、浴比1:50で、40±2℃の温度で、強条件で10分洗濯し、次いで排水しオーバーフロー水洗10分×2回をする工程を1回としてこれを10回繰り返した後、風乾した。
【0031】
(実施例1〜7、比較例1〜6)
ポリエチレンテレフタレートからなる84dtex、72フィラメントの仮撚り加工糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して平織物を製織したのち、該織物を95℃の温度で、連続式精練機で常法に従い精練、湯水洗し、次いで130℃で乾燥、180℃でピンテンターセットした。次いで、液流染色機を用いて130℃の温度で蛍光白色に染色し、湯水洗、乾燥し170℃でピンテンターセットしたものを泥防汚性評価用に、黒色に染色し、常法により還元洗浄、湯水洗、乾燥し170℃でピンテンターセットしたものを花粉防汚性評価用とした。白色および黒色織物共に織物密度はタテ/ヨコ密度140/88本/2.54cmであった。
【0032】
該白色および黒色織物を次に示す方法で処理し、性能を評価した結果を表1に示した。いずれも、耐久性のある制電性、撥水性、花粉付着防止性、泥防汚性を有し風合いも柔軟であった。
【0033】
以下に処理方法を示す。以下のA〜Eを、表1に示す処理液組成の割合で混合して処理液を調整し、該処理液に織物を浸漬して、マングルで絞り、処理液の付着量が90重量%になるように調整した後、105℃の飽和水蒸気雰囲気中にて5分間の処理を行った。
【0034】
次いで、非イオン界面活性剤1g/L、炭酸ナトリウム1g/Lとした60℃の水溶液中で1分洗浄し、水洗し、130℃で乾燥し、170℃でピンテンターセットした。
(重合性単量体)
A:ベッカミンM3(大日本インキ(株)製、トリメチロールメラミン、固形分80%)
(フッ素系撥水撥油剤)
B:F470((株)京絹化成製、フッ素系撥水撥油剤、固形分20%)
C:F200((株)京絹化成製、フッ素系撥水撥油剤、固形分20%)
(無機微粒子)
D:スノーテックスAK(日産化学工業(株)製、酸化ケイ素、固形分20%、粒径10〜20nm)
(有機微粒子)
E:ケミパールS−120(住友化学(株)製、オレフィン樹脂、固形分30%、粒径20〜30nm)
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維表面に、トリアジン環含有重合性単量体を重合成分として含有してなる樹脂皮膜を有し、該皮膜中にフッ素系撥水撥油剤が含有されてなり、撥水度が4級以上であることを特徴とする繊維構造物。
【請求項2】
洗濯10回後の撥水度が3級以上である請求項1記載の繊維構造物。
【請求項3】
該フッ素系撥水撥油剤が下記一般式1で示される有機フッ素系化合物の少なくとも一種である請求項1または2記載の繊維構造物。
【化1】

【請求項4】
該皮膜中に無機微粒子または/およびまたは有機微粒子が含有されている請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造物。
【請求項5】
該無機微粒子が酸化ケイ素である請求項4記載の繊維構造物。
【請求項6】
下記測定法により測定したときの繊維構造物表面への擬似花粉の付着数が250個以下の布帛である請求項1〜5のいずれかに記載の繊維構造物。
(測定方法)
7×7cmの繊維布帛30枚を20℃×65%RH環境下に24時間放置後、1gの擬似花粉とともにポリエチレンの袋の中に入れ、20℃×65%RHの空気で、約20リットルに膨らませて口を縛る。かかるポリエチレン袋を1回/1秒の速度で縛り口を基準に上下に100回振ったのち、繊維布帛を取り出し、繊維布帛表面を50倍に拡大した写真を3カ所撮り、写真の7.5×10cmの擬似花粉の個数を数え、3カ所の平均を計算する。
【請求項7】
下記測定法により測定したときの泥防汚性が4級以上である請求項1〜5のいずれかに記載の繊維構造物。
(測定方法)
赤玉土/黒土/水を1/1/1の重量比で採取し、乳鉢に入れて粉砕混合し、汚染用泥を作製する。10cm×10cmの布地表面に、該汚染剤20gをナイフコーターで塗布し、24時間放置した後、JIS L0217−103法に規定される方法で洗濯を行い、汚染の程度を汚染用グレースケールで(級)判定する。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の繊維構造物を用いてなる衣料。

【公開番号】特開2008−163476(P2008−163476A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351133(P2006−351133)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】