繊維構造物
【課題】消臭速度が速く、かつ、消臭容量の高い高度な消臭性と抗菌性、制電性および吸水性を有する多機能の繊維構造物を提供する。
【解決手段】
単繊維表面にポリアルキレンオキサイドセグメントを主鎖の両末端または一方の末端あるいは主鎖の側鎖として少なくとも２個のアクリル基および／またはメタクリル基を有する重合性単量体（単量体Ａ）および／またはトリアジン環含有重合性単量体（単量体Ｂ）を重合成分としてなる樹脂皮膜を有し、かつ、該皮膜中に、酸性基を有する化合物が含有されている繊維構造物。
【解決手段】
単繊維表面にポリアルキレンオキサイドセグメントを主鎖の両末端または一方の末端あるいは主鎖の側鎖として少なくとも２個のアクリル基および／またはメタクリル基を有する重合性単量体（単量体Ａ）および／またはトリアジン環含有重合性単量体（単量体Ｂ）を重合成分としてなる樹脂皮膜を有し、かつ、該皮膜中に、酸性基を有する化合物が含有されている繊維構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は耐久性のある汗臭などの消臭性、抗菌性、制電性、吸水性に優れた繊維構造物に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
近年、生活の多様化に伴い、健康および衛生面に関する意識が高まり、衣食住の各分野において消臭、抗菌機能などを有する製品が実用化されている。特に、健康増進の観点から屋内外で様々な運動が活発に行われており、運動で生ずる汗の吸収性が良く、汗の臭いを短時間で消臭し、かつ、多量の汗を吸収、消臭する即効性、消臭容量が大きく、更には衣服の着脱時に不快な静電気が発生しにくい繊維製品の要望が高まっている。また、老齢化に伴う介護においては多様な消臭機能、抗菌性を有する製品の要望が高い。
【０００３】
消臭性を付与する方法としては、金属フタロシアニンなどの金属錯体を用いる方法（特許文献１）、植物などからの消臭性抽出物を繊維に付着させる方法（特許文献２）、光触媒と抗菌剤を用いる方法（特許文献３）等が提案されているが、いずれも消臭の反応速度が遅く、消臭の実感に乏しいという問題がある。また、カルボキシル基を有する化合物に金属塩を混合する消臭剤（特許文献４）が提案されているが、水溶性であるために耐洗濯性が十分で無いという問題がある。制電性や吸水性を兼ね備えた多機能を有するものの例示はない。
【特許文献１】特開昭６４−２０８５２号公報
【特許文献２】特開平９−２７１４８４号公報
【特許文献３】特開２００４−０５２２０８号公報
【特許文献４】特許３５７７６４９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明は、消臭速度が速く、かつ、消臭容量の高い高度な消臭性と抗菌性、制電性および吸水性を有する多機能の繊維構造物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用する。
（１）単繊維表面にポリアルキレンオキサイドセグメントを主鎖の両末端または一方の末端あるいは主鎖の側鎖として少なくとも２個のアクリル基および／またはメタクリル基を有する重合性単量体（単量体Ａ）および／またはトリアジン環含有重合性単量体（単量体Ｂ）を重合成分としてなる樹脂皮膜を有し、かつ、該皮膜中に、酸性基を有する化合物が含有されている繊維構造物。
（２）該単量体Ａ１００重量部に対して単量体Ｂが１〜５０重量部の割合で重合性分として含有される上記（１）記載の繊維構造物。
（３）該酸性基の一部がアルカリ金属で置換されている上記（１）または（２）に記載の繊維構造物。
（４）該酸性基がカルボキシル基である上記（１）〜（３）のいずれかに記載の繊維構造物。
（５）該カルボキシル基含有化合物が下記式１で示される脂肪族ポリカルボン酸であって、分子量が１０００以上１００００以下である上記（１）〜（４）のいずれかに記載の繊維構造物。
【０００６】
【化１】
【０００７】
（６）該カルボキシル基含有化合物がアクリル酸またはメタクリル酸との共重合物である上記（１）〜（４）のいずれかに記載の繊維構造物。
（７）該共重合成分がエチレンである上記（６）に記載の繊維構造物。
（８）該重合性単量体からなる樹脂皮膜が銀、銅、亜鉛、および鉄から選ばれた少なくとも一種の金属およびまたはこれらの金属塩類を含有する上記（１）〜（７）のいずれかに記載の繊維構造物。
（９）該重合性単量体からなる樹脂皮膜が、ＴｉＯ2、ＺｎＯ、ＳｒＴｉＯ3、ＣｄＳ、ＣｄＯ、ＣａＰ、ＩｎＰ、Ｉｎ2Ｏ3、ＣａＡｓ、ＢａＴｉＯ3、Ｋ2ＮｂＯ3、Ｆｅ2Ｏ3、Ｔａ2Ｏ5、ＷＯ3、ＳｂＯ2、Ｂｉ2Ｏ3、ＮｉＯ、Ｃｕ2Ｏ、ＳｉＣ、ＳｉＯ2、ＭｏＳ2、ＭｏＳ3、ＩｎＰｂ、ＲｕＯ2、ＣｅＯ2からなる群から選ばれる少なくとも一種の光触媒半導体機能を有する化合物を含有する上記（１）〜（８）のいずれかに記載の繊維構造物。
（１０）上記（１）〜（９）のいずれかに記載の繊維構造物を用いてなる衣料品。
【発明の効果】
【０００８】
本発明によれば、洗濯耐久性に優れる即効性があり消臭容量の高い消臭性、抗菌性、制電性および吸水性を有する繊維構造物を安定に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００９】
本発明は、前記課題、つまり洗濯耐久性に優れた即効性があり消臭容量の高い消臭性、抗菌性、制電性、吸水性を付与することについて鋭意検討した結果、単繊維表面に、ポリアルキレンオキサイドセグメントを主鎖の両末端または一方の末端あるいは主鎖の側鎖として少なくとも２個のアクリル基および／またはメタクリル基を有する単量体（単量体Ａ）および／またはトリアジン環含有重合性単量体（単量体Ｂ）と、酸性基を有する化合物の混合された皮膜を形成することにより、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【００１０】
本発明の重合性単量体は、単量体Ａと単量体Ｂをそれぞれ単独あるいは両者を混合して使用することができる。単量体を混合して使用する場合は、単量体Ａが１００重量部に対して単量体Ｂを１〜５０重量部、好ましくは２〜２０重量部で混合する。単量体の混合により、皮膜形成性および皮膜強度が向上し、洗濯耐久性が更に高まるものである。
【００１１】
本発明の単量体Ａとしては、例えばポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールＡのエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールＡのエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールＡのプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールＡのプロピレンオキサイド付加物ジアクリレートなどを、単独あるいは２種以上の混合物として使用することができる。
【００１２】
本発明の単量体Ｂとしては、トリアジン環を有し、重合性官能基を少なくとも２個有する化合物であり、例えば下記式２で示されるものが挙げられる。
【００１３】
【化２】
【００１４】
本発明では、上記一般式で表されるもの以外に、上記化合物のエチレン尿素共重合化合物、ジメチロール尿素共重合化合物、ジメチロールチオ尿素共重合化合物、酸コロイド化合物なども使用することができる。
【００１５】
本発明の酸性基を有する化合物の酸性基とは、カルボン酸、スルホン酸、ホスキン酸などの通常の酸性基を意味し、アンモニアなどの塩基性悪臭物質と反応して、効率的に消臭するものである。
【００１６】
本発明の酸性基は、その一部がアルカリ金属で置換されているものであることが好ましい。かかるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの少なくとも一種を使用することができる。アルカリ金属で置換された酸性基は、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸などの酸性悪臭物質と反応して消臭する。
【００１７】
本発明の酸性基およびアルカリ金属で置換された酸性基の量は、消臭性、耐久性、製品の諸物性などのバランスを考慮して適宜決定すればよい。
【００１８】
本発明の酸性基を有する化合物の中でも、カルボン酸が、安全性、悪臭物質との反応性、化合物の製造面から好ましく使用される。カルボン酸化合物としては、カルボキシル基を含有している化合物であるならば特に限定されることなく用いることができる。
【００１９】
カルボン酸化合物としては、下記式１で示される脂肪族ポリカルボン酸化合物が、好ましく使用される。
【００２０】
【化３】
【００２１】
（ただし、式中のＲは水素、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、水酸基のいずれかであり、ｎは１以上５００以下の正数を示す。）
ここで、置換アルキル基、置換アルケニル基は、水酸基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミド基、スルホン基、スルホンアミド基などを含むものが好ましく用いられる。Ｒは同種であっても、異種であっても良い。
【００２２】
中でも、水酸基を有する水酸化合物や、スルホン基を有するスルホン酸化合物などを用いる場合は、カルボキシル基と同様の消臭効果が期待できる。これらの化合物の場合はカルボン酸化合物に比して、皮膚刺激性などの安全性が劣るきらいがあるので、注意しなければならない。上記式で示される脂肪族ポリカルボン酸化合物の分子量は、１０００以上１０００００以下が好ましいが、さらに好ましくは１５００以上８００００以下、より好ましくは２０００以上５００００以下である。また、上記式中のｎは１以上５００以下の正数を意味する。分子量は、ＧＰＣ（ゲルパーミエーションクロマトグラフ）を用い測定した値である。
【００２３】
カルボン酸化合物としては、アクリル酸またはメタクリル酸を必須成分とする共重合化合物が、好ましく使用される。共重合成分としては、アクリル酸エステル、エチレン、スチレン、酢酸ビニルなどが挙げられるが、中でもアクリル酸エステル、エチレンが化合物の製造性、加工剤としての水系分散化などの観点から好ましく使用できる。
【００２４】
本発明の酸性基を有する化合物の使用量は、目的とする消臭性能に応じて適宜、決定することができるものであるが、単量体Ａ、単量体Ｂを含む重合性単量体１００重量部に対し、好ましくは１〜１００重量部である。１重量部未満では十分な消臭性能が得られない場合があり、１００重量部を超えると単量体の重合皮膜形成を阻害する場合がある。かかる単量体と酸性基を有する化合物の繊維への付着量は目的とする消臭性能に応じて決定すればよい。
【００２５】
本発明は、単量体Ａ、単量体Ｂを含む重合性単量体と水酸基を有する化合物に触媒が混合された水系液を繊維上に付与した後、重合皮膜化すべく熱処理を行う。かかる触媒としては、酢酸、蟻酸、アクリル酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、フタル酸、硫酸、過硫酸、塩酸、燐酸などの酸類およびこれらのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などであり、これらの一種以上を使用することができる。中でも、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが好ましく使用される。かかる触媒は、重合性単量体の使用量に対して０．０１〜２０重量％の割合で使用することが好ましい。
【００２６】
重合のための熱処理は、好ましくは５０〜１８０℃の温度で０．１〜３０分間の乾熱処理または湿熱処理をするものであるが、蒸熱処理の方が繊維表面に均一な皮膜を形成しやすく、かつ皮膜強度も高く、風合いが柔軟である。蒸熱処理には、好ましくは８０〜１６０℃の飽和水蒸気または過飽和水蒸気が用いられる。より好ましい飽和水蒸気は９０〜１３０℃であり、過熱水蒸気は１１０〜１４０℃であり、いずれも数秒から十数分の処理を行う。かかる蒸熱処理は、繊維上に水系液を付与した後に濡れた状態で処理するか、水系液を付与した後、８０〜１３０℃で乾燥した後に処理するいずれの方法も採用することができる。かかる蒸熱処理を行った後、未反応の単量体や触媒の除去のために、５０〜９５℃の温度で湯洗いか、ノニオン界面活性剤や炭酸ソーダ、ハイドロサルファイトなどを使用した洗浄を行うことが好ましい。
【００２７】
上記の処理においては、金属またはそれらの金属塩類を使用することができる。かかる金属としては、銀、銅、亜鉛および鉄などから選ばれた少なくとも一種を使用することができ、塩類としては硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩などである。これらの金属成分はイオンの形態で樹脂皮膜中に存在することが更に好ましく、メチルメルカプタン、ジメチルジサルファイドおよびジメチルトリサルファイドなどの硫黄系の悪臭の消臭や抗菌性を付与するのに好都合である。かかる金属あるいはその塩類の使用量は、目的とする消臭性や抗菌性の性能に応じて決定するが、好ましくは重合性単量体１００重量部に対して０．０１〜３０重量部である。
【００２８】
本発明の繊維構造物には、光触媒機能を有する化合物を使用することができる。具体的には光触媒半導体が用いられ、光を照射すると光触媒半導体が励起され、酸化、還元作用で有害物質を分解し、消臭、抗菌、防カビおよび防汚の効果を発揮するも。かかる光触媒半導体としては、ＴＩＯ2 、ＺｎＯ、ＳｒＴｉＯ3 、ＣｄＳ、ＣｄＯ、ＣａＰ、ＩｎＰ、Ｉｎ2 Ｏ3 ，ＣａＡｓ、ＢａＴｉＯ3 、Ｋ2 ＮｂＯ3 、Ｆｅ2 Ｏ3 、Ｔａ2 Ｏ5 、ＷＯ3 、ＳａＯ2 、Ｂｉ2 Ｏ3 、ＮｉＯ、Ｃｕ2 Ｏ、ＳｉＣ、ＳｉＯ2 、ＭｏＳ2 、ＭｏＳ3 、ＩｎＰｂ、ＲｕＯ2 、ＣｅＯ2 などを使用することができ、これらの光触媒半導体を単一または２種以上組み合わせて用いることができる。特に高い光触媒作用を有し、化学的に安定で、かつ、無害である酸化チタン系化合物が好ましく使用される。かかる酸化チタンとしては通常の酸化チタンのほかに含水酸化チタン水和酸化チタン、水酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸から選ばれた少なくとも一種を使用することができる。これらのなかでもアナターゼ型結晶形を有する酸化チタンが、優れた光触媒活性を発揮し、さらにその粒子径としては、１〜３０ｎｍのものが好ましく使用される。かかる酸化チタンなどの光触媒半導体の粒子径は、粉末Ｘ線解析で得られるピークの反値幅より下記のシェラーの式を用いて算出する。
【００２９】
Ｌｃ＝０．９λ／（Ｗ・ｃｏｓθ）
式中、Ｌｃは粒子径（ｎｍ）、λはＸ線の波長（ｎｍ）、Ｗはピークの半値幅（ｒａｄ）、θはピーク位置の角度である。
【００３０】
さらにアパタイト被覆型酸化チタンと呼ばれるリン酸カルシウムなどの無機物を酸化チタン表面に被覆せしめたものや、酸化チタンの結晶格子中にケイ素等が入り、複合酸化物の状態にせしめた光触媒が好ましく使用される。触媒の固体表面にチタンなどの触媒がむき出しになっていない分、適度な活性コントロールが可能となり、後述のバインダー樹脂や本発明の酸性基を有する化合物を分解しにくくなるため好ましい。
【００３１】
かかる光触媒半導体の使用量は、目的とする消臭性能に応じて決定することができるが、
重合性単量体１００重量部に対して１〜５０重量部である。
【００３２】
本発明の効果を阻害しない範囲で、帯電防止剤、吸水剤、吸湿剤、抗菌剤、防かび剤、撥水剤、撥油剤、防汚剤、着色剤、増摩剤などが含有されていてもかまわない。
【００３３】
本発明の繊維構造物に使用される繊維素材としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル系繊維、芳香族ポリエステルの酸性分あるいはアルコール成分として、例えば、イソフタル酸、イソフタル酸スルホネート、アジピン酸などを用いた共重合体からなる繊維、ポリエチレングリコールなどをブレンドした芳香族ポリエステル系繊維、Ｌ−乳酸を主成分とするもので代表される脂肪族系ポリエステル系繊維、ナイロン６やナイロン６６などのポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリルを主成分とするアクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などの合成繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維、木綿、絹、麻および羊毛などの天然繊維などが挙げられる。本発明ではこれらの繊維を単独または二種以上の混合物として使用することができるが、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維を主成分とした繊維が好ましく使用される。
【００３４】
本発明で用いられる繊維は、通常のフラットヤーン以外に、仮撚り加工糸、強撚糸、タスラン糸、太細糸および混繊糸などのフラットヤーンであってもよく、ステープルファイバーやトウ、あるいは紡績糸などの各種形態の繊維であっても良い。また、繊維の断面は円形でも三角断面やＨ断面のような異型断面を使用することができる。
【００３５】
本発明の繊維構造物には、前記繊維を使用してなる織物、編物または不織布などの布帛状物、あるいは紐状物などが含まれる。
【００３６】
本発明の繊維構造物は、衣料品として好ましく用いられ、衣料品としては、例えばスポーツウエア、ホームウエア、コート、ブルゾン、ブラウス、シャツ、スカート、スラックス、室内運動着、パジャマ、寝間着、肌着、オフィスウェア、作業服、食品白衣、看護白衣、患者衣、介護衣、学生服、厨房衣などが挙げられる。雑貨用品としては、エプロン、タオル、手袋、マフラー、靴下、帽子、靴、サンダル、かばん、傘などが挙げられる。インテリア用品としても好ましく用いられ、カーテン、じゅうたん、マット、こたつカバー、ソファーカバー、クッションカバー、ソファー用側地、便座カバー、便座マット、テーブルクロスなどに用いられる。寝具用品としても好ましく用いられ、布団用側地、布団用詰めわた、毛布、毛布用側地、枕の充填材、シーツ、防水シーツ、布団カバー、枕カバーなどとして用いられる。介護用品としては、サポーター、コルセット、リハビリ用靴や、肌着、おむつカバー、小物、などとして好適に用いられる。
【実施例】
【００３７】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【００３８】
なお、実施例中における各種の品質評価方法は下記の方法を用いた。
（制電性）
ＪＩＳ Ｌ １０９４Ｂ法（摩擦帯電圧測定法）に規定される方法で、２０℃×３０％ＲＨの雰囲気中で、対象布を木綿として摩擦帯電圧を測定し、（ｋＶ）で表示した。数値が小さいほど、制電性が良いことを示す。
（吸水性）
ＪＩＳ Ｌ １０９６に規定される方法で、布帛上に水滴を落とし、それが完全に吸収されるまでの時間を測定し、（秒）で表示した。
（消臭性）
試料を３ｇ入れた５００ｍｌの容器に初期濃度が３００ｐｐｍになるようにアンモニアガスを入れて密閉し、以下に示す条件で残留アンモニア濃度をガス検知管で測定し、下記の式に従い消臭率を算出した。
【００３９】
消臭率（％）＝（１−ガス検知管測定濃度／初期濃度）×１００
消臭性Ａ：密閉後、１０分および３０分後の消臭率を測定し、消臭の即効性とした。
消臭性Ｂ：３０分後の消臭性を測定したサンプルを新たに準備したアンモニア入り容器に入れて３０分後の消臭率を測定し、繰り返し処理の消臭性を調べ、消臭の容量力とした。
消臭性Ａ、Ｂとも数値が大きいほど、消臭性が良好なことを示す。
（抗菌性）
評価方法は、統一試験法を採用し、試験菌体は黄色ブドウ状球菌を用いた。試験方法は、滅菌試験布に上記試験菌を注加し、１８時間培養後の生菌数を計測し、殖菌数に対する菌数を求め、次の基準にしたがった。
【００４０】
ｌｏｇ（Ｂ／Ａ）＞１．５の条件下、ｌｏｇ（Ｂ／Ｃ）を菌数増減値差とし、２．２以上を合格とし、合格を○、不合格を×で示した。
【００４１】
ただし、Ａは無加工品の接種直後分散回収した菌数、Ｂは無加工品の１８時間培養後分散回収した菌数、Ｃは加工品の１８時間培養後分散回収した菌数を表す。
（洗濯耐久性）
自動反転渦巻き式電気洗濯機を用い、ＪＩＳ Ｋ ３３７で規定される弱アルカリ性合成洗剤を０．２％の濃度になるように溶解し、温度４０±２℃、浴比１：５０、５分間強反転で洗濯し、その後排水、オーバーフローさせながらすすぎを２分間行う操作を２回繰り返し、これを洗濯１回として２０回相当の洗濯を行って、洗濯による耐久性の試験とした。
実施例１〜１２、比較例１〜４
ポリエチレンテレフタレートからなる８４デシテックス、７２フィラメントの仮撚り加工糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して平織物を製織した後、常法に従い精練、湯水洗し、１３０℃で乾燥、１８０℃でピンテンターセットした。次いで液流染色機を用いて１３０℃の温度で蛍光白色に染色し、常法により湯水洗、乾燥し、１７０℃の温度でピンテンターセットし、タテ／ヨコ密度１３０／７５本／２．５４ｃｍの織物とした。
【００４２】
該白色織物を次に示す方法で処理し、得られた織物の性能を評価した結果を表１に示した。いずれも耐久性のある消臭性、抗菌性、制電性、吸水性であった。
＜重合性単量体＞
（単量体ａ）ポリアルキレンオキサイドセグメントの分子量が１０００であるポリエチレングリコールジメタクリレート（ＮＫエステル２３Ｇnew、固形分１００％、新中村化学社製）
（単量体ｂ）トリメチロールメラミン（ベッカミンＭ３、固形分８０％、大日本インキ社製）
＜カルボン酸化合物＞
（化合物ア）脂肪族カルボン酸塩（ＳＺ−２Ｂ−ＺＣ、銅イオン、亜鉛イオン含有、固形分１７％、ナガセケムテックス社製）
（化合物イ）エチレン・メタクリル酸共重合体（ＴＣＺ−０２７、固形分７％、大京化学社製）
（化合物ウ）エチレン・メタクリル酸共重合体（ケミパールＳ６５０、固形分２７％、三井化学社製）
（化合物エ）アクリル酸エステル・ポリアクリル酸共重合体（ＴＭ−Ｃ０１、固形分３０％、松本油脂製薬社製）
＜金属塩＞
硫酸銅
＜光触媒＞
酸化チタンの金属酸化物被覆体（ＴＣＺ−ＮＯ１、固形分１５％、大京化学社製）
＜樹脂皮膜化処理＞
単量体とカルボン酸化合物、必要に応じて光触媒を混合した水系液に触媒として過硫酸アンモニウムを０．３重量％の濃度で溶解して処理液を調整した。
【００４３】
該処理液に織物を浸漬し、水系液の付着量が９０％になるようにマングルで絞り、１２０℃で乾燥した後、１０８℃の温度の飽和水蒸気中で５分間処理しを行った。引き続き、６０℃の温度で湯洗い、水洗し、１３０℃の温度で乾燥し、１６０℃の温度でヒートセットした。
【００４４】
【表１】
【技術分野】
【０００１】
本発明は耐久性のある汗臭などの消臭性、抗菌性、制電性、吸水性に優れた繊維構造物に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
近年、生活の多様化に伴い、健康および衛生面に関する意識が高まり、衣食住の各分野において消臭、抗菌機能などを有する製品が実用化されている。特に、健康増進の観点から屋内外で様々な運動が活発に行われており、運動で生ずる汗の吸収性が良く、汗の臭いを短時間で消臭し、かつ、多量の汗を吸収、消臭する即効性、消臭容量が大きく、更には衣服の着脱時に不快な静電気が発生しにくい繊維製品の要望が高まっている。また、老齢化に伴う介護においては多様な消臭機能、抗菌性を有する製品の要望が高い。
【０００３】
消臭性を付与する方法としては、金属フタロシアニンなどの金属錯体を用いる方法（特許文献１）、植物などからの消臭性抽出物を繊維に付着させる方法（特許文献２）、光触媒と抗菌剤を用いる方法（特許文献３）等が提案されているが、いずれも消臭の反応速度が遅く、消臭の実感に乏しいという問題がある。また、カルボキシル基を有する化合物に金属塩を混合する消臭剤（特許文献４）が提案されているが、水溶性であるために耐洗濯性が十分で無いという問題がある。制電性や吸水性を兼ね備えた多機能を有するものの例示はない。
【特許文献１】特開昭６４−２０８５２号公報
【特許文献２】特開平９−２７１４８４号公報
【特許文献３】特開２００４−０５２２０８号公報
【特許文献４】特許３５７７６４９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明は、消臭速度が速く、かつ、消臭容量の高い高度な消臭性と抗菌性、制電性および吸水性を有する多機能の繊維構造物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用する。
（１）単繊維表面にポリアルキレンオキサイドセグメントを主鎖の両末端または一方の末端あるいは主鎖の側鎖として少なくとも２個のアクリル基および／またはメタクリル基を有する重合性単量体（単量体Ａ）および／またはトリアジン環含有重合性単量体（単量体Ｂ）を重合成分としてなる樹脂皮膜を有し、かつ、該皮膜中に、酸性基を有する化合物が含有されている繊維構造物。
（２）該単量体Ａ１００重量部に対して単量体Ｂが１〜５０重量部の割合で重合性分として含有される上記（１）記載の繊維構造物。
（３）該酸性基の一部がアルカリ金属で置換されている上記（１）または（２）に記載の繊維構造物。
（４）該酸性基がカルボキシル基である上記（１）〜（３）のいずれかに記載の繊維構造物。
（５）該カルボキシル基含有化合物が下記式１で示される脂肪族ポリカルボン酸であって、分子量が１０００以上１００００以下である上記（１）〜（４）のいずれかに記載の繊維構造物。
【０００６】
【化１】
【０００７】
（６）該カルボキシル基含有化合物がアクリル酸またはメタクリル酸との共重合物である上記（１）〜（４）のいずれかに記載の繊維構造物。
（７）該共重合成分がエチレンである上記（６）に記載の繊維構造物。
（８）該重合性単量体からなる樹脂皮膜が銀、銅、亜鉛、および鉄から選ばれた少なくとも一種の金属およびまたはこれらの金属塩類を含有する上記（１）〜（７）のいずれかに記載の繊維構造物。
（９）該重合性単量体からなる樹脂皮膜が、ＴｉＯ2、ＺｎＯ、ＳｒＴｉＯ3、ＣｄＳ、ＣｄＯ、ＣａＰ、ＩｎＰ、Ｉｎ2Ｏ3、ＣａＡｓ、ＢａＴｉＯ3、Ｋ2ＮｂＯ3、Ｆｅ2Ｏ3、Ｔａ2Ｏ5、ＷＯ3、ＳｂＯ2、Ｂｉ2Ｏ3、ＮｉＯ、Ｃｕ2Ｏ、ＳｉＣ、ＳｉＯ2、ＭｏＳ2、ＭｏＳ3、ＩｎＰｂ、ＲｕＯ2、ＣｅＯ2からなる群から選ばれる少なくとも一種の光触媒半導体機能を有する化合物を含有する上記（１）〜（８）のいずれかに記載の繊維構造物。
（１０）上記（１）〜（９）のいずれかに記載の繊維構造物を用いてなる衣料品。
【発明の効果】
【０００８】
本発明によれば、洗濯耐久性に優れる即効性があり消臭容量の高い消臭性、抗菌性、制電性および吸水性を有する繊維構造物を安定に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００９】
本発明は、前記課題、つまり洗濯耐久性に優れた即効性があり消臭容量の高い消臭性、抗菌性、制電性、吸水性を付与することについて鋭意検討した結果、単繊維表面に、ポリアルキレンオキサイドセグメントを主鎖の両末端または一方の末端あるいは主鎖の側鎖として少なくとも２個のアクリル基および／またはメタクリル基を有する単量体（単量体Ａ）および／またはトリアジン環含有重合性単量体（単量体Ｂ）と、酸性基を有する化合物の混合された皮膜を形成することにより、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【００１０】
本発明の重合性単量体は、単量体Ａと単量体Ｂをそれぞれ単独あるいは両者を混合して使用することができる。単量体を混合して使用する場合は、単量体Ａが１００重量部に対して単量体Ｂを１〜５０重量部、好ましくは２〜２０重量部で混合する。単量体の混合により、皮膜形成性および皮膜強度が向上し、洗濯耐久性が更に高まるものである。
【００１１】
本発明の単量体Ａとしては、例えばポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールＡのエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールＡのエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールＡのプロピレンオキサイド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールＡのプロピレンオキサイド付加物ジアクリレートなどを、単独あるいは２種以上の混合物として使用することができる。
【００１２】
本発明の単量体Ｂとしては、トリアジン環を有し、重合性官能基を少なくとも２個有する化合物であり、例えば下記式２で示されるものが挙げられる。
【００１３】
【化２】
【００１４】
本発明では、上記一般式で表されるもの以外に、上記化合物のエチレン尿素共重合化合物、ジメチロール尿素共重合化合物、ジメチロールチオ尿素共重合化合物、酸コロイド化合物なども使用することができる。
【００１５】
本発明の酸性基を有する化合物の酸性基とは、カルボン酸、スルホン酸、ホスキン酸などの通常の酸性基を意味し、アンモニアなどの塩基性悪臭物質と反応して、効率的に消臭するものである。
【００１６】
本発明の酸性基は、その一部がアルカリ金属で置換されているものであることが好ましい。かかるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの少なくとも一種を使用することができる。アルカリ金属で置換された酸性基は、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸などの酸性悪臭物質と反応して消臭する。
【００１７】
本発明の酸性基およびアルカリ金属で置換された酸性基の量は、消臭性、耐久性、製品の諸物性などのバランスを考慮して適宜決定すればよい。
【００１８】
本発明の酸性基を有する化合物の中でも、カルボン酸が、安全性、悪臭物質との反応性、化合物の製造面から好ましく使用される。カルボン酸化合物としては、カルボキシル基を含有している化合物であるならば特に限定されることなく用いることができる。
【００１９】
カルボン酸化合物としては、下記式１で示される脂肪族ポリカルボン酸化合物が、好ましく使用される。
【００２０】
【化３】
【００２１】
（ただし、式中のＲは水素、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、水酸基のいずれかであり、ｎは１以上５００以下の正数を示す。）
ここで、置換アルキル基、置換アルケニル基は、水酸基、エーテル基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミド基、スルホン基、スルホンアミド基などを含むものが好ましく用いられる。Ｒは同種であっても、異種であっても良い。
【００２２】
中でも、水酸基を有する水酸化合物や、スルホン基を有するスルホン酸化合物などを用いる場合は、カルボキシル基と同様の消臭効果が期待できる。これらの化合物の場合はカルボン酸化合物に比して、皮膚刺激性などの安全性が劣るきらいがあるので、注意しなければならない。上記式で示される脂肪族ポリカルボン酸化合物の分子量は、１０００以上１０００００以下が好ましいが、さらに好ましくは１５００以上８００００以下、より好ましくは２０００以上５００００以下である。また、上記式中のｎは１以上５００以下の正数を意味する。分子量は、ＧＰＣ（ゲルパーミエーションクロマトグラフ）を用い測定した値である。
【００２３】
カルボン酸化合物としては、アクリル酸またはメタクリル酸を必須成分とする共重合化合物が、好ましく使用される。共重合成分としては、アクリル酸エステル、エチレン、スチレン、酢酸ビニルなどが挙げられるが、中でもアクリル酸エステル、エチレンが化合物の製造性、加工剤としての水系分散化などの観点から好ましく使用できる。
【００２４】
本発明の酸性基を有する化合物の使用量は、目的とする消臭性能に応じて適宜、決定することができるものであるが、単量体Ａ、単量体Ｂを含む重合性単量体１００重量部に対し、好ましくは１〜１００重量部である。１重量部未満では十分な消臭性能が得られない場合があり、１００重量部を超えると単量体の重合皮膜形成を阻害する場合がある。かかる単量体と酸性基を有する化合物の繊維への付着量は目的とする消臭性能に応じて決定すればよい。
【００２５】
本発明は、単量体Ａ、単量体Ｂを含む重合性単量体と水酸基を有する化合物に触媒が混合された水系液を繊維上に付与した後、重合皮膜化すべく熱処理を行う。かかる触媒としては、酢酸、蟻酸、アクリル酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、フタル酸、硫酸、過硫酸、塩酸、燐酸などの酸類およびこれらのアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などであり、これらの一種以上を使用することができる。中でも、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが好ましく使用される。かかる触媒は、重合性単量体の使用量に対して０．０１〜２０重量％の割合で使用することが好ましい。
【００２６】
重合のための熱処理は、好ましくは５０〜１８０℃の温度で０．１〜３０分間の乾熱処理または湿熱処理をするものであるが、蒸熱処理の方が繊維表面に均一な皮膜を形成しやすく、かつ皮膜強度も高く、風合いが柔軟である。蒸熱処理には、好ましくは８０〜１６０℃の飽和水蒸気または過飽和水蒸気が用いられる。より好ましい飽和水蒸気は９０〜１３０℃であり、過熱水蒸気は１１０〜１４０℃であり、いずれも数秒から十数分の処理を行う。かかる蒸熱処理は、繊維上に水系液を付与した後に濡れた状態で処理するか、水系液を付与した後、８０〜１３０℃で乾燥した後に処理するいずれの方法も採用することができる。かかる蒸熱処理を行った後、未反応の単量体や触媒の除去のために、５０〜９５℃の温度で湯洗いか、ノニオン界面活性剤や炭酸ソーダ、ハイドロサルファイトなどを使用した洗浄を行うことが好ましい。
【００２７】
上記の処理においては、金属またはそれらの金属塩類を使用することができる。かかる金属としては、銀、銅、亜鉛および鉄などから選ばれた少なくとも一種を使用することができ、塩類としては硫酸塩、塩酸塩、炭酸塩などである。これらの金属成分はイオンの形態で樹脂皮膜中に存在することが更に好ましく、メチルメルカプタン、ジメチルジサルファイドおよびジメチルトリサルファイドなどの硫黄系の悪臭の消臭や抗菌性を付与するのに好都合である。かかる金属あるいはその塩類の使用量は、目的とする消臭性や抗菌性の性能に応じて決定するが、好ましくは重合性単量体１００重量部に対して０．０１〜３０重量部である。
【００２８】
本発明の繊維構造物には、光触媒機能を有する化合物を使用することができる。具体的には光触媒半導体が用いられ、光を照射すると光触媒半導体が励起され、酸化、還元作用で有害物質を分解し、消臭、抗菌、防カビおよび防汚の効果を発揮するも。かかる光触媒半導体としては、ＴＩＯ2 、ＺｎＯ、ＳｒＴｉＯ3 、ＣｄＳ、ＣｄＯ、ＣａＰ、ＩｎＰ、Ｉｎ2 Ｏ3 ，ＣａＡｓ、ＢａＴｉＯ3 、Ｋ2 ＮｂＯ3 、Ｆｅ2 Ｏ3 、Ｔａ2 Ｏ5 、ＷＯ3 、ＳａＯ2 、Ｂｉ2 Ｏ3 、ＮｉＯ、Ｃｕ2 Ｏ、ＳｉＣ、ＳｉＯ2 、ＭｏＳ2 、ＭｏＳ3 、ＩｎＰｂ、ＲｕＯ2 、ＣｅＯ2 などを使用することができ、これらの光触媒半導体を単一または２種以上組み合わせて用いることができる。特に高い光触媒作用を有し、化学的に安定で、かつ、無害である酸化チタン系化合物が好ましく使用される。かかる酸化チタンとしては通常の酸化チタンのほかに含水酸化チタン水和酸化チタン、水酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸から選ばれた少なくとも一種を使用することができる。これらのなかでもアナターゼ型結晶形を有する酸化チタンが、優れた光触媒活性を発揮し、さらにその粒子径としては、１〜３０ｎｍのものが好ましく使用される。かかる酸化チタンなどの光触媒半導体の粒子径は、粉末Ｘ線解析で得られるピークの反値幅より下記のシェラーの式を用いて算出する。
【００２９】
Ｌｃ＝０．９λ／（Ｗ・ｃｏｓθ）
式中、Ｌｃは粒子径（ｎｍ）、λはＸ線の波長（ｎｍ）、Ｗはピークの半値幅（ｒａｄ）、θはピーク位置の角度である。
【００３０】
さらにアパタイト被覆型酸化チタンと呼ばれるリン酸カルシウムなどの無機物を酸化チタン表面に被覆せしめたものや、酸化チタンの結晶格子中にケイ素等が入り、複合酸化物の状態にせしめた光触媒が好ましく使用される。触媒の固体表面にチタンなどの触媒がむき出しになっていない分、適度な活性コントロールが可能となり、後述のバインダー樹脂や本発明の酸性基を有する化合物を分解しにくくなるため好ましい。
【００３１】
かかる光触媒半導体の使用量は、目的とする消臭性能に応じて決定することができるが、
重合性単量体１００重量部に対して１〜５０重量部である。
【００３２】
本発明の効果を阻害しない範囲で、帯電防止剤、吸水剤、吸湿剤、抗菌剤、防かび剤、撥水剤、撥油剤、防汚剤、着色剤、増摩剤などが含有されていてもかまわない。
【００３３】
本発明の繊維構造物に使用される繊維素材としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル系繊維、芳香族ポリエステルの酸性分あるいはアルコール成分として、例えば、イソフタル酸、イソフタル酸スルホネート、アジピン酸などを用いた共重合体からなる繊維、ポリエチレングリコールなどをブレンドした芳香族ポリエステル系繊維、Ｌ−乳酸を主成分とするもので代表される脂肪族系ポリエステル系繊維、ナイロン６やナイロン６６などのポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリルを主成分とするアクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などの合成繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維、木綿、絹、麻および羊毛などの天然繊維などが挙げられる。本発明ではこれらの繊維を単独または二種以上の混合物として使用することができるが、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維を主成分とした繊維が好ましく使用される。
【００３４】
本発明で用いられる繊維は、通常のフラットヤーン以外に、仮撚り加工糸、強撚糸、タスラン糸、太細糸および混繊糸などのフラットヤーンであってもよく、ステープルファイバーやトウ、あるいは紡績糸などの各種形態の繊維であっても良い。また、繊維の断面は円形でも三角断面やＨ断面のような異型断面を使用することができる。
【００３５】
本発明の繊維構造物には、前記繊維を使用してなる織物、編物または不織布などの布帛状物、あるいは紐状物などが含まれる。
【００３６】
本発明の繊維構造物は、衣料品として好ましく用いられ、衣料品としては、例えばスポーツウエア、ホームウエア、コート、ブルゾン、ブラウス、シャツ、スカート、スラックス、室内運動着、パジャマ、寝間着、肌着、オフィスウェア、作業服、食品白衣、看護白衣、患者衣、介護衣、学生服、厨房衣などが挙げられる。雑貨用品としては、エプロン、タオル、手袋、マフラー、靴下、帽子、靴、サンダル、かばん、傘などが挙げられる。インテリア用品としても好ましく用いられ、カーテン、じゅうたん、マット、こたつカバー、ソファーカバー、クッションカバー、ソファー用側地、便座カバー、便座マット、テーブルクロスなどに用いられる。寝具用品としても好ましく用いられ、布団用側地、布団用詰めわた、毛布、毛布用側地、枕の充填材、シーツ、防水シーツ、布団カバー、枕カバーなどとして用いられる。介護用品としては、サポーター、コルセット、リハビリ用靴や、肌着、おむつカバー、小物、などとして好適に用いられる。
【実施例】
【００３７】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【００３８】
なお、実施例中における各種の品質評価方法は下記の方法を用いた。
（制電性）
ＪＩＳ Ｌ １０９４Ｂ法（摩擦帯電圧測定法）に規定される方法で、２０℃×３０％ＲＨの雰囲気中で、対象布を木綿として摩擦帯電圧を測定し、（ｋＶ）で表示した。数値が小さいほど、制電性が良いことを示す。
（吸水性）
ＪＩＳ Ｌ １０９６に規定される方法で、布帛上に水滴を落とし、それが完全に吸収されるまでの時間を測定し、（秒）で表示した。
（消臭性）
試料を３ｇ入れた５００ｍｌの容器に初期濃度が３００ｐｐｍになるようにアンモニアガスを入れて密閉し、以下に示す条件で残留アンモニア濃度をガス検知管で測定し、下記の式に従い消臭率を算出した。
【００３９】
消臭率（％）＝（１−ガス検知管測定濃度／初期濃度）×１００
消臭性Ａ：密閉後、１０分および３０分後の消臭率を測定し、消臭の即効性とした。
消臭性Ｂ：３０分後の消臭性を測定したサンプルを新たに準備したアンモニア入り容器に入れて３０分後の消臭率を測定し、繰り返し処理の消臭性を調べ、消臭の容量力とした。
消臭性Ａ、Ｂとも数値が大きいほど、消臭性が良好なことを示す。
（抗菌性）
評価方法は、統一試験法を採用し、試験菌体は黄色ブドウ状球菌を用いた。試験方法は、滅菌試験布に上記試験菌を注加し、１８時間培養後の生菌数を計測し、殖菌数に対する菌数を求め、次の基準にしたがった。
【００４０】
ｌｏｇ（Ｂ／Ａ）＞１．５の条件下、ｌｏｇ（Ｂ／Ｃ）を菌数増減値差とし、２．２以上を合格とし、合格を○、不合格を×で示した。
【００４１】
ただし、Ａは無加工品の接種直後分散回収した菌数、Ｂは無加工品の１８時間培養後分散回収した菌数、Ｃは加工品の１８時間培養後分散回収した菌数を表す。
（洗濯耐久性）
自動反転渦巻き式電気洗濯機を用い、ＪＩＳ Ｋ ３３７で規定される弱アルカリ性合成洗剤を０．２％の濃度になるように溶解し、温度４０±２℃、浴比１：５０、５分間強反転で洗濯し、その後排水、オーバーフローさせながらすすぎを２分間行う操作を２回繰り返し、これを洗濯１回として２０回相当の洗濯を行って、洗濯による耐久性の試験とした。
実施例１〜１２、比較例１〜４
ポリエチレンテレフタレートからなる８４デシテックス、７２フィラメントの仮撚り加工糸をタテ糸、ヨコ糸に使用して平織物を製織した後、常法に従い精練、湯水洗し、１３０℃で乾燥、１８０℃でピンテンターセットした。次いで液流染色機を用いて１３０℃の温度で蛍光白色に染色し、常法により湯水洗、乾燥し、１７０℃の温度でピンテンターセットし、タテ／ヨコ密度１３０／７５本／２．５４ｃｍの織物とした。
【００４２】
該白色織物を次に示す方法で処理し、得られた織物の性能を評価した結果を表１に示した。いずれも耐久性のある消臭性、抗菌性、制電性、吸水性であった。
＜重合性単量体＞
（単量体ａ）ポリアルキレンオキサイドセグメントの分子量が１０００であるポリエチレングリコールジメタクリレート（ＮＫエステル２３Ｇnew、固形分１００％、新中村化学社製）
（単量体ｂ）トリメチロールメラミン（ベッカミンＭ３、固形分８０％、大日本インキ社製）
＜カルボン酸化合物＞
（化合物ア）脂肪族カルボン酸塩（ＳＺ−２Ｂ−ＺＣ、銅イオン、亜鉛イオン含有、固形分１７％、ナガセケムテックス社製）
（化合物イ）エチレン・メタクリル酸共重合体（ＴＣＺ−０２７、固形分７％、大京化学社製）
（化合物ウ）エチレン・メタクリル酸共重合体（ケミパールＳ６５０、固形分２７％、三井化学社製）
（化合物エ）アクリル酸エステル・ポリアクリル酸共重合体（ＴＭ−Ｃ０１、固形分３０％、松本油脂製薬社製）
＜金属塩＞
硫酸銅
＜光触媒＞
酸化チタンの金属酸化物被覆体（ＴＣＺ−ＮＯ１、固形分１５％、大京化学社製）
＜樹脂皮膜化処理＞
単量体とカルボン酸化合物、必要に応じて光触媒を混合した水系液に触媒として過硫酸アンモニウムを０．３重量％の濃度で溶解して処理液を調整した。
【００４３】
該処理液に織物を浸漬し、水系液の付着量が９０％になるようにマングルで絞り、１２０℃で乾燥した後、１０８℃の温度の飽和水蒸気中で５分間処理しを行った。引き続き、６０℃の温度で湯洗い、水洗し、１３０℃の温度で乾燥し、１６０℃の温度でヒートセットした。
【００４４】
【表１】
【特許請求の範囲】
【請求項１】
単繊維表面にポリアルキレンオキサイドセグメントを主鎖の両末端または一方の末端あるいは主鎖の側鎖として少なくとも２個のアクリル基および／またはメタクリル基を有する重合性単量体（単量体Ａ）および／またはトリアジン環含有重合性単量体（単量体Ｂ）を重合成分としてなる樹脂皮膜を有し、かつ、該皮膜中に、酸性基を有する化合物が含有されている繊維構造物。
【請求項２】
該単量体Ａ１００重量部に対して単量体Ｂが１〜５０重量部の割合で重合成分として含有される請求項１記載の繊維構造物。
【請求項３】
該酸性基の一部がアルカリ金属で置換されている請求項１または２のいずれかに記載の繊維構造物。
【請求項４】
該酸性基がカルボキシル基である請求項１〜３のいずれかに記載の繊維構造物。
【請求項５】
カルボキシル基を含有する化合物が下記式１で示される脂肪族ポリカルボン酸であって、分子量が１０００以上１００００以下である請求項４に記載の繊維構造物。
【化１】
【請求項６】
該カルボキシル基を含有する化合物が、アクリル酸またはメタクリル酸を必須の重合成分とする共重合体である請求項５に記載の繊維構造物。
【請求項７】
該共重合体における共重合成分がエチレンである請求項６に記載の繊維構造物。
【請求項８】
該重合性単量体からなる樹脂皮膜が銀、銅、亜鉛、および鉄から選ばれた少なくとも一種の金属およびまたはこれらの金属塩類を含有する請求項１〜７のいずれかに記載の繊維構造物。
【請求項９】
該重合性単量体からなる樹脂皮膜が、ＴｉＯ2、ＺｎＯ、ＳｒＴｉＯ3、ＣｄＳ、ＣｄＯ、ＣａＰ、ＩｎＰ、Ｉｎ2Ｏ3、ＣａＡｓ、ＢａＴｉＯ3、Ｋ2ＮｂＯ3、Ｆｅ2Ｏ3、Ｔａ2Ｏ5、ＷＯ3、ＳｂＯ2、Ｂｉ2Ｏ3、ＮｉＯ、Ｃｕ2Ｏ、ＳｉＣ、ＳｉＯ2、ＭｏＳ2、ＭｏＳ3、ＩｎＰｂ、ＲｕＯ2、ＣｅＯ2からなる群から選ばれる少なくとも一種の光触媒半導体機能を有する化合物を有する請求項１〜８のいずれかに記載の繊維構造物。
【請求項１０】
請求項１〜９のいずれかに記載の繊維構造物を用いてなる衣料品。
【請求項１】
単繊維表面にポリアルキレンオキサイドセグメントを主鎖の両末端または一方の末端あるいは主鎖の側鎖として少なくとも２個のアクリル基および／またはメタクリル基を有する重合性単量体（単量体Ａ）および／またはトリアジン環含有重合性単量体（単量体Ｂ）を重合成分としてなる樹脂皮膜を有し、かつ、該皮膜中に、酸性基を有する化合物が含有されている繊維構造物。
【請求項２】
該単量体Ａ１００重量部に対して単量体Ｂが１〜５０重量部の割合で重合成分として含有される請求項１記載の繊維構造物。
【請求項３】
該酸性基の一部がアルカリ金属で置換されている請求項１または２のいずれかに記載の繊維構造物。
【請求項４】
該酸性基がカルボキシル基である請求項１〜３のいずれかに記載の繊維構造物。
【請求項５】
カルボキシル基を含有する化合物が下記式１で示される脂肪族ポリカルボン酸であって、分子量が１０００以上１００００以下である請求項４に記載の繊維構造物。
【化１】
【請求項６】
該カルボキシル基を含有する化合物が、アクリル酸またはメタクリル酸を必須の重合成分とする共重合体である請求項５に記載の繊維構造物。
【請求項７】
該共重合体における共重合成分がエチレンである請求項６に記載の繊維構造物。
【請求項８】
該重合性単量体からなる樹脂皮膜が銀、銅、亜鉛、および鉄から選ばれた少なくとも一種の金属およびまたはこれらの金属塩類を含有する請求項１〜７のいずれかに記載の繊維構造物。
【請求項９】
該重合性単量体からなる樹脂皮膜が、ＴｉＯ2、ＺｎＯ、ＳｒＴｉＯ3、ＣｄＳ、ＣｄＯ、ＣａＰ、ＩｎＰ、Ｉｎ2Ｏ3、ＣａＡｓ、ＢａＴｉＯ3、Ｋ2ＮｂＯ3、Ｆｅ2Ｏ3、Ｔａ2Ｏ5、ＷＯ3、ＳｂＯ2、Ｂｉ2Ｏ3、ＮｉＯ、Ｃｕ2Ｏ、ＳｉＣ、ＳｉＯ2、ＭｏＳ2、ＭｏＳ3、ＩｎＰｂ、ＲｕＯ2、ＣｅＯ2からなる群から選ばれる少なくとも一種の光触媒半導体機能を有する化合物を有する請求項１〜８のいずれかに記載の繊維構造物。
【請求項１０】
請求項１〜９のいずれかに記載の繊維構造物を用いてなる衣料品。
【公開番号】特開２００９−１３３０３４（Ｐ２００９−１３３０３４Ａ）
【公開日】平成２１年６月１８日（２００９．６．１８）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−３１０４２７（Ｐ２００７−３１０４２７）
【出願日】平成１９年１１月３０日（２００７．１１．３０）
【出願人】（０００００３１５９）東レ株式会社 (7,677)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年６月１８日（２００９．６．１８）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年１１月３０日（２００７．１１．３０）
【出願人】（０００００３１５９）東レ株式会社 (7,677)
【Ｆターム（参考）】
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