説明

繊維積層体用表層材形成性組成物、並びにそれを用いた合成皮革又は人工皮革及び合成皮革又は人工皮革の製造方法

【課題】 強度と柔軟性のバランスに優れ、生産時の環境に優しい、繊維積層体用表層材形成性組成物及びそれを用いた合成皮革の提供を提供する。
【解決手段】 主剤(A)及び硬化剤(B)から構成される繊維積層体用表層材形成性組成物において、主剤(A)が、1,6−HDと低分子カーボネートから得られるPCDであり、硬化剤(B)が、数平均分子量350〜500、平均官能基数(f)が2≦f<3であるHDIの変性ポリイソシアネート(B1)と、f≧3であるHDIのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(B2)からなるものであって、(B1):(B2)=50:50〜95:5(質量比)であり、主剤(A)及び硬化剤(B)の両方に有機溶剤を含まないこと、を特徴とする、繊維積層体用表層材形成性組成物により解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維積層体用表層材形成性組成物、並びにそれを用いた合成皮革又は人工皮革及び合成皮革又は人工皮革の製造方法に関する。更に詳しくは、強度と柔軟性のバランスに優れ、生産時の環境に優しい、繊維積層体用表層材形成性組成物、並びにそれを用いた合成皮革又は人工皮革及び合成皮革又は人工皮革の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成皮革や人工皮革は、例えば袋物やシューズ等に用いられている。合成皮革は、その使用環境や条件から、柔軟性、反発弾性、強度、伸縮性及び通気性が求められる。
【0003】
一方、こうした合成皮革や人工皮革の製造方法においては、基布等に直接コーティング又は離型紙にコーティングしてから基布に転写、という方法が一般的にである。このため、コーティング用樹脂組成物をコーティングする際に有機溶剤が蒸散するようなものでは、環境問題、労働安全衛生上の問題が発生し、この問題の対策のための設備が必要となり設備投資が嵩む等の問題がであった。
【0004】
そこで特許文献1では、水性のポリウレタンコーティング剤を合成皮革等にコーティングすることが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−104251号公報
【0006】
しかしながら、水性コーティング剤を用いた生産システムは、水の高い蒸発エネルギーのため、エネルギーコストが嵩むという問題が生じてしまう。生産性、強度、環境対応を全て満たすような合成皮革等用のコーティング剤は得られていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、強度と柔軟性のバランスに優れ、生産時の環境に優しい、繊維積層体用表層材形成性組成物、並びにそれを用いた合成皮革又は人工皮革及び合成皮革又は人工皮革の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(7)に示されるものである。
【0009】
(1)主剤(A)及び硬化剤(B)から構成される繊維積層体用表層材形成性組成物において、主剤(A)が、1,6−ヘキサンジオールと低分子カーボネートから得られるポリカーボネートジオールであり、硬化剤(B)が、数平均分子量350〜500、平均官能基数(f)が2≦f<3であるヘキサメチレンジイソシアネートの変性ポリイソシアネート(B1)と、f≧3であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(B2)からなるものであって、(B1):(B2)=50:50〜95:5(質量比)であり、主剤(A)及び硬化剤(B)の両方に有機溶剤を含まないこと、を特徴とする、繊維積層体用表層材形成性組成物。
【0010】
(2)(B1)が、モノオールとヘキサメチレンジイソシアネートから得られるアロファネート変性イソシアネートであることを特徴とする、前記(1)の繊維積層体用表層材形成性組成物。
【0011】
(3)前記(1)又は(2)の繊維積層体用表層材形成性組成物から形成された表層と繊維布帛層とからなる合成皮革 。
【0012】
(4)前記(1)又は(2)の繊維積層体用表層材形成性組成物から形成された表層と繊維布帛層とからなる人工皮革 。
【0013】
(5)前記(1)又は(2)の主剤(A)と硬化剤(B)を配合した液を離型性支持体に塗布、一次硬化後、繊維布帛に張り合わせて二次硬化させ、その後離型性支持体を除去することを特徴とする合成皮革又は人工皮革の製造方法。
【0014】
(6)前記(1)又は(2)の主剤(A)と硬化剤(B)を配合した液を、繊維布帛に直接塗布して、加熱硬化することを特徴とする合成皮革又は人工皮革の製造方法。
【0015】
(7)前記(1)又は(2)の主剤(A)と硬化剤(B)を配合した液において、当該配合液の水酸基とイソシアネート基のモル比を、水酸基/イソシアネート基=90/100〜110/100の割合とすることを特徴とする、前記(5)又は(6)の合成皮革又は人工皮革の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、生産性・強度と柔軟性のバランスに優れ、地球環境に優しい、繊維積層体用表層材形成性組成物、並びにそれを用いた合成皮革又は人工皮革及び合成皮革又は人工皮革の製造方法の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、主剤(A)が特定のポリカーボネートジオール(以後、PCDと略称する)であり、硬化剤(B)が数平均分子量350〜500、低官能基数であるヘキサメチレンジイソシアネート(以後、HDIと略称する)の変性ポリイソシアネート(B1)と、HDIのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(B2)からなる繊維積層体用表層材形成性組成物である。
【0018】
本発明に用いられる主剤(A)におけるPCDは、1,6−ヘキサンジオール(以後1,6−HDと略称する)と低分子カーボネートとを、脱アルコール反応や脱フェノール反応により得られるPCDである。このPCDの好ましい数平均分子量は500〜5,000であり、更に好ましくは1,000〜3,000である。数平均分子量が低すぎる場合は、コーティング剤の柔軟性が低下し、肌さわりや基材との追随性が低下することになる。一方数平均分子量が高すぎる場合は、被膜強度が不十分となりやすい。
【0019】
製造の際、1,6−HD以外の低分子ポリオールを用いて得られるPCDも、本発明のコーティング剤の主剤(A)に併用することができる。この1,6−HD以外の低分子ポリオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−4−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類等が挙げられる。
【0020】
低分子カーボネートとしては、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0021】
なお、鎖延長剤の使用は、主剤と硬化剤の配合直前に混合して使用する分には問題ないが、あらかじめポリオールプレミックスとすると、貯蔵時にエステル交換反応が起こるため、好ましくない。
【0022】
本発明における硬化剤(B)は、数平均分子量350〜500、低官能基数であるHDIの変性ポリイソシアネート(B1)と、HDIのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(B2)からなるものである。
【0023】
数平均分子量350〜500、低官能基数であるHDIの変性ポリイソシアネート(B1)は、被膜に柔軟性を付与し、また、表層材形成時における作業性を向上させる効果をもたらすものである。
【0024】
(B1)の数平均分子量が下限未満の場合は、表層材形成作業時において、臭気の問題が生じる場合がある。上限を越える場合は、粘度が高くなるので、表層材形成作業時の生産性が低下する。
【0025】
(B1)の平均官能基数(f)は、2≦f<3である。fが下限未満の場合は、架橋効果が不十分となり、被膜物性が低下する。上限以上では被膜の柔軟性が低下する。
【0026】
(B1)の具体的なものとしては、低分子グリコール(分子量62〜164)とHDIとの1:2(モル比)付加物、低分子モノオール(分子量32〜164)とHDIとの1:2(モル比)のアロファネート変性体等が挙げられる。本発明においては、低粘度となる低分子モノオールとHDIとの1:2(モル比)のアロファネート変性体が好ましい。
【0027】
低分子モノオールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール(各種異性体を含む)、ブタノール(各種異性体を含む)、ペンタノール(各種異性体を含む)、ヘキサノール(各種異性体を含む)、ヘプタノール(各種異性体を含む)、オクタノール(各種異性体を含む)、ノナノール(各種異性体を含む)等の飽和脂肪族モノオール、炭素数2〜9の不飽和脂肪族モノオール等が挙げられる。本発明で好ましい低分子モノオールは、分子量が小さく、遮蔽効果の高いイソプロパノールである。
【0028】
具体的なHDIのアロファネート変性体の製造方法は、水酸基に対して2倍モル当量以上のHDIと、モノオールとを、アロファネート化触媒の存在下、アロファネート化反応させた後、触媒毒を添加して、未反応のHDIを除去するという製造方法である。
【0029】
HDIのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(B2)は、HDI又はHDIの部分ウレタンプレポリマーを、イソシアヌレート化反応を経て、未反応のHDIを除去することで得られるものである。ここでHDIの部分ウレタンプレポリマーとは、水酸基対して過剰量のHDIと、低分子グリコールをウレタン化反応させて得られるものであり、その仕込みモル比は、HDI:低分子グリコール=5:1〜100:1が好ましい。また、低分子グリコールは、得られるポリイソシアネートの相溶性や求めるポリイソシアネートのイソシアネート含量を考慮すると、1,3−ブタンジオールが好ましい。
【0030】
硬化剤(B)には、(B1)及び(B2)以外のポリイソシアネートを必要に応じて併用することができる。具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(各種異性体を含む)、トリレンジイソシアネート(各種異性体を含む)、キシレンジイソシアネート(各種異性体を含む)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(各種異性体を含む)、フェニレンジイソシアネート(各種異性体を含む)等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。また、これらのポリメリック体やウレタン化物、ウレア化物、アロファネート化物、ビウレット化物、カルボジイミド化物、ウレトンイミン化物、ウレトジオン化物、イソシアヌレート化物等が挙げられ、更にこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0031】
このようにして得られた硬化剤(B)のイソシアネート含量は10〜25質量%が好ましく、特に13〜22質量%が好ましい。イソシアネート含量が高すぎる場合は、遊離イソシアネート含量が多いため、臭気等の作業性に問題がある。また、低すぎる場合は、架橋密度が低下するため、形成された繊維積層体用表層材の強度や耐久性が不十分となりやすい。
【0032】
本発明では、主剤又は硬化剤もしくは両方に添加剤を用いることができる。添加剤としては、可塑剤、充填剤、着色剤、難燃剤、有機又は無機の充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料・染料、抗菌剤・抗カビ剤等が挙げられる。
【0033】
本発明の合成皮革や人工皮革は、前述の繊維積層体用表層材形成性組成物から形成された表層と繊維布帛層とからなるものである 。
【0034】
本発明の繊維積層体用表層材形成性組成物を用いた合成皮革や人工皮革は、前述の主剤(A)と硬化剤(B)を配合した液を離型性支持体に塗布、一次硬化後、繊維布帛に張り合わせて二次硬化させ、その後離型性支持体を除去するという製造方法、又は前述の主剤(A)と硬化剤(B)を配合した液を、繊維布帛に直接塗布して、加熱硬化するという製造方法により得られる。
【0035】
前述の主剤(A)と硬化剤(B)を配合した液(以後、配合液と略称する)を離型性支持体上に形成させるには、通常のコーティング法、例えばナイフオーバーロール等を用いて塗布し、一次硬化後、繊維布帛に張り合わせて二次硬化させ、その後離型性支持体を除去すればよい。又は配合液を繊維布帛に直接塗布するには、例えばナイフコーターやコンマコーター等を用いた塗布法等により行えばよい。本発明は、繊維積層体及び合成皮革は、一般に表層材の面が最終製品の表面側に利用されているものを指すが、同様の製造方法で、表層材の面が裏側で利用される透湿防水コーティング剤及び透湿防水材料も同様に使用できる。
【0036】
前記離型性支持体としては、例えば離型紙やポリエステルフイルム等が使用できる。また、前記繊維布帛としては、例えば天然繊維、合成繊維の全てを使用できる。具体例としては木綿、スフ、ポリエステル、ナイロン、アクリル及びこれらの2種以上の混紡であってもよい。また形態は織物、編物、不織布、起毛布等が挙げられる。また繊維布帛の片面にポリウレタン樹脂等の多孔質膜を有する積層基材であってもよい。またこれらの繊維布帛はシリコン樹脂、弗素樹脂等ではっ水処理されていてもよい。
【0037】
直接塗布する際におけるコーティング方法は、ナイフ塗布、ワイヤーバー塗布、ドクターブレード塗布、リバースロール塗布、カレンダー被覆方法等が挙げられる。コーティング剤が合成皮革表面上にコートされた後に、加熱硬化して被膜を形成することになる。
【0038】
繊維積層体用表層材層の膜厚は、樹脂固形分として1〜200μmが好ましく、更に好ましくは5〜100μmである。
【0039】
この際、繊維布帛に前述の主剤(A)と硬化剤(B)とを、水酸基とイソシアネート基のモル比を、水酸基/イソシアネート基=90/100〜110/100の割合で配合した配合液を、離型性支持体に塗布又は繊維布帛に塗布し、その後加熱して硬化させることが好ましい。水酸基とイソシアネート基のモル比が、この比率から外れる場合は、コーティング層の強度や耐久性が不十分となりやすい。
【0040】
硬化時の加熱温度は50〜150℃が好ましい。加熱時間は2分〜2時間が好ましい。温度が低すぎる場合や時間が短すぎる場合は、硬化が不十分となる。一方、温度が高すぎる場合や時間が長すぎる場合は、被膜や基材に不必要な熱履歴をかけることになる。
【0041】
主剤(A)/硬化剤(B)の配合の際、硬化工程の短縮や反応率の向上を目的として、触媒を追加することができる。触媒は、ウレタン化反応触媒としてはトリエチルアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン等の第3級アミン触媒、又は、スタナスオクトエート、スタナスオレート、ジブチル錫ジラウレートのような錫系触媒に代表される金属触媒が挙げられ、これらは各々単独で、あるいは混合して使用される。
【0042】
本発明の繊維積層体用表層材形成性組成物を用いて製造された合成皮革や人工皮革は、衣料用、靴用、鞄用、袋物用等に有用である。また、本発明の繊維積層体用表層材形成性組成物は、透湿防水衣料用等のコーティング剤としても使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中において、「%」は「質量%」を示す。
【0044】
〔HDIの変性ポリイソシアネートの製造〕
製造例1
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量:1Lの反応器に、HDIを950g、イソプロパノールを50g仕込み、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次に2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.2g仕込み、90℃にて3時間反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.1g仕込み50℃で1時間停止反応を行った。停止反応後の反応生成物のイソシアネート含量は42.1%であった。この反応生成物を130℃・0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、遊離HDIを除去して、イソシアネート含量が19.4%、25℃の粘度が100mPa・s、遊離のHDI含有量が0.1%、色数が10APHAのポリイソシアネートP−1を得た。P−1をFT−IR、13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基はその存在が認められず、アロファネート基の存在が確認された。また、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基は痕跡程度認められた。P−1の数平均分子量を求めたところ433であり、この数平均分子量とイソシアネート含量から算出される平均官能基数は2.0であった。
【0045】
製造例2
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量:1Lの反応器に、HDIを600部、1,3−ブタンジオールを5部、触媒としてカプリン酸カリウム0.1部、助触媒としてフェノール0.6部を加え、フラスコ中の空気を窒素で置換し、攪拌しながら反応温度70℃に加温し、同温度で4時間反応を行なった。この反応液に停止剤としてリン酸を0.2部加え、反応温度で1時間攪拌後、この反応生成物を130℃・0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、遊離HDIを除去して、イソシアネート含量が20.8%、25℃の粘度が2,500mPa・s、遊離のHDI含有量が0.3%、色数が20APHAのポリイソシアネートP−2を得た。P−2をFT−IR、13C−NMRにて分析したところ、イソシアヌレート基は確認されたが、アロファネート基、ウレトジオン基は痕跡程度認められた。P−2の数平均分子量を求めたところ747であり、この数平均分子量とイソシアネート含量から算出される平均官能基数は3.7であった。
【0046】
〔被膜評価〕
実施例1〜9、比較例1〜4
表1、2に示す組み合わせにて、60℃にて加熱・溶解させた主剤と室温の硬化剤を、イソシアネート基と水酸基が当量となるように配合し、厚さ100μmになるようにバーコーターにて離型紙に塗布し、60℃にて30分加熱した後、120℃で1時間加熱して硬化させた。なお、主剤と硬化剤の配合比は、イソシアネート基と水酸基が当量である。その後、室温にて24時間静置し、その後各種物性評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
表1、2において
PCD−1000:ジエチルカーボネートと1,6−HDを反応させて得られるPCD
数平均分子量=1,000
PCD−2000:ジエチルカーボネートと1,6−HDを反応させて得られるPCD
数平均分子量=2,000
PCD−3000:ジエチルカーボネートと1,6−HDを反応させて得られるPCD
数平均分子量=3,000
【0050】
物性評価試験方法
引張物性(各モジュラス、破断時強度、破断時伸び)
4号ダンベルカッターにてサンプルを打ち抜き、これをJIS K7311に準じて測定した。引張速度は200mm/分、測定温度は23℃とした。
ヒステリシスロス
4号ダンベルカッターにてサンプルを打ち抜き、引張速度は200mm/分、測定温度は23℃にて、伸びが300%となるまで引っ張り、その後荷重を除去して、測定した。
【0051】
表1、2に示されるように、本発明の繊維積層体用表層材形成性組成物から形成されたフィルムは強度と柔軟性のバランスに優れたものであった。一方、比較例1、3は、柔軟性に欠け、また強度も小さく、物性的に粘りのないフィルムであった。比較例2、4は、強度こそ十分であったが、ヒステリシスロスが大きく、弾性に欠けるものであった。なお、全てのフィルム作成の際の異臭はなく、作業性は良好であった。
【0052】
〔合成皮革の製造〕
実施例10
以下の手順により合成皮革を製造した。
1)実施例3の組み合わせの、60℃にて加熱・溶解させた主剤と室温の硬化剤を、イソシアネート基と水酸基の配合比は当量とし、触媒としてジオクチルチンジラウレートを主剤/硬化剤混合液に対して300ppm添加し、主剤、硬化剤、触媒を均一に混合し、減圧して脱泡する。
2)次にこの配合液を厚さが15μmになるように離型紙に塗布し、120℃で5分加熱した。
3)その後、その上に基布としてポリエステルタフタを重ねて圧着した。
4)50〜60℃で48時間熟成した後、離型紙をはがし合成皮革を得た。
得られた合成皮革は、柔軟で風合いも良好であった。また、生産時において異臭等はなく、生産性や環境に配慮したものであった。
【0053】
実施例11
以下の手順により合成皮革を製造した。
1)実施例3の組み合わせの、60℃にて加熱・溶解させた主剤と室温の硬化剤を、イソシアネート基と水酸基の配合比は当量とし、触媒としてジオクチルチンジラウレートを主剤/硬化剤混合液に対して300ppm添加し、主剤、硬化剤、触媒を均一に混合し、減圧して脱泡する。
2)次にこの配合液を、基布としてにポリエステルタフタ上に厚さが15μmになるようにバーコーターにて塗布した。
3)120℃にて5分加熱し、その後50〜60℃にて48時間熟成させて、合成皮革を得た。
得られた合成皮革は、柔軟で風合いも良好であった。また、生産時において異臭等はなく、生産性や環境に配慮したものであった。
【0054】
〔人工皮革の製造〕
実施例12
以下の手順により人工皮革を製造した。
1)実施例3の組み合わせの、60℃にて加熱・溶解させた主剤と室温の硬化剤を、イソシアネート基と水酸基の配合比は当量とし、触媒としてジオクチルチンジラウレートを主剤/硬化剤混合液に対して300ppm添加し、主剤、硬化剤、触媒を均一に混合し、減圧して脱泡する。
2)次にこの配合液を厚さが15μmになるように離型紙に塗布し、120℃で5分加熱した。
3)その後、その上にポリエステル製の三次元絡合不織布を重ねて圧着した。
4)50〜60℃で48時間熟成した後、離型紙をはがし人工皮革を得た。
得られた人工皮革は、柔軟で風合いも良好であった。また、生産時において異臭等はなく、生産性や環境に配慮したものであった。
【0055】
実施例13
以下の手順により人工皮革を製造した。
1)実施例3の組み合わせの、60℃にて加熱・溶解させた主剤と室温の硬化剤を、イソシアネート基と水酸基の配合比は当量とし、触媒としてジオクチルチンジラウレートを主剤/硬化剤混合液に対して300ppm添加し、主剤、硬化剤、触媒を均一に混合し、減圧して脱泡する。
2)次にこの配合液を、ポリエステル製の三次元絡合不織布上に厚さが15μmになるようにバーコーターにて塗布した。
3)120℃にて5分加熱し、その後50〜60℃にて48時間熟成させて、人工皮革を得た。
得られた人工皮革は、柔軟で風合いも良好であった。また、生産時において異臭等はなく、生産性や環境に配慮したものであった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤(A)及び硬化剤(B)から構成される繊維積層体用表層材形成性組成物において、主剤(A)が、1,6−ヘキサンジオールと低分子カーボネートから得られるポリカーボネートジオールであり、硬化剤(B)が、数平均分子量350〜500、平均官能基数(f)が2≦f<3であるヘキサメチレンジイソシアネートの変性ポリイソシアネート(B1)と、f≧3であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(B2)からなるものであって、(B1):(B2)=50:50〜95:5(質量比)であり、主剤(A)及び硬化剤(B)の両方に有機溶剤を含まないこと、を特徴とする、繊維積層体用表層材形成性組成物。
【請求項2】
(B1)が、モノオールとヘキサメチレンジイソシアネートから得られるアロファネート変性イソシアネートであることを特徴とする、請求項1記載の繊維積層体用表層材形成性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の繊維積層体用表層材形成性組成物から形成された表層と繊維布帛層とからなる合成皮革 。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の繊維積層体用表層材形成性組成物から形成された表層と繊維布帛層とからなる人工皮革 。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の主剤(A)と硬化剤(B)を配合した液を離型性支持体に塗布、一次硬化後、繊維布帛に張り合わせて二次硬化させ、その後離型性支持体を除去することを特徴とする合成皮革又は人工皮革の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の主剤(A)と硬化剤(B)を配合した液を、繊維布帛に直接塗布して、加熱硬化することを特徴とする合成皮革又は人工皮革の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の主剤(A)と硬化剤(B)を配合した液において、当該配合液の水酸基とイソシアネート基のモル比を、水酸基/イソシアネート基=90/100〜110/100の割合とすることを特徴とする、請求項5又は6に記載の合成皮革又は人工皮革の製造方法。


【公開番号】特開2009−185260(P2009−185260A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29513(P2008−29513)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】