説明

繊維系断熱材用収納袋

【課題】簡単な操作で繊維系断熱材を薄くし、その状態を維持できる収納袋を提供する。
【解決手段】収納袋1内の空気を抜くと、繊維系断熱材Mは押し潰されて、偏平になる。この後、スリーブ12から吸引パイプ2を引き抜いてもスリーブ12は2枚のフィルムを重ねて構成されているため、吸引パイプ2を引き抜いた後も2枚のフィルムが互いに密着して収納袋1内に空気が入ることがなく、偏平状態を長時間維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在来工法の木造建築物において、外壁内壁間の隙間を流れる冷気を遮断するための気流止め等に使用する繊維系断熱材を収納する袋に関する。
【背景技術】
【0002】
在来工法の木造建築物においては、構造上、根太と床板間に隙間が存在し、そのため特に冬季には床下の冷気が壁内を通過し天井裏へ抜ける問題があった。壁内を通過する冷気は室内の暖房効率を大幅に低下させる原因となっていた。
【0003】
そこで、冷気となる気流の発生を防ぐため、表面がポリエチレンフィルムで覆われた壁用断熱材を壁内の上部と下部に詰め込むことが一般に行われている。より詳細には、ポリエチレンフィルムでカバーされた長尺の繊維系断熱材を長さ方向で適宜切断し、二つ折りにして天井付近の外壁と間仕切壁の間、および根太、土台付近に詰め込んで気流止めとする。繊維系断熱材の6面すべてをポリエチレンで覆った「グラスロン間仕切りエース」(旭ファイバーグラス社製)等も、同様の目的で二つ折りにして施工することがあった。
【0004】
また別法として、繊維系断熱材をポリエチレンの袋に入れ、袋の口から掃除機等の吸引装置を使用して蒲団の圧縮のように空気を抜いて薄くする方法も知られている。断熱材を薄くした状態で袋の口を縛り、薄さを維持した状態で壁内部の所定位置に詰め込む。その後カッター等でポリエチレンの袋の一部を切断し、空気を流入させることで断熱材を膨らませる。
【0005】
さらに、特許文献1に記載される「マグ気流止め」(株式会社マグ製)のように、予めグラスウール断熱材がポリエチレンの袋に詰められ、さらに真空引きされて厚さおよび幅の両方向とも圧縮された断熱材パックも知られている。断熱材パックは施工後、カッター等でポリエチレン袋の一部を切断することで、厚み方向と幅方向の両方向に膨張して空間を塞ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−303209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記二つ折りにする理由は、建物に係る振動等によって外れてしまわないよう気流止めをしっかりと詰め込みたいためである。しかし、建物の天井付近では、上部の貫(例えば18mm)に野縁と石膏ボードを例えば38〜45mm長さの釘で打ちつけることが多いため、間隙は狭く釘も飛び出ていて引っ掛かりやすい。よって二つ折りにして厚くなった断熱材を入れることができないという問題があった。また、長尺の繊維系断熱材を加工する場合、現場で所定の長さにカットしなければならないという手間があった。
【0008】
上記グラスロン間仕切りエースを使用した場合には、この製品の大きさが395×430mmであり、二つ折りにすると長さが200mm弱と短くなるため、間隙への挿入に際して位置合わせが容易でなかった。また、二つ折りにすると折り目部分とそれ以外の部分の厚さが異なってしまうが、それが原因で、施工時の挿入が不十分であると外れてしまう心配があった。
【0009】
一方、マグ気流止めについては、真空引きされていてコンパクトなため取り扱いやすいという利点があるが、施工前に何らかの理由で真空が解除されてしまった場合には、現場で再度脱気することができないという難点があった。一旦膨らんだ気流止めであっても壁内に挿入することはできるが作業性が大きく低下する。上記何らかの理由とは、輸送中もしくは施工現場での取り扱いによりフィルムに穴があくこと、あるいは、長期間使用せずに放置しておくことで空気が透過して膨らむことを言う。
【0010】
また、ポリエチレンの袋に詰められたフィルム付き断熱材を、本来の用途である断熱材として使用する際にも上記と同様の課題があった。
【0011】
本発明は、製品としてダンボール箱詰めする際には適宜圧縮することで多量の枚数を梱包でき、段ボール箱から取り出し、現場で更に吸引して薄くし、狭い箇所に入れた後に容易に膨張させることができる施工性のよい繊維系断熱材用収納袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る繊維系断熱材用収納袋は、2枚のプラスチックフィルムを重ねてなり、繊維系断熱材を収納する本体部分の一端側に長尺幅狭のスリーブが連続して形成され、前記本体部分の後端縁及び前記スリーブの先端縁は開放され、残りの縁部は融着されている。
【0013】
繊維系断熱材用収納袋を構成するプラスチックフィルムとしては、単層、2層または3層構造とし、その厚さの合計が10〜100μmであることが好ましい。また、前記スリーブの長さは100〜400mm、幅は50〜200mmであることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の繊維系断熱材用収納袋は、施工現場において、一般家庭用の掃除機程度の吸引機を使用して極めて短時間で薄くすることができる。薄くした気流止め等は狭い壁内に詰め込み易い。壁内に挿入後はカッターなどでプラスチックフィルム製の袋をカットするだけで容易に厚さを復元させ壁内に充填することができる。復元後には十分な厚さを得ることができるため従来のように二つ折りにする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る繊維系断熱材用収納袋に繊維系断熱材を収納する前の状態を示す斜視図
【図2】本発明に係る繊維系断熱材用収納袋に繊維系断熱材を収納した状態を示す斜視図
【図3】同収納袋に繊維系断熱材を収納した状態を示す断面図
【図4】同収納袋に繊維系断熱材を収納し且つ掃除機のホースを挿入した状態を示す断面図
【図5】同収納袋内の空気を掃除機によって吸引した状態を示す断面図
【図6】空気を抜いた後にスリーブの部分を結んだ状態を示す断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。実施例では繊維系断熱材を気流止めとして使用する場合を説明する。
【0017】
本発明に係る収納袋1は、2枚のプラスチックフィルムを重ねて形成される。そして収納袋1は、グラスウールなどの繊維系断熱材Mを収納する本体11と、この本体11の一端側に連続して形成される長尺幅狭のスリーブ12からなり、前記本体11の後端縁11a及び前記スリーブ12の先端縁12aは開放され、残りの縁部は融着(シール)されている。
【0018】
収納袋1を構成するプラスチックフィルムとしてはポリエチレンフィルムが好適である。またプラスチックフィルムは単層、2層または3層構造のいずれも好適であるが、輸送時および施工時の破損を避けるために厚さの合計は10μm以上であることが好ましく、袋1内の空気を抜き出す際および空気の逆流入防止のための柔軟性を確保するために厚さ100μm以下であることが望ましい。
【0019】
さらに、前記スリーブ12のサイズは、一般家庭用の掃除機を利用して袋内空気を吸引することを考慮して幅を50〜200mmとし、吸引後にスリーブ12を容易に縛ることができるよう長さは100〜400mmとすることが望ましい。このようなサイズとすることで紐などを使わずに縛ることができ、しかも、紐などよりも縛りやすいという特徴がある。
【0020】
繊維系断熱材Mの形状は施工場所に応じて適宜決めることができるが、例えば、柱−間柱あるいは間柱−間柱の間隔に合わせる。あるいは住宅、非住宅の様々な分野において、気流止めとしてばかりでなく断熱を目的とする部位に、それらに適したサイズの繊維系断熱材、フィルムを作成して用いても良い。そして収納袋1は、決定された形状の繊維系断熱材Mが確実に収納できる大きさに調製する。
【0021】
具体的な使用例を説明すると、図1に示すように、収納袋本体11の後端縁11aを広げ、本体11内に繊維系断熱材Mを収納する。この状態を図2、3で示している。
【0022】
次いで、適宜圧縮し本体11の後端縁11aを熱シールして適宜圧縮して箱詰めを行う。
【0023】
施工現場では図4に示すようにスリーブ12の先端縁12aを広げ、家庭用掃除機等の吸引パイプ2を挿入し、収納袋1内の空気を抜く。
【0024】
収納袋1内の空気を抜くと、図5に示すように繊維系断熱材Mは押し潰されて、偏平になる。この後、スリーブ12から吸引パイプ2を引き抜く。ここで、スリーブ12は2枚のフィルムを重ねて構成されているため、吸引パイプ2を引き抜いた後も2枚のフィルムが互いに密着して収納袋1内に空気が入ることがなく、偏平状態を長時間維持する。しかしながら、何らかの原因でスリーブ12の部分から空気が入り込むのを防止するため、図6に示すように、スリーブ12の部分を縛ってしまうのが好ましい。
【0025】
吸引の完了した気流止めは、根太と床板間、あるいは天井付近の外壁と間仕切壁間のような施工しにくい狭い場所であっても比較的容易に詰め込むことができる。壁内に挿入後はカッターなどでプラスチックフィルム製の袋1をカットするだけで容易に厚さを復元させ、壁内に充填することができる。
【0026】
上記のように、本発明にあっては、施工現場において空気を吸引して薄くし、壁内に挿入した後はフィルムをカットして繊維性断熱材Mを膨らませることで、壁内の表面の突起物にも気流止めを密着させることができ、気流止め効果や断熱効果を高めることができる。
【0027】
気流を止めるのは収納袋1を構成するプラスチックフィルムであり、中身である繊維性断熱材Mはフィルムを膨らませる素材として使用している。しかし、断熱材Mを使用することで断熱性能も付加されるという利点がある。
【符号の説明】
【0028】
1…収納袋、2…吸引パイプ、 11…収納袋本体、11a…収納袋本体の後端縁、12…スリーブ、12a…スリーブの先端縁、M…繊維性断熱材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維系断熱材を収納するプラスチックフィルム製の袋であって、この袋は2枚のプラスチックフィルムを重ねてなり、繊維系断熱材を収納する本体部分の一端側に長尺幅狭のスリーブが連続して形成され、前記本体部分の後端縁及び前記スリーブの先端縁は開放され、残りの縁部は融着されていることを特徴とする繊維系断熱材用収納袋。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維系断熱材用収納袋において、前記プラスチックフィルムが単層、2層または3層構造を有しており、その厚さの合計が10〜100μmであることを特徴とする繊維系断熱材用収納袋。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の繊維系断熱材用収納袋において、前記スリーブの長さは100〜400mm、幅は50〜200mmであることを特徴とする繊維系断熱材用収納袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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