説明

繊維製品改質剤と繊維製品改質方法ならびにこれにより改質された繊維製品。

【課題】簡便かつ安全な方法により紙、原糸、布帛等の繊維製品を改質して、難燃性、消臭性、耐候性を実現し繊維製品の長期にわたる安全・快適な使用を可能とする繊維製品を実現する。
【解決手段】 磁気処理活性水中に、紫外線吸収剤、リン酸一アンモニュウム、リン酸二アンモニュウム、防腐成分、消臭成分、植物性抽出液を含有する水性の繊維製品改質剤を含浸させ乾燥することにより紙、天然素材原糸、織布等の繊維製品に難燃性、消臭性、耐候性を付与するようにした改質方法を提供して上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、繊維製品の改質技術に関するものである。詳しくは、紙、不織布、織布等
の繊維製品に難燃性、消臭性、耐候性を簡便かつ無害な方法で付与するための改質剤、改
質方法およびそれらにより得られる改質繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、居住空間においては、壁紙、ソファー等の家具や寝具、照明器具の笠、カーテ
ンや絨毯等の装飾品に紙や布等の繊維製品が使用されている。また、日本の家屋では、障子や襖などの建具にも紙が多く使用されている。これら、紙、布等の繊維製品は、高級感、質感、色や柄の豊富さ等の意匠性とともに、保温性、吸湿性、防音性等の素材特有の性質からも、快適な居住空間を実現するために欠かせないものである。
【0003】
しかし、紙、布等の繊維製品は燃焼しやすく、裸火に曝されれば、すぐに引火して燃え広がり、火災の原因となるという問題、経年により種々の臭いが付着する問題あるいは紫外線の吸収による劣化進行等の問題がある。
【0004】
このため、近年では、難燃性高分子の繊維からなる布や紙、布に難燃性を付与するための様々な難燃剤が提供されている。具体的には、ポリアクリロニトリル系、メタ系アラミド系、パラ系アラミド系、ポリベンゾイミダゾール系、フッ素系等の繊維が難燃性繊維として知られており、防火耐熱保護服や防護材料として用いられている。また、紙等のセルロース材料に対しては、スルファミン酸グアニジンとホルマリンの反応生成物、スルファミン酸グアニジンとメチロール化ジシアンジアミド、メチロール化メラミンまたはメチロール化尿素との混合物等が知られている。
【0005】
他方、近年、建材等に含まれるホルムアルデヒドによりアレルギー症状を発症するという、いわゆるシックハウス症候群と呼ばれる事例が多く報告されていることから、ホルムアルデヒド非使用建材への要求が高まっている。前記の難燃処理方法は、繊維製品に高い難燃性を付与することができるものの、いずれも高価な試薬を用いる上、ホルムアルデヒドを用いるものであるため、その安全性にも問題がある。
【0006】
さらに、従来の処理技術で難燃性、消臭性、耐候性に係る改質をなすには複数液による処理が必要であって処理工程が複雑になり生産性ひいては製造コストにも影響を及ぼすという問題もある。
【0007】
なお、本願発明と関連する特許文献としては次のようなものがある。
【特許文献1】特公昭52−25448号公報
【特許文献2】特開昭53−125395号公報
【特許文献3】特公昭61−2993号公報
【特許文献4】特表2003−517084号公報
【特許文献5】特開2004−100103号公報
【特許文献6】特開2004−225198号公報
【特許文献7】特開2005−060667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、上記の実情に鑑みてなされたもので、簡便かつ安全な方法により紙、原糸、布帛等の繊維製品を改質して、難燃性、消臭性、耐候性を実現し繊維製品の長期にわたる安全・快適な使用を可能とする繊維製品の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、磁気処理活性水中に、紫外線吸収剤、リン酸一アンモニュウム、リン酸二アンモニュウム、防腐成分、消臭成分、植物性抽出液を含有する水性の繊維製品改質剤を提供して、上記従来の課題を解決する。
【0010】
また、上記の繊維製品改質剤において、防腐成分および消臭成分は植物由来の精油で構成することがある。
【0011】
さらに、上記いずれかの繊維製品改質剤において、さらに界面活性剤、エタノール、分散剤を含有させることがある。
【0012】
本願発明はまた、紙、天然素材原糸、織布等の繊維製品に難燃性、消臭性、耐候性を付与する改質方法であって、繊維製品に上記いずれかの繊維製品改質剤を含浸させ、乾燥することからなる繊維製品の改質方法を実現して上記従来の課題を解決しようとするものである。
【0013】
また、上記の改質方法において、繊維製品は、紙で構成することがある。
【0014】
さらに、上記の改質方法において、繊維製品は、天然素材の原糸で構成することがある。
【0015】
本願発明は、またさらに、上記いずれかの改質方法によって得られる繊維製品を提供して上記従来の課題を解決しようとするものである。
【0016】
また、本願発明は、繊維製品中に紫外線吸収剤、リン酸一アンモニュウム、リン酸二アンモニュウム、防腐成分、消臭成分、植物性抽出成分を含有する繊維製品を提供して上記従来の課題を解決する。
【0017】
さらに、上記の繊維製品において、防腐成分および消臭成分は植物由来の精油で構成することがある。
【発明の効果】
【0018】
本願発明は上記構成により、一剤に浸漬して乾燥するという簡単な処理により各種繊維製品に難燃性、消臭性、耐候性を付与することができるので、低廉なコストで高付加価値を有する繊維製品を実現することができる。
【発明の実施形態】
【0019】
本願発明は、紙、天然素材の原糸、布帛等の各種繊維製品の改質を目的としており、改質により付与される機能は、難燃性、消臭性、耐候性である。繊維製品の改質は改質剤への繊維製品の浸漬あるいは改質剤の繊維製品への塗布等によりなすことになる。
【0020】
改質剤は、水(A)、難燃性付与成分(B)、消臭成分(C)、耐候性付与成分(D)からなる水性剤として構成される。前記水および各種成分の構成比は以下が好ましい。
水(A): 75重量%
難燃性付与成分(B) 25重量%
消臭成分(C) 1重量%(外部)
耐候性付与成分(D) 1重量%(外部)
【0021】
上記各成分を混合撹拌して改質剤を生成する。水(A)は、他の成分との親和性の向上あるいは最終的に得られる改質剤の浸透性を高めるため水分子によるクラスターを細分化したいわゆる活性水が好ましい。活性化の手段は電磁気エネルギーの付与等従来各種手段による。
【0022】
難燃性付与成分(B)は、リン酸一アンモニュウム、リン酸二アンモニュウム、消臭成分からなる水性剤で構成され消臭成分は植物由来の精油成分が好ましい。 また、各成分構成比は、リン酸一アンモニュウムは12重量部、リン酸二アンモニュウムは28重量部、精油成分は0.5重量部となすことのぞましい。
【0023】
難燃性付与成分(B)の生成は、具体的に以下のようになされる。 すなわち、まず、リン酸一アンモニュウム30%、リン酸二アンモニュウム70%の配合比でリン酸化合物の混合粉体を生成する。
次いで、前記混合粉体40重量部を水(イオン水)60重量部に溶解させた水性剤を得る。この水性剤を難燃成分としてそのまま使用できるが、本願発明では、改質対象に消臭性を補完するために植物由来の精油を前記水性剤に添加して難燃性付与成分(B)を得ている。
【0024】
精油の成分中、テルペン化合物等が改質対象に防腐性能、消臭性能を奏するとともに、香気成分として微量ずつ気中に放出され改質対象の周辺空気を浄化する。
このようにして、この実施形態では、前記水性剤99.5重量部、精油0.5重量部の配合比により難燃性付与成分(B)が生成される。
【0025】
次に、前記難燃付与成分(B)に含有される精油の消臭効果を補完するために前記消臭成分(C)が添加される。この消臭成分(C)は、精油を0.4重量%含有する水溶液である。なお、この成分(C)は、防腐性付与の機能も有している。
【0026】
さらに、本願発明に係る改質材は、耐候性付与成分(D)を含有するがこれは以下の組成になる水溶液である。
紫外線吸収材 0.125重量%
界面活性材 0.125重量%
エタノール 0.50 重量%
分散材 0.25 重量%

紫外線吸収材は、種々周知のものを使用できるが、紙、天然素材原糸の主成分であるセルロースの紫外線劣化を防止して耐候性を向上させるために、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収材を用いて370nm以下詳しくは310nm〜350nmの波長域の紫外線を吸収させることが望ましい。
【0027】
以上の構成になる改質材による繊維製品の改質処理は、繊維製品を改質材中に浸漬し、あるいは繊維製品に改質材を塗布または噴霧したのち乾燥させて行う。
【実施例】
【0028】
次に、繊維製品としての紙についての改質に係る一実施例を説明する。該実施例では改質すべき対象として一般通常の壁紙を改質した。この壁紙は次の構成になる改質材に1分間浸漬した後、乾燥した。なお、改質材において、各構成成分の内容は上述の実施態様の項で説明したとおりのものである。

水(A) 75重量%
難燃性付与成分(B) 25重量%
消臭成分(C) 1重量%(外部)
耐候性付与成分(D) 1重量%(外部)
【0029】
処理した壁紙は、風合い、手触り、匂い、しなやかさ等処理前のものと変わりなく天然素材の有する自然の状態を保持していた。
【0030】
改質した上記壁紙について付与された難燃性について試験(酸素指数法)を行った。試験は10平方cmの上記改質処理壁紙を用い、JIS L 1091−1999に準拠して行い、その結果は改質壁紙の限界酸素指数(LOI値)は29.8%を示した。
LOI値が26以上であれば防炎性(自己消火性)を有している。 したがって、改質処理済の壁紙が天然紙として高い難燃性を有することが判明した。
【0031】
前記(段落番号0020以下)の改質材について以下の仕様で紫外線吸収試験をなした。

分光光度計: 島津UV−240
波長範囲 : 190から700nm
光 源: 330nm以上はタングステンランプ
330nm以下は重水素ランプ
試 料: 75mm×25mm×1mmのガラス片に上記改質材をハケ塗りした。
上記試験に係る光吸収ベクトル図によれば、310nm〜350nmの波長域で紫外線がカットされていることが判明した。したがって、改質処理した繊維製品は紫外線による劣化を効果的に防止でき耐久性の向上が期待できる。
【0032】
次に、上記改質処理した壁紙についてその消臭機能について下記の条件で試験を行った。
試験概要: 検体(10平方cmの上記改質処理壁紙)をにおい袋に入れ、空気3リットルを封入し、アンモニアをガス濃度が約50ppmとなるように添加し、1時間後に袋内のガス濃度を測定した。また、トリメチルアミン(約50ppm)についても同様に試験した。 なお、比較のために、検体をいれずに同様の操作で空試験をなした。
試験結果
アンモニア:
経過時間: 1時間
検体におけるアンモニア濃度は1ppm以下であった。
空試験におけるアンモニア濃度は46ppmであった。

トリメチルアミン:
経過時間: 1時間
検体におけるトリメチルアミン濃度は1ppm以下であった。
空試験におけるトリメチルアミン濃度は47ppmであった。

以上の試験より、実施例に係る改質すなわち消臭性の付与が効果的になされることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気処理活性水中に、紫外線吸収剤、リン酸一アンモニュウム、リン酸二アンモニュウム、防腐成分、消臭成分、植物性抽出液を含有する水性の繊維製品改質剤。
【請求項2】
請求項1の繊維製品改質剤において、防腐成分および消臭成分は植物由来の精油であることを特徴とする繊維製品改質剤。
【請求項3】
請求項1又は2の繊維製品改質剤において、さらに界面活性剤、エタノール、分散剤を含有することを特徴とする繊維製品改質剤。
【請求項4】
紙、天然素材原糸、織布等の繊維製品に難燃性、消臭性、耐候性を付与する改質方法であって、繊維製品に請求項1ないし3のいずれかの繊維製品改質剤を含浸させ、乾燥することを特徴とする繊維製品の改質方法。
【請求項5】
請求項4の改質方法において、繊維製品は、紙であることを特徴とする繊維製品の改質方法。
【請求項6】
請求項4の改質方法において、繊維製品は、天然素材の原糸であることを特徴とする繊維製品の改質方法。
【請求項7】
請求項4ないし6いずれか記載の改質方法によって得られる繊維製品。
【請求項8】
繊維製品中に紫外線吸収剤、リン酸一アンモニュウム、リン酸二アンモニュウム、防腐成分、消臭成分、植物性抽出成分を含有することを特徴とする繊維製品。
【請求項9】
請求項8の繊維製品において、防腐成分および消臭成分は植物由来の精油であることを特徴とする繊維製品。

【公開番号】特開2006−299471(P2006−299471A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124532(P2005−124532)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(503214896)
【Fターム(参考)】