説明

繊維質材料の粉砕方法

【課題】繊維を含む繊維質材料を効率的に粉砕して再利用し易い繊維質材料粉末を得ることのできる繊維質材料の粉砕方法を提供すること。
【解決手段】繊維を含む繊維質材料を粉砕する繊維質材料の粉砕方法は、ロールプレス1で実施され、互いに接近する方向に付勢されながら回転する一対の金属製ロールの間に、繊維質材料を投入して圧縮粉砕するロール圧縮粉砕工程を備えている。繊維質材料を粉砕するに際して、ロール圧縮粉砕工程を実施することにより、一対の金属製ロールの付勢力によって繊維質材料に圧縮力が作用するとともに、ロールの回転によって繊維質材料がロールの排出方向に延伸されることとなるため、繊維質材料中の繊維が引きちぎられ、細かい繊維片となり、粉砕物が綿状となることもなく効率的に粉砕することができ、再利用し易い繊維質材料粉末またはチップ状物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維を含む繊維質材料を粉砕する繊維質材料の粉砕方法に関し、例えば、綿、茶、イグサ等の植物系や、絹、皮革、羊毛等の動物系の繊維質天然素材の廃材、繊維層と合成樹脂層とを積層した複合素材の廃材、綿織物の廃材等のリサイクルに利用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年のリサイクル法の施行により、製造業においては、リサイクルし易い製品を製造すること、およびリサイクルシステムの構築が急務とされている。
例えば、飲料製造業では、茶、コーヒー等、様々な種類のドリンク類が販売され、生産量の急激な増加に伴い、抽出後の残渣である茶殻やコーヒーの植物系繊維質天然廃材や、絹織物を製造する際の絹繊維廃材が多量に発生し、これをいかにリサイクルするかが問題とされている。
【0003】
また、建築廃材としては畳等に用いられたイグサもどのようにリサイクルするかが問題とされている。
さらに、織布、不織布等の繊維層と合成樹脂層とを積層することにより得られる、合成レザーやターポリン等の複合素材、綿織物等の廃材も同様にいかにリサイクルするかが問題とされている。
【0004】
このため、これらの問題を解決すべく、各廃材を粉砕して微粉末化し、合成樹脂に添加して再利用する方法が提案されている。
具体的には、廃材の粉砕方法は、剪断力を利用したスクリーンミルを用いて粗粉砕する工程、剪断力、衝撃力、摩砕力のいずれかで粗粉砕されたものを解砕する工程、および解砕物を微粉末化する工程を含んで構成されている。このように各廃材を微粉末化することにより、廃材を種々の用途に供することができるため、リサイクル用途を大幅に拡大できるという利点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような廃材の粉砕方法により繊維系天然廃材、繊維層および合成樹脂層からなる複合素材、綿織物等を粉砕しようとしても、粉砕中や捕集時に繊維同士が絡み合って綿状になってしまうため、粉砕物がチップ状、または粉末状とならず、再利用しにくいという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、繊維を含む繊維質材料を効率的に粉砕して再利用し易い繊維質材料粉末を得ることのできる繊維質材料の粉砕方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の繊維質材料の粉砕方法は、繊維を含む繊維質材料を粉砕する繊維質材料の粉砕方法であって、互いに接近する方向に付勢されながら回転する一対の金属製ロールの間に、前記繊維質材料を投入して圧縮粉砕するロール圧縮粉砕工程を備えていることを特徴とする。
ここで、被粉砕物となる繊維質材料としては、綿、茶、イグサ等の植物系繊維質天然素材、絹、皮革、羊毛等の動物系繊維質天然素材、織布、不織布等の繊維層と合成樹脂とを積層した合成レザーやターポリン等の複合素材、綿織物等を対象とするのが好ましい。これらは、素材中に繊維が存在しているため、通常のスクリーンミル等による粉砕では、繊維が絡み合いチップ状化、粉末状化しにくい材料だからである。
これらの中でも、自動車の座席シートに用いられる表皮材の廃材は、軟質ウレタンフォームがラミネートされていることから、特に粉末化しにくい。
【0008】
また、ロール圧縮粉砕工程における一対の金属製ロールは、付勢力により当接した状態で回転するものであり、繊維質材料を引き裂くことができれば、ロール回転数、付勢力の値は任意に定め得る。
また、一対の金属製ロールに作用する付勢力は、一方の金属製ロールを固定ロールとし、他方の金属製ロールに付勢手段を設け、他方の金属製ロールを一方の金属製ロールに付勢させることにより作用させることができる。付勢手段としては、他方の金属製ロールの回転軸を一方のロール側に押さえつけるコイルバネ、皿バネ、油圧装置等を備えたものを採用することができる。
【0009】
このような本発明によれば、繊維質材料を粉砕するに際して、ロール圧縮粉砕工程を実施することにより、一対の金属製ロールの付勢力によって繊維質材料に圧縮力が作用するとともに、ロールの回転によって繊維質材料がロールの排出方向に延伸されることとなるため、繊維質材料中の繊維が引きちぎられ、細かい繊維片となり、粉砕物が綿状となることもなく効率的に粉砕することができ、再利用し易い繊維質材料粉末またはチップ状物を得ることができる。
また、一対のロールを主構成とする粉砕装置のみで繊維質材料を粉砕することができるため、粉砕設備を小型化することができるうえ、装置の構造の簡素化を図ることができる。
【0010】
以上において、本発明の繊維質材料の粉砕方法は、前述のロール圧縮粉砕工程により得られた粉砕物を、解砕する解砕工程および/または微粉化する超微粉化工程を備えているのが好ましい。
ここで、解砕工程および/または超微粉化工程は、種々の公知の解砕機を用いて行うことができ、好ましくは、超微粉化できる機能を具備する解砕機を採用するのがよい。解砕機は、剪断力、衝撃力、摩砕力のいずれかで粉砕する機器を採用することができ、例えば、解砕のみ行う機器として、ハンマーミル、ジェットミル等を採用することができる。また、熱硬化性樹脂を解砕・微粉化できる機器として、スクリーンミル、特開平11−320558号に記載のスクリーンミル、ボールミル、振動ボールミル、ローラーミル遠心分級型ミル等を採用することができる。
そして、解砕工程および/または超微粉化工程とあるように、ロール圧縮粉砕工程の後に、解砕工程または超微粉化工程のいずれかを実施してもよいし、解砕工程の後さらに超微粉化工程を実施してもよい。
【0011】
このように解砕工程および/または超微粉化工程を備えることにより、ロール圧縮粉砕工程により得られた粉砕物が完全に粉体化していない場合であっても、解砕工程で解砕することができるため、再利用し易い繊維質材料の粉砕物を確実に得ることができる。
【0012】
また、前述のロール圧縮粉砕工程は、複数回繰り返して実施されるのが好ましい。
ここで、ロール圧縮粉砕工程を複数回繰り返して実施するには、1組の金属製ロールを備えた粉砕装置に、1度投入された粉砕物を再び投入して複数回のロール圧縮粉砕工程を実施するようにしてもよいが、1つの装置に複数組の金属製ロールを設けておき、第1組目の金属製ロールで粉砕された粉砕物を第2組目の金属製ロールに投入するように構成し、さらに第2組目の金属製ロールで粉砕された粉砕物を第3組目の金属製ロールでさらに粉砕するように構成するのが好ましい。
【0013】
このようにロール圧縮粉砕工程を複数回繰り返して実施することにより、延伸による繊維質材料中の繊維の引きちぎりを多段階で行うことができるため、繊維片を短くして、より細かな繊維質材料の粉砕物を得ることができる。
また、粉砕装置に複数組の金属製ロールを設けるだけで、ロール圧縮粉砕工程を複数回繰り返して実施できるため、粉砕装置が大型化することもなく、効率的な粉砕を行うことができる。
【0014】
さらに、前述のロール圧縮粉砕工程における一対の金属製ロールは、100MPa以上、好ましくは130MPa以上の圧力で繊維質材料を圧縮するのが好ましい。
ここで、圧力は、一対の金属製ロールのうち、一方の金属製ロールの軸に作用させる軸力ではなく、金属製ロールの当接部分に沿った線状部分において繊維質材料に作用する圧力を意味する。
【0015】
圧力の測定は、発色材料を封入したマイクロカプセルを含む圧力測定フィルムを、一対の金属製ロールで挟圧し、除荷後、フィルムの発色状態を確認することにより行うことができる。圧力測定フィルムは、高圧用、中圧用、低圧用等作用する圧力の大きさに応じて複数種類準備しておき、各種類のフィルムの発色状態に基づいて、概ねの圧力を測定することができる。具体的な圧力測定フィルムとしては、富士写真フィルム株式会社のプレスケールを採用することができる。
このプレスケールは、低圧力用LWが2.5〜10MPa、中圧力用MWが10〜50MPa、高圧力用HSが50〜130MPaの範囲で測定できるように構成されている。そして、高圧力用HSにより100MPa以上の範囲が生じるように、一対の金属製ロール間の付勢力を調整すればよい。
【0016】
このようにロール圧縮粉砕工程で100MPa以上の圧力で繊維質材料を圧縮することにより、ロールの回転に伴う繊維質材料の延伸を確実に行うことができるため、ロール圧縮粉砕工程を効率的に行うことができる。
【0017】
さらに、本発明の繊維質材料の粉砕方法は、一対のロールを冷却する冷却工程を備えているのが好ましい。
この冷却工程は、円筒状の金属製ロールの内部に冷却機構を設置して行うこともできるが、金属製ロールの外周部分に散水することによっても行うことができる。また、冷却工程は、一対の金属製ロールのいずれか一方を冷却してもよく、両方を冷却してもよい。
このように冷却工程を備えることにより、圧縮粉砕に伴って金属ロールが加熱することを抑えることができるため、一対の金属ロールの加熱に伴う変形等が生じることを防止でき、安定した状態でロール圧縮粉砕工程を実施できる。
【0018】
そして、前述のロール圧縮粉砕工程は、繊維質材料の投入時、該繊維質材料に水を添加するのが好ましい。
添加する水の量は、被粉砕物の投入量に応じて適宜の量を添加すればよいが、概ねの目安としては繊維質材料の投入量に対して10wt%程度添加するのがよい。
このように水を添加することにより、繊維質材料の粉砕効率が向上して、一層短い繊維片の粉砕物を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
前述のような本発明によれば、繊維を含む繊維質材料を効率的に粉砕して再利用し易い繊維質材料粉末を得ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の実施形態に係る繊維質材料の粉砕方法を実施するための粉砕システムが示されている。この粉砕システムは、綿、茶、イグサ等の植物系繊維質天然素材、絹、皮革、羊毛等の動物系繊維質天然素材、繊維層および合成樹脂層を積層した合成レザー、ターポリン等の複合素材を粉砕するシステムであり、ロールプレス1、解砕機2、超微粉化装置3、および捕集機4を備えて構成される。
【0021】
ロールプレス1は、前記の繊維質材料をロール圧縮粉砕することにより、繊維質材料チップ、または繊維質材料粉末を製造する部分であり、本実施形態では、2段のロールプレス機11、12を直列に接続することにより構成される。
ロールプレス機11、12は、図2に示すように、原料投入用ホッパ21、固定ロール22、可動ロール23、付勢装置24、および粉砕物回収バケット25を備えて構成される。
【0022】
原料投入用ホッパ21は、原料となる繊維質材料を投入する部分であり、粉砕物回収バケット25は、ロールプレス機11、12で粉砕された粉砕物を回収する容器である。
固定ロール22は、金属製の円筒状体からなり、プレス本体部分に設けられる回転軸(図示略)に対して、回転自在に軸支され、回転軸はプレス本体部分に対して固定されている。
【0023】
可動ロール23は、固定ロール22と同様に金属製の円筒状体からなり、プレス本体部分に設けられ、固定ロール22の回転軸に対して、接近離間方向に移動可能な回転軸に回転自在に軸支されている。尚、図2では図示を略したが、固定ロール22および可動ロール23の内部には、冷却機構が設けられ、粉砕時の摩擦によるこれらのロール22、23の加熱は、この冷却機構によって抑えられる。
これらのロール22、23の径×長さは、例えば、150mm×150mmまたは300mm×300mmのものが採用される。
また、固定ロール22および可動ロール23は、モータ等の駆動手段によって同期して回転するように構成されていて、駆動手段を調整することにより、これらのロール22、23の回転数を任意に調整することができる。
【0024】
付勢装置24は、可動ロール23を固定ロール22に接近する方向に付勢する付勢手段であり、先端が可動ロール23の外周面に当接する軸部241と、軸部241のプレス本体部分および可動ロール23の間に挿入される複数の皿バネ242と、軸部241の基端部分に設けられ、可動ロール23の付勢力を調整するための押付力調整ネジ243とを備えている。この押付力調整ネジ243を調整することにより、軸部241の可動ロール23に対する押付力が変化して、固定ロール22および可動ロール23間に作用する付勢力を調整することができるようになっている。
【0025】
この付勢装置24で調整される付勢力は、固定ロール22および可動ロール23の当接線を挟む幅2.5mmの上下の領域で100MPaとなるように設定される。
付勢力の設定は、前述の圧力測定フィルムを利用して行われ、まず、可動ロール23を固定ロール22から離間させた状態で高圧力用の圧力測定フィルムを固定ロール22および可動ロール23の間に挿入し、押付力調整ネジ243を回転して固定ロール22および可動ロール23の間に付勢力を発生させ、圧力測定フィルムの前記領域の部分が100MPaの発色状態となるまで、締め付けることにより行われる。
【0026】
解砕機2は、ロールプレス1で粉砕された粉砕物を剪断力を利用して解砕する機械であり、本実施形態では、スクリーンミルが採用されている。このスクリーンミルは、筒状本体と、この筒状本体内に設けられる回転刃とを備え、筒状本体の内面に形成される固定刃と、回転刃との剪断力を利用して粉砕を行うものであり、筒状本体の排出側開口部分にスクリーンを配置することにより、投入された原料が所定の大きさに解砕されるまで繰り返し粉砕が行われる。
【0027】
解砕機2としてのスクリーンミルは、固定刃および回転刃のクリアランスを2〜5mmに、排出側のスクリーンメッシュ径を1〜8mmφに設定した場合は、解砕機として使用される。一方、固定刃および回転刃のクリアランスを0.2〜2mmに、排出側のスクリーンメッシュ径を0.5〜1mmφに設定した場合は、微粉砕機として使用される。
このような解砕機2は、原料となる繊維質材料が繊維層および合成樹脂層を積層した合成レザーやターポリン等の複合素材や、綿織物をロールプレス1で粉砕した際に用いられ、ロール圧縮粉砕により得られた粉砕物は、バケット2Aに集荷される。
【0028】
超微粉化装置3は、綿、茶、イグサ等の植物系繊維質天然素材や、絹、皮革、羊毛等の動物系繊維質天然素材を超微粉末に粉砕するものであり、本実施形態では、シングルトラックジェットミルが採用されている。このシングルトラックジェットミルは、リング状に構成された圧縮空気流路と、この圧縮空気流路の一部と接続される分級器と、原料投入用のホッパとを有し、ホッパからロールプレス1を経た植物系や動物系の繊維質天然素材の粉砕物を投入し、圧縮空気流路中にこの粉砕物を循環させることにより、粉砕物が互いに衝突して微粉末化する装置であり、所定の粒径に粉砕された微粉末は、分級器に集められ、捕集機4に送られる。尚、さらに粒径をより小さくするためには、シングルトラックジェットミルの前段にボールミルを設置し、このボールミルで粉砕されたものをシングルトラックジェットミルで微粉砕するのが好ましい。また、ボールミルに投入する前に、前記ロールプレス1で粉砕、圧縮を行うことにより、ボールミルへの投入量が増加し、粉砕時間も短縮され、経済性が向上する。
【0029】
捕集機4は、最終的に粉砕された所定粒径の繊維質天然材料の微粉末を回収する装置であり、円筒状本体と、円筒状本体内部に回転気流を発生させる気流発生装置と、円筒状本体下部に設けられる分級器とを備え、この捕集機4で回収できない繊維質天然材料の微粉末は、この捕集機4の後段に設置されるバグフィルタ(図示略)によって回収される。
【0030】
次に、前述の繊維質材料の粉砕システムを利用した繊維質材料の粉砕手順について説明する。
(1) 廃材として得られる繊維質材料を、ロールプレス1の第1段目のロールプレス機11の原料投入用ホッパ21に投入し、ロールプレス1による繊維質材料の粉砕を開始する(ロール圧縮粉砕工程)。原料投入用ホッパ21への繊維質材料の投入量は10kg/h程度を目安とし、ロール回転数は10rpm程度に設定する。尚、この際、必要に応じて、原料投入用ホッパ21には、約10wt%の水を投入する。
【0031】
(2)このロール圧縮粉砕工程と並行して、固定ロール22および可動ロール23内部の冷却機構に冷却水を循環させ、繊維質材料の粉砕時に発生する摩擦熱によって加熱されたロール22、23を冷却機構により冷却する(冷却工程)。
(3) 第1段目のロールプレス機11によるロール圧縮粉砕が終了したら、繊維質材料の粉砕物を第2段目のロールプレス機12の原料投入用ホッパ21に投入して、2回目のロール圧縮粉砕を開始する。尚、具体的な粉砕条件、ロール22、23の冷却等については、第1回目と同様である。
【0032】
(4) 原料となる繊維質材料が合成レザーやターポリン等の複合素材、およびそれらとウレタンフォームとのラミネート素材である場合、ロールプレス1で粉砕された粉砕物は、解砕機2に投入され、粉砕物の解砕を行う(解砕工程)。粉砕物の投入量は20kg/hを目安とし、回転刃の回転数は略1000rpmに設定する。また、固定刃、回転刃のクリアランスを5mmとし、排出スクリーンメッシュ径を8mmφとして粉砕を行うと、5mm角程度のチップ状の粉砕物が得られるので、この粉砕物をバケット2Aで回収する。
【0033】
(5) 原料となる繊維質材料が茶、イグサ等の植物系繊維質天然素材や、絹、皮革、羊毛等の動物系繊維質天然素材である場合、ロールプレス1で粉砕された粉砕物は、超微粉化装置3に送られ、この超微粉化装置3で粉砕することにより、天然有機物の微粉末とされて捕集機4に送られ、天然有機物微粉末が回収される。
【0034】
前述のような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
繊維質材料を粉砕するに際して、ロール圧縮粉砕工程を実施することにより、一対の金属製ロール22、23の付勢力によって繊維質材料に圧縮力が作用するとともに、ロール22、23の回転によって繊維質材料がロールの排出方向に延伸されることとなるため、繊維質材料中の繊維が引きちぎられ、細かい繊維片となり、粉砕物が綿状となることもなく効率的に粉砕することができ、再利用し易い繊維質材料粉末またはチップ状物を得ることができる。
また、一対のロール22、23を主構成とするロールプレス1のみで繊維質材料を粉砕することができるため、粉砕設備を小型化することができるうえ、装置の構造の簡素化を図ることができる。
【0035】
さらに、このように解砕工程を備えることにより、ロール圧縮粉砕工程により得られた粉砕物が完全に粉体化していない場合であっても、解砕工程で解砕することができるため、再利用し易い繊維質材料の粉砕物を確実に得ることができる。
そして、ロール圧縮粉砕工程を複数回繰り返して実施することにより、延伸による繊維質材料中の繊維が引きちぎりが多段階で行うことができるため、繊維片を短くして、より細かな繊維質材料の粉砕物を得ることができる。
【0036】
また、ロールプレス機11、12を直列接続するだけで、多段階で粉砕可能なロールプレス1とすることができるため、粉砕装置が大型化することもなく、効率的な粉砕を行うことができる。
さらに、ロール圧縮粉砕工程で100MPa以上の圧力で繊維質材料を圧縮することにより、ロール22、23の回転に伴う繊維質材料の延伸を確実に行うことができるため、ロール圧縮粉砕工程を効率的に行うことができる。
【0037】
そして、ロール22、23内部の冷却機構による冷却工程を備えることにより、圧縮粉砕に伴って金属ロール22、23が加熱することを抑えることができるため、一対の金属ロール22、23の加熱に伴う変形等が生じることを防止でき、安定した状態でロール圧縮粉砕工程を実施できる。
また、ロール圧縮粉砕工程時に水を添加することにより、繊維質材料の粉砕効率が向上して、一層短い繊維片の粉砕物を得ることができる。
【0038】
尚、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形をも含むものである。
前記実施形態では、ロールプレス1は2つのロールプレス機11、12を直列に接続していたが、本発明はこれに限られず、3〜5つのロールプレス機を直列に接続して、3〜5回ロール圧縮粉砕工程を繰り返してもよい。
【0039】
また、前記実施形態では、茶等を微粉化する微粉化装置3として、シングルトラックジェットミルを採用していたが、他の方式のジェットミル、ボールミル等を採用してもよい。
さらに、前記実施形態では、解砕工程を実施する解砕機2として、スクリーンミルを採用していたが、本発明はこれに限られず、インペラーミル等他の解砕機を採用してもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
[実施例1]
飲料製造業等から廃材として出る茶等の植物系繊維質天然系素材を、乾燥後、図2に示されるロールプレス機11を用いてロール圧縮粉砕工程を実施した後、微粉化装置3による粉砕を行って植物系繊維質天然素材の微粉末を得た。尚、第1回目のロール圧縮粉砕工程では、茶に対して10wt%の水を添加して圧縮粉砕を行っている。その他の粉砕条件は、以下の通りである。
ロールプレス機11:ロールプレスDP−150型((株)セイシン企業製)
ロール径×ロール長:150mm×150mm
ロール回転数:10rpm
投入量:10kg/h
超微粉化装置3:STJ−200(ジェットミル、(株)セイシン企業製)
エアー圧力:7kg/cm2
投入量:10kg/h
【0041】
[実施例2]
被粉砕物を、繊維層および合成樹脂層の積層品であるポリエステル織物とウレタンフォームのラミネート素材とし、ロールプレス機11でロール圧縮粉砕工程を2回繰り返した後、解砕機2による解砕工程を実施してチップ状の繊維質材料粉砕物を得た。
粉砕条件は、以下の通りである。
ロールプレス機11:ロールプレスDP−150型((株)セイシン企業製)
ロール径×ロール長:150mm×150mm
ロール回転数:10rpm
加水条件:10wt%
パス回数:2パス
投入量:10kg/h
解砕機2:(株)ホーライ製、メッシュミルHA−2542
回転刃回転数:2500rpm
固定刃−回転刃クリアランス:2mm
排出スクリーンメッシュ径 :2mm
投入量:20kg/h
【0042】
[実施例3]
被粉砕物をシャツやシーツ等の綿織物とし、解砕機2を下記仕様に変更した他は、実施例2と同様の操作によって綿織物の粉砕物を得た。
解砕機2:オリエント(株)製、オリエントミルVM−20型
回転刃回転数:1000rpm
固定刃−回転刃クリアランス:5mm
排出スクリーンメッシュ径 :8mm
[実施例4]
被粉砕物をPVCおよび綿織物からなるターポリン素材とした他は、実施例3と同様の操作によってターポリン素材の粉砕物を得た。
【0043】
[比較例1]
実施例1と同様の材料を被粉砕物として、スクリーンミルによる粗粉砕を行った後、ロールプレス1によるロール圧縮粉砕を行うことなく、微粉化装置3による微粉末粉砕を行って、繊維系の天然素材の粉末を得た。尚、微粉化装置3による粉砕条件は実施例1と同様であり、スクリーンミルの粉砕条件は、下記の通りである。また、スクリーンミルによる粗粉砕後の粉砕物の平均粒径は2mmであった。
スクリーンミル:オリエント(株)製,オリエントミルVM−20型
回転刃回転数:1000rpm
固定刃−回転刃クリアランス:2mm
排出スクリーンメッシュ径 :2mm
投入量:10kg/h
【0044】
[比較例2]
実施例2と同様の材料を被粉砕物として、実施例2のスクリーンミルの粉砕条件で粉砕を行い、粉砕物を得た。
[比較例3]
実施例3と同様の材料を被粉砕物として、比較例1のスクリーンミルの粉砕条件で粉砕を行い、粉砕物を得た。
[比較例4]
実施例4と同様の材料を被粉砕物として、比較例1のスクリーンミルの粉砕条件で粉砕を行い、粉砕物を得た。
実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例4の結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例1および比較例1を対比すると、茶等の植物系繊維質天然素材の場合、ロールプレス1によるロール圧縮粉砕工程を実施することにより、繊維質天然素材の微粉末の平均粒径を小さくでき、最大粒径も大幅に小さくすることができることが判る。尚、比較例1の粉末は、繊維残りがありこのままでは使えないため、さらに後段で分級工程を実施する必要がある。
【0047】
また、実施例2および比較例2、実施例3および比較例3、実施例4および比較例4を対比すると、スクリーンミル、ロールプレス1による粉砕物は、粉末状またはチップ状である。しかしながら、比較例2、比較例3、および比較例4の場合、繊維が短く切断されておらず、毛羽立ちが多く目立ち、このまま、成形機等に投入し、溶融して再利用しようとしても、成形できない。一方、実施例2、実施例3、および実施例4の場合、毛羽立ちもなく、繊維が充分に裁断されているため、成形機等に投入して再利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る熱硬化性樹脂発泡体の粉砕方法を実施するための粉砕システムを表す模式図である。
【図2】前記実施形態におけるロール圧縮粉砕工程を実施するためのロールプレス機の構造を表す側面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ロールプレス(ロール圧縮粉砕工程)
2 解砕機(解砕工程)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含む繊維質材料を粉砕する繊維質材料の粉砕方法であって、
互いに接近する方向に付勢されながら回転する一対の金属製ロールの間に、前記繊維質材料を投入して圧縮粉砕するロール圧縮粉砕工程を備えていることを特徴とする繊維質材料の粉砕方法。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維質材料の粉砕方法において、
前記ロール圧縮粉砕工程により得られた粉砕物を、解砕する解砕工程および/または微粉化する超微粉化工程を備えていることを特徴とする繊維質材料の粉砕方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の繊維質材料の粉砕方法において、
前記ロール圧縮粉砕工程は、複数回繰り返して実施されることを特徴とする繊維質材料の粉砕方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の繊維質材料の粉砕方法において、
前記ロール圧縮粉砕工程における前記一対の金属製ロールは、100MPa以上の圧力で前記繊維質材料を圧縮することを特徴とする繊維質材料の粉砕方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の繊維質材料の粉砕方法において、
前記一対のロールを冷却する冷却工程を備えていることを特徴とする繊維質材料の粉砕方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の繊維質材料の粉砕方法において、
前記ロール圧縮粉砕工程は、前記繊維質材料の投入時、該繊維質材料に水を添加することを特徴とする繊維質材料の粉砕方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の繊維質材料の粉砕方法において、
前記繊維質材料は、綿、茶、イグサ等の植物系繊維質天然素材であることを特徴とする繊維質材料の粉砕方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の繊維質材料の粉砕方法において、
前記繊維質材料は、絹、皮革、羊毛等の動物系繊維質天然素材であることを特徴とする繊維質材料の粉砕方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の繊維質材料の粉砕方法において、
前記繊維質材料は、繊維層の単独素材、または繊維層と合成樹脂層とを積層した複合素材から構成されていることを特徴とする繊維質材料の粉砕方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−275894(P2007−275894A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166308(P2007−166308)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【分割の表示】特願2001−383391(P2001−383391)の分割
【原出願日】平成13年12月17日(2001.12.17)
【出願人】(500242384)出光テクノファイン株式会社 (55)
【出願人】(591127917)株式会社セイシン企業 (17)
【Fターム(参考)】