説明

織りエアバッグ基布

本発明は、ポリオレフィンフィラメント糸のグループから選択される第1のタイプのフィラメント糸と、ポリアミドフィラメント糸およびポリエステルフィラメント糸のグループから選択される少なくとも1つの第2のタイプのフィラメント糸とを備えるとともに、シリコーン系コーティング(7)を備える、織りエアバッグ基布(1)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は織りエアバッグ基布に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグは、衝撃事象の場合に搭乗者を保護するために自動車において幅広く使用される。そのようなエアバッグの作動時、エアバッグは、エアバッグインフレータにより生成され或いは供給されるガスによって膨張される。エアバッグは、多くの場合、当分野において周知である織り技術によって形成される織布から縫い付けられる。エアバッグ基布は多数の要件を満たす必要がある。例えば、エアバッグ基布は、それにより形成されるエアバッグをエアバッグハウジング内に嵌まり込むべく折り畳むことができるように柔軟である必要がある。また、エアバッグ基布は、エアバッグの膨張中に高い応力に耐えることができるように十分強くなければならない。更に、言うまでもなく、エアバッグ基布は、幅広い範囲の周囲温度状態に晒されるとともに、長期間にわたってそれらの材料性能を保つ必要がある。織りエアバッグ基布の耐熱性を高めて透過性を低下させるために、織りエアバッグ基布にコーティングを設けることが公知である。
【0003】
一般に、今日の織りエアバッグ基布は、ポリアミド糸から形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、改良されたエアバッグ基布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的および他の目的は、ポリオレフィンフィラメント糸のグループから選択される第1のタイプのフィラメント糸と、ポリアミドフィラメント糸およびポリエステルフィラメント糸のグループから選択される少なくとも1つの第2のタイプのフィラメント糸とを備えるとともに、シリコーン系コーティングを備える織りエアバッグ基布によって達成される。
【0006】
シリコーン系コーティングは、織りエアバッグ基布の耐熱性を高めて透過性を低下させるのに役立つ。コーティングの付着は、コーティングされた基布の適切な機能を確保するために重要である。コーティングが適切な態様で基布に付着されなければ、コーティングが基布から剥離する場合がある。コーティングは、織布から形成されるエアバッグを折り畳んでエアバッグハウジング内に嵌め込む最中に生じ得る、例えば摩損に起因して、織布から剥離してはならない。また、コーティングは、そのようなエアバッグの格納中または膨張中に剥離してはならない。膨張中、エアバッグは、それが適切な態様でコーティングされていなければ、エアバッグ基布を損傷させる可能性がある高温ガスによって膨張される場合がある。
【0007】
シリコーン系コーティング材料は、一般に、様々な環境状態および格納状態に長期間にわたって耐えることができるそれらの能力のために好ましい。織りエアバッグ基布は、ポリオレフィンフィラメント糸である第1のタイプのフィラメント糸を備える。しかしながら、ポリオレフィンフィラメント糸に対するシリコーン系コーティングの付着は非常に悪い。一方、ポリアミドフィラメント糸およびポリエステルフィラメント糸に対するシリコーン系コーティングの付着は非常に良好である。したがって、織りエアバッグ基布の適切なコーティングを達成するために、織りエアバッグ基布は、シリコーン系コーティングの付着が非常に良好な第2のタイプのフィラメント糸も備える。
【0008】
本発明の利点は、シリコーン系コーティングがポリオレフィンフィラメント糸に対して適切な態様で付着しないけれども、そのようなフィラメント糸をコーティングされた織りエアバッグ基布で使用できるという点である。代わりに、シリコーン系コーティングは、織布で使用される第2のタイプのフィラメント糸に付着する。したがって、安価な織りエアバッグ基布を提供できる。これは、ポリオレフィンフィラメント糸が多くの場合にポリアミドフィラメント糸およびポリエステルフィラメント糸よりも安価だからである。また、ポリオレフィンフィラメント糸の密度が通常はポリアミドフィラメント糸およびポリエステルフィラメント糸の密度よりも低いため、重量減少も可能である。構成要素の重量減少は、今日、車両の燃費および排気を減少させるために車両の開発において非常に重要である。このように、ポリオレフィンフィラメント糸の低コストおよび低重量の利点と、第2のタイプのフィラメント糸のコーティングを受けることができる能力とを有する織りエアバッグ基布が提供される。
【0009】
また、−40〜100℃の温度間隔などの幅広い範囲の周囲温度状態で適切に作用する高い強度と低い透過性とを呈する織りエアバッグ基布が得られる。
【0010】
第1のタイプのフィラメント糸はポリプロピレンフィラメント糸であることが好ましい。したがって、例えばポリアミド6.6から形成される糸よりも安価なポリプロピレンフィラメント糸から織布の一部が形成されるため、費用効率の高いエアバッグ基布が提供される。
【0011】
第2のタイプのフィラメント糸は、ポリアミドまたはポリアミド6.6などのポリアミドフィラメント糸であることが好ましい。最も好ましくは、第2のタイプのフィラメント糸は、シリコーン系コーティングに対する特に良好な付着を呈するポリアミド6.6フィラメント糸である。
【0012】
好ましくは、織りエアバッグ基布は、前記織りエアバッグ基布の全フィラメント糸重量に基づいて、少なくとも25重量パーセントの前記第1のタイプのフィラメント糸、より好ましくは少なくとも35重量パーセントの前記第1のタイプのフィラメント糸、最も好ましくは少なくとも40重量パーセントの前記第1のタイプのフィラメント糸を備える。第2のタイプのフィラメント糸は多くの場合に安価であり、その重量が通常は第2のタイプのフィラメント糸と比べて低いため、第2のタイプのフィラメント糸の量を最小限に抑えることが望ましい。しかしながら、織布に対するシリコーン系コーティングの十分な付着を与えるために、第2のタイプのフィラメント糸は特定量であることが好ましい。
【0013】
織りエアバッグ基布は、前記織りエアバッグ基布の全フィラメント糸重量に基づいて、少なくとも30重量パーセントの第2のタイプのフィラメント糸を含むことが好ましい。この実施形態の利点は、シリコーン系コーティングの強固な付着が達成されるという点である。より好ましくは、織りエアバッグ基布は、前記織りエアバッグ基布の全フィラメント糸重量に基づいて、30〜70重量パーセントの第2のタイプのフィラメント糸、更に好ましくは40〜60重量パーセントの第2のタイプのフィラメント糸を含む。この利点は、低重量および低コストと併せてシリコーン系コーティングの良好な付着が得られるという点である。
【0014】
前記織りエアバッグ基布の横糸が前記第1のタイプのフィラメント糸および前記第2のタイプのフィラメント糸のうちの一方から形成され、縦糸が前記第1のタイプのフィラメント糸および前記第2のタイプのフィラメント糸のうちの他方から形成されるのが好ましい。このようにすると、特に費用効率が高い態様で基布を織ることができる。
【0015】
前記織りエアバッグ基布の横糸は、前記第1のタイプのフィラメント糸から形成されるのが好ましい。ポリオレフィンフィラメント糸は第2のタイプのフィラメント糸よりも低い密度を有するため、エアバッグ基布の高速織りを可能にするためにポリオレフィンフィラメント糸が横方向で使用されるのが好ましい。ポリオレフィン糸が低い密度に起因して大きな直径を有し、したがって、各糸が大きな表面を覆うことができるため、高速織りが可能である。前記織りエアバッグ基布の縦糸は、前記第2のタイプのフィラメント糸から形成されるのが好ましい。
【0016】
第1のタイプのフィラメント糸は、様々なエアバッグ用途に適した織りエアバッグ基布を提供するために、少なくとも5g/den、より好ましくは少なくとも6g/den、最も好ましくは少なくとも7g/denの糸引っ張り強さを有することが好ましい。言うまでもなく、den=SI系の単位では9000mフィラメント糸のgで表わされる重量に対応するデニールである。また、1g/den=0.0883N/texである。例えばポリアミドフィラメント糸と組み合わされるそのような高強度ポリオレフィンフィラメント糸から織られるコーティングされた基布は、その強度および性能に関して、ポリアミドフィラメント糸のみから織られるコーティングされた基布に匹敵することが分かってきた。したがって、ポリオレフィンフィラメント糸を備えるそのようなコーティングされた基布を様々なエアバッグ用途で使用できる。
【0017】
ポリオレフィンフィラメント糸は、様々なエアバッグ用途に適する織りエアバッグ基布を提供するために、5〜10g/den、より好ましくは6〜9g/den、最も好ましくは6.5〜8g/denの糸引っ張り強さを有することが好ましい。
【0018】
第1のタイプのフィラメント糸は、様々なエアバッグ用途に適する織りエアバッグ基布を提供するために、110dtex〜940dtexの範囲、より好ましくは220dtex〜700dtexの範囲、最も好ましくは330dtex〜550dtexの範囲の線密度を有することが好ましい。
【0019】
第2のタイプのフィラメント糸は、5〜10g/den、より好ましくは6〜9g/den、最も好ましくは6.5〜8g/denの糸引っ張り強さを有することが好ましい。
【0020】
第2のタイプのフィラメント糸は、110dtex〜940dtexの範囲、より好ましくは235dtex〜700dtexの範囲、最も好ましくは400dtex〜550dtexの範囲の線密度を有することが好ましい。
【0021】
織りエアバッグ基布は、好ましくは平織物、より好ましくは1/1平織物である。したがって、第2のタイプのフィラメント糸の均一な分布が得られ、その結果、織りエアバッグ基布に対するシリコーン系コーティングの良好な付着がもたらされる。また、基布の様々な方向で強度などうまく釣り合わされた特性を有する基布を提供できる。すなわち、基布は、基布に加えられる負荷の方向とは無関係に同様の態様で振る舞う。また、異なる織布部分を接合する縫い目に関しても強度は高い。更に、平織によって強固な基布が得られ、これは、高い縫い目強度および低い透過性を有するエアバッグ基布が望ましいため有益である。
【0022】
ここで、本発明の実施形態を示す添付の概略図を参照して、本発明を更に詳しく説明する。

【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】織りエアバッグ基布の一部を示している。
【図2】図1の織りエアバッグ基布を断面図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で使用される「フィラメント糸」とは、多数の個々の繊維またはフィラメント、例えば10〜500本の個々の繊維またはフィラメントから形成される糸のことであり、これらの繊維またはフィラメントは、前記フィラメント糸を形成するために例えば紡績プロセスによって互いに結び付けられている。基布を織るために前記フィラメント糸が利用された場合、織布を形成する前記糸の断片が「糸」と称される。言うまでもなく、そのような糸のそれぞれは、該糸が生じるフィラメント糸と同じ数の個々の繊維またはフィラメントを備える。
【0025】
更に、「縦糸」とは、織布の長さに沿って延びる糸のことであり、また、「横糸」とは、織物構造の長さを横切って延びる糸のことである。
【0026】
本発明の一実施形態に係る織りエアバッグ基布1が図1に示されている。基布1は1/1平織物である。1/1平織物では、各横糸が各縦糸の上下を交互の横列を成して通過する。あるいは、基布は、この種の織りによって生じる織り方で織られてもよいが、2/2、2/1、1/2または同様の織り方など他の織りパターンで織られてもよい。レイピア、流体ジェット、エアジェット、または、噴射タイプの織機を含むそれ自体知られる編組プロセスなどの任意の適切な編組プロセスによって、そのような基布1が織られてもよいことは言うまでもない。
【0027】
織布1は、横方向とも称される第1の方向に配置される第1のタイプの連続フィラメント糸の糸3と、縦方向とも称される第2の方向に配置される第2のタイプの連続フィラメント糸の糸5とを備え、第2の方向は、図1に示されるように、前記第1の方向に対して略垂直である。第1の方向すなわち横方向が矢印Aによって示され、第2の方向すなわち縦方向が矢印Bによって示される。横方向Aに配置される糸は横糸3とも称され、縦方向Bに配置される糸は縦糸5とも称される。
【0028】
織りエアバッグ基布1は、第1のタイプのフィラメント糸、この場合にはポリプロピレン(PP)フィラメント糸の糸3を備える。また、織りエアバッグ基布1は、第2のタイプのフィラメント糸、この場合にはポリアミド6.6(PA6.6)フィラメント糸の糸5を更に備える。この実施形態では、ポリプロピレンフィラメント糸の糸3が横方向に配置され、ポリアミド6.6フィラメント糸の糸5が縦方向に配置される。このように、エアバッグ基布1は、ポリプロピレンから形成される横糸と、ポリアミド6.6から形成される縦糸とを有する1/1平織物である。あるいは、ポリプロピレンフィラメント糸の糸が縦方向に配置されてもよく、また、ポリアミド6.6フィラメント糸の糸が横方向に配置されてもよい。
【0029】
取扱い中および編組中にフィラメント糸の強度を高めるため、基布を織る前に、当分野において周知である糸の交絡が行なわれてもよい。好ましくは、ポリプロピレンフィラメント糸は、1メートル当たり1〜50個の交絡点、より好ましくは1メートル当たり20〜40個、最も好ましくは25〜35個の交絡点を使用して交絡される。この場合には、1メートル当たり平均して30個の交絡点を用いて交絡されるポリプロピレンフィラメント糸が使用された。好ましくは、ポリアミドまたはポリエステルフィラメント糸は、1メートル当たり1〜50個の交絡点、より好ましくは1メートル当たり15〜40個、最も好ましくは20〜30個の交絡点を使用して交絡される。この場合には、1メートル当たり平均して27個の交絡点を用いて交絡されるポリアミド6.6フィラメント糸が使用された。
【0030】
特にポリプロピレン糸が縦糸として使用されるときに当てはまる場合がある糸の更に高い「保護」が必要とされる場合には、織りの前に糸に対してねじれが加えられてもよい。
【0031】
織りエアバッグ基布1の断面を示す図2に最も良く示されるように、基布1はシリコーン系コーティング7を更に備える。図1では、明確にするために、シリコーン系コーティング7が部分的に除去されている。シリコーン系コーティング7は、主に、織りエアバッグ基布1の耐熱性を高めて透過性を低下させるのに役立つ。第2のタイプのフィラメント糸の糸5が織布1にわたって均一に分布されるため、第2のタイプのフィラメント糸の糸5に対するシリコーン系コーティング7の付着は良好であり、したがって、織布が適切な態様でコーティングされる。そのようなシリコーン系コーティング7は、実際のエアバッグ用途において対象となる温度間隔で非常に良好な性能を有する。シリコーン系コーティングは、噴霧、グラビアコーティング、バーコーティング、ナイフオーバーローラ(knife−over−roller)によるコーティング、ナイフオーバーエア(knife−over−air)によるコーティング、パディングまたはスクリーン印刷などの当分野において周知である技術を使用して織布に塗布されてもよい。シリコーン系コーティングは織布の一方側または両側に塗布されてもよい。最も好ましくは、シリコーン系コーティングは、エアバッグが基布から形成されるときにエアバッグインフレータからのガスに晒されるようになっている基布1の表面に塗布され、そのため、透過性が低い頑丈で柔軟な基布を費用効率が高い態様で提供できる。
【0032】
シリコーン系コーティングの適切な付着は、コーティングされたエアバッグ基布の適切な機能を確保するために重要である。コーティングされた基布は、コーティングを剥離することなく摩損などの異なるタイプの機械的衝撃に耐える必要がある。前述したように、ポリプロピレンフィラメント糸に対するそのようなシリコーン系コーティングの付着は悪い。一方、ポリアミドまたはポリエステルフィラメント糸に対するそのようなシリコーン系コーティングの付着は非常に良好である。織布におけるポリアミドフィラメント糸またはポリエステルフィラメント糸の量が非常に少ない場合には、コーティングが表面から剥離される場合があり、それにより、基布がもはや性能要件を満たさなくなることが分かってきた。コーティングが織布に対して適切な態様で付着するようにするため、シリコーン系コーティングの付着が非常に良好な第2のタイプのフィラメント糸が特定量必要とされる。この実施形態において、エアバッグ基布は、45重量パーセントのポリプロピレンフィラメント糸と、55重量パーセントのポリアミド6.6フィラメント糸とを含む。
【0033】
シリコーン系コーティングを受けることができる基布が特定量の第2のタイプのフィラメント糸を有することにより、シリコーン系コーティングの強固な付着が達成される。
【0034】
ここで、以下の実施例およびエアバッグ基布における標準的な試験方法にしたがって行なわれた試験の結果を参照して、本発明を更に詳しく説明する。

実施例1
【0035】
レイピア織機を使用してエアバッグ基布が1/1平織構成で織られた。縦方向でポリアミド6.6(PA6.6)フィラメント糸が使用され、横方向でポリプロピレン(PP)フィラメント糸が使用された。実施例1における前記織布の全フィラメント糸重量のうち、45重量パーセントがPPフィラメント糸であり、55重量パーセントがPA6.6フィラメント糸であった。PA6.6フィラメント糸は、イギリスのグロスターのブロックワースにあるINVISTA U.K.から提供された470dtex f.136 タイプ749であった。PPフィラメント糸は、スペインのバルセロナのグラノリェースにあるINDUSTRIAS MURTRA SAから提供されたT−0567タイプのものであった。
【0036】
織布は、織り後、織りエアバッグ基布を形成するために約25g/m2のコーティング重量を有するシリコーン系コーティングでコーティングされた。表1は、実施例1で使用されるフィラメント糸の仕様を示している。シリコーン系コーティングは、フランスのリヨンにあるBluestar Siliconesから提供されたRhodorsil TCSタイプのものであった。

【0037】
【表1】

基準基布
【0038】
当分野において既知であり且つ今日では様々なエアバッグ用途で幅広く使用される第1の基準基布が用いられた。第1の基準基布は、表1に定められるような実施例1で使用されたタイプと同じタイプの100%PA6.6フィラメント糸から形成された。第1の基準基布は、実施例1で使用されたタイプと同じタイプのシリコーン系コーティング、すなわち、約25g/m2のコーティング重量を有するシリコーン系コーティングでコーティングされた。
【0039】
第2の基準基布は、表1に定められるような実施例1で使用されたタイプと同じタイプの100%ポリプロピレン(PP)フィラメント糸から織られた。第2の基準基布は、実施例1で使用されたタイプと同じタイプのシリコーン系コーティング、すなわち、約25g/m2のコーティング重量を有するシリコーン系コーティングでコーティングされた。
【0040】
実施例1で前述した織布を評価するため、また、その特性を基準基布と比較できるように、エアバッグ基布における標準的な試験方法にしたがった多数の試験が行なわれた。表2には、試験結果の一部がまとめられている。全ての試験は、EASC 9904 0180(欧州エアバッグ標準化委員会)「Stating requirements and test conditions」に記載される基準にしたがって行なわれた。例えば、基布に塗布されるシリコーン系コーティングの付着を評価するために、前述した基準に記載されるISO 5981にしたがった屈曲摩損(スクラブ)試験が行なわれた。
【0041】
【表2】

【0042】
表2から分かるように、実施例1の織布の材料性能は第1の基準基布に相当する。第2の基準基布は屈曲摩損試験において非常に悪い結果を有し、このことは、第2の基準基布がシリコーン系コーティングを適切な態様で受けることができず、したがってエアバッグ用途に適さないことを示す。
【0043】
このように、ポリプロピレンを糸材料として例えばポリアミド6.6と組み合わせて用いると、織りエアバッグ基布の非常に高い要求を満たすことができるのが分かる。したがって、シリコーン系コーティングを適切な態様で受けることができる基布を形成するために、織布においてポリプロピレンフィラメント糸をポリアミド6.6糸と組み合わせることができるのが分かってきた。また、ポリプロピレンフィラメント糸とポリアミドフィラメント糸などの第2のタイプのフィラメント糸とを備える織布が様々なエアバッグ用途に適しているのが分かる。
【0044】
表2を参照すると、実施例1では基布繊度が第1の基準基布と比べて低いことに留意されたい。これは、糸の大きい直径を与えるポリプロピレンの低い密度の結果である。しかしながら、被覆係数は、シリコーン系コーティングでコーティングする前の織布の通気性により示されるのとほぼ同じままである。
【0045】
言うまでもなく、本発明の前述した実施形態は、特許請求の範囲に規定される発明概念から逸脱することなく当業者によって改良および変更することができる。
【0046】
例えば、1つの実施形態における織りエアバッグ基布が3つ以上のタイプのフィラメント糸を備えてもよいのが分かる。すなわち、1つの実施形態において、織りエアバッグ基布は、ポリプロピレンフィラメント糸などのポリオレフィンフィラメント糸のグループ内で選択される第1のタイプのフィラメント糸と、ポリアミドフィラメント糸などの第2のタイプのフィラメント糸と、ポリエステルフィラメント糸などの第3のタイプのフィラメント糸とを備えてもよい。
【0047】
前述した織りエアバッグ基布1はポリプロピレン(PP)フィラメント糸の糸3を備える。別の実施形態において、第1のタイプのフィラメント糸は、ポリオレフィンフィラメント糸のグループ内で選択される他のフィラメント糸であってもよく、前記グループは、ポリプロピレンフィラメント糸に加えて、ポリエチレン(PE)フィラメント糸を含む。
【0048】
前述した織りエアバッグ基布1は、ポリアミド6.6(PA6.6)フィラメント糸の糸5を更に備える。別の実施形態において、第2のタイプのフィラメント糸は、例えばポリアミド6、ポリアミド4.6、前述したポリアミド6.6を含むポリアミドフィラメント糸とポリエステルフィラメント糸とを備えるグループ内で選択される他のタイプのフィラメント糸であってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンフィラメント糸のグループから選択される第1のタイプのフィラメント糸と、ポリアミドフィラメント糸およびポリエステルフィラメント糸のグループから選択される少なくとも1つの第2のタイプのフィラメント糸とを備えるとともに、シリコーン系コーティング(7)を備えることを特徴とする、織りエアバッグ基布(1)。
【請求項2】
前記第1のタイプのフィラメント糸がポリプロピレンフィラメント糸である、請求項1に記載の織りエアバッグ基布(1)。
【請求項3】
前記第2のタイプのフィラメント糸は、ポリアミド6フィラメント糸またはポリアミド6.6フィラメント糸などのポリアミドフィラメント糸である、請求項1または2に記載の織りエアバッグ基布(1)。
【請求項4】
前記基布は、前記織りエアバッグ基布の全フィラメント糸重量に基づいて、少なくとも30重量パーセントの前記第1のタイプのフィラメント糸、より好ましくは少なくとも40重量パーセントの前記第1のタイプのフィラメント糸、最も好ましくは少なくとも45重量パーセントの前記第1のタイプのフィラメント糸を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の織りエアバッグ基布(1)。
【請求項5】
前記織りエアバッグ基布の全フィラメント糸重量に基づいて、少なくとも30重量パーセントの第2のタイプのフィラメント糸、好ましくは40−60重量パーセントの第2のタイプのフィラメント糸を備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の織りエアバッグ基布(1)。
【請求項6】
横糸(3)が前記第1のタイプのフィラメント糸および前記第2のタイプのフィラメント糸のうちの一方から形成され、縦糸(5)が前記第1のタイプのフィラメント糸および前記第2のタイプのフィラメント糸のうちの他方から形成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の織りエアバッグ基布(1)。
【請求項7】
横糸(3)が前記第1のタイプのフィラメント糸から形成される、請求項6に記載の織りエアバッグ基布。
【請求項8】
縦糸(5)が前記第2のタイプのフィラメント糸から形成される、請求項5または6に記載の織りエアバッグ基布。
【請求項9】
前記第1のタイプのフィラメント糸が5−10g/denの糸引っ張り強さを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の織りエアバッグ基布(1)。
【請求項10】
前記第1のタイプのフィラメント糸が110−940dtexの線密度を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の織りエアバッグ基布。
【請求項11】
前記織りエアバッグ基布が平織物である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の織りエアバッグ基布。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の織りエアバッグ基布を備える、エアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−508329(P2012−508329A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534453(P2011−534453)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/SE2009/051259
【国際公開番号】WO2010/053440
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【Fターム(参考)】