説明

織機の織り段防止方法及び装置

【課題】織機の通常運転に先立ち、織前位置の補正動作や経糸張力の調整動作を行う織機において、実際の織前位置や経糸張力の値を正確に調整することにより、織段を確実に防止すること。
【解決手段】織前位置補正動作の動作時間、経糸張力調整動作の動作時間、織前位置補正動作の開始時期と経糸張力調整動作の開始時期とに時間差を持たせた場合のその時間差の少なくともいずれか1つに関し、a)織前位置補正動作の動作時間を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差に基づいて制御する、b)経糸張力調整動作の動作時間を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差又は織前位置補正動作の設定補正量に基づいて制御する、及びc)前記時間差を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差に基づいて制御すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機の起動に先立ち、織前位置の補正動作及び経糸張力の設定動作が行われる織機の織段防止方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
織機において、通常運転(定常運転)の開始前に、服巻ロールを予め設定した値だけ、通常の服巻ロール(巻取ロール)の回転方向と逆方向に回転させて織前位置を経糸の走行方向における後方側(下流側)に移動(退避)させると共に、送出ビームを予め設定した値だけ、通常の服巻ロールの回転方向に回転させて送り出し側の経糸張力を微調整した後に、通常運転を再開する、織機の織段防止方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第2619863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、停台(停止)原因が発生すると、織機は待機(停台)し、停台原因が修復されると、織機は再運転される。多くの原因に起因して停台が発生し、しかも、作業者の到着遅れや停台原因により修復に要する時間も異なることもあって、織機が停台している時間は必ずしも一様ではない。
【0005】
例えば、経糸張力は、経糸が経糸に付与されている張力や経糸の自重によって伸びることから、織機の停台時間が長くなるほど、低下する。このため、織機の起動に際して経糸の張力を調整する経糸張力調整動作が行われる織機では、その動作に要する時間長さは、停台中の経糸張力の変動具合に応じて変化する。
【0006】
また、織機の運転を開始する際に行われる起動準備動作は、送出ビーム及びこれに続くガイドローラを回転させることにより経糸全体を移動させて、筬打ち位置に対する織前の位置を補正する織前位置補正動作を含む。この織前位置補正動作の実行により織前位置が補正されると、経糸張力が変化する。
【0007】
上記のように、張力調整動作に要する期間は、一般に、織前位置の補正量や、織機停止中における経糸張力の変動量(低下量)の影響を受ける。
【0008】
しかし、発明者らの研究によれば、服巻ロール、送出ビーム等、駆動する部材の相違により、織前位置、織前周辺部の経糸張力への影響度合いが異なることが確認された。つまり、織前位置補正動作の完了前に張力調整動作が完了すると、張力調整動作により設定された経糸張力の値は、織前位置補正動作により、変動する。
【0009】
また、織前位置補正動作は略一定期間で完了するが、張力調整動作は停台中の経糸張力の変動具合に応じて変動することから、張力調整動作の終了時期が、織前位置補正動作の終了時期を前後することになって、最終的な(運転開始時、最初の筬打ち時における)経糸張力がばらつくことになって、所望の張力値から大きく外れてしまい、この結果織段が発生する。
【0010】
したがって、織前位置補正動作や経糸張力調整動作を単に実行するだけでは、常に織段を防止することができるとは言えず、確実性の面で問題があった。
【0011】
具体的には、服巻ロールの配置位置と織前との間には介在するものが少なく、服巻ロールと織前との間隔は短い。しかも、服巻ロールから織前までの布の伸縮量は、織前から送出ビームまでの経糸のそれに比べて小さい。したがって、服巻ロールの回転は織布そのものに伝わるため、服巻ロールを回転させることによる織前位置補正の影響度合いは大きく、織前位置の前方移動・後方移動は服巻ロールにより正確に行える。
【0012】
また、服巻ロールの回転力は、経糸が綜絖枠、筬、ヘルド、ドロッパ等の機械部品に当接しているから、それらの機械部品と経糸との間に生じる摩擦により経糸に正確には伝わりにくい。したがって、服巻ロールは、後述するように送出ビームに比べて経糸の張力調整には不向きである。
【0013】
また、経糸を直接巻き付けている送出ビームの回転力は経糸に確実に伝わるから、送出ビームの回転力と経糸の張力との関係は明確であり、送出ビームは張力調整に好適な部材である。
【0014】
しかし、送出ビームから織前位置までの間に、綜絖枠、筬、ドロッパ等の機械部品が存在し、これらの存在により経糸との間に摩擦が生じる。このため、送出ビームを回転させて経糸を移動させても、筬等の摩擦により織前に正確には伝わりにくく、送出ビームによる補正動作後の織前位置にばらつきが生じる。したがって、織前位置の調整に関しては、送出ビームは、服巻ロールに比べて不向きである。
【0015】
上記のようなことから、織段防止のために織前位置及び経糸張力を共に正確に調整することが必要な織物においては、織前位置補正動作を服巻ロールに、また経糸張力調整動作を送出ビームにそれぞれ分担させればよいことがわかる。さらには前記したように、張力調整動作の終了が織前位置補正動作の後であることが、織段発生には最も有効であると推察される。
【0016】
本発明の目的は、織機の通常運転に先立ち、織前位置の補正動作や経糸張力の調整動作を行う織機において、実際の織前位置や経糸張力の値を正確に調整することにより、織段を確実に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る織り段防止方法は、服巻ロールを回転させて織前位置を所定位置に移動させる織前位置補正動作と送出ビームを回転させて経糸張力を所定の値に調整する経糸張力調整動作とを含む起動準備動作が終了した後に織機に通常運転をさせる織り段防止方法に関する。そのような織り段防止方法は、前記織前位置補正動作の動作時間、前記経糸張力調整動作の動作時間、及び前記織前位置補正動作の開始時期と前記経糸張力調整動作の開始時期とに時間差を持たせた場合のその時間差いずれかについての下記制御に関し、
a)前記織前位置補正動作の動作時間を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差に基づいて制御すること、
b)前記経糸張力調整動作の動作時間を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差又は前記織前位置補正動作の設定補正量に基づいて制御すること、及び
c)前記時間差を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差に基づいて制御すること、のいずれか1つを行うことにより、前記織前位置補正動作が終了した後に前記経糸張力調整動作を終了させる。
【0018】
本発明に係る織り段防止装置は、服巻ロールを回転させて織前位置を所定位置に移動させる織前位置補正器と、
送出ビームを回転させて経糸張力を所定の値に調整する経糸張力調整器と、
起動準備期間における前記織前位置補正器による織前位置補正動作及び前記経糸張力調整器による経糸張力調整動作が終了した後に織機に通常運転を開始させる主制御装置とを含む。
前記主制御装置は、前記織前位置補正器による前記織前位置補正動作の動作時間、前記経糸張力調整器による前記経糸張力調整動作の動作時間、及び前記織前位置補正器による前記織前位置補正動作の開始時期と前記経糸張力調整器による前記経糸張力調整動作の開始時期とに時間差を持たせた場合のその時間差いずれかについての下記制御に関し、
a)前記織前位置補正動作の動作時間を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差に基づいて制御すること、
b)前記経糸張力調整動作の動作時間を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差又は前記織前位置補正動作の設定補正量に基づいて制御すること、及び
c)前記時間差を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差に基づいて制御すること、
のいずれか1つを行い、前記織前位置補正動作が終了した後に前記経糸張力調整動作を終了させる。
【0019】
ここでいう織前位置補正動作や経糸張力調整動作の各終了は、具体的には予め定められた各動作が完了することに対応しており、各動作中に発生した異常により強制的に動作中止にされるものは、上記終了には含まれない。
【0020】
本発明によれば、服巻ロールによる織前位置補正動作により織前位置が正確に調整された後、送出ビームによる経糸張力調整動作により経糸張力が所定の値に調整されて起動準備動作を終了させ、その後織機が通常運転される。このため、織段の発生に最も影響する織前位置及び経糸張力のいずれも、所望の状態に正確に調整することができる。
【0021】
上記の結果、従来のように、例えば、織機停止中における経糸張力が毎回変わることに起因して、服巻ロールの動作終了時期が送出ビームの動作終了時期よりも遅れる結果、経糸張力調整動作終了後も、織前位置調整動作が行われることにより、起動直前の最終的な経糸張力が所望の張力値から大きくずれた値に設定されてしまい、織段が発生する、という不都合も生じない。
【0022】
織り段防止方法は、前記経糸張力調整動作の開始時期を前記織前位置補正動作が開始された後に設定すると共に、前記a)又は前記b)の制御を行って前記経糸張力調整動作を前記織前位置補正動作が終了した後に終了させてもよい。
【0023】
織り段防止方法は、前記経糸張力調整動作の開始時期を前記織前位置補正動作が終了する前に設定してもよい。
【0024】
織り段防止方法は、前記偏差に基づいて前記送出ビームの回転速度を求めるために用いられるゲインを前記設定補正量に基づいて変更することによって前記b)の制御を行ってもよい。
【0025】
前記織り段防止方法は、さらに、前記織前位置補正動作及び前記経糸張力調整動作の各動作時間を推定し、各動作時間に基づいて前記織前位置補正動作及び前記経糸張力調整動作の開始時期の時間差を決定し、前記時間差に基づいて前記織前位置補正動作及び前記経糸張力調整動作を開始させることを含むことができる。
【0026】
前記織り段防止方法は、前記織前位置補正動作を開始させる時期と前記経糸張力調整動作を開始させる時期との時間差を予め設定された値から前記経糸張力のばらつきが生じる要素に応じて選択された値としてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1を参照するに、織機10において、経糸12は、これが巻かれている送出ビーム14から、バックローラ16、複数の綜絖枠18及び筬20を経て織前22に繋がっている。製織された織布24は、織前22から、ガイドローラ26を介して巻取ロールとしての服巻ロール28に達し、服巻ロール28と一対のプレスロール30とにより布巻ビーム32に送り出されて布巻ビーム32に巻き取られる。
【0028】
送出ビーム14は、送出モータ34により歯車のような減速機構で構成されるギア機構36を介して回転されて複数の経糸12をシートの形で送出する。送出ビーム14に巻かれている経糸12の量は、送出ビーム14からの経糸12の送り出しにともなって、漸次減少する。このため、送出ビーム14の巻径は巻径センサ38により検出され、検出された巻径信号S1は送出制御装置40に供給される。送出モータ34の出力軸の回転速度は、タコジェネレータ42によって検出され、検出された送出回転速度信号S2は送出制御装置40に供給される。
【0029】
経糸12に作用している張力の値はバックローラ16に作用する荷重を検出する経糸張力センサ44により検出され、検出された張力信号S3は経糸12に実際に作用している実張力として送出制御装置40に供給される。
【0030】
各綜絖枠18は、主軸モータ(図示せず)により回転される主軸46の回転運動を受ける運動変換機構48により上下に往復移動されて、経糸12を上下に開口させる。
【0031】
筬20は、主軸46の回転運動を受ける運動変換機構50により揺動されて、経糸12の開口に緯入れされた緯糸52を織前22に打ち付ける。
【0032】
服巻ロール28は、巻取モータ54の回転運動を受ける歯車のような減速機構で構成されるギア機構56により回転されて、プレスロール30と共同して織布24を布巻ビーム32に送り出す。
【0033】
主軸46及び巻取モータ54の回転角度は、それぞれ、エンコーダ58及び60によって検出される。検出された主軸回転角度信号S4及びロール回転角度信号S5は、巻取制御装置62に供給される。主軸回転角度信号S4は送出制御装置40にも供給される。
【0034】
布巻ビーム32は、布巻ビーム32に巻かれた織布24の周速度が織布24の送り速度より若干速くなるように、主軸46の回転運動を受ける巻取トルク調整機構64により滑り軸受け(図示せず)を介して回転されて、織布24の巻取張力の値を一定にすべく回転される。
【0035】
図2及び図3を参照して織機の織り段防止装置の一構成要素として作用する巻取制御装置62及び送出制御装置40を説明すると共に、図4を参照しつつ織段防止装置の動作について説明する。
【0036】
図2に示すように、巻取制御装置62は、織機10が通常運転(定常運転)をしているときの巻取モータ54の回転量を制御する同期制御部66と、織機10の起動準備時に経糸12の移動方向における織前22の位置を補正すべく巻取モータ54の回転量を制御する織前位置制御部68とを含む。
【0037】
作業者が停台している織機10の運転ボタン72を押下したときの押下信号S0は、主制御装置70に入力される。主制御装置70は、押下信号S0が入力したことにより、起動準備信号S7を駆動量信号発生器76及び指令発生器78に出力して、送出制御装置40及び巻取制御装置62に起動準備動作をさせ、起動準備動作が終了した後に運転信号S6を図3に示す送出制御装置40の切換器74に出力する。
【0038】
打ち込み密度を含む巻取モータ54の基本速度の算出に用いる各種のデータ及び起動準備動作時における織前位置の補正量は、織前位置補正量設定器82に予め設定されている。
【0039】
駆動量信号発生器76は、起動準備信号S7が入力したことにより、織前位置補正動作を図4(D)に示す時間t2の期間だけ行う。織前位置補正動作時、駆動量信号発生器76は、織前位置補正量設定器82に設定された補正量を基に、巻取モータ54の駆動量(回転量)をパルス状の織前位置制御信号S11に変換して、同期制御部66の加算部86の一方の入力端子に供給する。
【0040】
同期制御部66は、織前位置補正量設定器82に設定されている打ち込み密度と主軸回転角度信号S4とに基づいて、巻取モータ54の基本速度を算出して、巻取モータ54を駆動させる基本回転量信号発生器84を備える。
【0041】
基本回転量信号発生器84は、織機10の正常運転の間、巻取モータ54を主軸46の基本回転速度に対応する速度で回転させることにより、織機主軸の回転に対応する回転量に回転させることができる。
【0042】
具体的には、基本回転量信号発生器84は、織機10の通常運転の間、主軸回転角度信号S4を受け、受けた主軸回転角度信号S4及び打ち込み密度等の各種のデータを基に、巻取モータ54の基本速度に対応するパルス状の基本回転量信号S10を加算部86の他方の入力端子に供給する。
【0043】
加算部86は、一方の入力端子に入力されるパルス状の織前位置制御信号S11と他方の端子に入力するパルス状の基本回転量信号S10とを共に入力する。加算部86は、2つの入力端子からのパルス状信号を巻取目標値信号S12として正逆カウンタ88の加算端子に出力する。
【0044】
起動準備期間においては、織機10が通常運転をしていない、つまり主軸46が回転していないから、基本回転量信号発生器84は、パルス状の基本回転量信号S10を加算部86に出力していない。このため、加算部86から正逆カウンタ88に出力されるパルス状の巻取目標値信号S12は、駆動量信号発生器76からの信号すなわち織前位置制御信号S11のみとなる。
【0045】
正逆カウンタ88は、加算部86から入力される織前位置制御信号S11を計数し、計数値を巻取モータ54の出力軸に連結されたエンコーダ60から供給されるパルス状のロール回転角度信号S5で減算する。正逆カウンタ88の計数値は、巻取駆動信号S13としてドライバ90に供給される。
【0046】
ドライバ90は、入力信号を増幅して巻取モータ54を回転させる増幅回路であり、正逆カウンタ88からの巻取駆動信号S13が正であれば、巻取モータ54を正転させ、負であれば巻取モータ54を逆転させる。これにより、経糸12の織前位置は、所望の位置に移動される。
【0047】
図示の例においては、正逆カウンタ88が巻取目標値信号S12とロール回転角度信号S5との差に比例した値の巻取駆動信号S13をドライバ90を介して巻取モータ54に供給しているから、正逆カウンタ88及びドライバ90は、エンコーダ60と共に、巻取モータ54のための比例要素のみを含む直結フィードバック回路Iを構成している。したがって、巻取目標値信号S12とロール回転角度信号S5との間に差が生じても、巻取モータ54は、その差を解消するように駆動される。
【0048】
例えば、巻取モータ54をサーボモータとし、フィードバック回路Iはこれを制御する公知の回路で構成される。
【0049】
指令発生器78は、起動準備信号S7が入力すると、設定器80に設定されている起動遅延時間信号S8に基づいて、図4(E)に示す時間t1が経過した後に起動時制御開始指令信号S9を図3に示す切換器74に出力する。
【0050】
図3に示すように、送出制御装置40は、経糸張力センサ44からの張力信号S3を運転時制御部94の制御器96及び起動時制御部98の制御器100に受ける。運転時制御部94は、打ち込み密度信号や主軸46の主軸回転角度信号S4が入力される基本速度信号発生器102を含む。
【0051】
基本速度信号発生器102は、巻取制御装置62の基本回転量信号発生器84と同様に構成されて同様に作用して、基本速度に対応する速度信号S14を加算部104の一方の入力端子に出力する。制御器96及び100は、それぞれ、張力設定器106及び108に設定された張力設定値T1及びT2を受けている。
【0052】
制御器96は、経糸張力センサ44で検出された実張力と、張力設定器106に設定されている張力設定値との差を求め、求めた張力差をPID制御器等で補正すべき回転速度に相当する補正速度信号S15に変換し、変換した補正速度信号S15を加算部104の他方の入力端子に出力する。
【0053】
加算部104は、速度信号S14と補正速度信号S15とを加算して通常運転時速度信号S16を切換器74に出力する。
【0054】
制御器100は、経糸張力センサ44で検出された実張力と張力設定器108に設定されている張力設定値との差を求め、求めた張力差をゲイン制御器等で張力差に応じて出力される起動時速度信号S17に変換し、変換した起動時速度信号S17を切換器74の他方の入力端子に出力する。
【0055】
切換器74は、運転信号S6又は起動時制御開始指令信号S9の入力に基づいて、入力された通常運転時速度信号S16又は起動時速度信号S17を選択的に切り換え、選択した信号S16又はS17を速度信号S18として巻径補正器110に出力する。
【0056】
運転ボタン72の押下後、時間t1が経過すると、指令発生器78は、起動時制御開始指令信号S9を切換器74に出力する(図4(C)参照)。切換器74は、起動時制御開始指令信号S9が入力したことにより、起動時制御部98を選択状態にして起動時速度信号S17を速度信号S18として巻径補正器110に出力する。
【0057】
起動時及び通常運転時のいずれにおいても、切換器74により選択された速度信号S18の値は、送出ビーム14から送り出すべき経糸12の速度に相当する。しかし、送出ビーム14の経糸巻径は、経糸12の送り出しにともなって漸減するから、送出ビーム14からの経糸送出量を一定に維持するためには、送出ビーム14の回転速度を巻径に応じて補正する必要がある。したがって、巻径センサ38により検出された巻径信号S1に基づいて、切換器74からの速度信号S18を補正するようにされている。
【0058】
巻径補正器110は、巻径センサ38からの巻径信号S1に基づいて、切換器74からの速度信号S18を補正し、補正信号S19を減算部112の一方の入力端子に出力する。
【0059】
これにより、送出制御装置40は、時間t3の期間(図4(E)参照)だけ制御器100が選択状態にされて、送出モータ34に経糸張力調整動作を行わせる。時間t3は、張力偏差や制御器の内部ゲイン等により異なる時間に設定されている。したがって、予め、時間t3は、経糸張力値の異なる状態でいくつか実測して求められる。
【0060】
経糸張力調整動作は、織前位置補正動作が行われていても、経糸12の張力を張力設定器108に設定されている張力設定値T2に調整するように、行われる。
【0061】
送出モータ34の出力軸の回転数は、その出力軸に連結されたタコジェネレータ42によって検出され、送出回転速度信号S2として減算部112の他方の入力端子に出力される。
【0062】
減算部112は、選択された速度信号S18から送出回転速度信号S2を減算し、その減算結果をドライバ114に出力して、送出モータ34を駆動させる。したがって、送出制御装置40は、送出ビーム14から送り出される経糸12の速度が補正信号S19に応じた速度になるように、送出モータ34を制御するフィードバック回路IIの一構成要素として作用する。
【0063】
図4に示すように、織前位置補正動作が完了した後に、経糸張力調整動作が完了するように(具体的には、t2<t1+t3の関係を有するように)、時間t1,t2,t3が主制御装置70、織前位置補正量設定器82及び設定器80に予め設定されている。このため、重複する時間t4(運転ボタン72が押下された後に時間t1が経過したときから、運転ボタン72が押下された後に時間t2が経過したときまで)が存在する。したがって、織機10は、織前位置を補正すると共に、経糸張力を調整することになる。
【0064】
好ましくは、張力偏差に対応して時間t3と時間t1との関係を予めデータベース化しておき、織機の起動準備直前時に検出した偏差に対応して時間t1を設定器80から読み出して時間t1を決定し、各動作を開始させる。
【0065】
しかし、織前位置補正動作と経糸張力調整動作が同時期に行われても、織前22の位置は、経糸張力調整動作の影響を殆ど受けず、主として織前位置補正動作によって調整される。
【0066】
より詳細には、前述のように、送出ビーム14から織前22までの間に、綜絖枠18、筬20、ヘルド、ドロッパ等の機料品が存在し、これらと経糸12との間に摩擦が生じるから、送出ビーム14を回転させて経糸12を移動させても、そのような移動の殆どが綜絖枠18や筬20等の摩擦により吸収されて、織前22の位置は経糸移動方向における前方及び後方に殆ど移動しない。
【0067】
また、服巻ロール28と織前22との間に介在するものが少なく、服巻ロール28と織前22との間隔が小さいから、服巻ロール28の回転による経糸移動方向への織布24の移動は織布24そのものに確実に伝えられる。このため、織前22の位置は、服巻ロール28を織前位置補正動作によって回転させることにより、経糸移動方向における上流側又は下流側に確実に移動される。したがって、織段の発生は確実に防止される。
【0068】
運転ボタン72が押下された後、時間t2が経過すると、織前位置補正動作が完了するが、経糸張力調整動作は続けて行われている。しかし、織前22の位置は、経糸張力調整動作が行われても、殆どずれない。
【0069】
より詳細には、上述したように、送出ビーム14から織前22の位置までの間に、綜絖枠18、筬20、ヘルド、ドロッパ等の機料品が存在し、これらの存在により経糸12に摩擦が生じる。このため、送出ビーム14を回転させて経糸12を移動させても、綜絖枠18、筬20等の摩擦により織前22に正確に伝わりにくい。したがって、経糸張力調整動作が行われていても、織前22の位置は殆ど移動せず、織段の発生が確実に防止される。
【0070】
また、送出ビーム14の回転力が送出ビーム14に巻かれている経糸12に、正確に伝えられるから、送出ビーム14の回転力と経糸12の張力との関係が明確であり、経糸張力の調整に好適である。
【0071】
時間t3が経過すると経糸張力調整動作は、完了する。これにより、織前位置補正動作及び経糸張力調整動作が一旦完了する。
【0072】
次いで、主制御装置70は、運転信号S6を切換器74に出力して、織機10に通常運転を開始させる。
【0073】
図3に示すように、切換器74は、運転信号S6が入力することにより、運転時制御部94を選択状態にして通常運転時速度信号S16を速度信号S18として、巻径補正器110に出力する。
【0074】
制御器96は、上述のように、経糸12の張力値が張力設定器106に設定されている張力設定値T1になるように、補正すべき回転速度に相当する補正速度信号S15に変換し、変換した補正速度信号S15を加算部104の一方の入力端子に出力する。
【0075】
通常運転の間、図2及び図3に示す基本回転量信号発生器84及び基本速度信号発生器102は、それぞれ、打ち込み密度や回転している主軸の回転角度信号S4等に基づいて製織に伴う織布24の移動速度に相当する基本回転量信号S10及び速度信号S14を加算部86及び104の他方の入力端子に出力する。
【0076】
また、駆動量信号発生器76は、織前位置補正動作が完了していることから、織前位置制御信号S11を加算部86に出力していない。
【0077】
以上の織前位置補正動作は、織前位置補正動作の開始後に経糸張力調整動作を開始させ、その後織前位置補正動作を終了させる場合について説明したが、織前位置補正動作を終了した後に、経糸張力調整動作を開始させてもよい。この場合、織前位置補正動作終了(動作完了)を示す信号を巻取制御装置62から送出制御装置40に出力して、経糸張力調整動作を開始するようにしてもよい。
【0078】
上記の実施例では、織前位置補正動作を開始してから時間t1経過後に経糸張力調整動作を開始するようにされているが、経糸張力調整動作の時間t3が織前位置補正動作の時間t2に対して充分に大きいとき、時間t1を短くしたり、さらには時間t1=0に(すなわち、織前位置補正動作と経糸張力調整動作とを同時に開始するように)設定したりすることもできる。
【0079】
また、本件発明では、以下のように変形することも可能である。例えば、織機停止期間中に発生する経糸張力の低下量により、経糸張力調整期間長さが変わることが考えられる。より具体的には、長い期間停台する場合には問題が生じにくいが、停台原因の修復が速やかになされ経糸張力の低下量が少ないとき、縦糸張力調整動作に要する期間が短くなる。換言すれば、修復が速やかになされる場合、織前位置補正動作の終了が経糸張力調整動作の終了よりも遅くなって従来のような問題が発生することが考えられる。このため、望ましくは起動準備直前の経糸張力の偏差量が小さい場合、時間t1を長くして、経糸張力調整動作の終了を織前位置補正動作の終了よりも遅くなるようにすればよい。好ましくは、図2に示す設定器80に経糸張力偏差信号を入力すると共に、時間t1を張力偏差に応じて複数設定しておき、起動準備信号S7発生時には、前記検出された張力偏差に基づき、対応する時間差である時間t1を選択可能に構成する。
【0080】
図5を参照するに、送出制御装置40及び巻取制御装置62は、経糸張力の値に基づいて、織前位置補正動作の織前位置制御信号S11の値を変更して、織前位置補正動作の時間を調整する。
【0081】
より詳細には、送出制御装置40の起動時制御部98は、張力設定器108に設定された張力値T2と、経糸張力センサ44によって検出された張力信号S3との張力値の差ΔTを、制御器100に出力していると共に、速度補正器116に出力している。
【0082】
速度補正器116は、張力値の差ΔTの減少に応じて織前位置補正動作を速くさせるために、張力値の差ΔTに応じた1より大きな値Kを速度指令値信号S20として駆動量信号発生器76に出力する。ΔTとKとの関係は、あらかじめ実験により測定されたテーブルに基づいた関係を有していてもよいし、特定の計算式で表される関係を有していてもよい。この場合、経糸張力調整動作の時間t3は一定に設定される。
【0083】
駆動量信号発生器76は、速度指令値信号S20が入力すると、織前位置補正量設定器82に設定された値をK倍にして織前位置制御信号S11として加算部86に出力する。これにより、織前位置制御信号S11は、図2に示す駆動量信号発生器76から出力される織前位置制御信号S11より、大きな値になる。換言すれば、織前位置補正動作時の服巻ロール28の回転速度を通常の織前位置補正動作時における服巻ロール28の回転速度よりも速くして織前位置補正動作に要する時間を短くしている。このようにして、織前位置補正動作が終了した後に経糸張力調整動作が終了するようにされる。
【0084】
図6において、横軸は時間軸を示し、縦軸は駆動量信号発生器76から出力される織前位置制御信号S11に対応する巻取速度を示している。斜線で表した部分の面積は織前22の位置の移動量(織前位置補正量)を示している。
【0085】
図6(A)及び(B)から、巻取速度を速くすると、織前位置補正動作の時間t2が短くなることがわかる。このため、織前位置補正動作の期間が短縮されることにより、張力調整動作の終了時期を見かけ上遅らせることができる。
【0086】
図7を参照するに、送出制御装置40及び巻取制御装置62は、織前位置補正量の設定器82の設定値に基づいて、経糸張力調整動作の起動時速度信号S17の値を変更し、それにより経糸張力調整動作にかかる時間を調整する例を示す。
【0087】
織前位置補正量が大きな値に設定されたとき、張力調整動作の起動時速度信号S17の出力値を小さくすることにより、張力調整動作時間を見かけ上長くさせることにより、張力調整動作の終了時期を遅らせる。
【0088】
具体的には、織前位置補正動作の時間t2が、織前位置の設定補正量とは無関係である(すなわち、織前位置補正動作の時間t2が一定になるように算出される速度で駆動される場合である)とき、起動時に働く制御器のゲイン補正器118のゲイン信号S21の値を小さくする。
【0089】
図7に示す織り段防止装置は、経糸張力調整動作の時間t3を一旦求め、織前位置補正動作の時間t2との関係から、張力調整動作におけるゲイン信号S21、又は織前補正動作の速度指令値信号S20を変更することにより、張力調整動作の終了時期を織前位置補正動作の終了時期よりも遅らせるようにしてもよい。
【0090】
より詳細には、巻取制御装置62は、織前位置補正量設定器82に設定されている値をゲイン補正器118に出力する。ゲイン補正器118は、織前位置補正量設定器82に設定されている値に応じて1以下の正の実数K2に相当するゲイン信号S21を制御器100に出力する。
【0091】
制御器100は、ゲイン信号S21が入力すると、張力設定器108と張力信号S3との差の値をさらに、1未満の値を有する係数K2を乗じて起動時速度信号S17として出力する。これにより、起動時速度信号S17は、図3に示す制御器100が出力する起動時速度信号S17より、小さな値になる。換言すれば経糸張力調整動作時の送出ビーム14の回転速度を通常の張力調整動作時における送出ビーム14の回転速度よりも遅くして経糸張力調整動作に要する期間を長くしている。これにより、経糸張力調整動作に要する時間を長くさせることにより、見かけ上織前位置補正動作の終了時期を速くさせる。
【0092】
上記した図6及び図7では、織前位置補正量に大きな値が設定されたとき、速度補正量やゲインを変更している。しかし、本件発明では、以下のように変形することも可能である。
【0093】
例えば、織機停止期間中に発生する経糸張力の低下量により、経糸張力調整期間長さが変わることが考えられる。より具体的には、長い期間停台する場合には問題が生じにくいが、停台原因の修復が速やかになされ経糸張力の低下量が少ないとき、経糸張力調整動作に要する期間が短くなる。換言すれば、修復が速やかになされる場合、織前位置補正動作の終了が経糸張力調整動作の終了よりも遅くなって従来のような問題が発生することが考えられる。
【0094】
このため、望ましくは起動準備直前の経糸張力の偏差量が小さい場合、織前位置補正動作時の速度を小さくするように速度補正を行ったり、送出ビームの回転速度が小さくなるようにゲイン補正器のゲインを小さくしたりして、経糸張力調整動作の終了を織前位置補正動作の終了よりも遅くなるようにすればよい。好ましくは、図6及び図7に示した速度補正器やゲイン補正器に、経糸張力偏差信号を入力すると共に、補正係数やゲインを張力偏差に応じて複数設定しておき、起動準備信号S7発生時には、前記検出された張力偏差に基づき、対応する補正係数やゲインを選択可能に構成する。
【0095】
さらに、織前位置補正動作及び経糸張力調整動作の各動作時間を推定し、各動作時間に基づいて織前位置補正動作及び経糸張力調整動作の開始時期の時間差を決定し、時間差に基づいて織前位置補正動作及び経糸張力調整動作を開始させてもよい。
【0096】
織前位置補正動作を開始させる時期と経糸張力調整動作を開始させる時期との時間差を、一つの値、又は、予め設定された値から経糸張力のばらつきが生じる要素に応じて選択された値としてもよい。例えば、経糸張力のばらつきが生じる要素として、前記したような織機の停台時間のほか、経糸張力設定値、経糸開口量などが考えられる。経糸関口量に関連するものとして織機停止状態におかれるときの主軸クランク角度などが考えられる。
【0097】
織前位置補正動作時の服巻ロール28の回転速度を通常の織前位置補正動作時の服巻ロール28の回転速度より速くし、織前位置補正動作に要する期間を短くしてもよい。
【0098】
経糸張力調整動作時の送出ビーム14の回転速度は、通常の織前位置補正動作時の送出ビーム14の回転速度より遅くし、経糸張力調整動作に要する期間を長くしてもよい。
【0099】
織前位置補正動作時の服巻ロール28の回転速度と通常の織前位置補正動作時の服巻ロール28の回転速度との速度差を、一つの値、又は、予め設定された値から経糸張力のばらつきが生じる要素に応じて選択された値としてもよい。
【0100】
起動準備運転がされる期間に服巻ロール28を前方向又は後方向に回転させてもよい。より具体的には、織前位置補正動作を、織機起動準備時に1回のみ行われるものに限らず、2回行うようにすることもできる。2回行うものについて、2回とも同じ方向に(例えば2回とも正転又は逆転)回転させる、又は互いに異なる方向に(正転から逆転、又は、逆転から正転)回転させることも可能である。
【0101】
これに対し、経糸張力調整動作は、織前位置補正動作毎に行ってもよいし、最終回の織前位置補正動作時に行うようにすることもできる。なお、織前位置補正動作について、2回に限らず3回以上行うことが可能である。
【0102】
経糸張力の検出は、バックローラ16に作用する荷重を経糸張力センサ44で検出して経糸全体の張力を検出したが、一部の経糸12の張力を検出してもよい。
【0103】
バックローラ16に作用する荷重を検出する経糸張力センサ44は、バックローラ16の歪や変位を検出する形態でもよい。
【0104】
経糸張力センサ44はバックローラ16に作用する荷重を検出すべくバックローラ16に設けているが、経糸12又は織布24に接触する部材であればいずれに設けてもよい。
【0105】
図1から図4に示した織機10は、服巻ロール28及び送出ビーム14を別回路で制御したが、服巻ロール28及び送出ビーム14を単一の制御回路で制御するように構成してもよい。
【0106】
発生器76,78,84、制御器96,100、巻径補正器110、フィードバック回路I,IIは、ハードウエア処理のほか、マイコンを用いたソフトウエア処理により実現してもよい。
【0107】
本発明を変わり織りの織機10に適用してもよい。例えば、複数の緯糸密度を緯入れピック数に応じて選択的に切り換える織機では、起動時の織前位置補正動作量を一定の値ではなく、起動時の緯糸密度に応じて設定する。又は、緯糸密度の切替りに応じて経糸目標張力を切り換える織機では、起動時の目標経糸張力を起動時の緯糸密度に対応する目標経糸張力に応じて設定する。
【0108】
制御器96の内部構成は、PID制御としたが、公知の制御器でもよいし、より簡略化した制御でもよい。簡略化した制御としては、経糸張力を設定値と比較する比較器と、比較結果により速度指令出力状態を切り換える速度指令出力回路とで構成してもよいし、張力偏差解消方向に低速の速度指令値を出力し、設定張力に達したらその出力をやめるようにしてもよい。
【0109】
本発明は、上記実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない限り、種々変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明に係る織り段防止装置を備えた織機の概略図である。
【図2】図1に示す織り段防止装置の一部を構成する巻取制御装置の一実施例を示すブロック線図である。
【図3】図1に示す織り段防止装置の一部を構成する送出制御装置の一実施例を示すブロック線図である。
【図4】図1に示す織り段防止装置の動作を説明するためのタイムチャート図である。
【図5】本発明に係る織り段防止装置の変形例を示すブロック線図である。
【図6】図5に示す織り段防止装置の速度補正器の動作を説明するための時間に対する出力をグラフで表した図である。
【図7】本発明に係る織り段防止装置の別の変形例示すブロック線図である。
【符号の説明】
【0111】
I,II フィードバック回路
S0 押下信号
S1 巻径信号
S2 送出回転速度信号
S3 張力信号
S4 主軸回転角度信号
S5 ロール回転角度信号
S6 運転信号
S7 起動準備信号
S8 起動遅延時間信号
S9 起動時制御開始指令信号
S10 基本回転量信号
S11 織前位置制御信号
S12 巻取目標値信号
S13 巻取駆動信号
S14 速度信号
S15 補正速度信号
S16 通常運転時速度信号
S17 起動時速度信号
S18 速度信号
S19 補正信号
S20 速度指令値信号
S21 ゲイン信号
t1 織前位置補正動作を開始してから経糸張力調整動作を開始するまでの時間(期間)
t2 織前位置補正動作の時間(期間)
t3 経糸張力調整動作の時間(期間)
t4 織前位置補正動作と経糸張力調整動作とが重複する時間(期間)
10 織機
12 経糸
14 送出ビーム
16 バックローラ
18 綜絖枠
20 筬
22 織前
24 織布
26 ガイドローラ
28 服巻ロール
30 プレスロール
32 布巻ビーム
34 送出モータ
36,56 ギア機構
38 巻径センサ
40 送出制御装置
42 タコジェネレータ
44 経糸張力センサ
46 主軸
48,50 運動変換機構
52 緯糸
54 巻取モータ
58,60 エンコーダ
62 巻取制御装置
64 巻取トルク調整機構
66 同期制御部
68 織前位置制御部
70 主制御装置
72 運転ボタン
74 切換器
76 駆動量信号発生器
78 指令発生器
80 設定器
82 織前位置補正量設定器
84 基本回転量信号発生器
86 加算部
88 正逆カウンタ
90,114 ドライバ
94 運転時制御部
96 制御器
98 起動時制御部
100 制御器
102 基本速度信号発生器
104 加算部
106,108 張力設定器
110 巻径補正器
112 減算部
116 速度補正器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
服巻ロールを回転させて織前位置を所定位置に移動させる織前位置補正動作と送出ビームを回転させて経糸張力を所定の値に調整する経糸張力調整動作とを含む起動準備動作が終了した後に織機に通常運転をさせる織り段防止方法であって、
前記織前位置補正動作の動作時間、前記経糸張力調整動作の動作時間、及び前記織前位置補正動作の開始時期と前記経糸張力調整動作の開始時期とに時間差を持たせた場合のその時間差のいずれかについての下記制御に関し、
a)前記織前位置補正動作の動作時間を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差に基づいて制御すること、
b)前記経糸張力調整動作の動作時間を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差又は前記織前位置補正動作の設定補正量に基づいて制御すること、及び
c)前記時間差を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差に基づいて制御すること、のいずれか1つを行うことにより、前記織前位置補正動作が終了した後に前記経糸張力調整動作を終了させる、織機の織り段防止方法。
【請求項2】
前記経糸張力調整動作の開始時期を前記織前位置補正動作が開始された後に設定すると共に、前記a)又は前記b)の制御を行って前記経糸張力調整動作を前記織前位置補正動作が終了した後に終了させる、請求項1に記載の織機の織り段防止方法。
【請求項3】
前記経糸張力調整動作の開始時期を前記織前位置補正動作が終了する前に設定する、請求項2に記載の織機の織り段防止方法。
【請求項4】
前記偏差に基づいて前記送出ビームの回転速度を求めるために用いられるゲインを前記設定補正量に基づいて変更することによって前記b)の制御を行う、請求項1に記載の織機の織り段防止方法。
【請求項5】
服巻ロールを回転させて織前位置を所定位置に移動させる織前位置補正器と、
送出ビームを回転させて経糸張力を所定の値に調整する経糸張力調整器と、
起動準備期間における前記織前位置補正器による織前位置補正動作及び前記経糸張力調整器による経糸張力調整動作が終了した後に織機に通常運転を開始させる主制御装置とを含む織り段防止装置であって、
前記主制御装置は、前記織前位置補正器による前記織前位置補正動作の動作時間、前記経糸張力調整器による前記経糸張力調整動作の動作時間、及び前記織前位置補正器による前記織前位置補正動作の開始時期と前記経糸張力調整器による前記経糸張力調整動作の開始時期とに時間差を持たせた場合のその時間差いずれかについての下記制御に関し、
a)前記織前位置補正動作の動作時間を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差に基づいて制御すること、
b)前記経糸張力調整動作の動作時間を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差又は前記織前位置補正動作の設定補正量に基づいて制御すること、及び
c)前記時間差を、起動準備用の設定張力値と起動準備動作直前に検出された経糸張力値との偏差に基づいて制御すること、
のいずれか1つを行い、前記織前位置補正動作が終了した後に前記経糸張力調整動作を終了させる、織機の織り段防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−255560(P2008−255560A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124466(P2008−124466)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【分割の表示】特願2003−73933(P2003−73933)の分割
【原出願日】平成15年3月18日(2003.3.18)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【Fターム(参考)】